特許第6099212号(P6099212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099212
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月29日
(54)【発明の名称】光照射装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20170316BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20170316BHJP
   B41F 23/04 20060101ALI20170316BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170316BHJP
【FI】
   F21S2/00 100
   H01L33/48
   B41F23/04 B
   F21Y115:10
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-550976(P2014-550976)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(86)【国際出願番号】JP2013076520
(87)【国際公開番号】WO2014087723
(87)【国際公開日】20140612
【審査請求日】2015年10月8日
(31)【優先権主張番号】特願2012-265845(P2012-265845)
(32)【優先日】2012年12月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592032430
【氏名又は名称】HOYA CANDEO OPTRONICS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148895
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】岸根 努
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−164717(JP,A)
【文献】 特開昭61−169814(JP,A)
【文献】 特開2009−148756(JP,A)
【文献】 特開2010−287547(JP,A)
【文献】 特開2011−146646(JP,A)
【文献】 特開2006−027235(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/150782(WO,A1)
【文献】 特開2004−342472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
B41F 23/04
H01L 33/00
H01L 33/48
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射面上の所定の照射位置に、第1方向に延び、かつ、前記第1方向と直交する第2方向に所定の線幅を有するライン状の光を照射する光照射装置であって、
基板上に前記第1方向に沿って所定間隔毎に並べられ、前記基板と直交する方向に光軸の向きを揃えて配置された複数の光源と、前記各光源の光路上に配置され、前記各光源からの光を略平行光となるように整形する複数の光学素子とを有し、前記照射面に対して前記第1方向に平行なライン状の光を所定の光量で出射する光学ユニットを複数備え、
前記複数の光学ユニットは、第1の波長の光を出射するM個(Mは2以上の整数)の第1光学ユニットと、前記第1の波長とは異なる第2の波長の光を出射するM個の第2光学ユニットと、前記第1の波長及び前記第2の波長とは異なる第3の波長の光を出射するM個の第3光学ユニットから成り、
前記第1光学ユニット、前記第2光学ユニット及び前記第3光学ユニットは、前記第1方向から見たときに、前記照射位置を中心とする円周方向に、前記第3光学ユニット、前記第1光学ユニット、前記第2光学ユニットの順番で繰り返して並び、前記第1の波長の光、前記第2の波長の光及び前記第3の波長の光の、前記第2方向に照射する範囲が、それぞれ前記所定の線幅内となるように配置され
ことを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記第1方向から見たときに、前記第1光学ユニットが、前記照射位置における垂線を対称軸として線対称となるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第1の波長が、前記第2の波長及び前記第3の波長よりも短いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記第1光学ユニット、前記第2光学ユニット及び前記第3光学ユニットは、前記第1の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和と前記第2の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和との差、及び前記第1の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和と前記第3の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和との差が、所定値以下となるように配置されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記第1の波長の光の前記照射面に対する各入射角をθ(iは1からMまでの整数)、前記第1の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和をα、前記第2の波長の光の前記照射面に対する各入射角及び前記第3の波長の光の前記照射面に対する各入射角をθ(kは1からMまでの整数)、前記第2の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和及び前記第3の波長の光の前記第2方向に照射する範囲の総和をα1、前記所定値をβ、としたときに、次の条件式を満足することを特徴とする請求項4に記載の光照射装置。
【数1】
【請求項6】
前記複数の光学ユニットは、前記第1方向から見たときに、前記照射位置における垂線を対称軸として線対称となるように配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項7】
前記複数の光学ユニットは、前記第1方向から見たときに、前記照射位置を中心とした円弧上に配置されることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記Mは、偶数であり、
M/2個の前記第1光学ユニット、前記第2光学ユニット及び前記第3光学ユニットが、他のM/2個の前記第1光学ユニット、前記第2光学ユニット及び前記第3光学ユニットに対して、前記所定間隔の1/2の距離だけ前記第1方向にずれて配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記複数の光源は、前記基板上において、前記第1方向と直交する方向に2列に分かれて配置されており、前記第1方向から見たときに、一方の列の光源から出射された光と他方の列の光源から出射された光とが前記照射位置で集光するように、前記各光学素子の光軸と各光源の光軸とがずれていることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項10】
