【文献】
Biosci. Biotechnol. Biochem., 2012, Vol. 76, No. 4, pp. 671-678
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記配合工程は、前記反応槽内に投入されたキャッサバ粕と、前記α−アミラーゼ、前記グルコアミラーゼおよび前記アルコール発酵酵母とが、前記反応槽内で多層状となるように、前記キャッサバ粕に、前記α−アミラーゼ、前記グルコアミラーゼおよび前記アルコール発酵酵母を添加する
ことを特徴とする請求項1に記載のキャッサバ粕の処理方法。
前記アルコール発酵酵母は、サッカロミセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはクリベロミセス属マーキシアナス(Kluyveromyce marxianus)である
ことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のキャッサバ粕の処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生ゴミやキャッサバパルプ(キャッサバ粕)などの廃棄物やバイオマスからエタノールを製造する従来の方法では、廃棄物中の澱粉を効率よく糖化するために攪拌する際、廃棄物をそのまま攪拌したのでは、高粘度であることから、攪拌のための消費エネルギーが大きくなり、エタノールを製造するためのコストが増大してしまう不都合がある。特に、キャッサバ粕は高粘度であり、攪拌が困難である。一方、水を加えて攪拌しやすくすることも考えられるが、廃棄物中の澱粉含有量が少ないことから生成されるエタノールの含有量も少なくなり、最終的にエタノールを回収する際に蒸留するなどのエネルギーが必要となる不都合がある。
また、上述したような澱粉からエタノールを製造する方法では、まず90℃程度でα−アミラーゼで加水分解して液化した後、60℃程度まで冷却してからグルコアミラーゼで糖化し、さらに30℃〜35℃程度まで冷却した後、この温度範囲が保たれるように冷却を継続しつつ酵母によりアルコール発酵させてエタノールを生成させる必要がある。アルコール発酵の際に、耐熱性酵母を用いることで冷却エネルギーを削減することも検討されているが、澱粉からエタノールを製造するまで、加熱と冷却とを実施することとなり、大きな運転エネルギーが必要となる。これらのように、従来の方法では、廃棄物などを再生可能エネルギーとして利用するために大きなエネルギーが必要で、原料の入手は低コストで容易に入手できても、運転コストが大きく、運転コストの低減が望まれている。
【0006】
本発明は、キャッサバ粕から容易に効率よくエタノールを生成できるキャッサバ粕の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャッサバ粕の処理方法は、キャッサバ粕からエタノールを生成させるキャッサバ粕の処理方法であって、含水率30質量%以上のキャッサバ粕
を、水蒸気により60℃以上120℃以下で加熱した後、α−アミラーゼ
を前記キャッサバ粕1g当たり9×10−5U以上600U以下、グルコアミラーゼ
をキャッサバ粕1g当たり3×10−4U以上200U以下、およびアルコール発酵酵母を
初期酵母濃度が光学密度で0.05以上10以下で添加
し、混合して混合物を得る配合工程と、前記
混合物を反応槽内
で、攪拌および加熱することなく24時間以上120時間以下で静置させてアルコール発酵させる反応工程と、を実施することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明では、前記配合工程は、前記キャッサバ粕と、前記α−アミラーゼ、前記グルコアミラーゼおよび前記アルコール発酵酵母とをライン混合して前記混合物を得る構成とすることが好ましい。
また、本発明では、前記配合工程は、前記反応槽内に投入されたキャッサバ粕と、前記α−アミラーゼ、前記グルコアミラーゼおよび前記アルコール発酵酵母とが、前記反応槽内で多層状となるように、前記キャッサバ粕に、前記α−アミラーゼ、前記グルコアミラーゼおよび前記アルコール発酵酵母を添加する構成とすることが好ましい。
