(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0024】
まず、本実施形態の構成を、
図1を参照しながら説明する。以下では、「パワーウインドウ」を「PW」と表記する。
【0025】
PW制御システム100は、自動車に搭載され、PW制御装置1、遠隔操作機2、およびその他の構成要素3〜9を含んでいる。
【0026】
PW制御装置1は、モータ3を駆動して、PW開閉機構4を作動させ、車両のドアに設けられた窓5の窓ガラス6を開閉動作させる。PW制御装置1は、本発明の「開閉体制御装置」の一例である。窓5および窓ガラス6は、本発明の「開閉体」の一例である。
【0027】
PW制御装置1には、制御部11、記憶部12、駆動部14、パルス検出部15、PW操作部16、受信部17、エンジン状態検出部18、およびドア状態検出部19が備わっている。
【0028】
制御部11は、マイクロコンピュータから成り、窓5の開閉を制御する。制御部11には、負荷検出部11a、挟み込み判定部11b、および閾値変更部11cが設けられている。記憶部12は、ROMやRAMなどのメモリから成る。
【0029】
駆動部14は、モータ3を正転または逆転で駆動させる回路から成る。ロータリエンコーダ7は、モータ3の回転に同期したパルスを出力する。パルス検出部15は、ロータリエンコーダ7から出力されたパルスを検出する回路から成る。
【0030】
PW操作部16は、窓5の開閉を操作するためのスイッチから成り、車内に設けられている。PW操作部16は、利用者により操作されて、その操作に応じた信号を出力する。制御部11は、PW操作部16から出力される信号に基づいて、PW操作部16の操作状態を検出する。PW操作部16は、本発明の「操作手段」の一例である。
【0031】
受信部17は、遠隔操作機2から送信された信号を受信する回路から成る。受信部17は、本発明の「受信手段」の一例である。
【0032】
IG−SW(イグニッションスイッチ)8は、運転者により操作されて、オンまたはオフの信号を出力する。エンジン状態検出部18は、IG−SW8が出力するオン・オフ信号に基づいて、エンジンが駆動または停止の状態にあることを検出する。エンジン状態検出部18は、本発明の「エンジン状態検出手段」の一例である。
【0033】
ドア開閉センサ9は、各ドアに設けられていて、ドアの開閉状態に応じてオンまたはオフの信号を出力する。ドア状態検出部19は、ドア開閉センサ9が出力するオン・オフ信号に基づいて、各ドアの開閉状態を検出する。ドア状態検出部19は、本発明の「ドア状態検出手段」の一例である。
【0034】
遠隔操作機2は、たとえばパッシブエントリーシステムのFOBキーまたは高機能携帯電話機(たとえばスマートフォン)から成り、利用者により携帯される。遠隔操作機2には、制御部21、PW操作部22、および送信部23が備わっている。
【0035】
制御部21は、マイクロコンピュータから成る。PW操作部22は、窓5の開閉を操作するためのスイッチまたはキーから成る。送信部23は、PW制御装置1に信号を送信する回路から成る。
【0036】
利用者がPW操作部22を開閉操作すると、その操作状態に応じた開閉指令を制御部21が生成する。そして、その開閉指令は、送信部23により送信され、PW制御装置1の受信部17により受信される。これにより、PW制御装置1の制御部11は、遠隔操作機2のPW操作部22が開閉操作されたことを検出する。
【0037】
また、制御部11は、受信部17により受信した遠隔操作機2からの開閉指令、またはPW操作部16の開閉操作状態に応じて、駆動部14を制御して、モータ3を正転または逆転させる。これにより、PW開閉機構4が作動して、窓ガラス6が下降または上昇し、窓5が開閉される。
【0038】
そのとき、制御部11は、パルス検出部15により検出されたパルスに基づいて、窓ガラス6の開閉移動量やモータ3の回転速度を算出する。そして、制御部11は、その算出結果に基づいて、駆動部14によりモータ3の回転を制御する。負荷検出部11aは、モータ3の回転速度に基づいて、モータ3の負荷を検出する。制御部11は、本発明の「制御手段」の一例である。負荷検出部11aは、本発明の「負荷検出手段」の一例である。
【0039】
遠隔操作機2からの閉指令またはPW操作部16の閉操作に応じて、窓ガラス6を閉動作(上昇)させる際に、挟み込み判定部11bは、負荷検出部11aが検出したモータ3の負荷の変化量を算出する。そして、挟み込み判定部11bは、モータ3の負荷の変化量と所定の閾値とを比較するなどして、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する。挟み込み判定部11bは、本発明の「判定手段」の一例である。
【0040】
挟み込み判定用の閾値には、通常値と敏感値が含まれていて、これらは記憶部12に記憶されている。
【0041】
通常値は、たとえば、ドアが閉じた時の衝撃や、自動車の走行やエンジンの駆動といった振動により、モータ3の負荷が影響を受けても、挟み込み判定部11bにより窓5に異物を挟み込んだと誤検出しないような値に設定されている。
【0042】
敏感値は、通常値より敏感に窓5への異物の挟み込みを検出する値に設定されている。つまり、通常値より敏感値の方が、挟み込みを検出する感度が高くなっている。言い換えれば、通常値より敏感値の方が、モータ3の小さな負荷で挟み込みを検出する。
【0043】
閾値変更部11cは、各値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定することで、挟み込み判定用の閾値を変更する。閾値変更部11cは、本発明の「変更手段」の一例である。
【0044】
次に、第1実施形態のPW制御装置1の動作を、
図2を参照しながら説明する。本動作は、窓5を閉じる場合の動作である。
【0045】
まず、閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値として通常値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定する(ステップS1)。次に、エンジンが停止状態か否かを検出する(ステップS2)。IG−SW8がオン状態にあれば、エンジンが停止状態にない(駆動状態である)ことをエンジン状態検出部18により検出する(ステップS2:NO)。そして、制御部11は、車内のPW操作部16で窓5の閉操作が有ったか否かを判定する(ステップS4)。
【0046】
一方、IG−SW8がオフ状態にあれば、エンジンが停止状態にあることをエンジン状態検出部18により検出する(ステップS2:YES)。そして、制御部11は、遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信したか否かを判定する(ステップS3)。ここで、所定時間内に遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信部17により受信しなければ(ステップS3:NO)、制御部11は、車内のPW操作部16で窓5の閉操作が有ったか否かを判定する(ステップS4)。
【0047】
利用者が車内のPW操作部16を閉操作すると、制御部11は、PW操作部16で窓5の閉操作が有ったと判定し(ステップS4:YES)、駆動部14によりモータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS5)。
【0048】
窓ガラス6の閉動作中、挟み込み判定部11bが、負荷検出部11aにより検出されたモータ3の負荷の変化量と、閾値(この場合「通常値」)とを比較して、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する(ステップS6)。
【0049】
モータ3の負荷の変化量が閾値より小さければ、挟み込み判定部11bは挟み込みが無いと判定する(ステップS6:NO)。この場合、制御部11は、内部操作(PW操作部16)の閉動作条件から外れたか否かを判定する(ステップS7)。
【0050】
たとえば、ステップS4で行われたPW操作部16のマニュアル閉操作が、ステップS7まで継続されている場合や、PW操作部16が、ステップS4でオート閉操作されてから、ステップS7まで操作されていない場合は、ステップS7でPW操作部16による閉操作が有効になっている。このことに加えて、窓ガラス6の移動量から、窓ガラス6が全閉位置に到達していないことを検出すると、制御部11は、内部操作の閉動作条件から外れていないと判定する(ステップS7:NO)。
【0051】
このように、内部操作の閉動作条件から外れていなければ、制御部11により窓ガラス6の閉動作が継続され、挟み込み判定部11bにより再び挟み込みの判定が行われる(ステップS6)。
【0052】
一方、たとえば、ステップS4で行われたPW操作部16のマニュアル閉操作が、ステップS7で解除されている場合や、PW操作部16が、ステップS4でオート閉操作されてから、ステップS7までに他の開閉操作状態に操作された場合は、ステップS7でPW操作部16による閉操作が無効になっている。このため、制御部11は、内部操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS7:YES)。また、たとえば、窓ガラス6が全閉位置に到達した場合も、制御部11は、内部操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS7:YES)。
