(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099128
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】RC架構と筋かいとの接合構造及び筋かい付RC架構
(51)【国際特許分類】
E04B 1/20 20060101AFI20170313BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20170313BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
E04B1/20 F
E04B1/58 D
E04G23/02 D
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-5215(P2013-5215)
(22)【出願日】2013年1月16日
(65)【公開番号】特開2014-136887(P2014-136887A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年3月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年度大会(東海)学術講演梗概集、建築デザイン発表梗概集 CD−ROM 第681〜682頁 一般社団法人日本建築学会 発行日:平成24年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153616
【氏名又は名称】株式会社巴コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】岩田 衛
(72)【発明者】
【氏名】大家 貴徳
(72)【発明者】
【氏名】秦 康
【審査官】
金高 敏康
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−270319(JP,A)
【文献】
特開昭53−046124(JP,A)
【文献】
特開2003−034988(JP,A)
【文献】
特開2008−156967(JP,A)
【文献】
特開平02−248577(JP,A)
【文献】
特開2001−059270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/20
E04B 1/58
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と梁とで構成されるRC架構と、当該RC架構の前記柱と梁との接合部の入り隅部に筋かい用ガセットプレートを介して接合される筋かいとの接合構造において、前記筋かい用ガセットプレートは、前記柱と梁の内側面に突設されたガセットプレート本体と、前記柱と梁の内側面にそれぞれ埋め込まれた複数の埋め込みプレート及び複数の突起と、前記柱と梁の内側面にそれぞれ柱と梁の内側面ほぼ全幅に、かつ前記ガセットプレート本体及び埋め込みプレートとほぼ直交して添え付けられた複数の直交プレートとから一体に形成され、前記複数の埋め込みプレートは前記RC架構の構面とほぼ平行に埋め込まれ、かつ前記複数の突起は前記埋め込みプレートの両側部に前記RC架構の構面に対して面外方向に埋め込まれ、前記筋かいは座屈拘束ブレースであり、かつ芯材となる鋼板と、当該鋼板を包み込むモルタル充填鋼管と、前記鋼板とモルタルとの接触面に貼付されたアンボンド材とから構成されていることを特徴とするRC架構と筋かいとの接合構造。
【請求項2】
請求項1記載のRC架構と筋かいとの接合構造において、埋め込みプレートに鉄筋を貫通させる複数の貫通孔が形成されていることを特徴とするRC架構と筋かいとの接合構造。
【請求項3】
柱と梁とで構成されるRC架構と、当該RC架構の対向する柱と梁との接合部間に組み込まれた筋かいとからなる筋かい付きRC架構において、前記RC架構の対向する柱と梁との接合部の入り隅部に前記筋かいの端部が筋かい用ガセットプレートを介してそれぞれ接合され、前記筋かい用ガセットプレートは、前記柱と梁の内側面に突設されたガセットプレート本体と、前記柱と梁の内側面にそれぞれ埋め込まれた複数の埋め込みプレート及び複数の突起と、前記柱と梁の内側面にそれぞれ柱と梁の内側面ほぼ全幅に、かつ前記ガセットプレート本体及び埋め込みプレートとほぼ直交して添え付けられた複数の直交プレートとから一体に形成され、前記複数の埋め込みプレートは前記RC架構の構面とほぼ平行に埋