特許第6099198号(P6099198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099198エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099198
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】エネルギー線硬化型樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20170313BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170313BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20170313BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C08F220/10
   H05B33/14 A
   H05B33/04
   C08J5/18CEY
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2013-71027(P2013-71027)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-193970(P2014-193970A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2015年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】木戸場 潤
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雄一朗
(72)【発明者】
【氏名】内藤 伸彦
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−090775(JP,A)
【文献】 特開2012−111931(JP,A)
【文献】 特開2012−186356(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/141000(WO,A1)
【文献】 特開2012−216682(JP,A)
【文献】 特開2013−189537(JP,A)
【文献】 特開2011−081902(JP,A)
【文献】 特開2013−076015(JP,A)
【文献】 特開2013−249381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
H05B 33/00 − 33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)、下記環状(メタ)アクリレート化合物(B)及び重合開始剤(C)を含有し、反応性基を有しない有機化合物の樹脂組成物中の含有量が樹脂組成物に対して1.5重量%以下である有機EL素子の封止用樹脂組成物。
環状(メタ)アクリレート化合物(B):下記式(3)
【化3】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子または下記式(4)
【化4】
(式中、R、Yは上記と同じであり、*は環状骨格へ結合する。)
を表し、Rにおいていずれか一方は上記式(4)である。)
で表される脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、又は下記式(6)
(前記式中、Rは、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基を表す。Rは、水素、炭素数1〜4のアルキル基を表す。Zは炭素、酸素、窒素を表す)で表されるヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物。
【請求項2】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)が、1分子中に芳香族炭化水素骨格を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)の芳香族炭化水素骨格が、下記式(1)で表される骨格を有することを特徴とする、請求項1に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【化1】
(上記式中、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。)
【請求項4】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)が下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【化2】
(上記式において、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子、(メタ)アクリロイル基を、Rは直接結合または炭素数1〜10の(ポリ)アルキレンオキシ基を表す。)
【請求項5】
請求項2の1分子中に2つ以上の芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、フルオレン骨格、ナフタレン骨格またはビフェニル骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
脂環式炭化水素骨格が下記式(5)で表される(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする請求項に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【化4】
(前記式中、R、Rは、炭素数1〜6のアルキレンオキシ基を表す。)
【請求項7】
上記式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物:上記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物の重量比が9:1〜1:9であることを特徴とする請求項に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【請求項8】
OLED用途に用いられる請求項1〜のいずれか一項に記載の有機EL素子の封止用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エネルギー線硬化樹脂は、一般的に無溶剤で加工ができる為、作業性に優れる。また、硬化速度が早く、エネルギー必要量が低いことからエネルギー線硬化技術はディスプレイ周辺材料を始め、種々の産業において重要な技術である。近年、ディスプレイはフラットパネルディスプレイ(FPD)と称される薄型のディスプレイ、特にプラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)が市場投入され広く普及している。また、次世代の自発光型薄膜ディスプレイとして有機ELディスプレイ(OLED)が期待されており、一部製商品では既に実用化されている。有機ELディスプレイの有機EL素子は、TFT等の駆動回路が形成されたガラス等の基板上に、陰極および陽極によって挟持された発光層を含む薄膜積層体からなる素子部本体が形成された構造を有している。素子部の発光層または電極といった層は、水分または酸素により劣化し易く、劣化によって輝度やライフの低下、変色が発生する。その為、有機EL素子は、外部からの水分または不純物の浸入を遮断するように封止されている。高品質で高信頼性の有機EL素子の実現に向けて、より高性能な封止材料が望まれており、従来から種々封止技術が検討されている。
【0002】
有機EL素子の代表的な封止方法として、予め乾燥剤を挿入した金属製またはガラス製の封止キャップを、封止用接着剤を用いて有機EL素子の基板に固定する方法が検討されている(特許文献1)。この方法は、有機EL素子の基板外周部に接着剤を塗布し、その上に封止キャップを設置、次いで接着剤を固化させることによって、基板と封止キャップとを固定し、有機EL素子を密閉している。このような方法では、ガラス製の封止キャップによる封止が主流となっている。しかし、ガラス製の封止キャップは、平坦なガラス基板に乾燥剤を挿入するための掘り込みを加工することによって作製されるため、高コストとなる傾向がある。また、封止キャップによる封止は、封止キャップの内側に乾燥剤が挿入されることになるため、封止キャップ側から光を取り出すことはできない。即ち、光源から放たれた光は素子の基板側から取り出されることになり、ボトムエミッション型の素子に制限される。ボトムエミッション型の素子の場合、基板に形成された駆動回路部による開口率の低下、および駆動回路部によって光が一部遮られることによる取り出し効率の低下の問題がある。そのため、有機EL素子の基板の反対側から光を取り出すトップエミッション型の素子に適用可能な封止方法の開発が望まれている。