【0053】
このように、内部操作の閉動作条件から外れると、制御部11は、モータ3の駆動を停止して、窓ガラス6の閉動作を停止する(ステップS8)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0054】
また、窓ガラス6の閉動作中に、モータ3の負荷の変化量が閾値以上になれば、挟み込み判定部11bは、挟み込みが有ると判定する(ステップS6:YES)。この場合、制御部11は、モータ3の駆動を停止して、窓ガラス6の閉動作を停止した後、モータ3を反転させて、窓ガラス6の開動作を所定量実行する(ステップS9)。他の例として、窓ガラス6の閉動作を停止させるだけでもよい。ステップS9の後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0055】
一方、エンジンの停止状態で(ステップS2:YES)、利用者が遠隔操作機2のPW操作部22を閉操作すると、遠隔操作機2から窓5の閉指令が送信される。この窓5の閉指令を受信部17により受信すると(ステップS3:YES)、閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値として敏感値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定する(ステップS10)。
【0056】
そして、制御部11が、駆動部14によりモータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS11)。また、挟み込み判定部11bが、負荷検出部11aにより検出されたモータ3の負荷の変化量と、閾値(この場合「敏感値」)とを比較して、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する(ステップS12)。
【0057】
モータ3の負荷の変化量が閾値より小さければ、挟み込み判定部11bは挟み込みが無いと判定する(ステップS12:NO)。この場合、制御部11は、遠隔操作(遠隔操作機2)の閉動作条件から外れたか否かを判定する(ステップS13)。
【0058】
たとえば、遠隔操作機2のPW操作部22がマニュアル閉操作されて、ステップS3からステップS13までの間に、遠隔操作機2から窓5の閉指令を連続または断続で受信部17により受信している場合は、ステップS13で遠隔操作機2の閉指令が有効になっている。また、たとえば、PW操作部22がオート閉操作されて、ステップS3で遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信部17により受信してから、ステップS13まで遠隔操作機2より他の開閉指令を受信していない場合も、ステップS13で遠隔操作機2の閉指令が有効になっている。
【0059】
このように、遠隔操作機2の閉指令が有効であることに加えて、エンジンが停止状態にあることをエンジン状態検出部18により検出し、かつ窓ガラス6が全閉位置に到達していないことを検出すると、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れていないと判定する(ステップS13:NO)。そして、制御部11により窓ガラス6の閉動作が継続され、挟み込み判定部11bにより再び挟み込みの判定が行われる(ステップS12)。
【0060】
一方、たとえば、遠隔操作機2のPW操作部22がマニュアル閉操作されて、ステップS3で遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信した後、ステップS13までに該閉指令を連続または断続で受信部17により受信しなくなった場合は、ステップS13で遠隔操作機2の閉指令が無効になっている。
【0061】
また、たとえば、PW操作部22がオート閉操作されて、ステップS3で遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信部17により受信した後、ステップS13までに遠隔操作機2から他の開閉指令を受信した場合も、ステップS13で遠隔操作機2の閉指令が無効になっている。
【0062】
このように、遠隔操作機2の閉指令が無効であると、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS13:YES)。
【0063】
