特許第6099291号(P6099291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6099291
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合用工具及び工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20170313BHJP
   B23P 23/00 20060101ALI20170313BHJP
   B23Q 3/155 20060101ALI20170313BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B23K20/12 340
   B23P23/00 Z
   B23Q3/155 Z
   B23Q3/155 F
   B23Q17/09 B
【請求項の数】13
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-548323(P2016-548323)
(86)(22)【出願日】2015年12月28日
(86)【国際出願番号】JP2015086460
【審査請求日】2016年7月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114787
【氏名又は名称】ヤマザキマザック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100203770
【弁理士】
【氏名又は名称】脇海道 豊
(72)【発明者】
【氏名】植村 和樹
(72)【発明者】
【氏名】蜂谷 正泰
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/113542(WO,A1)
【文献】 特開2010−099785(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102009021850(DE,A1)
【文献】 特開2012−000698(JP,A)
【文献】 特開2007−319907(JP,A)
【文献】 特開2003−048064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
B23P 23/00
B23Q 3/155
B23Q 17/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルダ本体及び回転主軸に結合されるシャンク部を有するピンホルダと、
記ホルダ本体に取り付けられる攪拌ピンと、
前記ピンホルダを内挿する筒状部及び主軸フレームに結合される板状部を有するハウジングと、を備え、
前記ピンホルダは、該ピンホルダを前記回転主軸に脱着するための把持部を前記ホルダ本体と前記シャンク部との間に有し、
前記筒状部の一方の端部にショルダ部が形成され、
前記板状部の上面には、前記主軸フレームと係合する被係合部が固定されており、
前記ピンホルダは前記回転主軸に、前記ハウジングは前記主軸フレームに、それぞれ自動交換され
ことを特徴とする摩擦攪拌接合用工具。
【請求項2】
前記回転主軸に結合された状態の前記ピンホルダと前記主軸フレームに結合された状態の前記ハウジングとの間に隙間が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項3】
前記被係合部は、プルスタッドである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項4】
前記被係合部は、ロケートリングである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項5】
前記被係合部は、前記筒状部の周囲に複数配置されている
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項6】
前記ハウジングの筒状部は、前記ショルダ部が形成された着脱自在な交換ブロックを有する
ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項7】
前記交換ブロックは、把持溝を有する
ことを特徴とする請求項に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項8】
前記交換ブロックは、前記ショルダ部の一部を前記交換ブロックの軸方向に延長した肩当部をさらに有する
ことを特徴とする請求項に記載の摩擦攪拌接合用工具。
【請求項9】
回転主軸を内包する主軸フレームと、前記主軸フレームに取り付けられる摩擦攪拌接合用工具と、ワークを保持する加工テーブルと、前記摩擦攪拌接合用工具を一時保管する工具保管装置と、前記主軸フレーム及び前記加工テーブルの動きを制御するNC装置と、を備えた工作機械であって、
前記摩擦攪拌接合用工具は、前記回転主軸に結合されるシャンク部を有するピンホルダと、前記ピンホルダに取り付けられる攪拌ピンと、前記ピンホルダを内挿する筒状部及び主軸フレームに結合される板状部を有するハウジングと、を備え、前記筒状部の一方の端部にショルダ部が形成されるとともに、前記板状部の上面には前記主軸フレームと係合する被係合部が固定されており、
前記工具保管装置は、前記ピンホルダのストックを保管する工具マガジン及び前記加工テーブル上に配置されたハウジング載置台をそれぞれ別体として含む
ことを特徴とする工作機械。
【請求項10】
前記ハウジングの筒状部は、前記ショルダ部が形成された交換ブロックを有し、
前記工具保管装置は、前記交換ブロックのストックをさらに保管する
ことを特徴とする請求項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記NC装置は、接合プログラムと切削プログラムとを有し、前記接合プログラム又は前記切削プログラムに指定されている工具を、前記工具保管装置から自動交換して加工を実施する
ことを特徴とする請求項10に記載の工作機械。
【請求項12】
前記接合プログラムは、前記攪拌ピン及び前記ショルダ部に対するそれぞれの識別番号のデータを含み、
前記NC装置は、前記接合プログラムで指定されている前記攪拌ピンの識別番号と前記ショルダ部の識別番号との組合せが、前記工具マガジンにストックされている前記ピンホルダに取り付けられた前記攪拌ピンと前記ハウジング載置台にストックされている前記交換ブロックに形成されている前記ショルダ部と、を用いて実施できないと判断した場合に、警報を発するとともに工具の自動交換を停止する
ことを特徴とする請求項11に記載の工作機械。
【請求項13】
前記接合プログラムは、前記攪拌ピン及び前記ショルダ部に対するそれぞれの寿命時間のデータをさらに含み、
前記NC装置は、通算接合時間を計時するとともに、前記通算接合時間が前記寿命時間に達したと判断したときに、前記攪拌ピンを有する前記ピンホルダ又は前記ショルダ部を有する前記交換ブロックを自動交換する
ことを特徴とする請求項12に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械に関し、特に、別体で構成されたピンとショルダとに自動交換可能となる着脱機構を設けた自動交換型の摩擦攪拌接合用工具と、当該摩擦攪拌接合用工具のピン及びショルダを自動交換できる工作機械と、に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転ヘッドにピンとショルダとを別体に取り付けてワークの突合せ部を摩擦攪拌接合する接合装置が知られている(特許文献1参照)。
このような接合装置によれば、ワークの上面に接触するショルダをワークに対して非回転とし、回転するピンをワークの突合せ部に押し込んだ状態で接合することにより、接合に必要な摩擦発熱をピンの回転のみで充足し得るという利点がある。
【0003】
一方、摩擦攪拌接合を行う回転ツールを主軸ユニットに着脱する交換作業を行う自動交換装置を備えた摩擦攪拌接合装置も公知である(特許文献2参照)。
このような接合装置によれば、簡単な構成で交換作業を容易に行うことができ、交換時間の短縮も図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5404389号公報
【特許文献2】特開2009−208116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている接合装置は、ピンとショルダとを別体に形成することにより、接合されるワークの板厚が変化した場合等にショルダから突出するピンの長さを調整することができる。
しかしながら、ピンを保持している工具シャンクを、ショルダ(非回転スライド肩部)を備えた下部ハウジングの内部に位置するスピンドルに取り付ける必要があるため、ピンを交換する際には、主軸ハウジングにボルト等で締結されている下部ハウジングを取り外さなければならず、人手や工数がかかっていた。
【0006】
一方、特許文献2に記載されている接合装置は、主軸ユニットと自動交換装置の工具マガジンとの間で回転ツールを自動で受け渡しすることができるため、人手や工数を削減できる。
しかしながら、ピンとショルダとが一体形成された回転ツールを主軸ユニットに着脱する構造のため、ピンとショルダとが別体となった接合ツールには直接適用できない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ピンとショルダとを別体で構成した上で、ツールの自動交換に適した摩擦攪拌接合用工具、及び当該摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による摩擦攪拌接合用工具は、回転主軸に結合されるシャンク部を有するピンホルダと、前記ピンホルダに取り付けられる攪拌ピンと、前記ピンホルダを内挿する筒状部及び主軸フレームに結合される被係合部を有するハウジングと、を備え、前記筒状部の一方の端部にショルダ部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明による摩擦攪拌接合用工具の一の実施例において、前記被係合部は、プルスタッドである。
また、本発明による摩擦攪拌接合用工具の他の実施例において、前記被係合部は、ロケートリングである。
さらに、前記被係合部は、前記筒状部の周囲に複数配置されている。このとき、前記ピンホルダは、把持溝を有してもよい。
【0010】
本発明による摩擦攪拌接合用工具のさらに他の実施例において、前記ハウジングの筒状部は、前記ショルダ部が形成された交換ブロックを有する。このとき、前記交換ブロックは、把持溝を有してもよい。
また、前記交換ブロックは、前記ショルダ部から突出する肩当部をさらに有する。