【0003】
トップエミッション型の素子に適用可能な代表的な封止方法として、薄膜封止法および固体封止法がある。薄膜封止法は、有機EL素子の上に無機または有機材料からなる薄膜を多層積層してパッシベーション膜とする方法である(特許文献2)。この方法によって素子に十分な防湿性を付与するには、素子上に何層もの薄膜を順次積層する必要がある。そのため、薄膜封止法では成膜工程が長く高コストとなり、また成膜に必要とされる大型の真空系設備の導入によって初期投資が高くなる傾向がある。
【0004】
一方、固体封止法は、有機EL素子の素子部全体を覆うようにパッシベーション膜を設け、その上に封止材料を介して封止用透明基板を設ける方法である(特許文献3参照)。一般に、パッシベーション膜は、無機材料を蒸着またはスパッタリングすることによって形成されるが、それはピンホールを有する不完全な膜であるか、機械的強度の弱い膜であることが多い。そのため、固体封止法では、素子上にパッシベーション膜を設けた後に、封止用接着剤を介してガラス基板などの封止用透明基板を設けることによって封止の信頼性を高めている。このような固体封止法は、簡便かつ低コストでトップエミッション型の素子の封止を実施可能な方法として注目を集めている。
【0005】
有機EL素子の固体封止法による封止では、熱または光硬化性樹脂を封止用接着剤として使用することが可能であるが、それらの特性は素子の性能および封止作業の生産性に著しい影響を及ぼす可能性があるため非常に重要である。例えば、封止用接着剤の水蒸気透過率が十分でないとパッシベーション膜のピンホールから素子部に浸入し、素子の劣化を招く可能性がある。また、封止材料の硬化反応が遅ければ、硬化工程に時間がかかり、封止作業の生産性が低下する可能性がある。
【0006】
これらに用いられる封止用接着剤には、可視光領域での高い透過率の他、発光に耐えうる耐光性、安定した成形性や残留応力抑制のための低硬化収縮性、発光素子を湿気から保護するための低水蒸気透過率などが求められる。有機EL素子の封止用接着剤として周知の接着剤を使用して固体封止法による封止を実施することは可能であるが、信頼性および生産性、水蒸気透過率で満足できる結果を得ることは難しいのが現状であり、固体封止法に好適に使用可能な封止用接着剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3876630
【特許文献2】特許第2679586
【特許文献3】特許第4421938
【特許文献4】特許第4655172
【特許文献5】特開2001−81182号公報
【特許文献6】特開2000−169552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物と、硬化性に優れ、可視光透過率、硬化収縮率、水蒸気透過度の低い硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究の結果、特定の組成を有する紫外線硬化性樹脂組成物及びその硬化物が前記課題を解決することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明は、下記(1)〜(13)に関する。
(1)芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)、下記環状(メタ)アクリレート化合物(B)及び重合開始剤(C)を含有する樹脂組成物。
環状(メタ)アクリレート化合物(B):前記化合物(A)以外の芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物、ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物からなる群から選択される少なくとも1種類の(メタ)アクリレート化合物。
(2)芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)が、1分子中に芳香族炭化水素骨格を2つ以上有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)の芳香族炭化水素骨格が、下記式(1)で表される骨格を有することを特徴とする、(1)に記載の樹脂組成物。
【化1】
(上記式中、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。)
(4)芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)が下記式(2)で表される化合物であることを特徴とする、(1)に記載の樹脂組成物。
【化2】
(上記式において、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子、(メタ)アクリロイル基を、Rは直接結合または炭素数1〜10の(ポリ)アルキレンオキシ基を表す。)
(5)(2)の1分子中に2つ以上の芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、フルオレン骨格、ナフタレン骨格またはビフェニル骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
(6)環状(メタ)アクリレート化合物(B)である脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、1分子中に2つ以上の脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする(1)〜(4)に記載の樹脂組成物。
(7)(6)の脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、脂環式炭化水素骨格としてジシクロデカン構造、トリシクロデカン環またはアダマンタン環を含むことを特徴とする樹脂組成物。
(8)脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が、下記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする(6)または(7)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化3】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子または下記式(4)
【化4】
(式中、R、Yは上記と同じであり、*は環状骨格へ結合する。)
を表し、Rにおいていずれか一方は上記式(4)である。)
(9)脂環式炭化水素骨格が下記式(5)で表される(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする(6)〜(8)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
(前記式中、R、Rは、直接結合、炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。)
(10)環状(メタ)アクリレート化合物(B)のヘテロ環骨格が(6)で表される(メタ)アクリレート化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(前記式中、Rは、直接結合、炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。Rは、水素、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。Zは炭素、酸素、窒素を表す)
(11)上記式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物:上記式(3)で表される(メタ)アクリレート化合物の重量比が9:1〜1:9であることを特徴とする(1)〜(10)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
