特許第6099210号(P6099210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099210
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】アジュバント化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 323/60 20060101AFI20170313BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20170313BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20170313BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20170313BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20170313BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20170313BHJP
   C07H 21/00 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   C07C323/60
   A61K39/39
   A61K39/00 G
   A61P37/04
   A61K39/00 A
   A61K47/48
   A61K47/42
   C07K16/00ZNA
   C07K7/06
   C12N15/00 G
   !C07H21/00CSP
【請求項の数】15
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2014-534504(P2014-534504)
(86)(22)【出願日】2012年10月4日
(65)【公表番号】特表2014-530808(P2014-530808A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】NL2012050694
(87)【国際公開番号】WO2013051936
(87)【国際公開日】20130411
【審査請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】2007536
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】NL
(31)【優先権主張番号】61/543,510
(32)【優先日】2011年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/615,566
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514084004
【氏名又は名称】アイエスエー ファーマシューティカルズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】ISA Pharmaceuticals B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】オッセンドープ, フェルディナンド アントニウス
(72)【発明者】
【氏名】メリーフ, コーネリス ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】カーン, セリーナ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポフ, ドミトリ ヴィクトロヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】フォン ダー マーエル, ギスバート アリー
【審査官】 斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−054131(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/119759(WO,A1)
【文献】 特開昭59−139348(JP,A)
【文献】 特表2011−506309(JP,A)
【文献】 MOYLE, P. M. and TOTH, I.,CURRENT MEDICINAL CHEMISTRY,ベルギー,BENTHAM SCIENCE PUBLISHERS BV,2008年 1月 1日,V15 N5,P506-516
【文献】 HIDA, T. et al.,THE JOURNAL OF ANTIBIOTICS,1995年 1月 1日,V48 N7,P589-603
【文献】 SPOHN, R. et al.,Synthetic lipopeptide adjuvants and Toll-like receptor 2−structure-activity relationships,Vaccine,2004年,22(19),2494-2499
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 323/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

上記の式[1](式中、R及びRは、それぞれ独立して、10〜17個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基であり、nは11〜18(18を含む)であり、Yは硫黄であり、XはOであり、Rは60個以下のアミノ酸のペプチドを含む有機基である)によって表される化合物。
【請求項2】
及びRが15個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
nが11〜15(15を含む)である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
RがSK(式中、mは1、2、3、4又は5である)であり、Rが抗原に任意にカップリングされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
及びRが15個の炭素原子を有する直鎖状のアルキル基であり、mが4であり、nが12又は14である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
基Rが、
【化2】

(式中、RはKペプチド部分であり、mは1、2、3、4又は5であり、Rは抗原に任意にカップリングされており、Rは水素であるか、炭素、窒素及び酸素から選択される1〜6個の原子を含む基である)によって表される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
が−CH−OH基、−CH−CH基、−(CH−CH基、−CHC≡CH基、−CHCH=CH基、又は−(CHNH基である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
が水素ではなく、Rが結合されている不斉炭素がL体配置を有する、請求項6又は7に記載の化合物。
【請求項9】
ペプチド部分が抗原にカップリングされている、請求項4〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
(a)任意に固定化及び/又は側鎖保護されているR−Hを用意するステップと、
(b)置換システイン構成単位Fmoc−(Y−(2−(OC(O)R)−3−(OC(O)R))プロピル)−Cys−OHをR−Hへカップリングさせるステップと、
(c)得られたペプチドのN末端からFmoc基を切断するステップと、
(d)Fmoc遊離ペプチドをH−(CH−N=C=Xで処理するステップと
を含む(式中、R、R、R、X、Y及びnは請求項1〜8のいずれか一項で定義した通りである)、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物を調製する固相ペプチド合成方法。
【請求項11】
Rが60個以下のアミノ酸のペプチドを含む有機基であり、R−Hが固定化及び/又は側鎖保護されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物と、
別個の化合物として、又は請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の一部としての抗原と、を含む組成物。
【請求項13】
薬剤を製造するための、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物又は請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項14】
請求項1に記載の組成物の使用であって、前記組成物は、抗原に対する予防用又は治療用ワクチンとして使用するためのものである、使用。
【請求項15】
抗原に対する対象の免疫反応を誘導、維持及び/若しくは増強するためのワクチン組成物、並びに/又は対象の抗原に関連する疾患若しくは状態を予防、遅延及び/若しくは治療するためのワクチン組成物を製造するための、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物と、
別個の化合物として、又は請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物の一部としての抗原と、の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、ワクチン組成物におけるアジュバントとして適する新規化合物、その化合物を調製する方法及びその化合物を含む組成物に関する。
【0002】
[発明の背景]
ワクチン接種の手法は、感染因子との接触後に疾患を発症することから患者を保護する防御免疫を促進することを主な目的として数十年間使用されてきている。この目的を達成するため、生きた弱毒化病原体、死滅病原体若しくは破砕病原体、病原体調製物、又は病原体の精製成分若しくは組換え成分を患者に投与し、それぞれの病原体の抗原成分に対する特異的免疫反応を誘起してきた。このような免疫反応を刺激する成分は、例えば、病原体特異的タンパク質、多糖類又は脂質であり得る。病原体に含まれる抗原に対する特異的免疫反応は、アジュバントの同時投与によってさらに刺激することができる。アジュバントが1種又は複数の抗原に対する特異的免疫反応の質を加速、延長又は増強することは当技術分野では公知であり、ワクチンの一部として現在使用されている。提唱するアジュバントの利点としては、1)ワクチンにとって最適である免疫反応を誘導し最適化する能力、2)ワクチンを粘膜へ送達することができる能力、3)細胞性免疫反応を促進する能力、4)高精製した抗原又は組換え抗原などの弱毒化免疫原の免疫原性を増強する能力、5)防御免疫を獲得するのに必要な抗原の量又は免疫化の頻度を低減する能力、6)免疫反応が低下しているか弱まっている個体、例えば、新生児、高齢者及び免疫不全患者などにおけるワクチンの有効性を改善する能力が挙げられる。
【0003】
アジュバントには様々な作用機序がある。一組のアジュバントはトール様受容体を介して作用する。トール様受容体(TLR)は特定のパターンの微生物成分、特に病原体由来の成分を認識し、先天免疫及び適応免疫の両方の活性化を制御する。未熟な樹状細胞はこれらの微生物成分に反応して成熟する。今のところ、TLRファミリーの13種類のメンバーが同定されている。TLRは、単球、マクロファージ及び樹状細胞などの食細胞によって発現される。リガンド結合を介してTLRが活性化されると、MyD88依存性経路(NF−[カッパ]β)又はMyD88非依存性経路(IFR−3)のいずれかでシグナル変換現象が生じる。トール様受容体2(TLR2)と相互に作用する公知のリポペプチドアジュバントは、いわゆるPam3Cys−リポペプチドである。Renate Spohnら(Vaccine 22 (2004) 2494−2499)によれば、Pam3Cys−SK4異型体は、マウスでの細胞性免疫反応を決定する最も有効な添加剤であることが判明した。Pam3Cys−SK4の別の利点は、Pam3Cys−SK4が化学的に安定しており、しかも高品質で多量に生産することができるということである。アジュバントとして使用するためのPam3Cys−リポペプチドである、Pam3Cys−Ser−(Lys)4(Aca−Aca−ビオチン).2トリフルオロアセタートは、例えば、Enzo Life Sciences International Inc,Plymouth Meeting,PA,USAから市販されている。
【0004】
国際公開第2009/072767号には、ワクチン用アジュバントとしてのPam3Cys−SK4とポリイノシン酸:ポリシチジル酸の混合物の使用が開示されている。
【0005】
本発明の目的は、Pam3Cys様リポペプチドの免疫反応を改善することである。
【0006】
[発明の要約]
本発明は、より良好な免疫反応を誘導する、改良Pam3Cys様リポペプチドに関する。新規化合物は、
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される17個以下の原子を有する分枝状又は直鎖状の基であり、nは0〜18(18を含む)であり、Yは硫黄又はセレンであり、XはS又はOであり、Rは−OHであるか、1つ若しくは複数のペプチド、1つ若しくは複数の核酸、1つ若しくは複数の抗体、又はそれらの組み合わせを含む有機基である)によって表される。R及びRは、それぞれ独立して、17個以下の炭素原子、好ましくは10〜17個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖状のアルキル基であるのが好ましい。R及びRは、それぞれ独立して、17個以下の炭素原子、好ましくは10〜17個の炭素原子を有する分枝状又は直鎖状のアルキル基であり、Yは硫黄であるのが好ましい。
【0007】