【0011】
本発明による工作機械は、回転主軸を内包する主軸フレームと、前記主軸フレームに取り付けられる摩擦攪拌接合用工具と、ワークを保持する加工テーブルと、前記摩擦攪拌接合用工具を一時保管する工具保管装置と、前記主軸フレーム及び前記加工テーブルの動きを制御するNC装置と、を備え、前記摩擦攪拌接合用工具は、前記回転主軸に結合されるシャンク部を有するピンホルダと、前記ピンホルダに取り付けられる攪拌ピンと、前記ピンホルダを内挿する筒状部及び主軸フレームに結合される被係合部を有するハウジングと、を備え、前記筒状部の一方の端部にショルダ部が形成されており、前記工具保管装置は、前記加工テーブル上に配置されたハウジング載置台を含むことを特徴とする。
【0012】
本発明による工作機械の一の実施例において、前記工具保管装置は、前記ピンホルダのストックを保管する工具マガジンをさらに含む。
また、前記ハウジングの筒状部は、前記ショルダ部が形成された交換ブロックを有し、
前記工具マガジンは、前記交換ブロックのストックをさらに保管する。
【0013】
本発明による工作機械の他の実施例において、前記NC装置は、接合プログラムと切削プログラムとを有し、前記接合プログラム又は前記加工プログラムに指定されている工具を、前記工具保管装置から自動交換して加工を実施する。
また、前記接合プログラムは、前記攪拌ピン及び前記ショルダ部に対するそれぞれの識別番号のデータを含み、前記NC装置は、前記接合プログラムで指定されている前記攪拌ピンの識別番号と前記ショルダ部の識別番号との組合せが、前記工具マガジンにストックされている前記ピンホルダに取り付けられた前記攪拌ピンと前記ハウジング載置台にストックされている前記交換ブロックに形成されている前記ショルダ部と、を用いて実施できないと判断した場合に、警報を発するとともに工具の自動交換を停止するように構成してもよい。
さらに、前記接合プログラムは、前記攪拌ピン及び前記ショルダ部に対するそれぞれの寿命時間のデータをさらに含み、前記NC装置は、通算接合時間を計時するとともに、前記通算接合時間が前記寿命時間に達したと判断したときに、前記攪拌ピンを有する前記ピンホルダ又は前記ショルダ部を有する前記交換ブロックを自動交換するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の摩擦攪拌接合用工具は、以上の構造を備えることにより、ピンとショルダとを別体で構成した上で、ツールの自動交換に適用することができる。
また、ハウジングに交換ブロックを取り付ける構成とすることにより、重量やサイズの大きいハウジングを毎回交換することなく、ショルダ部を含む交換ブロックのみを交換することで対応できるため、交換品にかかるコストを低減することができる。
さらに、交換ブロックを切削工具ホルダやピンホルダとともに工具保管装置(工具マガジン)に保管することもできる。
【0015】
本発明の摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械は、以上の構成を備えることにより、加工ヘッドの動きのみでピンホルダ及びハウジングの自動交換をそれぞれ実施することができるため、結果として人手や工数を削減できる。
また、接合プログラムによって接合処理を自動で実施する間に、摩擦攪拌接合用工具の寿命時間の経過をオペレータに知らせるとともに、自動で工具交換を実行して接合を継続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施例によるテーブルクランプ装置を用いたパレットチェンジャを備える工作機械を示す斜視図であって、カバーを含む外観を示す。
図2図1に示した工作機械の加工ヘッドの概要を示す断面図である。
図3A】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の断面図である。
図3B】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図3Aに示すピンホルダの斜視図である。
図3C】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図3Aに示すハウジングの斜視図である。
図4】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具と加工ヘッドとの取付構造の詳細を示す断面図である。
図5A】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、ハウジングを載置していない場合を示す。
図5B】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、ハウジングを載置した場合を示す。
図6A】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、接合中の状態を示す。
図6B】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング載置台への移動中の状態を示す。
図6C】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジングがハウジング載置台上に載置された状態を示す。
図6D】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング取り外し後の状態を示す。
図7A】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング取り外し直後の状態を示す。
図7B】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、工具マガジンへの移動中の状態を示す。
図7C】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、工具マガジンにピンホルダを受け渡した状態を示す。
図7D】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、工具マガジンが別のピンホルダを受け渡し位置に準備した状態を示す。
図7E】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、工具マガジンから別のピンホルダを受け取った状態を示す。
図7F】本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、再びハウジング載置台へ移動中の状態を示す。
図8】本発明の実施例1による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
図9A】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の断面図である。
図9B】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図9Aに示すハウジングの斜視図である。
図9C】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図9Bに示すハウジングの下端に取り付けられる交換ブロックの斜視図である。
図10A】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、ハウジング及び交換ブロックを載置していない場合を示す。
図10B】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、ハウジング及び交換ブロックを載置した場合を示す。
図11A】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、接合中の状態を示す。
図11B】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング載置台への移動中の状態を示す。
図11C】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング載置台の把持爪に交換ブロックを取り外した状態を示す。
図11D】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジングがハウジング載置台上に載置された状態を示す。
図11E】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、ハウジング取り外し後の状態を示す。
図12A】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における交換ブロックの自動交換作業の概要を示す斜視図であり、把持爪に交換ブロックを把持させる動作を示す。
図12B】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における交換ブロックの自動交換作業の概要を示す斜視図であり、交換ブロックの取り外し動作を示す。
図12C】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における交換ブロックの自動交換作業の概要を示す斜視図であり、別の交換ブロックの取り付け動作を示す。
図12D】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における交換ブロックの自動交換作業の概要を示す斜視図であり、交換ブロックの交換後の状態を示す。
図13】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
図14】本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具における交換ブロックの自動交換作業の変形例を示す斜視図である。
図15A】本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具と加工ヘッドとの取付構造の詳細を示す断面図であり、摩擦攪拌接合用工具の取り付け前の状態を示す。
図15B】本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具と加工ヘッドとの取付構造の詳細を示す断面図であり、摩擦攪拌接合用工具を取り付けた状態を示す。
図16】本発明の第4実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
図17】本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具とワークとの関係を示す要部断面図である。