(12)(1)〜(11)のいずれか一項に記載の樹脂組成物を硬化させてなる低透湿バリアフィルム。
(13)OLED用途に用いられる(1)〜(12)のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、可視光透過率、硬化収縮率、水蒸気透過度が低いことから、特に有機EL素子の封止材に適している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)と、環状(メタ)アクリレート化合物(B)、重合開始剤(C)を含有することを特徴とする。
上記の構成により、2種類の異なる骨格の(メタ)アクリレート化合物が硬化時に相互に硬化系に導入されることとなり、低収縮率を実現しつつ、環状骨格を有する化合物を1種類含有させるだけでは達成できなかった極めて優れた低水蒸気透過率の効果を達成することが可能となる。
【0013】
本発明の樹脂組成物に含有される芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物(A)としては、分子内に少なくとも一つ芳香環を有する化合物であれば公知のものをいずれも使用することができる。このような芳香環を有する化合物においては、芳香環を備えることで、樹脂組成物に撥水性を持たせることが可能となり、水蒸気透過率を低減させることが可能となる。そして、当該効果は分子内に一つ以上の芳香環を有する(メタ)アクリレート化合物であれば十分に奏することができる。また、分子内に二つ以上の芳香環を有することで、より当該効果が優れることとなるため、好ましい。このような、分子中に二つ以上の芳香環を備える骨格としては、ビフェニル骨格またはビスフェノール骨格が挙げられ、これらの骨格は優れた水蒸気透過率の発現を奏することができる。
尚、本発明において記載されている骨格は、置換基を有していても、有していなくてもよく、置換基を有する場合には、当該置換基は炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルケニル基とする。
【0014】
このような、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、下記の単官能(メタ)アクリレート化合物や2官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレート化合物の例としては、ベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ変性クレゾール(メタ)アクリート、プロポキシ変性クレゾール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルベンジルアクリレート、p−フェニルベンジルアクリレート等の単環を有する(メタ)アクリレート化合物、カルバゾール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、カルバゾール(ポリ)プロポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性カルバゾール(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ナフチル(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、ナフチル(ポリ)プロポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ナフチル(メタ)アクリレート、ビナフトール(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)プロポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ビナフトール(メタ)アクリレート、ナフトール(メタ)アクリレート、ナフトール(ポリ)エトキシ(メタ)アクリレート、ナフトール(ポリ)プロポキシ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ナフトール(メタ)アクリレート等の縮合環を有する(メタ)アクリレート、が挙げられる。
2官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシ(ポリ)エトキシフルオレン等の単環を有する(メタ)アクリレート、ビフェニルジメタノールジ(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート、ナフトールジ(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)エトキシジ(メタ)アクリレート、ビナフトール(ポリ)プロポキシジ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ビナフトールジ(メタ)アクリレート等の縮合環を有する(メタ)アクリレート、ビスフェノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシメタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシカプロラクトンフルオレンジ(メタ)アクリレート等の多環芳香族を有する(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0015】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、上記のような(メタ)アクリレートモノマー以外にもエポキシ(メタ)アクリレート化合物を挙げることができる。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型フェノールアラルキル樹脂、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物の末端グリシジルエーテル、フルオレンエポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂類と(メタ)アクリル酸との反応物等を挙げることができる。
【0016】
中でも、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、例えば下記の部分骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を好適に使用することができる。
【化6】
(上記式中、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を示す。)
上記のような部分骨格を有することが、芳香環が付与できる撥水性をより効果的に発現することが可能となると考えられる。
具体的には、上記の(メタ)アクリレート化合物の中でも、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格等のビスフェノール骨格や、ビフェニル骨格を有する(メタ)アクリレート化合物は上記(1)式に該当し、好適に使用できる。
ここで、(メタ)アクリロイル基は、芳香族炭化水素骨格が直接または炭化水素基によって連結されていることが好ましい。そして、具体的な連結としては、上記芳香族炭化水素骨格に、(メタ)アクリロイル基が直接ないし炭化水素基により連結されており、炭化水素基によって連結されている場合の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキレン基または、エーテル結合を有する炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0017】
さらに、本発明において用いる芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、下記式(2)で表される(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【化7】
(上記式において、Xは直接結合または炭素数1〜3のアルキレン基を、Yは水素原子またはメチル基を、Rは水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子または
下記式(4)
【化8】
(式中、Rは下記と同じであり、*はベンゼン骨格へ結合する。)
を、Rは直接結合または炭素数1〜10の(ポリ)アルキレンオキシ基を表す。)
