特許第6099119号(P6099119)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東光学株式会社の特許一覧

特許6099119レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置
<>
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000002
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000003
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000004
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000005
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000006
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000007
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000008
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000009
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000010
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000011
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000012
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000013
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000014
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000015
  • 特許6099119-レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置 図000016
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099119
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/06 20060101AFI20170313BHJP
   G02B 7/02 20060101ALI20170313BHJP
   G03B 5/00 20060101ALI20170313BHJP
   G03B 17/04 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   G02B7/06 Z
   G02B7/02 D
   G03B5/00 J
   G03B17/04
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-118995(P2012-118995)
(22)【出願日】2012年5月24日
(65)【公開番号】特開2013-246259(P2013-246259A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227364
【氏名又は名称】株式会社nittoh
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山科 一成
(72)【発明者】
【氏名】小松 広明
【審査官】 小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−123359(JP,A)
【文献】 特開2012−027051(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/155906(WO,A1)
【文献】 特開2010−204476(JP,A)
【文献】 特開2011−237519(JP,A)
【文献】 特開2006−208873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/06
G02B 7/02
G03B 5/00
G03B 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズにより構成される撮影光学系を備えるレンズ鏡筒において、
前記撮影光学系の一部を構成し、前記撮影光学系による結像の像ぶれを補正する補正レンズと、
前記撮影光学系の一部を構成し、前記撮影光学系の光路の後方に配置され、結像の合焦状態を変えるレンズと、
前記補正レンズが取り付けられる補正レンズ取付部材と、
前記撮影光学系の光軸に直交する方向に平行な方向である第1方向への移動をガイドする第1ガイド部材を介して前記補正レンズ取付部材が取り付けられる第1取付部材と、
前記光軸と前記第1方向とに直交する方向に平行な方向である第2方向への移動をガイドする第2ガイド部材を介して前記第1取付部材が取り付けられる第2取付部材と、
前記補正レンズ取付部材を前記第1方向に移動させる駆動力を発生させる第1駆動部と、
前記第1取付部材を前記第2方向に移動させる駆動力を発生させる第2駆動部と、
前記撮影光学系を、撮影可能位置と、結像側に偏倚し収納状態となる収納位置とに移動すると共に、前記撮影光学系を前記撮影可能位置から前記収納位置に移動する際に、前記第2ガイド部材にガイドされる前記第1取付部材を、前記補正レンズが前記撮影光学系の光路上に配置させられる光路内位置から、前記補正レンズが前記撮影光学系の移動領域から退避させられた位置に配置させられる退避位置に移動させるレンズ収納機構と、
を備え、
前記第1取付部材が前記光路内位置に配置されている状態において、前記第1駆動部および前記第2駆動部は、前記光軸に対して前記退避位置の反対側に配置されると共に、
前記結像の合焦状態を変えるレンズを後方に偏倚させ、前記補正レンズが撮影光路外に移動された後の撮影光路内の空いたスペースに前記結像の合焦状態を変えるレンズが配置された状態で、前記複数のレンズが前記収納位置に配置され
前記第2取付部材に設けられ、前記第2取付部材側かつ前記第1取付部材側に傾斜する第1カム面を有する第1カム部材と、
前記第1カム部材の前記第1カム面に垂直かつ光軸と平行な面に沿う方向に設けられ、前記第1カム面に当接する当接部を有する第2カム部材と、
を有し、
前記第1取付部材が前記退避位置に移動するときには、前記第1カム部材が前記第2カム部材が配置された方向に移動することにより、前記第2カム部材の前記当接部が前記第1カム部材の前記第1カム面の斜面を前記退避位置の方向に滑り上がり、これにより前記第2カム部材が前記退避位置の方向に移動することで、前記第2カム部材が前記第1取付部材と一体的なガイド受部を前記退避位置の方向に押し上げて移動させる、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記第2取付部材には、前記第2ガイド部材に平行に配置される軸体であって、前記第1取付部材の前記第2ガイド部材の周方向に対する振れ止めを行う振れ止め軸が取り付けられ、
前記補正レンズ取付部材は、前記振れ止め軸により、前記第1ガイド部材の周方向への振れ止めが行われている、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズ鏡筒において、
前記補正レンズ取付部材は、前記第1取付部材に対して、前記第1ガイド部材の周方向への振れ止めが行われている、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記第1取付部材と前記第2取付部材との間には、前記第1取付部材を前記光路内位置に向けて付勢する付勢部材が配置されている、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒において、
前記補正レンズは、前記第1方向へ移動しつつ、前記撮影光路の後方へも移動することで、前記退避位置側に移動する、