さらに、本発明では、前記配合工程は、リン源及び窒素源として酵母エキスをさらに添加する構成とすることが好ましい。
そして、本発明では、前記配合工程は、前記キャッサバ粕に、セルラーゼ、ペクチナーゼおよびプロテアーゼのうちの少なくともいずれか1つをさらに添加する構成とすることが好ましい。
さらに、本発明では、前記反応工程は、前記反応槽として、上部に投入口、底部にアルコール発酵後の反応生成物を排出する排出口を有したものを用いる構成とすることが好ましい。
また、本発明では、前記反応工程は、前記反応槽内で4時間以上滞留させる構成とすることが好ましい。
そして、本発明では、前記配合工程は、
前記水蒸気による加熱で、前記キャッサバ粕の含水率を50質量%以上とする構成とすることが好ましい。
また、本発明では、前記アルコール発酵酵母は、サッカロミセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはクリベロミセス属マーキシアナス(Kluyveromyce marxianus)である構成とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルコール発酵酵母が配合された含水率30質量%以上のキャッサバ粕を反応槽で滞留させてアルコール発酵させるので、従来のような液化処理を実施した後に、別の容器で糖化・発酵処理を実施する必要がなく、一つの反応槽で、攪拌や温度調整などを実施しなくても長時間を要せずにキャッサバ粕からエタノールを生成でき、キャッサバ粕を効率よく、有効利用できる。
さらに、水蒸気により60℃以上120℃以下で加熱することで、澱粉を糊化できるとともに、水分が供給され、処理効率を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態に係るキャッサバ粕の処理方法を、
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態のキャッサバ粕の処理方法は、キャッサバ粕に酵素および酵母を添加して混合物を得る配合工程S1と、この配合工程S1で得られた混合物を図示しない反応槽に投入してアルコール発酵させる反応工程S2と、を実施する。
【0012】
[配合工程]
配合工程S1では、含水率30質量%以上のキャッサバ粕に、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルコール発酵酵母を添加して混合物を得る。
原料として利用されるキャッサバ粕は、キャッサバ芋からキャッサバスターチを製造する際に排出される廃棄物であり、キャッサバスターチのいずれの製造方法に限られるものでない。
原料に利用するキャッサバ粕として、含水率が30質量%以上、好ましくは70質量%以上90質量%以下のものを用いる。含水率が30質量%より少なくなると、後述する酵素および酵母を添加した後、未分解のキャッサバ粕が残らず分解されるまでに極めて長い時間を要してしまうためである。さらには、含水率が30質量%より少なくなると、エタノール生成時の発熱により、粕の昇温速度が速くなり、酵母の活性が低下してしまうためである。また、含水率が低くなることにより、キャッサバスターチ以外の物質も濃縮されるので、濃縮された物質の影響を受け、エタノール生成が阻害される可能性がある。一方、90質量%より多くなると、後述する反応工程後に得られる反応生成物中のエタノールの濃度が低くなり、後工程でのエタノールの精製に必要なエネルギー量が増大するおそれがあるためである。
ここで、含水率が30質量%の生のキャッサバ粕、すなわちキャッサバ芋から澱粉を抽出した後に廃棄されるキャッサバ粕を用いる場合に限られない。例えば、乾燥されたキャッサバ粕に含水率が30質量%以上、好ましくは70質量%以上90質量%以下となるように水を添加したり、生のキャッサバ粕および乾燥のキャッサバ粕を混合したものに必要に応じて水を添加したりしたものでもよい。
【0013】
α―アミラーゼは、キャッサバ粕1g当たり9×10
−5U以上600U以下、好ましくは8×10
−3U以上0.6U以下で添加する。
ここで、9×10
