(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099227
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】高速電子ビームX線コンピュータトモグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
H01J 35/30 20060101AFI20170313BHJP
H05G 1/00 20060101ALI20170313BHJP
A61B 6/03 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
H01J35/30
H05G1/00 E
A61B6/03 320D
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-560551(P2015-560551)
(86)(22)【出願日】2014年4月2日
(65)【公表番号】特表2016-510162(P2016-510162A)
(43)【公表日】2016年4月4日
(86)【国際出願番号】DE2014000160
(87)【国際公開番号】WO2014166468
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年9月4日
(31)【優先権主張番号】102013206252.4
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512240154
【氏名又は名称】ヘルムホルツ−ツェントルム・ドレスデン−ロッセンドルフ・アインゲトラーゲナー・フェアアイン
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】バルテル・フランク
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−016525(JP,A)
【文献】
特開平07−265297(JP,A)
【文献】
特表2010−518910(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0137805(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00− 6/14
H01J 35/00−35/32
H05G 1/00− 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)電子ビーム(5)を発生する電子ビーム発生器(1)であって、真空室(2)の中に配置された電子ビーム発生器(1)と、
b)真空室(2)の中に配置された、電子ビーム(5)を制動するとともに、X線制動ビームを発生する一つのリング形状の制動ビームターゲット(4)と、
c)電子ビーム(5)を制動ビームターゲット(4)のリング形状に関して半径方向に偏向するためのコイル磁界を発生する一つ又は複数の縦コイル(3)であって、各縦コイル(3)が、リング形状の制動ビームターゲット(4)と同心に配置されており、その結果、各縦コイル(3)の軸が、制動ビームターゲット(4)のリング形状の軸と一致する縦コイル(3)と、
d)部分円又は全円形状の少なくとも一つのX線検出器円弧配列(6)と、
を有する電子ビームX線コンピュータトモグラフィ装置であって、
e)本装置は、電子ビーム(5)を縦コイル(3)の主平面の方向に発射して、電子ビーム(5)をコイル磁界内の円軌道上に押し込めるように構成され、
f)本装置は、縦コイル(3)のコイル磁界の強度を周期的に増減して電子ビーム(5)の円軌道の半径を変化させて、電子ビーム(5)が円軌道上を移動するフォーカルスポット(7)において制動ビームターゲット(4)に当たるように構成されている、
装置。
【請求項2】
X線検出器円弧配列(6)が真空室(2)の外に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
縦コイル(3)が真空室(2)内に閉じ込められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
縦コイル(3)が真空室(2)の外に配置され、真空室(2)が反磁性材料から構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
縦コイル(3)の直径がそれぞれその軸方向の長さよりも大きいことを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
電子ビーム発生器(1)、ターゲット(4)及び/又はX線検出器円弧配列(6)が軸方向に多重に配置され、縦コイル(3)が相応に軸方向の延びに渡って延びており、そのようにして同期多面トモグラフィを実現可能であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
