特許第6099178号(P6099178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6099178
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】天井施工用クリップ
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/16 20060101AFI20170313BHJP
   E04B 9/18 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   E04B9/16 B
   E04B9/18 L
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-108660(P2016-108660)
(22)【出願日】2016年5月31日
【審査請求日】2016年6月15日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000167211
【氏名又は名称】イイファス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100133260
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 基子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝夫
【審査官】 多田 春奈
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−256696(JP,A)
【文献】 特開2014−101935(JP,A)
【文献】 実開昭49−035717(JP,U)
【文献】 実開昭57−145018(JP,U)
【文献】 実開昭54−056411(JP,U)
【文献】 特開平09−032188(JP,A)
【文献】 特開2009−74305(JP,A)
【文献】 特開平7−82828(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第355082(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B9/00−9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造体に支持された長尺形状の野縁受けの下方に、底壁部と、この底壁部の両側縁から上方に立ち上げられた一対の側壁部と、これら一対の側壁部の上端から互いに近接する方向に張り出した一対のリップ部とを備えてなる長尺形状の野縁を、前記野縁受けと直交するように取り付けるための天井施工用クリップであって、
前記野縁の側壁部間内に配置可能な寸法に形成されているとともに前記リップ部より下方位置に配置される底板部と、この底板部の両側端より上方に折り曲げられて一対の前記リップ部を掛止しうる一対のリップ掛止部と、前記底板部から上方向に立ち上げられた背面板部と、この背面板部の前記野縁受けの高さに相当する高さ位置から略直角方向に延出された天板部と、この天板部にボルトを挿通するために開口されてなるボルト挿通孔と、このボルト挿通孔に挿通された前記ボルトを螺合させるために前記底板部の前記ボルト挿通孔に対向する位置に形成されてなる雌ねじ孔とを有しており、
前記ボルト挿通孔に挿通された前記ボルトを前記雌ねじ孔に螺合することにより、そのボルトの外周側面と前記背面板部とによって前記野縁受けの左右側面方向の動きを規制し、かつ、前記天板部と前記リップ部とによって前記野縁受けの上下面を狭持する、前記天井施工用クリップ。
【請求項2】
前記天板部は、上下平行に配置された下方天板部と上方天板部とで構成されており、前記下方天板部には雌ねじのない前記ボルト挿通孔が形成されており、かつ、前記上方天板部には前記ボルト挿通孔と同軸上に雌ねじ孔が形成されているとともに、当該雌ねじ孔に予めボルトが螺合されており、このボルトが基端側に雄ねじのない軸部を有するとともにこの軸部は前記雌ねじ孔の内径よりも細い寸法に形成されている、請求項1に記載の天井施工用クリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造体に支持された長尺形状の野縁受けの下方に、長尺形状の野縁を取り付けるための天井施工用クリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造体において天井材は、一般的に、次のような構成で支持されている。
【0003】
まず、建築構造体には、吊りボルト控用インサートまたはアンカー等が設置され、吊りボルトを介して天井施工用ハンガーが設置されている。また、天井施工用ハンガーには、複数本の長尺形状の野縁受けが支持されている。さらに、これら野縁受けの下方には直交するように複数本の長尺形状の野縁が取り付けられている。そして、天井材は、複数本の前記野縁にビス等により固定されている。
【0004】
