(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施形態について図を用いて説明する。
まず、
図1を用いて本発明の原理について説明する。
図1Aは、特許文献3の鋼床板10の断面を模式的に示している。鋼板11の下側には、多数の角形鋼管12が間を空けて鋼板11にボルト13により接合されており、隣り合う角形鋼管12の間に縦リブ14が2列配置されている。角形鋼管12の横方向(図面、a方向)の長さはBであり、上下方向(図面、b方向)の長さはHである。
【0014】
これに対して、
図1Bの鋼床板100においては、角形鋼管3の肉厚を薄くして、角形鋼管3の対向する一対の側面を互いに当接させて、詰めた状態で配置し、縦リブ14は除去されている。
図1Bの鋼床板100においては、角形鋼管3の肉厚は角形鋼管12の肉厚dの半分(d/2)に成っているが、角形鋼管3の縦横の長さは、
図1Aの角形鋼管12と等しく、それぞれB、Hである。
図1Cの鋼床板200は、角形鋼管4の肉厚はさらに角形鋼管3の半分(
図1Aの角形鋼管12の1/4)となり、横の長さが半分(B/2)になっている。鋼床板100と同様に、縦リブ14は除去されている。鋼板11、1の厚さは等しくDである。
尚、市販されている角形鋼管としては、電縫管をロールで冷間又は熱間成形した所謂ロールコラム、鋼板をコの字状にプレス成形して溶接した所謂プレスコラム、シームレス鋼管を熱間成形した所謂シームレスコラム等が知られており、いずれも、外形の四辺の肉厚は等しい。
【0015】
図1A、1B、1Cの鋼床板10、100、200において、横方向の範囲U(長さ2B)の範囲内に存在する角形鋼管12、3、4の総重量は等しく、
図1Aの場合のみ縦リブ14の分だけ重い。
【0016】
図1A示す鋼床板10の箇所U1を切り出した場合において、箇所Uの断面形状は、デッキプレートの断面と角形鋼管の断面と縦リブの断面をあわせたものとなっている。ここで、角形鋼管12のみ取り出し、角形鋼管12に直接、荷重が掛かるものとして検討すると、角形鋼管12の断面2次モーメントIaは、
Ia=(BH
3−(B−2d)(H−2d)
3)/12
である。
【0017】
そして、
図1Bに示す鋼床板100の箇所U(長さ2B)を切り出したときの断面は、鋼板1の断面と角形鋼管3の断面をあわせたものであり、角形鋼管3のみについてのみ取り出して同様検討すると、角形鋼管3の断面2次モーメントIbは、
Ib=(2BH
3−2(B−d)(H−d)
3)/12
で表せる。同様に、
図1Cに示す鋼床板200の単位長さ箇所U(長さ2B)を切り出したときの角形鋼管4のみに着目した断面2次モーメントIcは、
Ic=(2BH
3−4(B/2−d/2)(H−d/2)
3)/12
である。
【0018】
ここで、角形鋼管の厚さを上下方向の長さHに比べて十分に小さくする。この条件化においては、(H−2d)
3、(H−d)
3、(H−d/2)
3のいずれもH
3とみなすことが出来るから、角形鋼管の断面2次モーメントIa、Ib、Icはいずれも
Ia=Ib=Ic=dH
3/6
となる。
【0019】
このように、
図1Aに示す鋼床板10のみが縦リブ14を有する点において、
図1B、
図1Cに示す鋼床板100、200よりも断面2次モーメントが大きくなっているといえる。
尚、市販されている角形鋼管には、角形鋼管の厚さを上下方向の長さHに比べて十分に小さく例えば、d/H<<1/100に該当しないものもある。このような角形鋼管を使用する場合、必要以上に強度を備える反面、縦リブに相当する部分の重量が増加してしまうことになる。
【0020】
一方、鋼床板100、200、300を方向aに見た場合、
図1Aと
図1B、1Cとでは、以下のように大きく相違する。
すなわち、
図1Aに示す鋼床板100においては、鋼板11の下側に角形鋼管12が存在する箇所と存在しない箇所があるのに対して、
図1B、1Cに示す鋼床板200、300においては、鋼板1の下側に角形鋼管3、4が必ず存在する。