また、たとえば、エンジンが駆動状態にあることをエンジン状態検出部18により検出した場合や、窓ガラス6が全閉位置に到達したことを検出した場合も、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS13:YES)。
【0064】
このように、遠隔操作の閉動作条件から外れると、制御部11は、モータ3の駆動を停止して、窓ガラス6の閉動作を停止する(ステップS14)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0065】
他方、ステップS12で、モータ3の負荷の変化量が閾値以上であれば、挟み込み判定部11bは、挟み込みが有ると判定する(ステップS12:YES)。この場合、制御部11は、モータ3の駆動を停止して、窓ガラス6の閉動作を停止した後、モータ3を反転させて、窓ガラス6の開動作を所定量実行する(ステップS15)。他の例として、窓ガラス6の閉動作を停止させるだけでもよく、窓ガラス6を全開位置まで開動作させてもよい。
【0066】
その後、所定時間内に車内のPW操作部16または遠隔操作機2のPW操作部22で窓5の開閉操作が行われると(ステップS16:YES)、ステップS1に戻って、各処理が実行される。または、PW操作部16、22の操作状態に応じて、窓ガラス6が開閉動作される。
【0067】
一方、ステップS15の後、PW操作部22、16で開閉操作されることなく、所定時間が経過すると(ステップS16:NO)、制御部11が自動的にモータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS17)。また、挟み込み判定部11bが、負荷検出部11aにより検出されたモータ3の負荷の変化量と、閾値とを比較して、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する(ステップS18)。
【0068】
そして、挟み込み判定部11bにより、挟み込みが有ると判定されると(ステップS18:YES)、制御部11が、モータ3を制御して、窓ガラス6の閉動作を停止した後、窓ガラス6の開動作を所定量実行する(ステップS19)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0069】
また、挟み込み判定部11bにより、挟み込みが無いと判定されると(ステップS18:NO)、制御部11が、遠隔操作の閉動作条件から外れたか否かを判定する(ステップS20)。
【0070】
このとき、たとえば、PW操作部22、16で開閉操作がされておらず、エンジンが停止状態にあり、かつ窓ガラス6が全閉位置に到達していなければ、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れていないと判定する(ステップS20:NO)。この場合、窓ガラス6の閉動作が継続され、挟み込み判定部11bにより再び挟み込みの判定が行われる(ステップS18)。
【0071】
対して、たとえば、いずれかのPW操作部22、16で開閉操作がされるか、エンジンが駆動状態になる、または窓ガラス6が全閉位置に到達すると、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS20:YES)。この場合、モータ3の駆動が停止されて、窓ガラス6の閉動作が停止される(ステップS21)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0072】
上記第1実施形態によると、自動車のエンジンが停止した状態で、遠隔操作機2からの閉指令により、窓5の窓ガラス6を閉動作させる場合に、挟み込みの判定用の閾値が通常値から敏感値に変更される(ステップS10)。このため、窓5に異物が挟み込まれても、モータ3の負荷の変化量と敏感値との比較により、該挟み込みを素早く検出することができる。言い換えると、窓5への異物の挟み込みにより、通常よりも軽い力がモータ3に加わることで、該挟み込みを検出することができる。よって、遠隔操作によりパワーウインドウの窓ガラス6を閉動作させる場合に、窓5への異物の挟み込みの検出精度を向上させることが可能となる。
【0073】
また、エンジンの停止時は、自動車が駐車状態にあるため、走行やエンジンの駆動による振動などの外乱が作用することは無い。よって、エンジンが停止状態で、挟み込みの判定用の閾値を敏感値に変更しても、走行やエンジンの駆動による振動などの外乱により、挟み込みを誤検出することなく、精度の高い挟み込み検出を行うことが可能となる。
【0074】