−5Uより少ないとキャッサバ粕の澱粉を分解するために時間を要してしまい、600Uより多く添加しても、キャッサバ粕が未分解で残留せずにエタノールに分解されるまでの時間の短縮があまり図れず、費用対効果の点で有効ではないためである。
グルコアミラーゼは、キャッサバ粕1g当たり3×10
−4U以上200U以下、好ましくは3×10
−2U以上0.2U以下で添加する。
ここで、3×10
−4Uより少ないとキャッサバ粕の澱粉を分解するために時間を要してしまい、200Uより多く添加しても、キャッサバ粕が未分解で残留せずにエタノールに分解されるまでの時間の短縮があまり図れず、費用対効果の点で有効ではないためである。
【0014】
さらに、酵素として、α−アミラーゼおよびグルコアミラーゼの他に、セルラーゼ、ペクチナーゼおよびプロテアーゼのうちの少なくともいずれか1つをさらに添加することが好ましい。これら酵素をさらに添加することで、キャッサバ粕が分解されてエタノールが生成されるまでの時間を短縮できる。
セルラーゼは、キャッサバ粕1g当たり1×10
−4U以上100U以下、特に1×10
−2U以上0.1U以下で添加することが好ましい。
ペクチナーゼは、キャッサバ粕1g当たり1×10
−3U以上1000U以下、特に1×10
−1U以上1U以下で添加することが好ましい。
プロテアーゼは、キャッサバ粕1g当たり1×10
−4U以上100U以下、特に1×10
−2U以上0.1U以下で添加することが好ましい。
【0015】
アルコール発酵酵母は、一般的に酵母と称されるものを用いることができる。例えば、サッカロミセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、または耐熱性酵母であるクリベロミセス属マーキシアナス(Kluyveromyce marxianus)が好適に用いられる。特に、詳細は後述するが、反応工程ではアルコール発酵の際にある程度の温度(45℃以上)に上昇する場合には、耐熱性酵母であるクリベロミセス属マーキシアナス(Kluyveromyce marxianus)が特に好適である。
そして、アルコール発酵酵母は、初期酵母濃度が光学密度で0.05以上10以下で添加することが好ましい。すなわち、この範囲で添加することで、酵素により生成された糖からアルコール発酵酵母によりエタノールを生成させる処理時間が、攪拌処理しなくても長時間を要せず、また必要量のアルコール発酵酵母によりコストが増大することも防止できる。なお、添加するアルコール発酵酵母は、後段の反応工程で増殖したアルコール発酵酵母の一部を返送して利用すれば、新たにアルコール発酵酵母を添加する必要がなく、より低コストでエタノールを生成させることができる。
【0016】
そして、これら酵素およびアルコール発酵酵母を添加する方法としては、キャッサバ粕を反応工程の反応槽へ搬送するスクリューコンベヤやラインミキサーなどにより管内混合する他、混練機にて混合するなど、従来公知の各種方法を利用できる。
なお、上記の反応工程の反応槽へ搬送する搬送経路中で管内混合する構成とすることで、攪拌混合専用の槽が不要となり、処理装置全体の小型化や簡略化ができるとともに、反応工程の反応槽へ搬送するエネルギーを利用して酵素を混合でき、エタノール生成のエネルギー消費量を低減できる。
このような管内混合などにより、キャッサバ粕に酵素およびアルコール発酵酵母が添加された混合物が得られる。
【0017】
[反応工程]
反応工程S2では、配合工程S1で得られた混合物を、一つの反応槽に投入し、液化、糖化およびアルコール発酵させる。
反応槽は、構成上、特段の制約はないが、液化、糖化、アルコール発酵が進行するにつれて液相分が多くなることから、例えば上方から混合物が投入され、底部から反応生成物を槽外へ排出可能に、上部に投入口、底部に排出口を有した構成とすることが好ましい。特に、反応中の混合物から熱を回収、例えば媒体との熱交換により混合物を冷却し、回収した熱は給湯器や暖房用の熱として利用する熱交換装置を備えることで、エネルギーをより有効に回収できる。
なお、反応槽での反応は、バッチ式、連続式のいずれであってもよい。
【0018】
