特許第6099191号(P6099191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099191繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法
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  • 特許6099191-繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099191
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/46 20060101AFI20170313BHJP
   B29C 45/18 20060101ALI20170313BHJP
   B29K 105/06 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   B29C45/46
   B29C45/18
   B29K105:06
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-256957(P2012-256957)
(22)【出願日】2012年11月23日
(65)【公開番号】特開2014-104597(P2014-104597A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155159
【氏名又は名称】株式会社名機製作所
(72)【発明者】
【氏名】長岡猛
【審査官】 井上 由美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−015382(JP,A)
【文献】 特開平08−197581(JP,A)
【文献】 特公昭41−020738(JP,B1)
【文献】 特開平04−156320(JP,A)
【文献】 特開昭48−083168(JP,A)
【文献】 特開平06−198688(JP,A)
【文献】 特開昭60−141519(JP,A)
【文献】 特開昭62−204918(JP,A)
【文献】 特開平08−155951(JP,A)
【文献】 特開平08−207097(JP,A)
【文献】 特開平02−153714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 31/04
B29C 47/00−47/96
B29K 105/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料と繊維材料を1本の加熱筒内でスクリュにより可塑化するとともに混合する繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置において、
加熱筒の内孔に配設されたスクリュと、
加熱筒の内孔に向けて貫通形成された樹脂材料供給孔と、
前記樹脂材料供給孔に連通して設けられた樹脂材料供給装置と、
前記樹脂供給孔よりも前方に加熱筒の内孔中心に対してスクリュのフライトの回転軌跡の方向と繊維材料の供給方向が一致する側に偏芯して貫通形成された繊維材料供給孔と、
前記繊維材料供給孔に連通して設けられた繊維材料を前記加熱筒の内孔に押込む押込み機構を有する繊維材料供給装置とが備えられ、
前記繊維材料供給孔に対応する部分のスクリュの溝部の溝深さは、供給される繊維材料の長さよりも深いことを特徴とする繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置。
【請求項2】
前記加熱筒の内孔に配設されたスクリュは、後方からフィードゾーン、第1のコンプレッションゾーン、第1のメタリングゾーン、圧力開放ゾーン、第2のコンプレッションゾーン、第2のメタリングゾーンを備えており、前記繊維材料供給孔は、圧力開放ゾーンまたは第2のコンプレッションゾーンにおける中間位置よりも後方に対向するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置。
【請求項3】
前記加熱筒の内孔に配設されたスクリュは、第2のメタリングゾーンに複数の凸部または複数の凹部が形成されたミキシング部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置の繊維材料供給装置から加熱筒の内孔に押込まれる繊維材料は、炭素繊維であり、
