特許第6099244号(P6099244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本プラスト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6099244-エアバッグ装置の取付体 図000002
  • 特許6099244-エアバッグ装置の取付体 図000003
  • 特許6099244-エアバッグ装置の取付体 図000004
  • 特許6099244-エアバッグ装置の取付体 図000005
  • 特許6099244-エアバッグ装置の取付体 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099244
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】エアバッグ装置の取付体
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/217 20110101AFI20170313BHJP
   B60R 21/205 20110101ALI20170313BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B60R21/217
   B60R21/205
   B60K37/00 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-212982(P2012-212982)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-65431(P2014-65431A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】酒井 直人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀伸
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−137432(JP,A)
【文献】 特開2005−096560(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0230935(US,A1)
【文献】 特開2012−056470(JP,A)
【文献】 特開2003−019939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部を備えた保持体と、この保持体に折り畳まれた状態で保持されたエアバッグと、前記保持体の底部からこの保持体の外方に突出した状態で取り付けられ底部に配線が接続されるとともに前記エアバッグにこのエアバッグを膨張展開させるガスを供給するインフレータとを具備したエアバッグ装置の前記保持体の底部を、前記エアバッグにより保護される被保護物側に前記エアバッグが対向するように被取付部材に取り付けるエアバッグ装置の取付体であって、
前記インフレータの被保護物側に位置し前記保持体の底部に取り付けられる横長平板状の形状面部と、
この形状面部の両側縁部から反被保護物側に延出して前記インフレータの両側にて前記保持体の底部に取り付けられ、前記インフレータの両側での前記保持体の底部からの高さ寸法が前記インフレータの前記保持体の底部からの突出寸法以下に設定された側面部と、
前記形状面部に対して前記形状面部の下端部から下方に向けて反被保護物側に鋭角に屈曲されて延出し前記被取付部材に取り付けられる取付面部と
を具備したことを特徴とするエアバッグ装置の取付体。
【請求項2】
形状面部にこの形状面部の両側方向と交差する高さ方向に沿って設けられた補強用のビード部
を具備したことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ装置の取付体。
【請求項3】
形状面部と両側面部のそれぞれとに亘って連続して設けられた補強用の補強ビード部
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ装置の取付体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置を被取付部材に取り付けるエアバッグ装置の取付体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のインストルメントパネルに配置される助手席乗員用のエアバッグ装置が知られている。このエアバッグ装置は、箱状をなす保持体としてのケース体を備え、このケース体の内側に、折り畳まれたエアバッグが収納されて保持されているとともに、このケース体下側の底部に、エアバッグを膨張させるガスを噴射するインフレータが取り付けられ、かつ、ケース体上側の開口部が、カバー体により覆われている。
