(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
肉、魚、野菜又は果物などの食品を包装するためのトレーを作製するのに好適な材料として固体非発泡又は発泡ポリスチレンが広く使用されている。トレーにパックされるこれらの食品は、通常、水、汁又は血液を放出し、包装されたトレーの内部を満たす。衛生面及び視覚の面から、これらの液体を、好ましくは好適な吸収特性を有するトレー材料によって迅速に吸収させることが非常に望ましい。
【0003】
プラスチック産業では、添加剤をコンパウンド又はマスターバッチの形態で用いるのが通例である。
【0004】
本発明の目的のために、マスターバッチは、重合体及び添加剤を含む組成物であり、その際、添加剤は最終用途よりも高い濃度で存在し、キャリア重合体は最終用途の重合体であってもよい又は最終用途の重合体でなくてもよい。マスターバッチ中における添加剤の好ましい濃度は、該マスターバッチの総質量に基づいて、0.1〜90質量%、特に1〜80質量%、特に10〜75質量%の範囲である。
【0005】
本発明の目的のために、コンパウンドは、重合体及び添加剤を含む組成物であり、その際、添加剤は最終用途又は最終物品の所望の最終濃度で存在し、しかも重合体は最終用途又は最終物品の所望の重合体であり、それにより、該コンパウンドは、単に物理的成形方法によって最終用途又は最終物品の所望の形状にされる。
【0006】
親水性の添加剤を含有しかつ親水性組成物又は物品を製造するために使用されるマスターバッチ及び/又はコンパウンドは厳しい要件を満たさなければならない:組成物は、親水性添加剤の高充填量、すなわち高濃度を有しなければならず、最終物品における重合体表面との水との所望の接触角を設定することが可能でなければならない。さらなる要件は、最終用途又は最終物品の重合体との良好な混和性及び相溶性である。さらに、発泡ポリスチレンの食品トレーには水又は肉汁の高い吸収が望まれている。水性液体に対するポリスチレン表面の吸収特性についての測定可能な変動は、水に対するポリスチレン表面の表面角度(静的接触角)である。表面角度が低いほど、吸収特性が高い。
【0007】
欧州特許出願公開第2289994号には、発泡ポリスチレントレーのための吸収性マスターバッチチップ組成物であって、該マスターバッチチップが有機陰イオン性スルホネート、炭酸カルシウム及びタルクを含む組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、この公知の組成物は、産業界の現在の全て必要条件を満たしておらず、特にそれらの吸収特性は十分ではない。低い静的接触角を与え、かつ、成形性及び機械的安定性、例えば、密度、剛性及び引裂強度に関して重合体材料と依然として相溶性のある親水性添加剤を含むマスターバッチ及びコンパウンドに対する要望が存在する。
【0010】
ポリスチレン及び親水性添加物の特定の混合物を含む次の組成物Zは、驚くべきことに、前記要望に関して改善された特性を示すことが分かった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、成分B1、成分B2、成分D、成分E及び成分Pを含む組成物Zであって、
該成分B1が、ヒドロキシル価が、25〜600mgKOH/g、好ましくは21〜200mgKOH/g、より好ましくは22〜100mgKOH/g、特に、28〜40mgKOH/gであり、平均分子量が、200〜4000g/mol、好ましくは500〜3700g/mol、より好ましくは1000〜3600g/mol、特に3000〜3500g/molであるポリエチレングリコールであり;
該成分B2が、ヒドロキシル価が、0.1〜24mgKOH/g、好ましくは1〜10mgKOH/g、より好ましくは、2.5〜8mgKOH/g、特に、4〜5mgKOH/gであり、平均分子量が、4000より大きく〜約10,000,000g/mol、好ましくは約6000〜約5,000,000g/mol、より好ましくは約10,000〜約1,000,000g/mol、特に30,000〜40,000g/molであるポリエチレングリコールであり、
該成分Dが炭酸アルカリ土類金属塩であり、
該成分Eがフィロシリケートであり、
該成分Pがポリスチレン及び/又はその混合体である、
組成物である。
【0012】