ことを特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のレンズ鏡筒を備えることを特徴とする光学撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラやデジタルビデオカメラのような撮影光学機器においては、非撮影時におけるレンズ鏡筒の小型化を図る技術として、たとえば、非撮影時にレンズ鏡筒の結像側に沈胴させる沈胴機構を備える、いわゆる沈胴式のレンズ鏡筒が知られている。沈胴式のレンズ鏡筒としては、たとえば、特許文献1に開示される構成がある。特許文献1に開示される構成は、非撮影時に撮影光学系の一部のレンズを撮影光学系の移動領域から外れた位置に移動させ、該レンズが移動された後の空いたスペースに他のレンズを配置することで、レンズ鏡筒の小型化を図る構成である。
【0003】
また、デジタルカメラやデジタルビデオカメラのような撮影光学機器においては、撮影時の振動等によって発生する像ぶれを補正する技術として、たとえば、像ぶれ補正機構を備えるレンズ鏡筒が知られている。像ぶれ補正機構を備えるレンズ鏡筒としては、たとえば、特許文献2に開示される構成がある。特許文献2に開示される構成は、撮影光学系の一部のレンズを光軸と直交する2方向に移動可能とし、振動に対応させて該2方向に所定の移動を行わせることで結像位置の移動を抑制する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−189516号公報
【特許文献2】特開2009−53554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レンズ鏡筒は、非撮影時にはレンズ鏡筒の小型化が図られることが好ましく、また、撮影時には像ぶれが補正されることが好ましい。
【0006】
そこで、本発明は、非撮影時にはレンズ鏡筒の小型化を図ることができ、また、撮影時には像ぶれを補正することができるレンズ鏡筒およびそれを用いた光学撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレンズ鏡筒は、複数のレンズにより構成される撮影光学系を備えるレンズ鏡筒であって、撮影光学系の一部を構成し、撮影光学系による結像の像ぶれを補正する補正レンズと、撮影光学系の一部を構成し、撮影光学系の光路の後方に配置され、結像の合焦状態を変えるレンズと、補正レンズが取り付けられる補正レンズ取付部材と、撮影光学系の光軸に直交する方向に平行な方向である第1方向への移動をガイドする第1ガイド部材を介して補正レンズ取付部材が取り付けられる第1取付部材と、光軸と第1方向とに直交する方向に平行な方向である第2方向への移動をガイドする第2ガイド部材を介して第1取付部材が取り付けられる第2取付部材と、補正レンズ取付部材を第1方向に移動させる駆動力を発生させる第1駆動部と、第1取付部材を第2方向に移動させる駆動力を発生させる第2駆動部と、撮影光学系を、撮影可能位置と、結像側に偏倚し収納状態となる収納位置とに移動すると共に、撮影光学系を撮影可能位置から収納位置に移動する際に、第2ガイド部材にガイドされる第1取付部材を、補正レンズが撮影光学系の光路上に配置させられる光路内位置から、補正レンズが撮影光学系の移動領域から退避させられた位置に配置させられる退避位置に移動させるレンズ収納機構と、を備え、第1取付部材が光路内位置に配置されている状態において、第1駆動部および第2駆動部は、光軸に対して退避位置の反対側に配置されると共に、結像の合焦状態を変えるレンズを後方に偏倚させ、補正レンズが撮影光路外に移動された後の撮影光路内の空いたスペースに結像の合焦状態を変えるレンズが配置された状態で、複数のレンズが収納位置に配置され、第2取付部材に設けられ、第2取付部材側かつ第1取付部材側に傾斜する第1カム面を有する第1カム部材と、第1カム部材の第1カム面に垂直かつ光軸と平行な面に沿う方向に設けられ、第1カム面に当接する当接部を有する第2カム部材と、を有し、第1取付部材が退避位置に移動するときには、第1カム部材が第2カム部材が配置された方向に移動することにより、第2カム部材の当接部が第1カム部材の第1カム面の斜面を退避位置の方向に滑り上がり、これにより第2カム部材が退避位置の方向に移動することで、第2カム部材が第1取付部材と一体的なガイド受部を退避位置の方向に押し上げて移動させるものである。
【0008】
また、本発明のレンズ鏡筒は、上述の発明に加えて、第2取付部材には、第2ガイド部材に平行に配置される軸体であって、第1取付部材の第2ガイド部材の周方向に対する振れ止めを行う振れ止め軸が取り付けられ、補正レンズ取付部材は、振れ止め軸により、第1ガイド部材の周方向への振れ止めが行われていることとする。
【0009】
また、本発明のレンズ鏡筒は、上述の発明に加えて、補正レンズ取付部材は、第1取付部材に対して、第1ガイド部材の周方向への振れ止めが行われていることとする。
【0010】
また、本発明のレンズ鏡筒は、上述の発明に加えて、第1取付部材と第2取付部材との間には、第1取付部材を光路内位置に向けて付勢する付勢部材が配置されていることとする。
【0011】
また、本発明のレンズ鏡筒は、上述の発明に加えて、補正レンズは、第1方向へ移動しつつ、撮影光路の後方へも移動することで、退避位置側に移動する
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の光学撮像装置は、上述のレンズ鏡筒を備えることとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、非撮影時にはレンズ鏡筒の小型化を図ることができ、また、撮影時には像ぶれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るレンズ鏡筒の概略の構成を示す側断面図であり、各レンズが撮影可能位置に配置されている状態を示している。
図2】レンズ鏡筒の概略の構成を示す側断面図であり、各レンズが収納位置に配置されると共に第1取付部材が退避位置に配置されている状態を示している。
図3】レンズ鏡筒の退避移動機構の概略の構成を示す図であり、退避移動機構を後方から見た図である。特に第1取付部材の退避移動方向への移動を判り易くするため、コイル、磁石等については図示を省略している。
図4】退避移動機構の概略の構成を示す一部断面図であり、退避位置側から光路内位置の方向を見たときの構成を示す。
図5】退避移動機構の概略の構成を示す側断面図であり、第1取付部材が光路内位置に配置された状態を示している。
図6】退避移動機構の概略の構成を示す側断面図であり、第1取付部材が退避位置に配置された状態を示している。
図7】退避移動機構の動作の様子を示す図であり、(A)は第1取付部材が光路内位置に配置している状態を示し、(B)は第1取付部材に退避位置に向けた移動が開始された状態を示し、(C)は第1取付部材が移動して第2レンズが開口部の外側に配置された状態を示す図である。
図8】退避移動機構の動作の様子を示す図であり、(A)は第1カム部材の第2カム部材支持面と第2カム部材の第1カム部材当接面とが当接している状態を示し、(B)は第1取付部材が退避位置に配置された状態で各レンズが収納位置に配置された状態を示す図である。
図9】退避移動機構のうち、スライドガイド部付近の概略の構成を示す一部断面であり、退避位置側から光路内位置の方向を見たときの構成を示す。
図10】像ぶれ補正機構および退避移動機構の概略の構成を示す図であり、第1取付部材が光路内位置に配置されている状態を後方から見た図である。
図11】像ぶれ補正機構および退避移動機構の概略の構成を示す図であり、第1取付部材が退避位置に配置されている状態を後方から見た図である。
図12】像ぶれ補正機構および退避移動機構の概略の構成を示す図であり、分解斜視図であり、後方から見た図である。
図13】像ぶれ補正機構および退避移動機構の概略の構成を示す図であり、分解斜視図であり、前方から見た図である。
図14】像ぶれ補正機構および退避移動機構の概略の構成を示す図であり、分解斜視図であり、後方から見た図である。
図15】本発明の他の実施の形態に係るレンズ鏡筒の概略の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るレンズ鏡筒1およびこのレンズ鏡筒1を用いた光学撮像装置2について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、図1に示すように、撮像素子3から第1レンズ4に向かう方向である矢印X1方向を前方(前側)とし、それと反対方向である矢印X2方向を後方(後側)として説明する。
【0016】
(レンズ鏡筒1および光学撮像装置2の概略構成)
