(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099276
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】ミキサ車のドラム補修パネルおよびドラム
(51)【国際特許分類】
B28C 5/42 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
B28C5/42
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-227732(P2014-227732)
(22)【出願日】2014年11月10日
(65)【公開番号】特開2016-88012(P2016-88012A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2014年11月10日
【審判番号】不服2015-8652(P2015-8652/J1)
【審判請求日】2015年5月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509042389
【氏名又は名称】三和石産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】中田 泰司
【合議体】
【審判長】
大橋 賢一
【審判官】
新居田 知生
【審判官】
中澤 登
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−347508(JP,A)
【文献】
特開平8−282782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P3/16
B65D88/12
B28C5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドプレートと、該ヘッドプレートに接続されているフロントシェルと、該フロントシェルに接続されているセンタシェルと、該センタシェルに接続されているリアシェルとから形成されている鋼板製のミキサ車のドラムを補修する補修パネルであって、
前記補修パネルはFRPから形成されると共に第1の形状の補修パネルを備え、
前記第1の形状の補修パネルは、前記ヘッドプレートと前記フロントシェルと前記センタシェルと前記リアシェルのそれぞれ一部に対応するヘッドプレート部とフロントシェル部とセンタシェル部とリアシェル部とからなりこれらが一体的に形成されており、
複数枚の前記第1の形状の補修パネルを前記ドラムに円周方向に並べて貼り合わせると、前記ヘッドプレートの少なくとも一部と前記フロントシェルと前記センタシェルと前記リアシェルの少なくとも一部が被覆されるようになっていることを特徴とするミキサ車のドラムの補修パネル。
【請求項2】
請求項1に記載の補修パネルは第2の形状の補修パネルを備え、前記第2の形状の補修パネルは前記リアシェルの一部に対応するように形成され、複数枚の前記第2の形状の補修パネルを前記リアシェルに円周方向に並べて貼り合わせると前記リアシェルの少なくとも一部が円周方向に渡って被覆されるようになっていることを特徴とするミキサ車のドラムの補修パネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の補修パネルがその外周面に貼り合わせられて補修されたミキサ車のドラム。
【請求項4】
請求項3に記載のミキサ車のドラムであって、前記補修パネルは所定厚さの両面接着シートによって前記ドラムに貼り合わされ、このとき前記補修パネルと前記ドラムの間には前記両面接着シートが貼付されない所定面積の隙間が確保されるようにし、前記隙間に断熱シートが入れられていることを特徴とするミキサ車のドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを運搬するミキサ車のドラムにおいて、摩耗、劣化等により穴が開いたり鋼板が薄くなったドラムを補修する補修材、および補修材によって補修されたドラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バッチャープラントにおいて製造されるコンクリートは、ミキサ車のドラムに入れられて工事現場まで搬送される。ドラムは鋼板から溶接によって容器状に形成されており、後方の端部は開口している。ドラム内部には螺旋状のブレードが設けられており、コンクリートが入れられた状態でドラムを一方の方向に回転するとドラム内でコンクリートを攪拌することができ、これによってコンクリートの劣化や凝固を抑制して工事現場まで搬送することができる。また他方の方向に回転するとドラムの後方の開口部からコンクリートを排出できる。