本発明によれば、組成物Zは、ポリスチレンの親水性を高めるのに好適であり、これは重合体表面と水との小さな静的接触角を得るために、本発明に係る特定の添加物によって変性されたポリスチレン材料を与え、また、真のポリスチレン材料と比較して添加剤含有ポリスチレン材料の高い水吸収容量を与えることを意味する。
【0013】
本発明の別の主題は、上記組成物Zの、固体の非発泡又は発泡ポリスチレンの吸収性物品を製造するための使用であって、吸収される物質が好ましくは水性液体である使用である。
【0014】
組成物Zは、好ましくは、前に定義されたマスターバッチMB又はコンパウンドである。
【0015】
好ましくは、吸収性物品は、好ましくは水含有食品、例えば肉、魚、野菜又は果物と接触するフィルム、シート又は容器、例えば食品トレーである。
【0016】
吸収される物質は、好ましくは、水、血液、又は汁である。
【0017】
本発明のさらなる主題は、上で定義した成分B1、成分B2、成分D、成分E及び成分Pを含む固体発泡又は非発泡ポリスチレン物品である。本発明の好ましい実施形態では、該物品は、水含有食品、例えば肉、魚、野菜又は果物と接触し、しかも該物品は、好ましくはフィルム、シート、又は容器、例えば、食品トレーである。
【0018】
本発明の目的のために、親水性固体非発泡又は発泡ポリスチレンは、5〜81°、好ましくは30〜80°、特に40〜79°、最も好ましくは50〜78°の静的接触角を特徴とする。
【0019】
本発明のさらなる主題は、前に定義された成分B1、B2、D、E及びPの混合物を、押出し、混練し、プレスし又は射出成形することによって固体非発泡又は発泡ポリスチレンの親水性を向上させるための方法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
好ましいポリエチレングリコールは5〜7のpH値を有するポリエチレングリコールである。
【0022】
好ましいポリエチレングリコールは、20℃(水溶液中50%)で50〜14000mPA.sの粘度を有するポリエチレングリコールであり、20℃(水溶液中1%)で4000〜15000mPA.sの粘度を有するポリエチレングリコールであり、20℃(水溶液中2%)で400〜800mPA.sの粘度を有するポリエチレングリコールであり、20℃(水溶液中5%)で30〜50mPa.sの粘度を有するポリエチレングリコールである。
【0023】
好ましいポリエチレングリコールは、2個の遊離ヒドロキシル末端基を有する線状ポリエチレングリコールである。
【0024】
好ましくは、成分Dは、1、2、3又は4種、より好ましくは1又は2種、さらに好ましくは1種の炭酸アルカリ土類金属塩を含む。
【0025】
好ましい炭酸塩は、炭酸カルシウム(CaCO
3、カルサイト又はアラゴナイト)、炭酸マグネシウム(MgCO
3、マグネサイト)又は炭酸カルシウムマグネシウム(CaMg(CO
3)
2、ドロマイト)である。
【0026】
好ましい炭酸塩は、天然炭酸カルシウム又は合成沈殿炭酸カルシウムである。
【0027】
好都合には、市販の炭酸カルシウムを本発明の目的のために使用することができる。これらの市販製品は、少量の混入物、例えばFe、Mn、Sr、Pb、Cd、Cu、Znイオン、MgCO
3、Al
2O
3、Fe
2O
3又はSiO
2を含有する場合が多い。
【0028】
炭酸アルカリ土類金属塩は、好都合には、粉末の状態、好ましくは1〜10μmの間の平均粒径を有する微粉化された状態で使用される。
【0029】
好ましくは、成分Eは、1、2、3又は4種のフィロシリケート、より好ましくは1又は2種、さらにより好ましくは1種のフィロシリケートを含む。フィロシリケートとは、2:5のSi:O比を有するシリケート四面体の平行シートを形成する層状珪酸塩であると定義される(ニッケル−シュツルンツ分類)。
【0030】
好ましいのは、ハロイサイト、カオリナイト、イライト、モンモリロナイト、バーミキュライト、タルク、パリゴルスカイト及びパイロフィライトを含む粘土鉱物群のフィロシリケートであり、より好ましくはMg
3Si
4O
10(OH)
2(タルク)である。
【0031】
有利には、市販のタルクを本発明の目的のために使用することができる。これらの市販製品は、少量の混入物、例えばFe、Mn、Ti、Ni、Sr、Pb、Cd、Cu、Zn、Mn、Na、K、Clイオン、MgCO
3、Al
2O
3、Fe
2O
3、FeO、MgO、SiO
2を含有する場合が多い。
【0032】
フィロシリケートは、好都合には、粉末の状態、好ましくは1〜10μmの平均粒径を有する微粉化された状態で使用される。
【0033】
