(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099261
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】建屋の建築方法及び構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/343 20060101AFI20170313BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
E04B1/343 J
E02D27/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-53764(P2013-53764)
(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公開番号】特開2014-177848(P2014-177848A)
(43)【公開日】2014年9月25日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022920
【氏名又は名称】株式会社アスカ設計
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】秋元 稔夫
【審査官】
星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−144350(JP,A)
【文献】
実開昭53−119704(JP,U)
【文献】
特開2003−147779(JP,A)
【文献】
特開2003−119955(JP,A)
【文献】
特開2003−064806(JP,A)
【文献】
特開昭48−016408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 1/348
E02D 27/00
E02D 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記する工程(a)〜(e)を有することを特徴とする建築物の建築方法。
(a)建設予定地の床用地面の基礎形成部分に所定の深さを有する上面四角形状の基礎用周回溝を掘る工程、
(b)前記基礎用周回溝に砕石を敷く工程、
(c)前記砕石を敷いた前記基礎用周回溝に鉄筋及び/又は鉄骨を周回状に載置し、コンクリートを打設することにより、弾性支承連続基礎梁を作成すると共に、アンカーボルトが等間隔で型板に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材を立設せしめてアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁を作成する工程、
(d)3mm以下の鉄板を用いた超軽量中空鉄骨材で構成された超軽量中空鉄骨枠材であり、前記超軽量中空鉄骨枠材を構成する前記超軽量中空鉄骨材の少なくとも一面にボルトを通すための貫通孔を有し、前記超軽量中空鉄骨材には、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられており、且つ前記貫通孔内部にパイプ管が挿入せしめられてなる複数の超軽量中空鉄骨枠材を、前記弾性支承連続基礎梁上に立設せしめて、アンカーボルトで固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材同士をボルトで連結固定せしめて壁の骨組みを構築する工程、
(e)前記骨組みに壁パネルを取り付け、前記骨組み上に屋根を取り付ける工程。
【請求項2】
建設予定地の床用地面の基礎形成部分に所定の深さを有して形成された弾性支承連続基礎梁にアンカーボルトが等間隔で型板に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材を立設せしめられたアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁と、
3mm以下の鉄板を用いた超軽量中空鉄骨材で構成された超軽量中空鉄骨枠材であり、前記超軽量中空鉄骨枠材を構成する前記超軽量中空鉄骨材の少なくとも一面にボルトを通すための貫通孔を有し、前記超軽量中空鉄骨材には、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられており、且つ前記貫通孔内部にパイプ管が挿入せしめられてなる複数の超軽量中空鉄骨枠材を、前記アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁上に立設せしめて、アンカーボルトで固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材同士をボルトで連結固定せしめて構築された壁の骨組みと、
前記骨組みに取り付けられた壁パネルと、
前記骨組み上に取り付けられた屋根と、
から構成されることを特徴とする建築物の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、店舗やガソリンスタンドの事務所棟などの建屋を従来工法による建屋と同様の機能及び安全性を確保し、短期間で、かつ安価に建築することを可能とする建屋の建築方法及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本願出願人は、ガソリンスタンドの事務所棟などの建築方法として、例えば、特許文献1に記載された建築方法を提案している。
【0003】
また、本願出願人は、チェーンストア展開する店舗やコンビニエンスストアに好適な分解可能な建築構造として、特許文献2に記載された分解可能な建築構造も提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2620035公報
【特許文献2】登録実用新案公報第3150342公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願出願人は、さらに鋭意検討を重ねた結果、ガソリンスタンドの事務所棟を含め、チェーンストア展開する店舗やコンビニエンスストアにも好適に使用でき、従来工法による建築方法と同様の機能及び安全性を有し、短期間で且つ安価に建築する方法及び構造を見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、従来工法による建築方法と同様の機能及び安全性を有し、短期間で且つ安価に建築する建築物の建築方法及び構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の建築物の建築方法は、下記する工程(a)〜(e)を有することを特徴とする。
(a)建設予定地の床用地面の基礎形成部分に所定の深さを有する上面四角形状の基礎用周回溝を掘る工程、
(b)前記基礎用周回溝に砕石を敷く工程、
