特許第6099201号(P6099201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6099201-架線式運搬装置 図000002
  • 特許6099201-架線式運搬装置 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099201
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】架線式運搬装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 21/00 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   B66C21/00 F
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-128690(P2013-128690)
(22)【出願日】2013年6月19日
(65)【公開番号】特開2015-3775(P2015-3775A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年6月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198293
【氏名又は名称】株式会社KATO HICOM
(74)【代理人】
【識別番号】100087527
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 光雄
(72)【発明者】
【氏名】大川 聰
(72)【発明者】
【氏名】浜垣 実
(72)【発明者】
【氏名】尾形 淳
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−101912(JP,A)
【文献】 特開平04−256690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 21/00
B66C 11/16
A01G 23/00
A01G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより個別に駆動されるホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを備え、ホールバックドラムより繰り出されたホールバックラインを所望距離離れた定滑車との間に上側架線部を形成するよう張り渡し、上記定滑車に巻き回した上記ホールバックラインの先端部を上記上側架線部に移動可能に支持した搬器に接続し、該搬器に設けた方向変換ドラムに巻き回した索材の一方の端部側を、メインラインとして上記メインドラムに巻き取らせ、且つ上記索材の他方の端部側を、スラックプリングラインとして上記スラックプリングドラムに巻き取らせ、更に、上記搬器に、ホイストラインを巻いた吊りドラムを備えると共に、該吊りドラムと上記方向変換ドラムとを動力伝達手段を介して接続してなる架線式運搬装置において、
上記ホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを、上記ホールバックドラムを停止させた状態の下で、上記メインドラムとスラックプリングドラムについて、一方のライン繰り出し動作と他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能と、上記ホールバックドラムと、上記メインドラム及びスラックプリングドラムの組について、一方のライン繰り出し動作と、他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能を備えたインターロック機構を介して接続した構成
を有することを特徴とする架線式運搬装置。
【請求項2】
インターロック機構は、油圧モータの向きが互いに対向するように配置させたメインドラムとホールバックドラムの軸同士を、順に配置した第1のクラッチ手段と第1の中間軸と第2のクラッチ手段を介して接続し、
且つ上記ホールバックドラムと油圧モータの向きが並行になるように配置したスラックプリングドラムの軸と、上記第1の中間軸に、同じ歯数のギアを、互いに噛合するように取り付け、
更に、上記スラックプリングドラムの軸に、第2の中間軸を、第3のクラッチ手段を介して接続し、
上記第2の中間軸と、上記メインドラムの軸に、直接噛合しない径寸法で且つ同じ歯数の別のギアを取り付けると共に、該各別のギアの双方に、中間ギアを噛合させてなる構成とした請求項1記載の架線式運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2地点の間に張り渡した架線に沿って被運搬物を運搬するために用いる架線式運搬装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