このような(メタ)アクリレート化合物の具体例は、o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノールモノエトキシ(メタ)アクリレート、p−フェニルフェノールポリエトキシ(メタ)アクリレート、o−フェニルベンジルアクリレート、p−フェニルベンジルアクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0018】
芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常5〜95重量部であり、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部が特に好ましい。
【0019】
本発明において用いられる、環状(メタ)アクリレート化合物としては、上記芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート、脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート、ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレートを使用することができる。
ここで、環状(メタ)アクリレート化合物として、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を使用した場合とは、樹脂組成物中に異なる2種類の構造を有する芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を含有する樹脂組成物を意味する。そして、環状(メタ)アクリレート化合物として使用できる芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレートは、上記と同じ(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
このように2種類の芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物を使用した場合においては、鎖状構造のもの等の他の骨格と比較して、水蒸気の透過を防ぐ効果があり、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と併せて硬化系に配置されることによって、相乗効果によって顕著に水蒸気の透過を防ぐことが可能となる。
【0020】
本発明において用いることができる、脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、公知のものを特に限定することなく使用することができ、脂環式炭化水素骨格は飽和炭化水素骨格であることが好ましい。このような環式骨格においては、鎖状構造のもの等の他の骨格と比較して、水蒸気の透過を防ぐ効果があり、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と併せて硬化系に配置されることによって、相乗効果によって顕著に水蒸気の透過を防ぐことが可能となる。
環式炭化水素骨格としては、具体的に使用できる骨格としては、シクロペンタン骨格、シクロヘキサン骨格、シクロヘプタン骨格、ジシクロデカン構造、トリシクロデカン環、アダマンタン環、イソボルニル環等を挙げることができる。
中でも、トリシクロデカン環、アダマンタン環等といった橋かけ環炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。このような化合物においては、脂環式炭化水素骨格に橋かけがなされているため、立体的な構造をとって環状構造の空間に炭素原子が配置されているため、水蒸気の透過をより有効に防ぐことができる。そして、上記相乗効果は、このような橋かけ環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物との混合によって、より高いものとなる。
ここで、(メタ)アクリロイル基は、環式炭化水素骨格が直接または炭化水素基によって連結されていることが好ましい。そして、具体的な連結としては、上記環式炭化水素骨格に、(メタ)アクリロイル基が直接ないし炭化水素基により連結されており、炭化水素基によって連結されている場合の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキレン基または、エーテル結合を有する炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0021】
このような、脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、下記の単官能(メタ)アクリレート化合物や2官能以上の(メタ)アクリレート化合物がある。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物としては、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
このような環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、好適には下記式(3)で表される構造を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【化9】
(上記式中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ハロゲン原子または下記式(4)
【化10】
(式中、R、Yは上記と同じであり、*は環状骨格へ結合する。)
を表し、Rにおいて少なくともいずれか一方は上記式(4)である。)
上記式(3)の(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
脂環式炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常5〜95重量部であり、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部が特に好ましい。
【0024】
本発明において環状(メタ)アクリレート化合物として使用することができるヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物について以下説明する。
このようなヘテロ環骨格においては、鎖状構造のもの等の他の骨格と比較して、水蒸気の透過を防ぐ効果があり、芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と併せて硬化系に配置されることによって、相乗効果によって顕著に水蒸気の透過を防ぐことが可能となる。
ヘテロ環骨格としては、具体的に使用できる骨格としては、ジオキサン構造、トリオキサン構造、イソシアヌレート構造等を挙げることができる。
ここで、(メタ)アクリロイル基は、ヘテロ環骨格が直接または炭化水素基によって連結されていることが好ましい。そして、具体的な連結としては、上記ヘテロ環骨格に、(メタ)アクリロイル基が直接ないし炭化水素基により連結されており、炭化水素基によって連結されている場合の炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキレン基または、エーテル結合を有する炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0025】
このような、ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、下記の(メタ)アクリレート化合物がある。
即ち、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレートカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸EEO変性ジアクリレート(M−215)、ε−カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(M−327)、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(M−313またはM−315)、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート(R−604)、ペンタメチルピペリジニルメタクリレート(FA−711)、テトラメチルピペリジニルメタクリレート(FA−712HM)、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート(SR531)が挙げられる。