可塑化時の背圧は、0MPa以上、1MPa以下であることを特徴とする繊維材料を含む樹脂材料の可塑化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維や炭素繊維などの繊維材料を含む樹脂材料をスクリュが備えられた射出装置において可塑化し、射出を行うものとして、特許文献1ないし特許文献3に記載されたものが知られている。特許文献1は第1図に示されるように、シリンダ(加熱筒)の後方に樹脂材料の主原料投入口が設けられ、その前方にガラス繊維等の副原料投入口が設けられている。また副原料投入口の設けられている部分に対応する位置のスクリュはスクリュの軸の直径が前後の部分よりも細くなっている。従って前記の軸の直径が細くなっている部分で樹脂材料の圧力が開放された状態で、副原料投入口から繊維材料が供給されるようになっている。
【0003】
また特許文献2についても加熱筒の中間部にガラスファイバー等の繊維を供給する入口パイプが接続されている。そして特許文献2では、5頁の図に示されるように、ガラスファイバー等はリールから供給され、減摩材とともにスクリュにより入口パイプを通じて加熱筒内に送られるようになっている。また特許文献3は、加熱筒の中間部にフィラー等の供給孔が設けられ、前記供給孔に対してスクリュ式の供給装置が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−277421号公報(請求項1、図1
【特許文献2】特開昭47−2191号公報(請求項1、図面)
【特許文献3】特開平4−156320号公報(第5頁右下欄、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1は、繊維材料の副投入装置の上にはホッパしか設けられておらず、嵩の高い繊維材料を加熱筒内に有効に押込むことができないという問題があるものであった。また特許文献2は、スクリュを用いるので、特許文献1よりも繊維材料を押込む力はあるが、スクリュの部分から加熱筒の内孔までの間は入口パイプで接続されており、やはり嵩の高い繊維材料を加熱筒内に押込む際に問題があるものであった。その点特許文献3は、入口パイプに相当する供給路の部分が短くて、特許文献2よりはスクリュにより加熱筒内孔にフィラー等を押込めるものと言える。しかしながら特許文献3についても、加熱筒内にはスクリュの回転軌跡に対して放射方向(略直角方向)からフィラー等を押込むようにしているので、スクリュの溝に対しては必ずしも良好にフィラー等が食い込んで加熱筒前方に送ることができるものではなかった。
【0006】
また上記の文献において繊維材料供給装置の押込み力を強力にすることも考えられるが、無理やりに繊維材料を押込む場合には繊維材料が切断され、狙い通りの繊維長のものを一定以上の比率に保つことができなくなることが考えられる。そこで本発明の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法は、上記の問題に鑑みて、加熱筒のスクリュの溝に良好に繊維材料を食い込ませて前方へ送ることが可能であり、またその際に、繊維材料の折損や切断を極力減少させ、狙い通りの繊維長の繊維を一定以上の比率に保つことができる繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置および可塑化方法を提供することを目的とする。
【0007】
また次善の課題として、繊維材料が炭素繊維である場合に、良好な炭素繊維と樹脂材料の混合を行い、所定の強度を有する炭素繊維と樹脂の複合成形品を成形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置は、樹脂材料と繊維材料を1本の加熱筒内でスクリュにより可塑化するとともに混合する繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置において、加熱筒の内孔に配設されたスクリュと、加熱筒の内孔に向けて貫通形成された樹脂材料供給孔と、前記樹脂材料供給孔に連通して設けられた樹脂材料供給装置と、前記樹脂供給孔よりも前方に加熱筒の内孔中心に対してスクリュのフライトの回転軌跡の方向と繊維材料の供給方向が一致する側に偏芯して貫通形成された繊維材料供給孔と、前記繊維材料供給孔に連通して設けられた繊維材料を前記加熱筒の内孔に押込む押込み機構を有する繊維材料供給装置とが備えられ、前記繊維材料供給孔に対応する部分のスクリュの溝部の溝深さは、供給される繊維材料の長さよりも深いことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の可塑化装置は、請求項1において、前記スクリュは、後方からフィードゾーン、第1のコンプレッションゾーン、第1のメタリングゾーン、圧力開放ゾーン、第2のコンプレッションゾーン、第2のメタリングゾーンを備えており、前記繊維材料供給孔は、圧力開放ゾーンまたは第2のコンプレッションゾーンにおける中間位置よりも後方に対向するように設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の可塑化装置は、請求項2において、前記スクリュは、第2のメタリングゾーンに複数の凸部または複数の凹部が形成されたミキシング部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載の可塑化方法は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置の繊維材料供給装置から加熱筒の内孔に押込まれる繊維材料は、炭素繊維であり、炭素繊維であり、可塑化時の背圧は、0MPa以上、1MPa以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置は、樹脂材料と繊維材料を1本の加熱筒内でスクリュにより可塑化するとともに混合する繊維材料を含む樹脂材料の可塑化装置において、加熱筒の内孔に配設されたスクリュと、加熱筒の内孔に向けて貫通形成された樹脂材料供給孔と、前記樹脂材料供給孔に連通して設けられた樹脂材料供給装置と、前記樹脂供給孔よりも前方に加熱筒の内孔中心に対してスクリュのフライトの回転軌跡の方向と繊維材料の供給方向が一致する側に偏芯して貫通形成された繊維材料供給孔と、前記繊維材料供給孔に連通して設けられた繊維材料を前記加熱筒の内孔に押込む押込み機構を有する繊維材料供給装置とが備えられ、前記繊維材料供給孔に対応する部分のスクリュの溝部の溝深さは、供給される繊維材料の長さよりも深いので、溶融樹脂との混合時に繊維材料の折損や切断を極力減少させ、狙い通りの繊維長の繊維材料が一定以上の比率に保たれた繊維材料と樹脂の複合成形品を成形するための可塑化を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の可塑化装置の概略断面図である。
図2図1におけるA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態の可塑化装置の概略断面図である。ただし図1において繊維材料供給装置の部分は図2のB−B線に沿った断面となっている。本実施形態の可塑化装置1は、スタンピング成形を行うための可塑化装置1であり、加熱筒2の前方のノズル3にはダイ(Tダイ)4が取付けられている。そして加熱筒2の軸芯に沿って設けられた内孔2aにはスクリュ5が回転可能かつ前後進可能に設けられている。また加熱筒2の後部(後端ではない)には、樹脂材料供給装置6が設けられている。また加熱筒2において樹脂材料供給装置6よりも前方には、繊維材料供給装置7が設けられている。
【0015】
可塑化装置1は図示しない移動装置のサーボモータにより全体が前後進移動可能となっている。そして可塑化装置1の移動とともに図示しないプレス装置の下型8のキャビティ形成面8aに対してノズル3のダイ4が水平方向に移動されるようになっている。スクリュ5は、図示しないスクリュ回転用のサーボモータにより回転数を制御して回転駆動されるようになっている。またスクリュ5は、図示しない射出用のサーボモータにより前後進移動可能となっている。スクリュ5の前後進は、ボールネジとボールネジナットを使用した公知の機構により行われる。なお可塑化装置1の移動装置のサーボモータ、スクリュ回転用のサーボモータ、射出用のサーボモータについては、油圧機構等の別の駆動源を用いたものでもよい。
【0016】
加熱筒2は、樹脂材料供給装置6に近い後部ゾーンからノズル3に近い前部ゾーンまで各ゾーン毎に図示しない電気ヒータが設けられ温度制御可能となっている。加熱筒2の後部にはハウジングブロック9が固定されており、加熱筒2の内孔2aに向けてハウジングブロック9と加熱筒2の上部を鉛直方向に貫通形成して樹脂材料供給孔10が形成されている。そして前記樹脂材料供給孔10に連通して樹脂材料供給装置6が設けられている。樹脂材料供給装置6は、樹脂材料供給孔10の周囲のハウジングブロック9に縦方向に固定される供給筒の上部に横方向に供給筒11が固定され、供給筒11の内部にはフィードスクリュ12がモータ13により回転自在に取付けられている。また供給筒11の後部の供給孔の上部には樹脂材料rを貯留するホッパ14が取付けられている。なお樹脂材料供給装置6については、上記に限定されず、フィードスクリュ12を使用しないものでもよい。ただし樹脂材料供給装置6は、加熱筒2の内孔2aへ樹脂材料rの供給量を調整して供給可能であることが望ましい。
【0017】