図18A】本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具を用いて箱状ワークに摩擦攪拌接合を実施する動作の概要を示す斜視図であって、第1のパスを接合している状態を示す。
図18B】本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具を用いて箱状ワークに摩擦攪拌接合を実施する動作の概要を示す斜視図であって、第1のパスと交差する第2のパスを接合している状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施例>
図1は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の概要を示す斜視図である。
図1に示すように、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械1は、本体部10と、カバー20と、マンマシンインターフェース30と、を備える。
【0018】
工作機械1の本体部10は、ワークWを保持する加工テーブル12と、ワークWに対してXYZ方向にそれぞれ移動可能な加工ヘッド14と、後述するピンホルダや切削工具ホルダ等の各種工具ホルダのストックを保管する工具マガジン16と、上記加工テーブル12上に配置されたハウジング載置台18と、を備える。
加工テーブル12は、その上面にワークWを保持固定する固定装置(図示せず)と後述する摩擦攪拌接合用工具のハウジングを一時保管するハウジング載置台18とが取り付けられている。
【0019】
カバー20は、工作機械1の本体部10が風や水等の外部環境に直接晒されることがないように、当該本体部10の周囲を囲繞するように配置される。
また、カバー20は、外部空間から内部空間にアクセスするための開口部22と、上記内部空間において本体部10の加工テーブル12が存在するエリアを2つの加工エリアとして規定する第1の仕切板24と、上記工具マガジン16が配置された収納エリアと上記加工エリアとを規定する第2の仕切板26と、を備えている。
【0020】
カバー20の上記開口部22の近傍には、マンマシンインターフェース30が取り付けられている。
マンマシンインターフェース30は、工作機械1全体の動きを制御するNC装置と、当該NC装置が実行する加工制御における加工条件等をオペレータが入力するための入力装置と、オペレータに加工条件や各種センサによる検出結果等を表示する表示装置と、を備える。
NC装置は、主制御部と、接合プログラムや切削プログラム等の各種制御プログラムを記憶するメモリと、を有している。
【0021】
図2は、図1に示した工作機械の加工ヘッドの概要を示す断面図である。
図2に示すように、加工ヘッド14は、筐体をなす中空の主軸フレーム14aと、当該主軸フレームに内包される回転主軸14bと、を含む。
【0022】
加工ヘッド14の主軸フレーム14aは、図示を省略するXYZ駆動機構に取り付けられてXYZの3軸方向に移動可能とされている。
また、回転主軸14bの一端は、同じく図示を省略するモータに接続されて回転するように構成される。
そして、加工ヘッド14の下端には、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具100が着脱自在に取り付けられる。
【0023】
図3は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図3Aは第1実施例による摩擦攪拌接合用工具の断面図であり、図3B図3Aに示すピンホルダの斜視図であり、図3C図3Aに示すハウジングの斜視図である。
図3Aに示すように、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具100は、図2に示す加工ヘッド14の回転主軸14bに結合されるピンホルダ110と、当該ピンホルダ110を内包して加工ヘッド14の主軸フレーム14aに取り付けられるハウジング120と、を含む。
【0024】
図3Bに示すように、ピンホルダ110は、一端に後述する攪拌ピン140を取り付けるホルダ本体112と、他端側に形成されたシャンク部114と、上記ホルダ本体112とシャンク部114との中間部に位置する把持部116と、を含む。
ホルダ本体112の端部には、攪拌ピン140を収容する収容穴が形成されており、当該収容穴に攪拌ピン140を挿入した後、ボルト等の固定手段を用いて攪拌ピン140が取付固定される。
また、把持部116は、ホルダ本体112から外向きに突出する鍔部116aに把持溝116bが形成された構造であり、後述する工具マガジンの爪部により把持される。
【0025】
図3Cに示すように、ハウジング120は、ピンホルダ110を内挿する筒状部122と、当該筒状部122の一端に一体形成された板状部124と、当該板状部124上面における上記筒状部122の周囲の位置に取り付けられた複数のプルスタッド126と、を含む。
また、筒状部122の他端には、図3Aに示すように、ピンホルダ110に取り付けられた攪拌ピン140の先端が挿通される挿通穴150と、当該挿通穴150の周囲を囲繞するショルダ部152と、が形成されている。
さらに、板状部124の下面には、後述するハウジング載置台18の上面に形成された突起に対応する位置に受け穴(図示せず)が複数形成されている。
【0026】
本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具100は、図3Aに示すように、ハウジング120の一端に形成されたショルダ部152の挿通穴150から、ピンホルダ110の先端に取り付けた攪拌ピン140を突出させることにより構成される。
また、ハウジング120の筒状部122の内面とピンホルダ110のホルダ本体112の外面とは、両者を正規の位置に組み合わせた際に隙間Gを形成するように構成される。
このような構成により、ハウジング120に形成されたショルダ部152はワークWに対して非回転になるとともに、ピンホルダ110に取り付けられた攪拌ピン140は、上記ショルダ部152に対して相対的に回転する。
【0027】
図4は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具と加工ヘッドとの取付構造の詳細を示す断面図である。
図4に示すように、摩擦攪拌接合用工具100において、ハウジング120の板状部124の上面には、複数のプルスタッド126が取り付けられている。
【0028】
一方、加工ヘッド14の主軸フレーム14aの下面には、上記複数のプルスタッド126の位置と対応する位置に複数のコレットチャック14cが形成されている。
そして、上記複数のコレットチャック14cに複数のプルスタッド126が嵌合することにより、ハウジング120が主軸フレーム14aに取付固定されており、当該コレットチャック14cを駆動することにより、容易にプルスタッド126を開放することができる。
このように、ハウジング120の板状部124に形成された複数のプルスタッド126は、主軸フレーム14aに設けられたコレットチャック14cによって受動的に係合される被係合部を形成する。
【0029】
また、ピンホルダ110のシャンク部114は、先端に向けて先細りのテーパ形状を有している。
そして、上記シャンク部114を加工ヘッド14の回転主軸14bに周知の態様で取り付けることにより、ピンホルダ110は回転主軸14bと一体で回転自在に結合される。
【0030】
このような配置とすることにより、摩擦攪拌接合用工具100は、ピンホルダ110とハウジング120とが、別々に加工ヘッド14の回転主軸14b及び主軸フレーム14aにそれぞれ取り付けられる。
そして、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具100を用いることにより、工作機械1は、ハウジング120に形成されたショルダ部152は非回転の状態で、ピンホルダ110に取り付けられた攪拌ピン140のみが回転して摩擦攪拌接合を行う。
【0031】
本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具100は、攪拌ピン140を取り付けたピンホルダ110と、ショルダ部152が形成されたハウジング120とを別体とし、ピンホルダ110及びハウジング120を加工ヘッド14の回転主軸14b及び主軸フレーム14aにそれぞれ個別に取り付ける構造を採用したことにより、工具の自動交換機能を備えた工作機械への適用に適している。
以下に、図5から図8を用いて、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合工具を適用した工作機械における工具の自動交換機能の概要を説明する。
【0032】
図5は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、図5Aはハウジングを載置していない場合を示し、図5Bはハウジングを載置した場合を示す。
図5Aに示すように、ハウジング載置台18は、台座18aと、当該台座18aの上面に形成された収容穴18bと、収容穴18bの周囲に設けられた複数の突設部18cと、を含む。
【0033】
台座18aは、例えば図1に示すように、加工テーブル12上であって加工ヘッド14の可動範囲内に配置されている。
このとき、必要に応じて、台座18aを複数設けるか、あるいは1つの台座18aに複数の収容穴18b及びその周囲の複数の突設部18cをさらに設けるか、によって、ハウジング載置台18に複数のハウジングを載置あるいはストックできるように構成してもよい。
また、台座18aは、加工ヘッド14の可動範囲内にあれば、本体部10の内部のいずれの場所に配置されてもよい。
【0034】
複数の突設部18cは、例えば図5Aに示すように、収容穴18bの周囲の3か所に配置されており、これら3か所の突設部18cの上面18dにおいて、図5Bに示すように加工ヘッド14から取り外されたハウジング120における板状部124の下面を支持して載置する。
このような構成により、突設部18cとハウジング120における板状部124の下面との接触面積が極小化されるため、載置時にハウジング120における板状部124の下面を傷つける等の損傷を低減できる。
【0035】
また、突設部18cの上面18dのうちの2か所には、例えば半球状の凸部18eが形成されている。一方、上述のとおり、ハウジング120の板状部124の下面には、上記凸部18eに対応する位置に受け穴(図示せず)が形成されている。
これらの構成により、上記2つの凸部18eが受け穴と嵌合し、ハウジング載置台18にハウジング120を載置した状態で位置決め機構(回り止め機構)として機能する。
【0036】