【0026】
このようなヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ヘテロ環の例としてモルホリン骨格、テトラヒドロフラン骨格、オキサン骨格、ジオキサン骨格、トリアジン骨格、カルバゾール骨格、ピロリジン骨格、ピペリジン骨格、イソシアヌレート構造が挙げられ、好適には下記式(7)で表される構造を有する(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。
【化11】
(上記式中、Rは直接結合、炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、アルケニル基を、Xは窒素原子、酸素原子またはメチレン基を、Yはメチレン基またはカルボニル基を表し、mは1〜4の整数を示す。但し、Xが全てメチレン基となることはない。)
ここで、好ましくは下記式の化合物を使用することができる。
【化12】
(前記式中、Rは、直接結合、炭素数1〜6のアルキレン基またはアルキレンオキシ基を表す。Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキレン基を表す。Zは炭素、酸素、窒素を表す。)
【0027】
ヘテロ環骨格を有する(メタ)アクリレート化合物の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常5〜95重量部であり、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部が特に好ましい。
【0028】
本発明の樹脂組成物に関して、樹脂組成物中の(メタ)アクリレート化合物成分において、下記部分構造式(A)
【化13】
(式中、tは2以上の整数を表す。)
で表される構造を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、ポリEO変性(メタ)アクリレート化合物と称す。)の総重量が、ポリEO変性(メタ)アクリレート化合物以外の(メタ)アクリレート化合物の総重量より少ないことが好ましく、1/2以下であることがより好ましい。なぜならば、上記ポリEO変性(メタ)アクリレート化合物は水蒸気透過率が劣り、当該ポリEO変性(メタ)アクリレート化合物の含有量が多く、樹脂組成物中において支配的になると、水蒸気透過率が劣る恐れがあるためである。
そして、樹脂組成物中にポリEO変性(メタ)アクリレート化合物の総重量が、樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましく、2重量部以下であることが特に好ましい。
【0029】
本発明においては、環状(メタ)アクリレート化合物であってポリEO変性(メタ)アクリレート化合物である、環状ポリEO変性(メタ)アクリレート化合物は、本発明の芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物ないし環状(メタ)アクリレート化合物として使用しないことが好ましいため、使用したとしても樹脂組成物100重量部に対して20重量部以下が好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0030】
本発明において、樹脂組成物中に含有する芳香族炭化水素骨格を有する(メタ)アクリレート化合物と環状(メタ)アクリレート化合物の割合は重量比で9:1〜1:9が好ましく、7:3〜9:1がより好ましく、5:5〜9:1が特に好ましい。
上記好ましい範囲とすることで、水蒸気透過率に極めて優れた樹脂組成物を得ることが可能となる。
【0031】
本発明に使用する重合開始剤(C)としては、光重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤等様々な重合開始剤を使用することができる。
【0032】
また、光重合開始剤として、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;アセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]等のアセトフェノン類;2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、4,4'−ビスメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキシド等のホスフィンオキサイド類等を挙げることができる。好ましくは、アセトフェノン類であり、さらに好ましくは2−ヒドロキシ−2−メチル−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトンを挙げることができる。なお、本発明の樹脂組成物においては、光重合開始剤は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0033】
また、熱ラジカル重合開始剤としては、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメックRTMA、M、R、L、LH、SP-30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックスRTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステルRTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチルRTMB、パーカドックス16、カヤカルボンRTMBIC−75、AIC−75(化薬アクゾ株式会社製)、パーメックRTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサRTMH、HC、パTMH、C、V、22、MC、パーキュアーRTMAH、AL、HB、パーブチルRTMH、C、ND、L、パークミルRTMH、D、パーロイルRTMIB、IPP、パーオクタRTMND、(日油株式会社製)などが市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001等(和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
上記熱ラジカル重合開始剤(b)として、好ましいのはベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)である。具体的には、ベンゾピナコール、1, 2−ジメトキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジエトキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジフェノキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ジメトキシ−1,1, 2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1, 2−ジフェノキシ−1,1, 2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,
2,2−テトラフェニルエタン等、が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,
2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化することは、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化することは、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤をピリジンなどの塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)やトリエチルシリル化剤としてトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤としてt−ブチルメチルシラン(TBMS)などが挙げれる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することが出来る。シリル化剤の反応量としては対象化合物の水酸基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になってしまう。