山林等で伐採した木材を集材するために用いる運搬装置の1つとしては、ランニングスカイライン方式の架線式運搬装置が一般的に用いられている。
【0003】
しかし、上記ランニングスカイライン方式の架線式運搬装置は、索張力が不足しやすいことや、荷掛けに手間を要すること等の欠点があり、その欠点を補うために、以下のような3索式の架線式運搬装置が従来提案されている。
【0004】
かかる3索式の架線式運搬装置は、個別の油圧モータにより駆動可能なホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを備えている。
【0005】
上記ホールバックドラムより繰り出したホールバックラインは、上記各ドラムが設置してある或る第1の地点より、所望の間隔を隔てた第2の地点に設置される定滑車まで上側架線部を形成するよう張り渡されている。上記定滑車に巻き回して折り返した該ホールバックラインの先端側は、上記上側架線部に移動可能に支持させた搬器に接続してある。
【0006】
上記搬器には、方向変換ドラムが設けてあり、該方向変換ドラムに1本の索材の長手方向中間部を複数回巻き回すと共に、該索材の一方の端部側を、メインラインとして上記メインドラムに巻き取らせ、又、該索材の他方の端部側は、スラックプリングラインとして上記スラックプリングドラムに巻き取らせるようにしてある。
【0007】
更に、上記搬器には、被運搬物を該搬器より吊下げるためのホイストラインを巻いた吊りドラムが設けてある。該吊りドラムは、上記方向変換ドラムに、スプロケットとチェーン等の動力伝達手段を介し接続して、該方向変換ドラムの回転に同期して回転できるようにしてある。
【0008】
以上の構成としてある架線式運搬装置は、上記ホールバックドラムによるホールバックラインの巻き取りと同時に、上記メインドラムとスラックプリングドラムによるメインラインとスラックプリングラインの繰り出しを行わせることで、上記搬器の上記第2の地点側への移動を行わせることができるようにしてある。
【0009】
一方、上記とは逆に、上記ホールバックドラムでは、ホールバックラインの繰り出しを行わせ、同時に、上記メインドラムとスラックプリングドラムでは、メインラインとスラックプリングラインの巻き取りを行わせるようにすることにより、上記搬器の上記第1の地点側への移動を行わせることができるようにしてある。
【0010】
更に、上記搬器の停止中のときには、上記メインドラムによるメインラインの繰り出しと、上記スラックプリングドラムによるスラックプリングラインの巻き取りとを同期して行わせると、上記方向変換ドラムの回転に伴って上記吊りドラムを繰り出し方向に回転させて、上記搬器よりホイストラインを吊り降ろすことができるようにしてある。
【0011】
一方、上記とは逆に、メインライン用ウインチによるメインラインの巻き取りと、上記スラックプリングライン用ウインチによるスラックプリングラインの繰り出しとを同期して行うことにより、上記方向変換ドラムの回転に伴って上記吊りドラムを巻き取り方向に回転させて、上記ホイストラインを搬器に向けて吊り上げることができるようにしてある。
【0012】
更に、上記3索式の架線式運搬装置は、上記ホールバックドラムと上記メインドラムとの間に、互いの運転方向が巻き取り側と繰り出し側で逆になる状態で同期して運転させるためのクラッチ手段を備えると共に、上記ホールバックドラムとスラックプリングドラムとの間にも、互いの運転方向が巻き取り側と繰り出し側で逆になる状態で同期して運転させるための別のクラッチ手段を備えてなる構成としてある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2012−101912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところが、上記特許文献1に示された架線式運搬装置は、搬器の移動を停止させた状態で、該搬器よりホイストラインを介して被運搬物を吊り上げるための力は、上記メインドラム用の1つの油圧モータの出力に依存している。
【0015】
又、上記搬器からホイストラインを介して被運搬物を吊っている状態のときには、メインラインに常に索張力が生じるために、上記搬器から被運搬物を吊っている間は、上記メインドラム用の1つの油圧モータに常に負荷が生じている。
【0016】