【0003】
ドラムはこのようにコンクリートを入れた状態で回転させるので、ドラム内壁に沿ってコンクリートが流動する。ドラムは前記したように鋼板から形成されているので摩耗に対して比較的耐性を備えてはいるが、コンクリートの流動によって少しずつ摩耗が進行する。ドラムの鋼板は例えば3.2mm程度の厚さしかないので、10年前後ドラムを使用すると鋼板が薄くなる。ドラム内に投入されるコンクリートに含まれている骨材が砕石からなる場合には摩耗が進行し易く、さらに早期に鋼板が薄くなる。薄くなることによって、自然にドラムに穴が開くこともあるし、洗浄作業によって穴が開くこともある。ドラムはコンクリートを排出したら、その都度ドラム内に付着しているコンクリートを洗浄によって除去してドラムの劣化を防止する洗浄作業が必要であるが、鋼板が薄いと清掃用具によって誤って鋼板を突き破ってしまうからである。つまり洗浄作業によって穴が開くことがある。ドラムに穴が開いてしまうと、車両自体の寿命が来る前にミキサ車が使えなくなってしまい不経済であるので、ドラムを交換するかドラムを補修して対応することになる。ところでドラムは、1個ずつ溶接によって手作りされているので高価であるし、国内においては製造しているメーカが少数で供給能力に限界もある。従って新しいドラムに交換する方法は、コストが高いだけでなくドラムの入手も困難で現実的ではない。そこで一般的には、穴が開いてしまったドラムは補修されている。ドラムの補修は所定の大きさの補修用鋼板を外部から当て溶接によりドラムに固着して行う。補修用鋼板によってドラムに空いた穴を塞ぐことができると共に薄くなった鋼板を補強することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−511269号公報
【特許文献2】特開2009−279893号公報
【0005】
本発明に直接関係はないが、特許文献1、2には、樹脂材料から構成されたドラムが記載されている。これらの文献に記載のドラムは、樹脂材料から構成されているので軽量であり、従ってその分の重量だけコンクリートを多く入れて搬送することができる。さらに特許文献2に記載のドラムの場合は、外側の層がFRPから、そして内側の層がウレタン樹脂からなり、2層の樹脂材料から構成されているので、強度も備えているし、コンクリートに対する耐摩耗性も高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鋼板から構成されているドラムに穴が開いた場合には、前記したように補修用の鋼板を当ててドラムに溶着しても補修はできる。しかしながら問題も見受けられる。まず、コストが大きい点があげられる。補修は溶接により実施しなければならないので、熟練を要しコストが大きい。次に、外観の問題が挙げられる。ドラムの外周面に補修用の鋼板が溶着されていると、一見してツギが当てられているのが分かる。特に補修箇所が複数箇所になると補修用の鋼板によってドラム表面が凸凹して美観を損ねてしまう。重量の問題もある。補修箇所が1カ所であれば補修用の鋼板は1枚で済むのでドラムの重量増加は無視できるが、複数箇所に穴が開いてしまうと複数枚の補修用の鋼板を溶着しなければならずドラムの重量が増加してしまう。そうすると搬送できるコンクリートの量が少なくなる。追加の補修が困難であるという問題もある。そもそもドラムに穴が開いてしまうのは穴の周辺の鋼板が薄くなっていることが原因であり、穴の近傍も穴が開きやすい状態になっている。そうすると穴の開いた箇所を補修用の鋼板で一旦塞いでも、後日この鋼板の近傍で穴が開く可能性は十分にある。補修用の鋼板で補修されている部分は、鋼板の縁が段差になっている。この段差近傍でドラムに穴が開いてしまうと追加の補修が難しい。段差に補修用の鋼板を当てることが難しいからである。あるいは貼り付けられている古い補修用の鋼板を剥がして、複数の穴を塞ぐことができる大きい面積の補修用の鋼板を貼り付けることも考えられる。しかしながら溶接によって貼り付けられた鋼板を剥がすことは実質的に不可能である。母材のドラムの鋼板を損ねてしまうからである。すなわち補修用の鋼板で補修する場合には追加の補修が困難であると言える。
【0007】