前記一方の列の光源が、前記他方の列の光源に対して、前記所定間隔の1/2の距離だけ前記第1方向にずれて配置されていることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項11】
前記複数の光源は、略正方形状の発光面を有する面発光LEDであり、該発光面の一方の対角線が前記第1方向と平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の光照射装置。
【請求項12】
前記第1の波長の光、前記第2の波長の光及び前記第3の波長の光が、それぞれ異なる強度に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン状の照射光を照射する光照射装置に関し、特に複数の波長の光が混合された照明光をライン状に照射する光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフセット枚葉印刷用のインキとして、紫外光の照射により硬化する紫外線硬化型インキが用いられている。また、液晶パネルや有機EL(Electro Luminescence)パネル等、FPD(Flat Panel Display)回りの接着剤として、紫外線硬化樹脂が用いられている。このような紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂の硬化には、一般に、紫外光を照射する紫外光照射装置が用いられるが、特にオフセット枚葉印刷やFPDの用途においては、幅広の照射領域を照射する必要があるため、ライン状の照射光を照射する紫外光照射装置が用いられる。
【0003】
紫外光照射装置としては、従来から高圧水銀ランプや水銀キセノンランプ等を光源とするランプ型照射装置が知られているが、近年、消費電力の削減、長寿命化、装置サイズのコンパクト化の要請から、従来の放電ランプに替えて、LED(Light Emitting Diode)を光源として利用した紫外光照射装置が開発されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の紫外光照射装置(LEDユニット)は、複数のLEDモジュール(LEDチップ)が長手方向(第1の方向)に一定間隔に並べられ、ライン状の光を出射する基台ブロックを複数備えている。各基台ブロックは、各基台ブロックから出射されるライン状の光が、所定の照射位置で1ラインに集光するように所定の角度で傾斜しており、短手方向(第2の方向)に所定の間隔をおいて並べて配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−146646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オフセット枚葉印刷においては、インキの種類(例えば、色)によって吸収する(すなわち、硬化する)紫外光のピーク波長が異なるため、複数の波長が混合された紫外光を照射可能な紫外光照射装置が求められている。
【0007】
また、FPDにおいても、機種によって使用する接着剤が異なるため、様々な接着剤に対応できるように、複数の波長が混合された紫外光を照射可能な紫外光照射装置が求められている。
【0008】
特許文献1に記載の紫外光照射装置は、365nmの波長のライン状の光を出射する2つの基台ブロックと、385nmの波長のライン状の光を出射する2つの基台ブロックとを備え、これらから出射される光を所定の照射位置で1ラインに集光するように構成することで2波長の光を混合し、かかる問題を解決している。
【0009】
しかし、特許文献1に記載の紫外光照射装置は、365nmの波長のライン状の光を出射する2つの基台ブロックをLEDユニットの中央寄りに並べて配置し、その外側に(つまり、365nmの波長の基台ブロックを挟むように)385nmの波長のライン状の光を出射する2つの基台ブロックを配置する構成を採っているため、照射位置における365nmの光の入射角と385nmの光の入射角とは大きく異なる。このように、照射位置における光の入射角が異なると、照射位置におけるビーム径が異なる結果、照射位置における365nmの光の光量分布(ビームプロファイル)と385nmの光の光量分布とが異なってしまうといった問題がある。照射位置において365nmの光の光量分布と385nmの光の光量分布が異なると、波長に応じて光のライン幅(ライン状の光の短手方向の長さ)及び照射強度(エネルギー)が変わってしまい、インキの乾燥状態にむらができたり、意図した接着剤の硬化が得られないといった問題が生ずる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、光量分布の略等しい複数の波長の光をライン状に照射可能な光照射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の光照射装置は、照射面上の所定の照射位置に、第1方向に延び、かつ、第1方向と直交する第2方向に所定の線幅を有するライン状の光を照射する光照射装置であって、基板上に第1方向に沿って所定間隔毎に並べられ、基板と直交する方向に光軸の向きを揃えて配置された複数の光源と、各光源の光路上に配置され、各光源からの光を略平行光となるように整形する複数の光学素子とを有し、照射面に対して第1方向に平行なライン状の光を所定の光量で出射する光学ユニットを複数備え、複数の光学ユニットは、第1の波長の光を出射するM個(Mは2以上の整数)の第1光学ユニットと、第1の波長とは異なる第2の波長の光を出射するM個の第2光学ユニットと、第1の波長及び第2の波長とは異なる第3の波長の光を出射するM個の第3光学ユニットから成り、第1光学ユニット、第2光学ユニット及び第3光学ユニットは、第1方向から見たときに、照射位置を中心とする円周方向に、第3光学ユニット、第1光学ユニット、第2光学ユニットの順番で繰り返して並び、第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光の、第2方向に照射する範囲が、それぞれ所定の線幅内となるように配置されことを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、第1光学ユニット、第2光学ユニット及び第3光学ユニットからそれぞれ出射される第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光の光量分布が照射面上で略一致するため、硬化波長の異なる様々な紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を安定して(硬化状態にむらができないように)硬化させることが可能となる。
【0013】
また、第1方向から見たときに、第1光学ユニットが、照射位置における垂線を対称軸として線対称となるように配置されることが望ましい。また、第1の波長が、第2の波長及び第3の波長よりも短くなるように構成することが望ましい。このような構成によれば、効率(つまり、消費電力に対する発光強度)の悪い光源の消費電力を抑え、かつ発熱を抑えることができる。
【0014】
また、第1光学ユニット、第2光学ユニット及び第3光学ユニットは、第1の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和と第2の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和との差、及び第1の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和と第3の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和との差が、所定値以下となるように配置されることが望ましい。また、この場合、第1の波長の光の照射面に対する各入射角をθ(iは1からMまでの整数)、第1の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和をα、第2の波長の光の照射面に対する各入射角及び第3の波長の光の照射面に対する各入射角をθ(kは1からMまでの整数)、第2の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和及び第3の波長の光の第2方向に照射する範囲の総和をα1、所定値をβ、としたときに、次の条件式を満足するように構成することができる。
