【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、高選択性触媒を用いたエポキシ化工程の始動は、本発明による始動工程を利用することにより改善され得る。本発明による始動工程は、始動工程の継続時間を低減することができる。さらに、数時間以内に、触媒は、触媒が始動工程後に通常の運転条件下に「ラインアウト」された後に生じる選択性でまたはこの付近で、エチレンオキシドを生成することができる。触媒の選択性が迅速に増大するので、エチレンオキシドがさらに製造される。さらに、始動工程の間において、通常のエチレンオキシド製造の間に用いられる触媒温度を超える触媒温度で運転する必要はもはやなく、このことは、触媒の寿命の改善につながる。
【0015】
本エポキシ化工程は、多くの方法で行われ得るが、気相工程、すなわち供給材料を固体材料として一般に充填床の中に存在する触媒と気相中で接触させる工程として、それを行うことが好ましい。一般に、その工程は、連続的な工程として行われる。反応器は、一般に、触媒を加熱または冷却する熱交換設備を備えている。本明細書において用いられるように、供給材料は、触媒と接触する組成物であるとみなされる。本明細書において用いられるように、触媒温度、すなわち触媒床の温度は、触媒粒子の重量平均温度であるとみなされる。
【0016】
新しい触媒と、プラントの停止により長期の封入期間を受けた古い触媒とが、エポキシ化工程において利用される場合に、いくつかの例において、高温で触媒に掃引ガスを通すことにより、始動工程を行う前にそれらの触媒を前処理することが有用であり得る。掃引ガスは、一般に不活性ガス、例えば窒素もしくはアルゴン、または窒素および/もしくはアルゴンを含む混合物である。高温により、触媒の製造において用いられていることがある有機窒素化合物の大部分は、ガス流中に掃引され、触媒から除去されるガスを含有する窒素に転換される。さらに、任意の水分は、触媒から除去され得る。一般に、触媒が反応器中に装填される際に、冷却剤加熱器を利用することにより、触媒の温度は、200から250℃、好ましくは210から230℃に上昇され、ガス流が触媒に通される。この前処理についてのさらなる詳細は、本明細書に参照により組み込まれるUS−A−4874879に見出され得る。
【0017】
触媒は、触媒を、エチレン、酸素および有機塩化物を含む供給材料と接触させる初期的なステップを含む始動工程を受ける。分かりやすさのみのために、工程のこのステップは、以下において「初期始動段階」の用語により示される。初期始動段階の間において、触媒は、触媒が始動工程後に通常の初期的な運転条件下に「ラインアウト」された後に生じる選択性でまたはこの付近で、エチレンオキシドを生成することができる。特に、初期始動段階の間において、選択性は、通常の初期運転条件下における最適な選択性の性能の3モル−%以内、より特定すると2モル−%以内、最も特定すると1モル−%以内であることができる。適切には、選択性は、初期始動段階の間に86.5モル−%超、特定すると少なくとも87モル−%、より特定すると少なくとも87.5モル−%に達し維持され得る。触媒の選択性は迅速に増大するので、エチレンオキシドは有利にさらに製造される。
【0018】
初期始動段階において、触媒を、塩化ビニルが少なくとも1×10
−5モル−%(全ガス混合物に対する塩化ビニルのモルとして算出)増加したことが反応器出口または再生利用ガスループの中において検出されるまでの時間の間、有機塩化物と接触させる。理論により限定されることを望むものではないが、塩化ビニル以外の有機塩化物を用いた場合において、出口または再生利用ループの中で検出される塩化ビニルは、触媒中に存在する銀に表面吸収された塩化物を、供給材料中に存在する炭化水素と反応させることにより生成されると思われる。好ましくは、触媒を、塩化ビニルが少なくとも2×10
−5モル−%、特定すると1×10
−4モル−%以下、より特定すると7.5×10
−5モル−%以下、最も特定すると5×10
−5モル−%以下(全ガス混合物に対する塩化ビニルのモルとして算出)増加したことが、反応器出口または再生利用ガスループの中において検出されるまでの時間の間、有機塩化物と接触させる。触媒と接触させる有機塩化物量は、触媒1キログラム当たり、塩化物1から12ミリモル(mmol)当量の範囲内であることができる。塩化物のmmol当量は、有機塩化物のmmolに、有機塩化物分子中に存在する塩素原子数を乗じることにより決定され、例えば、エチレンジクロリド1mmolは、塩化物2mmol当量を生成する。有機塩化物は、1から15時間、好ましくは2から10時間、より好ましくは2.5から8時間の範囲の時間の間、触媒床に供給され得る。適切には、触媒と接触させる有機塩化物量は、6mmol当量/kg触媒以下、特定すると5.5mmol当量/kg触媒以下、より特定すると5mmol当量/kg触媒以下であることができる。初期始動段階の間における供給材料中の有機塩化物量は、全供給材料に対する塩化物のモルとして算出して、少なくとも1.5×10
−4モル−%、特定すると少なくとも2×10