また、遠隔操作による窓ガラス6の閉動作中に、挟み込みを検出して、窓ガラス6を一旦停止してから開動作させた後、車内のPW操作部16や遠隔操作機2のPW操作部22で開閉操作がされることなく、所定時間が経過すると、窓ガラス6を自動的に閉動作させる(ステップS17)。このため、遠隔操作により窓5を閉め切れなかったことに、利用者が気付かなくても、窓5が開状態で放置されるのを抑制することができる。
【0075】
さらに、窓ガラス6を自動的に閉動作させる間も、モータ3の負荷の変化量と閾値とを比較して、挟み込みの有無を判定するので(ステップS18)、窓5に異物が挟み込まれても、該挟み込みを確実に検出することができる。
【0076】
次に、第2実施形態のPW制御装置1の動作を、
図3を参照しながら説明する。本動作も、窓5を閉じる場合の動作である。
【0077】
閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値として通常値を設定した(ステップS1)後、制御部11は、エンジンの状態と各ドアの状態を確認する。そして、IG−SW8とエンジン状態検出部18によりエンジンが停止状態にないことを検出した場合、またはドア開閉センサ9とドア状態検出部19によりいずれかのドアが閉状態にないことを検出した場合(ステップS2a:NO)、制御部11は、車内のPW操作部16で窓5の閉操作が有ったか否かを判定する(ステップS4)。
【0078】
一方、エンジンが停止状態にあることを検出し、かつ全ドアが閉状態にあることを検出した場合(ステップS2a:YES)、制御部11は、遠隔操作機2から窓5の閉指令を受信したか否かを判定する(ステップS3)。そして、遠隔操作機2からの窓5の閉指令を受信部17により受信すると(ステップS3:YES)、閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値として敏感値を設定する(ステップS10)。
【0079】
それから、制御部11が、モータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS11)。また、挟み込み判定部11bが、モータ3の負荷の変化量と閾値とを比較して、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する(ステップS12)。
【0080】
そして、挟み込み判定部11bにより挟み込みが無いと判定されると(ステップS12:NO)、制御部11は、遠隔操作の閉動作条件から外れたか否かを判定する(ステップS13a)。この場合の遠隔操作の閉動作条件には、遠隔操作機2の閉指令が有効であること、エンジンが停止状態にあること、および窓ガラス6が全閉位置に到達していないことに加えて、全ドアが閉状態にあることが含まれる。
【0081】
そのため、遠隔操作機2の閉指令が有効であり、かつエンジンが停止状態にあり、かつ窓ガラス6が全閉位置に到達しておらず、かつ全ドアが閉状態にある場合は、制御部11が、遠隔操作の閉動作条件から外れていないと判定する(ステップS13a:NO)。そして、制御部11により窓ガラス6の閉動作が継続され、挟み込み判定部11bにより再び挟み込みの判定が行われる(ステップS12)。
【0082】
一方、遠隔操作機2の閉指令が無効である場合、エンジンが駆動状態にある場合、窓ガラス6が全閉位置に到達している場合、またはいずれかのドアが閉状態にある場合は、制御部11が、遠隔操作の閉動作条件から外れたと判定する(ステップS13a:YES)。そして、制御部11は、モータ3の駆動を停止して、窓ガラス6の閉動作を停止する(ステップS14)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0083】
他方、ステップS12で、挟み込み判定部11bにより、挟み込みが有ると判定されると(ステップS12:YES)、制御部11は、モータ3を制御して、窓ガラス6の閉動作を停止した後、窓ガラス6の開動作を所定量実行する(ステップS15)。
【0084】
その後、車内のPW操作部16や遠隔操作機2のPW操作部22で開閉操作されることなく、所定時間が経過する(ステップS16:NO)。すると、制御部11は、たとえば記憶部12に設けた自動閉動作カウンタを参照して、窓ガラス6の自動閉動作(後述のステップS24の処理)を所定回数実行したか否かを判定する(ステップS22)。
【0085】
