特許第6099141号(P6099141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099141
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ボロニア様香料組成物
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20170313BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170313BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20170313BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20170313BHJP
【FI】
   C11B9/00 N
   C11B9/00 D
   C11B9/00 T
   C11B9/00 S
   C11B9/00 C
   C11B9/00 Z
   A61K8/35
   A61K8/34
   A61K8/37
   A61Q13/00 101
   A23L27/10
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-108853(P2013-108853)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-227476(P2014-227476A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507219686
【氏名又は名称】静岡県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】駒木 亮一
(72)【発明者】
【氏名】赤井 周司
(72)【発明者】
【氏名】井川 貴詞
(72)【発明者】
【氏名】江木 正浩
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137758(JP,A)
【文献】 特開平09−110683(JP,A)
【文献】 特開2004−067598(JP,A)
【文献】 特開2009−209159(JP,A)
【文献】 特開2004−091742(JP,A)
【文献】 特開平07−179328(JP,A)
【文献】 特開2012−201988(JP,A)
【文献】 特表2009−508974(JP,A)
【文献】 Perfumer & Flavorist,1983, 8(6),3-8
【文献】 Liebigs Ann. Chem.,1994,(10),1043-1047
【文献】 Z Lebensm Unters Forsch,1991, 192(2),111-115
【文献】 Helvetica himica Acta,1947, 30,419-422
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00− 9/02
A61K 8/00− 8/99
A61Q 1/00−99/00
A23L 27/00−27/60
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)β−イオノン、(B)β−イオノール、及び(C)メチルジャスモネートを含有し、(B)成分中の(2R)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル−1−イル)−3−ブテン−2−オールの含有量が70質量%以上であるボロニア様香料組成物。
【請求項2】
ボロニア様香料組成物中、(A)成分100質量部に対して(B)成分を35〜65質量部、(C)成分を8〜28質量部含有する請求項1に記載のボロニア様香料組成物。
【請求項3】
さらに、(D)ジヒドロ−β−イオノン及び/又はジヒドロ−β−イオノールを含有する請求項1又は2に記載のボロニア様香料組成物。
【請求項4】
さらに、(E)シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセノール、β−フェニルエチルアルコール、及びメチルベンゾエートから選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のボロニア様香料組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のボロニア様香料組成物を含有する香粧品又は飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボロニアの香りを再現した香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ボロニア(学名:Boronia megastigma)は、オーストラリアやタスマニアに分布している常緑低木のミカン科の植物で、スミレ様の花香を有し、かつ、軽やかで、ファンシーな芳香を有する花を付けることが知られている。
【0003】
また、ボロニアの花から採油される精油は香水等の原料として用いられるが、生産量が少なく、精油の中でも特に高価な精油として知られている。そのため、化粧品用香料、飲料・食品用香料の香気成分として容易に利用できるものはなかった。
【0004】
一方、この花から採油された精油の成分としては、β−イオノンを主体として、ドデシルアセテート、メチルジャスモネート、(Z)−ヘプタデセン−8等が含まれることが知られている(非特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Weyerstahi, P.; Marschall, H.;Bork W. R.; Rilk, R., Liebigs Annalen der Chemie(1994),(10), 1043-7
【非特許文献2】Werkhoff P.;Bretschneider, W.; Guentert, M.; Hopp, R.; Surburg, H., Zeitschrift fuer Lebensmittlel-Untersuchung und Forschun(1991),192(2), 111-15