図1図14に示すように、レンズ鏡筒1は、複数のレンズとして、第1レンズ4と、補正レンズとしての第2レンズ5と、第3レンズ6とから構成される撮影光学系7と、補正レンズ取付部材としての第2レンズ保持枠8と、撮影光学系7を前後方向に移動することができるレンズ移動機構9と、レンズ収納機構10と、レンズ収納機構10の一部として構成される退避移動機構11(図3図14等参照)と、レンズ鏡筒1に加わった振動に起因して発生する撮影光学系7の結像の像ぶれを抑える像ぶれ補正機構12(図10図14等参照)等とを有する。
【0017】
像ぶれ補正機構12は、第2レンズ保持枠8を撮影光学系7の光軸Xと直交する方向に平行な方向である第1方向S1(図3等参照)に移動可能にガイドする第1ガイド部材としての第1ガイド軸13と、この第1ガイド軸13が取り付けられる第1取付部材14と、第1取付部材14を光軸Xおよび第1方向S1に直交する方向に平行な方向である第2方向S2(図3等参照)にガイドする第2ガイド部材としての第2ガイド軸15と、この第2ガイド軸15が取り付けられる第2取付部材としての第2レンズ支持体16と、第1駆動部17と、第2駆動部18等とを有する。
【0018】
なお、本実施の形態のレンズ鏡筒1においては、撮影光学系7は、3つのレンズ(第1レンズ4、第2レンズ5、第3レンズ6)を有する3群の構成とされるが、2群による構成または4群以上の構成であってもよい。また、第1レンズ4、第2レンズ5、および第3レンズ6は、それぞれ1枚のレンズ構成が図示されているが、2枚以上のレンズにより、レンズ群として構成されていてもよい。
【0019】
図1,2に示すように、光学撮像装置2は、レンズ鏡筒1に加え、撮像素子3と、この撮像素子3が取り付けられる本体部19とを有し、レンズ鏡筒1は、本体部19に対して取り付けられている。撮像素子3は本体部19に対して保持されている。撮像素子3は、たとえばCCDやCMOSを用いることができる。第3レンズ6は、フォーカスレンズである。第3レンズ6は、第3レンズ保持枠20に取り付けられ、この第3レンズ保持枠20は、レンズ移動機構9の一部を構成する不図示のモータ(フォーカシング用モータ)によって光軸Xに沿って前後に移動可能とされている。
【0020】
レンズ移動機構9は、図1に示す撮影可能位置P1に配置された第1レンズ4、第2レンズ5、および第3レンズ6(以下、3つのレンズを総称して各レンズ21と記載することがある。)を、焦点距離や被写体距離に応じて、それぞれ所定の位置に移動することができる。各レンズ21は、撮影可能位置P1に配置される状態で、焦点距離や被写体距離に応じて、それぞれ所定の位置に移動されることで、撮影光学系7の前方から撮影光学系7に入射する被写体光を撮像素子3に結像させることができる。なお、各レンズ21の撮影可能位置P1は、図1に示す位置のみでなく、各レンズ21が撮像素子3に被写体光を結像させることができる位置を言う。
【0021】
レンズ収納機構10は、各レンズ21を撮影可能位置P1(図1参照)よりもさらに後方となる図2に示す収納位置P2に向けて移動することができる収納移動機構22と、第1取付部材14を光路内位置Q1(図5等参照)から退避位置Q2(図6等参照)に移動させる退避移動機構11とを有する。第1取付部材14の光路内位置Q1は、第2レンズ5が撮影光学系7の撮影光路内に配置される位置である。つまり、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置された状態で、各レンズ21が撮影可能位置P1に配置される場合には、被写体光を撮像素子3に結像させることができる。第1取付部材14の退避位置Q2は、第2レンズ5を撮影光学系7の光路から外れた位置に配置させる位置である。
【0022】
第1取付部材14が退避位置Q2に配置されると共に各レンズ21が後方に偏倚され収納位置P2に配置されたレンズ鏡筒1は、被写体光を撮像素子3に結像させることができない否撮影状態となる。レンズ鏡筒1が否撮影状態に移行する際には、第1取付部材14は退避位置Q2に配置され第2レンズ5が撮影光路外に移動し、第2レンズ5が撮影光路外に移動された後の撮影光路内の空いたスペースに第3レンズ6が配置された状態で、各レンズ21が収納位置P2に配置される。したがって、否撮影状態におけるレンズ鏡筒1の前後方向の長さを短くすることができる。
【0023】
(レンズ移動機構9、収納移動機構22)
レンズ移動機構9およびレンズ収納機構10の収納移動機構22は、図1および図2に示すように固定筒23と、第1直進筒24と、カム筒25と、第2レンズ保持枠8が支持される第2レンズ支持体16と、回転筒26と、第2直進筒27と、第1レンズ保持枠28と、第3レンズ保持枠20とを有している。
【0024】
図1に示す各レンズ21の撮影可能位置P1においてカム筒25が回転させられると、第1レンズ4および第2レンズ5が光軸Xに沿って前後方向に移動し、撮影光学系7の焦点距離が変化する。また、第3レンズ6を移動することで、撮影光学系7による撮像素子3上の結像の合焦状態を変えることができる。
【0025】
固定筒23、第1直進筒24、カム筒25、第2レンズ支持体16、回転筒26、第2直進筒27、第1レンズ保持枠28、および第3レンズ保持枠20は、各レンズ21を撮影可能位置P1(図1参照)よりもさらに後方に位置する収納位置P2(図2参照)に移動可能に構成される。第1レンズ4および第2レンズ5についてはカム筒25を回転することにより、また、第3レンズ6については不図示のフォーカシング用モータを駆動することにより、図2に示す収納位置P2となる後方に偏倚させることができる。
【0026】
第1レンズ4は、第1レンズ保持枠28に保持されている。したがって、第1レンズ保持枠28が前後に移動させられることで、第1レンズ4も第1レンズ保持枠28と共に前後に移動する。また、第2レンズ5は、第2レンズ保持枠8、第1ガイド部材としての第1ガイド軸13(図10図11図13図14参照)、第1取付部材14、および第2ガイド部材としての第2ガイド軸15(図3図4図10図14参照)を介して第2レンズ支持体16に支持されている。したがって、第2レンズ支持体16が前後に移動させられることで、第2レンズ5も第2レンズ支持体16と共に前後に移動する。
【0027】
固定筒23は、本体部19に対して移動しない状態に設けられている。この固定筒23は、図2に示すように、各レンズ21が収納位置P2に配置される状態において、第1直進筒24、カム筒25、第2レンズ支持体16、回転筒26、第2直進筒27、および第1レンズ保持枠28を内部に収納することを可能としている。
【0028】
固定筒23の内周面にはヘリコイド谷部30が形成されていると共に、このヘリコイド谷部30はカム筒25の突出部31と噛み合う。カム筒25が不図示のモータ(ズーム用モータ)によって回転駆動させられると、ヘリコイド谷部30と突出部31との噛み合いにより、カム筒25が回転しながら前後方向に移動する。また、固定筒23の内周面には、ヘリコイド谷部30とは別に、前後方向に沿う溝状の固定筒直進溝32が、光軸Xに対して平行となるように形成されている。この固定筒直進溝32には、第1直進筒24の係合突起33が入り込む。それにより、第1直進筒24は固定筒23に対して回転せずに、前後方向に移動可能となる。また、この固定筒直進溝32には、位置決め部材34の筒係合部35が入り込む。それにより、位置決め部材34が固定筒23に対して回転するのが阻止され、位置決め部材34を介して第2レンズ支持体16が固定筒23に対して回転するのが阻止される。
【0029】
また、第1直進筒24は、固定筒23の内周側に位置すると共に、カム筒25の外周側に位置する筒状部材である。この第1直進筒24の外周面には、係合突起33が設けられていて、この係合突起33は上述の固定筒直進溝32に入り込むことによって前後方向にガイドさせられる。また、第1直進筒24の内周面には、カム溝36が形成されていて、このカム溝36には、回転筒26のカムピン37が入り込む。それにより、回転筒26は、回転しながら前後方向に移動する。さらに、第1直進筒24の内周面には、前後方向に沿ってキー溝38が設けられていて、このキー溝38には後述する係合キー39が入り込む。なお、第1直進筒24の後方側の外周面には、嵌合部40が設けられている。
【0030】