収容穴18bは、図5Bに示すように、ハウジング120を突設部18cに載置した状態で、回転主軸14bに結合されたピンホルダ110の攪拌ピン140の先端が干渉しない程度の深さを有している。
また、収容穴18bの内部に、収容されたハウジング120の筒状部122を側方から支持する支持部(図示せず)を設けてもよい。
【0037】
図6は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、図6Aは接合中の状態を示し、図6Bはハウジング載置台への移動中の状態を示し、図6Cはハウジングがハウジング載置台上に載置された状態を示し、図6Dはハウジング取り外し後の状態を示す。
図6Aに示すように、加工ヘッド14の下端に摩擦攪拌接合用工具100を取り付けた工作機械1は、加工テーブル12上に保持されたワークWの上面の接合部を摩擦攪拌接合する。
【0038】
所定の接合が終了し、例えばNC装置(図示せず)から摩擦攪拌接合用工具100のハウジング120あるいは攪拌ピン140を交換する指令が出されると、図6Bに示すように、加工ヘッド14がいったんワークWの上面から離れてZ方向の所定の回避高さまで移動し、その後当該回避高さでXY方向に移動してハウジング載置台18の上方に配置される。
このとき、摩擦攪拌接合用工具100の攪拌ピン140が、ハウジング載置台18の収容穴18bの中心軸と一致するように配列される。
【0039】
続いて、図6Bの位置から、加工ヘッド14がZ方向下方に移動して、図6Cに示すように、摩擦攪拌接合用工具100のハウジング120における板状部124の下面が、ハウジング載置台18の突設部18cの上面18dに接触する位置で停止する。
この位置で、図4に示した加工ヘッド14の主軸フレーム14aに設けられた複数のコレットチャック14cと、ハウジング120に設けられた複数のプルスタッド126との結合を解除することにより、ハウジング120が主軸フレーム14aすなわち加工ヘッド14から切り離される。
そして、図6Cの位置から、加工ヘッド14を再びZ方向に上昇させることにより、図6Dに示すように、加工ヘッド14からハウジング120を取り外す作業が完了する。
【0040】
図7は、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるピンホルダの交換作業の概要を示す斜視図であり、図7Aはハウジング取り外し直後の状態を示し、図7Bは工具マガジンへの移動中の状態を示し、図7Cは工具マガジンにピンホルダを受け渡した状態を示し、図7Dは工具マガジンが別のピンホルダを受け渡し位置に準備した状態を示し、図7Eは工具マガジンから別のピンホルダを受け取った状態を示し、図7Fは再びハウジング載置台へ移動中の状態を示す。
ピンホルダ110の交換作業を行う場合、図7Aに示すように、加工ヘッド14に取り付けられていたハウジング120は取り外されて、ハウジング載置台18上に載置された状態となっている。なお、図7Aの状態に代えて、図6Dで示した位置関係を作業開始としてもよい。
【0041】
続いて、図7Bに示すように、NC装置(図示せず)からの指令に基づいて、加工ヘッド14がピンホルダ110を露出した状態で工具マガジン16に向けて移動する。
このとき、加工ヘッド14は、図1で示した第2の仕切板26に形成された開口部26a(図7B参照)を通って工具マガジン16に向けて接近又は離反する。
【0042】
ここで、工具マガジン16は、Z方向の回転軸を有する回転機構(図示せず)と、上記回転軸に直交する面となるように取り付けられた円板部材(後述の図14の符号16bを参照)と、当該円板部材の外周部に取り付けられた複数の爪部16aと、を含む。
また、図7に示す第2の仕切板26において、開口部26aには、例えばスライド式の開閉ドアを取り付けてもよい。これにより、加工エリアから収納エリアに塵埃等の汚染物が入り込むのを抑制する。
【0043】
図7Bに示す動作において、加工ヘッド14は、ピンホルダ110に形成された把持部116の把持溝116b(図3B参照)が上記工具マガジン16に設けられた複数の爪部16aのうちの1つと同一の高さとなる位置まで移動する。
その後、上記高さを維持しつつ加工ヘッド14がXY平面上を移動することにより、工具マガジン16の爪部16aがピンホルダ110の把持溝116bを把持する。
そして、NC装置は、爪部16aが把持溝116bを把持したことを検知すると、加工ヘッド14の回転主軸14bとピンホルダ110のシャンク部114との結合を解除する。
【0044】
続いて、図7Cに示すように、加工ヘッド14がピンホルダ110のシャンク部114の長さより大となる距離だけZ方向に上昇する。
これにより、回転主軸14bからシャンク部114が完全に外れて、ピンホルダ110の爪部16aへの受け渡しが完了する。
【0045】
続いて、図7Dに示すように、工具マガジン16の円板部材が回転することにより、加工ヘッド14に臨む爪部16aの位置が変化し、新たに装着されるべきピンホルダ110aが加工ヘッド14の回転主軸14bの直下に配置される。
そして、図7Eに示すように、加工ヘッド14がZ方向に移動することにより、ピンホルダ110aのシャンク部を回転主軸14bに進入させ、ピンホルダ110aと回転主軸14bとを結合する。
その後、上記高さを維持しつつ加工ヘッド14がXY平面上を移動することにより、工具マガジン16の爪部16aからピンホルダ110aの把持を解除し、新たなピンホルダ110aの受け渡しが完了する。
【0046】
続いて、図7Fに示すように、加工ヘッド14がハウジング載置台18に向けて下方に移動する。このとき、ピンホルダ110aに取り付けられた攪拌ピン140は、ハウジング載置台18に載置されたハウジング120の挿通穴150の中心軸と一致するように配列される。
このようにピンホルダの自動交換作業を行った後、NC装置は、図6Dから図6Bに戻る手順にしたがって、ハウジング120を主軸フレーム14aに取り付ける作業を実施し、摩擦攪拌接合用工具100の交換作業を終了する。
【0047】
図8は、本発明の実施例1による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
なお、図8に示す第1実施例のフローチャートにおいては、攪拌ピン及びショルダ部にそれぞれ固有の番号あるいは記号が予め付与されているものとする。
図8に示すように、図1に示した工作機械1のマンマシンインターフェース30に含まれるNC装置は、まず内蔵されたメモリから現在のワークWに適した接合プログラムを読み込む(ステップS101)。
【0048】
続いて、読み込んだ接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致するかどうか判定する(ステップS102)。
ステップS102において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致しない場合、NC装置は、指定された攪拌ピンを取り付けたピンホルダに交換する必要があると判断して、ステップS103に進む。
【0049】
ピンホルダを交換する場合、NC装置は、加工ヘッドをハウジング載置台の上方に移動した後、図6に示す手順にしたがって、主軸フレームからハウジングを取り外す(ステップS103)。
そして、ハウジングを取り外して露出したピンホルダを、図7に示す手順にしたがって、指定された攪拌ピンを取り付けたピンホルダに交換する(ステップS104)。
【0050】
続いて、読み込んだ接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、ステップS103で加工ヘッドから取り外された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致するかどうか判定する(ステップS105)。
ステップS105において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、加工ヘッドに予め装着されていた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致する場合、NC装置は、元々装着されていた摩擦攪拌接合用工具で接合可能と判断して、ステップS106に進む。
【0051】
ステップS106では、加工ヘッドをハウジング載置台の上方に移動させ、図6で示した手順と逆の手順にしたがって、接合プログラムでいったん取り外したハウジングを加工ヘッドの主軸フレームに再度取り付ける。
その後、NC装置は、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具が正しく加工ヘッドに装着されたものとして、接合プログラムに含まれる接合動作制御サブルーチン(SS01)に進み、第1実施例と同様に、予め設定された接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0052】
一方、ステップS105において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、ステップS103で加工ヘッドから取り外された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致しない場合、NC装置は、指定されたショルダ部番号あるいはショルダ部記号を付与されたショルダ部を含むハウジングに交換する必要があると判断して、ステップS109に進む。
ここで、ステップS105において、接合プログラムにおいて指定された攪拌ピンとショルダ部との組合せが、摩擦攪拌接合用工具の構造上で組合せが可能なものに含まれない場合についても、ハウジングを交換する必要があると判断する。
【0053】
また、ステップS102において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致すると判別した場合、NC装置は、現在加工ヘッドに取り付けられたハウジングのみを交換する必要があるかどうかを判別する(ステップS107)。
すなわち、NC装置は、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられている摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致するかどうか判定する。
ここで、ステップS107においても、接合プログラムにおいて指定された攪拌ピンとショルダ部との組合せが、摩擦攪拌接合用工具の構造上で組合せが可能なものに含まれない場合については、ハウジングを交換する必要があると判断する。
【0054】