そこで例えば、耐久性を備えた軽量の材料から形成したパネルを複数枚用意してこれらをドラムに貼り合わせてドラム全体を被覆するようにする補修方法も考えられる。そうするとツギが無くなって美観を損なうことはない。このようなパネルを大量生産するようにすれば小コストでドラムを補修することができる。しかしながら、パネルをドラムに貼り合わせるときに、貼り合わせ位置がずれてしまうと、ドラム全体を美しく被覆できない。貼り合わせの位置がずれることなく貼り合わせるには熟練を要し、補修コストが大きくなってしまう。さらには、ミキサ車のドラムは前記したように1個ずつ溶接により手作りされている。従ってその形状や大きさはドラム毎にわずかに相違している。そうするとさらに貼り合わせの位置ズレを防止することは困難になる。つまり単純にパネルを用意しても、これらをドラムに貼り合わせるのは困難でもある。
【0008】
ところでミキサ車のドラムには、補修とは直接関係はないが、他の問題もある。具体的には、夏期において直射日光を受けてドラムが高温になり、それによってドラム内のコンクリートの温度が上昇してコンクリートの品質に影響を及ぼしてしまう問題である。コンクリートは、これを製造するバッチャープラントから短時間でコンクリート打設現場に搬送するようにしているので、温度の上昇は小さく、目立って品質に問題が出ることはないが、可能な限り温度の上昇を抑制することが好ましい。従って、ドラムの補修に併せて、コンクリートの温度上昇を防止できるような機能をドラムに付加できれば好ましい。
【0009】
したがって本発明は、鋼板からなるミキサ車のドラムを補修する補修材を提供することを目的としており、具体的には、ドラムの鋼板が薄くなって穴が開いてしまってもこれを小コストで確実に塞ぐことができ、補修後のドラムの美観に優れ、補修によるドラム重量の増加もわずかで済み、補修も容易にできる、ドラムの補修材を提供することを目的としている。また、コンクリートの温度上昇を抑制することができる機能をドラムに付加することができる、ドラムの補修材を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記目的を達成するために、ミキサ車の鋼板からなるドラムを補修するFRP製の補修パネルとして構成する。補修パネルは第1の形状の補修パネルを備える。第1の形状の補修パネルは、ドラムのヘッドプレートとフロントシェルとセンタシェルとリアシェルのそれぞれ一部に対応するヘッドプレート部とフロントシェル部とセンタシェル部とリアシェル部とを備え、これらが一体的に形成されている。この第1の形状の補修パネルをドラムに複数枚だけ円周方向に並べて貼り合わせると、ヘッドプレートの少なくとも一部とフロントシェルとセンタシェルとリアシェルの少なくとも一部が被覆されるようになっている。また補修パネルは第2の形状の補修パネルも備える。第2の形状の補修パネルはリアシェルの一部に対応するように形成され、複数枚の第2の形状の補修パネルをリアシェルに円周方向に並べて貼り合わせるとリアシェルの少なくとも一部が円周方向に渡って被覆されるようになっている。このような補修パネルを、所定厚さの両面接着シートでドラムに貼り合わせるようにするが、このときに両面接着シートが無貼付の隙間を残すようにする。そしてこの隙間に断熱シートを入れるようにする。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、ヘッドプレートと、該ヘッドプレートに接続されているフロントシェルと、該フロントシェルに接続されているセンタシェルと、該センタシェルに接続されているリアシェルとから形成されている鋼板製のミキサ車のドラムを補修する補修パネルであって、前記補修パネルはFRPから形成されると共に第1の形状の補修パネルを備え、前記第1の形状の補修パネルは、前記ヘッドプレートと前記フロントシェルと前記センタシェルと前記リアシェルのそれぞれ一部に対応するヘッドプレート部とフロントシェル部とセンタシェル部とリアシェル部とからなりこれらが一体的に形成されており、複数枚の前記第1の形状の補修パネルを前記ドラムに円周方向に並べて貼り合わせると、前記ヘッドプレートの少なくとも一部と前記フロントシェルと前記センタシェルと前記リアシェルの少なくとも一部が被覆されるようになっていることを特徴とするミキサ車のドラムの補修パネルとして構成される。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の補修パネルは第2の形状の補修パネルを備え、前記第2の形状の補修パネルは前記リアシェルの一部に対応するように形成され、複数枚の前記第2の形状の補修パネルを前記リアシェルに円周方向に並べて貼り合わせると前記リアシェルの少なくとも一部が円周方向に渡って被覆されるようになっていることを特徴とするミキサ車のドラムの補修パネルとして構成される。