【数1】
【0015】
また、複数の光学ユニットは、第1方向から見たときに、照射位置における垂線を対称軸として線対称となるように配置されることが望ましい。この場合、複数の光学ユニットは、第1方向から見たときに、照射位置を中心とした円弧上に配置されることが望ましい。
【0016】
また、Mは、偶数であり、M/2個の第1光学ユニット、第2光学ユニット及び第3光学ユニットが、他のM/2個の第1光学ユニット、第2光学ユニット及び第3光学ユニットに対して、所定間隔の1/2の距離だけ第1方向にずれて配置されていることが望ましい。このような構成によれば、光照射装置から出射される光の第1方向の照射強度分布が略均一となる。
【0017】
また、複数の光源は、基板上において、第1方向と直交する方向に2列に分かれて配置されており、第1方向から見たときに、一方の列の光源から出射された光と他方の列の光源から出射された光とが照射位置で集光するように、各光学素子の光軸と各光源の光軸とがずれるように構成することができる。
【0018】
また、一方の列の光源が、他方の列の光源に対して、所定間隔の1/2の距離だけ第1方向にずれて配置される構成とすることができる。このような構成によれば、光照射装置から出射される光の第1方向の照射強度分布が略均一となり、かつ各光学ユニットの取付け位置調整等が簡略化される。
【0019】
また、複数の光源は、略正方形状の発光面を有する面発光LEDであり、該発光面の一方の対角線が第1方向と平行となるように配置されていることが望ましい。
【0020】
また、第1の波長の光、第2の波長の光及び第3の波長の光がそれぞれ異なる強度に設定されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の光照射装置によれば、光量分布の略等しい複数の波長の光をライン状に照射することが可能となるため、硬化波長の異なる様々な紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を安定して硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置の外観図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に搭載されるLEDユニットの構成及び配置を説明する拡大図である。
図3図2Aに示すLEDユニットの構成を説明する拡大図である。
図4図3に示すLEDユニットの内部の構成を説明する図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に搭載されるLEDユニットから出射される紫外光の光路図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に搭載されるLEDユニットから出射される紫外光の光量分布を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る光照射装置に搭載されるLEDユニットの配置と光量分布との関係を説明する図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±35°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±40°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±45°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±50°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±55°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±60°の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を示す図である。
図14図6図8図13に示した各波長の光量分布の一致度合いγと、LEDユニットの配置によって定まる線幅LWの変動幅βとの関係を示したグラフである。
図15】本発明の第2の実施形態に係る光照射装置に備えられるLEDユニットの構成を説明する図である。
図16】本発明の第3の実施形態に係る光照射装置に備えられるLEDユニットの取付け構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光照射装置1の外観図である。本実施形態の光照射装置1は、オフセット枚葉印刷用のインキとして用いられる紫外線硬化型インキや、FPD(Flat Panel Display)等で接着剤として用いられる紫外線硬化樹脂を硬化させる光源装置に搭載される装置であり、後述するように照射対象物の上方に配置され、照射対象物に対してライン状の紫外光を出射する(図2B)。本明細書においては、光照射装置1から出射されるライン状の紫外光の長手(線長)方向をX軸方向(第1方向)、短手(線幅)方向をY軸方向(第2方向)、X軸及びY軸と直交する方向(すなわち、鉛直方向)をZ軸方向と定義して説明する。図1Aは、Y軸方向から見たときの光照射装置1の正面図である。図1Bは、Z軸方向から見たとき(図1Aの下側から上側に見たとき)の光照射装置1の底面図である。図1Cは、X軸方向から見たとき(図1Aの右側から左側に見たとき)の光照射装置1の側面図である。
【0025】
図1に示すように、光照射装置1は、ケース10と、基台ブロック20と、2個の第1LEDユニット100a、100b、2個の第2LEDユニット200a、200b、2個の第3LEDユニット300a、300bより構成されたLEDユニット50とを備えている。ケース10は、基台ブロック20、LEDユニット50を収容するケースである。また、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bは、共にX軸に平行なライン状の紫外光を出射するユニットである(詳細は後述)。
【0026】
基台ブロック20は、LEDユニット50を固定するための支持部材であり、ステンレス鋼等の金属によって形成されている。図1B及びCに示すように、基台ブロック20は、X軸方向に延びる略矩形の板状の部材であり、下面はY軸方向に沿って凹む部分円筒面となっている。基台ブロック20の下面(すなわち、部分円筒面)には、X軸方向に延びる第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bがY軸方向に沿って(すなわち、部分円筒面に沿って)並んで配置され、ネジ止めやハンダ付け等によって固着されている。
【0027】
ケース10の下面(光照射装置1の下面)は開口部10aを有しており、この開口部10aを通って、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bからの紫外光が照射対象物に向かって出射するように構成されている。
【0028】