ステップS107において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられている摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致すると判別した場合、NC装置は、元々装着されていた摩擦攪拌接合用工具で接合可能と判断して、接合動作制御サブルーチン(SS01)に進む。
そして、接合動作制御サブルーチンSS01では、ワークの形状や材質、摩擦攪拌接合用工具との組合せに応じて、工具回転数や接合速度等の各種の接合パラメータが設定されており、NC装置は、これらの接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0055】
一方、ステップS107において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられている摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致しないと判別した場合、NC装置は、加工ヘッドをハウジング載置台の上方に移動した後、図6に示す手順にしたがって、主軸フレームからハウジングを取り外す(ステップS108)。
続いて、ステップS109では、図6で示した手順と逆の手順にしたがって、接合プログラムで指定された別のハウジングを加工ヘッドの主軸フレームに取り付ける。このとき、ハウジング載置台には、予め交換されるべき別のハウジングが保管されているものとする。
【0056】
ステップS109で加工ヘッドに別のハウジングが取り付けられた後、NC装置は、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具が正しく加工ヘッドに装着されたものとして、接合動作制御サブルーチン(SS01)に進む。
そして、上述のとおり、接合動作制御サブルーチンSS01では、NC装置は、予め設定された接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0057】
図1から図8で示した、これらの構成及び動作を備えることにより、本発明の第1実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械は、ピンホルダと回転主軸との間及びハウジングと主軸フレームとの間をいずれもワンタッチで着脱自在の構成としたため、ピンとショルダ部とを別体で構成した上で、ツールの自動交換に適用することができる。
また、交換されるピンホルダのストックを保管する工具マガジンと、主軸フレームから取り外されるハウジングを載置保持するハウジング載置台と、を備える工作機械に適用することにより、加工ヘッドの動きのみでピンホルダ及びハウジングの自動交換をそれぞれ実施することができるため、結果として人手や工数を削減できる。
【0058】
<第2実施例>
次に、図9から図14を参照して、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械の概要を説明する。
なお、第2実施例において、摩擦攪拌接合用工具が装着される工作機械は、図1及び図2に示すような第1実施例のものと同様であるため、以下では共通する構成については同一の符号を使用し、ここでの説明は省略する。
【0059】
図9は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の概要を示す図であって、図9Aは第2実施例による摩擦攪拌接合用工具の断面図であり、図9B図9Aに示すハウジングの斜視図であり、図9C図9Bに示すハウジングの下端に取り付けられる交換ブロックの斜視図である。
図9Aに示すように、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具200は、図2に示す加工ヘッド14の回転主軸14bに結合されるピンホルダ210と、当該ピンホルダ210を内包して加工ヘッド14の主軸フレーム14aに取り付けられるハウジング220と、を含む。
【0060】
図9Bに示すように、ハウジング220は、ピンホルダ210を内挿する筒状部222と、当該筒状部222の一端に一体形成された板状部224と、当該板状部224上面における上記筒状部222の周囲の位置に取り付けられた複数のプルスタッド226と、を含む。
筒状部222及び板状部224の内部には、例えばボールロック式のプルクランプ230にエア等の流体圧を供給する連通路228が形成されており、筒状部222の他端には、上記プルクランプ230を介して、有底筒状の交換ブロック250が着脱自在に取り付けられる。
また、第1実施例の場合と同様に、板状部224の下面には、ハウジング載置台18の上面に形成された突起に対応する位置に受け穴(図示せず)が複数形成されている。
【0061】
交換ブロック250は、図9Cに示すように、底部の中央に形成され攪拌ピン240の先端が挿通される挿通穴252と、当該挿通穴252の周囲を囲繞するショルダ部254と、上記プルクランプ230が挿通される係合穴256と、ハウジング載置台あるいは工具マガジンに設けられた爪部に把持される把持溝258と、を有する。
プルクランプ230は、筒状部222の下端に複数配置されており、その先端が係合穴256と係合したときにボールが突出してクランプを行い、内部に流体圧を付加することでボールの突出を解除してアンクランプする構造を備えている。
【0062】
本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具200は、図9Aに示すように、ハウジング220の一端に取り付けられた交換ブロック250の挿通穴252から、ピンホルダ210の先端に取り付けた攪拌ピン240を突出させることにより構成される。
また、第1実施例の場合と同様に、ハウジング220の筒状部222の内面とピンホルダ210のホルダ本体212の外面とは、両者を正規の位置に組み合わせた際に隙間Gを形成するように構成される。
このような構成により、ハウジング220の交換ブロック250に形成されたショルダ部254はワークWに対して非回転になるとともに、ピンホルダ210に取り付けられた攪拌ピン240は、上記ショルダ部254に対して相対的に回転する。
【0063】
図10は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械の加工テーブルに設けられるハウジング載置台の概要を示す斜視図であり、図10Aはハウジング及び交換ブロックを載置していない場合を示し、図10Bはハウジング及び交換ブロックを載置した場合を示す。
図10Aに示すように、第2実施例において、ハウジング載置台18は、台座18aと、当該台座18aの上面に形成された収容穴18bと、収容穴18bの周囲に設けられた複数の突設部18cと、図9に示した交換ブロック250を収容する把持爪18fと、を含む。
【0064】
台座18aは、第1実施例と同様に、加工テーブル12上であって加工ヘッド14の可動範囲内に配置されており、必要に応じて、ハウジング載置台18に複数のハウジングを載置あるいはストックできるように構成してもよい。
また、台座18aは、加工ヘッド14の可動範囲内にあれば、本体部10の内部のいずれの場所に配置されてもよい。
【0065】
複数の突設部18cは、例えば図10Aに示すように、収容穴18bの周囲の3か所に配置されており、第1実施例と同様に、これら3か所の突設部18cの上面18dにおいて、図10Bに示すように加工ヘッド14から取り外されたハウジング220における板状部224の下面を支持して載置する。
また、第1実施例の場合と同様に、突設部18cの上面18dのうちの2か所には、例えば半球状の凸部18eが形成されており、第1実施例と同様に、当該2つの凸部18eとハウジング220における板状部224の受け穴と嵌合して、位置決め機構(回り止め機構)として機能する。
【0066】
収容穴18bは、図10Bに示すように、ハウジング220を突設部18cに載置した状態で、回転主軸14bに結合されたピンホルダ210の攪拌ピン240の先端が干渉しない程度の深さを有している。
また、収容穴18bの内部に、収容されたハウジング220の筒状部222を側方から支持する支持部(図示せず)を設けてもよい。
【0067】
第2実施例におけるハウジング載置台18の上面には、上面に対して平行でかつ側方に突出する把持爪18fが複数設けられている。
複数の把持爪18fは、先端側から交換ブロック250の把持溝258が進入することにより交換ブロック250を把持し、図10Bに示すように、複数の交換ブロック250を保管できるように構成されている。
【0068】
図11は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械におけるハウジングの取り外し作業の概要を示す斜視図であり、図11Aは接合中の状態を示し、図11Bはハウジング載置台への移動中の状態を示し、図11Cはハウジング載置台の把持爪に交換ブロックを取り外した状態を示し、図11Dはハウジングがハウジング載置台上に載置された状態を示し、図11Eはハウジング取り外し後の状態を示す。
図11Aに示すように、加工ヘッド14の下端に摩擦攪拌接合用工具200を取り付けた工作機械1は、加工テーブル12上に保持されたワークWの上面の接合部を摩擦攪拌接合する。
【0069】
所定の接合が終了し、例えばNC装置(図示せず)から摩擦攪拌接合用工具200の攪拌ピン240あるいは交換ブロック250を交換する指令が出されると、図11Bに示すように、加工ヘッド14がいったんワークWの上面から離れてZ方向の所定の回避高さまで移動し、その後当該回避高さでXY方向に移動してハウジング載置台18の上方に配置される。
その後、図11Cに示すように、加工ヘッド14がハウジング載置台18の把持爪18fの高さまで下降した後、ハウジング220に取り付けた交換ブロック250を把持爪18fに把持させて交換ブロック250を取り外す。
【0070】
続いて、図11Cの位置から、加工ヘッド14がハウジング載置台18の収容穴18bの上方に向けてXYZ方向に移動し、攪拌ピンが収容穴18bの中心軸と一致するように配列される。
その後、加工ヘッド14がZ方向に下降してハウジング220が収容穴18b内に収容されるよう移動し、図11Dに示すように、摩擦攪拌接合用工具200のハウジング220における板状部224の下面がハウジング載置台18の突設部18cの上面18dに接触する位置で停止する。
【0071】
この位置で、図4に示した加工ヘッド14の主軸フレーム14aに設けられた複数のコレットチャック14cと、図9に示したハウジング220に設けられた複数のプルスタッド226との結合を解除することにより、ハウジング220が主軸フレーム14aすなわち加工ヘッド14から切り離される。