天井施工用クリップは、野縁受け下方に直交するように野縁を取り付けるための部材であり、天井施工において重要な部品である。そこで、これまでに天井施工用クリップに関する発明が種々提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0005】
また、天井施工用クリップについてはJIS規格(JIS A 6517)が定められており、当該天井施工用クリップによる野縁受けと野縁との取り付け方法は学会等において様々な規定や方針が定められている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−131928号公報
【特許文献2】特開2014−15799号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】文部科学省、「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」、[online]、平成25年8月、文部科学省、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.nier.go.jp/shisetsu/pdf/ceiling_all.pdf>
【非特許文献2】日本耐震天井施工協同組合、「耐震Power天井(RPクリップ仕様)施工要領書」、[online]、2012年4月27日、日本耐震天井施工協同組合、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.jacca.or.jp/download-gc/doc/001_taishin_Power_tenjo.pdf>
【非特許文献3】日本建築学会 非構造材の安全評価及び落下事故防止に関する特別調査委員会、「天井等の非構造材の落下事故防止ガイドライン」、[online]、2013年4月4日、日本建築学会、[平成28年3月16日検索]、インターネット<URL:http://www.aij.or.jp/scripts/request/document/20130304.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に記載された発明においては、天井施工用クリップを施工時に野縁受けに合わせて略90°に折り曲げて使用されるが、折り曲げる角度が不十分であったり、吊りボルトに設置された野縁受けを支持する天井施工用ハンガーの施工に不備があったりすると、地震による振動、室内外の温度差により出入口開口時の生じる風圧による天井の上下の揺れ等、種々の振動を受けることにより折り曲げたところが容易に広がって外れやすくなるという問題がある。
【0009】
そのため、折り曲げ作業を慎重に行う必要があるが、現状、天井に対する天井施工用クリップの設置個数が非常に多く、しかも単純作業であるため迅速に作業することも求められることから、不確実な施工が行われている。また、天井材を野縁に貼るとクリップの施工状態が隠れてしまい目視できなくなるため、不確実な施工が行われたとしてもその瑕疵を事前に見つけることは困難である。
【0010】
よって、非特許文献1、非特許文献2および非特許文献3等の規定や方針が定められているものの、熟練施工者の人手不足もあって天井施工用クリップの破損による天井材の落下事故が後を絶たない。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことのできる、天井施工用クリップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る天井施工用クリップは、建築構造体に支持された長尺形状の野縁受けの下方に、底壁部と、この底壁部の両側縁から上方に立ち上げられた一対の側壁部と、これら一対の側壁部の上端から互いに近接する方向に張り出した一対のリップ部とを備えてなる長尺形状の野縁を、前記野縁受けと直交するように取り付けるための天井施工用クリップであって、前記野縁の側壁部間に配置可能な寸法に形成された底板部と、この底板部の両側端において一対の前記リップ部を掛止しうる一対のリップ掛止部と、前記底板部から上方向に立ち上げられた背面板部と、この背面板部の前記野縁受けの高さに相当する高さ位置から略直角方向に延出された天板部と、この天板部に開口されてなるボルト挿通孔と、このボルト挿通孔に対向する前記底板部に形成されてなる雌ねじ孔とを有する。
【0013】
また、本発明の一実施形態として、前記天板部は、上下平行に配置された下方天板部と上方天板部とで構成されており、前記下方天板部には前記ボルト挿通孔が形成されているとともに、前記上方天板部には前記ボルト挿通孔と同軸上に雌ねじ孔が形成されており、当該雌ねじ孔にボルトが螺合されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る天井施工用クリップの第一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
図2】本第一実施形態の天井施工用クリップを示す斜視図である。