加熱筒2の前方には電気ヒータが取付けられたシリンダヘッド15が固定され、シリンダヘッド15の前方には内部にノズル孔3aが形成され外部に電気ヒータが取付けられたノズル3が取付けられている。ノズル孔3aは加熱筒2の内孔2aと連通している。そしてノズル3にはノズル孔3aの開閉を行うためのロータリ式の開閉バルブ16が取付けられている。なお開閉バルブ16については、ニードル式のシャットオフバルブなど他の方式でもよく、射出成形を行う場合は必須のものではない。またノズル3の先端にはダイ(Tダイ)04が固定されている。そしてダイ4内でノズル孔3aに連通される流路は下方に向けられダイ4の下面の所定幅の供給孔17に接続されている。
【0018】
本実施形態のスクリュ5は、長さLと直径Dの比であるL/Dが28と比較的長いスクリュ5が取付けられている。そしてスクリュ5のフライト5aは一定の間隔に設けられており、サブフライト等は形成されていない。スクリュ5のゾーンとしては、後方から順に、スクリュ軸5bが一定の細い状態に形成されるフィードゾーン18、スクリュ軸5bがテーパー状に太くなるよう形成される第1コンプレッションゾーン19、スクリュ軸5bが太い状態に形成される第1メタリングゾーン20、スクリュ軸5bが再び細くなり一定の細さに形成される圧力開放ゾーン21、スクリュ軸5bが再びテーパー状に太くなるように形成される第2コンプレッションゾーン22、スクリュ軸5bが再び太い状態に形成される第2メタリングゾーン23が設けられている。また2メタリングゾーン23にはフライト5aの形成されている部分以外に、フライト5aを有さずに、複数の凸部または複数の凹部が形成されたミキシング部24が形成されている。そしてミキシング部24の前方には逆流防止弁25が設けられ、その前方には三角錐状のスクリュヘッド26が設けられている。スクリュ5の圧力開放ゾーン21のスクリュ軸5bが一定の細さに形成される部分の前後方向の中心位置21aは、スクリュ5にフライト5aがある部分全体の中では後方から16/28の位置にある。即ち圧力開放ゾーン21のスクリュ軸5bが一定の細さに形成される部分の前後方向の中心位置21aは、スクリュ5全体の中間位置よりも前方に位置することが望ましく、後方から19/28までの範囲であることが望ましい。なおスクリュ5のL/Dについては、上記に限定されず24〜36程度が望ましい。スクリュ5の長さに応じてそれぞれのゾーンの長さも調節されて設けられる。
【0019】
スクリュ5の圧縮比は、一例として第1コンプレッションゾーン19のスクリュ5の圧縮比が1.8〜3、第2コンプレッションゾーン22のスクリュ5の圧縮比が1.2〜2.0の範囲内とすることが望ましい。繊維材料供給孔27に対応する部分のスクリュ5の溝部5bの溝深さdは、供給される繊維材料の長さ(平均長さ)よりも深いことが望ましい。従って本実施形態では、圧力開放ゾーン21の溝深さd(フライト高さ)が、繊維材料の長さ(平均長さ)よりも深い(長い)ことになる。
【0020】
スクリュ5の表面処理については、窒化チタン(Tin)や窒化クロム(CrN)、タングステンカーバイト(WCC)、硬質クロムメッキなどの硬質コーティングがなされていることが好ましい。
【0021】
本実施形態においてスクリュ5は、第1コンプレッションゾーン19と第1メタリングゾーン20を備えるが、フィードゾーンとコンプレッションゾーンとメタリングゾーンが形成された一般的なスクリュやスクリュ軸が一定の太さのスクリュであってもよい。即ち、繊維材料が繊維材料供給装置7から供給される位置までに加熱筒2からの伝熱により十分に樹脂材料r1が溶融されていることと、繊維材料が供給される位置においてスクリュ5のフライト5a間に溶融樹脂r1以外の空間が確保されていることが満たされれば、図1以外の他の形状のスクリュであってもよい。これらのスクリュにおいても、。繊維材料供給孔に対応する部分のスクリュの溝部の溝深さは、供給される繊維材料の長さ(平均長さ)よりも深い(長い)ことが望ましい。
【0022】
加熱筒2を前方から見た断面図である図2にも示されるように、樹脂材料供給孔10よりも前方の加熱筒2の中間部であって、スクリュ5の圧力開放ゾーン21に対向する部分の上部には、繊維材料供給孔27が加熱筒2の内孔中心2bに向けて偏芯して貫通形成されている。なお繊維材料供給孔27が設けられる位置は、第2コンプレッションゾーン22の中間位置22aよりも後方なら第2コンプレッションゾーン22に対向する位置でもよい。繊維材料供給孔27とスクリュ5の位置関係は、スクリュ5が可塑化や射出(樹脂供給)により前後進するので、必ずしも同じ位置に正対しているわけではない。しかしスクリュ5が前後進しても、圧力開放ゾーン21か第2コンプレッションゾーン22における中間位置22aよりも後方に常時対向するように設けられていることが望ましい。
【0023】
