【文献】
M.Vaseem, et al.,Flower-shaped CuO nanostructures: structral, photocatalytic and XANES studies,Catalysis Communications ,2008年 7月29日,Vol.10, No.1,P.11-16
【文献】
Lu-Ping Zhu, et al.,Self-assembled 3D flower-like hierarchical beta-Ni(OH)2 hollow architectures and their in situ thermal conversion to NiO,Nanoscale Res Lett,2009年 2月27日,vol.4,P.550-557
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単結晶の触媒活性面を一面とし、触媒不活性面を側面とするナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で前記触媒活性面同士を接面させることなく集積されていると共に、
前記ナノ単結晶板材がCuOであり、前記触媒活性面が(001)面であることを特徴とするナノ単結晶板材集積触媒。
前記ナノ単結晶板材の一面の最小径が10nm以上1μm未満であり、厚さが前記最小径の1/10以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノ単結晶板材集積触媒。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点から、自動車の排ガスの毒性を低下させることが可能な触媒が注目されている。
図27は、触媒装置の一例を示す模式図である。筒状の触媒装置の筒内には、触媒が充填されている。CO、HC、NO
x等の有害なガスを前記触媒装置の筒内を通過させることにより、CO
2、H
2O、N
2等の有害ではないガスに変換できる。
【0003】
触媒としては、例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属が用いられる。しかし、これらは高価であるとともに、資源の制約があり、流通量が少ない等の問題がある。
そこで、少量で触媒活性を向上させるために、触媒反応を生じさせる表面の面積(表面積)を増大させる微細化(miniaturization)の手法が検討された。すなわち、バルク(bulk)の金属触媒を、粉末(powder)からμ結晶(microcrystal)へ、更にナノ粒子(nanoparticle)へと径を小さくして、単位量当たりの表面積(m
2/g)を増加させることにより、表面での触媒反応の発生確率を高め、触媒活性を向上させることができる。Pt(白金)からなるナノシートやナノ粒子などのナノ材料が報告されている(非特許文献1〜4)。
【0004】
しかし、ナノ粒子には互いに凝集してダマ(塊)になりやすいという問題があった。ダマ(塊)になった場合には、単位量当たりの表面積がバルクの金属触媒とほぼ同じになり、触媒活性も同程度となった。
【0005】
ダマ(塊)の問題を解決するために、SiO
2等からなる粒子状基体の表面にPt等の貴金属からなるナノ粒子を分散させた媒体も検討された。しかし、この場合も、表面上で熱凝集した。
図28は、このような媒体上の触媒の熱凝集の一例を説明する図である。例えば、
図28(a)に示すように、粒子状基体の表面にナノ粒子を分散させても、高熱下で使用すると、
図28(b)に示すように、表面上で熱凝集(thermal agglomeration)して、単位量当たりの表面積がバルクの金属触媒とほぼ同じになり、触媒活性も同程度となるという問題が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー)の一例を示す斜視図である。
【
図2】ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は構造拡大図であり、(c)は(b)のA部の図であり、(d)は(c)の矢印方向からの平面図である。
【
図3】本発明のナノ単結晶板材集積触媒の触媒反応を説明する図である。
【
図4】本発明のナノ単結晶板材集積触媒の熱凝集を説明する図である。
【
図5】ナノ単結晶板材の熱凝集を説明する図である。
【
図6】本発明のナノ単結晶板材集積触媒の製造工程の一例を説明するフローチャート図である。
【
図7】ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の別の一例を示す斜視図である。
【
図8】実施例1試料(ナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー))のHIB−SEM像である。
【
図9】
図8のB部拡大図(a)及びナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す模式図(b)である。
【
図10】ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線における断面図である。
【
図11】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒の断面HIB−SEM像である。
【
図12】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のSEM像である。
【
図14】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のTEM像(a)と、(a)のE部ED像(b)と、(a)のF部ED像(c)である。
【
図16】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒(CuO nanoflower)のXRDと、比較例1のナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル)のXRDである。
【
図17】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のXPSである。
【
図18】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のNOのTPDと温度の関係を示すグラフである。
【
図19】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のNOのTPDと温度の関係を説明する模式図である。
【