め込まれ、かつ前記複数の突起は前記埋め込みプレートの両側部に前記RC架構の構面に対して面外方向に埋め込まれ、前記筋かいは座屈拘束ブレースであり、かつ芯材となる鋼板と、当該鋼板を包み込むモルタル充填鋼管と、前記鋼板とモルタルとの接触面に貼付されたアンボンド材とから構成されていることを特徴とする筋かい付RC架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造(以下「RC」と略す)の柱と梁とで構成されるRC架構と当該RC架構に組み込まれる筋かいとの接合構造及び当該接合構造を備えた筋かい付RC架構に関し、主としてRC架構と鉄骨などの金属系筋かいとからなる筋かい付RC架構に適用され、筋かい接合部の定着性能を著しく向上させることができ、エネルギー吸収能力の高い筋かい付RC架構を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、RCの柱と梁とで構成されるRC架構を備えたRC構造物において、耐震性能を向上させるため柱と梁とで構成されるRC架構の内側にRC壁を一体的に設置することが一般的であった。
【0003】
しかし、この方法は、出入り口や採光、あるいは通風の確保などの観点から、建物としての機能面で制約を受けやく、また、壁に開口を設けた場合、本来の耐震壁としての性能が低下するという問題があった。
【0004】
この問題に対する対策として、RC壁の代わりに鉄骨部材を筋かいとして組み込むことが考えられる。実際、既存RC構造物の耐震補強方法として、RCの柱と梁とで構成されるRC架構の内側に鉄骨枠付き筋かいを設置し、その鉄骨枠を周囲のRC架構に頭付きスタッドやスパイラル鉄筋などにより定着する方法が普及している(特許文献1)。
【0005】
しかし、この方法は、鉄骨枠とRC架構との接合に手間がかかり、また、既存RC構造物の耐震補強を前提にしているので、新築には不向きという問題があった。
【0006】
ところで、鉄骨枠を用いないで筋かいを設置する従来技術として、
図11に示すように、非特許文献1により容易に想到される、RC架構の柱20及び梁21の端部の内面に頭付きスタッド22を用いて筋かい用ガセットプレート23を定着させる方法がある。
【0007】
また、非特許文献2では、
図12に示すように、筋かい用ガセットプレート23を柱梁接合部の内部まで延長し、十字鋼板24またはスタッド(図示せず)で定着させる方法についての実験結果を報告している。
【0008】
さらに、特許文献2には、柱梁接合部のコンクリート内部に柱鉄骨部材が埋設されていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−279695号公報
【特許文献2】特開2005−36598号公報
【特許文献3】特許第4665232号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本建築学会「各種合成構造設計指針・同解説」2010.11
【非特許文献2】三井住友建設技術研究所報告 第2号、2004、p.129〜134
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、
図11に図示するような方法では、頭付きスタッド22が柱20及び梁21の表面に柱20と梁21とで構成されるRC架構の構面と平行に埋め込まれているので、柱梁接合部近傍における柱20もしくは梁21の端部のコンクリートに曲げひび割れ25が発生すると、頭付きスタッド22の軸方向にほぼ一致するため、この定着部の定着性能が低下
(頭付きスタッド22の抜け出し)する恐れがある。定着性能が低下すれば、筋かいの能力を充分発揮できないことになる。
【0012】
一方、
図12に図示するような方法では、筋かい用ガセットプレート23の定着性能は確保し得るが、柱20と梁21の主筋やフープ筋、あばら筋が多数交錯する柱梁接合部内部に筋かい用ガセットプレート23を挿入するため、この納め方が難しく、実際上施工困難であり、また、コンクリートの充填性にも悪影響を及ぼす。
【0013】
また、特許文献2も同様なことがいえる。