そこで、本発明は、上記特許文献1に示された架線式運搬装置を更に発展させて、搬器よりホイストラインを介して被運搬物を吊るときに、メインドラム用とスラックプリングドラム用の2つの油圧モータの出力を利用できるようにすると共に、メインラインやスラックプリングラインに作用する索張力の最大値を抑制することができて、被運搬物を吊るために使用する上記油圧モータの負荷の最大値を軽減することができる架線式運搬装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、モータにより個別に駆動されるホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを備え、ホールバックドラムより繰り出されたホールバックラインを所望距離離れた定滑車との間に上側架線部を形成するよう張り渡し、上記定滑車に巻き回した上記ホールバックラインの先端部を上記上側架線部に移動可能に支持した搬器に接続し、該搬器に設けた方向変換ドラムに巻き回した索材の一方の端部側を、メインラインとして上記メインドラムに巻き取らせ、且つ上記索材の他方の端部側を、スラックプリングラインとして上記スラックプリングドラムに巻き取らせ、更に、上記搬器に、ホイストラインを巻いた吊りドラムを備えると共に、該吊りドラムと上記方向変換ドラムとを動力伝達手段を介して接続してなる架線式運搬装置において、上記ホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを、上記ホールバックドラムを停止させた状態の下で、上記メインドラムとスラックプリングドラムについて、一方のライン繰り出し動作と他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能と、上記ホールバックドラムと、上記メインドラム及びスラックプリングドラムの組について、一方のライン繰り出し動作と、他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能を備えたインターロック機構を介して接続した構成を有する架線式運搬装置とする。
【0018】
又、請求項2に対応して、上記構成において、インターロック機構は、油圧モータの向きが互いに対向するように配置させたメインドラムとホールバックドラムの軸同士を、順に配置した第1のクラッチ手段と第1の中間軸と第2のクラッチ手段を介して接続し、且つ上記ホールバックドラムと油圧モータの向きが並行になるように配置したスラックプリングドラムの軸と、上記第1の中間軸に、同じ歯数のギアを、互いに噛合するように取り付け、更に、上記スラックプリングドラムの軸に、第2の中間軸を、第3のクラッチ手段を介して接続し、上記第2の中間軸と、上記メインドラムの軸に、直接噛合しない径寸法で且つ同じ歯数の別のギアを取り付けると共に、該各別のギアの双方に、中間ギアを噛合させてなる構成とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の架線式運搬装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)搬器を停止させた状態で被運搬物の吊り上げや吊り降ろしを行うときには、メインドラムとスラックプリングドラムとを、一方のライン巻き取り動作と、他方のライン繰り出し動作が相互に同期した状態で連動するようにインターロック制御することができるため、搬器よりホイストラインを介して被運搬物を吊る際に、メインラインとスラックプリングラインにより索張力を分担することができる。これにより、上記メインラインやスラックプリングラインに作用する索張力の最大値を抑制することができる。
(2)又、上記搬器よりホイストラインを介して被運搬物を吊るときの荷揚げ力としては、メインドラム用とスラックプリングドラム用の2つの油圧モータの出力を利用することができる。このため、被運搬物を吊るために使用する上記2つの油圧モータの負荷の最大値を軽減させることができる。又、搬器の荷揚げ力を増加させることが可能になる。
(3)更に、上記のように搬器より被運搬物を吊っている間は、上記メインラインとスラックプリングラインの双方に索張力がかかることに起因して、上記メインドラムとスラックプリングドラムの油圧モータの負荷を抜いても、上記搬器より被運搬物を吊っている状態を維持することができる。したがって、上記メインドラムとスラックプリングドラム用の油圧モータの負荷を軽減することが可能になる。