【0021】
いま、
図1Aに示す鋼床板100を方向aに見たとき、隣り合う角形鋼管12の縦板部分12a、12b、12cで両側を支えられたプレート部分p、qに着目すると、プレート部分pは鋼板の板厚Dと角形鋼管12の肉厚dを合わせた厚さをもち、プレート部分qの箇所はデッキプレートの板厚Dのみであるので、プレート部分pの紙面を裏から表の方向(c方向)に垂直に切った断面において、
図1A紙面の表裏方向の長さgで切り出したときに断面2次モーメントia1は、
ia1=g(D+d)
3/12
である。
【0022】
同様にプレート部分qにおける断面2次モーメントia2は、紙面を縦に垂直に切った断面において
ia2=gD
3/12
である。
【0023】
鋼板11の板厚Dと角形鋼管12の肉厚dは、通常、同じような桁の数値範囲であるため、プレート部分pとqとでは、同じ荷重に対する撓みが大きく異なってくるのであり、従って、プレート部分qの撓みが大きくならないように縦リブ14を設けて撓みを抑制している。
【0024】
一方、
図1Bに示す鋼床板200の例においては、
図1Bの紙面を縦に垂直にプレート部分rを切った断面における断面2次モーメントibは、
ib=g(D+d/2)
3/12
となる。
図1Aに示す鋼床板10の断面2次モーメントia2比較すると、大きな値となっており、プレート部分qよりも撓みを抑制することができる。
図1Cに示す鋼床板300は、角形鋼管4の横の長さが半分(B/2)になり、肉厚がd/4となっている。同様に
図1Cの紙面を縦に垂直にプレート部分sを切った断面における断面2次モーメントicを求めると、
ic=g(D+d/4)
3/12
となる。
【0025】
断面2次モーメントicは、
図1Bの断面2次モーメントibと比べて小さくなる。しかしながら、プレート部分sの長さはD/2であって、プレート部分rの半分である。同じ荷重が搭載されときの撓み量は、プレート部分s或いはrの長さの3乗に比例するため、
図1Cの方が撓み量は小さくなる。
【0026】
図1Dに示す鋼床板300は、
図1Cに示す鋼床板200の構成において鋼板1の厚さDを半分にした鋼板5を用い、かつ鋼床板200と同じ角形鋼管4を用いその下側に厚さD/2の鋼板9をボルトにより固定した例である。この例においては、断面2次モーメントIdは、
図1Cに示された構成の断面2次モーメントIcと等しい。一方、
図1Dの紙面を縦に垂直にプレート部分tを切った断面における断面2次モーメントidは、
id=(D/2+d/4)
3/12
であり、
図1Cの構造よりも小さくなっている。
【0027】
しかしながら、先に述べたように撓み量は、長さの3乗に比例するので、長さB/2のプレート部分tにおける撓みは小さいままである。一方、鋼板5に荷重が掛かったときには、上側ではa方向への圧縮する力が加わり、鋼板9側では引張力が働く、本来、鋼材は圧縮には強く、引張力には弱いため、鋼床板300のように鋼板5を薄くして、その分、角形鋼管の下側に鋼板9として固定するのが合理的である。また、鋼板5、9に重量が分散できるため、素材である鋼板や角形鋼管の運搬や製造が容易になる。
【0028】
図2は鋼床板300を示しており、
図2Aは断面、
図2Bは平面を示している。鋼床板300は、同一形状の多数の角形鋼管4を互いの横側の一対の側面が接触する状態で配置し、多数の角形鋼管4の上側、下側の側面の全範囲を夫々長方形状の鋼板5、9で挟んでいる。鋼板5、9の大きさは、6m×15mである。角形鋼管4の肉厚dは4.5mmである。角形鋼管4の断面形状は長方形であり、長方形の横の長さBは200mmから1000mm、縦の長さHは200mmから1000mmである。また、角形鋼管4の長さは6mから20mである。上下の鋼板5、9の厚さは、5mmである。角形鋼管4及び鋼板5、9は、一般構造用圧延鋼材であって、ここではSS400(JIS規格)を用いた。