図3】本実施形態の天井施工用クリップを用いた取り付け方法であって、(a)底板部を側壁部間に配置した状態を示す平面図、(b)天井施工用クリップを略45°回転させた状態を示す平面図および(c)野縁受けを設置しボルトを挿入させる状態を示す正面図である。
図4】本第一実施形態の天井施工用クリップの使用状態を示す正面図である。
図5】本発明に係る天井施工用クリップの第二実施形態の使用状態を示す正面図である。
図6】本実施形態の天井施工用クリップを用いた取り付け方法であって、(a)ボルトが上方天板部に螺合されている状態を示す正面図、(b)天井施工用クリップを傾けて底板部を野縁の側壁部間に配置した状態を示す左側面図および(c)野縁受けを設置しボルトを回転させる状態を示す正面図である。
図7】本発明に係る天井施工用クリップの他の実施形態を示す正面図である。
図8】本発明に係る天井施工用クリップの他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る天井施工用クリップの第一実施形態について図面を用いて説明する。
【0017】
まず、天井施工用クリップ1Aにより取り付けられる野縁受け8および野縁9について、図1を用いて簡単に説明する。
【0018】
野縁受け8は、長尺形状の部材であり、図1に示すように、吊りボルト10に天井施工用ハンガー11を介して支持されている。
【0019】
これに対し、野縁9は、天井材を貼り付けるための下地材となるものであり、野縁受け8と同様に長尺形状に形成されている。また、野縁9は、底壁部91と、この底壁部91の両側縁から上方に立ち上げられた一対の側壁部92,92と、これら一対の側壁部92,92の上端から互いに近接する方向に張り出した一対のリップ部93,93とを備えている。
【0020】
リップ部93は、各先端が下方に向けて屈曲されている。リップ部93,93間の開口幅は、用途等に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、狭いもので略17mm、広いもので略42mmの幅を有する。以下、本第一実施形態の天井施工用クリップ1Aにおける寸法値は、開口幅略17mmの野縁用の一例の値である。
【0021】
本第一実施形態における天井施工用クリップ1Aは、プレス加工による順送金型で容易に製造されるものであり、図2および図3(c)に示すように、主に、底板部2と、この底板部2に形成されており野縁9のリップ部93を掛止しうる一対のリップ掛止部3,3と、前記底板部2から上方向に立ち上げられた背面板部4と、この背面板部4から略直角方向に延出された天板部5と、この天板部5に開口されてなるボルト挿通孔6、このボルト挿通孔6に対向する前記底板部2に形成されてなる雌ねじ孔7とを有する。以下、各構成について説明する。
【0022】
底板部2は、略矩形板状に形成されており、野縁9の側壁部92,92間に配置可能な寸法に形成されている。具体的には、図3に示すように、底板部2の角を結ぶ対角線の長さが前記野縁9の側壁部92,92間の距離よりも短くなるように形成されている。また、本第一実施形態では、底板部2の一側端が前記野縁9の側壁部92,92間で回転する際に邪魔とならないように、図3(a)に記載の円形補助線Aに沿って、円弧状に形成されている。
【0023】
リップ掛止部3は、底板部2の両短辺から先端が上方に折り曲げられるように形成されている。また、当該リップ掛止部3は、強度を高めるため波形状に形成されている。一対のリップ掛止部3,3同士は、野縁9の一対のリップ部93,93を内側から掛止できる間隔で配置されている。また、前記リップ掛止部3においてリップ部93を支える幅(図3(c)における左右方向の長さ)は、前記リップ部93に掛止させたときの安定性を高めるためには大きい方がよいが、後述するように施工の際に側壁部92,92間で回転させる必要があるため、図3(b)に記載の円形補助線Bからはみ出さないように前記側壁部92,92間の寸法範囲内に限定して形成されている。
【0024】
背面板部4は、図3(c)および図4に示すように、野縁受け8の側面に沿って野縁受け8を支持するものであり、前記底板部2から上方向に立ち上げられるように形成されている。本第一実施形態では、図2に示すように、背面板部4の下端側が、側壁部92,92間における回転時にリップ部93に干渉して回転の邪魔にならないように、上端側に比べて細く形成されている。本第一実施形態では、下端側の幅が約9.5mmに形成されている。
【0025】
天板部5は、野縁受け8の上面側に配置されるものであり、野縁受け8の上面に沿うことができるように、背面板部4における野縁受け8の高さに相当する高さ位置から略直角方向に延出されている。
【0026】
ボルト挿通孔6は、図3(c)に示すように、天板部5に開口されており、断面略コの字状の野縁受け8の背面側において締結するボルト12を挿通させるための孔である。
【0027】
雌ねじ孔7は、ボルト挿通孔6から挿通されたボルト12を底板部2側で螺合させるため、底板部2における前記ボルト挿通孔6に対向する位置に形成されている。本第一実施形態では、底板部2の所定の箇所にバーリングにて下孔を形成し、タッピング加工することにより形成されている。
【0028】