また、カム筒25は、第1直進筒24の内周側に位置すると共に、位置決め部材34および第2レンズ支持体16の外周側に位置する筒状部材である。このカム筒25には、たとえば外周側の所定位置に、ギア部が設けられていて、このギア部が不図示のズーム用モータの回転ギアと噛み合うことにより、回転させられる。上述したように、カム筒25の外周側には、突出部31が設けられていて、この突出部31は固定筒23のヘリコイド谷部30と噛み合う。それにより、カム筒25がズーム用モータの駆動によって回転させられると、その回転に伴って当該カム筒25が前後方向に移動させられる。
【0031】
このカム筒25のうち、後方側の端部には、フランジ部41が設けられている。フランジ部41は、カム筒25のうち径方向の外方側に最も突出する部分となっている。そして、このフランジ部41のうち径方向の外方側かつ前方側の部位には、噛合部42が設けられている。噛合部42は、第1直進筒24の嵌合部40と噛み合って、第1直進筒24とカム筒25の間の前後方向における移動を規制している。ただし、噛合部42に対して嵌合部40は回転自在に設けられている。すなわち、第1直進筒24は、カム筒25に対して前後方向の移動は規制される。しかしながら、第1直進筒24に対して、カム筒25の回転は規制されない状態となっている。
【0032】
また、カム筒25の内周面には、カム溝44が形成されている。このカム溝44は、後述する第2レンズ支持体16のカムピン45と係合する。それにより、カム筒25が回転させられると、第2レンズ支持体16が前後方向に移動する。また、カム筒25の外周面には、前後方向に沿うキー溝46が設けられている。
【0033】
また、回転筒26は、第2直進筒27の内周側に位置すると共に、カム筒25の外側に位置する筒状部材である。この回転筒26の内周側には、キー47が設けられている。このキー47は、上述のキー溝46に入り込む。それにより、回転筒26はカム筒25の回転に伴って回転する。また、回転筒26の後端側における外周面からは、径方向外方側に向かってカムピン37が突出している。カムピン37は、第1直進筒24のカム溝36に入り込む部材である。そのため、カム筒25と共に回転筒26が回転すると、カムピン37がカム溝36に沿って移動することにより、回転筒26が回転しながら前後方向に移動する。
【0034】
また、回転筒26の外周面のうちカムピン37よりも前方側の部位には、ヘリコイド谷部48が形成されていて、このヘリコイド谷部48には、第1レンズ保持枠28の突出部49が入り込み、その突出部49がヘリコイド谷部48に沿って摺動する。また、回転筒26の後方側の部位と第2直進筒27の後方側の部位にも、上述の嵌合部40および噛合部42の間の噛み合いと同様の嵌合部分が存在する。それにより、第2直進筒27は、回転筒26に対して前後方向の移動は規制されるが、第2直進筒27に対して、回転筒26の回転は規制されない状態となっている。なお、この嵌合部分については、上述の嵌合部40および噛合部43の間の噛み合い関係と同様のため、説明を省略する。
【0035】
また、第2直進筒27は、第1直進筒24の内周側に位置すると共に、回転筒26の外周側に位置する筒状部材である。この第2直進筒27の後端側の外周面には、係合キー39が設けられていて、この係合キー39は第1直進筒24のキー溝38に入り込む。それにより、第2直進筒27は、第1直進筒24と同様に、前後方向への移動がガイドされる。また、第2直進筒27の内周面には、第2直進溝50が設けられていて、この第2直進溝50には、後述する第1レンズ保持枠28の突出キー51が入り込む。
【0036】
また、第1レンズ保持枠28は、第2直進筒27の内周側に位置すると共に、回転筒26の外周側に位置する筒状部材である。この第1レンズ保持枠28の内周面のうち後端側の部位には、突出部49が設けられている。この突出部49は、回転筒26のヘリコイド谷部48に沿って摺動する部分である。一方、第1レンズ保持枠28の外周面のうち後端側の部位には、突出キー51が設けられていて、この突出キー51は第2直進溝50に入り込む。そのため、カム筒25が回転した場合でも、突出キー51の第2直進溝50への入り込みにより第1レンズ保持枠28は回転しない。しかしながら、突出部49がヘリコイド谷部48に入り込んでいることにより、カム筒25の回転によって第1レンズ保持枠28が前後方向に移動する。
【0037】
第3レンズ保持枠20は、不図示のフォーカシング用モータとギア連結し、該フォーカシング用モータを駆動することで前後方向に移動する。
【0038】
上述のヘリコイド谷部30、固定筒直進溝32、カム溝36、キー溝38、カム溝44、キー溝46、ヘリコイド谷部48および第2直進溝50は、第1レンズ4および第2レンズ5を撮影可能位置P1において、撮影光学系7の焦点距離に応じた所定位置に移動させることができる撮影領域と、第1レンズ4および第2レンズ5を撮影可能位置P1より後方側となる図2に示す収納位置P2に移動させることができる収納領域とを有する。つまり、固定筒23と、第1直進筒24と、カム筒25と、第2レンズ支持体16と、回転筒26と、第2直進筒27と、第1レンズ保持枠28と、第3レンズ保持枠20等は、第1レンズ4および第2レンズ5が撮影可能位置P1に配置されている状態においては、レンズ移動機構9として機能すると共に、第1レンズ4および第2レンズ5を撮影可能位置P1から収納位置P2に移動させる収納移動機構22としても機能する。
【0039】
なお、本実施の形態においては、レンズ移動機構9およびレンズ収納機構10の収納移動機構22は同一の部材により構成されているが、少なくとも一部の部材を異なる部材により構成してもよい。
【0040】
(退避移動機構11)
次に、図3図14を参照しながら退避移動機構11の構成について説明する。退避移動機構11は、第1取付部材14を第2ガイド軸15にガイドさせて、光路内位置Q1(図5参照)から退避位置Q2(図6参照)に移動させる機構である。なお、以下の説明においては、第1取付部材14が光路内位置Q1から退避位置Q2に向けて移動するときの移動方向を、退避移動方向Rとして説明する。また、他の部材についても、退避移動方向Rの側に移動する場合には、その移動方向を退避移動方向Rとして説明する。
【0041】
退避移動機構11は、たとえば、第2レンズ支持体16と、第1取付部材14と、第2レンズ支持体16に備えられる第1取付部材14を退避移動方向Rにガイドする第2ガイド軸15と、第2レンズ支持体16に設けられ第1カム面52(図5等参照)を有する第1カム部材53と、第1カム部材53の第1カム面52に当接する当接部54と第2カム面55とを有する第2カム部材56と、第1取付部材14に設けられ第2カム部材56の第2カム面55に当接するガイド受部57と、第2カム部材56を退避移動方向Rと平行な方向にガイドするスライドガイド部58(図4,9等参照)等を有して構成される。
【0042】
係る構成により、第2レンズ支持体16が本体部19に向かって(後方に)移動する場合には、第1カム部材53の第1カム面52に第2カム部材56の当接部54が当接し、第2カム部材56がスライドガイド部58のガイドを受けて退避移動方向Rに移動させられる。さらに、第2カム部材56が、退避移動方向Rに向かって移動されると共に第2レンズ支持体16が後方に移動することで、第1取付部材14に設けられるガイド受部57が第2カム面55に当接し、第1取付部材14が退避位置Q2に向かって移動させられる。
【0043】
(第2レンズ支持体16)
第2レンズ支持体16は、外周枠部59と、開口部60を開閉するシャッタ61(図13参照)と、シャッタ61を駆動するシャッタ駆動部62と、シャッタ駆動部62(図4参照)が取り付けられる内周枠部63とを有している。また、図3図9図10等に示すように、第2レンズ支持体16には第2ガイド軸15と回転規制軸64が備えられている。第2ガイド軸15および回転規制軸64は、長手方向(軸方向)が退避移動方向Rに向けられると共に光軸Xに対して直交する方向に平行に配置される。
【0044】
外周枠部59は、内周枠部63よりも前後方向に向かって突出している部分である。外周枠部59の外周面からは、カム筒25のカム溝44に入り込むカムピン45が突出している(図3参照)。それにより、第2レンズ支持体16は、カム溝44に沿って前後方向への移動がガイドされる。
【0045】
外周枠部59の外周側には、周方向に沿って複数の切欠部65が設けられている(図3においては合計3個)。切欠部65は、位置決め部材34の延伸部66を挿通させるための部分であり、それによって位置決め部材34に対する第2レンズ支持体16の回転が阻止されている。
【0046】
