(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6099179
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/26 20060101AFI20170313BHJP
F26B 5/00 20060101ALI20170313BHJP
F26B 5/04 20060101ALI20170313BHJP
F26B 11/02 20060101ALI20170313BHJP
A23B 7/02 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
B01D53/26
F26B5/00
F26B5/04
F26B11/02
B01D53/26 100
!A23B7/02
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-141402(P2016-141402)
(22)【出願日】2016年7月19日
【審査請求日】2016年8月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515342125
【氏名又は名称】有限会社荒井家具製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100011
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 省三
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 良男
(72)【発明者】
【氏名】荒井 康芳
【審査官】
土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−106766(JP,A)
【文献】
特開平09−048006(JP,A)
【文献】
特開2003−227682(JP,A)
【文献】
特開平11−148774(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/129402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26
F26B 5/00
F26B 5/04
F26B 11/02
A23B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主乾燥室と、
前記主乾燥室内に設けられた熱源と、
前記主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための被乾燥物設置室と
を具備し、
前記主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は2μm以下かつ0.4nm以上の直径の孔を有するシートを含有する固形透湿構造によって構成され、
さらに、前記主乾燥室内に設けられ、前記固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるための送風ファンを具備する乾燥装置。
【請求項2】
ロータリーキルン式主乾燥室と、
前記ロータリーキルン式主乾燥室内に設けられた熱源と
を具備し、
前記ロータリーキルン式主乾燥室の円筒壁の少なくとも一部は2μm以下かつ0.4nm以上の直径の孔を有するシートを含有する固形透湿構造によって構成され、
さらに、前記ロータリーキルン式主乾燥室内に設けられ、前記固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるための送風ファンを具備する乾燥装置。
【請求項3】
主乾燥室と、
前記主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための減圧乾燥室と、
前記主乾燥室と前記減圧乾燥室との間の近傍に設けられた減圧ファンと
を具備し、
前記主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は2μm以下かつ0.4nm以上の直径の孔を有するシートを含有する固形透湿構造によって構成され、
前記減圧ファンは前記固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるためのものである乾燥装置。
【請求項4】
さらに、前記主乾燥室と前記減圧乾燥室との間の近傍に設けられた循環ファンを具備する請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
さらに、前記減圧乾燥室に設けられた熱源を具備する請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項6】