図20】比較例1のナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル:Crushed 2D−Crystalline CuO)のSEM像である。
【
図21】比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のNOのTPDと温度の関係を示すグラフである。
【
図22】比較例2のナノ粒子(Commercial CuO NPs)のSEM像である。
【
図23】比較例2のナノ粒子(Commercial CuO NPs)のNOのTPDと温度の関係を示すグラフである。
【
図24】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒と、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のCO
2信号強度(CO
2 signal intensity)とDurationの関係を示すグラフである。
【
図25】実施例1のナノ単結晶板材集積触媒と、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のSelectivityとDurationの関係を示すグラフである。
【
図26】比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)の触媒反応を説明する図である。
【
図28】従来の触媒の熱凝集の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒及びその製造方法について説明する。
【0017】
(本発明の実施形態)
<ナノ単結晶板材集積触媒>
図1は、本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー)の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒101は、複数のナノ単結晶板材11が集積されて概略構成されている。
なお、ナノ単結晶板材集積触媒101は、電子顕微鏡で、花びらのようなナノ単結晶板材11が集められ、花のような形状で観測されたので、ナノフラワーとも呼称し、それを構成するナノ単結晶板材をナノペタルとも呼称する。
【0018】
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11は、一面11aの大きさに対し、側面11cの厚さが薄い板状部材である。
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の一面11a側には、隣接するナノ単結晶板材との間にスペース(空隙部)21が形成されている。
【0019】
結晶の触媒活性面を一面とし、触媒不活性面を側面とするナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で前記触媒活性面同士を接面させることなく集積されている。これにより、熱凝集させても、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士をほとんど接面せず、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保でき、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性を高く保つことができる。
隣接するナノ単結晶板材間で一方の一面に他方の側面が接するように集積されていることが好ましい。これにより、熱凝集させても、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士をほとんど接面せず、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保できる。
【0020】
図2は、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す図であって、(a)は斜視図であり、(b)は構造拡大図であり、(c)は(b)のA部の図であり、(d)は(c)の矢印方向からの平面図である。
図2(b)に示すように、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例として、CuO単結晶を用いている。
図2(a)に示すように、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の一面11aは、単結晶の001−axisに垂直な面であり、
図2(c)の矢印に垂直な面であり、
図2(d)に示すように、CuO単結晶の4つのCuを構成単位とする面である。
【0021】
図3は、本発明のナノ単結晶板材集積触媒の触媒反応を説明する図である。
図3に示すように、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の一面11aは、次の化学反応式(1)の触媒反応を行う触媒活性面である。すなわち、CO、NOの有害なガスをCO
2、N
2の有害ではないガスに変換する。これに限られるものではなく、CO、HC、NO
x等の有害なガスをすべて、CO
2、H
2O、N
2等の有害ではないガスに変換する。
【0023】
一方、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の側面11cは次の化学反応式(2)の触媒反応を行う触媒不活性面である。すなわち、CO、NOをN
2O、CO、CO
2に変換する。CO、HC、NO
x等の有害なガスがすべて、CO
2、H
2O、N
2等の有害ではないガスに変換されるわけではなく、例えば、1/2モルのCOが変換されない。
【0025】
図4は、本発明のナノ単結晶板材集積触媒の熱凝集を説明する図である。
図4に示すように、本発明のナノ単結晶板材集積触媒101は、熱凝集させても、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士をほとんど接面せず、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保でき、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性を高く保つことができる。
【0026】
図5は、ナノ単結晶板材の熱凝集を説明する図である。
図5に示すように、ナノ単結晶板材11は、熱凝集させると、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士を接面するように集積され、触媒活性面の前のスペース(空隙部)を確保できず、熱凝集による触媒活性の低下を抑制できず、触媒活性を高く保つことができない。