(4)インターロック機構は、請求項2のような構成とすることにより、ホールバックドラムとメインドラムとスラックプリングドラムを、上記ホールバックドラムを停止させた状態の下で、上記メインドラムとスラックプリングドラムについて、一方のライン繰り出し動作と他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能と、上記ホールバックドラムと、上記メインドラム及びスラックプリングドラムの組について、一方のライン繰り出し動作と、他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能とを有するインターロック機構を、容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の架線式運搬装置の実施の一形態を示すもので、(a)は全体構成を示す概要図、(b)は各ドラムの構成を拡大して示す図である。
図2】(a)は図1(b)のA−A方向矢視図、(b)は図1(b)のB−B方向矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0022】
図1(a)(b)及び図2(a)(b)は本発明の架線式運搬装置の実施の一形態を示すものである。
【0023】
すなわち、本発明の架線式運搬装置は、図1(a)に符号1で示すもので、或る第1の地点に、ホールバックドラム2と、メインドラム3と、スラックプリングドラム4を備える。
【0024】
上記ホールバックドラム2と、メインドラム3と、スラックプリングドラム4は、図1(b)に示すように、同径の2個一組のドラム本体5,5と6,6と7,7,をそれぞれ備えている。上記各ドラム2,3,4の上記2個ずつの各ドラム本体5,5,6,6,7,7は、油圧モータ8,10,12と、スプロケット(図示せず)とチェーン9,11,13からなる動力伝達機構とにより、共に回転駆動できるようにしてある。
【0025】
又、上記ホールバックドラム2、メインドラム3、スラックプリングドラム4は、各々のドラム本体5,5,6,6,7,7に、対応するホールバックライン14、メインライン15、スラックプリングライン16を、それぞれ分担させて巻き回すようにしてある。これにより、上記ホールバックドラム2とメインドラム3とスラックプリングドラム4は、それぞれ対応する各ライン14,15,16を繰り出すとき、あるいは、巻き取るときにも、各ドラム本体5,5,6,6,7,7における巻き径が変化しないようにしてある。よって、上記ホールバックドラム2とメインドラム3とスラックプリングドラム4は、上記同径としてあるそれぞれの各ドラム本体5,5,6,6,7,7の回転量を揃えることにより、該各ドラム2,3,4より繰り出すか、又は、巻き取るライン14,15,16の長さを同一に制御できるようにしてある。又、上記各ライン14,15,16については、対応するホールバックドラム2、メインドラム3、スラックプリングドラム4における巻き回し量が多くなることに起因して、長距離間での索張が容易になるようにしてある。
【0026】
上記ホールバックドラム2とメインドラム3とスラックプリングドラム4同士の間には、以下の2つの機能を備えたインターロック機構17を介装させて設けてある。
【0027】
該インターロック機構17の第1の機能は、ホールバックドラム2のライン繰り出し動作と、メインドラム3及びスラックプリングドラム4のライン巻き取り動作とを同期(連動)させ、又、ホールバックドラム2のライン巻き取り動作と、メインドラム3及びスラックプリングドラム4のライン繰り出し動作とを同期(連動)させる機能である。
【0028】
又、該インターロック機構17の第2の機能は、上記ホールバックドラム2を停止させた状態の下で、上記メインドラム3と上記スラックプリングドラム4について、いずれか一方のライン繰り出し動作と他方のライン巻き取り動作を相互に同期(連動)させる機能である。
【0029】
上記各機能を備えたインターロック機構17の構成は、たとえば、上記ホールバックドラム2と上記メインドラム3を、それぞれ対応する油圧モータ8と10の向きが互いに対向するように配置させる。又、上記スラックプリングドラム4は、上記ホールバックドラム2に対して、それぞれの対応する油圧モータ12と8の向きが並行になるように配置してある。
【0030】
上記メインドラム3は、油圧モータ10が直接接続されている方のドラム本体6の軸18を該ドラム本体6より突出させて、その先端部に、上記第1のクラッチ手段19を介して第1の中間軸20の一端部が接続してある。
【0031】
上記第1の中間軸20の他端部は、上記ホールバックドラム2における油圧モータ8が直接接続されている方のドラム本体5の軸21に、上記第2のクラッチ手段22を介して接続してある。
【0032】
上記スラックプリングドラム4は、油圧モータ12が直接接続されている方のドラム本体7の軸23を、該ドラム本体7より突出させてある。該軸23の突出部分の外周と、上記第1の中間軸20の長手方向中間部の外周には、図1(b)及び図2(a)に示すように、同じ歯数のギア24と25が、互いに噛合するように取り付けてある。
【0033】