X線検出器円弧配列(6)が制動ビームターゲット(4)の外に有ることを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
ターゲット平面が歯形に構造化されていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
電子ビーム発生器(1)が縦コイル(3)の中に有ることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
電子ビーム発生器(1)が縦コイル(3)の外に有り、電子ビームが、縦コイルの間の軸方向の隙間を通して磁界発生領域内に発射されることを特徴とする請求項1から3及び5から8までのいずれか一つに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームX線コンピュータトモグラフィ装置に関する。電子ビームX線コンピュータトモグラフィは、例えば、数年前から、特に、鼓動する心臓の画像処理のために医学診療で使用されるか、或いはプロセストモグラフィにおいて、非常に高い時間分解能及び空間分解能でフロー事象の断層画像シーケンスを生成するために使用されている。
【背景技術】
【0002】
この場合、真空室内に導入された電子ビームは、電磁偏向システムを用いて部分円形状の金属ターゲットを介して誘導され、それにより、速く移動するX線フォーカルスポットを生成している。ターゲットに対して僅かに軸方向にずらして配置された円形状又は部分円形状のX線検出器は、物体を通過して伝送されて来たX線を検出する。そして、測定データから、トモグラフィ画像再構成方法を用いることによって、透視した断面における密度分布を計算することができる。
【0003】
特許文献1は、静止した電子銃からの電子ビームを軸方向からターゲットに案内する、そのようなシステムを記載している。その場合、特許文献1に記載された装置の偏向コイルパッケージの実現可能な偏向角が制限されているので、満足できる直径のフォーカルスポット軌道を達成するためには、画像平面に対する電子銃の軸方向の大きな間隔が必要である。それは、ビーム形成及びビーム誘導時の負担を増大させ、それにより、受容体容積が大きくなるので、真空ポンプシステムの負担が増大して、検査すべき物体の軸方向における大きさを制限することとなる。更に、その装置は、電子ビームと物体が部分的に互いに邪魔になるので、トモグラフィスキャンに関する実現可能な投影角を制限している。同じことが特許文献2にも言える。特許文献3は、プロセストモグラフィで使用できる、軸方向のずれの無い高速スキャン用システムを記載している。その場合でも、前述した制限が当て嵌まり、技術的な負担を増大させている。それと同時に、軸方向から斜めにターゲットに導入される電子ビームの構造形状が、配管内のフロー検査時に、フランジ、計器、それらと同様の半径方向に突き出た部品に対する電子ビームX線コンピュータトモグラフィシステムの最小間隔を必要としている。それは、実施可能な検査物体及び検査場所の選択時にそれと関連する制限を加え、そのため、利用可能性を制限することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第4,352,021号明細書
【特許文献2】米国特許公開第2003/0161434号明細書
【特許文献3】ドイツ特許公開第102007008349号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、前記の欠点を軽減したX線コンピュータトモグラフィ装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本課題は、請求項1の特徴により解決される。本発明の実施形態は、従属請求項に詳述されている。
【0007】
本課題は、電子ビームX線コンピュータトモグラフィシステムの軸方向の構造の大きさを大幅に縮小し、その結果、このシステムが、負担のかかるビーム形成システム及びビーム誘導システム無しに動作できることによって解決される。それによって、放射線の角度範囲が拡大される。
【0008】
本発明による装置では、一つ又は複数の縦コイルを使用して、そのコイルの主平面の方向に発射された電子ビームをそのコイルの磁界内で円軌道上に押し込めている。
【0009】
このコイル対の周縁には、制動ビームターゲットと検出器リングが有る。磁界強度を周期的に増減することによって、この電子ビームの円軌道の半径を周期的に変化させ、それによって、電子ビームがターゲット壁と衝突し、その結果、フォーカルスポットがターゲットに沿って円形に移動し、そのため、制動ビーム源スポットがシステムの縦軸の周りを回転することとなる。物体は、本装置の縦軸を通って延びる。
【0010】