出願人は、公知のPam3Cys−SK4と比較した場合、本発明に記載の化合物がTLR2を機能的に刺激的することにより改良された免疫反応を誘導することができることを見出した。以下の理論に拘束されるものではないが、より高い刺激レベルは、公知の化合物のN末端パルミトイル成分中の架橋−CH−基を−NH−架橋基へ交換することにより達成されるものと出願人は考えている。化合物の脂肪鎖が二量体受容体の規定のくぼみに適合し、架橋−NH−基が組み入れられることによって、水素架橋が形成されると考えられる。これによってリガンドが受容体へより強固に結合され、その結果として所望のアジュバント活性を得るのに有益である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】先行技術によるPam3Cys−SK4化合物及び本発明に記載の化合物の実施例2つを示す図である。
図2】本発明に記載の化合物の調製に関する合成スキームを示す図である。
図3】TRL2トランスフェクトHEK細胞及びTRL2トランスフェクト樹状細胞を先行技術による化合物及び本発明に記載の化合物とインキュベートした試験結果を示す図である。
図4】先行技術による化合物、本発明に記載の化合物とインキュベートしたマウスDC細胞株、又は未刺激のままとしたマウスDC細胞株についての試験結果を示す図である。
図5】ヒト単球由来の樹状細胞(moDC)の活性化についての結果を示す図である。
図6】OVA抗原(SIINFEKL CTLエピトープを含有)のU−Pamコンジュゲート合成長鎖ペプチドのインビボにおけるT細胞刺激能力を示す図である。
【0009】
[発明の詳細な説明]
本発明に記載の化合物(1)は、S又はOである基Xを有することができる。合成が容易なため天然に存在するOが好ましい。S原子は、当業者には公知の異型体である。Yは硫黄又はセレンであるが、実施例で示すように硫黄が好ましい。
【0010】
及びRは、それぞれ独立して、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される17個以下の原子を有する分枝状又は直鎖状の基であり、直鎖状のアルキル基は17個以下の炭素原子、好ましくは10〜17個の炭素原子を有するのが好ましい。一実施形態では、R及びRは、それぞれ独立して、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個又は複数を含有する17個以下の原子(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16又は17個のそれぞれの原子)の長さを有する分枝状又は直鎖状の基であるのが好ましい。当業者には、「17個以下の原子の長さ」という用語は、本発明の状況において、分枝状又は直鎖状の基の骨格が17個以下の原子を含むことを意味し、したがって、脂肪族基の水素原子は17個以下の原子の数の計算には含まれていないことは公知である。さらに好ましい基R及び基Rは、15個の炭素原子を含む直鎖状アルキル基である。含まれる炭素原子がより少なく、親油性が低いタイプの化合物を生じる基は、可溶性がより良好で、それによって、予測可能な溶液中での挙動を示すことができることから有利であり得る。
【0011】
式(1)において、nは0〜18(18を含む)であり、好ましくは少なくとも4であり、より好ましくは11〜15(15を含む)である。出願人は、式中、nが11である化合物、及びnが13である化合物に関して有利な結果を確認した。
【0012】
第1の実施形態では、Rは1つ又は複数のペプチドを含む有機基である。この点で、本発明に記載の化合物はペプチドコンジュゲートと呼ばれる。これらのペプチドは天然アミノ酸だけを含むことができるが、さらにこれらのペプチドに合成アミノ酸が含まれていてもよい。Rは60個以下のアミノ酸のペプチドであるのが好ましい。適切なペプチドの例はSSNASK4、SR8、RPDRY−NH及びQPDRY−NHである。好ましいペプチドはSK(式中、mは1、2、3、4又は5である)である。mは4であるのが好ましい。またSK4はSerLysLysLysLysとしても知られている。SKペプチドのS部分、さらに好ましくはSK4ペプチドのS部分は、下記のように適切に修飾されていてもよく、SKペプチドは、抗原に任意にさらにカップリングされていてもよい。好ましい修飾型SKペプチドは、
【化2】

(式中、Rは、抗原に任意にさらにカップリングされているKペプチド部分を表し、Rは、水素であるか、炭素、窒素及び/又は酸素から選択される1〜6個の原子を含む比較的小さな基である)によって示される。mは4であるのが好ましい。可能性のある基Rの例は水素、C1〜C6アルキル、好ましくはC1〜C4アルキル、C2〜C6アルケニル、好ましくはC2〜C3アルケニル、C2〜C6アルキニル、好ましくはC2〜C3アルキニル、C1〜C5ヒドロキシアルキル、C1〜C5メルカプトアルキル、C1〜C5アミノアルキル、C1〜C4−シアノアルキル、C1〜C3−アジドアルキル、例えば−CH基、C1〜C6−ハロアルキル、例えば−CHX基(X=F、Cl、Br)、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個又は複数を含有する芳香族の5員環又は6員環、並びに炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される1個又は複数を含有する3員〜6員の(ヘテロ)環が好ましい。Rは、水素、−CH−OH基、−CH−CH基、−(CH−CH基、−(CH−CH基、−CHC≡CH基、−CHCH=CH、−(CHNH基、−CH−SH基、−CH−2−チオフェン基、2−チオフェン基、又は−CH−CN基が好ましく、Rは、−CH−OH基、−CH−CH基、−(CH−CH基、−(CH−CH基、−CHC≡CH基、−CHCH=CH、又は−(CHNH基であるのがさらに好ましい。Rが結合されている不斉炭素の配置はL体又はD体であってもよく、その配置がL体であるのが好ましい。
【0013】
基Rは抗原を含むことができ、式(2)の基Rが抗原を含むことがさらに好ましい。抗原は、直接的に又はスペーサー分子:リンカーを介してペプチド、特にKペプチド部分にカップリングさせることができる。本発明の状況における「リンカー」とは、成分に関して少なくとも2つの結合点を有する低分子量の成分を意味するものと理解されたい。この点で、二価のリンカーはこのような2つの結合点を有しており、多価リンカーはこのような少なくとも3つの結合点を有する。これらの結合点の1つを介して、リンカーはRのペプチド成分に結合され、1つ又は複数の残りのそれぞれの結合点は上記で定義した抗原に結合される。これらの結合点はリンカーの前駆体の官能基に由来し、少なくとも1つの抗原を本発明に記載のアジュバント化合物に結合させることができる。リンカーは800Da以下の分子量を有するのが好ましい。これはすべて従来の化学である。
【0014】
抗原がリンカーに連結される適切な化学結合及び/又はリンカーが本発明に記載のアジュバント化合物のR基に連結される適切な化学結合の例は、脂肪鎖を含有しており、単一又は繰返しのチオエーテル、アミド、アミン、オキシム、ジスルフィド、チアゾリジン、チオ尿素、エステル、チオエステル、エーテル、カルバメート、チオカルバメート、カーボネート、チオカーボネート、ヒドラゾン、サルフェート、スルファミデート、スルホネート、スルホンアミド、ホスフェート、ホスホロチオエート、グリオキシル−オキシムを任意に含む有機分子、又はディールスアルダー(Diels−Alder)付加環化、シュタウディンガー(Staudinger)ライゲーション、ネイティブライゲーション若しくはヒュスゲン(Huisgen)1,3−二極性付加環化を介して得られる結合である。カップリング方法は数ある中でもChem.Soc.Rev.2010、39、2054に開示されており、その文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
適切なリンカーの例は、ウニリンカー(Unylinker)型リンカー、α,ω−ジヒドロキシアルカン及びオリゴ又はポリエチレングリコール誘導体である。リンカーは天然又は非天然アミノ酸残基、脂環式化合物、例えばシクロヘキサン及びシクロペンタン誘導体、並びに(ヘテロ)芳香族環、例えば置換フェニル及び置換トリアゾールを挙げることができる。
【0016】
リンカーが使用されない場合、抗原は本発明に記載の化合物の残りの部分に、好ましくは基RのKmペプチド部分に直接カップリングされる。Kmペプチド部分と抗原の間の適切な結合の例は、チオエーテル結合、ジスルフィド結合、アミド結合又はエステル結合である。
【0017】
任意にリンカーを介した、本発明に記載のアジュバント化合物の抗原の共有結合的導入の代わりに、カップリングはイオン結合を介して生じさせることもできる。適切なイオン結合の例は、Kmペプチド部分のリジン側鎖の正荷電アミン基と抗原の負荷電アミノ酸残基の間のクーロン力相互作用である。さらなる実施形態では、本発明に記載のアジュバント化合物、好ましくは式(1)に記載の化合物は抗原にカップリングされていてもよいが、本明細書に記載の技術を使用して、別の化合物、例えば抗体、核酸、例えばポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどにカップリングされていてもよい。別の化合物は、基Rに、さらに好ましくは式(2)の基Rにカップリングされるのが好ましい。別の化合物は式(2)のペプチドに、特にKペプチド部分にカップリングされていてもよい。
【0018】
第2の実施形態では、Rは、1種又は複数の核酸、例えば1種又は複数のオリゴヌクレオチド或いは1種又は複数のポリヌクレオチド、好ましくは1種又は複数のオリゴヌクレオチドを含む有機基である。オリゴヌクレオチドはセンスオリゴヌクレオチド又はアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。この点で、本発明に記載の化合物は核酸コンジュゲートと呼ばれる。このような核酸は、式(1)の化合物に直接カップリングされてもよいし、リンカーを介して結合されてもよい。リンカーが使用されない場合、核酸は、Rが結合されているカルボニル炭素原子を介して、式(1)に記載の化合物に核酸の3’末端又は5’末端のリン酸ジエステル基の酸素原子又はリン原子を介してカップリングされるのが好ましい。上述のリンカーを使用するのが好ましい。このようなリンカーの一末端は、Rが結合されているカルボニル炭素原子を介して式(1)に記載の化合物に結合されており、リンカーの別の末端は、好ましくはオリゴヌクレオチドの3’末端又は5’末端のリン酸ジエステル基の酸素原子又はリン原子を介して核酸に結合される。
【0019】
本発明の状況では、「核酸」は、5〜60個のヌクレオチド(すなわち、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60個のヌクレオチド)の長さを有するのが好ましい。核酸、例えばポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドは、当業者に公知の任意の核酸、例えばDNA、RNA、PNA又はそれらの組み合わせであってもよい。したがって、核酸は天然に存在するヌクレオチド、又は天然に存在するヌクレオチドに対して1つ若しくは複数の修飾を有するヌクレオチド類似体を含むことができる。この点で、天然に存在するヌクレオチドはDNA又はRNAに含まれるものである。ヌクレオチド類似体は、修飾核酸塩基、修飾糖成分、修飾ヌクレオシド間連結、及びそれらの組み合わせから選択される少なくとも1種の修飾を含む。修飾の例は、修飾された糖成分及び/又は修飾ヌクレオシド間連結を含む、修飾骨格である。このため、核酸の骨格及び核酸塩基は、当業者に一般に公知の技術によって修飾し、特異性の増強若しくは低減及び/又は安定性の増強若しくは低下を達成することができる。したがって、核酸はRNA残基、DNA残基、ヌクレオチド類似体又は本明細書の下記にさらに詳述する同等物を含むことができる。
【0020】
核酸は、ヌクレアーゼ耐性の増加及び/又は標的配列に対する(アンチセンス)ヌクレオチドの親和性の増大を図るように修飾される1個又は少なくとも1個の残基を含むのが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、核酸は、1つ又は少なくとも1つのヌクレオチド類似体又は同等物を含み、ここで、ヌクレオチド類似体又は同等物は修飾塩基及び/又は修飾骨格及び/又は非天然ヌクレオシド間連結、或いはこれらの修飾の組み合わせを有する残基と定義する。
【0021】
好ましい実施形態では、ヌクレオチド類似体又は同等物は修飾骨格を含む。このような骨格の例は、モルホリノ骨格、カルバメート骨格、シロキサン骨格、スルフィド、スルホキシド及びスルホン骨格、ホルムアセチル(formacetyl)及びチオホルムアセチル(thioformacetyl)骨格、メチレンホルムアセチル骨格、リボアセチル骨格、アルケン含有骨格、スルファメート、スルホネート及びスルホンアミド骨格、メチレンイミノ及びメチレンヒドラジノ骨格、並びにアミド骨格が挙げられる。ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマーは、これまでアンチセンス剤として研究されてきた、修飾骨格オリゴヌクレオチドである。モルホリノオリゴヌクレオチドは、DNAのデオキシリボース糖が六員環で置換され、リン酸ジエステル結合がホスホロジアミデート結合で置換されている、非荷電骨格を有する。モルホリノオリゴヌクレオチドは酵素分解に強く、また翻訳を阻害するか、又はリボヌクレアーゼHの活性化によってではなくmRNA前駆体スプライシングを妨げることによってアンチセンス剤として作用すると考えられる。モルホリノオリゴヌクレオチドは、細胞膜の物理的破壊方法によって組織培養細胞まで順調に送達され、これらのいくつかの方法を比較する一研究では、スクレープローディング(scrape loading)が送達の最も効率的な方法であることが分かった。しかし、モルホリノ骨格は非荷電であるため、カチオン性脂質は細胞でのモルホリノオリゴヌクレオチド吸収に関する効果的なメディエーターではない。
【0022】
骨格中の残基間の連結はリン原子を含んでいないことがさらに好ましく、例えば、短鎖アルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間連結によって形成される連結、混合ヘテロ原子とアルキル又はシクロアルキルヌクレオシド間連結によって形成される連結、或いは1つ又は複数の短鎖ヘテロ原子又はヘテロ環ヌクレオシド間連結によって形成される連結である。