更に、上記スラックプリングドラム4における上記軸23の端部には、図1(b)に示すように、上記第3のクラッチ手段26を介して第2の中間軸27の一方の端部が取り付けてある。該第2の中間軸27の外周と、上記メインドラム3の軸18における突出部分の外周には、直接噛合しない径寸法で且つ同じ歯数のギア28と29が、同一の鉛直面内に位置するようにしてそれぞれ取り付けてある。更に、該各ギア28と29同士は、図示しない固定部に回転自在に支持させた中間ギア30に、共に噛合させた構成としてある。
【0034】
なお、図1(a)では、図示する便宜上、上記各ドラム2,3,4同士の間に設けた上記インターロック機構17の記載は省略してある。又、図1(a)では、説明の便宜上、上記各ドラム2,3,4は、それぞれの対応する油圧モータ8,10,12側から見た姿勢で示してある。
【0035】
以上の構成としてあることにより、上記インターロック機構17は、上記第1のクラッチ手段19及び第2のクラッチ手段22を繋ぎ、且つ上記第3のクラッチ手段26を切った状態では、上記ホールバックドラム2の対応する油圧モータ8側から見て左回り(反時計回り)方向の回転駆動と、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4のそれぞれの油圧モータ10,12側から見て右回り(時計回り)方向の回転駆動とを同期して実施させることができるようにしてある。又、上記とは逆方向となるホールバックドラム2の対応する油圧モータ8側から見て右回り(時計回り)方向の回転駆動と、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4のそれぞれの油圧モータ10,12側から見て左回り(反時計回り)方向の回転駆動とを同期して実施させることができるようにしてある。
【0036】
したがって、この状態では、上記ホールバックドラム2よりホールバックライン14を繰り出すときには、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4により、上記ホールバックライン14の繰り出し長さに対応する長さで、メインライン15及びスラックプリングライン16をそれぞれ巻き取ることができるようにしてある。又、上記とは逆に、上記ホールバックドラム2によりホールバックライン14を巻き取るときには、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4により、上記ホールバックライン14の巻き取り長さに対応する長さで、メインライン15及びスラックプリングライン16をそれぞれ繰り出すことができるようにしてある。
【0037】
又、上記インターロック機構17は、上記第1のクラッチ手段19及び第2のクラッチ手段22を切り、且つ上記第3のクラッチ手段26を繋いだ状態では、上記メインドラム3の対応する油圧モータ10側から見て右回り(時計回り)方向の回転駆動と、上記スラックプリングドラム4の対応する油圧モータ12側から見て左回り(反時計回り)方向の回転駆動を同期して実施させることができるようにしてある。又、上記とは逆に、メインドラム3の対応する油圧モータ10側から見て左回り(反時計回り)方向の回転駆動と、上記スラックプリングドラム4の対応する油圧モータ12側から見て右回り(時計回り)方向の回転駆動を同期して実施させることができるようにしてある。
【0038】
したがって、この状態では、上記メインドラム3によりメインライン15を繰り出すときには、上記スラックプリングドラム4により、上記メインライン15の繰り出し長さに対応する長さで、スラックプリングライン16を巻き取ることができるようにしてある。又、上記とは逆に、上記メインドラム3によりメインライン15を巻き取るときには、上記スラックプリングドラム4により、上記メインライン15の巻き取り長さに対応する長さで、スラックプリングライン16を繰り出すことができるようにしてある。
【0039】
上記ホールバックドラム2より引き出した(繰り出させた)ホールバックライン14は、上記第1の地点に立設した図示しない元柱に取り付けられた滑車31を経て、所望の間隔を隔てた第2の地点の図示しない先柱に設置された定滑車32まで上側架線部14aを形成するよう張り渡してある。上記ホールバックライン14の先端側は、上記定滑車32に巻き回すことで折り返すように配置すると共に、該ホールバックライン14の先端は、上記上側架線部14aに移動可能に支持させた搬器33に接続してある。
【0040】
上記搬器33の上端部には、上記上側架線部14aの上側に沿って走行させるための2つのローラ34が或る間隔を隔てて設けられている。
【0041】