繊維材料供給孔27と加熱筒2の周方向との配置関係については、繊維材料供給孔27は、加熱筒2の中心(スクリュ軸5bの中心)の真上の位置を外して一側方(図2においては右側)に形成されている。更に説明すると図2において、スクリュ5は時計方向に回転(前方から見て右回転)されるが、繊維材料供給孔27についても内孔中心2bよりもスクリュ5の回転方向である右方向に偏芯して形成される。なお繊維材料供給孔27は、加熱筒2の内孔中心2bの真上位置を含むように形成してもよく、図2のように含まないように形成してもよい。また繊維材料供給孔27は、図2のように加熱筒2の内孔2aの側面端2cを含むように形成してもよく、含まないように形成してもよい。更には図示はしないが、繊維材料供給孔27の下方の加熱筒2の内孔2aの側方を拡張したものでもよい。その場合、内孔2aは真円とはならず、スクリュ5と図2において内孔2aの側面端2cに相当する部分の間に一定幅の間隙が形成される。そして前記においては間隙が形成された部分の上方、または間隙が形成された部分とスクリュ5の上方に繊維材料供給孔27を設けられる。
【0024】
また本実施形態の図1図2では、繊維材料供給孔27の形状(方向)は、垂直方向に形成されているが、一例として鉛直線に対して0〜45°の範囲で斜め方向に繊維材料供給孔27を形成してもよい。更には、繊維材料供給孔27のスクリュ軸5bの軸方向の形状についても、垂直方向に限定されず、一例として加熱筒前方に向けて鉛直線に対して0〜60°の範囲で斜め方向に形成してもよい。
【0025】
前記繊維材料供給孔27に連通して繊維材料fを前記加熱筒2の内孔2aに押込む押込み機能を有する繊維材料供給装置7が設けられている。繊維材料供給装置7は、垂直方向に設けられた供給筒28の先端がテーパー状に先細に形成され繊維材料供給孔27に接続されている。より具体的には、繊維材料供給孔27の周囲の加熱筒2と供給筒28の先端が接続・固定されている。そして供給筒28の内部にスクリュ29が電動モータ30により回転自在、かつ前後進不能に内蔵されている。本実施形態ではスクリュ29は、供給筒28内部の円筒の部分に収納されているが、テーパー状の部分にもフライトや軸が先細となるスクリュが位置するような形状としてもよい。
【0026】
そして前記スクリュ29と電動モータ30が押込み機構に相当し、スクリュ29が回転すると繊維材料fが強制的に下方へ送られ、繊維材料供給孔27を介して加熱筒2の内孔2aへ送り込まれる。また供給筒28の上部の側方には、ホッパ31から接続される管と連通する繊維材料fの供給孔32が設けられている。本実施形態では、切断された繊維材料fはホッパ31から接続される管と供給孔32を介して供給筒28内に供給される。しかしホッパ31からも供給筒28内へもスクリュ等により強制的に繊維材料を供給するものでもよい。
【0027】
なお繊維材料供給装置7についても、繊維材料供給孔27の応用例と同じく垂直方向に限定されず、鉛直方向に対して角度を持って形成されたものでもよい。また繊維材料供給装置7は、プランジャ式の押込み装置により、加熱筒2の内孔2aに繊維材料を押し込むものでもよい。また本実施形態では、繊維材料供給装置7は、予め切断された繊維材料fがホッパ31に貯留されているが、図示しないリールから巻き出された繊維材料fが図示しない切断装置により切断されて、繊維材料供給装置7に供給されるものでもよい。
【0028】
次に本実施形態の可塑化装置1を用いた繊維材料fを含む樹脂材料rの可塑化方法について記載する。本実施形態に使用される繊維材料fは、可塑化時に折損や切断により長繊維が残せないことが問題となる繊維材料が有効に用いられるが、一例として炭素繊維fが用いられる。また樹脂材料rについても限定はされないが一例としてポリプロピレンが用いられる。
【0029】
樹脂材料供給装置6のホッパ14に貯留されている樹脂材料r(ポリプロピレンペレット)は、フィードスクリュ12の回転速度および/または回転時間を制御することにより、加熱筒2の内孔2aに供給される。この際に樹脂材料rの供給量を制限する飢餓供給を行うことが望ましく、常時スクリュ5のフィードゾーン18の溝容積に対して20〜70%程度になるように供給が行われる。
【0030】
可塑化時のスクリュ5の回転速度は、可塑化装置1のスクリュ径にもよるが、50〜100r.p.m.程度が望ましい。スクリュ回転速度(回転数)を比較的低速にすることにより、後述する炭素繊維fと溶融樹脂r1とを混合する際の炭素繊維fの折損や切断を減少させることができる。また可塑化時の背圧は、0MPaにすることが望ましい。これによりやはり炭素繊維fの折損や切断を減少させることができる。なお背圧については、1MPa以下、より一層望ましくは0.5MPa以下の低圧の背圧を付与するものでもよい。供給された樹脂材料rはスクリュ5の回転とともに最初に樹脂材料供給孔10を介して供給されたフィードゾーン18から前方の第1コンプレッションゾーン19へ送られる。第1コンプレッションゾーン19ではスクリュ軸5bの軸径がテーパー状に太くなっており、樹脂材料rが送られる溝部の深さが浅くなるにつれて、前記樹脂材料rには加熱筒2の内孔2aとの間でせん断発熱が加えられる。また加熱筒2に設けられた電気ヒータからも樹脂材料rに熱が加えられ、樹脂材料rの溶融が進行する。