反応工程では、反応槽への混合物の投入から槽外へ排出するまでの反応時間として、好ましくは24時間以上120時間以下とする。すなわち、混合物は、室温もしくは搬送の際の摩擦などで多少温度が上がった25℃以上35℃以下で投入される。このような温度の混合物の場合、24時間以上120時間以下でアルコール発酵が十分に進行されているためである。
すなわち、24時間より短い場合には、澱粉の分解およびアルコール発酵が十分に完了しておらず、糖が残った状態となってしまう。また、120時間を超えても反応が十分に完了しない場合には、エタノール生成の処理に長時間を要した状態であり、エタノールの効率的な生成ができないためである。
なお、反応槽では、攪拌や加熱は実施せず、投入された混合物はそのまま静置された状態で処理が進行する。すなわち、α−アミラーゼにより澱粉がデキストリンに分解され、生成されたデキストリンはグルコアミラーゼによりグルコースに分解され、グルコースからはアルコール発酵酵母によりエタノールが生成される。
【0019】
このようにして反応工程で得られた反応生成物は、固液分離後、後工程のエタノール分離工程に移送され、エタノールがより高純度で回収される。
固液分離方法としては、例えばフィルタープレス、遠心分離など、従来公知の各種方法を適用できる。
エタノール分離工程におけるエタノールの回収方法としては、例えば蒸留など、従来公知の各種方法を適用できる。なお、固液分離することなく、反応生成物を加熱してエタノールを直接回収するなどしてもよい。
【0020】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態では、含水率30質量%以上のキャッサバ粕に、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼおよびアルコール発酵酵母を添加した混合物を反応槽に投入して滞留させることで、酵素によりキャッサバ粕中の澱粉が次第に分解され、澱粉含有量に対して含水率が高いので、発酵時の温度が抑えられ、温度上昇による酵母の失活を防止できる。さらに、含水率が多いことから、加熱しても混合物の粘度はあまり上昇せず、従来のような液化処理を実施した後に攪拌しつつ糖化およびアルコール発酵をする多段処理をしなくても、単に反応槽内に投入して静置させておくのみで、同等の処理時間で同程度のエタノールを生成できる。
したがって、高粘度のキャッサバ粕でも攪拌を実施する必要がないことから、高粘度質を攪拌するための装置および攪拌のための大きなエネルギーが不要となり、簡単な構成で容易にかつ低エネルギーでキャッサバ粕からエタノールを生成でき、キャッサバ粕を効率よく容易に再生エネルギーとして有効利用することができる。
【0021】
また、上記実施形態では、キャッサバ粕を反応槽へ搬送する搬送路内で、あらかじめ酵素およびアルコール発酵酵母を添加して管内混合して混合物とし、この混合物を反応槽へ投入して反応工程を実施している。このため、キャッサバ粕に酵素およびアルコール発酵酵母が均一に混合されているので、効率よく反応が進行し、反応時間を短縮でき、エタノールの生成効率を向上できる。特に、管内混合により、別途混練機などにて混練する処理を実施する必要がなく、キャッサバ粕を反応槽へ搬送する搬送経路中で混合できるので、より効率よく混合でき、処理作業が容易になるととともに、混練のためのエネルギーも低減でき、効率よくエタノールを生成できる。
そして、キャッサバ粕に、セルラーゼ、ペクチナーゼおよびプロテアーゼのうちの少なくともいずれか1つをさらに添加することにより、反応工程での反応時間を短縮でき、効率よくエタノールを生成できる。
また、各種酵素およびアルコール発酵酵母をキャッサバ粕にライン混合することにより、酵素およびアルコール発酵酵母とキャッサバ粕とが均一に混合され、反応工程での反応時間を短縮できる。
さらに、反応槽として、上部から混合物が投入され、底部から反応生成物を排出する構成とすることで、順次分解されてエタノールが生成したり、細胞内などから水分が流出したりして、液相分が反応槽の底部に流下して排出される。このため、反応槽で混合物を攪拌することなく挿入した混合物を単に静置しておく処理でも、反応生成物を容易に回収できるとともに、底部近傍では液相分が多くなるので液相で反応が進行し、攪拌しなくても反応が促進する状態となり、反応時間がそれ程長くなることなく十分にエタノールを生成させることができることから、反応槽に攪拌機能を設けない簡単な構造に処理装置を構築できる。