又、上記搬器33には、方向変換ドラム35として、たとえば、2個一組の溝付きドラム36aと36bからなる方向変換ドラム35が設けてある。該方向変換ドラム35の第1と第2の溝付きドラム36aと36bには、1本の索材の長手方向中間部を複数回巻き回すと共に、該索材の一方の端部側は、上記メインライン15として上記メインドラム3に、又、他方の端部側は、上記スラックプリングライン16として上記スラックプリングドラム4に、それぞれ巻き取らせるようにしてある。
【0042】
上記方向変換ドラム35の各溝付きドラム36aと36bのいずれか一方又は双方の回転軸37には、対応する溝付きドラム36a,36bと一体に回転する駆動用スプロケット38が取り付けられている。
【0043】
更に、上記搬器33には、図示しない被運搬物を該搬器33より吊下げるためのホイストライン40を巻いた吊りドラム39が設けてある。該吊りドラム39は、回転軸41に該吊りドラム39と一体に回転する従動用スプロケット42が取り付けられている。
【0044】
上記駆動用スプロケット38と、従動用スプロケット42には、無端状の動力伝達手段としてのチェーン43が掛け回してある。これにより、上記搬器33では、方向変換ドラム35の溝付きドラム36a,36bが回転すると、その回転駆動力が、上記駆動用スプロケット38と、上記チェーン43と、上記従動用スプロケット42を介して上記吊りドラム39に伝達されて、該吊りドラム39が上記方向変換ドラム35の回転方向と同方向に回転駆動されて、上記ホイストライン40の吊り上げ又は吊り降ろしを行うことができるようにしてある。
【0045】
上記ホイストライン40の下端(先端)には、図示しない被運搬物を吊るための吊具44が設けてある。
【0046】
図1における符号45と46は、図示しない元柱に取り付けて上記メインライン15とスラックプリングライン16を個別に案内するための滑車である。
【0047】
以上の構成としてある本発明の架線式運搬装置1は、先ず、搬器33を停止させた状態で吊りドラム39によるホイストライン40の昇降を行わせる場合は、上記インターロック機構17における第1のクラッチ手段19及び第2のクラッチ手段22を切り、第3のクラッチ手段26は繋いだ状態とする。又、上記ホールバックドラム2は、予め、図示しないブレーキ等により各ドラム本体5,5が回転しないようにさせて、搬器33の重量や、図示しない被運搬物の重量がホールバックライン14の上側架線部14aに作用しても、該ホールバックドラム2からのホールバックライン14の勝手な繰り出しが生じないようにしておく。
【0048】
この状態で、上記メインドラム3によるメインライン15の巻き取り動作と、上記スラックプリングドラム4によるスラックプリングライン16の繰り出し動作を同期して行わせると、上記搬器33では、方向変換ドラム35の各溝付きドラム36a,36bの回転に伴われて、上記吊りドラム39が、図1(a)における反時計回り方向に回転駆動される。これにより、上記吊りドラム39では、ホイストライン40とその先端側の吊具44の吊り降ろしが行われるようになる。
【0049】
一方、上記の状態で、上記メインドラム3によるメインライン15の繰り出し動作と、上記スラックプリングドラム4によるスラックプリングライン16の巻き取り動作を同期して行わせると、上記搬器33では、方向変換ドラム35の各溝付きドラム36a,36bの回転に伴われて、上記吊りドラム39が、図1(a)における時計回り方向に回転駆動される。これにより、上記吊りドラム39では、ホイストライン40とその先端側の吊具44の吊り上げが行われるようになる。
【0050】
上記のように、搬器33の吊りドラム39よりホイストライン40及び吊具44の吊り降ろしと吊り上げを行うときには、上記インターロック機構17により、上記メインドラム3とスラックプリングドラム4が、一方のライン繰り出し動作と、他方のライン巻き取り動作が相互に同期して連動させられる(インターロック制御される)。このため、上記ホイストライン40の先端側の吊具44によって吊る被運搬物の荷重は、上記メインライン15及びスラックプリングライン16の双方の索張力により分担させることができるようになる。
【0051】
したがって、上記搬器33よりホイストライン40を介して被運搬物を吊り上げるための荷揚げ力は、上記メインドラム3とスラックプリングドラム4に対応する2つの油圧モータ10と12の出力を利用できるようになる。このため、上記搬器33の荷揚げ力は、従来に比して増加させることができる。
【0052】