ここで、図1に示す位置決め部材34には、リング状のリング部67が設けられている。この位置決め部材34は、カム筒25に対しては回転自在に設けられるものの、カム筒25に対しては前後方向に移動しないように、カム筒25のフランジ部41の後面側とリング部67とが嵌合している。また、このリング部67の内周側には、図1において前方側に向かって突出する延伸部66が設けられている。延伸部66は、リング部67の周方向に沿って、上述した切欠部65に対応して設けられている。また、リング部67の外周側かつ後方側の面から径方向外方に向かい、筒係合部35が設けられている。筒係合部35は、固定筒23の固定筒直進溝32に入り込み、かかる入り込みによって、位置決め部材34が固定筒23に対して回転するのが阻止され、ひいては位置決め部材34を介して第2レンズ支持体16が固定筒23に対して回転するのが阻止される。
【0047】
また、外周枠部59の内周側には、内周枠部63が設けられている。内周枠部63の径方向中心部分には、開口部60が設けられている。開口部60はシャッタ駆動部62の駆動力を得て駆動するシャッタ61(図13参照))により開閉される。開口部60を介して被写体光が第2レンズ5に入射する。内周枠部63には、退避溝68が形成されている。退避溝68は、第1取付部材14が光路内位置Q1から退避位置Q2に移動させられる際に第2レンズ保持枠8の移動を許容するように構成される溝部分である。第2レンズ保持枠8の前側の一部は退避溝68内に配置される。そのため、内周枠部63の前面部から第2レンズ保持枠8の後面部までの厚さを薄くすることができる。つまり、退避溝68を形成し、退避溝68内に第2レンズ保持枠8の前側の一部を配置(収容)することで、レンズ鏡筒1の前後方向の長さの短縮化を図ることができる。退避溝68は、内周枠部63を後方側から前方側に向けて、所定の深さだけ窪ませた部分である。
【0048】
(第2ガイド軸15、回転規制軸64)
図3等に示すように、外周枠部59のうち、内周枠部63よりも後方側の所定部位には、開口部60を挟んで一対の第2ガイド軸15および回転規制軸64が取り付けられている。第2ガイド軸15および回転規制軸64は、開口部60を挟んでほぼ対称となる位置に互いに配置されている。第2ガイド軸15および回転規制軸64は、共に円柱状を呈している。外周枠部59の内周側には、第2ガイド軸15および回転規制軸64を取り付けるための軸取付部69が設けられている。本実施の形態では、図3に示すように、合計4つの軸取付部69が設けられている。
【0049】
(第1取付部材14)
第1取付部材14の一方の側部には、第2ガイド軸15が挿通されるスリーブ70が設けられている。スリーブ70が第2ガイド軸15に通されることで第1取付部材14は退避移動方向Rに沿う方向に移動がガイドされる。また、第1取付部材14のスリーブ70には、第2ガイド軸15を挟んで光軸Xと反対側(第1カム部材53が配置される側)に突出するガイド受部57が設けられている。ガイド受部57は、第2カム面55に当接することができる部分である。
【0050】
また、第1取付部材14には、スリーブ70が設けられる側に対して第2レンズ5を挟んだ反対側となる他方の側部に軸受部72が設けられている。この軸受部72は、回転規制軸64に対して前後方向で当接し、第1取付部材14が第2ガイド軸15の周りに回転してしまうことを防止している。すなわち、軸受部72は、第1取付部材14の第2ガイド軸15の周方向への回転止めとして機能する。
【0051】
図3に示すように、スリーブ70と、第2レンズ支持体16の外周枠部59の内側(開口部60側)との間には付勢部材としての付勢バネ73が配置されている。付勢バネ73はコイルバネであり、コイル状部の孔部分には第2ガイド軸15が挿通されている。そして、この付勢バネ73によって、第1取付部材14には、退避位置Q2側から離間する向きに付勢力が与えられる。付勢バネ73は、第1取付部材14が図10に示す光路内位置Q1に配置された状態で、ほぼ自然長となるように構成されている。また、第1取付部材14が図10に示す光路内位置Q1に配置された状態のときに、後述する像ぶれ補正機構12により第1取付部材14が退避移動方向Rに移動させられた場合であっても、この移動を許容できるように付勢バネ73のバネ定数は設定されている。
【0052】
(第1カム部材53)
また、図4図8に示すように、第2レンズ支持体16には、板状の第1カム部材53が設けられている。第1カム部材53は、第2ガイド軸15を挟んで光軸Xの反対側に配置されている。第1カム部材53は、第2ガイド軸15および光軸Xに平行な幅広面を有する板状体にて形成され、後方に向く端面には光軸Xに近づくほど前方に向かう方向に傾斜する第1カム面52が形成されている。つまり、第1カム面52は、第1カム部材53に対して相対的に後方から前方に向かう移動を退避移動方向Rへの移動に変えることができる。
【0053】
本実施の形態においては、第1カム面52が退避移動方向Rに対して為す傾斜角度(カム角)は、略45度程度に設けられている。なお、この傾斜角度は略45度に限られるものではなく、第2カム部材56の退避移動方向Rに沿う移動を良好にガイド可能であれば、どのような傾斜角度であっても良い。また、図5および図6に示すように、第1カム部材53を側面視すると、第1カム面52は直線状となっているが曲線であってもよい。
【0054】
また、第1カム部材53の退避移動方向Rに位置する端面部分には、光軸Xに平行な第2カム部材支持面74が形成されている。第2カム部材支持面74は、第1カム部材53のうち前後方向に沿う端面であり、この第2カム部材支持面74の存在により第1カム部材53が不必要に長くならない状態となっている。つまり、第2カム部材56の退避移動方向Rへの移動量が規制される。また、図6に示すように、第2カム部材支持面74は、第2カム部材56を支持することができる。
【0055】
(第2カム部材56)
また、図4図8に示すように、第1カム部材53の第1カム面52に垂直かつ光軸Xと平行な面に沿う方向に第2カム部材56が設けられている。第2カム部材56は、第2ガイド軸15および光軸Xに平行な幅広面を有する板状体にて形成され、第1カム面52に当接する当接部54と、第2カム面55と、ガイド受部支持面75とが形成されている。第1カム部材53と第2カム部材56とは前後方向において、第1カム部材53の第1カム面52と第2カム部材56の当接部54とが当接可能に配置されている。当接部54は、第2カム部材56の前端側に設けられ、第1カム部材53が前方から後方に移動する際に第1カム面52に当接する。
【0056】
第2カム面55は、前方から後方に向かって退避移動方向R側に向かって傾斜する斜面である。つまり、第2カム面55は、第2カム部材56に対して相対的に前方から後方に向かう移動を退避移動方向Rへの移動に変えることができる。
【0057】
本実施の形態においては、第2カム面55が退避移動方向Rに対して為す傾斜角度(カム角)は、略45度程度に設けられている。なお、この傾斜角度は略45度に限られるものではなく、第1取付部材14の退避移動方向Rに沿う移動を良好にガイド可能であれば、どのような傾斜角度であっても良い。また、図5および図6に示すように、第2カム部材56を側面視すると、第2カム面55は直線状となっているが曲線であってもよい。
【0058】
また、図5および図6に示すように、第2カム部材56の退避移動方向R側の端面部分には、光軸Xに平行なガイド受部支持面75が形成されている。ガイド受部支持面75は、第2カム部材56のうち前後方向に沿う端面であり、このガイド受部支持面75の存在により第2カム部材56が不必要に長くならない状態となっている。
【0059】
ガイド受部支持面75は、第2カム部材56のうち、退避移動方向Rにおいて当接部54から最も離間する部分であり、前後方向に沿うように形成された端面である。このガイド受部支持面75は、図6に示すように、第1取付部材14が退避位置Q2に位置する場合に、第1取付部材14のガイド受部57と当接し、ガイド受部57を介して第1取付部材14を支持することができる。なお、第2カム部材56のうち、当接部54に隣接すると共にガイド受部支持面75に平行となる端面を、第1カム部材当接面76とする。
【0060】
図4図9に示すように、第2カム部材56には、前後方向に延びる板状部分77から突出する第1嵌合部78と第2嵌合部79とが設けられている。これら第1嵌合部78および第2嵌合部79は、板状部分77に対して光軸Xから離間する側に向かって突出している。図4図9に示すように、第1嵌合部78および第2嵌合部79は、共に略L字形状に形成されている。第1嵌合部78は前方側に向かって突出する第1突出部80(図9参照)有している。また、第2嵌合部79は後方側に向かって突出する第2突出部81(図9参照)を有している。