そして、反応槽内で4時間以上滞留、好ましくは24時間以上120時間以下で滞留させてエタノールを生成させることで、加熱および冷却の温度調整や攪拌を実施しなくても、十分に分解して効率よくエタノールを生成できる。
【0022】
[変形例]
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは、本発明に含まれるものである。
例えば、配合工程でキャッサバ粕に酵素およびアルコール発酵酵母を混合して説明したが、例えばキャッサバ粕を反応槽内へ投入する際の落下衝撃により混合したり、反応槽内にキャッサバ粕と酵素およびアルコール発酵酵母を薄い層状となるように、少量ずつ投入したりしてもよい。なお、これらの構成では特段の攪拌混合をすることなく、アルコール生成でき、特に層状で供給する構成であれば、あらかじめ混合する場合と同等の処理時間でアルコール生成できる。
そして、上記実施形態では、反応槽の上部から混合物を投入し、底部から反応生成物を排出する構成を例示したが、例えば反応槽の容積が大きくなった場合など、耐圧性や設備コストなどの点で上部から混合物を投入し、上部からポンプで吸い上げるなどにより排出する構成とするなどしてもよい。
【0023】
また、反応槽への混合物の投入に際して、単に混合物を投入するのみとしたが、例えば
図2に示すように、酵素やアルコール発酵酵母を添加する前に、キャッサバ粕を加熱していてもよい。
具体的には、キャッサバ粕を例えば水蒸気により60℃以上120℃以下で加熱する加熱工程S11を実施し、澱粉を糊化してから、各酵素およびアルコール発酵酵母を添加して管内混合し(配合工程S1)、反応槽へ投入して反応工程S2を実施する。
この
図2に示すように、澱粉を糊化させる温度に加熱することで、処理効率を向上できる。なお、澱粉を糊化する温度以下に加熱したとしても、各酵素およびアルコール発酵酵母の活性が増大し、エタノールを生成する処理時間を短縮できる。
また、酵母およびアルコール発酵酵母を添加する前のキャッサバ粕を加熱することで、先に混合してから加熱する場合に比して処理効率を向上できる。
なお、この
図2に示す実施形態では、キャッサバ粕を加熱する方法として水蒸気を用いたが、キャッサバ粕の水分量が十分である場合には、従前の各種加熱方法を適用して加熱すればよい。キャッサバ粕の含水率が50質量%に満たない場合には、水の添加に代えて水蒸気による加熱にて水分を供給することができるので、水蒸気による加熱は特に有効である。
【0024】
そして、反応工程では、アルコール発酵酵母の活性を向上させるため、リンや窒素などの栄養源を添加してもよい。
リンとしては、リン換算で3×10
−4量%以上0.03質量%以下添加することが好ましい。窒素源としては、窒素換算で1×10
−3質量%以上0.1質量%以下添加することが好ましい。
【0025】
その他、本発明の実施における具体的な構成および形態などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例】
【0026】
次に、上記
図1に示す実施形態の処理方法について実施した実験について説明する。
なお、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されるものではない。
【0027】
[実験1]
以下、キャッサバ粕と酵素およびアルコール発酵酵母との混合条件が、エタノール生成に及ぼす影響に関した実験1について説明する。
{原料}
原料に含水率が85%のキャッサバ粕2000gを用い、酵素にセルラーゼ、ペクチナーゼ、α−アミラーゼ、グルコアミラーゼを用い、酵母にサッカロミセス属セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を用いた。
【0028】
{実験条件}
エタノールの生成条件は、以下の4つの条件で実施した。
(比較例1)
比較例1は、
図3に示すように、あらかじめ水2000mlが添加されたキャッサバ粕に、10Lのジャーファーメンター内でα−アミラーゼを混合した後