【0031】
次の第1メタリングゾーン20では更にせん断発熱と加熱筒2からの伝熱により樹脂材料rは完全に溶融状態となる。溶融状態となった溶融樹脂r1は更に第1メタリングゾーン20からスクリュ5の前方の圧力開放ゾーン21へ送られる。次に圧力開放ゾーン21ではスクリュ軸5bがテーパー状に細くなっており、溶融樹脂r1の圧力が開放される。なお圧力開放ゾーン21はスクリュ軸5bがテーパー状に細くなっている部分とスクリュ軸5bが細い状態で一定の部分があるが、そのどちらの部分でもスクリュ5のフライト5a間の溝部には溶融樹脂r1が充満していない状態で溶融樹脂r1は前方へ送られる。
【0032】
そして圧力開放ゾーン21に対応する加熱筒2の上部に偏芯して設けられた繊維材料供給孔27を介して繊維材料供給装置7から炭素繊維fが供給される。本実施形態では、炭素繊維fは太さが7μmであって9mmの長さのものが準備され供給される。しかし炭素繊維fは前記に限定されず、長さは5〜15mmのものが望ましい。炭素繊維fは、ホッパ31からスクリュ29の押込み機構により下方に向けて強制的に送られ、繊維材料供給孔27を介して加熱筒2の内孔2aに設けられたスクリュ5のフライト5a間の溝部に供給される。可塑化時には加熱筒2前方に炭素繊維を含む溶融樹脂r1が貯留されるとともにスクリュ5は後退されるので、スクリュ5と繊維材料供給孔27の対応関係はいつも同じ位置ではないが、スクリュ5の圧力開放ゾーン21のいずれかの部分が繊維材料供給孔27と対向するようになっている。
【0033】
この際に図2に示されるように、繊維材料供給孔27は、加熱筒2の内孔中心2bに対して偏芯して貫通形成されており、スクリュ5のフライト5aが回転されていく側に形成されている。従って繊維材料供給孔27からの炭素繊維fの落下方向とスクリュ5のフライト5aの回転軌跡の方向が略一致しており、炭素繊維fは良好にスクリュ5の溝部内に供給され前方へ送られる。またこの際にスクリュ5の溝部内の溶融樹脂r1は、圧力が開放されており、溝部内には隙間がある状態なので、炭素繊維fと溶融樹脂r1との混合が妨げられず、また溶融樹脂r1が繊維材料供給孔27から溢れ出してきたり、繊維材料供給孔27を塞いでしまうということがない。また繊維材料供給装置7により溶融樹脂r1を押し退けて炭素繊維fを無理やり押し込まないので炭素繊維fの折損や切断が極力防止される。そしてまたスクリュ5の大気開放ゾーン21の溝深さdは、供給される炭素繊維fの長さである9mmよりも深く(長く)なっているので、炭素繊維fの折損がより一層防止される。
【0034】
炭素繊維fの供給は可塑化の間、継続されていることが望ましく、供給量の調整は電動モータ30によるスクリュ5の回転速度を調整することにより行われる。すなわち可塑化装置1のメインのスクリュ5の回転と繊維材料供給装置7のスクリュ29の回転は連動して行われることが一般的である。炭素繊維fの供給量は、樹脂材料rであるポリプロピレンと炭素繊維fを混合した複合物の全重量に対して、炭素繊維fの重量が15〜40重量%となるように行うことが望ましい。これ以上炭素繊維fの比率が少ないと炭素繊維と樹脂材料の複合成形品において所望の強度が出せない場合が多く、これ以上炭素繊維fの比率が高いと良好な混合が行えない場合が多い。
【0035】
そして前記圧力開放ゾーン21で炭素繊維fが投入された後、溶融樹脂r1と炭素繊維fは混合されながら第2コンプレッションゾーン22に送られる。第2コンプレッションゾーン22においては炭素繊維fを含む溶融樹脂r1は再び徐々に溝内での密度が高められるとともに混合されて第2メタリングゾーン23に送られ、更に圧縮されるとともに昇温される。また第2メタリングゾーン23のうちの前方に形成されたミキシング部24により更に炭素繊維fと溶融樹脂r1の混合が促進される。そして本実施形態では、溶融樹脂r1に混合された炭素繊維fの長さは、平均4mm程度は確保され、炭素繊維と樹脂材料の複合成形品を成形した際に十分な強度が確保される。
【0036】