【0061】
(スライドガイド部58)
本体部19には、図4図9に示すように、第2カム部材56の退避移動方向Rへの移動をガイドするスライドガイド部58が設けられている。スライドガイド部58は、第2カム部材56を挟んで光軸Xと反対側に配置される。スライドガイド部58は、本体部19から前方に突出する突出部82に形成される溝部83と本体部19に形成される溝部84とにより形成される蟻溝状の溝部85を有する。溝部83は、長さ方向が退避移動方向Rに平行に配置され、また、開口部86(溝部83の第2カム部材56側に開口する部分)が光軸X側に形成される溝であり、前端側には光軸X側に係合部を有する鉤状部87が形成されている。溝部84は、溝の長さ方向が退避移動方向Rに平行に配置され、また、溝の開口部88が前方に配置される溝である。
【0062】
第1嵌合部78の第1突出部80と第2嵌合部79の第2突出部81とが溝部85に嵌合されることで、第2カム部材56は、スライドガイド部58により退避移動方向Rへの移動がガイドされる。
【0063】
第2カム部材56の板状部分77には、光軸Xから離間する側に突出するバネ受部89が設けられている。バネ受部89は、戻しバネ90の一端側が取り付けられる部分である。この戻しバネ90は、図5および図6に示すように退避移動方向Rに沿うように設けられている。また、この戻しバネ90の他端側は、本体部19に取付固定されている。戻しバネ90は、第2カム部材56を退避移動方向Rと反対方向に付勢する付勢力が与えられる。
【0064】
(退避移動機構11の動作)
上述の構成を有するレンズ収納機構10およびこのレンズ収納機構10を用いた光学撮像装置2のうち、退避移動機構11の動作について、以下に説明する。
【0065】
図7(A)に示すように、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている状態では、第2レンズ5は、撮影光学系7により被写体光を撮像素子3に結像することができる位置(撮像位置)に配置されている。第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている状態では、第2カム部材56の当接部54は、第1カム部材53の第1カム面52から離れていると共に、戻しバネ90の付勢力によって、第2カム部材56は退避位置から離間する方向に付勢されている。
【0066】
この状態から、不図示のズーム用モータの駆動によってカム筒25が収納位置P2(図2参照)に向けて移動されるように回転させられると、ヘリコイド谷部30、固定筒直進溝32、カム溝36、キー溝38、カム溝44、キー溝46、ヘリコイド谷部48および第2直進溝50における収納領域部分の作用により、第2レンズ支持体16が収納位置P2に向けて移動させられる。
【0067】
第1取付部材14は、第2ガイド軸15を介して第2レンズ支持体16に取り付けられている。そのため、第1取付部材14の第2レンズ支持体16に対する前後方向の位置は変わらない。したがって、図7(B)に示すように、第1取付部材14は、第2レンズ支持体16と共に後方側に移動する。これにより、ガイド受部57は第2カム部材56の第2カム面55に当接する。そして、この当接状態から、さらにズーム用モータが駆動して、第2レンズ支持体16が後方側に向かって移動させられると、ガイド受部57は第2カム面55にガイドされ、ガイド受部57と一体的な第1取付部材14が、付勢バネ73(図3参照)の付勢力に抗しながら第2ガイド軸15のガイドを受け退避位置Q2に向かって移動する。すなわち、図7(B)に示す状態から図7(C)に示す状態へ移行していく。なお、図7(C)に示す状態においては、第2レンズ5は開口部60の外側に配置されている。具体的には、第3レンズ保持枠20の移動領域から外れた位置に配置されている。
【0068】
また、ガイド受部57の第2カム面55への当接に前後して、当接部54が第1カム部材53の第1カム面52に当接する。そして、この当接状態から、さらにズーム用モータ(不図示)が駆動して、第2レンズ支持体16が後方側に向かって移動させられると、第2カム部材56が戻しバネ90の付勢力に抗しながら、スライドガイド部58にガイドされて、退避移動後方に移動する。この移動は、まず図7(B)に示す状態となり、その後に図7(C)に示す状態となる。
【0069】
そして、図8(A)に示すように、ガイド受部57が第2カム面55の退避移動方向R側の端部に到達してもなお、第2レンズ支持体16が後方側に向かって移動させられ、ガイド受部57は第2カム面55からガイド受部支持面75へと移動する。この状態に前後して、上述の第2レンズ支持体16の移動により、当接部54は第1カム面52から外れ、代わりに第1カム部材当接面76のうち当接部54に近い部分が、第2カム部材支持面74へ当接する。ここで、図8(A)に示すように、ガイド受部57がガイド受部支持面75に位置し、第1カム部材当接面76が第2カム部材支持面74と当接した状態では、第2カム部材56および第1取付部材14はこれ以上退避移動方向Rに移動しない。すなわち、図8(A)の状態の場合、退避移動方向Rにおいては、第1取付部材14は、退避位置Q2(図6参照)に到達した状態となる。
【0070】
そして、図8(A)の状態から、図8(B)に示す状態へと移行する。すなわち、第2レンズ支持体16が後方側に向かってさらに移動させられると、第2カム部材支持面74が第1カム部材当接面76に沿って後方側に移動し、その後、第2レンズ支持体16の前後方向における収納位置P2まで移動させられて、第2レンズ支持体16の後方側への移動が停止させられる。以上のようにして、第2レンズ保持枠8は、前後方向においても、収納位置P2に到達した状態となる。
【0071】
なお、第2レンズ支持体16が収納位置P2から撮影可能位置P1へと向かう場合の動作は、上述した収納位置P2へ向かう移動とは逆となる。すなわち、図8(B)から順次、図8(A)、図7(C)、図7(B)へと移行し、最後に図7(A)へと移行して、第2レンズ支持体16の撮影可能位置P1の移動が終了する。これに併せて、第1取付部材14も退避位置Q2から光路内位置Q1へと移動する。
【0072】
上述のような構成のレンズ収納機構10によれば、カム筒25の回転への移動に伴って第2レンズ支持体16が後方側へ移動させられると、当接部54が第1カム面52に沿って摺動し、それによって第2カム部材56が退避移動方向Rに向けて移動させられる。さらに、この第2カム部材56の退避移動方向Rへの移動によって、ガイド受部57が第2カム面55に沿って摺動し、それによって第1取付部材14が退避位置Q2に向けて移動させられる。そして、第1取付部材14が退避位置Q2に配置された状態は、図2に示すように、第3レンズ保持枠20の移動領域から外れた状態である。
【0073】
つまり、部品点数が少ないながらも、簡単な構成で第1取付部材14を、退避位置Q2に向けて移動させることが可能となる。また、退避位置Q2に向かう移動量を、十分に確保することが可能となる。また、各レンズ21を収納位置P2に配置させた状態で、第1取付部材14と第3レンズ保持枠20との配置方向(並び)を光軸Xに交差する方向とすることができる。これにより、否撮影状態におけるレンズ鏡筒1の前後方向の長さの短縮化を図ることができる。
【0074】
また、本実施の形態では、図5および図6に示すように、第1カム部材53には第1カム面52が設けられ、第2カム部材56には第2カム面55が設けられ、さらに第1レンズ保持枠28にはガイド受部57が設けられている。そのため、第1カム面52に対して当接部54をスムーズに摺動させることが可能となり、第2カム面55に対してガイド受部57をスムーズに摺動させることが可能となる。特に、第1カム面52および第2カム面55を側面視した場合に直線状に設けられているため、スムーズな摺動を行わせることが可能となっている。
【0075】
さらに、本実施の形態では、第1カム部材53の退避移動方向R側には、第1カム面52に隣接して第2カム部材支持面74が設けられていて、第2カム部材56の退避移動方向R側にはガイド受部支持面75が設けられ、さらに第2カム部材56の退避移動方向Rと反対側には第1カム部材当接面76が設けられている。このため、第1カム部材53および第2カム部材56が不必要に長くならなくなり、第2レンズ5の退避移動に最適な第1カム部材53および第2カム部材56とすることが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態では、第2カム部材56には、戻しバネ90によって退避移動方向Rと反対向きの付勢力が与えられると共に、第1取付部材14には、付勢バネ73によって退避位置Q2から離間する向きの付勢力が与えられる。そのため、第2レンズ支持体16の収納位置P2へ向かう移動のみならず、戻しバネ90および付勢バネ73の付勢力により、第1取付部材14を退避位置Q2から光路内位置Q1に向けて移動させることが可能となる。そのため、第1取付部材14を退避位置Q2から光路内位置Q1に向けて移動させるための、別途の移動機構が不要となる。