好ましくは、成分Pは1、2、3又は4種、より好ましくは1又は2種、さらにより好ましくは1種のポリスチレンを含む。
【0034】
ポリスチレンは、スチレン単独重合体、アルキルスチレン単独重合体、好ましくはC
1〜C
4アルキルスチレン単独重合体、例えば、α−メチルスチレン単独重合体;スチレン共重合体、特に耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)であることができる。
【0035】
耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)は、一般に、スチレンと任意に1種以上の共重合性ビニル単量体との混合物、好ましくはスチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ハロスチレン、ビニルアルキルベンゼン、例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸の低級アルキルエステルの混合物を、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ゴム状スチレン−ジエン共重合体、アクリルゴム、ニトリルゴム並びにプロピレンジエン単量体ゴム(PDM)及びプロピレンゴム(PR)などのオレフィンゴムから選択される共重合体を含むゴム状重合体幹の存在下でグラフト重合することによって製造される。耐衝撃性ポリスチレンでは、ゴム状重合体幹は、通常、グラフト化重合体の総質量の5〜80質量%、好ましくは5〜50質量%を構成する。
【0036】
さらに、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体及び合成ブチルゴム(SBR)を使用することも可能である。
【0037】
また、上記スチレン重合体の混合物又は混合体を使用することも可能である。
【0038】
成分Pの好ましい密度は、1.0〜1.1g/cm
3、より好ましくは1.02〜1.06g/cm
3、さらに好ましくは1.03〜1.05g/cm
3である。
【0039】
好ましいポリスチレンは、ISO1133に従って200℃/5kgで0.1〜300g/10分、より好ましくは1〜200g/10分、さらに好ましくは5〜100g/10分、特に10〜50g/10分、特に15〜35g/10分、特に20〜25g/10分のMFRを有するポリスチレンである。
【0040】
組成物Zは、好都合には、成分B1、B2、D及びEの合計を0.06〜90%質量含み、好ましくはZは、成分B1、B2、D及びEの合計を0.5〜80質量%含み、より好ましくは、Zは成分B1、B2、D及びEの合計を1.0〜70質量%含み、さらに好ましくは、Zは成分B1、B2、D及びEの合計を1.25〜50質量%を含み、特にZは成分B1、B2、D及びEの合計を1.5〜25質量%含む(ここで、質量%は、組成物Zの総質量を基準にする)。
【0041】
組成物Zは、好ましくは、成分B1及び成分B2を、0.1〜10.0、好ましくは0.2〜5.0、より好ましくは0.3〜1.0、さらにより好ましくは0.4〜0.8、特に0.5〜0.6の成分B1と成分B2との質量比で含む。
【0042】
組成物ZがマスターバッチMBの場合には、Zは、好都合には、
0.2〜20質量%の成分B1、
0.4〜40質量%の成分B2、
0.2〜20質量%の成分D、
0.1〜10質量%の成分E、
10〜99.1質量%の成分P
含み、ここで、質量%は、組成物Zの総質量を基準にする。
【0043】
組成物ZがマスターバッチMBの場合は、Zは、好都合には、
1.5〜20質量%の成分B1、
3〜40質量%の成分B2、
1.5〜20質量%の成分D、
0.75〜10質量%の成分E、
10〜93.25質量%の成分P、
を含み、好ましくは、マスターバッチMBとしての組成物Zは、
3〜15質量%の成分B1、
6〜30質量%の成分B2、
3〜15質量%の成分D、
1.5〜7.5質量%の成分E、
32.5〜86.5質量%の成分P、
を含み、より好ましくは、マスターバッチMBとしての組成物Zは、
6〜10質量%の成分B1、
12〜20質量%の成分B2、
6〜10質量%の成分D、
3〜5質量%の成分E、
55〜73質量%の成分P、
を含み、さらに、より好ましくは、マスターバッチMBとしての組成物Zは、
7〜9質量%の成分B1、
14〜18質量%の成分B2、
7〜9質量%の成分D、
3.5〜4.5質量%の成分E、
59.5〜68.5質量%の成分P、