【非特許文献3】Davies, N. W.; Menary. R. C., Perfumer & Flavorist(1994), 1983, 8(6), 3-8
【非特許文献4】Naves, Y. R.; Parry, G. R., Helvetica himica Acta(1947), 30, 419-22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボロニアの花の香りは、非常に嗜好性に優れた香気を有するものであるが、上述したように高価であることから、化粧品用香料、飲料・食品用香料等の香料としては容易に利用できるものではなかった。そのため、安価に利用できるボロニア様の調合香料の開発が期待されていた。
そこで、非特許文献1〜4などに記載されるボロニアの香気成分の組合せについて、種々検討してみたが、その香気の再現性は低く、必ずしも満足できるものではなかった。
【0007】
従って、本発明の課題は、ボロニア様の香気の香気を再現し、かつ、優れた嗜好性を有する香料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するためボロニアの香気成分について鋭意検討した結果、β―イオノン、β−イオノールなどの主要香気成分のうち、β―イオノール中の光学異性体の存在が、ボロニア本来の香気として重要な成分であることを見出した。そして、β―イオノールの光学異性体である(2R)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル−1−イル)−3−ブテン−2−オールが、β−イオノール中に70質量%以上含有することで、ボロニアの花らしい香りを再現することができ、しかも嗜好性の高い香料組成物が得られることを見い出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)β−イオノン、(B)β−イオノール、及び(C)メチルジャスモネートを含有し、(B)成分中の(2R)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル−1−イル)−3−ブテン−2−オールの含有量が70質量%以上であるボロニア様香料組成物を提供するものである。
また本発明は、上記ボロニア様香料組成物を含有する香粧品又は飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のボロニア様香料組成物は、従来得ることのできなかったボロニア本来の香気を彷彿させ、優れた嗜好性を有する香料組成物である。本発明の香料組成物を用いれば、香粧品や飲食品にボロニア様の香気を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のボロニア様香料組成物においては、ボロニアの花の香気の再現性の点から、ボロニアの花の主要香気成分である(A)β−イオノンを含有する。
β−イオノン(4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オン)は、ウッディの香りを有する成分として知られており、市販品を用いることができる。
(A)成分のボロニア様香料組成物中の含有量は、ボロニアの花の香気再現性の点から45質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、52質量%以上がさらに好ましく、また、65質量%以下が好ましく、60質量%以下が好ましく、58質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、45〜65質量%であることが好ましく、50〜60質量%であることがより好ましく、52〜58質量%であることがさらに好ましい。
【0012】
本発明で用いる(B)β−イオノールは、僅かにフローラル、フルーティ・ウッディ・アンバー様香気を有する化合物であり、キンモクセイ等の天然物の精油中にも存在するが、化学合成によっても得ることができる(Van Wageningen, Synthetic Communications,(1975), 5(3), 217-220参照)が、後述の製造法によっても合成することができる。前述の非特許文献1〜4には、ボロニアの花の精油中にβ−イオノールが存在することは記載されていない。
【0013】
(B)成分のボロニア様香料組成物中の含有量は、ボロニアの花の香気再現性の点から(A)成分100質量部に対して35質量部以上が好ましく、45質量部以上がより好ましく、47質量部以上がさらに好ましく、また、65質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、53質量部以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、(A)成分100質量部に対して35〜65質量部であることが好ましく、45〜55質量部であることがより好ましく、47〜53質量部であることがさらに好ましい。
【0014】
β−イオノール、すなわち、4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オールの2位に水酸基がついた炭素は、不斉中心炭素であることから、二つの光学的に対掌な化合物、即ち(2R)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オール(一般式(1);以下、(2R)−β−イオノールと記載する)及び(2S)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オール(一般式(2);以下、(2S)−β−イオノールと記載する)が存在する。
【0015】
【化1】
【0016】
【化2】
【0017】
ラセミ体である4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセン−1−イル)−3−ブテン−2−オールは、香気的にフローラル・ウッディ・アンバー・フルーティ調の香りであり、単調であるのに対し、(2R)−β−イオノールはフローラル−フルーティ・ウッディ調の香気を有し、(2S)−β−イオノールは、フローラル・アンバー・ウッディ調の共に香気的に高級感を表現する優れた香気を持つ。