【0027】
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の一面11aの最小径が10nm以上1μm未満であり、厚さが前記最小径の1/10以下であることが好ましい。これにより、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の一面11aの面積を側面11cの面積に比べて約10倍以上広くでき、単位量当たりの触媒活性をナノ粒子に比べて高めることができる。
前記最小径を1μm以上とすると、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11を高密度で集積させることができない。逆に、前記最小径を10nm未満とすると、熱凝集させた場合、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士を接面する場合が生じる。
厚さは1nm以上とすることが好ましい。厚さを1nm未満とすると、膜厚方向の剛性が低下するので、熱凝集させた場合、割れるおそれが生じる。
【0028】
図1では、12枚のナノ単結晶板材11が集積されてなるナノ単結晶板材集積触媒101を示したが、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の枚数は12枚に限られる訳ではない。
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)11の枚数は、3枚以上1000枚以下とすることが好ましい。3枚未満では、熱凝集させた場合、隣接するナノ単結晶板材11間で触媒活性面同士を接面する場合が生じる。このように複数のナノ単結晶板材11がスタッキングされた場合は、全触媒活性面の面積が小さくなるので、触媒活性を低下させる。1000枚超の場合には、ナノ単結晶板材集積触媒101の大きさが大きくなりすぎ、触媒としての取り扱いが困難になる場合が生じる。
【0029】
ナノ単結晶板材11が
Cuもしくはその合金又これらの化合物であることが好ましい。これらの材料を用いることにより、有用な触媒を形成できる。化合物とは、窒化物、酸化物等である。特に、
Cuは低価格であるので製造コストを低下させることができるとともに、資源量も豊富であるので、容易に入手して、触媒として製造することができる。
【0030】
ナノ単結晶板材としてCuOを用いることが好ましい。CuOを用いた場合には、触媒活性面として(001)面を用いる。これにより、先に記載の化学反応式(1)で示される触媒反応を効率的に行わせることができる。製造コストも低下させることができる。
【0031】
<ナノ単結晶板材集積触媒の製造方法>
図6は、本発明のナノ単結晶板材集積触媒の製造工程の一例を説明するフローチャート図である。CuOナノフラワーを製造する場合を一例としている。
図6に示すように、本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒11の製造方法は、混合工程S1と、温度・圧力印加工程S2と、を有する。
【0032】
(混合工程S1)
混合工程は、所定量の貴金属又はその合金のハロゲン化物と炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物を水溶液に溶かす工程である。
Cu又はその合金のハロゲン化物としては、例えば、CuCl
2を挙げることができる。炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物としては、例えば、尿素を挙げることができる。
【0033】
なお、前記水溶液に有機溶媒を添加してから、
Cu又はその合金のハロゲン化物と尿素を混合することが好ましい。有機溶媒としてはエチレングリコール等を用いる。水溶液に対して50モル%以下の濃度となるように有機溶媒を添加することが好ましい。これにより、溶質の分散性を高めることができる。
【0034】
(温度・圧力印加工程S2)
混合溶液に所定温度・圧力を印加して、所定時間、放置する工程である。
100℃以上300℃以下で加熱することが好ましい。100℃未満では、尿素と金属ハロゲン化物との反応を完了させることができない。300℃超では、発生する高蒸気圧に反応容器が耐えられない。
前記温度で10時間以上加熱することが好ましい。10時間未満では、未反応の材料が残留する場合が生じる。
所定の圧力とは、100℃における水の蒸気圧(1気圧)以上の圧力とすることが好ましい。
なお、所定の温度・圧力を印加するためには、例えば、圧力釜で加熱する方法を用いることができる。
【0035】
例えば、CuCl
2と尿素から、次の化学反応式(3)のように、CuOナノフラワーを製造することができる。
【0037】
以上の工程により、本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒11を製造することができる。
【0038】
図7は、ナノ単結晶板材の別の一例を示す斜視図である。
ナノ単結晶板材12は、一面12a側に凹となるように屈折線12dで屈折されている。
このようにナノ単結晶板材12が一面12a側に凹となるように屈曲又は屈折されていることが好ましい。このようなナノ単結晶板材12を、単結晶の触媒活性面を一面とし、触媒不活性面を側面とするナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で前記触媒活性面同士を接面させることなく集積されたナノ単結晶板材集積触媒を用いれば、熱凝集させても、隣接するナノ単結晶板材12間で触媒活性面同士をより接面させず、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保でき、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性を高く保つことができる。
また、剛性を高くすることができる。
【0039】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、単結晶の触媒活性面を一面とし、触媒不活性面を側面とするナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で前記触媒活性面同士を接面させることなく集積されている構成なので、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高くすることができる。