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の補修パネルがその外周面に貼り合わせられて補修されたミキサ車のドラムとして構成される。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のミキサ車のドラムであって、前記補修パネルは所定厚さの両面接着シートによって前記ドラムに貼り合わされ、このとき前記補修パネルと前記ドラムの間には前記両面接着シートが貼付されない所定面積の隙間が確保されるようにし、前記隙間に断熱シートが入れられていることを特徴とするミキサ車のドラムとして構成される。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、ミキサ車の鋼板からなるドラムを補修する補修パネルであって、補修パネルはFRPから形成されている。そして補修パネルは第1の形状の補修パネルを備えており、この第1の補修パネルを、ドラムの円周方向に沿って複数枚貼り合わせれば、ドラムのヘッドプレートの少なくとも一部とフロントシェルとセンタシェルとリアシェルの少なくとも一部が被覆されるようになっている。つまりドラムの鋼板に穴が開いてしまっても、これを確実に塞いで補修することができる。またFRP製であるので、軽量で耐久性も備えているし、接着剤、両面接着シート等によってドラムに貼り付けることができ格別に溶接等の熟練を要しない。本発明の補修パネルは、FRPからなるので、換言すると溶接されていないので、ドラムから剥がすことも容易である。これによって補修後にドラムの他の部分に穴が開いても、最初に貼り合わせた補修パネルを剥がして、他の補修パネルを貼り合わせて補修できるので追加の補修が容易である。さらには補修パネルはFRP製なので、鋼板に比して直射日光により温度上昇し難くドラム内のコンクリートの温度上昇を抑制する効果も得られる。ところでドラムは、ヘッドプレートと、該ヘッドプレートに接続されているフロントシェルと、フロントシェルに接続されているセンタシェルと、該センタシェルに接続されているリアシェルとから形成されている。本発明によると第1の形状の補修パネルは、ヘッドプレートとフロントシェルとセンタシェルとリアシェルのそれぞれ一部に対応するヘッドプレート部とフロントシェル部とセンタシェル部とリアシェル部とからなりこれらが一体的に形成されている。そうすると第1の形状の補修パネルをドラムに貼り合わせるときに、ヘッドプレート部をドラムのヘッドプレートに合わせるようにすれば正確に位置合わせをすることができ、フロントシェル、センタシェル、リアシェルを、それぞれフロントシェル部、センタシェル部、リアシェル部によって精度良く被覆できる。つまり位置の基準をヘッドプレートに採ることができるので、格別に熟練を要すること無く補修パネルを精度良くドラムに貼り合わせることができる。これによって補修後のドラムは美観に優れたドラムになることが保証される。ところでドラムは前記したように手作りされているので、その形状や大きさはドラム毎にわずかに相違しているが、このような相違があっても、貼り合わせの位置の基準が明確なので、問題なく貼り合わせることができる。他の発明によると、補修パネルは第2の形状の補修パネルを備え、第2の形状の補修パネルはリアシェルの一部に対応するように形成され、複数枚の第2の形状の補修パネルをリアシェルに円周方向に並べて貼り合わせるとリアシェルの少なくとも一部が円周方向に渡って被覆されるようになっている。ドラムの多くには、ドラムを搭載している車体において安定的に支持されるように、かつ安定的に回転することができるように、リアシェルにリングが設けられている。そしてこのリングは車体側に設けられている所定の支持機構によって支持されると共に滑らかにガイドされるようになっている。つまりリアシェルはこのようなリングによって前後に分割されている。第2の形状の補修パネルはこのような分割されたリアシェルの後方側を被覆することができる。また他の発明によると、補修パネルによって補修されたミキサ車のドラムであって、補修パネルは所定厚さの両面接着シートによってドラムに貼り合わされ、このとき補修パネルとドラムの間には両面接着シートが貼付されない所定面積の隙間が確保されるようにし、隙間に断熱シートが入れられている。そうするとドラムの断熱効果はさらに高くなり、内部のコンクリートの温度上昇を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ミキサ車のドラムと、該ドラムを補修する本発明の実施の形態に係る補修パネルを模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る補修パネルにより、本発明の実施の形態に係る補修方法で補修したドラムをフロントシェルの部分において軸と垂直に切断した断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る補修パネルにより、他の補修方法で補修したドラムのフロントシェルの一部を軸と垂直に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を説明するにあたり、最初に補修対象のミキサ車のドラム20について説明する。ドラム20は所定板厚の鋼板から溶接によって形成され、