(c)前記砕石を敷いた前記基礎用周回溝に鉄筋及び/又は鉄骨を周回状に載置し、コンクリートを打設することにより、弾性支承連続基礎梁を作成すると共に、アンカーボルトが等間隔で型板に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材を立設せしめてアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁を作成する工程、
(d)3mm以下の鉄板を用いた超軽量中空鉄骨材で構成された超軽量中空鉄骨枠材であり、前記超軽量中空鉄骨枠材を構成する前記超軽量中空鉄骨材の少なくとも一面にボルトを通すための貫通孔を有し
、前記超軽量中空鉄骨材には、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられており、且つ前記貫通孔内部にパイプ管が挿入せしめられてなる複数の超軽量中空鉄骨枠材を、前記弾性支承連続基礎梁上に立設せしめて、アンカーボルトで固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材同士をボルトで連結固定せしめて壁の骨組みを構築する工程、
(e)前記骨組みに壁パネルを取り付け、前記骨組み上に屋根を取り付ける工程。
【0008】
なお、前記基礎用周回溝に砕石を敷いた後に必要に応じて捨てコンクリートを打設する。また、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁の作成と共に、床用コンクリートを打設するようにするのが好ましい。
【0009】
軽量鉄骨は6mm未満の鉄板で構成されているが、本発明の建築物の建築方法では、3mm以下の鉄板で構成された超軽量中空鉄骨材を用いており、超軽量中空鉄骨材を用いた超軽量中空鉄骨枠材を弾性支承連続基礎梁と組み合わせることで、従来よりも軽量化及び簡素化を実現している。
【0010】
また、本発明の建築物の建築方法では、主に従来のような建築物の鉄骨工事が不要となるため、直接工事費の削減に繋がるという利点がある。
【0011】
また、工期の短縮となるため、施設稼働日数の伸張に繋がるという利点もある。
【0012】
さらに、かなりの確率で地盤の支持杭の工事が不要になる。これは、上記した主に従来のような建築物の鉄骨工事が不要となることによる、直接工事費の削減と併せて、借地返還時の原状回復費の削減に繋がるという利点がある。
【0013】
さらにまた、本発明の建築物の建築方法では、上記した超軽量中空鉄骨材を用いた超軽量中空鉄骨枠材の再利用を前提とした工法となっており、規格化された店舗での部材転用が可能となるという利点もある。すなわち、本発明の建築物の建築方法は、借地返還時の費用削減、部材の再利用も可能であり、ローコストで再利用することができる工法である。
【0014】
前記超軽量中空鉄骨材が、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられているのが好ましい。ボルトを締緩するための作業穴が設けられていることで、作業のし易さが確保されるからである。
【0015】
本発明の建築物の構造は、建設予定地の床用地面の基礎形成部分に所定の深さを有して形成された弾性支承連続基礎梁にアンカーボルトが等間隔で型板に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材を立設せしめられたアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁と、3mm以下の鉄板を用いた超軽量中空鉄骨材で構成された超軽量中空鉄骨枠材であり、前記超軽量中空鉄骨枠材を構成する前記超軽量中空鉄骨材の少なくとも一面にボルトを通すための貫通孔を有し
、前記超軽量中空鉄骨材には、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられており、且つ前記貫通孔内部にパイプ管が挿入せしめられてなる複数の超軽量中空鉄骨枠材を、前記アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁上に立設せしめて、アンカーボルトで固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材同士をボルトで連結固定せしめて構築された壁の骨組みと、前記骨組みに取り付けられた壁パネルと、前記骨組み上に取り付けられた屋根と、から構成されることを特徴とする。
【0016】
本発明の建築物の構造は、上記した本発明の建築物の建築方法の利点を有するものである。
【0017】
また、前記超軽量中空鉄骨材が、前記貫通孔が設けられた面とは他方の面に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の建築物の建築方法及び構造によれば、従来工法による建築方法と同様の機能及び安全性を有し、短期間で且つ安価に建築する建築物の方法及び構造を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の建築方法で建築物を建築している途中の状態を示す要部斜視図である。
【
図2】アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁を作成している途中の状態を示す要部斜視図である。
【
図3】アンカーボルト型板部材の一つの実施の形態を示す要部斜視図である。
【
図4】アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁の概略断面図である。
【
図5】アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁の凸端部の要部拡大図である。
【
図6】超軽量中空鉄骨枠材の一つの実施の形態を示す斜視図である。
【
図7】弾性支承連続基礎梁上に超軽量中空鉄骨枠材を立設せしめてアンカーボルトで固定した状態を示す要部断面図である。
【
図8】超軽量中空鉄骨枠材同士を連結固定せしめた状態を示す正面図である。
【
図10】アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁上に超軽量中空鉄骨枠材を立設せしめ、且つ超軽量中空鉄骨枠材同士を連結固定せしめて壁の骨組みを構築した状態を示す要部斜視図である。
【
図11】前記骨組みに壁パネルを取り付けている状態を示す要部斜視図である。
【
図12】本発明の建築方法で建築した建築物を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。図示において、同一部材は同一符号であらわされる。
【0021】
図1は本発明の建築方法で建築物を建築している途中の状態を示す要部斜視図である。
図1において、符号12は、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁であり、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁12は、