【0040】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、隣接するナノ単結晶板材間で一方の一面に他方の側面が接するように集積されている構成なので、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがほとんどなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高くすることができる。
【0041】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記ナノ単結晶板材が一面側に凹となるように屈曲又は屈折されている構成なので、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高くすることができる。
【0042】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記ナノ単結晶板材の一面の最小径が10nm以上1μm未満であり、厚さが前記最小径の1/10以下である構成なので、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高くすることができる。
【0043】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記ナノ単結晶板材の数が3枚以上1000枚以下である構成なので、熱凝集しても、触媒活性面同士が接面されることがなく、触媒活性面の前にスペース(空隙部)が確保され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高くすることができる。
【0044】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記ナノ単結晶板材が貴金属もしくはその合金又はこれらの化合物である構成なので、高触媒活性の触媒とすることができる。
【0046】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記ナノ単結晶板材がCuOであり、前記触媒活性面が(001)面である構成なので、低価格で、NO
xの高触媒活性の触媒とすることができる。
【0047】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒
において、実施例に示した製造方法
によれば、Cu又はその合金のハロゲン化物と炭酸ジアミド骨格を有する有機化合物を水溶液中で圧力を印加して加熱するハイドロサーマル反応させる構成なので、単結晶の触媒活性面を一面とし、触媒不活性面を側面とするナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で前記触媒活性面同士を接面させることなく集積され、熱凝集による触媒活性の低下を抑制でき、触媒活性が高いナノ単結晶板材集積触媒を容易に製造することができる。低価格の貴金属を用いた場合には、触媒の材料コストを低減できる。
【0048】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、水溶液に有機溶媒を添加してから、前記ハイドロサーマル反応をさせる構成なので、溶質の分散性を高め、ナノ単結晶板材集積触媒を容易に製造することができる。
【0049】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、100℃以上300℃以下で加熱する構成なので、溶質の分散性を高め、ナノ単結晶板材集積触媒を容易に製造することができる。
【0050】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒は、前記温度で10時間以上加熱する構成なので、溶質の分散性を高め、ナノ単結晶板材集積触媒を容易に製造することができる。
【0051】
本発明の実施形態であるナノ単結晶板材集積触媒及びその製造方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
<試料作成>
(混合工程S1)
まず、CuCl
2(アルドリッチ製)を用意した。
次に、尿素(アルドリッチ製)を用意した。
次に、水溶液に50モル%以下の濃度のエチレングリコールを混合して、混合溶液を調整した。
【0053】
(温度・圧力印加工程S2)
次に、混合溶液を圧力釜の内部に配置した。
次に、140℃に加熱して、14時間、放置した。
次に、室温に戻し、圧力釜から混合溶液を取り出した。混合溶液中に沈殿物(実施例1試料)が形成されていた。
【0054】
(比較例1)
実施例1試料を粉砕して、粉末(比較例1試料)を作製した。
【0055】
(比較例2)
市販の酸化銅ナノ粒子(Commercial CuO NPs)を用意して、これを比較例2試料とした。
【0056】
<試料評価>
図8は、実施例1試料(ナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー))のHIB−SEM像である。
実施例1試料(ナノ単結晶板材集積触媒(ナノフラワー))は、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)13に代表されるナノ単結晶板材(ナノぺタル)が集積されて形成されていた。
図9は、
図8のB部拡大図(a)及びナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す模式図(b)である。
図10は、ナノ単結晶板材(ナノぺタル)の一例を示す図であって、(a)は平面図であり、(b)は(a)のC−C’線における断面図である。
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)13は、板材であり、一端側と他端側がそれぞれ反対側に曲げられていた。一面13aと他面13bの面積はほぼ等しく、一面13aの面積に対して、側面13cの面積は約1/20であった。一端側は屈曲線13dで一面側に凹となるように曲げられていた。
ナノ単結晶板材(ナノぺタル)13の周りには、少なくとも23a〜23eまでのスペース(空隙部)が存在していた。
【0057】
図11は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒の断面HIB−SEM像である。
複数のナノ単結晶板材(ナノぺタル)が、スペース(空隙部)を保ちながら、集積されていた。
【0058】
図12は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のSEM像である。また、