【0034】
本発明の成分(C)の含有量は樹脂組成物の総量100質量部に対して、0.1〜10質量部であり、好ましくは0.5〜5質量部である。なお、本発明の樹脂組成物においては、重合開始剤(C)は単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
【0035】
また本発明の樹脂組成物には、得られる本発明の樹脂組成物の粘度、屈折率、密着性などを考慮して、成分(A)、成分(B)以外の(メタ)アクリレート化合物を使用しても良い。具体的には、(メタ)アクリレートモノマーが挙げられ、該(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等を使用することができる。
【0036】
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、イミド環構造を有するイミド(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0037】
2つの官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーとしては、ジアクリル化イソシアヌレート等のイソシアネートのアクリル化物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の直鎖メチレン構造を有する(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0038】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、(ポリ)カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート環を有する多官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(ポリ)カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(ポリ)エトキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロポキシ変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールの多官能(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート等の含リンの多官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンベンゾエート(メタ)アクリレート等の芳香族を有する多官能(メタ)アクリレート、2,2,2−トリスアクリロイロキシメチルコハク酸等の酸変性された多官能(メタ)アクリレート、シリコーンヘキサ(メタ)アクリレート等のシリコーン骨格を有する多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0039】
このような(A)成分、(B)成分以外の(メタ)アクリレートモノマーの樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常5〜95重量部であり、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部が特に好ましい。
【0040】
本発明においては特性を損なわない程度でウレタン(メタ)アクリレートを使用することができる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジオール化合物(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスフェノールAポリエトキシジオール、ビスフェノールAポリプロポキシジオール等)又はこれらジオール化合物と二塩基酸若しくはその無水物(例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸若しくはこれらの無水物)との反応物であるポリエステルジオールと、有機ポリイソシアネート(例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の鎖状飽和炭化水素イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等の環状飽和炭化水素イソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート)を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを付加した反応物等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常5〜95重量部であり、10〜80重量部が好ましく、20〜70重量部が特に好ましい。
【0041】
本発明には、樹脂組成物中に適宜微粒子を含有させることができる。微粒子としては有機微粒子、無機微粒子が挙げられる。また、微粒子(D)は、必要とされる光線透過率、硬度、耐擦傷性、硬化収縮率、屈折率を考慮し単独、または複数種を混合して用いることができる。
尚、透過率(特に、380nm〜780nmでの透過率)を向上させる観点からは、微粒子を含有させないことが好ましい。
【0042】
本発明に使用できる有機微粒子としては、ポリスチレン樹脂ビーズ、アクリル系樹脂ビーズ、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ等の有機ポリマービーズ、多孔質ポリスチレン樹脂ビーズ、多孔質アクリル系樹脂ビーズ、多孔質ウレタン樹脂ビーズ、多孔質ポリカーボネート樹脂ビーズ等の多孔質有機ポリマービーズ、ベンゾグアナミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、ベンゾグアナミン−メラミン−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、尿素−ホルマリン縮合物の樹脂粉末、アスパラギン酸エステル誘導体の粉末、ステアリン酸亜鉛の粉末、ステアリン酸アミドの粉末、エポキシ樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー等が挙げられ、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂ビーズや架橋ポリメチルメタクリレート・スチレン樹脂ビーズ等が好ましい。これら有機微粒子は市販品として容易に入手することができ、又、公知文献を参考に調製することもできる。
【0043】
本発明に使用することができる無機微粒子としては導電性金属酸化物、透明性金属酸化物、その他無機フィラー等が挙げられる。
【0044】
本発明に使用できる導電性金属酸化物としては、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、五酸化アンチモン、酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられる。
【0045】
本発明に使用できる透明性金属酸化物としては、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化錫/五酸化アンチモン複合物、酸化ジルコニウム/酸化錫/五酸化アンチモン複合物、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化錫複合物等が挙げられる。
【0046】
本発明に使用できるその他無機フィラーとしては、酸化カルシウム、塩化カルシウム、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。
【0047】
本発明に使用できる微粒子としては硬度と耐擦傷性に優れ、屈折率の高い微粒子が好ましく、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化錫/五酸化アンチモン複合物、酸化ジルコニウム/酸化錫/五酸化アンチモン複合物、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化錫複合物が好適に用いられる。また、ディスプレイに用いられる光学シートは高い光線透過率が要求される為、微粒子の一次粒径は100nm以下が好ましい。これらの配合割合としては、成分(A)+成分(B)の総量100質量部に対して1〜30質量部であり、好ましくは5〜20質量部である。