【0023】
好ましいヌクレオチド類似体又は同等物は、修飾ポリアミド骨格を有するペプチド核酸(PNA)を含む(Nielsenら、(1991)Science 254、1497−1500)。PNA系分子は、塩基対認識の観点によればDNA分子の真の模倣体である。PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結されている、N−(2−アミノエチル)−グリシン単位から構成されており、ここで、核酸塩基はメチレンカルボニル結合によってこの骨格に連結される。代替骨格は、1個の炭素が伸長されたピロリジンPNAモノマーを含む(Govindaraju及びKumar(2005)Chem.Commun、495−497)。PNA分子の骨格が非荷電のリン酸基を含んでいるため、PNA−RNAハイブリッドはそれぞれRNA−RNA又はRNA−DNAハイブリッドよりも通常さらに安定している(Egholmら、(1993)Nature 365、566−568)。
【0024】
さらに好ましい骨格は、リボース又はデオキシリボース糖が6員モルホリノ環で置換されている、モルホリノヌクレオチド類似体又は同等物を含む。最も好ましいヌクレオチド類似体又は同等物は、リボース又はデオキシリボース糖が6員モルホリノ環で置換されており、隣接するモルホリノ環の間のアニオン性リン酸ジエステル結合が非イオン性ホスホロジアミデート結合で置換されている、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)を含む。
【0025】
さらなる実施形態では、本発明のヌクレオチド類似体又は同等物は、ホスホジエステル結合に少なくとも1つの非架橋酸素の置換を含む。この修飾によって塩基対はわずかに不安定になるが、ヌクレアーゼ分解に対する顕著な耐性が加わる。好ましいヌクレオチド類似体又は同等物は、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、H−ホスホネート、メチルホスホネート及び他のアルキルのホスホネート、例えば3’−アルキレンホスホネート、5’−アルキレンホスホネート及びキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホロアミデート、例えば3’−アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、セレノホスフェート又はボラノホスフェートを含む。
【0026】
さらに好ましい本発明のヌクレオチド類似体又は同等物は、2’、3’及び/又は5’位で、例えば−OH;−F;1個又は複数のヘテロ原子が割り込んでいてもよい、置換又は無置換の直鎖状又は分枝鎖状低級(C1〜C10)アルキル、アルケニル、アルキニル、アルカリル、アリル、アリール又はアラルキル;O−、S−、又はN−アルキル;O−、S−、又はN−アルケニル;O−、S−又はN−アルキニル;O−、S−、又はN−アリル;O−アルキル−O−アルキル、−メトキシ、−アミノプロポキシ;アミノオキシ、メトキシエトキシ;−ジメチルアミノオキシエトキシ;及び−ジメチルアミノエトキシエトキシで一置換又は二置換されている、1つ又は複数の糖成分を含む。糖成分はピラノース又はその誘導体、或いはデオキシピラノース又はその誘導体であってもよく、リボース又はその誘導体、或いはデオキシリボース又はその誘導体であるのが好ましい。このような好ましい誘導体化糖成分は、2’−炭素原子が糖環の3’又は4’炭素原子に連結され、それにより二環式糖成分を形成する、架橋型核酸(Locked Nucleic Acid)(LNA)を含む。好ましいLNAは2’−O,4’−C−エチレン−架橋核酸を含む(Moritaら、2001.Nucleic Acid Res Supplement No.1:241−242)。これらの置換によってヌクレオチド類似体又は同等物にリボヌクレアーゼH及びヌクレアーゼの耐性が付与され、標的RNAに対する親和性が高まる。
【0027】
(アンチセンス)オリゴヌクレオチドの全位置を均一に修飾する必要はないことは当業者には理解されよう。さらに、複数の前述の類似体又は同等物は、単一の(アンチセンス)オリゴヌクレオチドに組み入れることができるか、或いは(アンチセンス)オリゴヌクレオチド内の単一の位置であっても組み入れることができる。特定の実施形態では、本発明の(アンチセンス)オリゴヌクレオチドは、少なくとも2つの異なる種類の類似体又は同等物を有する。好ましい実施形態では、修飾はオリゴヌクレオチドの全長にわたって行われる。
【0028】
好ましいオリゴヌクレオチドは、天然オリゴヌクレオチドであっても合成オリゴヌクレオチドであってもよい、免疫調節するオリゴヌクレオチドである。このようなオリゴヌクレオチドは、トール様受容体、好ましくはトール様受容体9(TLR9)に作用することによって免疫調節するのが好ましい。このようなオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の、例えば1、2、3、4、5、6又は7つ以上のCpG(メチル化されていないシチジン−リン酸−グアノシン(CpG)ジヌクレオチド)、さらに好ましくは1つ又は複数のクラスBのCpGを含むのが好ましい。オリゴヌクレオチドを含む好ましいクラスBのCpGは、Drugs R D. 2006;7(5):312−6に開示されている、配列5’−TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT−3’(配列番号10)を含むCpG7909であり、前記文献は参照により本明細書に組み込まれる。オリゴヌクレオチドを含むクラスBのCpGは、ヒトB細胞及び単球の成熟に関する強力な刺激剤である。好ましいクラスBのCpGオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の、好ましくは3つの6量体CpGモチーフ5’−Pu Py C G Py Pu−3’、部分的又は完全にホスホロチオエート化された骨格を含み、18〜28個のヌクレオチド、例えば18、19、20、21、22、23、24、25、26、27又は28個のヌクレオチドの長さが好ましい。オリゴヌクレオチドを含む別の好ましいCpGは、1つ又は複数の、例えば1、2、3、4、5、6、7つ以上のクラスAのCpGを含む。クラスAのCpGは大量のI型インターフェロン、特にIFNαの産生を刺激し、pDCの成熟を誘導し、及び/又は間接的なサイトカインシグナル伝達を介したNK細胞の強力な活性化因子である。
【0029】
好ましいクラスAのCpGオリゴヌクレオチドは、5’末端、3’末端又はその両方での1つ又は複数のpoly G配列と、内部パリンドローム配列と、1つ又は複数の内部パリンドローム内GCジヌクレオチドと、部分的にホスホロチオエート化された骨格、好ましくは一末端又は両末端で7〜10個がホスホロチオエート化されている塩基とを含む。
【0030】
好ましい実施形態では、Rはペプチドと核酸、好ましくは上述のペプチドとオリゴヌクレオチドを含む有機基である。本発明のこの第3の態様では、本発明に記載の化合物はペプチド/核酸コンジュゲートと呼ばれ、ペプチド/オリゴヌクレオチドコンジュゲートが好ましい。この点で、核酸は、ペプチドに直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされ、それが次に式(1)に記載の化合物にカップリングされる。好ましい実施形態では、核酸は、R又はRに、好ましくは式(2)によって表される(修飾)SKペプチドのRに、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされる。或いは、核酸は、SKペプチド、好ましくはSKペプチドのK部分に、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングさせることができる。
【0031】
特に好ましい実施形態では、核酸は、SKペプチド、好ましくはSKペプチドの末端リジン残基に、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされる。この点で、リンカーは6個の炭素原子を含有するリンカーであるのが好ましい。
【0032】
ペプチド/核酸コンジュゲートの製造は、例えばCarter及びLeBean、J.Nucleic Acids、2011(doi:10.4061/2011/926595)から当技術分野では公知であり、その文献は参照により本明細書にその全体が組み込まれる。
【0033】
第4の実施形態では、Rは1つ又は複数の抗体を含む有機基である。この点で、本発明に記載の化合物は抗体コンジュゲートと呼ばれる。抗体は当業者に公知の任意の抗体であってよい。好ましい抗体は、1)癌細胞表面上の特定の標的分子に対する抗体:分化抗原、例えばCD19、CD20、CD30、過剰発現抗原、例えばHER−2/Neu、上皮増殖因子受容体(EGFR);2)例えば非活性化制御性T細胞などの自己免疫性疾患を引き起こすか免疫制御に関与しているT細胞のサブセットを欠失させることを目的としたT細胞の表面分子に対する抗体、例えばIL−2受容体、IL−7受容体、IL−15受容体、からなるリストから選択される。
【0034】
抗体は、核酸について上述したように、式(1)に記載の化合物にカップリングさせることができる。このような場合、抗体は、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングさせることができる。
【0035】
或いは、抗体は、上述のペプチドコンジュゲートに、好ましくは式(2)によって表される(修飾)SKペプチドのRに、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングさせることができる。このような第5の実施形態では、Rはペプチドと抗体を含む有機基である。この点で、本発明に記載の化合物はペプチド/抗体コンジュゲートと呼ばれる。この点で、抗体は、ペプチドに直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされ、それは次に式(1)に記載の化合物にカップリングされる。好ましい実施形態では、抗体は、R又はRに、好ましくは式(2)により表わされる(修飾)SKペプチドのRに、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされる。或いは、抗体は、SKペプチド、好ましくはSKペプチドのK部分に、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングさせることができる。
【0036】
特に好ましい実施形態では、抗体は、SKペプチド、好ましくはSKペプチドの末端リジン残基に、直接的に又は本明細書に記載のリンカーを介してカップリングされる。この点で、リンカーは6個の炭素原子を含有するリンカーであるのが好ましい。
【0037】
第6の実施形態では、Rはヒドロキシル又はOHである。この態様に記載の化合物は、下記の用途において、例えば同時投与において、ペプチド、核酸又は抗体と組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明に記載の好ましい化合物は式(1)(式中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素、窒素、酸素及び硫黄から選択される17個以下の原子を有する分枝状又は直鎖状の基であり、nは0〜18(18を含む)であり、XはS又はOであり、Rは、1つ若しくは複数のペプチド、1つ若しくは複数の核酸、1つ若しくは複数の抗体、又はそれらの組み合わせを含む有機基である)によって表される。言いかえれば、本発明に記載の好ましい化合物は、上述のようなペプチドコンジュゲート、核酸コンジュゲート、ペプチド/核酸コンジュゲート、抗体コンジュゲート、又はペプチド/抗体コンジュゲートである。特に、上述のペプチドコンジュゲート、ペプチド/核酸コンジュゲート、又はペプチド/抗体コンジュゲートが好ましい。したがって、Rが1つ又は複数のペプチドを含み、1つ若しくは複数の核酸又は1つ若しくは複数の抗体を任意に含む有機基であるのが特に好ましい。
【0039】
本発明に記載の化合物はRエピマー及びSエピマーの混合物であってもよく、2−(OC(O)R2)−3−(OC(O)R1)プロピル基のC−2でのRエピマーが適切である。
【0040】
また本発明は、
(a)任意に固定化及び/又は側鎖保護されているR−Hを用意するステップと、
(b)置換システイン構成単位Fmoc−(S−(2−(OC(O)R)−3−(OC(O)R))プロピル)−Cys−OHをR−Hへカップリングさせるステップと、
(c)N末端からFmoc基を切断するステップと、
(d)得られたペプチドをアルキルイソシアネート又はアルキルイソチオシアネートH−(CH−N=C=Xで処理するステップと
を含む、標準の固相ペプチド合成プロトコルによって本新規化合物を調製する方法を対象とする。
【0041】
この方法では、R、R、R、X及びnは上述で定義した通りである。置換システイン構成単位がFmoc−Pam−Cys−OHであり、それによって、R及びRが15個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であるのが好ましい。好ましい実施形態では、本方法は、本発明に記載のペプチドコンジュゲートを調製するためのものであり、
(a)固相ペプチドを合成し、それによって、固定化及び側鎖保護したペプチドR−Hを得るステップと、
(b)Fmoc−(S−(2−(OC(O)R)−3−(OC(O)R))プロピル)−Cys−OH、好ましくはFmoc−Pam−Cys−OHを、ステップ(a)で得られた固定化及び側鎖保護したペプチドR−Hとカップリングさせるステップと、
(c)PamCys−成分からN末端のFmoc基を切断するステップと、
(d)ステップ(c)のFmoc遊離生成物を、アルキルイソシアネート又はアルキルイソチオシアネートH−(CH−N=C=Xと、好ましくはアルキルイソシアネートH−(CH−N=C=Oと反応させるステップと、
(e)ステップ(d)の生成物の固相から酸による脱保護と切断を行うステップと、
(f)RP HPLC精製を行うステップと