そして、図11Eに示すように、加工ヘッド14を再びZ方向に上昇させることにより、ハウジング220の取り外し作業が完了する。
【0072】
図12は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における交換ブロックの自動交換作業の概要を示す斜視図であり、図12Aは把持爪に交換ブロックを把持させる動作を示し、図12Bは交換ブロックの取り外し動作を示し、図12Cは別の交換ブロックの取り付け動作を示し、図12Dは交換ブロックの交換後の状態を示す。
なお、図12において、ハウジング載置台18に2つの把持爪18fが形成されており、当該2つの把持爪18fのうちの一方に交換されるべき別の交換ブロック250aが予め保管されているものとする。
【0073】
第2実施例による摩擦攪拌接合用工具200のハウジング220に取り付けられた交換ブロック250を交換する場合、NC装置は、図12Aに示すように、交換ブロック250の把持溝258がハウジング載置台18の把持爪18fと同一の高さになるまで加工ヘッド14を下降させた後、加工ヘッド14をXY方向にさらに移動させて、交換ブロック250の把持溝258を把持爪18fに把持させる。
NC装置は、把持爪18fが把持溝258を把持したことを検知すると、図9Aに示したプルクランプ230に流体圧を供給し、ハウジング220の筒状部222と交換ブロック250との結合を解除する。
【0074】
筒状部222と交換ブロック250との結合が解除された後、NC装置は、図12Bに示すようにZ方向に加工ヘッド14を上昇させる。
続いて、図12Cに示すように、Z方向の高さを維持した状態で、XY方向に加工ヘッド14を移動させて、加工ヘッド14に取り付けられた攪拌ピン240の中心軸が、予め保管されている別の交換ブロック250aの挿通穴252の中心と一致するよう整列させる。
【0075】
その後、NC装置は、図12Dに示すように、Z方向に加工ヘッド14を下降させて、ハウジング220の筒状部222の下端を別の交換ブロック250aの上面と当接させる。
筒状部222と別の交換ブロック250aとが当接したことを検知すると、NC装置は、上記プルクランプ230に付加した流体圧を解除してクランプを駆動させ、ハウジング220の筒状部222と別の交換ブロック250aとを結合する。
そして、加工ヘッド14をXY方向に移動させて、把持爪18fによる別の交換ブロック250aの把持溝(図示せず)の把持を解除することにより、交換ブロックの自動交換作業を終了する。
【0076】
図13は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
なお、図13に示す第2実施例のフローチャートにおいても、第1実施例と同様に、攪拌ピン及びショルダ部にそれぞれ固有の番号あるいは記号が付与されているものとする。
図13に示すように、図1に示した工作機械1のマンマシンインターフェース30に含まれるNC装置は、まず内蔵されたメモリから現在のワークWに適した接合プログラムを読み込む(ステップS201)。
【0077】
続いて、読み込んだ接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致するかどうか判定する(ステップS202)。
ステップS202において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致しない場合、NC装置は、指定された攪拌ピンを取り付けたピンホルダに交換する必要があると判断して、ステップS203に進む。
【0078】
ピンホルダを交換する場合、NC装置は、第1実施例と同様に、加工ヘッドをハウジング載置台の上方に移動した後、図6に示す手順にしたがって、主軸フレームからハウジングを取り外す(ステップS203)。
そして、ハウジングを取り外して露出したピンホルダを、図7に示す手順にしたがって、指定された攪拌ピンを取り付けたピンホルダに交換し(ステップS204)、その後、加工ヘッドをハウジング載置台の上方に移動させ、図6で示した手順と逆の手順にしたがって、接合プログラムでいったん取り外したハウジングを加工ヘッドの主軸フレームに再度取り付ける(ステップS205)。
【0079】
続いて、読み込んだ接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、加工ヘッドに予め装着されていた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致するかどうか判定する(ステップS206)。
ステップS206において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、加工ヘッドに予め装着されていた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致する場合、NC装置は、元々装着されていた摩擦攪拌接合用工具で接合可能と判断して、接合プログラムに含まれる接合動作制御サブルーチン(SS01)に進む。
接合動作制御サブルーチン(SS01)では、第1実施例と同様に、予め設定された接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0080】
一方、ステップS206において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、加工ヘッドに予め装着されていた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致しない場合、NC装置は、指定された交換ブロックに交換する必要があると判断して、ステップS208に進む。
ここで、第1実施例と同様に、ステップS206において、接合プログラムにおいて指定された攪拌ピンとショルダ部との組合せが、摩擦攪拌接合用工具の構造上で組合せが可能なものに含まれない場合についても、交換ブロックを交換する必要があると判断する。
【0081】
また、ステップS202において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号と一致すると判別した場合、NC装置は、現在加工ヘッドに取り付けられたショルダ部のみを交換する必要があるかどうかを判別する(ステップS207)。
すなわち、NC装置は、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致するかどうか判定する。
ここで、ステップS207においても、接合プログラムにおいて指定された攪拌ピンとショルダ部との組合せが、摩擦攪拌接合用工具の構造上で組合せが可能なものに含まれない場合については、交換ブロックを交換する必要があると判断する。
【0082】
ステップS207において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致すると判別した場合、NC装置は、元々装着されていた摩擦攪拌接合用工具で接合可能と判断して、接合動作制御サブルーチン(SS01)に進む。
そして、上述のとおり、接合動作制御サブルーチンSS01では、NC装置は、予め設定された接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0083】
一方、上述したステップS206あるいはステップS207において、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号が、現在加工ヘッドに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具のショルダ部番号あるいはショルダ部記号と一致しないと判別した場合、NC装置は、図12に示す手順にしたがって、ハウジングから交換ブロックを取り外し(ステップS208)、続いて、接合プログラムで指定された別の交換ブロックをハウジングに取り付ける(ステップS209)。
ステップS209で加工ヘッドのハウジングに別の交換ブロックが取り付けられた後、NC装置は、接合プログラムで指定された摩擦攪拌接合用工具が正しく加工ヘッドに装着されたものとして、接合動作制御サブルーチン(SS01)に進む。
そして、上述のとおり、接合動作制御サブルーチンSS01では、NC装置は、予め設定された接合パラメータにしたがってワークに対する摩擦攪拌接合を実施し、その後プログラムを終了する。
【0084】
なお、図13に示すフローチャートでは、ピンホルダを交換した後に元のハウジングを取り付ける場合を例示したが、接合しようとするワークの厚さや材質等に応じて、攪拌ピンを取り付けたピンホルダの大きさも変更されて、元のハウジングに取り付けて接合することができない場合もある。
このような場合には、例えば図13のステップS204の後に、取り付けたピンホルダと元のハウジングとの組合せが適合し得るものかどうか判別するステップを追加し、ピンホルダとハウジングとの組合せが不適と判別されたときには、ハウジング載置台にストックされた別のハウジングを取り付けてから、ステップS206に進むように構成すればよい。
【0085】
図9から図13で示した、これらの構成及び動作を備えることにより、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械は、ピンホルダと回転主軸との間、ハウジングと主軸フレームとの間、及びハウジングと交換ブロックとの間をいずれもワンタッチで着脱自在の構成としたため、ピンとショルダ部とを別体で構成した上で、ツールの自動交換に適用することができる。
また、第2実施例による摩擦攪拌接合用工具によれば、攪拌ピンすなわちピンホルダを交換せずにショルダ部のみを交換する場合、重量やサイズの大きいハウジングを毎回交換することなくショルダ部を含む交換ブロックのみを交換することで対応できるため、交換品にかかるコストを低減することができる。
【0086】
また、図10及び図11において、交換ブロックのストックをハウジング載置台に設けた把持爪に保管する場合を例示したが、上記交換ブロックのストックを図7等に示した工具マガジンに設けた爪部に保管するように構成してもよい。このような第2実施例の変形例について図14を用いて説明する。
図14は、本発明の第2実施例による摩擦攪拌接合用工具における交換ブロックの自動交換作業の変形例を示す斜視図である。
【0087】
図14に示すように、工具マガジン16は、複数の爪部16aが、図示しない回転機構の回転軸に直交する面内で回転する円板部材16bの外周部に取り付けられている。
そして、工具マガジン16の爪部16aに、切削工具が取り付けられた切削工具ホルダ260や攪拌ピンが取り付けられたピンホルダ210に加えて、摩擦攪拌接合用工具200の交換ブロック250を複数保管し、加工ヘッド14を移動させて上記交換ブロック250の把持溝258を爪部16aに把持させることにより、交換ブロック250等の自動交換作業に適用することもできる。