図1に示されているように、鏡板すなわちヘッドプレート21と、このヘッドプレート21に溶着されているフロントシェル22と、フロントシェル22に溶着されているセンタシェル24と、センタシェル24に溶着されているリアシェル25とから構成され、密閉した容器状に形成されている。本実施の形態においては、ヘッドプレート21、フロントシェル22、およびリアシェル25は、それぞれ円錐面を軸に垂直な面で切り取った形状を呈しており、センタシェル24は円柱面を軸に垂直な面で切り取った形状を呈している。しかしながら他の種類のドラムにおいてはヘッドプレートは平板状の円盤からなり、センタシェルは円錐面からなる場合もある。ヘッドプレート21、フロントシェル22、センタシェル24、およびリアシェル25は、それぞれ1枚の鋼板から形成されていてもよいが、複数枚の鋼板から溶接によって溶着されていてもよい。本実施の形態においてフロントシェル22、センタシェル24、およびリアシェル25はは、それぞれ4枚の鋼板から形成されている。4枚の鋼板が円周方向に並べられて互いに溶接されている。従って、ドラム20の外周面より所定高さだけ盛り上がった溶接痕27が、円周方向に均等に4カ所形成されている。
図1にはそのうちの1カ所の溶接痕27が示されている。本実施の形態においてドラム20にはリング28も設けられ、リング28はリアシェル25の略中央に設けられてる。ミキサ車には回転駆動機構と、支持機構とが設けられ、回転駆動機構はヘッドプレート21の中心部29に固着されている図示されていない所定の軸に接続されている。そして支持機構はリング28をスライド可能、あるいは回動可能に支持している。従って回転駆動機構を駆動すると支持機構にリング28が支持されたドラム20は滑らかに回転することになる。このようなリング28によってリアシェル25は前後に2分割されている。本実施の形態においてドラム20にはフロントシェル22に穴30が開いている。このようなドラム20を次に説明する補修パネルで補修することになるが、穴が開いていないドラム20であっても鋼板が薄くなっている場合も補修対象になる。
【0015】
本実施の本実施の形態に係る補修パネルは繊維強化プラスチックすなわちFRPから所定の板厚に形成されており、
図1に示されているように、形状が異なる2種類からなる。第1の形状の補修パネル1aは、ドラム20のリング28より前方の部分に対応するようになっており、第2の形状の補修パネル1bはリング28より後方の部分に対応するようになっている。第1の形状の補修パネル1aは、ヘッドプレート21に対応するヘッドプレート部2と、フロントシェル22に対応するフロントシェル部3と、センタシェル24に対応するセンタシェル部4と、リアシェル25に対応するリアシェル部5とからなる。これらのヘッドプレート部2、フロントシェル部3、センタシェル部4、およびリアシェル部5は円錐面、あるいは円柱面を円周方向に4分割した曲面からなり、これらは相互に接続されて一体化している。これに対して第2の形状の補修パネル1bは、リアシェル25の一部に対応する円錐面の一部からなる。この第2の形状の補修パネル1bも、円錐面を円周方向に4分割した曲面に形成されている。
【0016】
本実施の形態に係る補修プレート1a、1b、…によってドラム20を補修する方法を説明する。ドラム20に所定の厚さの両面接着シート8、8、…を貼り付ける。両面接着シート8、8は、ドラム20の全面に貼り付けて、それによって補修プレート1a、1bを完全にドラム20に貼り合わせるようにしてもよい。しかしいながら推奨される方法は、
図1に示されているように、小面積の両面接着シーと8、8をドラム20に貼り付け、それによって無貼付のエリアを残すようにする方法である。また両面接着シート8、8、…の一部は、ドラム20に形成されている溶接痕27に隣接して貼るようにするとよい。両面接着シート8、8、…の厚さは溶接痕27の高さより厚いので、溶接痕27に隣接して貼られていても補修プレート1a、1b、…は両面接着シート8、8、…に確実に接着されるようになっている。このようにして両面接着シート8、8、…を貼り付けたら、補修プレート1a、1bをドラム20に貼り合わせることになるが、このとき両面接着シート8、8、…が貼付されていないエリアに断熱シート9a、9b、…を入れるようにする。つまり補修パネル1a、1b、…とドラム20の間には両面接着シート8、8、…が貼付されない所定面積の隙間ができるが、所定の厚さになっている両面接着シート8、8、…によってブリッジが形成され、この隙間は所定の間隔になっている。この隙間に断熱シート9a、9b、…を入れるようにする。断熱シート9a、9b、…は断熱効果のあるシートであればどのようなものでもよく、グラスウール等から構成してもよいが、例えば発泡ポリウレタン、発泡ポリスチレン等の発泡プラスチックから構成すると安価に実施できる。ところで、第1の形状の補修パネル1aをドラム20に貼り合わせるときには、ヘッドプレート21を基準に採る。すなわちヘッドプレート部2をヘッドプレート21に合わせるようにして第1の形状の補修パネル1aをドラム20に貼り合わせる。そうするとズレることなく精度良く貼り合わせることができる。第1の形状の補修パネル1a、1a、…を円周方向に4枚貼り合わせると、フロントシェル22とセンタシェル24が完全に被覆され、ヘッドプレート21は中心部29近傍を除いた周辺部が被覆され、リアシェル25はリング28より前方が被覆されることになる。このようにして第1の形状の補修パネル1a、1a、…がドラム20に貼り合わされ、隙間に断熱シート9a、9b、…が入れられた状態が
図2にも示されている。第2の形状の補修パネル1b、1b、…はリアシェル25に貼り合わせるときに、リアシェル25の後端部を基準にしてもよいしリング28を基準にしてもよい。どちらを基準にしても精度良く貼り合わせることができ、リアシェル25の後方側を被覆することができる。ところで隣り合う2枚の補修パネル1a、1b、…の間にはわずかに隙間が形成される。このような隙間には、
図2に示されているように、コーキング剤11、11、…によってシーリングする。これによって、ドラム20は補修パネル1a、1a、…によって液密的に密封された状態になる。
【0017】
上で説明した補修方法では、断熱シート9a、9b、…をドラム20と補修パネル1a、1b、…の間の隙間に入れるようにしているが、断熱シート9a、99b、…は必ずしも必要ではない。FRP製の補修パネル1a、1b、…は所定の断熱作用を奏するし、所定の厚さの両面接着シート8、8、…も、断熱作用を奏する。そこでドラム20全体に両面接着シート8、8、…を貼り付けて、補修パネル1a、1b、…を全体的に貼り合わせるようにしてもよい。この場合断熱シート9a、9b、…は不要になる。さらには、
図3に示されているように、ドラム20と補修パネル1a、1b、…の間に断熱シート9a、9b…を入れずに、この隙間を空気の層13として残すようにしてもよい。空気の層13も断熱作用を奏するので、ドラム20内に入れられているコンクリートの温度変化をある程度抑制できる。
【0018】
ところで、
図3に示されているようにしてドラム20を補修すると、穴30からのコンクリートの漏れが問題になる。ドラム20内から穴30を通って、ドラム20の外周面と補修パネル1a、1aの隙間に漏れ出すのは骨材を含まないセメントペースト分が主体になる。隙間は高々1〜数mm程度であるからである。このような漏れ出したセメントペースト分15は、
図3に示されているように比較的小さい範囲に漏れ出し、やがて固化する。そうすると穴30は実質的に塞がれる。従ってコンクリートの漏れの問題は心配する必要がない。
【0019】
本実施の形態に係る補修パネル1a、1b、…は、上の説明では円周方向に4枚並べるとドラム2の外周面全体を被覆できるように説明した。つまり円周方向に4分割した形状になっている。しかしながらこの分割数は変形でき、6分割、8分割等であってもよい。また上記した説明では補修パネル1a、1b、…は両面接着シート8、8、…によってドラム20に貼り合わせるように説明したが、接着剤によって貼り合わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0020】
1a 第1の形状の補修パネル
1b 第2の形状の補修パネル
2 ヘッドプレート部
3 フロントシェル部
4 センタシェル部
5 リアシェル部
8 両面接着シート
9a、9b 断熱シート
11 コーキング剤
15 セメントペースト分
20 ドラム
21 ヘッドプレート
22 フロントシェル
24 センタシェル
25 リアシェル
27 溶接痕
28 リング
30 穴