図2は、本実施形態に係る光照射装置1に搭載されるLEDユニット50の構成及び配置を説明する拡大図である。図2Aは、図1Bの拡大図であり、説明の便宜のため、基台ブロック20を省略し、図1Bに示すLEDユニット50を90°回転させた上で、基台ブロック20の部分円筒面を平面に展開して(つまり、左右に引き延ばして)示している。また、図2Bは、図1Cの拡大断面図であり、X軸方向から見たときの第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置を示している。
【0029】
図3は、図2Aに示す第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの構成を説明する拡大図である。また、図4は、図3に示す第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの内部の構成を説明する図であり、図3のA−A’断面図である。なお、本実施形態の第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bは、各LEDユニットが出射する紫外光の波長のみが異なり、その他の構成については共通するため、以下、代表して同じ波長の紫外光を出射する第1LEDユニット100a、100bについて説明する。
【0030】
図2A図3に示すように、第1LEDユニット100a、100bのそれぞれは、X軸方向に延びる矩形状の基板101と、複数のLEDモジュール110を備えている。なお、本実施形態の第1LEDユニット100a、100bには、それぞれ40個のLEDモジュール110が搭載されているが、図2A及び図3においては、図面を見やすくするために、一部を省略して示している。
【0031】
第1LEDユニット100a、100bのLEDモジュール110は、X軸方向に延びる基板101の中心線CL1を挟んで2列(Y軸方向)×20個(X軸方向)の2次元正方格子状に稠密に基板101上に配置され、基板101と電気的に接続されている。第1LEDユニット100a、100bの基板101は、不図示のLED駆動回路に接続されており、各LEDモジュール110には、基板101を介してLED駆動回路からの駆動電流が供給されるようになっている。各LEDモジュール110に駆動電流が供給されると、各LEDモジュール110からは駆動電流に応じた光量の紫外光が出射され、第1LEDユニット100a、100bからはX軸に平行なライン状の紫外光が出射される。なお、本実施形態の各LEDモジュール110は、略一様な光量の紫外光を出射するように各LEDモジュール110に供給される駆動電流が調整されており、第1LEDユニット100a、100bから出射されるライン状の紫外光は、X軸方向において略均一な光量分布を有している。なお、図2A図3に示すように、本実施形態の各LEDモジュール110の間隔Pは、約12mmに設定されている。
【0032】
図3図4に示すように、第1LEDユニット100a、100bの各LEDモジュール110は、LED(Light Emitting Diode)素子111(光源)、レンズ113及びレンズ115(光学素子)を備えている。
【0033】
LED素子111は、略正方形の発光面を備え、LED駆動回路から駆動電流の供給を受けて、波長365nmの紫外光を出射する。LED素子111は、発光面の2本の対角線が、それぞれX軸方向及びY軸方向に向くように45°傾いて基板101上に取付けられている。このため、隣接するLEDモジュール110の各LED素子111は、発光面の各辺がX軸方向又はY軸方向に向くように(すなわち、45°傾けずに)配置した場合に比較して、互いに近接して配置され、隣接するLEDモジュール110からの紫外光も互いに近接した状態で出射される。
【0034】
LEDモジュール110の各LED素子111の光軸上には、不図示のレンズホルダに保持されたレンズ113及びレンズ115が配置されている(図4)。レンズ113は、例えばシリコーン樹脂の射出成形により形成された、LED素子111側が平面の平凸レンズであり、LED素子111から拡散しながら入射する紫外光を集光して後段のレンズ115に導光する。レンズ115は、例えばシリコーン樹脂の射出成形により形成された、入射面及び出射面が共に凸面の両凸レンズであり、レンズ113から入射する紫外光を略平行光に整形する。従って、レンズ115(すなわち、各LEDモジュール110)からは、所定のビーム径を有した略平行な紫外光が出射される。なお、本実施形態のレンズ113及びレンズ115は、出射される紫外光のX軸方向ビーム径が約18mm(半値幅)、Y軸方向ビーム径が約12mm(半値幅)となるように設計されている。
【0035】
上述したように、本実施形態のLEDモジュール110は、基板101上に、2列(Y軸方向)×20個(X軸方向)の2次元正方格子状に稠密に配置され、隣接する各LEDモジュール110からの紫外光が近接した状態で出射されるように構成されている。このため、各第1LEDユニット100a、100bからは、X軸方向に延びるライン状の紫外光がY軸方向に2列並んで出射される。
【0036】
なお、図4に示すように、本実施形態においては、レンズ113とレンズ115の光軸が一致し、且つ、レンズ113とレンズ115の光軸がLED素子111の光軸(発光面の中心を通る中心軸)に対しY軸方向にオフセットして配置されている。つまり、各LEDモジュール110のレンズ113とレンズ115の光軸は、基板101の中心(中心線CL1)寄りに、所定の距離だけオフセットしている。このため、LED素子111から出射される紫外光の光路は、レンズ113及びレンズ115によって内側(中心線CL1側)に曲げられる。後述するように、本実施形態の第1LEDユニット100a、100bは、基板101の中心線CL1を通る基板101の垂線VL1(仮想線)が、集光位置F1を通るように配置されており(図2B図4)、第1LEDユニット100a、100bから出射される2列のライン状の紫外光は、第1LEDユニット100a、100bから離れるに従って徐々に垂線VL1に近づき、集光位置F1で交差するように構成されている。
【0037】
上述したように、本実施形態の第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bは、出射する紫外光の波長が異なる点でのみ、第1LEDユニット100a、100bとは異なる。具体的には、第2LEDユニット200a、200bは、波長385nmの紫外光を出射するLED素子211を有したLEDモジュール210を備えており、第1LEDユニット100a、100bと同様、各第2LEDユニット200a、200bからは、X軸方向に延びるライン状の紫外光がY軸方向に2列並んで出射される。そして、各第2LEDユニット200a、200bから出射される2列のライン状の紫外光は、集光位置F1で交差するように構成されている。また、第3LEDユニット300a、300bは、波長405nmの紫外光を出射するLED素子311を有したLEDモジュール310を備えており、第1LEDユニット100a、100bと同様、各第3LEDユニット300a、300bからは、X軸方向に延びるライン状の紫外光がY軸方向に2列並んで出射される。そして、各第3LEDユニット300a、300bから出射される2列のライン状の紫外光は、集光位置F1で交差するように構成されている。つまり、本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される3つの異なる波長の紫外光が、集光位置F1で集光するように構成されているため、集光位置F1上では3つの波長が混合された1本のライン状の光が形成される。なお、JIS Z8120によれば、波長405nmの光は、可視光として定義されているが、本実施形態においては、説明の便宜のため、紫外光として説明する。
【0038】