図13は、
図12のD部拡大図である。
複数のナノ単結晶板材(ナノぺタル)が、スペース(空隙部)を保ちながら、集積されていた。
【0059】
図14は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のTEM像(a)と、(a)のE部ED像(b)と、(a)のF部ED像(c)である。また、
図15は、
図14のF部拡大図である。
ナノ単結晶板材集積触媒を構成するナノ単結晶板材(ナノぺタル)は単結晶であり、001−axisを有していた。
【0060】
図16は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒(CuO nanoflower)のXRDと、比較例1のナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル)のXRDである。
同一の2θの位置にピークが見られた。
【0061】
図17は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒のXPSである。これにより、ナノ単結晶板材集積触媒の表面のCuの化学状態(CuO−F:グラフ上側)が酸化第二銅(CuO)内部のCuの化学状態(CuO Standard:グラフ下側)と同一であることが分かった。
【0062】
図18は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒の一酸化窒素(NO)の昇温脱離(Temperature programmed desorption:TPD)信号強度(Signal Intensity)と温度の関係を示すグラフである。室温・10kPaのNOガスに試料を曝し、試料表面にNO分子を吸着させたのち、1℃/分の割合で試料温度を上昇させた。図の昇温脱離信号強度(Signal Intensity)は、温度上昇に伴って試料表面から熱脱離してくるNO分子の単位時間あたりの個数に比例しており、四重極子質量分析計により測定した。
昇温脱離信号は、379Kピークと、379Kピーク強度より小さなピーク強度を有する422Kピークの2つのピークが合成されたものであることが分かった。
図19は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒におけるNOの昇温脱離信号強度(Signal Intensity)と温度の関係を説明する模式図である。
室温(300K)では、NOはナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル)の表面に吸着する。379K(100℃)で、ナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル)の一面からNOは脱離するが、側面からは脱離しない。422K(143℃)で、ナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル)からすべてのNOが脱離する
【0063】
図20は、比較例1のナノ単結晶板材(CuO petals:ナノぺタル:Crushed 2D−Crystalline CuO)のSEM像である。
ナノ単結晶板材が、隣接するナノ単結晶板材間で触媒活性面同士を接面させて集積されるものが存在した。
【0064】
図21は、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のNOの昇温脱離信号強度(Signal Intensity)と温度の関係を示すグラフである。
得られた昇温脱離信号は、379Kピークと、379Kピーク強度より大きなピーク強度を有する422Kピークの2つのピークが合成されたものであることが分かった。
【0065】
図22は、比較例2のナノ粒子(Commercial CuO NPs)のSEM像である。ダマ(塊)になって存在した。
【0066】
図23は、比較例2のナノ粒子(Commercial CuO NPs)におけるNOの昇温脱離信号強度(Signal Intensity)と温度の関係を示すグラフである。
得られたスペクトルは、379Kピークと、379Kピーク強度より大きなピーク強度を有する422Kピークと、379Kピーク強度と同程度のピーク強度を有する510Kピークの3つのスペクトルが合成されたものであることが分かった。
【0067】
図24は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒と、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のCO
2信号強度(CO
2 signal intensity)とDurationの関係を示すグラフである。
Durationとは、試料表面が反応ガスに曝された時点をゼロとして測った経過時間である。Signal intensityとは、反応ガス組成を分析するガスクロマトグラフからの出力値であり、反応ガス中対象化学種の濃度に比例している。
図25は、実施例1のナノ単結晶板材集積触媒と、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)のSelectivityとDurationの関係を示すグラフである。
Selectivityとは、先に記載の化学反応式(2)におけるN
2OとCO
2のガスクロマトグラフからの出力値の比に比例する値である。
図26は、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)の触媒反応を説明する図である。
実施例1のナノ単結晶板材集積触媒では、
図3に示したように、一面での触媒反応が主体的であるのに対し、比較例1のナノ単結晶板材(ナノぺタル)では、
図26に示すように、側面での触媒反応が一面での触媒反応と同程度となり、
図24、25に示すような結果をもたらしたと推察した。
【0068】
<結論>
(1)ボトムアップ−ハイドロサーマル合成により、特異な(001)面を豊富に有する2D結晶CuO触媒(ナノフラワー)を合成することができた。
(2)2D結晶CuO触媒(ナノフラワー)を構成し、CuO(001)面を有する板状部は互いに、(001)面に(001)面とは異なる面が接するように立体的に配置されていて、熱凝集しても、前記(001)面で重なることがなく、NO高純度化の触媒としての選択性・効率を低下させることがなかった。
(3)2D結晶CuO触媒(ナノフラワー)は、CuOのように、貴金属を用いず、安く、豊富な材料を用いることができた。