前記熱源はヒートパイプである請求項1、2又は5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
前記ヒートパイプはコンダクションチューブ(商標)である請求項6に記載の乾燥装置。
【請求項8】
さらに、
前記主乾燥室を収容する非透湿室と、
前記非透湿室の空気出口からの空気を冷却して蒸発成分を凝縮する凝縮手段と、
前記蒸発成分を除去した乾燥空気を加熱する加熱手段と、
前記非透湿室の空気入口へ戻すための送風手段と
を具備する請求項1〜7のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項9】
さらに、凝縮した前記蒸発成分を蓄積するドレーンユニットを具備する請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項10】
前記非透湿室はナノセルロース及び/又はナノファイバを含む請求項8に記載の乾燥装置。
【請求項11】
前記固形透湿構造はナノセルロース及びポリエステルシートの1つを含有する請求項1、2又は3の乾燥装置。
【請求項12】
前記ナノセルロースはセルロースナノファイバ及び/又はセルロースナノクリスタルである請求項11に記載の乾燥装置。
【請求項13】
前記ポリエステルシートはポリエステル平織である請求項11に記載の乾燥装置。
【請求項14】
前記固形透湿構造は、さらに、調質材を含有する請求項1、2又は3に記載の乾燥装置。
【請求項15】
前記調質材は炭化物粒子である請求項14に記載の乾燥装置。
【請求項16】
前記固形透湿構造は、さらに、抗菌性成分を含有する請求項1、2又は3に記載の乾燥装置。
【請求項17】
前記抗菌性成分はフルボ酸及び/又は酢液成分である請求項16に記載の乾燥装置。
【請求項18】
前記抗菌性成分は抗菌性ナノ粒子(商標)である請求項16に記載の乾燥装置。
【請求項19】
前記固形透湿構造をメッシュ状部材で固定した請求項1、2又は3に記載の乾燥装置。
【請求項20】
前記固形透湿構造を所定サイズでユニット化した請求項1、2又は3に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
固形透湿構造を用いた乾燥装置たとえば高含水率バイオマスを低温(35°C〜60°C)乾燥させるための乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品有機廃棄物、木材等の固有形状の高含有水率バイオマスを対象とする乾燥装置は、箱型である。この種の箱型乾燥装置として、真空方式、減圧方式、ヒートポンプ方式及び熱風方式(参照:非特許文献1)がある。
【0003】
真空方式は真空ポンプを必要とし、また、減圧方式は減圧のための減圧ファン、循環のための循環ファンを必要とし、さらに、ヒートポンプ方式はヒートポンプを必要とし、従って、乾燥装置の製造コスト及び消費電力が高い。
【0004】
これに対し、熱風方式は、ヒータ及び送風ファンを必要とするが製造コストは低い。しかしながら、熱風方式は、熱風が外部から送り込まれ対象物の水分を蒸発させて外部へ排気される空気非循環式なので、乾燥に使われる熱量は投入熱量の25〜40%程度であり、残りの熱量は主に排出熱風によって排出される(参照:非特許文献2)。従って、消費電力は高い。尚、熱風方式に空気循環方式を導入できるが、この場合には、低温で操作した場合、湿度の増加によって乾燥速度が大きく低下し、さらに、消費電力が高くなる(参照:非特許文献3)。
【0005】
他方、真空ポンプ、減圧ファン、循環ファン、ヒートポンプ、送風ファン等の機器を用いない第1の従来の乾燥装置においては、乾燥室の天井、壁、床等の躯体を内側板材、中間層及び外側板材とし、中間層に多量の潮解性の吸湿剤を含浸又は塗布した吸湿材料(たとえばダンボール紙)を隙間なく挿入してあり、さらに、乾燥室内に遠赤外線を放出する天然鉱石を設けてある(参照:特許文献1)。従って、内側板材から蒸発する水分を短時間に中間層が吸湿して拡散し、中間層が吸湿した水分を外側板材が排出する。従って、吸湿剤による透湿性及び板材による断熱性の両立を図っている。
【0006】
尚、透湿性とは、3つの性質、つまり内側の水蒸気を吸湿する吸湿性、吸湿された水蒸気を外側へ向って拡散する内部拡散性、及び拡散された水蒸気を外側へ脱湿する脱湿性をいう。
【0007】
また、真空ポンプ、減圧ファン、循環ファン、ヒートポンプ等の機器を用いない第2の従来の乾燥装置においては、乾燥室の天井、壁、床等の躯体を板材で構成し、さらに、熱を発生する熱源及び熱源からの熱を乾燥室に送り込む送風手段を設けている(参照:特許文献2)。これにより、内側の水蒸気を外側へ放出する透湿性を確保できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−132911号公報