を含み、特に、マスターバッチMBとしての組成物Zは、
7.5〜8.5質量%の成分B1、
15〜17質量%の成分B2、
7.5〜8.5質量%の成分D、
3.75〜4.25質量%の成分E、
61.75〜66.25質量%の成分P、
を含み、
質量%は、それぞれの場合において組成物Zの総質量に基づく。
【0044】
組成物Zがコンパウンドである場合には、Zは、好都合には、
0.0167〜1.47質量%の成分B1、
0.0333〜2.94質量%の成分B2、
0.0167〜1.47質量%の成分D、
0.00835〜0.735質量%の成分E、
93.385〜99.92495質量%の成分P
を含み、好ましくは、コンパウンドとしての組成物Zは、
0.07〜1質量%の成分B1、
0.14〜2質量%の成分B2、
0.07〜1質量%の成分D、
0.035〜0.5質量%の成分E、
95.5〜99.69質量%の成分P
を含み、より好ましくは、コンパウンドとしての組成物Zは、
0.25〜0.75質量%の成分B1、
0.5〜1.5質量%の成分B2、
0.25〜0.75質量%の成分D、
0.125〜0.375質量%の成分E、
96.63〜98.88質量%の成分P
を含み、さらにより好ましくは、コンパウンドとしての組成物Zは、
0.3〜0.7質量%の成分B1、
0.6〜1.4質量%の成分B2、
0.3〜0.7質量%の成分D、
0.15〜0.35質量%の成分E、
96.85〜98.65質量%の成分P
を含み、特に、コンパウンドとしての組成物Zは、
0.4〜0.5質量%の成分B1、
0.8〜1質量%の成分B2、
0.4〜0.5質量%の成分D、
0.2〜0.25質量%の成分E、
97.75〜98.2質量%の成分P
を含み、
質量%は、それぞれの場合において組成物Zの総質量に基づく。
【0045】
組成物Zは、追加の物質、好ましくは次の物質を含有することができる:
−着色剤、ここで有機及び無機染料及び顔料が着色剤として可能である;有機顔料としては、アゾ又はジアゾ顔料、被覆アゾ又はジアゾ顔料又は多環式顔料を使用することが好ましい;好ましい多環式顔料は、ジケトピロロピロール、フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ジオキサジン、アントラキノン、チオインジゴ、ジアリール又はキノフタロン顔料である;無機顔料としては、金属酸化物、混合酸化物、硫酸アルミニウム、クロメート、金属粉、パール効果顔料(マイカ)、発光顔料、酸化チタン、カドミウム−鉛顔料、酸化鉄、カーボンブラック、シリケート(成分E以外)、チタン酸ニッケル、コバルト顔料又は着色に好適な酸化クロムを使用することが好ましい;
−分散助剤、好適な分散剤は、C
10〜C
30アルコールの極性酸エステルである;
−シリカ、ゼオライト、ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウムなどの充填剤(成分D及びE以外);
−助剤、好ましくは金属石鹸、発泡剤、核剤(成分DまたはE以外)、過酸化物;
−アルキルアミン、エトキシル化アルキルアミン、グリセリルエステル又はそれらの混合物(ブレンド);
−UV吸収剤及びヒンダードアミン光安定剤(HALS)化合物、スリップ剤、防曇剤、凝縮防止剤及び/又は懸濁安定剤、難燃剤;酸化防止剤又は他の慣用のプラスチック添加剤;イオン液体;
又はこれらの混合物。
【0046】
該追加物質は、成分B1、B2、D、E及びPのいずれとも異なることを意味する。
【0047】
これらの追加物質は、好都合には、組成物Zの総質量を基準にして、0〜60質量%、好ましくは0.01〜40質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは1〜20質量%、特に2〜10質量%で存在する。ポリスチレンが発泡ポリスチレンである場合には、好ましい追加物質は化学発泡剤である。
【0048】
組成物Zは、成分B1、B2、D、E及びP並びに任意に該追加物質のいずれかを互いに物理的に混合させることにより製造できる。これらの成分の混合は、一工程又は複数の工程で行うことができる。
【0049】
物理的混合のための混合装置としては、プラスチック産業において慣用されている混合装置、好ましくは押出機、混練機、プレス機、射出成形機及びブレードミキサーよりなる群から選択される装置を使用することが可能である。組成物ZがマスターバッチMBである場合には、混合装置は、好ましくは押出機、混練機及び/又はブレードミキサーである。組成物Zがコンパウンドである場合には、混合装置は、好ましくは押出機、プレス機及び射出成形機、特に好ましくは押出機である。