【0003】
このエアバッグ装置は、ケース体の底部がステアリングメンバに対して取付体としての取付ブラケットを介して取り付けられ、開口部が被保護物である助手席乗員側に対向するように傾斜している。そして、自動車の衝突時には、インフレータからガスを噴射してエアバッグを膨張させ、カバー体に設けられた脆弱部であるテアラインを破断させて突出口を形成し、この突出口からエアバッグを突出させ、乗員の前方に膨張展開させて、乗員に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0004】
このようなエアバッグ装置の取付ブラケットについて、ステアリングメンバに取り付けられる取付面部と、この取付面部の上端側の両側から延出してインフレータの両側に位置し、ケース体の底部に取り付けられる側面部とを備えた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−298177号公報 (第3−5頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ケース体の底部から下方に突出するインフレータの下部には、このインフレータの動作を制御する制御回路と電気的に接続するためのハーネスが接続されるので、このハーネスの結線作業用のスペースがインフレータの下部の周囲に必要となる。そのため、取付ブラケットの両側面部をインフレータの両側部に対してそれぞれ充分に離間することが考えられる。
【0007】
しかしながら、取付ブラケットは、エアバッグの展開時の衝撃に対してエアバッグ(エアバッグ装置)自体が乗員側へと転ぶことを防止する保持機能と、エアバッグが展開していない状態で乗員側である上部からの衝撃を吸収する機能とがそれぞれ必要であるため、側面部間の距離を大きくしすぎると、これらの機能に必要な強度を構造的に得ることが容易でない。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、インフレータへの結線作業用のスペースを確保しつつ、エアバッグ装置の保持機能と被保護物側からの衝撃の吸収機能とを両立できるエアバッグ装置の取付体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載のエアバッグ装置の取付体は、底部を備えた保持体と、この保持体に折り畳まれた状態で保持されたエアバッグと、前記保持体の底部からこの保持体の外方に突出した状態で取り付けられ底部に配線が接続されるとともに前記エアバッグにこのエアバッグを膨張展開させるガスを供給するインフレータとを具備したエアバッグ装置の前記保持体の底部を、前記エアバッグにより保護される被保護物側に前記エアバッグが対向するように被取付部材に取り付けるエアバッグ装置の取付体であって、前記インフレータの被保護物側に位置し前記保持体の底部に取り付けられる横長平板状の形状面部と、この形状面部の両側縁部から反被保護物側に延出して前記インフレータの両側にて前記保持体の底部に取り付けられ、前記インフレータの両側での前記保持体の底部からの高さ寸法が前記インフレータの前記保持体の底部からの突出寸法以下に設定された側面部と、前記形状面部に対して前記形状面部の下端部から下方に向けて反被保護物側に鋭角に屈曲されて延出し前記被取付部材に取り付けられる取付面部とを具備したものである。
【0010】
請求項2記載のエアバッグ装置の取付体は、請求項1記載のエアバッグ装置の取付体において、形状面部にこの形状面部の両側方向と交差する高さ方向に沿って設けられた補強用のビード部を具備したものである。
【0011】
請求項3記載のエアバッグ装置の取付体は、請求項1または2記載のエアバッグ装置の取付体において、形状面部と両側面部のそれぞれとに亘って連続して設けられた補強用の補強ビード部を具備したものである