このような構成によれば、ハウジング載置台18に追加の把持爪18fを設ける必要がないため、工作機械1の構成を簡略化し、装置コストを抑制できる。
【0088】
<第3実施例>
次に、図15を参照して、本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械の概要を説明する。
なお、第3実施例において、摩擦攪拌接合用工具が装着される工作機械は、図1及び図2に示すような第1実施例のものと同様であるため、以下では共通する構成については同一の符号を使用し、ここでの説明は省略する。
【0089】
図15は、本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具と加工ヘッドとの取付構造の詳細を示す断面図であり、図15Aは摩擦攪拌接合用工具の取り付け前の状態を示し、図15Bは摩擦攪拌接合用工具を取り付けた状態を示す。
図15Aに示すように、摩擦攪拌接合用工具300において、ハウジング320の板状部324の上面には、主軸フレーム14aと係合する穴を有する複数のロケートリング326が組み込まれており、ロケートリング326の穴の内周面には、内側に突出する環状凸部326aが形成されている。
また、ハウジング320の筒状部322の一端には、第2実施例と同様に、交換ブロック350が着脱自在に取り付けられている。
【0090】
一方、加工ヘッド14の主軸フレーム14aの下面には、上記複数のロケートリング326の位置と対応する位置に、当該ロケートリング326の内周面に形成された環状凸部326aに係合する組み付け部14d(例えば、商品名「パレットクランプ」として公知なもの)が取り付けられている。
そして、図15Bに示すように、上記したハウジング320の複数のロケートリング326の環状凸部326aに主軸フレーム14aに設けられた複数の組み付け部14dが嵌合することにより、ハウジング320が主軸フレーム14aに取付固定される。
【0091】
組み付け部14dは、例えば油圧等の加圧力を付与することによって突起部が進退する構造を有しており、上記加圧力を付与して組み付け部14dとロケートリング326の内周面の環状凸部326aとの係合を解除することにより、容易にハウジング320を取り外すことができる。
このように、ハウジング320の板状部324に形成された複数のロケートリング326は、主軸フレーム14aに設けられた複数の組み付け部14dによって受動的に係合される被係合部を形成する。
【0092】
本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具300は、図15Aに示すように、ハウジング320の一端に取り付けられた交換ブロック350の挿通穴352から、ピンホルダ310の先端に取り付けた攪拌ピン340を突出させることにより構成される。
また、第1実施例の場合と同様に、ハウジング320の筒状部322の内面とピンホルダ310のホルダ本体312の外面とは、両者を正規の位置に組み合わせた際に隙間Gを形成するように構成される。
このような構成により、ハウジング320の交換ブロック350に形成されたショルダ部354はワークWに対して非回転になるとともに、ピンホルダ310に取り付けられた攪拌ピン340は、上記ショルダ部354に対して相対的に回転する。
【0093】
これらの構成を備えることにより、本発明の第3実施例による摩擦攪拌接合用工具は、ハウジング側に設けられた被係合部が、主軸フレーム側に設けられた組み付け部を受ける穴として形成されるため、ハウジング自体及びハウジングを含む摩擦攪拌接合用工具全体の重量を削減できる。
また、被係合部が穴状の凹部であるため、例えばハウジングをハウジング載置台上に取り外して保管する際に、板状部の上面から突出する物体がないため、上記ハウジング載置台の近傍での加工ヘッドの移動において衝突等のリスクを低減できる。
【0094】
<第4実施例>
次に、図16を参照して、本発明の第4実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における自動工具交換を含む接合制御の概要を説明する。
なお、第4実施例において、摩擦攪拌接合用工具及びこれを装着した工作機械は、第1実施例から第3実施例のものと同様であるため、以下では共通する構成については同一の符号を使用し、ここでの説明は省略する。
【0095】
図16は、本発明の第4実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械において、自動工具交換を含む接合作業の一例を示すフローチャートである。
なお、図16に示す第4実施例のフローチャートにおいても、第1実施例と同様に、攪拌ピン及びショルダ部にそれぞれ固有の番号あるいは記号が付与されているものとする。
図16に示すように、図1に示した工作機械1のマンマシンインターフェース30に含まれるNC装置は、まず内蔵されたメモリから現在のワークWに適した接合プログラムを読み込む(ステップS301)。
【0096】
次に、NC装置は、読み込んだ接合プログラムに含まれる摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン番号あるいは攪拌ピン記号、並びにショルダ部番号あるいはショルダ部記号に基づいて、指定された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン及びショルダ部の組合せに自動交換する工具交換サブルーチンを実行する(サブルーチンSSTC)。
ここで、「工具交換サブルーチン」は、例えば、第1実施例における図8のステップS102からステップS109に示す動作、あるいは第2実施例における図13のステップS202からステップS209に示す動作を例示できるが、これらのステップによるものでなくても構わない。
【0097】
続いて、NC装置は、読み込んだ接合プログラムに含まれる各種の接合パラメータに基づいて、接合処理を実行する(ステップS302)。
ここで、接合プログラムには、ワークの複数箇所を複数パスで摩擦攪拌接合する場合や、同一の接合条件で複数組のワークの摩擦攪拌接合を複数パスで実行する場合等が含まれるものとし、ステップS302においては、上記複数パスの接合のうちの1つのパスの接合を実施する。
【0098】
続いて、NC装置は、加工ヘッドに現在取り付けられている摩擦攪拌接合用工具を用いた摩擦攪拌接合用工具の通算使用時間の積算処理を行う(ステップS303)。
ここで、「通算使用時間」とは、新品の状態で工作機械に配備された摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピンあるいはショルダ部が、ワークとそれぞれ接合時に接触している時間をタイマ等で積算した時間を意味し、例えば1パス毎に摩擦攪拌接合用工具とワークとの接触時間をカウントして、接合終了後に複数パスの接触時間を合計したものである。
【0099】
次に、NC装置は、接合プログラムの接合パラメータに基づいて、第1のパスの接合が終了したかどうかを判別する(ステップS304)。
ステップS304において、第1のパスの接合が終了していないと判別された場合、パス番号をそのままの状態でステップS302に戻り、接合を継続する。
【0100】
一方、ステップS304において、第1のパスの接合が終了した判別された場合、NC装置は、加工ヘッドに現在取り付けられている摩擦攪拌接合用工具の現時点での通算使用時間が、予め設定された寿命時間より短いかどうかを判別する(ステップS305)。
ここで、「予め設定された寿命時間」は、摩擦攪拌接合用工具の全体としての寿命時間として設定しているが、摩擦攪拌接合用工具の攪拌ピン及びショルダ部のそれぞれに個別に寿命時間を設定し、通算使用時間も個別に積算するように構成してもよい。
【0101】
ステップS305において、加工ヘッドに現在取り付けられている摩擦攪拌接合用工具の現時点での通算使用時間が、予め設定された寿命時間より短いと判別された場合、NC装置は、現在使用している摩擦攪拌接合用工具は継続して使用可能であると判断し、ステップS306に進む。
一方、ステップS305において、加工ヘッドに現在取り付けられている摩擦攪拌接合用工具の現時点での通算使用時間が、予め設定された寿命時間より長いと判別された場合、NC装置は、現在使用している摩擦攪拌接合用工具が寿命により破損のおそれがある、あるいは接合中に破損した可能性があるため交換が必要であると判断し、ステップS307に進む。
【0102】
ステップS307において、NC装置は、工作機械に設けられた工具マガジン及びハウジング載置台に、加工ヘッドに現在取り付けられている摩擦攪拌接合用工具の代替となる攪拌ピンを取り付けたピンホルダとショルダ部を設けたハウジング(あるいは交換ブロック)とが存在するかどうか判別する。
ここで、代替となる摩擦攪拌接合用工具について、ピンホルダとハウジング(あるいは交換ブロック)の両者が存在するかどうかに基づいて判別することを例示しているが、ピンホルダとハウジング(あるいは交換ブロック)とを個別に交換することを意図して、交換に適合するいずれか一方の代替物が存在するかどうかの判別を実行してもよい。
【0103】
ステップS307において、工具マガジン及びハウジング載置台に、現在の摩擦攪拌接合用工具の代替となるピンホルダとハウジング(あるいは交換ブロック)とが存在すると判別された場合、NC装置は、接合プログラムにおける加工ヘッドの現在の座標位置を記憶し(ステップS308)、摩擦攪拌接合用工具の交換を行うための工具交換サブルーチン(SSTC)を実行する。
ここで、工具交換サブルーチン(SSTC)は、上記したステップS301の実行後に実行したものと同一のものである。
【0104】
工具交換サブルーチン(SSTC)を実行して加工ヘッドに新たな摩擦攪拌接合用工具を取り付けた後、NC装置は、新たに取り付けた摩擦攪拌接合用工具に対する通算使用時間のパラメータを更新する(ステップS309)。
このとき、新たに取り付けられた摩擦攪拌接合用工具が未接合の新品である場合には、通算使用時間をゼロとし、既に別の接合で使用された実績のある摩擦攪拌接合用工具を取り付けた場合には、それまでに実施した接合による通算使用時間のデータを引き継ぐ。
【0105】
その後、NC装置は、図1に示すマンマシンインターフェース30の表示装置に、自動工具交換を行った旨を出力してオペレータに報知する(ステップS310)。
そして、ステップS308で記憶した工具交換前の加工ヘッドの座標位置と同一の位置に加工ヘッドを戻し(ステップS311)、接合プログラムによる接合処理を継続するためにステップS306に進む。