【0050】
混合は、好ましくは連続的に又はバッチ式で、特に好ましくは連続的に行い、マスターバッチMBの場合には、好ましくは押出又は混練によって、特に好ましくは押出によって、またコンパウンドの場合には、好ましくは押出若しくは射出成形又はプレスによって、特に好ましくは押出によって行う。
【0051】
混合は、好ましくは80〜260℃、より好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは150〜230℃、特に180〜220℃の温度で実施される。混合時間は、好ましくは5秒〜10時間である。連続混合の場合の混合時間は、好ましくは5秒〜1時間、より好ましくは10秒〜15分である。
【0052】
バッチ式混合の場合の混合時間は、1分〜10時間、より好ましくは2分〜8時間、特に好ましくは2分〜5時間、特に2分〜1時間、特に好ましくは2〜15分である。
【0053】
コンパウンドの場合には、成分B1、B2、D、E及びPは、好ましくは、ポリスチレンPとマスターバッチMBの状態で混合される。さらに、マスターバッチMBとペレット化ポリスチレンとのプレミックスを、好ましくは物理的混合のために使用する。
【0054】
組成物Zは、マスターバッチMBの形態又はコンパウンドの形態の両方において、驚くべきことに、低い静的接触角を特徴とする。
【0055】
発泡ポリスチレン物品、例えば食品トレーの製造については、ポリスチレンを発泡剤と共に押出す。発泡剤は、物理的発泡剤、例えば、CO
2、N
2、イソペンタン、ヒドロフルオロカーボンなどのガスか、又はガス、例えばCO
2又はN
2を遊離するプロセスの間に溶融重合体中で分解する化学発泡剤のいずれかであることができる。両方のプロセスでは、ガスは、押出機バレル内において圧力下で重合体溶融物中に十分に分散及び溶解されなければならない。溶融物がダイを通して押出機から出ると、圧力は降下し、そしてガスは溶融物を膨張させて重合体中にセル構造を創り出す。いわゆる直接ガス押出で製造されたフォーム押出ポリスチレン物品は、15kg/m
3〜500kg/m
3のフォーム密度を達成することができる。
【0056】
試験方法:
モル質量分布M
nの決定は、DIN55672に従って、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって行う。
1%、2%、5%又は50%水溶液の20℃での粘度の決定はISO6388に従って行う。
密度の決定はISO1183に従って行う。
200℃及び5kg加重でのMFRの決定はISO1133に従って行う。
引張弾性率の決定はISO527−1/−2に従って行う。
静的接触角の決定は、ポリスチレンシートの表面上に所定の容量の蒸留水の液滴を注意深く置くことによって実施される。固体/液体界面と液体/蒸気界面との間に形成される角度を、静的接触角θという。静止時間の5秒後に写真を撮影し、そして画像(
図1)に示すように、静的接触角を、液滴の輪郭を観察し、そして固体と液滴輪郭との間において三相線での頂点と共に形成された角度を二次元に測定することにより、画像処理ソフトを用いて決定する。
【0057】
使用した物質:
成分B1:28〜39mg KOH/gのヒドロキシル価及び3350g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール;
成分B2:4mg KOH/gのヒドロキシル価及び35000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコール;
成分D:5.5μmの統計的平均径を有する微粉化炭酸カルシウム;
成分E:6μmの統計的平均径を有するタルク、mg−ケイ酸塩、CAS14807−96−6;
成分P1:200℃/5kgで20〜28g/10分のMFR及び3000〜3400MPaの引張弾性率を有する多目的ポリスチレン単独重合体;
成分P2:200℃/5kgで4.0〜6.0g/10分のMFR及び1600〜2000MPaの引張弾性率を有する耐衝撃性ゴム変性ポリスチレン;
成分A(比較):C
12〜C
18アルキルスルホン酸ナトリウム。
【0058】
特に断らない限り、次の実施例において、百分率は、物品の混合物の総質量に基づく質量%であり、部は質量部である。「比較」は比較例を意味する。
【実施例】
【0059】