ここで、制御部11が、窓ガラス6の自動閉動作を所定回数実行していないと判定すると(ステップS22:NO)、閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値として敏感値より緩い緩和値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定する(ステップS23)。この緩和値は、通常値と敏感値の中間にある値であってもよいし、通常値と同値であってもよいし、通常値より鈍感に窓5への異物の挟み込みを検出する値であってもよい。
【0086】
挟み込み判定用の閾値が変更されると、制御部11は自動的にモータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS24)。また、制御部11は、たとえば記憶部12に設けた自動閉動作カウンタを1つカウントアップする(ステップS25)。
【0087】
この後、再び挟み込み判定部11bが、負荷検出部11aにより検出されたモータ3の負荷の変化量と、閾値(この場合「緩和値」)とを比較して、窓5への異物の挟み込みの有無を判定する(ステップS12)。
【0088】
そして、ステップS12、S15〜S17、およびS22〜S25の順番で、各処理が所定回数繰り返えされると、次回のステップS22で制御部11が、自動閉動作カウンタを参照して、窓ガラス6の自動閉動作を所定回数実行したと判定する(ステップS22:YES)。そして、制御部11は、自動閉動作カウンタをリセット(初期化)する(ステップS26)。この後、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0089】
上記第2実施形態によると、エンジンの停止状態でかつ全ドアの閉状態で、遠隔操作により窓ガラス6を閉動作させる場合に、挟み込みの判定用の閾値が通常値から敏感値に変更される(ステップS10)。このため、窓5への異物の挟み込みを素早く検出して、挟み込みの検出精度を向上させることができる。
【0090】
また、全ドアが閉状態にあるため、ドアが閉じた時の衝撃などの外乱が作用することは無い。このため、全ドアが閉状態で、挟み込みの判定用の閾値を敏感値に変更しても、ドアが閉じた時の衝撃などの外乱により、挟み込みを誤検出することなく、精度の高い挟み込み検出を行うことができる。
【0091】
また、遠隔操作による窓ガラス6の閉動作中に、挟み込みを検出して、窓ガラス6を停止後に開動作させてから、車内のPW操作部16や遠隔操作機2のPW操作部22で開閉操作がされずに、所定時間が経過すると、窓ガラス6を自動的に閉動作させる処理(ステップS24)を所定回数繰り返す(ステップS22)。このため、窓5が開状態で放置されるのを抑制することができる。
【0092】
また、窓ガラス6を自動的に閉動作させる際に、挟み込み判定用の閾値を敏感値より緩い緩和値に変更する(ステップS23)。このため、遠隔操作により窓ガラス6を閉動作させるときよりも、挟み込みが有ったと判定し難くし、窓5を閉め切り易くすることができる。
【0093】
さらに、窓ガラス6を自動的に閉動作させる回数を所定回数に制限しているので、エンジン停止中の消費電力をある程度に抑えて、バッテリーが上がるのを防止することができる。
【0094】
次に、第3実施形態のPW制御装置1の動作を、
図4を参照しながら説明する。本動作も、窓5を閉じる場合の動作である。
【0095】
前述したようにステップS1〜S11を実行した後、挟み込みが有ると判定した場合(ステップS12:NO)、窓ガラス6の閉動作を停止した後、窓ガラス6の開動作を所定量実行する(ステップS15)。
【0096】
その後、PW操作部22、16で開閉操作が行われることなく、所定時間が経過すると(ステップS16:NO)、制御部11が、挟み込み判定部11bに設定されている挟み込み判定用の閾値が通常値と同一であるか否かを判定する(ステップS27)。ここで、挟み込み判定用の閾値が通常値以外の値であれば(ステップS27:NO)、閾値変更部11cが、挟み込み判定用の閾値を現在値より1段階緩めて、挟み込み判定部11bに設定する(ステップS28)。
【0097】
具体的には、たとえば、挟み込み判定用の閾値として、敏感値から通常値に到るまでの段階的に緩めた各値を、予め記憶部12に記憶させておく。そして、ステップS28で閾値変更部11cが、現在値の次に緩い値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定する。他の例として、ステップS28で閾値変更部11cが、現在値に所定値を加算するなどして、現在値より1段階緩い値を算出してもよい。
【0098】
挟み込み判定用の閾値が変更されると、制御部11は自動的にモータ3を駆動して、窓ガラス6の閉動作を実行する(ステップS24)。この後、モータ3の負荷の変化量と変更後の閾値とが比較されて、挟み込みの有無が判定される(ステップS12)。