【特許文献2】特開2011−217628号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.102(2011)
【非特許文献2】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.130(2011)
【非特許文献3】中村ら、“はじめての乾燥技術”、日刊工業新聞社、p.132(2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の第1の従来の乾燥装置は、透湿性及び断熱性の両立を図ることができるも、潮解性の吸湿剤として用いる塩類等が安全上食品を対象とすることができず、しかも、内側板材及び外側板材の二重壁の間に中間層を挿入する三重構造のために製造コストが高いという課題がある。
【0011】
また、上述の第2の従来の乾燥装置においては、潮解性の吸湿剤を用いていない。しかしながら、板材を薄くすれば高い透湿性が得られるが高い断熱性は得られず、他方、板材を厚くすれば高い断熱性が得られるが高い透湿性は得られない。つまり、透湿性及び断熱性はトレードオフの関係にあり、両立を図れないという課題がある。
【0012】
さらに、上述の第1、第2の従来の乾燥装置においては、乾燥装置の内外で発生するカビ菌が増殖することを防止する手段がないので、被乾燥物上でカビ菌の繁殖を招くことがあるという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の課題を解決するために、本発明に係る水蒸気流制御
ユニットは、2μm以下かつ0.4nm以上の直径の孔を有するシートを含有する
固形透湿構造と、固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるための送風ファン、減圧ファン(空気流発生手段)とを具備するものである。2μmより小さいサイズはすべての胞子より小さく、このような直径の孔を有するシートを含有する固形透湿構造は空気流の存在の基で高い透湿性を有すると共に、高い断熱性を有する。
【0014】
上述の固形透湿構造には抗菌性成分を含有させることができる。これにより、カビ菌の増殖を防止する。
【0015】
また、本発明に係る乾燥装置は、主乾燥室と、主乾燥室内に設けられた熱源と、主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための被乾燥物設置室とを具備し、主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は上述の固形透湿構造によって構成され
、さらに、主乾燥室内に設けられ、固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるための送風ファンを具備するものである。
【0016】
さらに、本発明に係る乾燥装置は、主乾燥室と、主乾燥室内に設けられ、被乾燥物を設置するための減圧乾燥室と、主乾燥室と減圧乾燥室との間の近傍に設けられた減圧ファンとを具備し、主乾燥室の天井、壁、床、開閉扉の少なくとも一部は上述の固形透湿構造によって構成され
、減圧ファンは固形透湿構造の一表面に沿って空気流を発生させるためのものである。
【0017】
さらにまた、上述の乾燥装置は、主乾燥室を収容する非透湿室と、非透湿室の空気出口からの空気を冷却して蒸発成分を凝縮する凝縮手段と、蒸発成分を除去した乾燥空気を加熱する加熱手段と、非透湿室の空気入口へ戻すための送風手段とを具備する。特にこれらを実現する手段としてヒートポンプ又は吸着冷凍機が望ましい。また、乾燥装置は、凝縮した蒸発成分を蓄積するドレーンユニットを具備する。この乾燥装置は特に薬草の乾燥に適する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、固形透湿構造は空気流の存在の基で高い透湿性を有すると共に、高い断熱性を有するので、これを用いた乾燥装置の消費電力を低減できる。また、必要とする機器が少ないので、乾燥装置の製造コストも低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る水蒸気流制御ユニットの第1の
例を示す断面図である。
【
図2】
図1の固形透湿構造の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図3】本発明に係る水蒸気流制御ユニットの第2の
例を示す断面図である。
【
図4】
図3の固形透湿構造の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1(