(工程S21)、攪拌しながら90℃で1時間液化処理をした
(工程S22)。この後、液化処理により得られた生成物に、グルコアミラーゼ、セルラーゼを添加し
(工程S23)、攪拌しながら50℃で24時間糖化処理をした
(工程S24)。さらに、酵母と酵母エキス(窒素源およびリン源)とを添加し
(工程S25)、攪拌しながら30℃で24時間発酵処理した
(工程S26)。
(比較例2)
比較例2は、あらかじめ水2000mlが添加されたキャッサバ粕に、10Lのジャーファーメンター内でα−アミラーゼと、グルコアミラーゼと、セルラーゼと、酵母と、酵母エキス(窒素源およびリン源)とを振り掛けて、48時間静置して反応させた。
(実施例1)
実施例1は、あらかじめ水2000mlが添加されたキャッサバ粕に、α−アミラーゼと、グルコアミラーゼと、セルラーゼと、酵母と、酵母エキス(窒素源およびリン源)とを二軸の混練機を用いて55rpmで10分間混合した混合物を、10Lのジャーファーメンター内で48時間静置して反応させた。
(実施例2)
実施例2は、実施例1の48時間静置に代えて、48時間攪拌しつつ反応させた。
【0029】
{結果}
反応後、遠心分離および濾過により固形分を除去した後、ガスクロマトグラフィーを用いてエタノール量を測定した。その結果を
図4に示す。
この
図4に示す結果から、酵素および酵母がキャッサバ粕と十分に混合されていない比較例2では、エタノールがほとんど得られなかった。なお、液相分が生成されており、酵素および酵母が接触し得る範囲であれば、攪拌せずとも反応が進行することが認められた。
また、あらかじめ酵素および酵母を混合しておく実施例1では、従来の攪拌しつつ糖化処理および発酵処理を多段で実施する比較例1と同等のエタノールが生成されることが認められた。また、反応時に攪拌を実施する実施例2では、実施例1と同等のエタノールが生成され、攪拌による効果は認められなかった。
【0030】
[実験2]
次に、反応前の加熱がエタノール生成に及ぼす影響に関した実験2について説明する。
{実験条件}
(実施例3)
実施例3は、含水率が85%のキャッサバ粕50gに、α−アミラーゼと、グルコアミラーゼと、セルラーゼと、酵母(クリベロミセス属マーキシアナス(Kluyveromyce marxianus))と、酵母エキス(窒素源およびリン源)とを、二軸の混練機を用いて55rpmで10分間混合し、得られた混合物を300mlのビーカーを用いて72時間静置して反応させた。
(実施例4)
実施例4は、含水率が85%のキャッサバ粕50gをオートクレーブを用いて80℃15分加熱した後、実施例3と同様にして混合物を得て72時間静置して反応させた。
{結果}
反応後、遠心分離および濾過により固形分を除去した後、ガスクロマトグラフィーを用いてエタノール量を測定した。その結果を
図5に示す。
この
図5に示す結果から、あらかじめ加熱して澱粉を糊化しておく実施例4では、加熱しない実施例3に比して、約2倍の量のエタノールを生成できた。このことから、あらかじめ加熱して糊化しておくことで、処理効率を向上できることがわかる。
【0031】
[実験3]
次に、上記実験2における加熱する温度がエタノール生成に及ぼす影響に関した実験3について説明する。
{実験条件}
(実施例5)
実施例5は、上記実験2の実施例4における加熱温度を30℃とした以外は、実施例4と同様に行った。
(実施例6〜10)
実施例6〜10は、上記実験2の実施例4における加熱温度を、それぞれ60℃、70℃、80℃、100℃、120℃とした以外は、実施例4と同様に行った。
{結果}
反応後、遠心分離および濾過により固形分を除去した後、ガスクロマトグラフィーを用いてエタノール量を測定した。その結果を
図6に示す。
この
図6に示す結果から、澱粉の糊化が始まる60℃(実施例6)から、30℃で加熱した場合(実施例5)に対して、エタノールの生成量が2倍以上となり、100℃(実施例9)では3倍近い生成量となっている。なお、120℃に加熱した場合(実施例10)では、温度が高すぎて酵素および酵母の活性が低下し始めているため、エタノールの生成量が少なくなったものと考えられることから、加熱する場合には、60℃以上120℃以下とすることが良好であることがわかる。