【0106】
また、ステップS307において、工具マガジン及びハウジング載置台に、現在の摩擦攪拌接合用工具の代替となるピンホルダとハウジング(あるいは交換ブロック)とが存在しないと判別された場合、NC装置は、図示しない警報装置に警報を発する指令を出力し(ステップS312)、その後工作機械に接合中止指令を出力して(ステップS313)、接合処理を中止する。
このとき、オペレータに警報装置を用いて工具の寿命を報知するとともに、上記マンマシンインターフェース30の表示装置に、現在使用している摩擦攪拌接合用工具が寿命により破損のおそれがある、あるいは接合中に破損した可能性がある旨の表示を行ってもよい。
【0107】
一方、ステップS305あるいはステップS311を経て、ステップS306に移行すると、NC装置は、現在実施した接合のパスが接合プログラムに含まれる全てのパスを完了したかどうかを判別する。
ここで、ステップS306における判別は、同一の接合パスを複数組のワークに適用したときに、全ての組のワークを接合したかどうかで判別するようにしてもよい。
【0108】
ステップS306において、現在実施した接合のパスが接合プログラムに含まれる全てのパスを完了していないと判別された場合、NC装置は、接合のパス数のデータを更新するとともに、ステップS302に戻って再度の接合処理を実行する。
また、ステップS306において、現在実施した接合のパスが接合プログラムに含まれる全てのパスを完了したと判別された場合、NC装置は、全ての接合処理が終了したとして、接合プログラムを終了する。
【0109】
図16に示した接合プログラムの実行動作を備えることにより、本発明の第4実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械は、接合プログラムによって接合処理を自動で実施する間に、摩擦攪拌接合用工具の寿命時間の経過をオペレータに知らせるとともに、自動で工具交換を実行して接合を継続することができる。
また、摩擦攪拌接合用工具の通算使用時間と寿命時間との比較を接合のパスの終了毎に実施するため、接合のパス中に接合処理を中断することなく、自動工具交換処理に移行することができる。
さらに、接合のパス毎の判別を行うことで、仮に摩擦攪拌接合用工具の破損により接合不良が生じたとしても、どのパスの接合時に工具の寿命を超えたかを容易に把握することができるため、ワークにおける接合不良箇所の特定が容易となる。
【0110】
<第5実施例>
次に、図17及び図18を参照して、本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具を適用した工作機械における接合処理の概要を説明する。
なお、第5実施例において、摩擦攪拌接合用工具及びこれを装着した工作機械は、第1実施例から第3実施例のものと同様であるため、以下では共通する構成については同一の符号を使用し、ここでの説明は省略する。
【0111】
図17は、本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具とワークとの関係を示す要部断面図である。
また、図18は、本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具を用いて箱状ワークに摩擦攪拌接合を実施する動作の概要を示す斜視図であって、図18Aは第1のパスを接合している状態を示し、図18Bは第1のパスと交差する第2のパスを接合している状態を示す。
図17に示すように、第5実施例においては、裏当治具460の上面に接触する第1のワークW1と上記裏当治具460の側面に接触する第2のワークW2との間の突合せ部を摩擦攪拌接合する。
【0112】
摩擦攪拌接合用工具の筒状部422の端部には、例えばボールプランジャ430等の複数の係合手段を介して、交換ブロック450が着脱自在に取り付けられている。
筒状部422は、先端に攪拌ピン440を取り付けたピンホルダ410を内包するとともに、外周面には上記ボールプランジャ430の先端を受ける複数の凹部422aが形成されている。
【0113】
交換ブロック450は有底筒状の部材であって、底部には、第1のワークW1に接触するショルダ部454aと、当該ショルダ部454aの一部を交換ブロック450の軸方向に延長して第2のワークW2に側面から接触する肩当部454bと、を有する。
また、交換ブロック450には、第2実施例と同様に、ハウジング載置台あるいは工具マガジンに設けられた爪部に把持される把持溝458が形成されている。
【0114】
ボールプランジャ430は、例えば有底筒状の本体の内部にバネを収容し、当該バネがボールを常に本体の外部に付勢するように構成されている。
そして、交換ブロック450の開口側から摩擦攪拌接合用工具の筒状部422が進入する際に、当該筒状部422の外周面とボールプランジャ430とが接触することによりボールが進退し、凹部422aの位置でボールが付勢されることにより外側から嵌合して交換ブロック450を筒状部422に着脱自在に固定する。
【0115】
本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具400は、ハウジング420の一端に取り付けられた交換ブロック450の挿通穴452から、ピンホルダ410の先端に取り付けた攪拌ピン440を突出させることにより構成される。
そして、このような構成により、第1実施例から第3実施例の場合と同様に、ハウジング420の筒状部422の内面とピンホルダ410のホルダ本体412の外面との間に隙間Gを形成することにより、ハウジング420の交換ブロック450に形成されたショルダ部454a及び肩当部454bはワークWに対して非回転になるとともに、攪拌ピン440がショルダ部454a及び肩当部454bに対して相対的に回転する。
【0116】
図18Aに示すように、4つの側面に第2のワークW2を並べてその上面に第1のワークW1を配置した箱状のワークに対して、第1のワークW1と第2のワークW2のうちの1つとの間のY方向の接合線を摩擦攪拌接合する場合には、第2のワークW2の側方からX方向に接触する肩当部454bを備えた第1の交換ブロック450aを筒状部422の先端に取り付けた摩擦攪拌接合用工具400を用いて接合を行う。
一方、図18Bに示すように、第1のワークW1と別の第2のワークW2との間のX方向の接合線を摩擦攪拌接合する場合には、図18Aで示した交換ブロック450に対して90°ずれた位置に肩当部454bを配置した第2の交換ブロック450bに交換した摩擦攪拌接合用工具400を用いて接合を行う。
【0117】
図17及び図18で示した、これらの構成及び動作を備えることにより、本発明の第5実施例による摩擦攪拌接合用工具及びこれを適用した工作機械は、ショルダ部に追加的な肩当部を備えたハウジングあるいは交換ブロックを用いることにより、例えば箱状に配置されたワークの隅肉継手に対しても摩擦攪拌接合を行うことができる。
また、上記肩当部を形成したハウジングあるいは交換ブロックを適用することにより、接合線の方向が変更された際には、当該接合線の方向に合わせた肩当部を備えたハウジングあるいは交換ブロックに自動交換することができるため、結果として人手や工数を削減できる。
【0118】
なお、本発明は、上記した実施例の構成に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上述した第1実施例から第5実施例の摩擦攪拌接合用工具において、ハウジングと主軸フレームとの間、あるいはハウジングと交換ブロックとの間の結合手段として、プルスタッドやボール式のプルクランプ又はボールプランジャ等を適用した場合を例示したが、当該結合手段としては、ワンタッチで自動に着脱できるものであれば、例えばエアクランパや電磁式クランパ等の代替手段を適用することが可能である。
また、交換ブロックを備えたハウジングを使用する際に、上記した複数種の結合手段を組合せて適用してもよい。
【0119】
さらに、第1実施例から第5実施例において、攪拌ピンとショルダ部とを別体で構成しているため、これらを同一の材料あるいは異なる材料のいずれで形成してもよい。
特に、攪拌ピンはショルダ部に比べて小径のため、攪拌ピンの材料を強度の高い材料とすることにより、攪拌ピンの寿命を延ばして破損を防止することができる。
【0120】
一方、ショルダ部は非回転の状態でワーク表面と接触しつつ移動するため、ショルダ部の材料を硬度の高い材料とすることにより、ショルダ部の耐摩耗性を向上することができる。
このとき、ショルダ部の材料をアルミ合金等の鋼に対して比較的軽量の材料とし、ワーク表面との接触面にセラミック等のコーティングを施すことにより、ハウジング全体の軽量化と耐摩耗性とを両立することも可能となる。
【0121】
第5実施例の摩擦攪拌接合用工具において、肩当部はショルダ部から直角に突出する場合を例示しているが、ショルダ部と肩当部とのなす角度は90°未満でもよい。
また、肩当部の形状は、円形状等の座面としてもよい。
【符号の説明】
【0122】
1 工作機械
10 本体部
12 加工テーブル
14 加工ヘッド
14a 主軸フレーム
14b 回転主軸
14c コレットチャック
14d 組み付け部
16 工具マガジン
16a 爪部
16b 円板部材
18 ハウジング載置台
18a 台座
18b 収容穴
18c 突設部
18d (突設部の)上面
18e 凸部
18f 把持爪
20 カバー
30 マンマシンインターフェース
100、200、300、400 摩擦攪拌接合用工具
110、210、310、410 ピンホルダ
116b、258 把持溝
120、220、320、420 ハウジング
122、222、322、422 筒状部
124、224、324 板状部
126、226 プルスタッド
140、240、340、440 攪拌ピン
150、252、352、452 挿通穴
152、254、354、454a ショルダ部
230 プルクランプ
250、350、450 交換ブロック
326 ロケートリング
430 ボールプランジャ
454b 肩当部
【要約】
回転主軸(14b)に結合されるシャンク部(114)を有するピンホルダ(110)と、ピンホルダに取り付けられる攪拌ピン(140)と、ピンホルダを内挿する筒状部及び主軸フレーム(14a)に結合される係合部を有するハウジング(120)と、を備え、筒状部の一方の端部にショルダ部(152)が形成されていることを特徴とする摩擦攪拌接合用工具。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図12C
図12D
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18A
図18B