図3)の固形透湿構造の変更例を示す斜視図である。
【
図6】
図1(
図3)の固形透湿構造を用いた
乾燥装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【
図7】
図6の乾燥装置の効果を説明する表であり、(A)は市販乾燥装置の乾燥処理データを示し、(B)は
図6の乾燥装置の乾燥処理データを示す。
【
図8】
図1(
図3)の固形透湿構造を用いた
乾燥装置の第2の実施の形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明に係る水蒸気流制御ユニットの第1の
例を示す断面図である。
【0021】
図1において、固形透湿構造1はシート状をなしており、セルロースナノファイバ及び/又はセルロースナノクリスタルであるナノセルロース1aよりなる。空気流発生手段2はたとえばファンであり、固形透湿構造1の一表面にエアカーテンのごとき空気流Aを発生させるものである。
【0022】
セルロースナノファイバは幅4〜100nm、長さ5μm以上の植物繊維であり、セルロースナノクリスタルは幅10〜50nm、長さ100〜500nmの植物繊維の結晶である。他方、水蒸気Vの水蒸気粒子の直径(長手方向サイズ)は0.4nm程度である。つまり、ナノセルロース1aはすべての胞子(2μmより大)より小さくかつ水蒸気分子の長手方向サイズ(0.4nm)より大きい隙間を有する。従って、菌糸と胞子よりなるカビ等の有害微生物の移動を防止すると共に、水蒸気Vはナノセルロース間を通過できる。
【0023】
図1の水蒸気流制御ユニットにおいては、空気流Aの存在の基で固形透湿構造1が水蒸気Vの吸湿性、内部拡散性及び脱湿性、つまり透湿性を有し、空気流Aによって固形透湿構造1の透湿性は維持される。詳しくは、水蒸気Vは固形透湿構造1の空気流A側部分1Aによって吸湿され、さらに固形透湿構造1の内部1Bによって吸湿及び内部拡散され、最後に、固形透湿構造1の空気流Aの反対部分1Cから脱湿され、高い透湿性を呈する。また、固形透湿構造1のナノセルロースは適切な厚さtで高い断熱性を呈する。従って、固形透湿構造1の厚さtを適切な値にすると、
図1の水蒸気流制御ユニットは高い透湿性及び高い断熱性を発揮する。たとえば、上記厚さtは、
t=10〜30mm
である。
【0024】
図1の固形透湿構造1には、調質材として炭化物粒子を含ませることができる。これにより、調質性が上昇する。
図1の固形透湿構造1には、天然物質又はバイオマスを原料として産生された抗菌性成分を含む溶媒に含浸させて乾燥させることができる。また、この場合、溶媒は天然抗菌性物質であるフルボ酸液及び/又は酢液とすることができる。さらに、抗菌性成分としては株式会社ナノカム製の抗菌性ナノ粒子(商標)(抗菌アクリル系ナノポリマ粒子)を用いてもよい。
【0025】
以下に、
図1の固形透湿構造1の製造方法について
図2を参照して説明する。
【0026】
始めに、ナノセルロース準備工程201において、ナノセルロースを準備する。たとえば、セルロースナノファイバであれば、植物細胞壁を機械的解繊等によって製造され、他方、セルロースナノクリスタルであれば、酸加水分解によって製造される。
【0027】
次に、分散工程202において、セルロースナノファイバ又はセルロースナノクリスタルを溶媒たとえば水に分散して型に入れる。この場合、調質材として炭化物粒子を溶媒に分散させることもできる。さらに、天然又はバイオマスを原料として産生された抗菌性成分を分散させることもできる。たとえば、溶媒はフルボ酸液及び/又は酢液とする。さらに、抗菌性成分としては、株式会社ナノカム製の抗菌性ナノ粒子(商標)を分散させてもよい。
【0028】
次に、乾燥工程203にて溶媒を蒸発させてセルロースナノファイバ又はセルロースナノクリスタルを乾燥させる。
【0029】
最後に、切断工程204において、セルロースナノファイバ又はセルロースナノクリスタルを型から取出して所望の大きさに切断する。
【0030】
尚、切断されたナノセルロース自身が固形性つまり機械的強度を維持するので、固形性を維持するための手段は不要である。
【0031】
図3は本発明に係る水蒸気流制御ユニットの第2の
例を示す断面図である。
【0032】
図3においては、固形透湿構造1’はシート状をなしており、ポリエステルシート1’aよりなる。ポリエステルシート1’a自体は固形を維持できるが、さらに固形を維持できるように、ポリエステルシート1’aを