又、上記搬器33からホイストライン40を介して被運搬物を吊っている状態のときには、上記したように、メインドラム3とスラックプリングドラム4がインターロック制御されて、メインドラム3とスラックプリングドラム4の双方に索張力がかかるため、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4の油圧モータ10と12の負荷を抜いても、上記搬器33より被運搬物を吊っている状態を維持することができる。したがって、上記メインドラム3とスラックプリングドラム4用の油圧モータ10と12の負荷を軽減することが可能になる。
【0053】
次に、本発明の架線式運搬装置1は、搬器33の移動を行わせる場合は、上記インターロック機構17における第1のクラッチ手段19と第2のクラッチ手段22を繋ぎ、第3のクラッチ手段26は切った状態とする。なお、上記搬器33の移動を行わせるときには、上記ホールバックドラム2の図示しないブレーキ等による各ドラム本体5,5の回転阻止状態は、事前に解除させるようにしておく。
【0054】
この状態で、上記ホールバックドラム2によるホールバックライン14の巻き取り動作と、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4によるメインライン15及びスラックプリングライン16の繰り出し動作を同期して行わせると、上記搬器33は、上記定滑車32側である第2の地点側へ移動させられるようになる。
【0055】
一方、上記の状態で、上記ホールバックドラム2によるホールバックライン14の繰り出し動作と、上記メインドラム3及びスラックプリングドラム4によるメインライン15及びスラックプリングライン16の巻き取り動作を同期して行わせると、上記搬器33は、上記滑車31側である第1の地点側へ移動させられるようになる。
【0056】
したがって、上記搬器33を第1の地点側と、第2の地点側のいずれへ移動させる場合にも、上記ホールバックライン14とメインライン15とスラックプリングライン16のすべてに索張力がかかるようになる。このため、上記搬器33の移動には、上記ホールバックドラム2とメインドラム3とスラックプリングドラム4の各油圧モータ8と10と12の出力を利用することができる。又、この状態では、上記各油圧モータ8,10,12の負荷を抜いても、上記搬器33の不用意な移動を防止することができる。よって、上記ホールバックドラム2と上記メインドラム3とスラックプリングドラム4の各油圧モータ8,10,12の負荷を軽減させることが可能になる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、インターロック機構17は、ホールバックドラム2を停止させた状態の下で、メインドラム3とスラックプリングドラム4について、一方のライン繰り出し動作と他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能と、ホールバックドラム2と、メインドラム3及びスラックプリングドラム4の組について、一方のライン繰り出し動作と、他方のライン巻き取り動作とを相互に同期して連動させるようにインターロック制御する機能を備えていれば、各ドラム2,3,4の軸21,18,23に対する各クラッチ手段19,22,26の配置や取り付け構造、及び、中間軸20,27の数や配置や接続構造が、図1(b)及び図2(a)(b)に示した以外の形式のものを採用してもよい。
【0058】
搬器33は、一端側をメインライン15とし、他端側をスラックプリングライン16とする索材の中間部を巻き回した方向変換ドラム35を有し、且つ該方向変換ドラム35の回転に伴ってホイストライン40を巻き回した吊りドラム39を回転駆動させることができるようにしてあれば、該方向変換ドラム35から吊りドラム39へ回転駆動力を伝える動力伝達機構は、図1(a)に示した以外のいかなる形式の動力伝達機構を採用してもよい。又、上記搬器33における方向変換ドラム35と吊りドラム39の配置は、図1(a)に示した以外の任意の配置であってもよい。
【0059】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 架線式運搬装置
2 ホールバックドラム
3 メインドラム
4 スラックプリングドラム
8 油圧モータ(モータ)
10 油圧モータ(モータ)
12 油圧モータ(モータ)
14 ホールバックライン
14a 上側架線部
15 メインライン
16 スラックプリングライン
17 インターロック機構
18 軸
19 第1のクラッチ手段
20 第1の中間軸
21 軸
22 第2のクラッチ手段
23 軸
24 ギア
25 ギア
27 第2の中間軸
26 第3のクラッチ手段
28 ギア(別のギア)
29 ギア(別のギア)
30 中間ギア
32 定滑車
33 搬器
35 方向変換ドラム
38 駆動用スプロケット(動力伝達手段)
39 吊りドラム
40 ホイストライン
42 従動用スプロケット(動力伝達手段)
43 チェーン(動力伝達手段)
図1
図2