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載のエアバッグ装置の取付体によれば、インフレータの被保護物側に位置する形状面部の両側縁部に対して反被保護物側に延出する側面部のインフレータの両側での保持体の底部からの高さ寸法をインフレータの保持体の底部からの突出寸法以下とすることで、インフレータの底部の両側に結線作業用のスペースを確保できる。また、両側面部を可能な限り接近させることが可能となり、取付体を構造的に補強できるとともに、形状面部が保持体の底部に取り付けられているので、エアバッグが被保護物側へと展開したときに、保持体を形状面部と、この形状面部の両側から反被保護物側に延出する各側面部とでコ字状に確実に保持し、かつ、取付面部を形状面部の下端部に対して下方に向けて反被保護物側に鋭角に屈曲させて延出することにより、被保護物側から衝撃が加わった場合には取付面部と形状面部との間の位置での変形によって衝撃を効果的に吸収できる。この結果、エアバッグ装置の保持機能と被保護物側からの衝撃の吸収機能とを両立できる。
【0013】
請求項2記載のエアバッグ装置の取付体によれば、請求項1記載のエアバッグ装置の取付体の効果に加え、形状面部に両側方向と交差する高さ方向に沿って補強用のビード部を設けることで、形状面部を高さ方向に補強し、エアバッグ装置の保持機能をより向上できる。
【0014】
請求項3記載のエアバッグ装置の取付体によれば、請求項1または2記載のエアバッグ装置の取付体の効果に加え、形状面部と両側面部のそれぞれとに亘って補強用の補強ビード部を連続して設けることで、形状面部と両側面部とをより確実に補強できる
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のエアバッグ装置の取付体の一実施の形態及びこの取付体により被取付部に取り付けたエアバッグ装置を示す側面図である。
図2】同上取付体の斜視図である。
図3】同上取付体の側面図である。
図4】同上取付体を取り付けたエアバッグ装置を下方から示す平面図である。
図5】同上取付体を取り付けたエアバッグ装置を下方から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のエアバッグ装置の取付体の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1ないし図5において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、移動体である車両としての自動車の車室内のインストルメントパネルに備えられ、助手席に着座した被保護物としての保護対象である乗員を保護する助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成している。すなわち、インストルメントパネルは、助手席である座席の前方に位置し、車室の前部に車幅方向である両側方向を長手方向として配置されている。そして、このインストルメントパネルの上方には、図示しないウインドシールドとしてのフロントガラスが位置している。すなわち、このフロントガラスの下方に対向して、エアバッグ装置10が配置されている。
【0018】
そして、このエアバッグ装置10は、インストルメントパネルに設けられた四角状の開口部に備えられる図示しないカバー体と、このカバー体の裏面側に配置されるエアバッグモジュール22とを備え、このエアバッグモジュール22は、保持体24と、ケース体25を介してこの保持体24に取り付けられるエアバッグ26、図示しないリテーナ、及びインフレータ28などを備えている。また、このエアバッグ装置10は、配線Cの先端部に設けられた接続体であるコネクタハーネスHを介してインフレータ28の下部に接続される図示しない制御手段及びセンサなどを備えている。
【0019】
なお、エアバッグ装置10は、通常、曲面状のインストルメントパネルに上方から後方に向かう適宜の方向に向かって傾斜して取り付けられるものであるが、以下、自動車の直進方向に沿った方向を前方(矢印F方向)とし、後方が乗員側(矢印B方向)となり、車幅方向を両側方向として説明する。
【0020】
保持体24は、ベースなどとも呼ばれるもので、カバー体が取り付けられる部材であり、金属板をプレスなどして形成された保持体本体31と、この保持体本体31にそれぞれ溶接などにより一体的に取り付けられた(一方及び他方の)取付部32,33とを備えている。そして、この保持体24は、インストルメントパネル内に配置された他の部材を避けるようにして、取付体としての取付ブラケット35を介して車体を構成する部材であるステアリングメンバ36に、エアバッグ26側を乗員側である後側に対向させた所定の角度で傾斜状に固定されている。
【0021】
保持体本体31は、保持体24の底部である平面状(平板状)の底板部31aと、この底板部31aの前後の縁部から垂直状に立ち上げられた端板部31b,31bとを有し、側面視で上側に開口したコ字状となっている。また、底板部31aの略中央部には、図示しないが、インフレータ28の上側を挿入嵌合する円形状のインフレータ取付孔部と、このインフレータ取付孔部の周囲に位置しインフレータ28を固定するための複数、例えば4つの通孔とがそれぞれ開口されている。