図2及び
図4によく示されるような弾性支承連続基礎梁26にアンカーボルト16が等間隔で型板に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材10を立設せしめて形成されている。
【0022】
アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁12上に、超軽量中空鉄骨枠材14を立設せしめて、アンカーボルト16で固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材14同士をボルトで連結固定せしめて壁の骨組み18が構築されている。骨組み18には、壁パネル20が取り付けられており、前記壁パネル20を骨組み18を覆うように全て取り付け、前記骨組み上に屋根を取り付けることで本発明の建築物の構造となる。以下に本発明の建築物の建築方法を詳述する。
【0023】
図2はアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁を作成している途中の状態を示す要部斜視図、
図3はアンカーボルト型板部材の一つの実施の形態を示す要部斜視図、
図4はアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁の概略断面図である。
【0024】
建設予定地の床用地面Gの基礎形成部分に所定の深さを有する上面四角形状の基礎用周回溝22を掘り、前記基礎用周回溝22に砕石24を敷いて、前記砕石24を敷いた前記基礎用周回溝22に鉄筋及び/又は鉄骨28(図示例では鉄筋)を周回状に載置し、コンクリートを打設することにより、弾性支承連続基礎梁26を作成すると共に、アンカーボルト16が等間隔で型板15に固定突出せしめられたアンカーボルト型板部材10を立設せしめてコンクリートを打設しアンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁12が作成される。
【0025】
なお、
図2及び
図4において、符号25は捨てコンクリートである。また、
図4において、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁12の作成と共に、床用コンクリート27が打設されている。
【0026】
アンカーボルト型板部材10は、
図3によく示される如く、アンカーボルト16が等間隔で型板15に固定突出せしめられてなる部材である。
図3において、アンカーボルト16同士の間隔Dは等間隔とされている。なお、
図2の例では、型板15の端部17が曲折せしめられているが、必要に応じて曲折せしめられればよいものであり、
図3のように曲折していない形状としてもよい。
【0027】
そして、アンカーボルト型板部材10を立設せしめてコンクリートを打設することで、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁12の端部には、
図4及び
図5によく示されるように、凸端部19が形成される。凸端部19は、型板15がコンクリート内に埋まっている。
【0028】
なお、アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁26は、基礎の役目を果たすと共に梁の役目を果たすため、本願明細書において弾性支承連続基礎梁と呼称する。
【0029】
また、超軽量中空鉄骨枠材14の一つの実施の形態を
図6に示す。
図6において、符号14は、超軽量中空鉄骨枠材を示す。超軽量中空鉄骨枠材14は、3mm以下の鉄板を用いた超軽量中空鉄骨材36で構成されており、前記超軽量中空鉄骨枠材14を構成する前記超軽量中空鉄骨材36の少なくとも一面38にボルトを通すための貫通孔40を有し且つ前記貫通孔40内部にパイプ管42が挿入せしめられてなる。また、前記貫通孔40が設けられた一面38の前記貫通孔40の周囲には、補強のための鉄板43が取り付けられている。なお、パイプ管42は鉄製の鋼管である。また、超軽量中空鉄骨材36は2.3mmの鉄板で構成した角材を使用した。
【0030】
また、前記超軽量中空鉄骨材36が、前記貫通孔40が設けられた面38とは他方の面44に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴46が設けられている。なお、超軽量中空鉄骨枠材14には、筋交い48が設けられている。
【0031】
そして、複数の超軽量中空鉄骨枠材14を、前記弾性支承連続基礎梁12上に立設せしめて、アンカーボルト16で固定せしめ、且つ前記超軽量中空鉄骨枠材14同士をボルトで連結固定せしめて壁の骨組み18を構築する。超軽量中空鉄骨枠材14を、前記弾性支承連続基礎梁12上に立設せしめてアンカーボルト16で固定せしめた状態を
図7に示す。なお、
図7において、符号34はナット、符号50はワッシャーを示す。
【0032】
超軽量中空鉄骨枠材14同士を連結固定せしめた状態を
図8及び
図9に示す。
図8及び
図9によく示される如く、複数の超軽量中空鉄骨枠材14は、鉄板43を介してボルト52で連結固定されている。なお、
図9において、符号32はナット、符号54はワッシャーを示す。また、
図9によく示されるように、前記超軽量中空鉄骨材36には、前記貫通孔40が設けられた面38とは他方の面44に、手を入れてボルトを締緩するための作業穴46が設けられている。
【0033】
そして、
図10及び
図11に示される如く、構築された壁の骨組み18に壁パネル20を取り付け、前記骨組み18上に屋根を取り付ける。
【0034】
このようにして、
図12に示される如く、本発明に係る建築物56の構造が完成する。
図12の例では、コンビニエンスストアの例を示した。本発明に係る建築物の建築方法では、従来では、80日〜120日程度必要としていた工期が40日〜60日と約半分になる。また、3mm以下の超軽量鉄骨を使用するため、従来よりも鉄骨量を削減することができ、コスト削減となるとともに省資源にも寄与することとなる。
【符号の説明】
【0035】
10:アンカーボルト型板部材、12:アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁、14:超軽量中空鉄骨枠材、15:型板、16:アンカーボルト、17:型板の端部、18:骨組み、19:アンカーボルト付き弾性支承連続基礎梁の凸端部、20:壁パネル、22:基礎用周回溝、24:砕石、25:捨てコンクリート、26: 弾性支承連続基礎梁、27:床用コンクリート、28:鉄筋及び/又は鉄骨、32,34:ナット、36:超軽量中空鉄骨材、38:貫通孔を有する面、40:貫通孔、42:パイプ管、43:鉄板、44:他方の面、46:作業穴、48:筋交い、50,54:ワッシャー、52:ボルト、56:建築物、D:アンカーボルトの間隔、G:床用地面。