尚、一般構造用角形鋼管JIS G 3466 STKRは、規格として予めH、B、dの寸法・重量を決められている。本実施例においては、上記予め決められた寸法の一般構造用角形鋼管JIS G 3466 STKRの以外のサイズを有する角形鋼管を使用しても良い。そのような角形鋼管は、寸法が異なるだけであり、先述したロールコラム、プレスコラムシームレスコラム等を使用して製作することが可能である。
【0029】
図3には、角形鋼管4と鋼板5、9とを接続する様子が示されている。鋼板5、9には、非貫通のボルト孔7が設けられており、角形鋼管4には上下となる一対の側面に対してボルト孔7に対応する箇所に貫通孔8が設けられている。ボルト6は角形鋼管4の内側から、貫通孔8を通して鋼板5、9のボルト孔7にねじ込まれ、角形鋼管4と鋼板5、9とを固定する。
【0030】
角形鋼管4に用いられる鋼材の肉厚dである1.75mmは、長い距離を溶接しようとすると、熱で歪んで形状変化を起してしまうが、鋼床板300ではボルト6を用いた締結であるので、形状変化は起こらない。
【0031】
ボルト孔7が非貫通であるのは、鋼床板300の表面側にボルト6が表れないようにするためであり、搭載貨物にボルト頭部が損傷を受けないようにするためである。また、鋼板5、9の表面にボルト孔7が開けてないため、ボルト6のネジ山の隙間から湿気が鋼床板300内部に侵入する恐れが減少する。鋼床板300を船舶のデッキプレートに使用する際には適している。また、鋼板5、9自体の引張強度が低下しないという利点があ
る。
【0032】
図4は、鋼床板300同士を連結する継手400を示している。継手400は、起立状態の横板21の上下に水平に多数のフランジ22、23を両側に設けられている。フランジ22は上下で1対となって、1つの角形鋼管4の内側の中空に挿入され、フランジ23は上下で1対となって連結先の角形鋼管4に挿入される。夫々のフランジ22、23は内側から対応する角形鋼管に当接する。各フランジには、貫通孔24が設けられており、フランジ22、23が角形鋼管4の内側の中空に挿入されたとき、角形鋼管4の貫通孔8と、鋼材5、9の非貫通のボルト孔7とが連通し、ボルト25により締結される。
【0033】
上記実施例においては、縦横の長さが等しい角形鋼管を用いたが、a方向の長さが等しく、b方向の長さが異なる角形鋼管を混合して使用しても良い。
【0034】
図1において、角形鋼管4の上側に鋼板5を設けた例、下側にも鋼板9を設けた例を示
した。図5は、上側の鋼板5を省略して、下側の鋼板9と角形鋼管4により鋼床板500を形
成した例である。一般的なRO−RO船の車両甲板は、厚さ6mm乃至7mm程度であり、これに対して高さHが300mm以上の市販されている一般構造用角形鋼管の肉厚は、薄いもので6mmの厚さを有している。よって、角形鋼管4の上側側面の板厚がほぼ一般的なRO−RO船の車両鋼板に匹敵する肉厚を有している。よって、下側の鋼板9の板厚を増加させた方が、鋼床板400の断面2次モーメントを大幅に増加させることができる。
【0035】
上記実施例においては、隣同士の角形鋼管4において互いに接触する縦リブ14の間の接続については、両者を接着材ないしはボルト15(
図6)により固定しても良い。ボルト15により固定する場合は、当接する角形鋼管4の縦リブ14に貫通孔を設けて両側からボルトとナット16で固定するが、縦リブ14の厚さを薄く設定しているため、座金18を使用して変形しないようにしておくことが望ましい。
【0036】
また、鋼板5(又は鋼板6)に対して角形鋼管4を固定するに際しては、非貫通のボルト孔7と貫通孔8に、ボルト6を螺着させた例を
図4Bに示した。
図6は、鋼板5(又は鋼板6)側に貫通孔6a、角形鋼管4側に非貫通のボルト孔8aを設け、鋼板5(又は鋼板6)側から頭部が軸部と同じ径のボルト7aで螺着し
た例と、鋼板5(又は鋼板6)側に貫通孔6a、角形鋼管4側に貫通孔8を設け、ボルト7bとナット7cにより螺着し
た例である。この場合、座金7dを使用するのが望ましく、また、ボルト7bの頭部は鍋型にしておくと鋼板5の表面が凸凹になるのを低減できる。