【0048】
さらに、微粒子の分散剤として、ポリカルボン酸系の分散剤やシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、変性シリコーンオイル等のシリコーン系分散剤や有機共重合体系の分散剤等を併用することも可能である。これらの配合割合としては、本発明の樹脂組成物の全質量に対して0〜30質量%程度、好ましくは0.05〜5質量%程度である。
【0049】
なお、一次粒径とは凝集を崩したときの、その粒子が持つ一番小さい粒径を意味する。即ち、楕円形状の微粒子では短径を一次粒径とする。一次粒径は動的光散乱法や電子顕微鏡観察等により測定することができる。具体的には、日本電子(株)製JSM−7700F電界放出形走査電子顕微鏡を使用し、加速電圧30kV条件下で一次粒径を測定できる。
本発明においては、1次粒径が100nm以下であることが好ましい。そして、5〜100nmである微粒子が好適に使用できる。100nm以下であることにより、耐擦傷性を付与しつつ、透過率が高い硬化物を提供することが可能となる。
【0050】
これら微粒子は溶媒に分散し使用することができる。特に無機微粒子は水または有機溶媒に分散された形で市販品を入手し易く、使用される有機溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族系炭化水素溶剤、ヘキサン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素溶剤、及びそれらの混合物である石油エーテル、ホワイトガソリン、ソルベントナフサ等、エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のアルキルアセテート類、γ−ブチロラクトン等の環状エステル類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルモノアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ブチレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート等の(モノ又はポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルモノアセテート類、グルタル酸ジアルキル、コハク酸ジアルキル、アジピン酸ジアルキル等のポリカルボン酸アルキルエステル類等、エーテル系溶剤としては、ジエチルエーテル、エチルブチルエーテル等のアルキルエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類等、ケトン系溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0051】
本発明において微粒子を使用する場合、微粒子の含有量は、樹脂組成物100重量部に対して、通常0.001〜20重量部であり、0.001〜10重量部が好ましく、0.001〜5重量部が特に好ましい。
【0052】
本発明の樹脂組成物には、前記成分以外に取り扱い時の利便性等を改善するために、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤、酸化防止剤、重合禁止剤、可塑剤、帯電防止剤等を状況に応じて併用して含有することができる。
【0053】
また、耐久性や可撓性を得るために可塑剤を使用される例も多い。使用される材料としては所望の粘度、耐久性、透明性や可撓性等により選択される。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系ポリマー、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等のフタル酸エステル、トリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート等のトリメリット酸エステル、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−(2−ブトキシエトキシ)エチル)アジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジブチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジエチルサクシネート等の脂肪族二塩基酸エステル、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等の正リン酸エステル、メチルアセチルリシノレート等のリシノール酸エステル、ポリ(1,3−ブタンジオールアジペート)等のポリエステル、グリセリルトリアセテート等の酢酸エステル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等のスルホンアミド、ポリエチレングリコールベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリプロピレングリコールベンゾエート、ポリプロピレングリコールジベンゾエート、ポリテロラメチレングリコールベンゾエート、ポリテトラメチレングリコールベンゾエート等のポリアルキレンオキサイド(ジ)ベンゾエート、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテル、ポリエトキシ変性ビスフェノールA、ポリプロポキシ変性ビスフェノールA等のポリアルコキシ変性ビスフェノールA、ポリエトキシ変性ビスフェノールF、ポリプロポキシ変性ビスフェノールF等のポリアルコキシ変性ビスフェノールF、ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の多環芳香族、(ビ)ナフトール、(ポリ)エトキシ変性(ビ)ナフトール、(ポリ)プロポキシ変性(ビ)ナフトール、(ポリ)テトラメチレングリコール変性(ビ)ナフトール、(ポリ)カプロラクトン変性(ビ)ナフトール等のナフトール誘導体、ジフェニルスルフィド、ジフェニルポリスルフィド、ベンゾチアゾリルジスルフィド、ジフェニルチオ尿素、モルホリノジチオベンゾチアゾール、シクロヘキシルベンゾチアゾール−2−スルフェンアミン、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の含硫黄化合物が上げられる。好ましくは、(ポリ)エチレングリコールジベンゾエート、(ポリ)プロピレングリコールジベンゾエート、ビナフトール、(ポリ)エトキシ変性ビナフトール、(ポリ)プロポキシ変性ビナフトール、ジフェニルスルフィドである。
【0054】
更に、必要に応じて、アクリルポリマー、ポリエステルエラストマー、ウレタンポリマー及びニトリルゴム等のポリマー類も添加することができる。
【0055】
反応性基を有しない有機化合物成分については、相溶性の点から重量平均分子量が10,000g/mol以下であることが好ましく、5,000g/mol以下が特に好ましい。本発明においては、反応性基を有しない有機化合物の樹脂組成物中の含有量は、樹脂組成物に対して1.5重量%以下であることが好ましく、1.0重量%以下であることがより好ましく、0.5重量%以下であることが特に好ましい。1.5重量%以下とすることで、反応性基を有しない成分が相溶せずに、固形状またはゲル状等の不溶成分として残存していることを防ぐことが可能となるため、硬化物性として透明性、耐熱性に劣るものとなることを防ぐことができることから好ましい。また、水蒸気透過度を低下させるためにアルキルアルミニウム等の有機金属化合物を加えることもできる。溶剤を加えることもできるが、溶剤を添加しないものが好ましい。
【0056】
本発明の樹脂組成物においては、透過率に関しても優れた特性が好まれ、具体的には波長380〜780nmにおける各波長の光線透過率が90%以上であることが好ましい。光線透過率は、(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U−3900H等の測定機器により測定ができる。
また、本発明の樹脂組成物においては、ガラス転移温度が70℃以上であることが好ましく、100℃以上が特に好ましい。
【0057】
本発明の樹脂組成物は、各成分を常法に従い混合溶解することにより調製することができる。例えば、撹拌装置、温度計のついた丸底フラスコに各成分を仕込み、20〜80℃、好ましくは40〜80℃にて0.5〜6時間撹拌することにより得ることができる。