【0022】
また、取付部32,33は、端板部31b,31bのそれぞれに溶接された板状の(一方及び他方の)取付部本体32a,33aと、これら取付部本体32a,33aの両側縁部から保持体本体31の両側に沿って屈曲された(一方及び他方の)側板部32b,33bと、取付部本体32a,33aの上縁部から反エアバッグ26側へとそれぞれ舌片状に突出しカバー体の下部が係止される複数の(一方及び他方の)フック部32c,33cとを一体に備えている。そして、側板部32b,33bが溶接などにより互いに接続されている。したがって、保持体24は、保持体本体31および取付部32,33によって略箱状となっており、底板部31a、端板部31b,31b(取付部本体32a,33a)、および、側板部32b,33bにより囲まれた部分が、エアバッグ収納部となっている。
【0023】
また、ステアリングメンバ36は、車幅方向に沿って延びる円筒状のステアリングメンバ本体38と、このステアリングメンバ本体38の前側下部から前方に延出する被取付部材としてのブラケット39とを備えている。そして、このブラケット39は、ステアリングメンバ本体38から前方に向けて突出する板状の突出板部39aと、この突出板部39aの上側に一体に形成された平板状の被取付板部39bとを一体に有している。この被取付板部39bは、取付ブラケット35が固定される部分であり、中央部に図示しない取付孔が開口されているとともに、車幅方向及び前後方向に沿って延び、前側へと下方に徐々に傾斜している。
【0024】
また、ケース体25は、四角形箱状に形成され、保持体本体31の内部に嵌合されている。さらに、このケース体25の底面部の略中央部には、図示しないが、インフレータ28の上側を挿入嵌合する円形状のインフレータ取付孔部と、このインフレータ取付孔部の周囲に位置しインフレータ28を固定するための複数、例えば4つの通孔とがそれぞれ開口されている。
【0025】
また、エアバッグ26は、基布を縫い合わせるなどして袋状に形成され、折り畳んだ状態で保持体24に保持されてエアバッグ収納部に収納されているとともに、図示しない開口部を下方に向けて、この開口部の周辺部がリテーナを用いてケース体25の底面部、及び、保持体24の底板部31aに保持固定されている。
【0026】
さらに、インフレータ28は、扁平な円盤状(円柱状)に形成されており、上下方向(軸方向)の中央部近傍の外周部に略四角形状のフランジ部28aが突設されている。そして、このフランジ部28aの四隅近傍に図示しないインフレータ取付孔が開口され、このインフレータ取付孔が、保持体24の底板部31aの通孔と位置合わせされて、これらインフレータ取付孔と通孔とにリテーナに突設された取付ボルト41を挿入して締め付けることで、インフレータ28が取付ブラケット35と一体的に固定される。また、インフレータ28の下部28bは、保持体24の底板部31aから下方へと所定の突出寸法D1で突出している。換言すれば、インフレータ28の保持体24の底板部31aから底部(下端部)である平面状の下面28cまでの距離が、突出寸法D1となっている。さらに、このインフレータ28の下面28cには、コネクタハーネスHがそれぞれ接続される一対の接続部28d,28dが車幅方向(左右方向)に隣接して設けられている。そして、このインフレータ28は、配線C及びコネクタハーネスHを介して制御手段から送られた制御信号に応じて、内蔵した薬剤を燃焼させ、あるいは圧縮して貯留したガスを開放などして、上側部に設けられた図示しないガス噴射口からエアバッグ26内にガスを供給するようになっている。
【0027】
また、カバー体は、リッドとも呼ばれるもので、例えば合成樹脂にて一体に形成され、インストルメントパネルに略面一に配置されて外部に露出する表板部と、この表板部の背面側である裏面側に突設されて保持体24のフック部32c,33cに係止される脚片部とを備えている。そして、表板部は、被覆部とも呼び得るもので、平面状あるいは緩やかな曲面状をなし、他の部分より容易に破断する脆弱部すなわち破断予定部であるテアライン及び必要に応じて他の部分より容易に屈曲するように形成された前後のヒンジ部により、前後一対の扉予定部と、これら扉予定部を囲む枠部とが区画形成されている。さらに、この枠部と脚片部とにより、非展開部が構成されている。
【0028】