次に、上述した第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置について説明する。図2Bに示すように、本実施形態の光照射装置1においては、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b、第3LEDユニット300a、300bが、X軸方向から見たときに、基台ブロック20の下面(すなわち、部分円筒面)に沿って、円弧状に配置される。そして、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bからの紫外光が、基準の照射面R上の集光位置F1に向かって出射され、基準の照射面R上において集光位置F1を中心とする線幅LWの範囲を照射するように構成されている。なお、本実施形態においては、紫外光の線幅LWは集光位置F1に対して±約20mmに設定されており、線長LL(X軸方向の長さ)は約200mmに設定されている。
【0039】
また、本実施形態の光照射装置1においては、ケース10の下端から下方(Z軸方向)に90mm離れた位置(すなわち、ワーキングディスタンス90mmの位置(図2B中、「WD90」と示す))におけるX−Y平面を基準の照射面Rとし、照射対象物は、不図示の搬送装置によって基準の照射面R上をY軸方向に沿って右から左に搬送されるように構成されている。従って、照射対象物が基準の照射面R上を右から左に順次搬送されることにより、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光が照射対象物上を順次移動(走査)し、照射対象物上の紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を順次硬化(定着)させる。なお、図2Bにおいては、説明の便宜のため、集光位置F1を通る基準の照射面Rの垂線を光照射装置1から出射される紫外光の光路の中心線Oとして示している。
【0040】
また、図2Aに示すように、本実施形態の光照射装置1をZ軸方向から見たとき、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bは、右側から左側に向かって(つまり、Y軸に沿って)、第3LEDユニット300a、第1LEDユニット100a、第2LEDユニット200a、第3LEDユニット300b、第1LEDユニット100b、第2LEDユニット200bの順番で配置されている。そして、右側から2番目に配置された第1LEDユニット100aは、右側から5番目に配置された第1LEDユニット100bに対して、X軸方向にP/2(すなわち、LEDモジュール110の間隔Pの1/2)の距離だけオフセットして配置されている。上述したように、各第1LEDユニット100a、100bのLEDモジュール110は、X軸方向に稠密に20個並んでいるが、各LEDモジュール110から出射される紫外光は略平行光であるため、隣接するLEDモジュール110から出射される紫外光がX軸方向においてオーバーラップせず、櫛歯状の光量分布となる。そこで、本実施形態においては、右側から2番目に配置された第1LEDユニット100aを、右側から5番目の第1LEDユニット100bに対してP/2の距離だけずらして配置することで、光量分布が低くなる部分を打ち消し、第1LEDユニット100a、100bからの紫外光が照射対象物上に照射されたときにX軸方向において略均一な光量分布となるようにしている。
【0041】
同様に、右側から3番目に配置された第2LEDユニット200aは、右側から6番目に配置された第2LEDユニット200bに対して、X軸方向にP/2の距離だけオフセットして配置され、第2LEDユニット200a、200bからの紫外光が照射対象物上に照射されたときにX軸方向において略均一な光量分布となるようになっている。また、最も右側に配置された第3LEDユニット300aは、右側から4番目に配置された第3LEDユニット300bに対して、X軸方向にP/2の距離だけオフセットして配置され、各第3LEDユニット300a、300bからの紫外光が照射対象物上に照射されたときにX軸方向において略均一な光量分布となるようになっている。
【0042】
このように、本実施形態の光照射装置1は、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される3つの波長のライン状の紫外光が、集光位置F1を中心とする円周方向に所定の順番で並び、照射対象物上(すなわち、基準の照射面R上の集光位置F1)に照射されることによって、照射対象物上の紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を硬化(定着)させる。例えば、オフセット枚葉印刷の用途に用いる場合、インキの種類(例えば、色)によって吸収する(すなわち、硬化する)紫外光のピーク波長が異なるが、このように3つの波長が混合された紫外光によれば、様々な種類(少なくとも3種類以上)のインキに対応でき、また複数のインキが積層された照射対象物であっても、一度の露光(照射)によって定着させることが可能となる。また、FPDにおける接着用途に用いる場合にも、硬化波長の異なる様々な接着剤に対応でき、使用する接着剤に応じて光源や光照射装置を使い分けたり、入れ替えたりする必要がなくなる。
【0043】
ここで、硬化波長の異なる様々な紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を安定して(つまり、硬化状態にむらができないように)硬化させるためには、波長の異なる複数のライン状の紫外光を照射対象物上でできる限り同一の光量分布となるように集光させることが望ましい。そこで、本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを、Z軸方向から見たときに、右側から左側に(つまり、Y軸に沿って)第3LEDユニット300a、第1LEDユニット100a、第2LEDユニット200a、第3LEDユニット300b、第1LEDユニット100b、第2LEDユニット200bの順に並ぶように配置し、かつ第1LEDユニット100a、100bの配置を基準として第2LEDユニット200a、200bの配置及び第3LEDユニット300a、300bの配置を決定している(後述)。
【0044】
図5は、本実施形態の第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の光路図である。図5Aは、第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の光路図を示しており、図5Bは、第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の光路図を示しており、図5Cは、第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の光路図を示している。なお、図4に示したように、本実施形態の第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光は、厳密には集光位置F1で集光するように構成されているが、紫外光のY軸方向ビーム径に対してワーキングディスタンスが十分に長く、基準の照射面Rに入射する際には略平行光に近似できるため、図5においては、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光を平行光として示している。
【0045】