【0014】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、RC架構がある程度変形してコンクリートにひび割れが発生しても、柱梁接合部近傍における柱及び梁の端部に筋かい用ガセットプレートの定着性能を充分に確保でき、かつ定着が容易である筋かい接合部と、そのような筋かい接合部を座屈拘束ブレース等のダンパーに適用して、エネルギー吸収性能の高いRC架構と筋かいとの接合構造及び筋かい付RC架構を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、柱と梁とで構成されるRC架構と、当該RC架構の前記柱と梁との接合部の入り隅部に筋かい用ガセットプレートを介して接合される筋かいとの接合構造において、前記筋かい用ガセットプレートは、前記柱と梁の内側面に突設されたガセットプレート本体と、前記柱と梁の内側面にそれぞれ埋め込まれた複数の埋め込みプレート及び複数の突起と、
前記柱と梁の内側面にそれぞれ柱と梁の内側面ほぼ全幅に、かつ前記ガセットプレート本体及び埋め込みプレートとほぼ直交して添え付けられた
複数の直交プレートとから
一体に形成され、前記複数の埋め込みプレートは前記RC架構の構面とほぼ平行に埋め込まれ、かつ前記複数の突起は前記埋め込みプレートの両側部に前記RC架構の構面に対して面外方向に埋め込まれ、
前記筋かいは座屈拘束ブレースであり、かつ芯材となる鋼板と、当該鋼板を包み込むモルタル充填鋼管と、前記鋼板とモルタルとの接触面に貼付されたアンボンド材とから構成されていることを特徴とする。
以上のような手段によるので、前記柱及び梁の端部にそれぞれ埋め込まれた前記埋め込みプレートに突設された複数の突起の軸が、前記柱及び梁の端部コンクリートに発生する曲げひび割れの方向にほぼ直交するため、前記突起が抜け出しにくくなりせん断抵抗力が向上する。
更に、上記のように抜け出しにくくなった前記突起が複数突設された前記埋め込みプレートに取り付き、かつ前記柱と梁の内側面ほぼ全幅に添え付けられた前記直交プレートの存在によって、その直交プレートが添え付けられた範囲の前記柱及び梁の端部コンクリートは、圧縮力を受けても孕み出すことが抑制される。すなわち、前記柱及び梁の端部コンクリートに対する拘束効果が生まれ、前記柱及び梁の端部に剛域に近い状態が形成されるので、柱梁接合部に作用する応力レベルを低減できる効果もある。
【0016】
これにより、エネルギー吸収性能の高い筋かい付RC架構を実現させる手段として、座屈拘束ブレース等のエネルギー吸収性能の高いダンパーを筋かいとして組み込むことが可能になる。
【0017】
また、筋かいとしてRC架構に適した初期剛性を設定することが可能な座屈拘束ブレース(特許文献3)を用いることで、小さい変形からひび割れを生じるRC架構より高性能な制振構造化が可能となる。
【0018】
なお、複数の突起にはスタッド、ボルト、鉄筋等を用いることができるが、これらに代えてリブ状の突起などでもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のような手段によるので、次のような効果がある。
【0020】
(1) RC架構に、耐震壁ではなく筋かいの設置が容易になるので、出入り口や採光、あるいは通風のための有効開口確保など、建物としての機能面での制約を軽減できる。
【0021】
(2) RC架構に枠材を用いないで筋かいを取り付けることが可能になるので、現場施工の容易性や経済的な面でも有利である。
【0022】
(3) 筋かい用ガセットプレートの定着部の定着安定性能が高いので、RC架構の変形が大きくなっても筋かいへの応力伝達が確実になり、筋かいの性能を充分に発揮させることが可能となる。
【0023】
(4) 筋かい付きRC架構の耐力は、RC架構耐力と筋かい耐力の単純累加となるので、耐力評価が容易である。
【0024】
(5) 本発明の存在により、柱及び梁の端部が剛域に近い状態になるので、RC架構の大変形時の耐力劣化が緩和される。
【0025】
(6) 上記(3)〜(5)の効果により、筋かいをRC架構に適した座屈拘束ブレース等のダンパーを用いることで、小さい変形からひび割れを生じるRC架構のより高性能な制振構造化が容易になる。
【0026】
(7) 上記(6)において、好適には特許文献3に示されるRC架構に適した座屈拘束ブレースを用いることで、小さい変形からひび割れを生じるRC架構のより高性能な制振構造化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明を適用した場合のRC架構の斜視図である。
【
図2】本発明によるRC架構の筋かいとの接合部を示す斜視図である。
【
図3】本発明によるRC架構の筋かいとの接合部を示す側面図である。
【
図4】本発明によるRC架構の筋かいとの接合部を示す側面図である。
【