図3に示すごとくポリエステル平織で構成する。ポリエステルシート1’aは直径0.1〜100μm程度の孔を有する。つまり、ポリエステルシート1’aはすべての胞子(2μmより大)より小さくかつ水蒸気分子の長手方向サイズ(0.4nm)より大きい隙間を有する。従って、菌糸と胞子よりなるカビ等の有害微生物の移動を防止すると共に、直径(長手方向サイズ)0.4nm程度の水蒸気Vはポリエステルシート1’aを通過できる。この結果、ポリエステルシート1’aは適切な厚さtで空気流Aの存在の基で高い透湿性を有すると共に高い断熱性を有する。この場合も、固形透湿構造1’の厚さtは、
t=10〜30mm
である。
【0033】
以下に、
図3の固形透湿構造1の製造方法について
図4を参照して説明する。
【0034】
始めに、ポリエステル平織準備工程401において、ポリエステル平織を準備する。
【0035】
次に、分散工程402において、ポリエステル平織を溶媒たとえば水に分散して型に入れる。この場合、調質材として炭化物粒子を溶媒に分散させることもできる。さらに、天然又はバイオマスを原料として産生された抗菌性成分を分散させることもできる。たとえば、溶媒はフルボ酸液及び/又は酢液とする。さらに、抗菌性成分としては、株式会社ナノカム製の抗菌性ナノ粒子(商標)を分散させてもよい。
【0036】
次に、乾燥工程403にて溶媒を蒸発させてポリエステル平織を乾燥させる。
【0037】
最後に、切断工程404において、ポリエステル平織を型から取出して所望の大きさに切断する。
【0038】
尚、切断されたポリエステル平織自身が固形性つまり機械的強度を維持するので、固形性を維持するための手段は不要である。
【0039】
図5の(A)に示すごとく、固形透湿構造1の機械的強度をさらに保持するために、
図1、
図3の固形透湿構造1、1’は、メッシュ状部材3−1、3−2たとえばメラミン焼き付け塗装した直径2.5mmの鉄丸棒を交叉させることによって固定する。
【0040】
また、
図5の(B)に示すごとく、組立、解体、撤去を容易にするために、
図1、
図3の固形透湿構造1、1’は所定サイズのユニット4にする。
【0041】
図6は
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)を用いた
乾燥装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【0042】
図6において、乾燥装置は、天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)よりなる主乾燥室10、被乾燥物を設置するための3段のトレー14−1、14−2、14−3を含む被乾燥物設置室14、ヒータ15、送風ファン16−1、16−2、主乾燥室10の温度Tを検出する温度センサ17、及び温度センサ17の温度Tに基づいてヒータ15及び送風ファン16−1、16−2を制御する制御ユニット(マイクロコンピュータ)18よりなる。
【0043】
図6において、主乾燥室10の天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)は
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)によって構成されている。また、天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)の内側表面には空気流発生手段としての送風ファン16−1、16−2による空気流が存在する。従って、このような空気流発生手段と共に、天井11、壁12、床13及び開閉扉は、それぞれ、
図1、
図3の水蒸気流制御ユニットを構成する。
【0044】
図6の乾燥装置の動作を以下に説明する。
【0045】
始めに、被乾燥物たとえば野菜、薬草等を被乾燥物設置室14のトレー14−1、14−2、14−3に設置する。次に、所定の温度T
0たとえば40℃を設定し、ヒータ15及び送風ファン16−1、16−2を起動する。制御ユニット18は温度センサ17の温度Tが所定の温度T
0となるようにヒータ15をオンオフ制御する。この結果、ヒータ15によって加温された空気は、太線矢印に示すごとく、トレー14−1、14−2、14−3内を通過して被乾燥物を乾燥させ、天井11、壁12に沿って下降して循環する。このとき、乾燥を終えた空気の水蒸気圧は上昇し、その空気に含まれる水蒸気は、細線矢印に示すごとく、天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)を構成する固形透湿構造によって乾燥装置の内側から外側へ排出される。
【0046】
天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)の固形透湿構造の内部は循環式となり、乾燥に要した熱以外の熱は固形透湿構造の断熱性によって漏出することなく、又は漏出されてもその熱は小さく、非循環式の乾燥装置内で循環される。一方、水蒸気は固形透湿構造によって排出されるので、循環される空気の水蒸気圧は低くなり、被乾燥物を乾燥できる。