図5Aに示すように、本実施形態の第1LEDユニット100a、100bは、X軸方向から見たときに、集光位置F1を中心とする半径125mmの円周の円弧上の、中心線Oに対して±18°(中心線Oに対して時計方向の角度を+、反時計方向の角度を−とする)の位置にそれぞれ配置される。つまり、第1LEDユニット100a、100bは、X軸方向から見たときに、中心線Oを対称軸として線対称に配置されている。また、上述したように、第1LEDユニット100a、100bから出射される2列のライン状の紫外光は、X軸方向から見たときに、集光位置F1で交差(集光)するように構成されているため、第1LEDユニット100a、100bから出射される合計4本(4列)のライン状の紫外光によって、基準の照射面R上の(つまり、照射対象物上の)線幅LWの範囲内が照射される。なお、本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の基準の照射面Rへの入射角は、共に18°であるため、第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWは、共に等しく、本実施形態においては、12.55mmである。
【0046】
図5Bに示すように、本実施形態の第2LEDユニット200a、200bは、X軸方向から見たときに、集光位置F1を中心とする半径125mmの円周の円弧上の、中心線Oに対して+6°、−30°の位置にそれぞれ配置される。また、上述したように、第2LEDユニット200a、200bから出射される2列のライン状の紫外光は、X軸方向から見たときに、集光位置F1で交差(集光)するように構成されているため、第2LEDユニット200a、200bから出射される合計4本(4列)のライン状の紫外光によって、基準の照射面R上の(つまり、照射対象物上の)線幅LWの範囲内が照射される。なお、本実施形態においては、第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の基準の照射面Rへの入射角は、6°及び30°と異なるため、第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWも異なる。本実施形態においては、中心線Oに対して+6°の位置に配置された第2LEDユニット200aから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWは、12.01mmであり、中心線Oに対して−30°の位置に配置された第2LEDユニット200bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWは、13.79mmである。
【0047】
図5Cに示すように、本実施形態の第3LEDユニット300a、300bは、X軸方向から見たときに、集光位置F1を中心とする半径125mmの円周の円弧上の、中心線Oに対して+30°、−6°の位置にそれぞれ配置される。また、上述したように、第3LEDユニット300a、300bから出射される2列のライン状の紫外光は、X軸方向から見たときに、集光位置F1で交差(集光)するように構成されているため、第3LEDユニット300a、300bから出射される合計4本(4列)のライン状の紫外光によって、基準の照射面R上の(つまり、照射対象物上の)線幅LWの範囲内が照射される。なお、本実施形態においては、第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の基準の照射面Rへの入射角は、30°及び6°と異なるため、第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWも異なる。本実施形態においては、中心線Oに対して+30°の位置に配置された第3LEDユニット300aから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWは、13.79mmであり、中心線Oに対して−6°の位置に配置された第3LEDユニット300bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWは、12.01mmである。
【0048】
図6は、本実施形態の光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布(ビームプロファイル)のシミュレーション結果である。つまり、図6は、X−Y平面上の、光照射装置1の長手方向の中心位置(すなわち、紫外光の線長LL(X軸方向の長さ)の1/2の位置)でのY軸方向の光量分布を示しており、各分布(波形)は、第1LEDユニット100a、100bから出射される波長365nmの紫外光の光量分布と、第2LEDユニット200a、200bから出射される波長385nmの紫外光の光量分布と、第3LEDユニット300a、300bから出射される波長405nmの紫外光の光量分布とをそれぞれ示している。なお、図6においては、各波長の光量分布を比較しやすいように、各波長の紫外光のピーク強度が1となるように規格化し、縦軸を相対強度として示している。
【0049】
図6に示すように、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを図5に示すように配置した場合、第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWが異なり、また第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の基準の照射面R上における線幅LWが異なるものの、各波長の光量分布(つまり、波長385nm及び405nmの光量分布)は、波長365nmの光量分布と略一致する。
【0050】
このように、本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを、集光位置F1を中心とする円周方向に所定の順番で、かつ、所定の角度で配置することで、基準の照射面R上における各波長の紫外光の線幅LWが所定の範囲内に収まり、波長の異なる3つのライン状の紫外光が照射対象物上で略同一の光量分布となるように構成されている。従って、本実施形態の光照射装置1によれば、硬化波長の異なる様々な紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂を安定して(つまり、硬化状態にむらができないように)硬化させることができる。
【0051】
なお、本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100bの間の角度、第2LEDユニット200a、200bの間の角度、第3LEDユニット300a、300bの間の角度をそれぞれ揃え、いずれも36°となるように構成しているが、この構成に限定されるものではなく、波長の異なる3つのライン状の紫外光が照射対象物上で略同一の光量分布となる範囲内で、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置を変更することができる。波長の異なる3つのライン状の紫外光が照射対象物上で略同一の光量分布となる範囲(つまり、条件)については、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置と光量分布との関係をシミュレーションすることによって求めることができる。図7図14は、発明者が行った光量分布のシミュレーションを説明する図である。
【0052】
図7は、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置と光量分布との関係を説明する図である。図7Aは、第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の光路図を示しており、図7Bは、第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の光路図を示しており、図7Cは、第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の光路図を示している。なお、図7においては、図5と同様、説明の便宜のため、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光を平行光として示している。