そして、このカバー体は、脚片部を保持体24の外周部に嵌合した状態で、この脚片部に保持体24のフック部32c,33cに係止して、保持体24に取り付けられ、表板部の扉予定部の部分でエアバッグ収納部の頂部すなわち折り畳んだエアバッグ26を覆って、インストルメントパネルに位置決めされ、インストルメントパネルの表面側とカバー体の表面側とが面一すなわち滑らかに連続するように配置される。
【0029】
そして、取付ブラケット35は、ロワーブラケットなどとも呼ばれるもので、例えば金属板をプレスなどして一体形成され、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けた状態で乗員側すなわち後側に位置する形状面部45と、この形状面部45の両側縁部から反乗員側である前側へと延出する側面部46,46と、形状面部45の下端部から下方に向けて、反乗員側である前側へと屈曲して延出する取付面部47とを備えている。さらに、この取付ブラケット35には、形状面部45と取付面部47とに亘って補強用のビード部48,48が形成されているとともに、形状面部45と側面部46,46とに亘って補強用の補強ビード部49,49が形成されている。そして、この取付ブラケット35は、例えば左右対称な形状となっている。なお、この取付ブラケット35の厚み(板厚)は、本実施の形態では例えば2mm程度とするが、例えば車両の性能などに対応して、1.4mm〜2.3mm程度の厚みとすることができる。
【0030】
形状面部45は、取付体本体(ブラケット本体)とも呼ぶべきもので、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けた状態で車幅方向(左右方向)に沿って延びる、すなわち横長の平板状に形成され、保持体24の底板部31aから下方に突出するインフレータ28の下部28bの乗員側である後側に離間されて対向している。また、この形状面部45の上縁部には、平板状の延出部45aが反乗員側である前側へと略垂直状に屈曲されて延出しており、この延出部45aの先端側である前端の両側縁部に、取付ボルト41,41によって保持体24の底板部31aにインフレータ28(フランジ部28a)とともに取り付けられる被取付孔45b,45bを備えた舌片状の取付片部45c,45cが前側に向けて延出している。したがって、この被取付孔45b,45bに取付ボルト41,41が挿入されて保持体24の底板部31aに締め付け固定されることで、形状面部45の上部(延出部45a)が保持体24の底板部31aに固定されるようになっている。
【0031】
また、側面部46,46は、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けた状態で前後方向に沿って延びる、すなわち前後方向に長手状の平板状に形成され、形状面部45に対して前方に略垂直状に屈曲されて突出しており、保持体24の底板部31aから下方に突出するインフレータ28の下部28bの左右両側に離間されてそれぞれ対向している。したがって、取付ブラケット35は、形状面部45と、側面部46,46とにより、上方、あるいは下方から見た平面視で前側が開口したコ字状となっている。さらに、各側面部46は、形状面部45の両側縁部から前方へと、形状面部45の面方向に対して上方に僅かに傾斜状に突出する突出側面部としての傾斜側面部46aと、これら傾斜側面部46aの先端である前端から形状面部45の面方向に対して略垂直状に突出してインフレータ28の両側に位置するインフレータ対向部としての側面突出部46bとを一体にそれぞれ備えている。そして、各側面突出部46bの上縁部には、取付ボルト41によって保持体24の底板部31aにインフレータ28(フランジ部28a)とともに取り付けられる被取付孔46cを備えた舌片状の側面取付片部46dがエアバッグ26側に向けて略垂直状に屈曲されて延出している。
【0032】
ここで、各側面部46のインフレータ28の両側での保持体24の底板部31aからの高さ寸法(上下寸法)D2、換言すれば側面突出部46bでの高さ寸法D2は、保持体24の底板部31aに対するインフレータ28の下面28cの下方への突出寸法D1以下(D2≦D1)、本実施の形態ではこの突出寸法D1よりも小さく(D2<D1)設定されている。したがって、これら側面部46の下縁部は、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けた状態でインフレータ28の下面28cよりも上方に位置している。換言すれば、インフレータ28の下面28cは、車幅方向(左右方向)からの側面視で、各側面部46の側面突出部46bでの下縁部から下方に突出している。また、各傾斜側面部46aの上下縁部は、形状面部45の上下端に対してそれぞれ離間されている。すなわち、各傾斜側面部46aの高さ寸法は、形状面部45の高さ寸法よりも小さく設定されている。