【0047】
市販の乾燥装置(東明テック(株)製、製造名:プチマレンギ、モデル名:TTM−435S)と
図6に示す乾燥装置との比較を行った。共通の条件は次の通りである。
設定乾燥温度:50℃
乾燥時間:5時間
被乾燥試料(1個当り):直径30−70mm、幅12mmの輪切り野菜
乾燥開始時乾燥装置外温度:21.5℃
乾燥終了時乾燥装置外温度:17.0℃
乾燥開始時乾燥装置外湿度:38.5%
乾燥終了時乾燥装置外湿度:40.0%
また、
図6の乾燥装置の条件は次の通りである。
寸法:横535mm、奥行き415mm、縦355mm
天井、壁、床面の6面:
図3のポリエステルシートよりなる固形透湿構造1’
【0048】
市販乾燥装置については、
図7の(A)に示す結果が得られ、
図6の乾燥装置については、
図7の(B)に示す結果が得られた。すなわち、水分減少量は、市販乾燥装置については、129.3であり、
図6の乾燥装置については、125.4であった。従って、乾燥速度はほとんど変わらなかった。他方、乾燥に要した消費電力量は、市販乾燥装置については、0.89kWhであり、
図6の乾燥装置については、0.55kWhであった。従って、大きな消費電力低減効果が認められた。
【0049】
尚、上述の
図6に示す乾燥装置においては、天井11、壁12、床13及び開閉扉を
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)によって構成しているが、天井11、壁12、床13及び開閉扉の少なくとも一部を
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)によって構成すればよい。
【0050】
また、上述の
図6に示す乾燥装置においては、送風ファン16−1、16−2を設けずに空気の流れは自然対流としてもよい。この場合、空気流発生手段は被乾燥物設置室14自体である。
【0051】
さらに、上述の
図6に示す乾燥装置においては、熱交換器よりなるヒータ15は通常高い電力を必要とする。従って、ヒータ15の代りにヒートパイプたとえばコンダクションチューブ(商標)を用いて外部より100℃以下の低熱を利用してもよい。
【0052】
通常の熱交換器に比べ、ヒートパイプは媒体の気化及び液化によって熱を伝達するので、伝熱速度が大きく与熱媒体と吸熱媒体との温度差が小さくても熱を伝達できる。特に、ヒートパイプの中でも、コンダクションチューブ(商標)においては、外側のチャンバと内側のコアパイプとからなる二重管構造の減圧密閉チャンバ内に蒸発性作動流体を封入し、蒸発性作動流体の気化及び液化により、コアパイプを流れる流体とチャンバ外部の流体との間の熱交換を行う。従って、気化した媒体が管の内部に液化する際に超音波や遠赤外線を発生するので、被乾燥物の内部に熱を伝えることができ、乾燥速度の上昇、乾燥の均一性を実現できる。
【0053】
さらに、上述の
図6に示す乾燥装置はロータリーキルン(円筒)式主乾燥室を有する乾燥装置にも適用できる。ロータリーキルン式主乾燥室は横向き円筒形をなしており、おから等の乾燥に適する。この場合には、ロータリーキルン式主乾燥室の円筒壁の少なくとも一部を
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)によって構成する。
【0054】
図8は
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)を用いた
乾燥装置の第2の実施の形態を示す概略図である。
【0055】
図8において、乾燥装置は、主乾燥室20、主乾燥室20内に設けられ、被乾燥物を設置するための減圧乾燥室30、及び制御ユニット(マイクロコンピュータ)40よりなる。
【0056】
主乾燥室20は、天井11、壁12、床13及び開閉扉(図示せず)よりなる。
【0057】
減圧乾燥室30には、被乾燥物を設置するための3段のトレー31−1、31−2、31−3、主乾燥室20との境界近傍に設けられた減圧ファン32及び循環ファン33、減圧乾燥室30の温度T及び圧力Pを検出する温度センサ34及び圧力センサ35が設けられている。
【0058】
制御ユニット40は温度センサ34の温度T及び圧力センサ35の圧力Pに基づいて減圧ファン32及び循環ファン33を制御する。
【0059】
図8において、主乾燥室20の天井21、壁22、床23及び開閉扉(図示せず)は
図1(
図3)の固形透湿構造1(1’)をなしている。また、天井21、壁22、床23及び開閉扉(図示せず)の内側表面には空気流発生手段としての減圧ファン32による空気流が存在する。従って、このような空気流発生手段と共に、天井21、壁22、床23及び開閉扉(図示せず)は、それぞれ、