【0018】
本発明のボロニア様香料組成物においては、β−イオノールの光学異性体の存在がボロニア本来の香気として重要であり、特に(2R)−β−イオノールが、β−イオノール中に70質量%以上含有することが必要であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。β−イオノール中の(2R)−β−イオノールの含有量の上限は100質量%であってもよい。(2R)−β−イオノールを多く含有することにより初めて、ボロニア調の軽やかで、ファンシーな花の香りを再現することができるようになる。
【0019】
本発明で用いる(C)メチルジャスモネートは、東洋ランの主要香気成分であることが知られている公知の成分である。(C)成分のボロニア様香料組成物中の含有量は、ボロニアの花の香気再現性の点から、(A)成分100質量部に対して10質量部以上が好ましく、13質量部以上がより好ましく、14質量部以上がさらに好ましく、また、28質量部以下が好ましく、22質量部以下がより好ましく、19質量部以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、(A)成分100質量部に対して、10〜22質量部であることが好ましく、13〜22質量部であることがより好ましく、14〜19質量部であることがさらに好ましい。
【0020】
本発明のボロニア様香料組成物には、さらに、(D)ジヒドロ−β−イオノン(4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノン)及び/又はジヒドロ−β−イオノール(4−(2,6,6−トリメチル-1-シクロヘキセン−1−イル)−2−ブタノール)を含有するのが好ましい。(D)成分のボロニア様香料組成物中の含有量は、ボロニアの花の香気再現性の点から、(A)成分100質量部に対して10質量部以上が好ましく、11質量部以上がより好ましく、12質量部以上がさらに好ましく、また、19質量部以下が好ましく、17質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、(A)成分100質量部に対して10〜19質量部であることが好ましく、11〜17質量部であることがより好ましく、12〜15質量部であることがさらに好ましい。
【0021】
本発明のボロニア様香料組成物は、さらに、(E)シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセノール、β−フェニルエチルアルコール及びメチルベンゾエートから選ばれる1種又は2種以上を含有するのが好ましい。
【0022】
本発明のボロニア様香料組成物中における上記(E)成分の好ましい含有量を、下記表1に記載する。当該範囲であれば、ボロニア本来の香気を彷彿させ、嗜好性も高く、好ましい。
【0023】
【表1】
【0024】
本発明のボロニア様香料組成物には、必要により、エタノール等のアルコール類、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類などの溶剤を配合することができる。また、本発明の香気を妨げない範囲において、保留剤・保香剤、エンハンサー、冷感剤、温感剤、乳化剤、酸化防止剤、増粘剤、保存料、防黴剤などを配合することもできる。
【0025】
本発明のボロニア様香料組成物は、香水、コロン、化粧水、クリーム、乳液、ファンデーション、化粧下地料、頬紅、口紅等の香粧品として好適に用いることができる。また、本発明のボロニア様香料組成物は、極めて汎用性が高く、香粧品以外に飲料、デザート、冷菓、菓子、調味料等の飲食品にも用いることができる。
【0026】
本発明のボロニア様香料組成物の香粧品又は飲食品中の含有量は、対象とする香粧品や食品の種類や賦香性により一概には規定することができないが、一般的に香粧品中の含有量としては0.0001質量%以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。また100質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。具体的な範囲としては、0.0001〜100質量%であり、好ましくは0.01〜50質量%であり、より好ましくは0.1〜30質量%であり、0.5〜20質量%の範囲である。また、一般的に飲食品中の含有量としては、0.0001質量%以上が好ましく、0.001質量%以上がより好ましく、また10質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましい。具体的な範囲としては、0.0001〜10質量%であり、好ましくは0.001〜1質量%の範囲である。
【0027】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物を開示する。
【0028】
<1>(A)β−イオノン、(B)β−イオノール、及び(C)メチルジャスモネートを含有し、(B)成分中の(2R)−4−(2,6,6−トリメチル−1−シクロヘキセニル−1−イル)−3−ブテン−2−オールの含有量が70質量%以上であるボロニア様香料組成物。
【0029】
<2>(A)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは52質量%以上であり、また、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下であり、さらに好ましくは58質量%以下である<1>のボロニア様香料組成物。
<3>(A)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、好ましくは45〜65質量%、より好ましくは50〜60質量%、さらに好ましくは52〜58質量%である<1>又は<2>のボロニア様香料組成物。