【0033】
また、取付面部47は、平板状に形成され、形状面部45に対して前方に屈曲されて鈍角の所定の角度θ(>90°)をなしており、形状面部45の車幅方向(左右方向)の中央部から舌片状に突出している。すなわち、形状面部45及び取付面部47は、車幅方向(左右方向)から見た側面視でく字状となっている。このように形状面部45と取付面部47とが屈曲しているため、取付ブラケット35は、取付面部47の基端側、すなわち形状面部45との連結部である上端部において、取付面部47の先端側(下端側)が形状面部45に対して相対的に上方へと移動して離反する方向、すなわち角度θが大きくなる方向に変形しにくく、取付面部47の先端側(下端側)が形状面部45に対して相対的に下方へと移動して接近する方向、すなわち角度θが小さくなる方向へと変形しやすい構造となっている。
【0034】
さらに、取付面部47は、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けた状態で、形状面部45との連結部である上端部がインフレータ28の下面28cよりも下方に位置している。このため、取付面部47は、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36に取り付けた状態でインフレータ28の後側の下方に位置している。また、この取付面部47の略中央部には、この取付面部47をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に取り付けるための取付孔47aが開口されている。そして、この取付面部47をステアリングメンバ36のブラケット39(被取付板部39b)に沿わせた状態で、取付孔47aにボルト51が挿入されてブラケット39(被取付板部39b)に締め付け固定されることで、取付ブラケット35がステアリングメンバ36に取り付け固定されるようになっている。
【0035】
また、取付面部47の先端部である下端部の中央部には、上方へと屈曲された折返部47bが延出している。
【0036】
また、ビード部48,48は、それぞれ形状面部45の両側方向と交差する高さ方向である上下方向に沿って溝状に形成されており、形状面部45及び取付面部47の車幅方向(左右方向)の中央部に互いに離間されて配置され、上端部が形状面部45の上端部(延出部45aとの連結部)に位置し、下端部が形状面部45と取付面部47との連結部を超えて取付面部47の上端部近傍に位置している。さらに、これらビード部48,48は、形状面部45及び取付面部47を構成する板材、すなわち取付ブラケット35を構成する金属板を溝状に変形させることで形成されており、これら形状面部45及び取付面部47の前側に突出している。
【0037】
また、補強ビード部49,49は、それぞれ形状面部45の高さ方向の中心近傍から、この高さ方向に対して交差する略水平方向に沿って溝状に形成されており、形状面部45の両側縁部近傍から側面部46,46の前後方向の略中間の位置に亘って連続している。すなわち、これら補強ビード部49,49は、一端側が形状面部45の高さ方向の中央部にて取付片部45c,45cの後方に位置し、他端側が側面部46,46の傾斜側面部46a,46aと側面突出部46b,46bとの連結部を超えて側面突出部46b,46bの後端近傍に位置している。さらに、これら補強ビード部49,49は、形状面部45及び側面部46,46を構成する板材、すなわち取付ブラケット35を構成する金属板を溝状に変形させることで形成されており、形状面部45の位置で前側に突出し、側面部46,46の位置でエアバッグ26側に突出している。
【0038】
そして、エアバッグ装置10をステアリングメンバ36に取り付ける際には、まず、エアバッグ装置10の保持体24の底板部31aのインフレータ取付孔部にインフレータ28の上側を挿入嵌合する。次いで、保持体24の底板部31aの通孔に対して、インフレータ28のインフレータ取付孔をそれぞれ位置合わせするとともに、取付ブラケット35の被取付孔45b,46cを位置合わせし、これら被取付孔45b,46c、保持体24及びケース体25のインフレータ取付孔及び通孔のそれぞれに亘って、エアバッグ26の内部に挿入されたリテーナの取付ボルト41を挿通させて保持体24の保持体本体31の底板部31aの下方へと突出させ、締め付ける。この結果、インフレータ28と取付ブラケット35とが一体的に保持体24の底板部31aに固定される。この状態で、取付ブラケット35は、形状面部45がインフレータ28の下部28bの前側に離間されて位置し、側面部46,46がインフレータ28の下部28bの下面28cよりも上方の位置でこのインフレータ28の下部28bの側部に離間されて位置し、取付面部47がインフレータ28の下部28b(下面28c)の下方の前側に離間されて位置する。