【0053】
図7A〜Cに示すように、本シミュレーションにおいては、第1LEDユニット100a、100bを、集光位置F1を中心とする半径125mmの円周の円弧上の、中心線Oに対して±18°の位置にそれぞれ配置し(図7A)、第2LEDユニット200a及び第3LEDユニット300bを、中心線Oに対して+6°、−6°の位置にそれぞれ配置し、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して−A°、+A°(Aは、変数)の位置にそれぞれ配置したときの光量分布を求めた。
【0054】
図8は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±35°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布であり、図6と同様、X−Y平面上の、光照射装置1の長手方向の中心位置(すなわち、紫外光の線長LL(X軸方向の長さ)の1/2の位置)でのY軸方向の光量分布を示している。同様に、図9は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±40°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布である。図10は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±45°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布である。図11は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±50°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布である。図12は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±55°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布である。図13は、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを、中心線Oに対して±60°の位置にそれぞれ配置したときの、光照射装置1から出射される紫外光の波長毎の光量分布である。なお、図8図13においては、図6と同様、各波長の光量分布を比較しやすいように、各波長の紫外光のピーク強度が1となるように規格化し、縦軸を相対強度として示している。
【0055】
図8図13に示すように、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aの配置角度を、中心線Oに対して徐々に大きくしていくと(つまり、基準の照射面Rに対する入射角度を大きくしていくと)、基準の照射面R上における線幅LWが太くなり、また第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の入射角度との差が大きくなる。このため、波長385nm及び405nmの光量分布は、特に第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aを中心線Oに対して±45°以上の位置に配置したときに、分布の裾の部分(約±10mmの位置)で波長365nmの光量分布からずれたものとなる(図10図13)。本実施形態においては、波長365nmの光量分布は第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の和となり、波長385nmの光量分布は第2LEDユニット200a、200bから出射される紫外光の和となり、波長405nmの光量分布は第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光の和となるから、第1LEDユニット100a、100bの基準の照射面R上における線幅LWの和によって波長365nmの光量分布が定まり、第2LEDユニット200a、200bの基準の照射面R上における線幅LWの和によって波長385nmの光量分布が定まり、第3LEDユニット300a、300bの基準の照射面R上における線幅LWの和によって波長405nmの光量分布が定まる。つまり、各波長の紫外光の光量分布が略等しくなるためには、各波長の紫外光の基準の照射面R上における線幅LW(つまり、ビーム径)の総和が、それぞれ所定の範囲にあることが条件となる。
【0056】
そこで、各波長の紫外光の基準の照射面R上における線幅LWの総和を一種の比較パラメータとして本シミュレーション結果を検討する。第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光のビーム径(つまり、入射角0°のときのY軸方向のビーム径)を「1」とし、第1LEDユニット100a、100bから出射される紫外光の基準の照射面Rに対する入射角をそれぞれθ1a、θ1bとすると、波長365nmの紫外光の基準の照射面R上における線幅LWの和αは、以下の式で表すことができる。
【数2】
また、第2LEDユニット200a、200b(又は第3LEDユニット300a、300b)から出射される紫外光の基準の照射面Rに対する入射角をそれぞれθ2a、θ2bとすると、波長385nm(又は波長405nm)の紫外光の基準の照射面R上における線幅LWの和α1は、以下の式で表すことができる。
【数3】
【0057】
そして、波長365nmの紫外光の基準の照射面R上における線幅LWの和αと、波長385nm(又は波長405nm)の紫外光の基準の照射面R上における線幅LWの和α1との差をβとして、以下の式のように定義する。つまり、βは、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置によって定まる、線幅LWの変動幅を表す指標である。
【数4】
【0058】
表1は、図6図8図13に示した光量分布とβとの関係を示した表である。表1中、角度Aは、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300aの配置角度を示しており、角度A=30°は、図6に対応し、角度A=35°〜60°は、図8〜13にそれぞれ対応している。また、表1中、γは、各図の波長365nmの分布と波長385nmの分布の差を±30mm(横軸)の範囲で求め、その2乗平均平方根の値(表1の「385nm」)と、各図の波長365nmの分布と波長405nmの分布の差を±30mm(横軸)の範囲で求め、その2乗平均平方根の値(表1の「405nm」)である。つまり、γは、波長365nmの分布に対する波長385nmの分布、及び波長405nmの分布の一致度合いを表す指標である。また、βは、各図における第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの配置から求めた上記βの値である。また、表1中の「判定」は、各図における各波長の紫外光の光量分布が略等しいといえるか否かを、紫外線硬化型インキや紫外線硬化樹脂の特性の観点から評価した結果である。「○」は光量分布が略等しいといえる場合を示し、「×」は光量分布が略等しいといえない場合を示し、「△」は光量分布が略等しいといえる限界を示している。
【0059】
【表1】
【0060】
図14は、表1のβとγとの関係をプロットしたグラフである。表1及び図14から明らかなように、βの値が大きくなるにつれて、γの値が大きくなる。そして、γが約0.03のとき(すなわち、角度A=40°のとき)を境に、各波長の紫外光の光量分布の同一性が顕著に悪化することが分かった。つまり、各波長の紫外光の光量分布が略等しくなるための条件としては、少なくともβの値が0.21以下(つまり、角度A≦40°)である必要があり、次式が成立する。