【0077】
(像ぶれ補正機構12)
像ぶれ補正機構12は、図10図14に示すように、第2レンズ保持枠8を撮影光学系7の光軸Xと直交する方向に平行な第1方向S1に移動可能にガイドする第1ガイド軸13と、この第1ガイド軸13が取り付けられる第1取付部材14と、第1取付部材14を光軸Xおよび第1方向S1に直交する方向に平行な第2方向S2にガイドする第2ガイド軸15と、この第2ガイド軸15が取り付けられる第2取付部材としての第2レンズ支持体16と、第1駆動部17と、第2駆動部18等とを有する。
【0078】
第2方向S2は、退避移動方向Rと平行な方向であり、上述の退避移動機構11において説明したように、第1取付部材14は、第2ガイド軸15にガイドされて第2方向S2(退避移動方向R)に移動可能とされている。
また、軸受部72が回転規制軸64に当接することで、第1取付部材14の第2ガイド軸15の周方向に対する回転が阻止されている。
【0079】
第1取付部材14には、第2方向S2と光軸Xとに直交する方向に平行に軸方向が配置される第1ガイド軸13が備えられている。そして、第2レンズ保持枠8は、第1ガイド軸13にガイドされ第1方向S1に移動可能に第1取付部材14に取り付けられている。
【0080】
第1ガイド軸13は、第1取付部材14の両側に設けられる軸受部91A,91Bに取り付けられている。第1ガイド軸13は軸受部91A,91Bに対して圧入等されることにより第1取付部材14に対して固定状態にて取り付けられている。第1ガイド軸13は円柱状を呈している。第2レンズ保持枠8にはガイド軸挿通部92A,92B(図13参照)が形成され、このガイド軸挿通部92A,92Bに第1ガイド軸13が挿通され、第2レンズ保持枠8は、第1ガイド軸13を介して第1取付部材14に取り付けられている。ガイド軸挿通部92A,92Bは第1ガイド軸13に対してスムーズに摺動可能であり、第2レンズ保持枠8は、第1ガイド軸13に沿って移動できる。
【0081】
軸受部91Aと軸受部91Bとの間の間隔は、第2レンズ保持枠8を第1ガイド軸13を介して第1取付部材14に取り付けた状態で、第2レンズ保持枠8が第1方向S1に像ぶれ補正のために移動できる間隔に設定されている。第2レンズ保持枠8には、軸受部93が設けられている。この軸受部93は、第2レンズ保持枠8が第1ガイド軸13を介して第1取付部材14に取り付けられた状態で、回転規制軸64に対して前後方向で当接する部材であり、第2レンズ保持枠8が第1ガイド軸13の周りに回転してしまうことを防止する回転止めとして機能する。
【0082】
第2レンズ支持体16の後面の開口部60を避けた位置には、コイル94A,94Bが備えられている。一方、第2レンズ保持枠8には、磁石95Aが備えられている。また、第1取付部材14には、磁石95Bが備えられている。第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている状態(図10の状態)、すなわち、第2レンズ5が撮影光学系7の光路上に配置され、撮影光学系7により、被写体光を撮像素子3に結像可能な状態において、コイル94Aと磁石95Aとが前後方向において対向し、また、コイル94Bと磁石95Bとが前後方向において対向するように、コイル94A、コイル94B、磁石95A、磁石95Bはそれぞれ配置されている。磁石95A,95Bが第2レンズ保持枠8に配置される位置は、第2レンズ5の光軸Xに対して退避移動方向Rと反対側となる位置とされている。磁石95Aは、第1ガイド軸13と対向する部分が無いように、第1ガイド軸13に対して退避移動方向Rと反対側に配置されている。
【0083】
コイル94Aおよび磁石95Aにより第1駆動部17が構成され、コイル94Aは、電流が流されたときに、磁石95Aに対して第1方向S1への駆動力を作用させるように構成されている。一方、コイル94Bおよび磁石95Bにより第2駆動部18が構成され、コイル94Bは、電流が流されたときに、磁石95Bに対して第2方向S2への駆動力を作用させるように構成されている。したがって、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置され、撮影光学系7が被写体光を撮像素子3に結像可能な状態において、コイル94Aおよび磁石95Aにより第2レンズ保持枠8、すなわち第2レンズ5を第1ガイド軸13に沿って第1方向S1に移動させることができる。また、コイル94Bおよび磁石95Bにより第1レンズ保持枠28、すなわち第2レンズ5を第2ガイド軸15に沿って第2方向S2に移動させることができる。
【0084】
第2レンズ支持体16の後面には、位置検出センサーとしての光反射センサー96A,96Bが備えられている。また、第2レンズ保持枠8の前面には反射ミラー97が備えられている。光反射センサー96A,96Bおよび反射ミラー97は、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている状態において、光反射センサー96A,96Bと反射ミラー97とが対向するように配置されている。
【0085】
コイル94A,94Bは、不図示の制御部からの像ぶれ補正信号により駆動される。像ぶれ補正信号は、レンズ鏡筒1に振動が加わったときに、撮影光学系7による結像のぶれを抑えるように第2レンズ5を移動させるための信号である。制御部は、レンズ鏡筒1の振動の量、方向、速度等を検出するセンサー(たとえば、加速度センサー、ジャイロセンサー等)および光反射センサー96A,96Bからの検出信号に基づき、像ぶれ補正信号を出力する。像ぶれ補正信号によりコイル94A,94Bが駆動され、第2レンズ5がレンズ鏡筒1に振動に応じて移動することで、撮像素子3に結像する像のブレが抑えられる。
【0086】
(本実施の形態の主な効果)
上述したレンズ鏡筒1においては、第2ガイド軸15は、退避移動機構11および像ぶれ補正機構12に共通に備えられている。このように、退避移動機構11と像ぶれ補正機構12の第2ガイド軸15を共通とすることで、退避移動機構11および像ぶれ補正機構12をレンズ鏡筒1にコンパクトに備えることができる。すなわち、レンズ鏡筒1は非撮影時における小型化が図られ、また、撮影時に像ぶれを補正することができる。
【0087】
また、第2レンズ支持体16には、第2ガイド軸15に平行に配置される回転規制軸64が取り付けられている。この回転規制軸64に対して、第1取付部材14の軸受部72が前後方向で係合することで、第1取付部材14の第2ガイド軸15の周方向への回転が規制(回転止め)されている。また、第2レンズ保持枠8の軸受部93も第2ガイド軸15に対して、前後方向で係合し、第1ガイド軸13の周方向への回転が規制(回転止め)されている。
【0088】
このように第1取付部材14および第2レンズ保持枠8の回転止めを同一の部材、すなわち回転規制軸64に対して行うことで部品点数の削減を行うことができる。また、第1取付部材14および第2レンズ保持枠8は同一の部材(回転規制軸64)にガイドされることで、前後方向についての一体性が向上する。
【0089】
つまり、仮に、第1取付部材14および第2レンズ保持枠8がそれぞれ異なる部材に対して前後方向への回転止めが行われる構成とした場合、該異なる部材の位置精度等に起因して、第1取付部材14および第2レンズ保持枠8が前後方向に相対的に移動してしまう虞がある。第1取付部材14および第2レンズ保持枠8が前後方向に相対的に移動した場合は、第2レンズ保持枠8のガイド軸挿通部92A,92Bと第1ガイド軸13との摺動抵抗が大きくなることがあり、第2レンズ保持枠8の第1方向S1への移動がスムーズに行われず、像ぶれ補正が適性に行われない問題が生じる虞がある。これに対し、本実施の形態のように、第1取付部材14および第2レンズ保持枠8を同一の部材(回転規制軸64)に対して回転規制させることで、上述の問題が生じることを防止できる。
【0090】