図1、
図3の水蒸気流制御ユニットを構成する。また、主乾燥室20は断熱されているので、減圧乾燥室30は断熱する必要がない。
【0060】
減圧乾燥室30においては、減圧ファン32及び循環ファン33のオンオフ動作により減圧乾燥室30内の空気は主乾燥室20内に排気され、減圧乾燥室30内の圧力は減圧される。このとき、減圧ファン32及び循環ファン33から発生する熱により主乾燥室20から減圧乾燥室30内に吸入される空気の温度は上昇する。このようにして、減圧下での乾燥が行われる。尚、熱源として、熱交換器又はヒートパイプ特にコンダクションチューブ(商標)を減圧乾燥室30に設けてもよい。
【0061】
図8の乾燥装置の動作を以下に説明する。
【0062】
始めに、被乾燥物たとえば野菜、薬草等をトレー31−1、31−2、31−3に載せる。次に、所定の温度T
0及び圧力P
0を設定し、減圧ファン32及び循環ファン33を起動する。制御ユニット40は温度センサ34の温度Tが所定の温度T
0となるようにかつ圧力センサ35の圧力Pが所定圧力P
0となるように減圧ファン32及び循環ファン33をオンオフ制御する。この結果、主乾燥室20から吸入された空気は、太線矢印に示すごとく、トレー31−1、31−2、31−3内を通過して被乾燥物を乾燥させ、天井21、壁22に沿って下降して循環する。このとき、乾燥を終えた空気の水蒸気圧は上昇し、その空気に含まれる水蒸気は、細線矢印に示すごとく、天井21、壁22、床23及び開閉扉(図示せず)を構成する固形透湿構造によって主乾燥室20の内側から外側へ排出される。
【0063】
このように、
図8に示す乾燥装置においては、従来の減圧乾燥装置において必要としていた減圧乾燥室の断熱が不要となった分、製造コストを低減できる。また、吸気と排気との間の熱変換が不要となった分、消費電力を低くできる。
【0064】
尚、上述の
図8に示す乾燥装置においては、減圧ファン32のみで減圧乾燥室30の圧力及び温度を制御できれば、循環ファン33は不要となる。
【0065】
図9は
図6、
図8の乾燥装置の変更例を示す概略図である。
【0066】
図9においては、
図6(
図8)の固形透湿構造の主乾燥室10(20)を非透湿室に収容している。非透湿室50は断熱性、非断熱性のいずれでもよく、たとえばナノセルロース及び/又はナノファイバを含む。非透湿室50はヒートポンプ51の1次側、2次側に接続された空気出口50−1、空気入口50−2を有する。ヒートポンプ51の1次側では、非透湿室50の空気出口50−1からの空気を冷却して蒸発成分を凝縮してドレーンユニット52に排出する。他方、蒸発成分が排出された乾燥空気はヒートポンプ51の2次側で加熱され、非透湿室50の空気入口50−2に戻される。非透湿室50の温度は自由にたとえば20℃に設定できる。
図9の乾燥装置は、特に、薬草の乾燥に用いた場合に有効であり、薬草の成分をドレーンユニット52に回収できる。
【0067】
尚、本発明は上述の実施の形態の自明の範囲内でのいかなる変更にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る水蒸気流制御ユニットを用いた乾燥装置は、野菜、薬草等の乾燥装置の外、木材の乾燥装置、防水装置等に利用できる。
【符号の説明】
【0069】
1、1’:固形透湿構造
1a:ナノセルロース
1’a:ポリエステルシート
2:空気流発生手段
3−1、3−2:メッシュ状部材
4:ユニット
10:主乾燥室
11:天井
12:壁
13:床
14:被乾燥物設置室
14−1、14−2、14−3:トレー
15:ヒータ
16−1、16−2:送風ファン
17:温度センサ
18:制御ユニット
20:主乾燥室
21:天井
22:壁
23:床
30:減圧乾燥室
31−1、31−2、31−3:トレー
32:減圧ファン
33:循環ファン
34:温度センサ
35:圧力センサ
40:制御ユニット
50:非透湿室
50−1:空気出口
50−2:空気入口
51:ヒートポンプ
52:ドレーンユニット
【要約】
【課題】 高い透湿性及び高い断熱性を有する水蒸気流制御ユニット及びこれを用いた乾燥装置を提供する。
【解決手段】 シート状の2μm以下かつ0.4nm以上の直径の孔を有するシートを含有する固形透湿構造1はセルロースナノファイバ及び/又はセルロースナノクリスタルであるナノセルロース1aよりなる。空気流発生手段2はたとえばファンであり、固形透湿構造1の一表面にエアカーテンのごとき空気流Aを発生させるものである。空気流Aの存在の基で固形透湿構造1が水蒸気Vの吸湿性、内部拡散性及び脱湿性、つまり透湿性を有し、空気流Aによって固形透湿構造1の透湿性は維持される。固形透湿構造1のナノセルロースは適切な厚さtで高い透湿性及び高い断熱性を呈する。
【選択図】
図1