本発明によるX線コンピュータトモグラフィ装置の主要な利点は、このシステムの軸方向に必要な構造空間が小さくなり、それにより、狭い環境での計器及びフランジに近い非接触測定に関しても使用できることである。更に、このシステムは、非常に大きな投影角を実現し、そのことが、ターゲット/検出器の直径と比べて大きな直径の物体のアーチファクトの無い再構成を可能とする。本発明によるシステムが負担のかかるビーム形成及びビーム誘導システム無しに動作し、それにより操作に際し堅牢であることが有利である。
【0011】
本発明による装置は、
a)真空室(2)の中に配置された電子ビーム発生器(1)と、
b)電子ビームを半径方向に偏向するための一つ又は複数の縦コイル(3)と、
c)真空室の中に配置された、電子ビーム(5)を制動するとともに、X線制動ビームを発生する単一又は多数のターゲット(4)と、
d)互いに接して並べた個別検出器から成る部分円又は全円形状の少なくとも一つのX線検出器円弧配列(6)と、
を有し、
e)電子ビーム発生器(1)は、発生した電子ビーム(5)を半径方向に対して縦コイルの主平面の方向に発射できるように配置され、
f)縦コイル(3)の周縁領域内に、一つ又は複数の制動ビームターゲット(4)が同心に配置され、
g)X線検出器円弧配列(6)が、ターゲット半径の内側又は外側に配置され、
h)X線検出器平面が、ターゲット平面に対して軸方向にずらした形又はずらさない形で配置される。
【0012】
これらの縦コイルは、真空室の中又は外に配置することができる。縦コイルを真空室の外に配置する場合、真空室(2)の外壁は、有利には、反磁性材料から構成される。
【0013】
有利には、薄い縦コイルが使用される。薄い縦コイルとは、本発明の意味において、一定数又は少数の巻線だけから成るコイルである、即ち、コイルの直径がその長さよりも著しく大きい。
【0014】
一つの変化形態では、X線検出器円弧配列(6)は、真空室(2)の外に配置され、その場合、真空室(2)は、有利には、X線の僅かな減衰を保証する薄手の材料から構成される。
【0015】
特別な変化形態は、同期多面トモグラフィを実現することができる。この変化形態では、電子ビーム発生器(1)、ターゲット(4)及びX線検出器円弧配列(6)が軸方向に多重に、理想的には互いに重なり合って配置される。この縦コイルは、相応に軸方向に延びるか、或いは複数の縦コイルが使用される。
【0016】
理想的には、制動ビームターゲット(4)は、それがX線検出器円弧配列(6)の前に配置されている場合、薄い密度の材料から構成され、制動ビームターゲット(4)の内側には、大きな原子番号の材料から成る薄いX線変換層を被膜される。
【0017】
別の変化形態では、このターゲット表面は、歯形に構造化された形で実現することができる。
【0018】
この電子ビーム発生器(1)は、縦コイル(3)の中でも外でも配置することができる。電子ビーム発生器(1)を縦コイル(3)の外に配置する場合、電子ビームは、縦コイルの間の軸方向の隙間を通して磁界発生領域内に発射される。
【0019】
有利には、これらの縦コイルは対にして使用される。
【0020】
以下において、実施例により本発明を詳しく説明する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1と2は、本装置の二つの実施例を図示している。両方の場合において、本装置は、リング形状のターゲット(4)と、そのターゲット(4)の外に配置された、隣接して並んだ個別検出器から構成することができるX線検出器円弧配列(6)とを有する。この場合、X線検出器円弧配列(6)は、ターゲット(4)に対して僅かに軸方向にずらさない形でも、ずらした形でも配置することできる。
【0023】
図1は、電子ビーム発生器(1)が縦コイル(3)の中に配置された変化形態を図示している。
【0024】
この電子ビーム(5)は、真空室(2)内において、電子ビーム発生器(1)で生成されて、縦コイル(3)の磁界発生領域内でローレンツ力により円軌道上に押し込められる。コイル電流の周期的な変化と、それによる磁界強度の変化によって、電子ビーム(5)の円軌道の半径が変化し、それにより、電子ビーム(5)は、円軌道上を移動する、制動ビームを放射するフォーカルスポット(7)においてターゲット(4)に当たる。本装置の中央には、真空室(2)の外に、検査すべき物体が有り、その異なる投影角からの放射線透視像のデータセットが、検出器円弧配列(6)によって記録される。
【0025】
図2に図示された変化形態では、電子ビーム発生器(1)は、縦コイル(3)の外に有り、電子ビームは、それらの縦コイル(3)の間の軸方向の隙間を通過して磁界発生領域に進む。この装置の利点は、使用する電子ビーム発生器を容易に交換できることである。
【符号の説明】
【0026】
1 電子ビーム発生器
2 真空室
3 一つ又は複数の縦コイル
4 ターゲット
5 電子ビーム
6 X線検出器円弧配列
7 X線源スポット
8 物体