を含む。
【0042】
上記の方法をU−Pam−14及びU−Pam−12の合成に関する図2及び下記によって説明する。図2は、目的化合物U−Pam−14及びU−Pam−12の固相合成について記載しているが、ここで、以下の用語を次の通り定義する。
【0043】
TentaGel S RAMは、リンクアミドリンカー(Rink−amide Linker)を備えているポリスチレン及びポリエチレングリコールの官能基化コポリマー(ペプチド合成用の通常の固相)であり、
NHBocはtert−ブチルオキシカルボニルで保護されたアミノ基であり、
tBuはtert−ブチルであり、
Fmoc−PamCys−OHはフルオレニルメチルオキシカルボニル−S−[2,3−ビス(パルミトイルオキシ)プロピル]−L−システインであり、
PyBOPはヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムであって、ペプチド化学において通常使用されているホスホニウム活性化剤であり、
DIPEAはジイソプロピルエチルアミンであって、ペプチド化学において通常使用されている有機塩基であり、
TFAはトリフルオロ酢酸であり、
NMPは溶媒のN−メチルピロリドンであり、
DCMは溶媒のジクロロメタンである。
【0044】
ステップ(a)の固相ペプチド合成は公知であり、例えばDick、F.Peptide Synthesis Protocols.In:M.W. Pennington and B. M. Dunn (eds.) Methods in Molecular Biology、Vol.35、pp.63−72.Totowa:Humana Press Inc.、1994に開示されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。ステップ(a)では、固定化及び側鎖保護したペプチド1は、リンクアミドリンカーが装填されているTentaGel S樹脂から出発して調製される(スキーム1のTentagel S RAM)。図示した合成は、完全自動方式でABI 433Aペプチド合成機にて、カップリング剤としてのHCTUと塩基としてのDIPEAを用いてFmoc/OtBu化学を適用することにより適切に行われる。当技術分野で公知の別のペプチド合成機を使用することもできることを理解されたい。例えば20%ピペリジンを含むNMPを使用する最終Fmoc切断時に、ペプチド樹脂(1)は装置から適切に取り除かれ、DCMで洗浄し乾燥させる。ステップ(b)では、Fmoc−PamCys−OHをペプチド樹脂1に手動操作で適切にカップリングさせ、完全に保護されたペプチド樹脂2を得る。ホスホニウムカップリング剤のPyBOPをこのカップリングステップで使用し、塩基(DIPEA)を2回に分けて適切に添加し、塩基によって触媒される副反応を防止する。ステップ(c)でピペリジンによるFmoc基の切断を行った後、樹脂をNMPで適切に洗浄し、得られたN末端アミノ基を含まない固定化N−リポヘキサペプチドは、ステップ(d)でDCM/NMP混合物中のテトラデシルイソシアネートを用いて一晩処理し、固定化及び完全保護したUPam−14(3)を得た。生成物は、ステップ(e)で、HOとカチオンスカベンジャーとしてのTISの存在下において、95%TFAを適切に使用する酸加水分解によって側鎖保護基を同時に除去しながら樹脂から切断した。続いて、ステップ(f)で、C相のRP HPLC精製と凍結乾燥を行って白色固形物として純粋なUPam−14(5)を得た。UPam−12(6)の製造においては、固定化リポヘキサペプチドへ尿素結合N末端脂溶性鎖を導入する段階でテトラデシルイソシアネートの代わりにドデシルイソシアネートを使用するという点を除き、樹脂2から出発する同一プロトコルを使用することができる。
【0045】
ペプチドコンジュゲートに関する上記合成は、当技術分野で公知である、本発明に記載の別のコンジュゲートを得るのに適用することができる。この場合、ペプチドR−Hは、Rがペプチドと一緒に、1つ若しくは複数の核酸、1つ若しくは複数の抗体、又はそれらの組み合わせを含む有機基であるR−Hと置換することができる。別の実施形態では、ペプチドコンジュゲートは上記のように調製され、続いて、1つ又は複数の核酸或いは1つ又は複数の抗体とコンジュゲートさせ、こうしてペプチド/核酸コンジュゲート又はペプチド/抗体コンジュゲートを得る。このような複合方法は当技術分野で公知であって、例えば、Carter and LeBean、J. Nucleic Acids、2011(doi:10.4061/2011/926595)に開示されており、その文献は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
上述の本発明に記載の化合物は、薬剤又はワクチンの一部として適切に使用される。したがって、本発明は、薬剤として、好ましくは本明細書に定義されている疾患又は状態を治療する薬剤として使用するための本発明に記載の前記化合物又は化合物を含む組成物を対象とする。本発明は、対象、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトにおけるTLR2介在性の先天性免疫反応を増強するための本発明に記載の化合物又は化合物を含む組成物を対象とするのがさらに好ましい。本化合物はいわゆる単独治療で使用することができ、この場合、単独治療では、例えば腫瘍のリンパ排液領域での局所投与において、既存の免疫系が刺激される。上述のような本発明に記載の化合物の別の単独適用は、好ましくは眼部へ注入することによる(視)神経の軸索再生などの中枢神経系障害又は疾患の治療、及び好ましくは全身注射による虚血、例えば、心臓又は脳又は他の器官の虚血などの治療である。さらなる単独適用は、ウイルス、細菌、真菌、原虫類などによる感染の治療、並びに寄生虫感染、例えば、内臓リーシュマニア症及び内臓性眼内炎の治療である。
【0047】
単独適用において、本発明に記載の化合物は、液体形態の液剤、懸濁剤又は乳剤、クリーム剤、スプレー剤、又は当業者に公知の他の形態で適用することができる。虚血及び軸索再生の治療に対しては、本発明に記載の化合物は薬学的に許容される注射用製剤であるのが好ましい。
【0048】
本発明の態様では、本発明に記載の化合物は、本明細書に定義されている疾患又は状態を治療するための方法で使用される。
【0049】
化合物は、本明細書で定義したように、抗原及び/又は別の化合物、例えば抗体、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸を既に含んでいる。或いは、又は前述の実施形態と組み合わせて、本明細書で示した化合物を含む組成物は、別個の分子として、本明細書で定義したような抗原及び/又は別の化合物、例えば、抗体、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸をさらに含むことができる。したがって、本発明はまた、薬剤として、好ましくは予防用又は治療用のワクチン組成物として使用するための、抗原及び/若しくは別の化合物、例えば、抗体、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸を含む化合物、並びに/又は、前記化合物を含む組成物、又は、化合物と、別個の分子として、抗原及び/又は別の化合物、例えば、抗体、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸とを含む組成物を対象とする。特に、本発明は、アジュバントとしての本発明に記載の化合物と、少なくとも1つの抗原及び/又は別の化合物、例えば、抗体、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドなどの核酸とを含み、抗原又は別の化合物が別個の化合物として存在することができるか、上述のような本発明に記載の化合物にカップリングされている、ワクチン組成物を対象とする。抗原又は別の化合物は本発明に記載の化合物の一部であり、抗原又は別の化合物が上述のアジュバント化合物にカップリングされているのが好ましい。このような連結は、使用の際、抗原を取り込み、代謝し、提示する抗原提示細胞、特に樹状細胞の同時刺激により免疫反応が増強されるという利点を有する。
【0050】
したがって、本発明の態様では、抗原に対する対象(subject)の免疫反応を誘導、維持及び/又は増強(追加免疫)するための方法、並びに/又は、対象の前記抗原に関連する疾患又は状態を予防、遅延及び/又は治療するための方法であって、本明細書で定義した化合物又は組成物を前記対象に投与する方法を提供する。前記方法のそれぞれの特徴は、本明細書に示している。
【0051】
抗原は、対象の免疫系による免疫反応を誘導、維持又は増強することができる任意の物質であり得る。対象は動物であるのが好ましい。動物は哺乳動物であるのが好ましく、ヒトであるのが好ましい。前記の誘導又は増強された免疫反応は、前記抗原に対して特異的であると理解されたい。抗原特異性免疫反応はT細胞反応又は細胞性免疫反応であるのが好ましい。したがって、このような抗原はT細胞エピトープ:Tヘルパー及び/又はCTLエピトープを含むのが好ましい。
【0052】
抗原は、完全長の生体高分子又はその断片であってもよい。抗原は、例えば、合成物質、タンパク質の精製サブユニット、タンパク質断片、タンパク質消化物、ペプチド、DNA分子、cDNA分子、RNA分子、オリゴヌクレオチド、オリゴサッカライド、好ましくは生物起源の粗製組成物、例えばあらゆる微生物、細菌、酵母又は真菌の溶解物、超音波処理物若しくは凝固物又はそれらの混合物などであり得る。一実施形態では、抗原がペプチドである場合、前記ペプチドは6〜60個のアミノ酸、即ち、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60個のアミノ酸又はそれ以上であってもよい。前記実施形態では、前記ペプチドは、したがって由来するタンパク質とは異なる。抗原は、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原又は寄生虫抗原であってもよい。抗原は感染因子に由来するものであってもよい。このような感染因子は、癌及び/又は前癌状態を引き起こすことがある。抗原は化学的に合成されるか、酵素的に生成されるペプチド、オリゴヌクレオチド又はオリゴサッカライドであるのが好ましく、精製後に得られたものがさらに好ましい。また抗原は、前記抗原又はその断片をコードしている核酸(DNA、又はRNA)の形態であってもよい。RNA分子又はDNA分子は、好ましくは小胞又はリポソームに含まれているか、或いはベクターに含まれていてもよい、「ネイキッド」DNAであってもよい。ベクターは、当技術分野で公知の任意の(組換え)DNA又はRNAベクターであってもよく、プラスミドであるのが好ましく、ここで、前記抗原をコードしている前記DNAは、コードされているメッセンジャーの発現及び翻訳に関与する調節配列に作動可能的に連結されている。またベクターは任意のDNA又はRNAウイルスであってもよく、例えば、以下に限定されるものではないが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レトロウイルス、レンチウイルス、改変ワクシニアアンカラウイルス(MVA)又は鶏痘ウイルス、或いは選ばれた対象にポリペプチドの発現を付与することができる他のウイルス系ベクターであってもよい。DNAベクターは、エピゾーム自己複製ベクターなどの非組み込み型であってもよく、或いは、ランダムな組み込み又は相同組換えにより宿主ゲノムに組み込まれているベクターであってもよい。
【0053】
抗原は、病原体のタンパク質、組換えタンパク質、ペプチド、ハプテン、多糖類、糖タンパク質、リポ多糖類、DNA分子、cDNA分子、RNA分子(すべてのポリヌクレオチド)、癌細胞及び微生物からなる群から得られる単一成分又は複合成分として選択されるのが好ましい。好ましい組成物は、アジュバントとしての本発明に記載の化合物と、少なくとも1つのウイルス抗原又は細菌抗原、例えばTBC;破傷風及びヘリコバクターピロリ、又はウイルス感染若しくは寄生虫感染症若しくは細菌感染の治療又は予防に好適であるか、癌の治療又は予防に好適である寄生虫抗原又は腫瘍抗原を含むか、或いは、基Rがウイルス抗原又は細菌抗原、例えばTBC及び破傷風、又はウイルス感染若しくは寄生虫感染症若しくは細菌感染の治療又は予防に好適であるか、癌の治療又は予防に好適である寄生虫抗原又は腫瘍抗原を含む本発明に記載の化合物を含む。
【0054】
適切なウイルス抗原は、インフルエンザウイルス抗原、例えば、HA:ヘマグルチニン又はノイラミニダーゼ抗原;ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)抗原、例えばE2、E6、E7;ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、例えばGP120、GP140、GP160;水疱性口内炎ウイルス抗原、例えば水疱性口内炎ウイルス糖タンパク質;サイトメガロウイルス(CMV)抗原;肝炎ウイルス抗原、例えばA型肝炎(HAV)、B型肝炎(HBV)、C型肝炎(HCV)、D型肝炎(HDV)及びG型肝炎(HGV):L−HBsAg、S−HBsAg、M−HBsAg、pre S;呼吸器合胞体ウイルス(RSV)抗原;SV40ウイルス抗原、例えばラージT、スモールT;EBV抗原、例えばEBNA、カポージ肉腫ウイルス(KSV)抗原、ヒトT−リンパ親和性ウイルス−1(HTLV−1)抗原、メルケル細胞ウイルス(MCV)抗原、又は単純性疱疹ウイルス抗原である。
【0055】
使用する抗原又はペプチドが由来するHPV株は、例えば血清型16、18、31、33又は45のハイリスクHPV血清型であるのが好ましく、血清型16、18、31又は33由来であるのがさらに好ましく、血清型16又は18由来であるのが最も好ましく、そのうち16が最も好ましい。HPV血清型16のE2、E6及びE7タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1〜3にそれぞれ記載する。HPV血清型18のE2、E6及びE7タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号4〜6にそれぞれ記載する。