<4>(B)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは35質量部以上、より好ましくは45質量部以上、さらに好ましくは47質量部以上であり、また、好ましくは65質量部以下、より好ましくは55質量部以下、さらに好ましくは53質量部以下である<1>〜<3>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<5>(B)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは35〜65質量部、より好ましくは45〜55質量部、さらに好ましくは47〜53質量部である<1>〜<4>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<6>(B)成分中の(2R)−β−イオノールの含有量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である<1>〜<5>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<7>(C)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは13質量部以上、さらに好ましくは14質量部以上であり、また、好ましくは28質量部以下、より好ましくは22質量部以下、さらに好ましくは19質量部以下である<1>〜<6>のボロニア様香料組成物。
<8>(C)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10〜22質量部、より好ましくは13〜22質量部、さらに好ましくは14〜19質量部である<1>〜<7>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<9>さらに(D)ジヒドロ−β−イオノン及び/又はジヒドロ−β−イオノールを含有する<1>〜<8>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<10>(D)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは11質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、また、好ましくは19質量部以下、より好ましくは17質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である<9>のボロニア様香料組成物。
<11>(D)成分のボロニア様香料組成物中の含有量が、(A)成分100質量部に対して、好ましくは12〜19質量部、より好ましくは11〜17質量部、さらに好ましくは12〜15質量部である<9>又は<10>のボロニア様香料組成物。
<12>さらに、(E)シス−3−ヘキセニルアセテート、シス−3−ヘキセノール、β−フェニルエチルアルコール及びメチルベンゾエートから選ばれる1種又は2種以上を含有する<1>〜<11>のいずれかのボロニア様香料組成物。
<13>(A)成分100質量部に対して、シス−3−ヘキセニルアセテートを0.02〜4質量部、シス−3−ヘキセノールを0.002〜4質量部、β−フェニルエチルアルコールを0.1〜4質量部、メチルベンゾエートを0.02〜4質量部含有する<12>のボロニア様香料組成物。
<14>(A)成分100質量部に対して、シス−3−ヘキセニルアセテートを0.02〜2質量部、シス−3−ヘキセノールを0.01〜2質量部、β−フェニルエチルアルコールを0.2〜2質量部、メチルベンゾエートを0.1〜2質量部含有する<12>又は<13>のボロニア様香料組成物。
<15><1>〜<14>のいずれかのボロニア様香料組成物を含有する香粧品又は飲食品。
<16>ボロニア様香料組成物を好ましくは0.0001〜100質量%、より好ましくは0.01〜50質量%含有する<15>の香粧品。
<17>ボロニア様香料組成物を好ましくは0.0001〜10質量%、より好ましくは0.001〜7質量%含有する<15>の飲食品。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。尚、各成分の量は、質量%である。
【0031】
<試験化合物>
下記の試験例及び実施例で用いた試料は下記のものを用いた。
(試料1):(2S)−β−イオノール
(2S)−β−イオノールは以下のように調製した。文献(Akai, S. et al. Organic Letters 2010年,12巻,4900-4903頁)の方法に従い、市販のβ−イオノンをNaBH4を用いて還元し(±)−β−イオノールを得た。(±)−β−イオノール(2.0g,10mmol)、Candida antarctica lipase B(ロシュ・ダイアグノスティックス製、6.0g)および酢酸ビニル(2.0mL)のアセトニトリル(80mL)懸濁液を室温で6.5時間攪拌した。セライトを通して反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮して粗生成物を得た。本品をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=10:1)で精製し、(2S)−β−イオノール(0.90g,45%,99%ee)と(2R)−O−アセチル−β−イオノール(1.1g,46%,99%ee)を得た。(2S)−β−イオノールの光学純度は、ダイセルCHIRALCEL OD−H(hexane/i−PrOH=99.9:0.1)カラムを用いるHPLC分析によって決定した。
【0032】
(2S)−β−イオノール. 無色液体. 1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 0.98 (3 H, s), 0.99 (3 H, s), 1.31 (3 H, d, J = 6.5 Hz), 1.43-1.45 (2 H, m), 1.57-1.62 (2 H, m), 1.66 (3 H, s), 1.97 (2 H, t, J = 6.5 Hz), 4.34-4.39 (1 H, m), 5.49 (1 H, dd, J = 6.5, 16.0 Hz), 6.05 (1 H, d, J = 16.0 Hz).