比較例1(EP2289994A2の教示を示す)
成分Aの15部、成分Dの15部、成分Eの7.5部及び成分P1の62.5部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220℃〜230℃)。マスターバッチMB1を得る。
【0060】
比較例3
成分B2の15部、成分Dの15部、成分Eの7.5部及び成分P1の62.5部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220℃〜230℃)。マスターバッチMB3を得る。
【0061】
比較例4
成分B1の15部、成分Dの15部、成分Eの7.5部及び成分P1の62.5部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220℃〜230℃)。マスターバッチMB4を得る。
【0062】
実施例6
成分B1の5部、成分B2の10部、成分Dの15部、成分Eの7.5部及び成分P1の62.5部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220℃〜230℃)。マスターバッチMB6を得る。
【0063】
実施例8
成分B1の5部、成分B2の10部、成分Dの15部、成分Eの7.5部、成分P1の32.5部及び成分P2の30部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220〜230℃)。マスターバッチMB8を得る。
【0064】
比較例9(EP2289994A2の教示を示す)
成分Aの21部、成分Dの20部、成分Eの5.0部並びに成分P1の34部及び成分P2の20部を二軸押出機で一緒に均質化する(押出機の温度:220〜230℃)。マスターバッチMB9を得る。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例21
比較例1に記載したとおりに製造したマスターバッチMB1の10部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の90部と混合させた。100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で100μmの厚さのフラットフィルムFF21を得た。
【0067】
比較例23
例3に記載したとおりに製造したマスターバッチMB3の10部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の90部と混合した。100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で厚さ100μmのフラットフィルムFF23を得た。
【0068】
比較例24
実施例4に記載したとおりに製造したマスターバッチMB4の10部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の90部と混合した。100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で厚さ100μmのフラットフィルムFF24を得た。
【0069】
実施例26
実施例6に記載したとおりに製造したマスターバッチMB6の10部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の90部と混合した。100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で厚さ100μmのフラットフィルムFF26を得た。
【0070】
実施例28
実施例8に記載したとおりに製造したマスターバッチMB8の10部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の90部と混合した。100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で厚さ100μmのフラットフィルムFF28を得た。
【0071】
比較例29
比較例9に記載したとおりに製造したマスターバッチMB9の7.14質量部をフラットフィルム押出機(Collin)で均質化し、そして成分P1の52.86部及び成分P2の40部と混合した。フラットフィルム押出機(Collin)において100rpmの回転速度及び220〜230℃の温度で厚さ100μmのフラットフィルムFF29を得た。
【0072】
【表2】