【0056】
適切な寄生虫抗原は原虫類、線虫類、吸虫類又は条虫綱類、例えば、クリプトスポリジウム・ホミニス(Cryptosporidium hominis)又はクリプトスポリジウム・パルブム(Cryptosporidium parvum);ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)又は日本住血吸虫(Schistosoma japonicum);熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、三日熱マラリア原(Plasmodium vivax)又は卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale);リーシュマニア・メジャー(Leishmania major)、リーシュマニア・トロピカ(Leishmania tropica)、リーシュマニア・エチオピカ6(Leishmania aethiopica)、リーシュマニア・メキシカーナ(Leishmania mexicana)、リーシュマニア・ドノバニ(Leishmania donovani)、リーシュマニア・インファンタム(Leishmania infantum)又はリーシュマニア・ブラジリエンシス(Leishmania braziliensis);トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma Gondii)由来であってもよい。
【0057】
適切な細菌抗原は、結核菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、コレラ菌、髄膜炎菌由来の抗原であってもよい。
【0058】
腫瘍抗原は腫瘍細胞上で発現される抗原である。抗原のこの群は、下記に示す限定されない事例において癌に関係していると言われるものが好ましい:腫瘍では単独で発現されるが、正常な成熟細胞では全く発現されないか限られた量でのみ発現されるタンパク質由来の抗原、正常な成熟細胞と比べて腫瘍で過剰に発現されるタンパク質由来の抗原、腫瘍で変異したタンパク質由来の抗原、癌ではない対象の対応する組織と比べて癌対象の所定の組織で異常発現される抗原。異常発現される抗原は、通常は抗原が発現されない組織で新たに発現される可能性がある。変異抗原はスプライス変異であってもよい。変異抗原は、転座の結果、異常融合タンパク質としてさらに産生されることがある。癌に関係していることが知られている抗原の例は、p53、MDM−2、HDM2及びp53経路で機能する他のタンパク質、スルビビン、テロメラーゼ、シトクロムP450アイソフォーム1B1、Her−2/neu及びCD19などの分子、並びにすべてのいわゆるハウスホールドタンパク質である。
【0059】
適切な抗原は、癌及び/又は前癌状態などの疾患を引き起こす感染因子由来の抗原が挙げられる。このような感染因子の例は、性器疣贅、子宮頸癌、頭頸部癌、陰茎癌、外陰癌、肛門癌、鼻咽腔癌、CIN、VIN、PIN、VAIN及びAINなどの疾患を引き起こすHPV、肝癌に関係しているHCV及びHBV、中皮腫に関係しているSV40、T細胞白血病/リンパ腫と関係しているHTLV−1、メルケル細胞癌と関係しているメルケル細胞ウイルス、並びにカポージ肉腫と関係しているKSVである。
【0060】
上記のワクチン組成物は、それらの感染因子によって誘発される急性又は慢性の感染又は疾患に対する予防用ワクチン組成物(即ち予防薬)又は治療用ワクチン組成物(即ち治療薬)として使用することができる。
【0061】
またワクチン組成物は、前記抗原が関係しているか連動している所定の疾患又は状態に対して特異的免疫反応を誘発するように設計された、予防用又は治療用ワクチン組成物として使用されるのが好ましい。疾患又は状態は癌であるのが好ましい。癌は非ウイルス性癌又はウイルス性癌、例えば、HPVによって誘発される癌などであってもよい。好ましいワクチン組成物は、アジュバントとしての本発明に記載の化合物と、少なくとも1つの非ウイルス性癌関連の腫瘍抗原とを含むか、或いは基Rが非ウイルス性癌関連の腫瘍抗原である、本発明に記載の化合物を含む。治療又は予防する癌は、脳腫瘍、腎細胞癌、黒色腫、白血病、肺癌、胃癌、食道癌、甲状腺癌、膵臓癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮癌、精巣癌、胆管腫、肝臓癌、結腸癌、消化器癌、膀胱癌、又は直腸癌であってもよい。さらに、本ワクチン組成物を使用することによって、前悪性病変を治療又は予防することができる。前悪性病変は、細胞が癌細胞になりやすくなる遺伝的変化を受けた損傷である。これらの前悪性病変は、時間の経過と共に癌に変化していく可能性がある。適切な腫瘍抗原の例は、gp100、MART−1、MAGE−1、BAGE、GAGE、HAGE、チロシナーゼ、CEA(癌胎児抗原)、p53、PSA(前立腺特異抗原)、PSMA(前立腺特異的膜抗原);PRAME、HER2/neu、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、NY−ESO−1、MUC−1、SART−1又はSART−3、XAGE−1B、チロシナーゼ、TERT(テロメラーゼ逆転写酵素)、WT1、スルビビン−2B、gp75、MDM2、テロメラーゼ、al[rho]h−1フェトプロテイン、CA125、CA15−3、CA19−9、G250、HER2、BCR−ABL、Ras、PMLRARα、PR1、SSX−2、HSP70、或いは上記の任意のウイルス性、非ウイルス性の腫瘍、細菌性抗原又は寄生虫抗原由来のペプチド類似体である。
【0062】
好ましい抗原は、上記の任意のウイルス性、非ウイルス性の腫瘍、細菌性抗原又は寄生虫抗原由来のT細胞エピトープ、即ち、CD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含むが、国際公開第02/070006号及び国際公開第2008/147187号に開示されているハイリスクヒト乳頭腫ウイルス(HPV)−特異的E6及びE7オンコプロテイン由来のものを含むのが好ましい。なおこれらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
配列番号2により上記で示したHPV血清型16 E6由来の好ましいペプチドは、E6 1−32、E6 19−50、E6 41−65、E6 55−80、E6 71−95、E6 85−109、E6 91−122、E6 109−140及びE6 127−158を含むか、これらからなるか、又はこれらとオーバーラップするペプチドからなる群から選択される。
【0064】
配列番号3により上記で示したHPV血清型16 E7由来の好ましいペプチドは、E7 1−35、E7 22−56、E7 43−77及びE7 64−98を含むか、これらからなるか、又はこれらとオーバーラップするペプチドからなる群から選択される。
【0065】
配列番号2又は配列番号3により上記で示したHPV血清型16 E6又はE7由来の好ましいペプチドは、E6 1−32、E6 19−50、E6 41−65、E6 55−80、E6 71−95、E6 85−109、E6 91−122、E6 109−140、E6 127−158、E7 1−35、E7 22−56、E7 43−77及びE7 64−98を含むか、これらからなるか、又はこれらとオーバーラップするペプチドからなる群から選択される。本発明はまた、前述のパラグラフで示したHPVに由来し、対応するE6又はE7 HPVタンパク質の対応する位置に由来する合計1、2、3、4、5、6、7、8、9個以上の付加アミノ酸を含むペプチドを包含する。これらの付加アミノ酸は前記ペプチドのN末端及び/又はC末端に存在していてもよい。しかし、このようなペプチドは完全長のE6タンパク質又はE7タンパク質とは異なるのが好ましい。
【0066】
別の実施形態では、HPV由来のペプチドは、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50個のアミノ酸の長さを有し、HPV E6タンパク質のアミノ酸11−32、HPV E6タンパク質アミノ酸のアミノ酸13−22、HPV E6タンパク質のアミノ酸29−38、HPV E6タンパク質の37−68、HPV E6タンパク質のアミノ酸52−61、HPV6タンパク質のアミノ酸51−72、HPV E6タンパク質のアミノ酸55−86、HPV E6タンパク質のアミノ酸61−82、HPV E6タンパク質のアミノ酸71−92、HPV E6タンパク質のアミノ酸73−105、HPV E6タンパク質のアミノ酸91−112、HPV E6タンパク質のアミノ酸101−122、HPV E6タンパク質のアミノ酸121−142、HPV E6タンパク質のアミノ酸129−138、HPV E6タンパク質のアミノ酸137−146、HPV E6タンパク質のアミノ酸149−158、HPV E7タンパク質のアミノ酸1−32、HPV E7タンパク質のアミノ酸11−19、HPV E7タンパク質のアミノ酸21−42、HPV E7タンパク質のアミノ酸51−72、HPV E7タンパク質のアミノ酸76−86;HPV E6タンパク質のアミノ酸13−22、HPV E6タンパク質のアミノ酸29−38、HPV E6タンパク質のアミノ酸52−61、HPV E6タンパク質のアミノ酸129−138、HPV E6タンパク質のアミノ酸137−146、HPV E6タンパク質のアミノ酸149−158、及びHPV E7タンパク質のアミノ酸11−19からなる群から選択されるエピトープを含む連続的なアミノ酸配列を含むのが好ましい。E6とE7のタンパク質は、配列番号2及び配列番号3により上記で示したHPV16及びHPV18由来であるのが好ましい。
【0067】
本明細書で示したそれぞれのHPVペプチド又はエピトープは、対応するE6タンパク質又はE7タンパク質で示した対応する最初のアミノ酸と対応する最後のアミノ酸を提供することにより識別される。
【0068】
好ましい抗原は、国際公開第2008/147186号に開示されている非ウイルス性腫瘍抗原p53に由来するCD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
ヒトp53のアミノ酸配列は配列番号7に示す。タンパク質p53由来の連続するアミノ酸配列の長さは45個以下のアミノ酸であって、p53のアミノ酸配列由来の少なくとも19個の連続するアミノ酸を含むのが好ましい。ペプチド内に含まれるp53由来の連続するアミノ酸配列の長さは、19−45、22−45、22−40、22−35、24−43、26−41、28−39、30−40、30−37、30−35、32−35、33−35、31−34のアミノ酸であるのが好ましい。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、p53の、好ましくは配列番号7による上記で示したヒトp53由来の22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45個又は45個以上の連続するアミノ酸残基を含む。したがって、当業者には、本発明のペプチドはp53タンパク質、好ましくは配列番号7による上記で示したヒトp53とは異なることが理解されよう。好ましい実施形態では、タンパク質が配列番号7による上記で示したヒトp53である場合、ペプチドは次のペプチドから選択され、各ペプチドは任意の次の配列:p53 86−115、p53 102−131、p53 142−171、p53 157−186、p53 190−219、p53 224−248、p53 225−254、p53 257−286、p53 273−302、p53 305−334、p53 353−382及びp53 369−393を含むか、これらからなるか、又はこれらとオーバーラップする。
【0070】
タンパク質が配列番号7による上記で示したヒトp53である場合、ペプチドは次のペプチドから選択されるのがより一層好ましく、各ペプチドは任意の次の配列:p53 142−171、p53 157−186、p53 190−219、p53 224−248、p53 225−254、p53 241−270、p53 257−286及びp53 273−302を含むか、これらからなるか、又はこれらとオーバーラップする。
【0071】
本明細書で示した各p53ペプチドは、配列番号7により上記で示した、対応するヒトp53タンパク質で示した対応する最初のアミノ酸と対応する最後のアミノ酸を提供することにより識別される。
【0072】
好ましい抗原は少なくとも2つの、又は少なくとも3つの、又は以下のp53ペプチド:p53 142−171、p53 157−186、p53 190−219、p53 224−248、p53 225−254、p53 241−270、p53 257−286及びp53 273−302、p53 305−334、p53 353−382及びp53 369−393を包含する。さらに好ましい抗原は、p53 86−115及び/又はp53 102−131をさらに含む。
【0073】
好ましい抗原は、国際公開第2008/118017号に開示されている非ウイルス性腫瘍抗原PRAME由来のCD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。なおこの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