【0099】
そして、ステップS12からステップS15およびS16を経て、再びステップS27で、挟み込み判定用の閾値が通常値と同一でなければ(ステップS27:NO)、閾値変更部11cが、現在値より1段階緩い値を記憶部12から読み出して、挟み込み判定部11bに設定する(ステップS28)。それから、再び窓ガラス6の自動閉動作が実行され(ステップS24)、挟み込みの有無が判定される(ステップS12)。
【0100】
この後、ステップS12、S15、S16、S27、S28、およびS24の順番で、各処理が所定回数繰り返えされて、挟み込み判定用の閾値が通常値と同一になると(ステップS27:YES)、ステップS1から再び各処理が実行される。
【0101】
上記第3実施形態によると、エンジンの停止状態でかつ全ドアの閉状態で、遠隔操作により窓ガラス6を閉動作させる場合に、挟み込みの判定用の閾値が敏感値に変更されるので(ステップS10)、挟み込みを素早く検出して、該検出精度を向上させることができる。また、挟み込みを検出して、窓ガラス6を開動作させた後、PW操作部16、22で開閉操作されずに、所定時間が経過すると、窓ガラス6を自動的に閉動作させるので(ステップS24)、窓5が開状態で放置されるのを抑制することができる。
【0102】
また、窓ガラス6を自動的に閉動作させる毎に、挟み込み判定用の閾値を敏感値から通常値まで、段階的に緩くなるように変更するので(ステップS28)、挟み込みが有ったと判定し難くし、窓5を閉め切り易くすることができる。さらに、その変更後の挟み込み判定用の閾値が通常値と同一になったことを確認すると、窓ガラス6を自動的に閉動作するのを止めるので(ステップS27)、該自動閉動作の実行回数を制限して、バッテリーが上がるのを防止することができる。
【0103】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、
図3および
図4の実施形態では、挟み込み判定用の閾値を変更してから、窓ガラス6の閉動作を実行した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、窓ガラス6の閉動作を開始するのと同時または開始してから、挟み込み判定用の閾値を変更するようにしてもよい。
【0104】
また、
図2の実施形態では、エンジンの停止状態で遠隔操作機2から閉指令を受信したことを、閾値を敏感値に変更する条件としたが、本発明はこれのみに限定するものではない。
図3および
図4に示すように、エンジンの停止状態でかつ全ドアの閉状態で遠隔操作機2から閉指令を受信したことを、
図2の実施形態で閾値を敏感値に変更する条件としてもよい。また逆に、
図2に示すように、エンジンの停止状態で遠隔操作機2から閉指令を受信したことを、
図3および
図4の実施形態で閾値を敏感値に変更する条件としてもよい。
【0105】
また、以上の実施形態では、IG−SW8のオン・オフ状態に基づいて、エンジンの駆動・停止状態を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、エンジンの駆動による振動を検出するセンサからの出力信号や、エンジンの駆動・停止を制御するECU(電子制御装置)からの出力信号などに基づいて、エンジンの駆動・停止状態を検出してもよい。
【0106】
また、以上の実施形態では、ドア開閉センサ9からの出力信号に基づいて、ドアの閉状態を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、ドアの施錠検出用のセンサやスイッチ、またはECUなどからの出力信号に基づいて、ドアが施錠状態にあることを検出した場合に、ドアが閉状態にあると判断してもよい。
【0107】
また、以上の実施形態では、モータ3の回転速度に基づいて、モータ3の負荷を検出した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、モータ3に流れる電流に基づいて、モータ3の回転数や回転速度を検出し、それらからモータ3の負荷を検出してもよい。その場合、ロータリエンコーダ7やパルス検出部15を省略することができる。
【0108】
さらに、以上の実施形態では、自動車のPW(パワーウインドウ)制御装置1に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。これ以外の、たとえば電動式開閉ルーフなどのような、車両の開閉体の開閉動作を制御する開閉体制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。