図5】本発明による接合部の性能を確認した実験の試験体の全体図である。
【
図7】試験体をセットした状態の加力装置を示す図である。
【
図8】(a)、(b)は、試験体の水平荷重〜層間変位関係図である。
【
図9】層間変位±20mmまでの試験体の水平荷重〜層間変位関係をスケルトン(骨格曲線)で表示した図である。
【
図10】(a)、(b)は、層間変形角約±1/100の時の試験体のひび割れ状態を示す図である。
【
図11】RC架構と筋かいとの接合部の従来例を示す図である。
【
図12】RC架構と筋かいとの接合部の従来例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1〜
図4は、本発明の一実施形態を示し、
図1はRCの柱1と梁2とによって構成され、かつ金属系の筋かい3を組み込むことにより構成されたRC架構4を示す斜視図である。
【0029】
また、
図2、3、4はRC架構4の筋かい3との接合部を示し、
図2と
図3は筋かい3の上端側を接合する筋かい接合部(以下「筋かい接合部A」)を示し、
図2はその斜視図、
図3は側面図である。そして、
図4は筋かい3の下端側を接合する筋かい接合部(以下「筋かい接合部B」)を示す側面図である。
【0030】
図において、筋かい接合部Aと筋かい接合部Bに筋かい用ガセットプレート5がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
筋かい用ガセットプレート5は、柱1と梁2との接合部の入り隅部 (内側)に突設されたガセットプレート本体6と、柱梁接合部近傍における柱1及び梁2の端部のコンクリート内にそれぞれ埋め込まれた複数の埋め込みプレート7、7及び複数の突起8と、柱1及び梁2の内側面にそれぞれ設置された複数の直交プレート9、9とから一体に構成されている。
【0032】
埋め込みプレート7は、柱1と梁2に配筋された主筋や帯筋、あるいはあばら筋が多数錯綜する柱梁接合部を避け、その近傍の柱1と梁2の端部にそれぞれその内部まで延長して埋め込まれている。
【0033】
また、埋め込みプレート7には複数の貫通孔7aが直交プレート9に近接して形成されている。そして、柱1内に埋め込まれた埋め込みプレート7の各貫通孔7aに柱1のフープ筋(図省略)が貫通され、梁2内に埋め込まれた埋め込みプレート7の各貫通孔7aには梁2のあばら筋(図省略)が貫通されている。
【0034】
さらに、ガセットプレート本体6と埋め込みプレート7、7は、RC架構4の構面とほぼ平行に形成され、直交プレート9、9はRC架構4の構面に対して略直角に、すなわちガセットプレート本体6及び埋め込みプレート7、7とほぼ直角に形成されている。また、複数の突起8、8も直交プレート9、9と同様にRC架構4の構面に対して略直角に、すなわちガセットプレート本体6及び埋め込みプレート7の両側にほぼ直角に突設されている。
【0035】
なお、複数の突起8には鉄筋やスタッドボルト等が用いられ、筋かい3の耐力に応じて最適な数量が突設されている。また、直交プレート9、9は、柱1と梁2のコンクリートを打設する際の捨て型枠を兼ねるように形成されている。さらに、ガセットプレート本体6と各直交プレート9、9との接合部(入り隅部)には複数の補強リブ10が一体に取り付けられている。
【0036】
このような構成において、RC架構4に地震水平力が作用して柱1が傾斜すると、地震水平力は柱1及び梁2の端部に埋め込まれたスタッド等の突起8から埋め込みプレート7を介してガセットプレート本体6に伝わり、さらに筋かい3に伝達されることになる。
【0037】
この時、柱1及び梁2の端部に埋め込まれたスタッド等の突起8にはせん断力が作用するが、埋め込みプレート7を貫通する帯筋とあばら筋も、ある程度のせん断力を負担することにより定着性が向上する。
【0038】
また、スタッド等の突起8の軸は柱1及び梁2に発生する曲げひび割れの方向と直交するため、従来例(
図11参照)の頭付きスタッドのみによる定着法よりも定着安定性が高い
(頭付きスタッドが抜け出しにくい)といえる。
【0039】
さらに、直交プレート9、9は、柱梁接合部の入り隅部における柱1及び梁2の内側面(内法面)に添え付けられ、かつガセットプレート本体6と各直交プレート9との接合部(入り隅部)に複数の補強リブ10が取り付けられていることで、直交プレート9が取り付けられた柱1及び梁2のコンクリートが圧縮力を受けても孕み出すことを抑制することができる。
【0040】