このようなペプチドは、配列番号8に示す、ヒトPRAMEタンパク質の509個のアミノ酸配列から選択される連続するアミノ酸配列を含んでいてもよい。それにより、ペプチドは少なくとも1つのHLAクラスIIのTh細胞エピトープを含むのが好ましく、さらに少なくとも1つのHLAクラスIの細胞毒性T細胞エピトープを含むのが好ましい。配列番号8により好ましくは示される、ヒトPRAMEタンパク質由来の連続するアミノ酸配列の長さは、ペプチド内に19−45のアミノ酸を含むのが好ましく、30−40のアミノ酸を含むのがより一層好ましく、30−35のアミノ酸を含むのがより一層好ましく、33−35のアミノ酸を含むのが最も好ましい。さらに好ましいペプチドは、配列番号8により好ましくは示されるヒトPRAMEタンパク質由来の連続するアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列のaa.19−53、aa.47−79、aa.69−101、aa.80−114、aa.94−126、aa.112−144、aa.133−166、aa.173−207、aa.190−223、aa.234−268、aa.247−279、aa.262−294、aa.284−316、aa.295−327、aa.353−387、aa.399−431、aa.417−450、aa.447−480、aa.477−509からなる群から選択される。また本発明は、このパラグラフで示したPRAMEに由来し、対応するPRAMEタンパク質の対応する位置に由来する合計1、2、3、4、5、6、7、8、9個以上の付加アミノ酸を含むペプチドを包含する。これらの付加アミノ酸は、前記ペプチドのN末端及び/又はC末端に存在していてもよい。しかし、このようなペプチドは、配列番号8により示した完全長PRAMEタンパク質とは異なるのが好ましい。
【0075】
本明細書で示した各PRAMEペプチドは、対応するヒトPRAMEタンパク質で示した対応する最初のアミノ酸と対応する最後のアミノ酸を提供することにより識別される。
【0076】
好ましい抗原は、国際公開第98/14464号に開示されている非ウイルス性腫瘍抗原NY−ESO−1に由来する、CD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。なおこの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
好ましい抗原は、米国特許第6,630,574号、米国特許第6,504,010号、米国特許第7,425,607号、米国特許第6,686,447号に開示されている非ウイルス性腫瘍抗原XAGE−1Bに由来する、CD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。なおこれらの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
好ましい抗原は、EP11172914.1に開示されている非ウイルス性腫瘍抗原PSMAに由来する、CD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。なおこの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
このようなペプチドは、配列番号9に示す、ヒトPSMAタンパク質の750個のアミノ酸配列から選択される連続するアミノ酸配列を含んでいてもよい。それにより、ペプチドは少なくとも1つのHLAクラスIIのTh細胞エピトープを含むのが好ましく、また少なくとも1つのHLAクラスIの細胞毒性T細胞エピトープを含むのが好ましい。配列番号9により好ましくは示される、ヒトPSMAタンパク質由来の連続するアミノ酸配列の長さは、ペプチド内に19−45のアミノ酸を含むのが好ましく、30−40のアミノ酸を含むのがより一層好ましく、30−35のアミノ酸を含むのがより一層好ましく、33−35のアミノ酸を含むのが最も好ましい。さらに好ましいペプチドは、配列番号9により好ましくは示されるヒトPSMAタンパク質由来の連続するアミノ酸配列を含み、アミノ酸配列のaa.3−35、aa.31−65、aa.53−88、aa.94−130、aa.156−188、aa.207−242、aa.253−289、aa.302−333、aa.341−371、aa.393−426、aa.432−464、aa.451−485、aa.469−500、aa.507−539、aa.547−579、aa.565−600、aa.603−636、aa.648−681、aa.679−713、aa.716−749からなる群から選択される。また本発明は、このパラグラフで示したPSMAに由来し、対応するPSMAタンパク質の対応する位置に由来する合計1、2、3、4、5、6、7、8、9個以上の付加アミノ酸を含むペプチドを包含する。これらの付加アミノ酸は、前記ペプチドのN末端及び/又はC末端に存在していてもよい。しかし、このようなペプチドは、配列番号9により示される完全長PSMAタンパク質とは異なるのが好ましい。
【0080】
本明細書で示した各PSMAペプチドは、対応するヒトPSMAタンパク質で示した対応する最初のアミノ酸と対応する最後のアミノ酸を提供することにより識別される。
【0081】
好ましい抗原は、国際公開第06/04389号に開示されている結核菌由来の非ウイルス性抗原に由来するCD4及び/又はCD8T細胞エピトープを含むペプチドを含む。なおこの文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
結核菌由来の抗原は、マイコバクテリウムに感染している脊椎動物において免疫反応をインビボで誘発することができるタンパク質がコードされているマイコバクテリウムNRP/dormancy(DosR)レギュロンを含むポリペプチドの群から選択されるのが好ましい。このような抗原は、Rv079、Rv0569、Rv0572c、Rv1733c、Rv1738、Rv1813c、Rv1996、Rv2007c(FdxA)、Rv2029c(PfkB)、Rv2030c、Rv2031c(HspX、Acr、16−kDaαクリスタリン相同体)、Rv2032、Rv2623、Rv2624c、Rv2626c、Rv2627c、Rv2628、Rv3126c、Rv3127、Rv3129、Rv3130c、Rv3131、Rv3132c、Rv3133c(DosR)、Rv3134c、Rv0080、Rv1737c(NarK2)、Rv1735c及びRv1736c(NarX)からなる、ヒトT細胞株においてIFN−γ反応を誘発することができるタンパク質がコードされているマイコバクテリウムNRP/dormancy(DosR)レギュロンを含むポリペプチドの群から選択されるのがさらに好ましい。マイコバクテリア抗原に関するRvの学名並びにNRP/dormancy(DosR)レギュロンのDNA配列及びタンパク質配列は当技術分野で公知であり、例えば、http://genolist.pasteur.fr/TubercuList/、又はhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez(アクセッション番号AL123456)で確認することができる。本明細書で使用しているRvの学名は、抗原のアミノ酸配列か抗原をコードしているヌクレオチド配列のいずれかを意味し得る。
【0083】
マイコバクテリウムタンパク質由来の連続するアミノ酸配列の長さは、45個以下のアミノ酸であり、前記マイコバクテリウムタンパク質のアミノ酸配列由来の少なくとも19個の連続するアミノ酸を含むのが好ましい。ペプチド内に含まれる前記マイコバクテリウムタンパク質由来の連続するアミノ酸配列の長さは、19−45、22−45、22−40、22−35、24−43、26−41、28−39、30−40、30−37、30−35、32−35、33−35、31−34のアミノ酸であるのが好ましい。別の好ましい実施形態では、ペプチドは、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44又は45又は45を超える前記マイコバクテリウムタンパク質の連続するアミノ酸残基を含む。ペプチド内に含まれている前記マイコバクテリウムタンパク質由来の連続するアミノ酸配列の長さは、前記ペプチドの長さであってもよい。したがって、当業者には、本発明のペプチドが前記マイコバクテリウムタンパク質とは異なることがあることが理解されよう。
【0084】
また本発明は、このパラグラフで示したこのようなタンパク質由来であり、対応するタンパク質の対応する位置に由来する合計1、2、3、4、5、6、7、8、9以上の付加アミノ酸を含むペプチドを包含する。これらの付加アミノ酸は、前記ペプチドのN末端及び/又はC末端に存在していてもよい。しかし、このようなペプチドは完全長のマイコバクテリウムタンパク質とは異なっているのが好ましい。
【0085】
本発明の状況においては、ペプチドは抗原由来のアミノ酸以上の付加アミノ酸を含んでいてもよく、又はこのような抗原由来のアミノ酸配列から完全に調製されるか、このようなアミノ酸配列からなっていてもよい。ペプチド内に含まれている、上記で定義した抗原の1つに由来する連続するアミノ酸配列の長さは、少なくとも19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44若しくは45個のアミノ酸、及び/又は100、99、98、97、96、95、94、93、92、91、90、89、88、87、86、85、84、83、82、81、80、60、50、45、40、35、33若しくは30個以下のアミノ酸であるのが好ましく、ペプチド内に含まれている上記で定義した抗原の1つに由来する連続するアミノ酸配列の長さは19−45であるのがさらに好ましく、22−40のアミノ酸であるのがより一層好ましく、30−35であるのがより一層好ましく、33−35のアミノ酸であるのが最も好ましい。別の好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、本明細書で定義した抗原由来の連続するいずれかのアミノ酸配列からなり、それにより、天然抗原の配列中のこのアミノ酸配列に隣接していない抗原由来の連続するアミノ酸配列のいずれか一端にアミノ酸は付加されないことを理解されたい。これらのペプチドは容易に合成することができ、プロテアソーム及び他のプロテアーゼ並びに細胞内処理系のペプチダーゼによって処理されて、専門的な抗原提示細胞によって取り込まれるのに十分なほどの大きさであり、また少なくとも1つのHLAクラスI及び/又は少なくとも1つのHLAクラスIIエピトープを含むのに十分な物理学的容量と長さを有している。場合によっては、ペプチドは、例えば、生物学的利用性、細胞の取り込み、T細胞へのターゲッティング、処理及び/又は可溶性を促進することができる付加アミノ酸、修飾アミノ酸又は他の官能基であってもよい、N末端又はC末端の伸長を含むことができるか、或いはアジュバント又は(同時)刺激的機能を提供する免疫調整物質を含有若しくは放出することができる。
【0086】
本発明の化合物はアジュバントとして作用することが予想されることが好ましい。アジュバントは、抗原がアジュバントとの組み合わせで(本明細書で定義した単一化合物として、又は2つの別個の分子として)投与される場合に、免疫反応又はその増強が前記抗原に対して誘発されるような方法で免疫系を刺激することができる分子として本明細書では定義される。抗原特異的に誘発された免疫反応を分析又は測定するためには、前記免疫反応を、アジュバントは存在せず抗原が存在する状態で、又は公知のアジュバントと一緒に抗原が存在する状態で誘発される免疫反応と比較する。公知のアジュバントは、実施例の部分でPam3CysSK4として示したような別のTLR2アジュバントであってもよい。誘発は対象で、又は対象由来の細胞で測定される。
【0087】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、本発明の化合物はTLR2を介して作用すると考えられる。
【0088】
誘発又は誘導される免疫反応はB細胞及び/又はT細胞応答であってもよい。免疫反応は、B細胞応答、即ち、前記抗原に対して特異的な抗体の産生であってもよい。抗体はIgG抗体であるのが好ましい。前記免疫反応はT細胞応答であってもよい。前記B細胞及び/又はT細胞応答は、実施例に記載したようにELISAを使用し抗体及び/又はサイトカインの産生を測定することにより検出することができる。好ましいサイトカインは、IFNγ、IL−2、IL−4、IL−5、TNFα又はIL−10である。
【0089】
好ましい実施形態では、抗原特異的に誘発された免疫反応の検出とは、前記アジュバント及び抗原を投与した少なくとも1、10、11、12時間以上後、又は少なくとも1日後、又は少なくとも2日後、又は少なくとも3日後、又は少なくとも4日後、又は少なくとも5日後、又は少なくとも6日後、又は少なくとも7日後、又は少なくとも2週間後、又は少なくとも3週間後、又は少なくとも4週間以上経った後に前記検出を行うことを意味する。検出は対象で、又は対象由来の細胞で測定される。
【0090】
本発明の状況において、抗原特異的に誘発された免疫反応は、前記抗原に対する免疫反応の検出可能な増加を意味するのが好ましい。前記検出可能な増加は、抗原が単独適用される場合、又は前記抗原が公知アジュバントと共に使用される場合に誘発又は誘導される免疫反応と比較することにより測定することができる。公知のアジュバントは、実施例の部分で示した別のTLR2アジュバントであってもよい(Pam3CysSK4)。検出可能な増加は、前記アジュバント及び抗原を投与した少なくとも1、10、11及び12時間以上経った後か少なくとも1日後に、又は少なくとも2日後、又は少なくとも3日後、又は少なくとも4日以上経った後に、既に本明細書に示したサイトカインの量が少なくとも5%増加、又は10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、150%、200%以上増加しているのが好ましい。検出は、対象で、又は対象由来の細胞で測定される。
【0091】
また本発明の化合物の官能基は、TLR2を発現する細胞を使用し、実施例の部分で示したように測定することもできる。
【0092】
驚いたことに、本発明の化合物は、従来用いられているアジュバントの投与量よりも少ない前記化合物の投与量を使用して、所定の抗原に対して少なくとも同等の、又はそれ以上の有効な免疫反応を誘導することができるように思われる。少ないとは、Pam3CysSK4)などの従来のアジュバントの投与量よりも少なくとも1倍、少なくとも10倍、少なくとも30倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍、少なくとも150倍、又は少なくとも200倍少ない投与量であることを意味し得る。
【0093】