なお、図15に示すように、軸受部93を第1取付部材14に設けられるボス部98に対して係合させることで、第2レンズ保持枠8の第1ガイド軸13の周方向への回転を規制(回転止め)する構成としてもよい。このように構成した場合には、第2レンズ保持枠8の第1ガイド軸13の周方向については、第1取付部材14に対して位置決めできる。このため、第1取付部材14と第2レンズ保持枠8との前後方向の相対的な移動をより確実に防止できる。
【0091】
レンズ鏡筒1においては、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている状態において、第1駆動部17および第2駆動部18は、光軸Xに対して退避位置Q2の反対側に配置されている。つまり、磁石95A,95Bは、第2レンズ5の光軸Xに対して退避移動方向Rと反対側に配置されている。このように構成されることで、第2レンズ保持枠8および第2レンズ5が退避移動方向Rへ移動するときに、第2レンズ保持枠8あるいは第2レンズ5が第2レンズ支持体16の外周枠部59に当接するまでの移動量を、第2レンズ支持体16の退避移動方向Rへの大型化を抑えながら大きくとることができる。
【0092】
仮に、磁石95A,95Bを第2レンズ5の光軸Xに対して退避移動方向R側に配置する構成とした場合には、第1取付部材14が退避位置Q2に配置されたときに、第2レンズ保持枠8の磁石95A,95Bを保持する部分が外周枠部59に干渉しないように第2レンズ支持体16を構成する必要があり、第2レンズ支持体16が退避移動方向Rに大型化してしまう。これに対し、磁石95A,95Bを第2レンズ5の光軸Xに対して退避移動方向Rと反対側に配置する構成とした場合には、第2レンズ保持枠8あるいは第2レンズ5よりも退避移動方向R側に突出する部分を少なくすることができる。このため、第2レンズ支持体16の退避移動方向Rへの大型化を抑えることができる。
【0093】
なお、レンズ鏡筒1は、磁石95A,95Bを第2レンズ支持体16の側に備え、コイル94A,94Bを第1取付部材14の側に備える構成としてもよい。この場合には、コイル94A,94Bが、第2レンズ5の光軸Xに対して退避移動方向Rと反対側に配置されることになる。
【0094】
レンズ鏡筒1は、第1取付部材14と第2レンズ支持体16との間に、第1取付部材14を光路内位置Q1に向けて付勢する付勢部材としての付勢バネ73を配置する構成とされている。具体的には、第1取付部材14の退避位置Q2側に、第2レンズ支持体16との間に第1取付部材14を光路内位置Q1に向けて付勢する付勢部材としての付勢バネ73を配置する構成とされている。付勢バネ73は、第1取付部材14に対して退避位置Q2から離間する向きの付勢力を与え、第1取付部材14を退避位置Q2から光路内位置Q1に向けて移動させる。
【0095】
磁石95Aとコイル94Aとの距離、および磁石95Bとコイル94Bとの距離は長くなるほど磁石95A,95Bに対して作用する駆動力は小さくなる。したがって、たとえば、各レンズ21が撮影可能位置P1に配置されているときに、光路内位置Q1よりも退避位置Q2の方が重力方向下側になるような姿勢にレンズ鏡筒1(光学撮像装置2)が配置された場合には、第1取付部材14が光路内位置Q1から退避位置Q2側に大きくずれてしまうことがある。この場合には、磁石95A,95Bに対して像ぶれ補正のための駆動力を十分に作用させることができなくなる虞がある。
【0096】
しかしながら、付勢バネ73は、第1取付部材14が光路内位置Q1に配置されている。そのため、レンズ鏡筒1(光学撮像装置2)が、光路内位置Q1よりも退避位置Q2の方が重力方向下側になるような姿勢に配置されても、付勢バネ73により第1取付部材14の退避移動方向Rへの移動量が規制される。このため、磁石95A,95Bに対して像ぶれ補正のための駆動力を十分に作用させることができなくなる虞を低減できる。つまり、付勢バネ73は、各レンズ21が撮影可能位置P1に配置されているときに、第1取付部材14が像ぶれ補正範囲外に移動してしまうことを防止する移動規制機構として機能する。
【0097】
上述のように、付勢バネ73は、退避位置Q2に配置される第1取付部材14を光路内位置Q1に移動させる機能と、移動規制機構とを併せもつ。つまり、付勢バネ73は、一つの部材で2つの機能を併せ持つことができ、部品点数の削減が図られている。
【0098】
また、付勢バネ73は、第1取付部材14が図10に示す光路内位置Q1に配置された状態で、ほぼ自然長となるように構成されている。このため、第1取付部材14が像ぶれ補正範囲外に移動してしまうことを好適に防止することができる。
【0099】
図10,11に示すように、第2レンズ保持枠8は、第2レンズ5の第2方向S2(退避移動方向R)の一部分については保持部を有していない。すなわち、第2レンズ保持枠8は、第2方向S2(退避移動方向R)側の一部が欠かれた形状となっている。また、第2レンズ保持枠8の第2方向S2(退避移動方向R)の縁部99,99および第2レンズ5の第2方向S2(退避移動方向R)の縁部100については、外周枠部59の内周面101の曲率に一致させられている。
【0100】
そのため、第1取付部材14が退避位置Q2に配置されたときに、第2レンズ保持枠8の縁部99,99および第2レンズ5の縁部100を共に外周枠部59の内周面101に沿わせることができる。つまり、外周枠部59の第2方向S2(退避移動方向R)への大型化を抑えつつ、第2レンズ保持枠8および第2レンズ5の第2方向S2(退避移動方向R)への移動量を大きくすることができる。また、第2レンズ保持枠8の第2方向S2(退避移動方向R)については一部が欠かれた構成であり、加えて、第2レンズ5についても、第2方向S2(退避移動方向R)の一部を外周枠部59の内周面101の曲率に一致させた結果、該一部は欠かれた構成となる。
【0101】
そのため、第2レンズ保持枠8および第2レンズ5は、第1ガイド軸13に対して第2方向S2(退避移動方向R)の側の部分について軽量化が図れることとなる。その結果、第2レンズ保持枠8および第2レンズ5の第1ガイド軸13の周りへの回転モーメントが小さくなり、像ぶれ補正時に移動される第2レンズ5の移動精度と応答性を向上させることができる。
【0102】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることはない。
【0103】
たとえば、第2レンズ5を補整レンズとしたが、第1レンズ4、第3レンズ6を補正レンズとして構成してもよい。また、位置検出センサーとしての光反射センサー96A,96Bの例を示したが、位置検出センサーとして、ホール素子や静電センサーを用いる構成としてもよい。また、付勢バネ73の換わりに、第1取付部材14を退避移動方向Rと反対方向に引くコイルバネを第1取付部材14と第2レンズ支持体16との間に配置してもよい。付勢部材としては、コイルバネの他、空気バネ等の各種のバネ機構を用いることができる。
【0104】
また、補正レンズ取付部材としての第2レンズ保持枠8は、第2レンズ5の周囲を保持する枠体の構成を示したが、枠体を呈する必要はなく、たとえば、第2レンズ5の第1方向S1の両側の2点部分のみを保持したり、あるいは、第2レンズ5の1点部分のみを保持する構成としてもよい。
【0105】
また、第2取付部材としての第2レンズ支持体16も外周枠部59を有する枠体の構成を示したが、枠体とする必要はなく、たとえば、外周枠部59を有しない円板状に構成してもよい。この場合、第2ガイド軸15および回転規制軸64の支持は、外周枠部59に換えて円板状部分に第2ガイド軸15および回転規制軸64を支持するための腕部を設けることが好ましい。
【0106】
また、第1ガイド軸13、第2ガイド軸15、回転規制軸64は、円柱状でなくても、たとえば、断面矩形の角柱状、あるいはレール状であってもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 … レンズ鏡筒
2 … 光学撮像装置
5 … 第2レンズ(補正レンズ)
7 … 撮影光学系
8 … 第2レンズ保持枠(補正レンズ取付部材)
10 … レンズ収納機構
13 … 第1ガイド軸(第1ガイド部材)
14 … 第1取付部材
15 … 第2ガイド軸(第2ガイド部材)
16 … 第2レンズ支持体(第2取付部材)
17 … 第1駆動部
18 … 第2駆動部
64 … 回転規制軸(振れ止め軸)
73 … 付勢バネ(付勢部材)
X … 光軸
S1 … 第1方向
S2 … 第2方向
P1 … 撮影可能位置
P2 … 収納位置
Q1 … 光路内位置
Q2 … 退避位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15