すなわち、柱1及び梁2の端部コンクリートに対する拘束効果により、柱1及び梁2の端部に剛域に近い状態が形成されるので、柱梁接合部に作用する応力レベルを低減できる効果もある。
【0041】
図5は、本発明によるRC架構4と筋かい3との接合部の性能を確認した実験の試験体を示す全体図であり、柱1Aと梁2Aとで構成されるRC架構4Aの中に筋かいとして座屈拘束ブレース11を組み込むことにより構成されている。
【0042】
座屈拘束ブレース11は、
図6に示すように芯材となる鋼板11aをモルタル充填鋼管11bによって包み込み、かつ鋼板11aとモルタル11cとの接触面にアンボンド材(図省略)を貼付して付着を無くすことにより構成されており、圧縮軸力に対しても座屈せず、引張り軸力が作用した場合と同等の耐力、変形能力を有する筋かいとして構成されている。また、このように優れた性能を有していることにより制振部材としてもよく使用されている。
【0043】
以下に、実験概要と結果を述べる。
図7は、試験体をセットした状態の加力装置であり、水平アクチュエータ12により層間変形角で±1/1600〜±1/25まで、正負交番漸増繰り返し載荷を実施した。
【0044】
表1に試験体の材料特性、表2に試験体のRC部分の断面リストをそれぞれ示す。試験体は、RC架構4Aのみの「試験体1」と座屈拘束ブース(BRB)11のある「試験体2」)の各一体である。
【0045】
図8に、両試験体の水平荷重〜層間変位関係図を示す。
図9は、層間変位±20mmまでの両試験体の水平荷重〜層間変位関係をスケルトン(骨格曲線)で表示したもので、同図には、座屈拘束ブレース(BRB)11の単独の水平荷重〜層間変位関係(破線イ)も併せて表示している。
図10(a)、(b)は、層間変形角で約±1/100の時の両試験体のひび割れ状態図である。
【0048】
図8より、RC架構4Aのみ(試験体I)では層間変位±20mm以前に耐力低下傾向が見られるが、座屈拘束ブレース(BRB)11付き(試験体2)ではその傾向は全くなく、更なる大変形に対しても安定したループを描いていることが分かる。
【0049】
図9より、RC架構4のみ(試験体1)(一点鎖線ロ)と座屈拘束ブレース(BRB)11単独(破線イ)の水平荷重〜層間変位関係を単純に足し合わせた水平荷重曲線(点線ニ)は、座屈拘束ブレース(BRB)11付き(試験体2)の実線とほぼ一致していることが分かる。
【0050】
これらのことから、RC架構4Aに座屈拘束ブレース(BRB)11を組み込むと、その耐力は両者の耐力を単純累加したものとなり、かつ大変形時のRC架構の耐力劣化も改善されることが分かる。すなわち、本発明による筋かい接合部は、RC架構4Aと座屈拘束ブレース(BRB)11との応力伝達を充分に果たすことが確かめられた。
【0051】
図10(a)、(b)に図示するRC架構4Aのひび割れ状況では、特に梁2A端部に注目すると、RC架構4Aのみ(試験体1)では曲げひび割れが多数発生しているが、座屈拘束ブレース11付き(試験体2)では、ひび割れは梁2Aの端部からは少し離れて、直交鋼板の縁端付近から発生していることが分かる。
【0052】
すなわち、本発明の筋かい接合部Aの存在により梁2Aの端部の曲げ変形が拘束され、剛域に近い状態が形成されたためと考えられる。
【0053】
曲げひび割れ位置(塑性ヒンジ)が梁の中央側に寄ることは、梁2Aの断面応力が減少することであり、好ましい。この傾向は梁2Aほどではないが、柱1Aについても同様のことがいえる。
【0054】
本発明の実施形態は以上の通りであるが、突起8としてせん断力に抵抗できるものであれば、スタッド、ボルトあるいは鉄筋に代えて、リブ状の突起などでもよい。また、筋かい3として座屈拘束ブレース11を例示したが、筋かいの耐力以上の耐力で本発明の筋かい接合部A、Bを設計すれば、通常の各種筋かい(非金属系含む)やオイルダンパー等に対しても適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、筋かい接合部の定着性能を著しく向上させることができ、エネルギー吸収能力の高い筋かい付RC架構を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 柱
2 梁
3 筋かい
4 RC架構
5 筋かい用ガセットプレート
6 ガセットプレート本体
7 埋め込みプレート
7a 貫通孔
8 突起
9 直交プレート
10 補強リブ
11 座屈拘束ブレース
11a 芯材となる鋼板
11b モルタル充填鋼管
11c モルタル
12 水平アクチュエータ