本発明のワクチン組成物は、アジュバントと抗原に加えて、アジュバントと抗原と同等の効果又は類似の効果を有する1種又は複数の有効成分をさらに含むことができる。例えば、本発明に記載のワクチン組成物は、本発明に記載のアジュバントに加えて、1種又は複数のアジュバントを含むことができる。これらの別のアジュバントは、本発明に記載のワクチン組成物に混合してもよいし、治療する哺乳動物又はヒトに別々に投与することができる。本発明に記載のアジュバント化合物と組み合わせて使用される適切な別のアジュバントの例は、モンタニドアジュバント、例えば、モンタニドISA−51又はモンタニドISA720(Seppic France)、フロイントアジュバント又はIFA、レシキモド;イミキモド;ポリIC:LC(Hiltonol);ISCOMS;CpG及びGLA;MPLである。別のアジュバントはT細胞付着阻害剤であり、BQ−788などのエンドセリン受容体阻害物質がさらに好ましい(Buckanovich RJら,、Ishikawa K,PNAS(1994)91:4892)。BQ−788は、N−cis−2,6−ジメチルピペリジノカルボニル−L−γ−メチルロイシル−D−1−メトキシカルボニルトリプトファニル−D−ノルロイシンである。しかし、任意のBQ−788誘導体又は修飾BQ−788化合物もまた本発明の範囲内に包含される。
【0094】
本ワクチン組成物は、例えば、解毒型リピドA、臨床等級のCpG或いは他の適切な免疫調節剤又は抗体、例えば、CTLA−4阻害抗体又はCD40アゴニスト抗体、或いはTNF受容体ファミリー、例えば、OX40、CD27、4−1−BB(CD137)或いは4−1−BBリガンド及び/又はCD40リガンド、OX40リガンド又は機能性断片及びその誘導体の他のメンバーに対するアゴニスト抗体のような化合物、並びに同様のアゴニスト活性を有する合成化合物も含むことができる。これらの化合物は、本発明に記載の化合物及び/又はワクチン中の特異的抗原のいずれかに混合するかコンジュゲートすることができる。
【0095】
本ワクチン組成物はまた、前述の有効成分に加えて、投与用の1種又は複数の薬学的に許容される担体も含むことができる。薬学的に許容される担体は、生理食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストロース溶液、グリセリン及びエタノールからなる群から選択される複数の成分を選択し、混合することにより調製することができる。他の一般的な添加剤、例えば、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などを加えることができる。水溶液、懸濁液及びエマルションなどの注射用液剤を調製するためには、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑沢剤をさらに加えることができる。
【0096】
本発明のワクチン組成物の特定の製剤、投与方法及び薬学的に許容される添加剤の使用は当技術分野で公知であり、例えば、Remington;The Science and Practice of Pharmacy、21st Edition 2005、University of Sciences in Philadelphiaに開示されている。本発明のワクチン組成物及び薬剤は、静注投与又は皮下投与又は筋内投与に適切なように製剤化するのが好ましいが、別の投与経路、例えば、注射又はパッチなどによる粘膜投与又は皮内(intradermal)投与及び/又は皮膚内(intracutaneous)投与も考えられる。ここでは皮内投与が好ましい。
【0097】
好ましい実施形態では、ワクチン組成物は皮内投与又は適用に適するように製剤化される。皮内投与は当業者に公知である。本発明の状況においては、皮内投与は皮膚内投与と同義であり、皮下投与とは区別される。物質の最も表面的な適用は(皮膚上の)上皮投与であり、次いで、(皮膚中又は皮膚への)皮内投与であり、次いで、(皮膚直下組織での)皮下投与であり、次いで、(筋肉本体への)筋肉内投与である。
【0098】
ワクチン組成物の皮内投与は、疾患の部位に、又はその間近にワクチンが注射され、リンパ節に流入し疾患の局所活性化が得られ、免疫系の局所活性化をより増強するので非常に好ましい。好ましい実施形態では、皮内投与は、損傷部位又は疾患部位で直接的に実施される。損傷部位とは、本明細書では、損傷部位から5、2、1、0.5、0.2又は0.1cm未満であると理解されたい。
【0099】
さらに、好ましい実施形態は、徐放性ビヒクル、例えば、鉱油(例えばモンタニドISA51)、PLGA系粒子又はスキャフォールド、デキストラン系粒子又はスキャフォールド、ポリ活性剤系粒子又はスキャフォールド、リポソーム、ビロソーム中のワクチン組成物の一部としての抗原及びアジュバント化合物の送達を含む。皮内送達については、ワクチン組成物は、1種又は複数の免疫学的に不活性な薬学的に許容される担体、例えば、生理的イオン強度及び/又は浸透性の緩衝水溶液(例えばPBSなど)をさらに含む組成物で投与されるのが好ましい。
【0100】
さらに、本発明の少なくとも1つのワクチン組成物の投与を単一投与として行うことができることが本発明に包含される。さらに、ワクチンの様々な活性化合物は、連続的投与及び/又は異なる投与経路若しくは異なる投与部位を使用することによる投与を行うことも可能である。或いは、必要に応じて、少なくとも1つのワクチン組成物の投与を繰り返すことができる。
【0101】
定義
本発明の状況において、抗原はペプチドにより定義することができる。このようなイニシャルペプチドとオーバーラップしているいかなるペプチドも、本発明によって包含される。オーバーラップしているとは、ペプチド配列が所定の配列と部分的に又は完全にオーバーラップすることを意味する。オーバーラップするとは、部分的にオーバーラップしていることを意味するのが好ましい。部分的にとは、オーバーラップがペプチド配列のN末端及び/又はC末端の1個又は複数のアミノ酸のオーバーラップであることを意味するのが好ましく、N末端及び/又はC末端の2つ以上のアミノ酸のオーバッラップ、或いはそれ以上のオーバーラップであるのがさらに好ましい。また、オーバーラップは、ペプチド配列のN末端の1個若しくは複数のアミノ酸及び/又はC末端の2個以上のアミノ酸のオーバーラップであるか、その逆であるのが好ましい。得られたペプチドが本明細書の前で定義した所望の活性を示す限り、すべての種類のオーバーラップが本発明によって包含されることは当業者に理解されよう。
【0102】
本発明の状況において、ペプチドはアミノ酸配列によって表される。
【0103】
本発明の状況において、核酸分子は、ペプチドをコードする核酸配列又はヌクレオチド配列によって表される。核酸分子は制御領域を含んでいてもよい。
【0104】
所定の配列番号(SEQ ID NO)によって本明細書に示したそれぞれの核酸分子又はタンパク質又はペプチドは、開示した特定配列ではあるが、これに限定されないことを理解されたい。
【0105】
本願の全体にわたって、毎回、1つがペプチドの特定アミノ酸配列配列番号を表し、1つは所定の配列番号を持つアミノ酸配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性又は類似性を有するアミノ酸配列を含むペプチドによってそれを置き換えることができる。
【0106】
好ましい実施形態では、配列同一性又は類似性は、本明細書に示した配列の全長を比較することにより決定される。
【0107】
「配列同一性」は、本明細書では、配列を比較することにより決定される、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチド又はタンパク質又はペプチド)配列間、或いは2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列間の関係として定義される。好ましい実施形態では、配列同一性は、2つの所定の配列番号の完全長又はその一部に基づいて算出される。その一部とは、両配列番号の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は100%を意味することが好ましい。当技術分野では、「同一性」はまた、アミノ酸配列間、又は核酸配列間の配列関連性の程度も意味し、場合によっては、このような配列の文字列間の一致によって決定される。
【0108】
2つのアミノ酸配列間の「類似性」は、1つのポリペプチドのアミノ酸配列及びその保存されたアミノ酸置換を、第2のポリペプチドの配列と比較することにより決定される。「相同性」及び「類似性」は既知の方法によって容易に算出することができ、それらの方法は限定されるものではないが、(Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.,ed.、Academic Press、New York、1993;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.、Humana Press、New Jersey、1994;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heine,G.、Academic Press、1987;及びSequence Analysis Primer、Gribskov,M. and Devereux,J.,eds.、M Stockton Press、New York、1991;及びCarillo,H.,and Lipman,D.,SIAM J.Applied Math.、48:1073(1988)に記載されているものを挙げることができる。
【0109】
相同性を決定する好ましい方法は、試験しようとする配列間の最大の一致が得られるように設計される。相同性と類似性を決定する方法は、公開され利用可能なコンピュータープログラムにおいて体系化されている。2つの配列間の同一性と類似性を決定する好ましいコンピュータープログラム方法としては、例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereux,J.ら、Nucleic Acids Research 12(1):387(1984))、BestFit、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul,S.F.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)が挙げられる。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の情報源から公開され利用可能である(BLAST Manual、Altschul,S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD 20894;Altschul,S.ら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)。よく知られているスミスウォーターマン(Smith Waterman)アルゴリズムもまた、同一性の決定に使用することができる。
【0110】
ポリペプチド配列を比較するための好ましいパラメータとしては、:アルゴリズム:Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス:BLOSSUM62、Hentikoff and Hentikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.89:10915−10919(1992)より;ギャップペナルティ:12;及びギャップレングスペナルティ:4が挙げられる。これらのパラメータを使用する有用なプログラムは、「Ogap」プログラムとして、Madison,WI.に立地するGenetics Computer Groupから公開され利用可能である。上記のパラメータは、アミノ酸比較用のデフォルトパラメータである(末端ギャップに対するペナルティはなし)。
【0111】
核酸を比較するための好ましいパラメータは、アルゴリズム:Needleman及びWunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970);比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0;ギャップペナルティ:50;ギャップレングスペナルティ:3が挙げられる。ギャッププログラムとして、Madison,Wis.に立地するGenetics Computer Groupから公開され利用可能である。上で示したのは、核酸比較用のデフォルトパラメータである。
【0112】
場合によっては、アミノ酸の類似性の程度を決定する際、当業者はまた、当業者には明白であるような、いわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮に入れることができる。保存的アミノ酸置換とは、類似側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミンである。本明細書で開示したアミノ酸配列の置換変異体は、開示した配列の少なくとも1つの残基が除去され、かつその場所に別の残基が挿入されたものである。アミノ酸交換は保存的であるのが好ましい。それぞれの天然に存在するアミノ酸に対する好ましい保存的置換は、次の通りである:AlaからSer;ArgからLys;AsnからGln又はHis;AspからGlu;CysからSer又はAla;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからPro;HisからAsn又はGln;IleからLeu又はVal;LeuからIle又はVal;LysからArg;Gln又はGlu;MetからLeu又はIle;PheからMet、Leu又はTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrp又はPhe;及びValからIle又はLeu。
【0113】
本文書及びそのクレームにおいて、動詞の「含む(to comprise)」とその活用形は、その用語の後に続く項目は包含されるが、詳しく記載されなかった項目は除外されないことを意味するように非限定的な意味で用いられる。さらに、動詞の「からなる(to consist)」とは、本明細書で定義した化合物又は組成物が詳しく示されなかったもの以外のさらなる1種又は複数の成分を含んでいてもよいことを意味する「本質的に〜からなる(to consist essentially of)」で置き換えることができ、前記のさらなる1種又は複数の成分は、本発明の特有の特徴を変更しない。