そして混合された炭素繊維fを含む溶融樹脂r1は逆流防止弁25を通過して加熱筒2の内孔2aのスクリュ5の前方に貯留される。この際に可塑化装置1のノズル3はロータリバルブまたはシャットオフバルブ等の開閉バルブ16により閉鎖されている。そしてスクリュ回転用のサーボモータによりスクリュ回転が継続され、スクリュ5の前方への炭素繊維fを含む溶融樹脂r1の貯留が進行するとともにスクリュ5が後退し、所定位置までスクリュ5が後退するとスクリュ回転は停止され、可塑化工程は終了される。
【0037】
次に図示しないプレス装置の側でも前回の成形が完了し、上型と下型8が型開されると、加熱された下型8の上方に可塑化装置1のノズル3のダイ4が図示しない移動装置によって移動される。そして下型8上の所定位置にダイ4が移動終了すると、ノズル3の開閉バルブ16が開放されるとともに、射出用のサーボモータの駆動によりスクリュ5が前進駆動されて、下型8のキャビティ形成面8aへ炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給される。そして炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給が終了すると可塑化装置1およびダイ4は下型8上から後退移動される。
【0038】
次にプレス装置では、同じく加熱された上型が下降して下型8と型合せされ、炭素繊維fを含む溶融樹脂r1はキャビティ形状に応じて圧縮成形される。上型と下型8は、冷却機能も有しており、溶融樹脂r1が冷却固化された状態で型開がなされ、炭素繊維と樹脂の複合成形品が成形される。なおプレス装置は、下型8が水平方向に移動可能であって、炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給されるステージが上型の下方以外の部分で行われるものでもよい。また下型が上昇してプレス成形を行うものなどでもよい。
【0039】
更には下型8のキャビティ形成面8aには予め炭素繊維シートまたはプリプレグシートが配置されており、その上に炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給されるものや、供給された炭素繊維fを含む溶融樹脂r1の上に更に炭素繊維シートまたはプリプレグシートを載置するものでもよく、それらを複層にすることも考えられる。またプレス装置で成形後に僅かにキャビティを開いた空間に、別の溶融樹脂(炭素繊維を含む場合と含まない場合がある)を射出し、多層成形品を成形するものでもよい。
【0040】
更にまた、可塑化装置1の加熱筒2内を真空ポンプにより真空吸引するものでもよい。その場合、加熱筒後部の樹脂材料供給孔10を介してか、加熱筒の前記樹脂材料供給孔10よりも後方から真空吸引することが望ましい。またプレス装置についても上型と下型が型合せされた際にできる空間を真空ポンプにより真空吸引してから加圧するものでもよい。また可塑化装置1とプレス装置の全体、またはノズル3から下型8へ炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給される主要部を真空チャンバに入れて、ノズル3から下型8へ炭素繊維fを含む溶融樹脂r1が供給される過程も真空状態としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。可塑化装置は、スクリュにより射出動作も行うインライン式の射出装置のスクリュであってもよい。また可塑化装置からプランジャ装置に接続され、プランジャ装置により射出動作を行って射出成形やスタンピング成形を行うものでもよい。この場合、可塑化装置はスクリュが前後進されるものでもよく、前後進されないで一定位置で回転されるものでもよい。更には可塑化装置は、スクリュ回転とともに前方のダイから繊維材料を含む溶融材料が押出される押出機に用いられたものでもよい。
【0042】
また使用される繊維材料は、炭素繊維の他、ガラス繊維、ケプラー繊維、アルミ等の金属繊維、天然繊維等の他の種類の繊維材料であってもよい。更に樹脂材料rについても限定はされず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、またはその混合材料でもよい。熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル等が挙げられ、他の種類の熱可塑性樹脂でもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 可塑化装置
2 加熱筒
2a 内孔
3 ノズル
5 スクリュ
5a フライト
5b スクリュ軸
6 樹脂供給装置
7 繊維材料供給装置
8 下型
10 樹脂材料供給孔
21 圧力開放ゾーン
27 繊維材料供給孔
d 溝深さ
f 繊維材料(炭素繊維)
r 樹脂材料
r1 溶融樹脂
図1
図2