【0039】
そして、取付ブラケット35を、この取付ブラケット35を一体的に固定したエアバッグ装置10とともに車内の取付位置、例えばインストルメントパネルの内部などに持ち込み、保持体24の底板部31aから下方に露出するインフレータ28の下面28cの各接続部28dに対して、制御手段及びセンサ側と電気的に接続された配線Cの先端部のコネクタハーネスHをそれぞれ挿入接続する。このとき、取付ブラケット35の側面部46,46が、インフレータ28の下面28cよりも上方に位置しているため、これら側面部46,46がコネクタハーネスHの接続作業、すなわち結線作業を妨げることがない。
【0040】
この後、取付ブラケット35の取付面部47の取付孔47aをステアリングメンバ36のブラケット39の被取付板部39bの取付孔と位置合わせして、これら取付孔47a及び取付孔に亘ってボルト51を挿入して締め付けることで、取付ブラケット35がステアリングメンバ36のブラケット39に固定され、この取付ブラケット35を介して、エアバッグ装置10がステアリングメンバ36のブラケット39に固定される。この状態で、エアバッグ装置10は、カバー体がインストルメントパネルの開口部に嵌合し、エアバッグ26側が乗員側である後側に傾斜している。また、取付ブラケット35は、取付面部47がブラケット39の被取付板部39bに沿って前側へと下方に傾斜し、形状面部45がエアバッグ26の突出方向に沿って、後側へと上方に傾斜している。
【0041】
そして、エアバッグ装置10のエアバッグ26が膨張展開していない状態で、例えばインストルメントパネルに乗員側から衝撃が加わった場合などには、この衝撃によりエアバッグ装置10に対して下方に向けて外力(矢印X)が加わる。すると、取付ブラケット35の形状面部45と取付面部47との連結部に応力が集中し、この位置で取付ブラケット35のエアバッグ装置10側、すなわち形状面部45及び側面部46側が取付面部47に対して接近するように前側下方、すなわち反乗員側へと屈曲する(図3の想像線に示す)、換言すれば形状面部45と取付面部47とがなす角度θが小さくなるように変形することで、衝撃を吸収緩和する(衝撃吸収機能)。
【0042】
また、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、センサが検出した衝撃に基づき制御手段がインフレータ28を起動し、このインフレータ28から供給されるガスによりエアバッグ26を膨出させ、この膨出する圧力によりカバー体のテアラインを破断する。すると、扉予定部から前後の扉部が形成され、これら扉部を、ヒンジ部を支点として前後に展開させて突出口を形成し、この突出口からエアバッグ26を乗員の前方に展開させる。そして、このように膨張展開したエアバッグ26により、前方に投げ出されてくる乗員を迅速に拘束して保護できる。
【0043】
このとき、取付ブラケット35には、エアバッグ26の展開方向である後方上側、すなわち正面方向に向けて外力(矢印Y)が加わるが、取付ブラケット35は形状面部45及び各側面部46が保持体24の保持体本体31の底部31aにそれぞれ取り付けられているとともに、形状面部45及び各側面部46にビード部48及び補強ビード部49が設けられているので、保持体24(エアバッグ装置10)を形状面部45及び各側面部46によって後部及び両側部にてコ字状に強力に保持する。したがって、取付ブラケット35が形状面部45と取付面部47とがなす角度θが大きくなるように変形しにくいとともに、エアバッグ26の展開により生じるねじれ方向の力(一方の側面部46を他方の側面部46よりも後方上側に移動させようとする力)に対しても保持体24を確実に保持するため、エアバッグ装置10を乗員側へと転ばせることなく保持したままの状態を維持する(保持機能)。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、インフレータ28の乗員側に位置する形状面部45に対して反乗員側に延出する側面部46,46のインフレータ28の両側での高さ寸法D2をインフレータ28の保持体24の底板部31aからの突出寸法D1以下とすることで、インフレータ28の下面28cの両側に結線作業用のスペースを確保できる。また、両側面部46,46がインフレータ28の結線の邪魔にならないので、これら両側面部46,46を可能な限り接近させることが可能となり、取付ブラケット35を構造的に補強できる。