【0114】
さらに、不定冠詞の「a」又は「an」による要素への言及は、1つの要素及びただ1つの要素が存在することを状況が明確に要求しない限り、1つ以上の要素が存在する可能性を排除しない。そのため、不定冠詞の「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0115】
本明細書に引用されているすべての特許及び文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0116】
本発明を以下の限定することを意図するものではない実施例により説明する。
【0117】
実施例1
本発明に記載の化合物の利点を説明するために、CHからNHへの置換を含有する、既に確立されているTLR2/TLR1リガンドPamCysSKの2つの異型体を調製した。U−Pam−14及びU−Pam−12という名称のこれらの2つの化合物は、N末端のシステイン残基に結合されている脂肪鎖の長さが異なっており、U−Pam−14は天然リガンドのパルミトイル成分の正確な等量式であるが、UPam−12は短くなった鎖を含有する。図1は、先行技術のPamCysSKリガンドと本発明に記載のU−Pam−14及びU−Pam−12リガンドを示す。円は、−CH−架橋が−NH−架橋で置換されている場所を示す。
【0118】
固相ペプチド合成で使用する試薬と溶媒はすべて、BachemとBiosolveから購入し、受け取り使用した。Fmoc−Cys((RS)−2,3−ジ(パルミトイルオキシ)−プロピル)−OH(本明細書では、(RS)はジパルミトイルオキシプロピル基のC−2でのRエピマーとSエピマーの混合物を意味する)はBachemから購入し、Fmoc−アミノ酸、HCTU及びPyBOPはNovabiochemから購入した。Tentagel系樹脂は、Rapp Polymereに発注した。LC/MSは、VidacのC4分析カラム(4.6×50mm、5μm粒径、流速1.0mL/分)又はAlltimaのCN分析カラム(4.6×50mm、3μm粒径、流速1.0mL/分)を使用して、JASCO系で実施した。吸光度は214nm及び256nmで測定した。
【0119】
溶媒系:
A:100%の水、
B:100%のアセトニトリル、
C:1%のTFA/H2O。
【0120】
特段の記載のない限り、10%C中のBの勾配を15分間かけて加えた。精製は、セミ分取用Vidac C4カラム(10×250mm、5μm粒径、流速5.0mL/分)を備えた、Gilson分取HPLC系で行った。
【0121】
溶媒系:
A:100%の水、
B:100%のアセトニトリル、
C:1%のTFA/H2O。
【0122】
特段の記載のない限り、10%C中のBの勾配は3CVかけて添加した。UV吸光度は214nm及び256nmで測定した。固相ペプチド合成は、確立されている方法にしたがってTentagel−RAM樹脂から開始するFmoc系プロトコルを適用し、ABI(Applied Biosystems)433A自動装置で実施した。Fmoc−Lys(Boc)−OHに用いた各サイクルで実施した連続ステップは、次の通りであった:
1)15分間、20%ピペリジンを含むNMPでFmoc基を脱保護した;
2)NMP洗浄を行った;
3)5倍過剰量を使用し適切なアミノ酸のカップリングを行った。
【0123】
簡単に説明すると、Fmocアミノ酸(0.25mmol)を0.25MのHCTUを含むNMP(1mL)に溶解し、得られた溶液を反応槽に移し、続いて1.0MのDIPEAを含むNMPの0.5mLを入れ、カップリングを開始した。次いで、反応槽を45分振盪した;
4)NMP洗浄を行った;
5)0.5mmolのDIPEAの存在下で0.5Mの無水酢酸を含むNMPを用いてキャッピングを行った;
6)NMP洗浄を行った;
7)15分間、20%ピペリジンを含むNMPを用いて最終Fmoc除去を行った;
8)NMP洗浄を行った;
9)DCM洗浄を行った。
【0124】
H−Ser(tBu)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Rink−Tentagel (1)
ペプチド合成は、Fmoc系プロトコルを適用するABI 433A自動装置を使用し、Rink Amide S Tentagelから開始し(0.26mmol/gを充填)、1mmolスケールで行った。樹脂は、最終Fmoc脱保護の後に、NMP及びDCMで洗浄し、乾燥させた。得られた樹脂1は、次のステップで使用した。
【0125】
Fmoc−Cys((RS)−2,3−ジ(パルミトイルオキシ)−プロピル)−OHカップリングの一般的方法
H−Ser(tBu)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Rink−Tentagelを充填したTentagel S Ram樹脂1は、0.18MのFmoc−Cys((RS)−2,3−ジ(パルミトイルオキシ)−プロピル)−OHを含む0.22MのPyBopのDCM:NMP(2:1)ストック溶液0.5mLで処理した。得られた混合物を2×44μmolのDipeaで15分かけて活性化し、18時間振盪して反応させ、その後、NMP及びDCMで洗浄した。樹脂をDCM:NMP中で再度膨潤させ、10μmolの分量に分けた。
【0126】
イソシアネート添加の一般的手順
Fmoc−Cys((RS)−2,3−ジ(パルミトイルオキシ)−プロピル)−Ser(tBu)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)2を充填した10μmol樹脂をDCM:NMP(1:1)中で膨潤させ、Fmoc脱保護のため、20%ピペリジンを含むNMPを用いて3×3分で処理した。NMPを完全洗浄した後、樹脂を1mLのDCM:NMP(1:1)中に懸濁し、テトラデシルイソシアネート又はドデシルイソシアネート(25μL)で処理した。混合物を18h振盪し、NMP及びDCMで洗浄し、風乾した。樹脂を切断用カクテルTFA/TIS/HO(95/2.5/2.5)で104分間処理した。溶液を濾過し、EtO(50mL)で沈殿させ、−200℃で18時間保存した。EtOを遠心分離にかけ、除去し、沈殿物を1mlのMeCN:HO:tBuOH(1:1:1)中で超音波処理して溶解させた。各50μLの生成物をLCMS分析(Vidac C4カラム)用に50μLのMeCN:HO:tBuOH(1:1:1)で希釈した。得られた配列は、別の0.5mLのMeCN:HO:tBuOH(1:1:1)で希釈し、セミ分取Vidac C4カラムで精製した(10×250mm、5μm粒径、流速5.0mL/分、60−100%B。)。
【0127】
このようにして得られた本発明に記載の化合物は、次の特性を有していた。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
実施例2
実施例1で得られた2つの化合物U−Pam−12及びU−Pam−14について、ヒトTLR2を発現するリポーター細胞株HEK−TLR2(図3A)とマウス樹状細胞株(図3B)を活性化するそれら化合物の機能的能力に関して、未修飾のPam3CysSK4と比較して試験した。
【0131】
この試験では、TLR2がトランスフェクトされた生きたHEK細胞及び樹状細胞(5×10細胞/ウェル)を培養培地中の各Pam化合物の濃度を上げながらインキュベートし、37℃でインキュベートした。24時間後、上清を回収し、それぞれIL−8又はIL−12サイトカインの存在下で、特定のサンドイッチELISAアッセイによって測定した。
【0132】
両細胞型とも、未修飾のPam3CysSK4に比べてU−Pam化合物によってより一層顕著に刺激されていた。両化合物は、最大刺激レベルを少なくとも2倍に増加させ、同様の刺激レベルに到達するのに必要とされる化合物の濃度に対して少なくとも100倍超の効果があると算出された。
【0133】
本発明に記載の化合物は、低濃度(pM〜nM)でヒト由来及びマウス由来の両TLR2を機能的に刺激することができることが分かった。活性濃度は、未修飾のTLR2リガンド濃度よりも低い。さらに、生理学上重要な樹状細胞を活性化させ、免疫学的に関連のあるサイトカインIL−12を産生させることができる。このサイトカインは、ウイルス抗原及び/又は腫瘍抗原への特異的Tリンパ球の効率的な初回抗原刺激を促進するのに極めて重要である。したがって、アジュバントとして前記化合物を含む組成物を効果的に使用して、抗原の免疫原性を高め、それによってワクチンの有効性を改善することができる。
【0134】
本発明に記載の化合物を使用すると免疫反応が改善され、このことは、先天性免疫系の活性化がさらに強化され、しかも適応性免疫系の活性化がさらに増強されることを意味し、公知のPam3Cys−SK4による免疫刺激と比べて、より高いT細胞応答及び/又はより高い抗体反応として現れると考えられる。
【0135】
実施例3
本実施例は、R基の(CH−OH)がCH−CHで置換されている、UPam−14誘導体の合成を説明する。この化合物は、本明細書ではUpam−14−Abuと称する。
【0136】
H−Abu−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Rink−Tentagel (2)
ペプチド合成は、Fmoc−Abu−OHをFmoc−Ser(OtBu)−OHの代わりに使用してUpam−14のセリン残基の代わりに2−アミノ酪酸残基を導入するという違いを除き、H−Ser(OtBu)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Rink−Tentagel (1)に関して実施例1に記載したようにして実施した。その後の合成ステップと精製ステップは、実施例1に記載のステップと同じであった。
【0137】
このようにして得られた本発明に記載の化合物は、次の特性を有していた。
【0138】
【表3】
【0139】
実施例4
U−Pam化合物について、樹状細胞(図4及び図5)とマウスのインビボ(図6)でさらに機能的に試験を行った。
【0140】
図4は、30nMのU−Pam3CSK4(U−Pam14)若しくはPam3CSK4のいずれかと48時間インキュベートしたマウスDC細胞株、又は未刺激のままとしたマウスDC細胞株を示す。続いて、DCは、CD40、CD86及びMHCクラスII分子に対する抗体で染色した。平均蛍光強度はFACS分析で測定した。U−Pamは、IL−12サイトカイン産生(実施例2を参照)だけでなく、最適なT細胞初回抗原刺激能力と関連する最適なDC成熟に関する特質の細胞表面分子の発現においてもwt Pamより優れていることがデータから明らかである。
【0141】
図5に、ヒト単球由来樹状細胞(moDC)のU−Pam活性化の分析を示す。IL−4及びGM−CSFを含む増殖培地でドナーPBMCのCD14+分画を培養した5日目に、これらのmoDCをwt Pam3CSK4、U−Pam14、Pam3CSK4複合若しくはU−Pam14複合の合成長鎖ペプチド(Pam−SLP若しくはuPam14−SLP)とインキュベートするか、或いは未刺激のままとした。48時間インキュベーションした後、moDC培養物の上清を取り、これをIL 12p40(図5A)及びIL 12p70(図5B)のELISA分析に供した。48時間インキュベーションした後、moDCをCD86に対する抗体で染色した(図5C)。この分析から、U−Pam化合物もまたヒト樹状細胞の活性化をさらに改善することが示唆される。重要なことには、未結合の化合物だけでなく、U−Pamコンジュゲート長鎖ペプチド抗原もDC活性を改善した。
【0142】
インビボにおける、OVA抗原(SIINFEKL CTLエピトープを含有)のU−Pamコンジュゲート合成長鎖ペプチドのT細胞初回抗原刺激能力を図6に示す。C57BL/6マウスに、5nmolのU−Pam14−SLPコンジュゲート、5nmolのPam3CSK4−SLPコンジュゲート、5nmolのSLPと混合した5nmolの遊離U−Pam14、5nmolのSLPと混合した5nmolの未結合Pam3CSK4、又はPBS単独のいずれかを用いてワクチンの皮下注射を行った。14日後、マウスを殺処理し、脾臓を採取し、単一細胞懸濁液を調製した。脾細胞は、γ−インターフェロンに対しては蛍光標識した抗体で細胞内染色し、細胞表面マーカーCD3及びCD8βに対しては抗体で細胞内染色した。IFNγを産生するOVAペプチド特異的CD8 T細胞のパーセンテージを示す(図6A)。別の独立した実験では、C57BL/6に上述のようにワクチン注射を行い、再度、14日後に脾臓を採取した。脾細胞の画分を7日間、照射されたOVA発現EG7リンパ腫細胞で再刺激した。培養した脾細胞をMHCクラスIkb−SIINFEKL−APC四量体で染色するとともに、細胞表面マーカーCD3及びCD8βに対する抗体で染色した。OVA特異的CD8 T細胞のパーセンテージを(図6B)に示す。両インビボ実験において、T細胞エピトープを持つSLPへUpam14を複合することにより抗原特異的CD8 T細胞の初回抗原刺激が増強されたことが明らかである。
【0143】
実施例5
【化3】
【0144】
Xnが変動するUPam異型体について、3μM及び30nMでのIL−12産生と、細胞表面マーカーCD40、CD86及びMHCクラスIIの上方制御を測定することによって比較した。式中、Xは、Rに対し異なる基を含有する、式(2)に記載のSKペプチド部分のセリンを置き換えている。検討したこれらの異なる基Rを含有する化合物X1〜X8を下記の表に示すが、X1は実施例1で調製したUPam−14であり、X2は実施例3で調製したUPam−14−Abuである。CD40をアップレギュレートする化合物の効力にDC成熟アッセイで確認されるような傾向があった。化合物X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7又はX8は、先行技術のPamCys−SKで得られた結果と比べて、上方制御の増加が明らかであった。細胞表面マーカーCD86及びMHCクラスIIの上方制御において、確かな傾向が認められた。
【0145】
【表4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]