【数5】
なお、表1に示すように、βの値が0.12以下(つまり、角度A≦35°)であればより好ましい。
【0061】
以上が本実施形態の説明であるが、本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。
【0062】
本実施形態においては、第1LEDユニット100a、100bを中心線Oに対して±18°の位置にそれぞれ配置し、第2LEDユニット200a、200bを中心線Oに対して+6°、−30°の位置にそれぞれ配置し、第3LEDユニット300a、300bを中心線Oに対して+30°、−6°の位置にそれぞれ配置したが、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bは、相互に入れ替えて配置してもよい。なお、一般に、短い波長の光を出射するLEDほど効率(つまり、消費電力に対する発光強度)が悪いため、消費電力を抑え、かつ発熱を抑えるためには、第1LEDユニット100a、100bの出力をできるだけ低く抑える必要がある。従って、本実施形態のように、最も波長の短い光を発するLEDを備えた第1LEDユニット100a、100bを、中心線Oを対称軸として線対称にバランスよく配置し、基準の照射面R上における線幅LWができるだけ拡がらないように(つまり、単位面積当たりの光量が低下しないように)配置するのが好ましい。
【0063】
また、本実施形態においては、3つの異なる波長の紫外光を照射する構成としたが、このような構成に限定されるものではなく、本発明はN種類(Nは2以上の整数)の異なる波長の紫外光を照射する光照射装置に適用することが可能である。また、本実施形態においては、2個の第1LEDユニット100a、100bが波長365nmの紫外光を出射し、2個の第2LEDユニット200a、200bが波長385nmの紫外光を出射し、2個の第3LEDユニット300a、300bが波長405nmの紫外光を出射する構成としたが、各波長の紫外光を出射するLEDユニットは、1個でもよく、また3個以上で構成してもよい。つまり、LEDユニット50は、N×M個(Mは1以上の整数)のLEDユニットで構成することができる。
【0064】
なお、この場合、各波長の紫外光の光量分布が略等しくなるためには、数2及び数3を一般化し、以下の条件式を満たすことが条件となる。つまり、N種類(Nは2以上の整数)の異なる波長の紫外光のうち、いずれか1つの波長の紫外光の、基準の照射面Rに対する各入射角をθ(iは1からMまでの整数)とし、いずれか1つの波長の光の、基準の照射面R上における線幅LWの総和をαとし、他の波長の紫外光の、基準の照射面Rに対する各入射角をθ(kは1からMまでの整数)とし、他の波長の紫外光の、基準の照射面R上における線幅LWの総和をα1とし、αとα1との差をβとしたときに、以下の条件式を満たす必要がある。
【数6】
【0065】
また、本実施形態においては、各波長の光量分布を比較しやすいように、各波長の紫外光のピーク強度が1となるように規格化して説明したが、各波長の紫外光のピーク強度は、照射対象物の感度に応じてそれぞれ異なるように構成してもよい。
【0066】
(第2の実施形態)
図15は、本発明の第2の実施形態に係る光照射装置2に備えられる、第1LEDユニット100aA、100bA、第2LEDユニット200aA、200bA及び第3LEDユニット300aA、300bAの構成を説明する図である。本実施形態の第1LEDユニット100aA、100bA、第2LEDユニット200aA、200bA及び第3LEDユニット300aA、300bAにおいては、LEDモジュール110が千鳥状に(つまり、1列×20個の一方のLEDモジュール110が、1列×20個の他方のLEDモジュール110に対して間隔Pの1/2の距離だけオフセットされて互い違いに)稠密に配置されている点で第1の実施形態の光照射装置1と異なる。
【0067】
LEDモジュール110をこのように配置すると、第1LEDユニット100aA、100bA、第2LEDユニット200aA、200bA及び第3LEDユニット300aA、300bAから出射される2列のライン状の紫外光が、それぞれLEDモジュール110の間隔Pの1/2の距離だけX軸方向に相対的にオフセットする。従って、第1の実施形態と同様、各ライン状の紫外光は、光量分布の低くなる部分を互いに打ち消し合い、照射対象物上でX軸方向に略均一な光量分布となる。本実施形態の構成によれば、第1の実施形態の光照射装置1のように、第1LEDユニット100a、第2LEDユニット200a及び第3LEDユニット300aを、第1LEDユニット100b、第2LEDユニット200b及び第3LEDユニット300bに対してオフセットして配置する必要がなくなるため、これらの基台ブロック20に対する取付け位置調整等が簡略化される。
【0068】
(第3の実施形態)
図16は、本発明の第3の実施形態に係る光照射装置3に備えられる、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bの取付け構造を説明する図である。本実施形態の光照射装置3は、下面に部分円筒面を備える第1の実施形態の基台ブロック20に代えて、下面に第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを固定するための取付け傾斜面20Ma〜20Mfを備えた基台ブロック20Mを備える点で第1の実施形態の光照射装置1と異なる。本実施形態の取付け傾斜面20Ma〜20Mfは、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bから出射される紫外光が、第1の実施形態と同様の入射角で基準の照射面R上に入射するように構成されている。つまり、本実施形態の第1LEDユニット100a、100bを固定する20Mb、20Meは、第1LEDユニット100a、100bから出射された紫外光が±18°の入射角で基準の照射面R上の集光位置F1に入射するように構成されている。また、本実施形態の第2LEDユニット200a、200bを固定する20Ma、20Mdは、第2LEDユニット200a、200bから出射された紫外光が+6°、−30°の入射角で基準の照射面R上の集光位置F1に入射するように構成されている。また、本実施形態の第3LEDユニット300a、300bを固定する20Mc、20Mfは、第3LEDユニット300a、300bから出射された紫外光が+30°、−6°の入射角で基準の照射面R上の集光位置F1に入射するように構成されている。
【0069】
このように、基台ブロック20Mに第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを固定するための取付け傾斜面20Ma〜20Mfを形成すると、第1LEDユニット100a、100b、第2LEDユニット200a、200b及び第3LEDユニット300a、300bを基台ブロック20Mに対して精確に取付けることが可能となり、またこれらの取付け角度の調整が不要となる。
【0070】
なお、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
図1
図2
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図5
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図10
図11
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図15
図16