(2R)−O−アセチル−β−イオノール。無色液体。本品の1H NMR並びに13C NMRデータは文献値(Akai, S. et al. Organic Letters 2010年,12巻,4900-4903頁)とよく一致した。
【0033】
(試料2):(2R)−β−イオノール
(2R)−β−イオノールは以下のように調製した。上記(2R)−O−アセチル−β−イオノール(99%ee,0.56g,2.4mmol)、炭酸カリウム(0.84g,6.1mmol)ならびにメタノール(8mL)の混合物を室温で2時間攪拌した。反応液を濾過し、濾液を減圧濃縮した。その残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)で精製し、(2R)−β−イオノール(0.45g,94%,99%ee)を得た。無色液体。
【0034】
(2R)−β−イオノールの光学純度は、ダイセルCHIRALCEL OD−H(hexane/i−PrOH=99.9:0.1)カラムを用いるHPLC分析によって決定した。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ: 0.98 (6 H, s), 1.31 (3 H, d, J = 6.5 Hz), 1.43-1.45 (2 H, m), 1.57-1.61 (2 H, m), 1.66 (3 H, s), 1.97 (2 H, t, J = 6.5 Hz), 4.34-4.39 (1 H, m), 5.48 (1 H, dd, J = 7.0, 16.0 Hz), 6.04 (1 H, d, J = 16.0 Hz).
【0035】
実施例1〜6、比較例1〜5
表2の香料組成物からなるボロニア様香料組成物を製造した。得られた実施例及び比較例について、ボロニアの香気を想起させるか否かを官能評価した。評価方法及び評価点に示す。また、参考例及び比較例1は下記のようにして製造した。
【0036】
参考例
摘んだ直後のボロニア花100gを密閉ガラス容器に入れ、そこに窒素ガスを導入し、出口から流出してくる気体を、液体窒素中で捕集し、液状のボロニアの香気成分を約0.2mg得た。
【0037】
比較例1
ボロニア300gをヘキサン溶液1Lで1時間浸漬し、その後、デカンテーションして花を除去した。残ったヘキサン溶液を蒸留し、乾燥固化させてボロニア抽出物3gを得た。得られたボロニア抽出物にエチルアルコール100gを加え、加熱して完全溶解させた後、冷却濾過して固形分を除去した。残ったエチルアルコールを蒸留して除き、ボロニアの香気(アブソリュート)成分約0.5gを得た。
【0038】
(評価方法)
参考例のボロニアの香気と実施例及び比較例の香料組成物との匂いの対比を、専門パネラー5名による官能評価により行った。ボロニアの香気(参考例)が再現されているか、香りの特徴が表現されているかなどの観点から、下記評価点による合計点として表2に合わせて示す。
(評価点)
5点:非常にボロニアの香りの特徴が表現され、似ている。
4点:ボロニアの香りの特徴が表現され、似ている。
3点:ボロニアの香りを認める。
2点:少しボロニアの香りを認める。
1点:類似するところなし。
【0039】
【表2】
【0040】
表2から、(A)β−イオノン、(B)β−イオノール及び(C)メチルジャスモネートを含有し、(B)β−イオノール中の(2R)−β−イオノールの含有量を、70質量%以上にすると良好なボロニア様香気が再現できることがわかる。
【0041】
実施例7 ボロニア様香料組成物
【0042】
【表3】
【0043】
実施例7に示すボロニア様香料組成物は、参考例のボロニア香気に極めて類似した香気を有している。
【0044】
実施例7のボロニア様香料組成物を用いた、下記処方のフローラル系調合香料処方を示す。
【0045】
【表4】
【0046】
実施例7のボロニア様香料組成物を用いた下記処方のスキンローション処方を示す。
【0047】
【表5】
【0048】
(製造方法)
水相、アルコール相を各々均一に溶解し、水相とアルコール相とを混合攪拌分散して可溶化を行い、次いで容器に充填する。使用時には内容物を均一になるよう振って使用する。