【0058】
本発明の樹脂組成物の粘度は、作業性に適した粘度として、E型粘度計(TV−200:東機産業社製)を用いて測定した粘度が25℃で1000mPa・s以下である組成物が好ましく、500mPa・s以下が特に好ましい。
【0059】
本発明の樹脂組成物はエネルギー線によって容易に硬化させることができる。ここでエネルギー線の具体例としては、紫外線、可視光線、赤外線、X線、ガンマー線、レーザー光線等の電磁波、アルファー線、ベータ線、電子線等の粒子線等が挙げられる。本発明においては、これらのうち、紫外線、レーザー光線、可視光線、または電子線が好ましい。
【0060】
常法に従い、本発明の樹脂組成物に前記エネルギー線を照射することにより、本発明の硬化物を得ることができる。本発明の樹脂組成物の液屈折率は通常1.45〜1.55であり、好ましくは1.48〜1.52である。屈折率はアッベ屈折率計(型番:DR−M2、(株)アタゴ製)等で測定することができる。
本発明の樹脂組成物においては、厚み100μmの60℃での水蒸気透過率が200g/m・day以下であることが好ましく、100g/m・day以下であることがより好ましく、60g/m・day以下であることが特に好ましい。当該範囲にあることで、水分の透過により、素子にダメージを与えることを有効に防ぐことが可能となる。
【0061】
本発明による有機EL素子の固体封止方法は、基板上に形成された有機EL素子上にパッシベーション膜を形成する工程、上記パッシベーション膜の上に封止用接着剤を塗布し、封止用透明基板を設ける工程、および上記封止用接着剤を硬化させる工程を有し、封止用接着剤として上述の本発明による硬化性樹脂組成物を使用することを特徴とする。
【0062】
封止される有機EL素子は、基板と、下部電極と、少なくとも発光層を含む有機EL層と、上部電極とを含む素子部本体とから構成される。基板には、ガラス基板、シクロオレフィンやポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート等から成る透明有機材料、該透明有機材料をグラスファイバー等で高剛性化した有機/無機ハイブリッド透明基板等の電気絶縁性物質からなる平坦な基板を用いる。また、素子部本体の代表的な構成としては以下のものが挙げられる。
(1)下部電極/発光層/上部電極
(2)下部電極/電子輸送層/発光層/上部電極
(3)下部電極/発光層/正孔輸送層/上部電極
(4)下部電極/電子輸送層/発光層/正孔輸送層/上部電極
例えば、上記(4)の層構造を有する有機EL素子は、基板の片面上に、Al−Li合金等からなる下部電極(陰極)を抵抗加熱蒸着法またはスパッタ法によって形成し、次いで有機EL層として、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体等からなる電子輸送層、発光層、TPD等からなる正孔輸送層及び上部電極(陽極)を抵抗加熱蒸着法又はイオンビームスパッタ法等の薄膜形成方法によって順次積層することによって作製することが可能である。なお、有機EL素子の層構造、又は材料は表示素子として機能するものであれば特に限定されるものではない。また、本発明による固体封止方法はいかなる構造の有機EL素子であっても適用可能である。
【0063】
パッシベーション膜は、有機EL素子を覆うように形成される。パッシベーション膜は、窒化ケイ素、酸化ケイ素などの無機材料を蒸着やスパッタなどの方法によって形成することが可能である。パッシベーション膜は、有機EL素子へ水分やイオン性不純物等が浸入するのを防止するために設けられる。パッシベーション膜の厚さは、10nm〜100μmの範囲が好ましく、100nm〜10μmの範囲とすることがより好ましい。
【0064】
パッシベーション膜は、成膜法にもよるが、一般にピンホールが存在する不完全な膜であるか、機械的強度が弱い膜であることが多い。そのため、固体封止方法では、パッシベーション膜の上にさらに接着剤を塗布し、封止用透明基板を用いて圧着し、接着剤を硬化することによって封止の信頼性を高めている。
【実施例】
【0065】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、数値の単位「部」は質量部を示す。又、実施例8は参考例と読み替えるものとする。
【0066】
以下の実施例に示すような組成にて本発明の紫外線硬化型樹脂組成物及び硬化物を得た。又、樹脂組成物及び硬化膜についての評価方法及び評価基準は以下の通り行った。なお、有機溶媒を含有する実施例については、エバポレーターで十分に有機溶媒を揮発させた後に評価を行った。
【0067】
(1)透湿度:紫外線硬化型樹脂を5mm厚みのガラス基板で挟み、100μmのスペーサーを使用し膜厚を調整し、高圧水銀灯(120W/cm、オゾンレス)で3000?mJ/cmで硬化させ試験片を作製した。得られた試験片をLyssy水蒸気透過度計L80−5000(Systech Illinois社製)、60℃×90%RHにて透湿度を測定した。
【0068】
(2)Tg(ガラス転移点):硬化した紫外線硬化性樹脂層のTg点を粘弾性測定システムEXSTAR DMS−6000(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製)、引張モード、周波数1Hzにて測定した。
【0069】
(3)硬化収縮率:基材上に紫外線硬化型樹脂層を塗布し、高圧水銀灯(120W/cm、オゾンレス)で3000mJ/cmの照射を行い硬化させ膜比重測定用の硬化物を作成した。
これを、JIS K7112 B法に準拠し、硬化物の比重(DS)を測定した。また、23±2℃で樹脂組成物の比重(DL)を測定し、次式により硬化収縮率を算出した。測定結果は4回の測定結果の平均値で示す。
硬化収縮率(%)=(DS−DL)/DS×100
【0070】
(4)脆性:易接着PET(A4300 100μm厚み:東洋紡績(株)製)上にメイヤーバーコーターにて20μm厚みで塗布し、高圧水銀灯(120W/cm、オゾンレス)で3000mJ/cmの照射を行い硬化させ試験片を得た。その後、試験片を180°折り曲げることで評価を行った。
【0071】
(5)透過率:紫外線硬化型樹脂をガラス基板で挟み、60μmのスペーサーを使用し膜厚を調整し、高圧水銀灯(120W/cm、オゾンレス)で3000mJ/cmで硬化させ試験片を作製した。得られた試験片を分光光度計U−3900((株)日立ハイテクノロジーズ製)、測定範囲:780〜380nm、光源:C、視野角:2°にて測定し、400nmでの透過率を記載した。
【0072】
【表1】
比較例1は高圧水銀灯(120W/cm、オゾンレス)で2000mJ/cm完全硬化しなかった為、測定可能な項目のみを記載した
【0073】
R−604:ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、日本化薬(株)社製
R−684:トリシクロデカンジメチロールアクリレート、日本化薬(株)社製
OPP−1:オルソフェニルフェノキシエチルアクリレート、日本化薬(株)社製
PHE:フェノキシエチルアクリレート、新中村化学工業(株)社製
FA−320A:エチレンオキサイド2モル変性ビスフェノールA型ジアクリレート、日立化成工業(株)社製
ニカノールY−50:メタキシレンとホルムアルデヒドとの反応物(数平均分子量250)、フドー(株)社製
ADAMANTATE M−104:1−アダマンチルメタクリレート、出光興産(株)社製
MH−002:1, 2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1, 2,2−テトラフェニルエタン、和光純薬(株)社製
イルガキュア184D:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASF(株)社製
【0074】
実施例1〜3及び比較例1〜4の評価結果から明らかなように、特定の組成を有する本発明の樹脂組成物はTgが高く硬化収縮率、水蒸気透過度が低い。そのため例えば各種封止材、特に有機EL素子の封止材に適している。また、硬化収縮率は全て2%以下であり、脆性試験においても、クラックの発生はみられなかった。透過率は全て90%以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の樹脂組成物及びその硬化物は、可視光透過率、耐光性に優れ、Tgが高く、硬化収縮率、水蒸気透過度が低いことから、各種封止材、特に有機EL素子の封止材に適するものである。