また、本第一実施形態におけるボルト12は、図3(c)に示すように、全ねじのボルトが用いられる。このボルト12は、回転頭部121に座金が固定された、いわゆる座付のボルトである。また、図1および図2に示すように、回転頭部121は六角形状とし、その頂部には十字のリセス122が形成されている。
【0029】
次に、本第一実施形態の天井施工用クリップ1Aにおける各構成の作用について、取り付け方法とともに説明する。
【0030】
まず、野縁9の側壁部92,92間に底板部2を配置する。図3(a)に示すように、リップ掛止部3,3同士の幅は野縁9の開口幅よりも広いため、天井施工用クリップ1Aは、約90°回転させた状態でリップ部93,93間に挿入して配置する。
【0031】
その後、図3(a)および図3(b)に示すように、リップ掛止部3を野縁9のリップ部93に掛止させるため天井施工用クリップ1Aを約90°回転させる。このとき底板部2は、一側端が円弧状に形成されているため、野縁9の側壁部92に引っかかることなく回転することができる。また、背面板部4は、その下端側の幅が約9.5mmと細くなっているため、回転させてもリップ部93に干渉せず、回転の邪魔にならない。さらに、図3(b)に記載の円形補助線Bから外側にはみ出さないように形成したことにより、リップ掛止部3も野縁9の側壁部92,92間に当接せず、回転の邪魔にならない。よって、天井施工用クリップ1Aは、底板部2を野縁9の側壁部92,92間に配置した状態で自由に回転することができる。そして、天井施工用クリップ1Aを約90°回転させたところで上方に引き上げて、リップ掛止部3を野縁9のリップ部93に掛止させる。
【0032】
このように本第一実施形態の天井施工用クリップ1Aは、開口幅の狭い野縁9に対して、上方から挿入して回転させ、上方に引き上げることで、容易にリップ掛止部3を野縁9のリップ部93に掛止させ野縁9を支持することができる。
【0033】
また、本第一実施形態におけるリップ掛止部3は、リップ部93に沿って所定の幅を有しているためリップ部93を点ではなく線で支持することで、天井施工用クリップ1Aに対する野縁9のぐらつきを抑えることもできる。
【0034】
次に、野縁受け8を野縁9と天板部5との間に配置し、背面板部4に接するまで挿入する。このとき本第一実施形態では、図4に示すように、略断面コの字状の野縁受け8の開口側を背面板部4側となるように配置しているが、これに限定されるものではなく、図示しないが、前記野縁受け8の閉口側を背面板部4側となるように配置してもよい。
【0035】
そして、ボルト挿通孔6からボルト12を挿入し、先端を底板部2に形成されている雌ねじ孔7に螺合させる。ボルト12は、六角形状の回転頭部121をレンチ等により回転させてもよく、回転頭部121のリセス122を用いてプラスドライバーにより回転させてもよい。
【0036】
これにより野縁受け8は、図4に示すように、上下方向は野縁9と天板部5とによって挟持され、側面方向にはボルト12と背面板部4とにより左右の動きが規制される。また、ボルト12は奥深くまで螺合されて容易には弛むことが無いため、地震による震動程度では外れない。
【0037】
また、本第一実施形態におけるボルト12は、座付のボルトのため、座面123の一部が野縁受け8にかかるように配置される。そのため、天板部5は、野縁受け8と座面123とにより挟持される状態となり、天板部5がボルト12の締結力や地震等の外力により折れ曲がらないための補強にもなる。
【0038】
以上のような本第一実施形態の天井施工用クリップ1Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.施工は、天井施工用クリップ1Aを野縁9の側壁部92,92間で回転させ、ボルト12を螺合させるだけで完了し熟練を要さないため、だれでも迅速かつ確実に施工を行うことができる。
2.ボルト12を用いて野縁受け8と野縁9とを強固に固定されることで、耐震性が飛躍的に向上し、地震による震動程度では外れることがなくなる。
【0039】
次に、本発明に係る天井施工用クリップの第二実施形態について図5および図6を用いて説明する。なお、本第二実施形態の天井施工用クリップ1Bのうち、上述した第一実施形態の構成と同等または相当する構成については、再度の説明を省略する。
【0040】
本第二実施形態における野縁9は、開口幅が約42mmのものである。そのため、本第二実施形態におけるリップ掛止部3,3同士は、第一実施形態に比べて離れた位置で上方に折り曲げられている。
【0041】
また、本第二実施形態における背面板部4は、野縁受け8を支持するときの安定性を高めるためには幅は広い方がよいが、後述するように施工の際に前後方向(図6(c)における左右方向)に傾けながら側壁部92,92間に配置させるため、背面板部4の幅はリップ部93に当接しない寸法範囲に限定して形成されている。本第二実施形態では、背面板部4の幅が約30mmに形成されている。
【0042】
本第二実施形態における天板部5は、図5に示すように、上下平行に配置された下方天板部51と上方天板部52とで構成されている。下方天板部51は、第一実施形態における天板部5と同様、ボルト挿通孔6が形成されている。