【0045】
すなわち、インフレータ28の下面28cの接続部28d,28dに対して配線Cの先端のコネクタハーネスHを接続する際には、作業者がコネクタハーネスHを掴んだ手をインフレータ28の下面28cへと接近させる必要があるため、インフレータ28の下面28cの特に両側方にスペースが必要になる。この点、本実施の形態では、側面部46,46の下縁部がインフレータ28の下面28cよりも上方に位置しているので、側面部46,46の位置に拘らずインフレータ28の下面28cの両側方に充分なスペースを確保でき、結線作業の際に側面部46,46が邪魔になることがない。そのため、本実施の形態の取付ブラケット35では、側面部46,46をインフレータ28の両側に接近させる、すなわち側面部46,46間の距離を可能な限り接近させることができるから、取付ブラケット35の強度を構造的に向上でき、エアバッグ装置10の保持機能を確保できる。したがって、取付ブラケット35は、別途の部材などを用いることなく構造的(形状的)に強度を向上できるので、安価に製造できるとともに、側面部46,46を互いに接近させたコンパクトな形状となるので、軽量化が可能になる。
【0046】
特に、本実施の形態のインフレータ28のように、複数の接続部28d,28dを車幅方向に有する場合には、コネクタハーネスHを接続する位置がインフレータ28の両側縁近傍となるため、そのコネクタハーネスHを掴んだ作業者の手がインフレータ28の外郭よりも側方にはみ出しやすく、インフレータ28の下面28cの両側方により大きなスペースが必要になるものの、本実施の形態の取付ブラケット35では、側面部46,46の下縁部がインフレータ28の下面28cよりも上方に位置しているため、接続部28d,28dを有するインフレータ28を用いる場合であっても容易に対応できる。
【0047】
また、取付ブラケット35は、強度を構造的に向上しながら、取付面部47を形状面部45に対して反乗員側に屈曲させて延出することにより、乗員側から衝撃が加わった場合には取付面部47と形状面部45との間の連結部での変形によって衝撃を効果的に吸収できる。
【0048】
この結果、エアバッグ装置10の保持機能と乗員側からの衝撃の吸収機能とを両立できる。
【0049】
また、形状面部45に高さ方向に沿って補強用のビード部48,48を設けることで、形状面部45を高さ方向に補強し、取付ブラケット35のエアバッグ装置10の保持機能をより向上できる。
【0050】
さらに、形状面部45と両側面部46,46のそれぞれとに亘って補強用の補強ビード部49,49を高さ方向と交差する方向に連続して設けることで、形状面部45と両側面部46,46とをより確実に補強できる。
【0051】
そして、形状面部45と両側面部46,46とをそれぞれ保持体24の保持体本体31の底部31aに取り付けることで、エアバッグ26が乗員側へと展開したときに、保持体24を形状面部45と、この形状面部45の両側から反乗員側に延出する各側面部46,46とでコ字状に確実に保持し、取付ブラケット35のエアバッグ装置10の保持機能をより向上できる。しかも、形状面部45は、ビード部48及び補強ビード部49によって高さ方向及びこの高さ方向と交差する方向にそれぞれ補強されているので、この形状面部45によって、エアバッグ装置10を強力に保持できる。
【0052】
なお、上記の一実施の形態において、ビード部48,48及び補強ビード部49,49は、取付ブラケット35の強度が充分に確保できれば、設けない構成としてもよい。
【0053】
また、取付ブラケット35は、インストルメントパネルに備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置10の取り付けの他、自動車あるいは他の移動体などの適宜の位置に設置されるエアバッグ装置の取り付けに適用できる。例えば、後部座席の後方で、ウインドシールドであるリアガラスに対向して配置されるエアバッグ装置の取り付けに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、例えば自動車の助手席用のエアバッグ装置を車体側に取り付けるエアバッグ装置の取付体として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 エアバッグ装置
24 保持体
26 エアバッグ
28 インフレータ
31a 底部である底板部
35 取付体としての取付ブラケット
39 被取付部材としてのブラケット
45 形状面部
46 側面部
47 取付面部
48 ビード部
49 補強ビード部
C 配線
図1
図2
図3
図4
図5