【0043】
一方、上方天板部52は、前記下方天板部51の先端から延出された延出部分を上方に折り返されることにより、下方天板部51の上方に配置されている。また、前記ボルト挿通孔6と同軸上に雌ねじ孔53が形成されている。当該上方天板部52の雌ねじ孔53は、底板部2に形成された雌ねじ孔7と同様に、所定の箇所にバーリングにて下孔を形成し、タッピング加工することにより形成されている。
【0044】
また、上方天板部52の先端側には、支持突出部54が折り曲げ形成されており、その寸法は下方天板部51に折り返されたことによって形成される隙間に相当する長さを備えている。
【0045】
さらに、本第二実施形態の天井施工用クリップ1Bには、図6(a)に示すように、上方天板部52の雌ねじ孔53に予めボルト12が螺合されており、速やかに当該ボルト12による締結作業が進められるようになっている。なお、前記ボルト12は、先端側が雄ねじ124で、基端側が雄ねじの無い軸部125であるいわゆる半ねじのボルトである。前記軸部125は、上方天板部52の雌ねじ孔53に挿通可能にするため当該雌ねじ孔53の内径よりも細く形成されている。
【0046】
次に、本第二実施形態の天井施工用クリップ1Bにおける各構成の作用について、取り付け方法とともに説明する。
【0047】
本第二実施形態の天井施工用クリップ1Bは、図6(a)に示すように、ボルト12が螺合された状態である。よって、天井施工用クリップ1Bを一体的な一つの部品として施工作業を行うことができる。
【0048】
前記天井施工用クリップ1Bを野縁9に掛止させる場合、野縁9の開口幅が大きく寸法的に余裕があるため、図6(b)に示すように、底板部2を傾けながら野縁9の側壁部92,92間に配置することができる。このとき、背面板部4は、傾けてもリップ部93に当接しない寸法の約30mmに形成されているため、前記天井施工用クリップ1Bは背面板部4をリップ部93に干渉させずに側壁部92,92間に配置することができる。
【0049】
そして、天井施工用クリップ1Bを垂直に起こし、回転させずに上に引き上げることにより、リップ掛止部3が野縁9のリップ部93に掛止する。その後、図6(c)に示すように、野縁受け8を野縁9と下方天板部51との間に配置し、背面板部4に接するまで挿入する。そして、ボルト12が予め上方天板部52に螺合されているため、そのまま回転させて上方天板部52の雌ねじ孔53を貫通させるとともに、底板部2の雌ねじ孔7に螺合させればよい。この際、上方天板部52の先端側に形成された支持突出部54により上方天板部52と下方天板部51との平行が保たれているため、ボルト12の先端を底板部2の雌ねじ孔7に螺合させやすい。
【0050】
このように本第二実施形態の天井施工用クリップ1Bによれば、ボルト12を予め備えることで、一部品としての作業が可能となるためより効率の良い施工を行うことができるという効果を得ることができる。また、天板部5を下方天板部51と上方天板部52の二重構造にしたため、天板部5の強度が増すという効果も得ることができる。
【0051】
なお、本発明に係る天井施工用クリップは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、図7に示すように、第一実施形態のような天板部5が1枚の天井施工用クリップにおいて、開口幅が広い野縁9を支持させるため、リップ掛止部3の幅を長く形成してもよい。また、図8に示すように、第二実施形態のような天板部5が2枚の天井施工用クリップにおいて、開口幅が狭い野縁9を支持させるため、底板部2の一側端を円弧状とするとともに、背面板部4の下端側を細くし、リップ掛止部3の幅を狭くして回転可能な構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B 天井施工用クリップ
2 底板部
3 リップ掛止部
4 背面板部
5 天板部
6 ボルト挿通孔
7 雌ねじ孔
8 野縁受け
9 野縁
10 吊りボルト
11 天井施工用ハンガー
12 ボルト
51 下方天板部
52 上方天板部
53 雌ねじ孔
54 支持突出部
91 底壁部
92 側壁部
93 リップ部
121 回転頭部
122 リセス
123 座面
124 雄ねじ
125 軸部
【要約】
【課題】 耐震性が高く、かつ熟練を要さずに確実な施工を能率良く行うことのできる、天井施工用クリップを提供する。
【解決手段】 建築構造体に支持された長尺形状の野縁受け8の下方に、長尺形状の野縁9を、前記野縁受け8と直交するように取り付けるための天井施工用クリップ1Aであって、野縁9の側壁部92,92間に配置可能な寸法に形成された底板部2と、この底板部2の両側端において一対のリップ部93,93を掛止しうる一対のリップ掛止部3,3と、底板部2から上方向に立ち上げられた背面板部4と、この背面板部4の野縁受け8の高さに相当する高さ位置から略直角方向に延出された天板部5と、この天板部5に開口されてなるボルト挿通孔6と、このボルト挿通孔6に対向する底板部2に形成されてなる雌ねじ孔7とを有する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8