−4モル−%であることができる。初期始動段階の間における有機塩化物量は、全供給材料に対する塩化物のモルとして算出して、0.1モル−%以下、好ましくは0.01モル−%以下、より好ましくは0.001モル−%以下であることができる。好ましくは、初期始動の供給材料は、通常のエチレンオキシド製造の初期の時間の間に用いられる最適量を超える量の有機塩化物を含むことができる。
【0019】
初期始動段階の間における供給材料は、本明細書に記載のような、硝酸塩または亜硝酸塩を形成する化合物等の有機ハロゲン化物でない追加的な反応調節剤を含有することもできる。
【0020】
初期始動段階の間における供給材料は、エチレンを含有することもできる。エチレンは、全供給材料に対して、少なくとも10モル−%、好ましくは少なくとも15モル−%、より好ましくは少なくとも20モル−%の量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。エチレンは、全供給材料に対して、50モル−%以下、好ましくは45モル−%以下、より好ましくは40モル−%以下の量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。好ましくは、エチレンは、通常のエチレンオキシド製造の間に利用されるのと同じまたは実質的に同じ量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。これは、エチレン濃度が、初期始動段階と、工程をより効率的にする始動の後の通常のエチレンオキシド製造との間において調節されなくてよいというさらなる利点をもたらす。
【0021】
初期始動段階の間における供給材料は、酸素を含有することもできる。酸素は、全供給材料に対して、少なくとも1モル−%、好ましくは少なくとも2モル−%、より好ましくは少なくとも2.5モル−%の量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。酸素は、全供給材料に対して、15モル−%以下、好ましくは10モル−%以下、より好ましくは5モル−%以下の量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。供給材料中の酸素濃度をより低くすることにより酸素転換量が減少するので、触媒中のホットスポットがよりうまく回避され、工程がより容易に制御可能になる利点があるため、通常のエチレンオキシド製造の間の工程の後期段階における供給材料の組成と比べて、初期始動の供給材料中の酸素量をより少なく適用することは有利であり得る。
【0022】
初期始動段階の間における供給材料は、二酸化炭素を含有することもできる。二酸化炭素は、全供給材料に対して、5モル−%以下、好ましくは4モル−%以下の量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。
【0023】
実施形態において、初期始動段階は、全供給材料に対して、2モル−%未満、好ましくは1.5モルパーセント未満、より好ましくは1.2モルパーセント未満、最も好ましくは1モルパーセント未満、特定すると0.75モルパーセント以下の二酸化炭素も含有する。本発明の通常の実施において、反応器の供給材料中に存在する二酸化炭素量は、全供給材料に対して、少なくとも0.1モルパーセント、または少なくとも0.2モルパーセント、または少なくとも0.3モルパーセントである。適切には、二酸化炭素は、通常のエチレンオキシド製造の間に利用されるのと同じまたは実質的に同じ量で、初期始動の供給材料中に存在することができる。
【0024】
初期始動段階の間における供給材料の残部は、不活性および/または飽和の炭化水素を含有することもできる。不活性および飽和の炭化水素は、以下に記載されている。
【0025】
初期始動段階の間において、触媒温度は、好ましくは、エポキシ化工程が始動工程後に通常の運転条件下に「ラインアウト」された後の、通常の初期的な触媒運転温度と実質的に同じ温度であることができる。本明細書において用いられる「実質的に同じ温度」の用語は、エポキシ化工程が始動工程後に通常の運転条件下に「ラインアウト」された後の、通常の初期的な触媒運転温度の+/−5℃以内の触媒温度を含むことを意味する。好ましくは、触媒温度は、250℃未満、好ましくは245℃以下である。触媒温度は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも220℃、より好ましくは少なくとも230℃であることができる。反応器の入口圧力は、4000kPa絶対圧以下、好ましくは3500kPa絶対圧以下、より好ましくは2500kPa絶対圧以下であることができる。反応器の入口圧力は、少なくとも500kPa絶対圧である。以下に定義される気体時空間速度、すなわち「GHSV」は、500から10000Nl/(l.h)の範囲内であることができる。
【0026】
初期始動段階の間において、触媒を、エチレンおよび場合によって飽和炭化水素、特にエチレンおよび場合によってメタンを含む供給材料と最初に接触させることができる。次いで、有機塩化物が供給材料に添加され得る。酸素は、有機塩化物の供給材料への最初の添加と同時または直後に、供給材料に添加され得る。酸素添加の数分以内に、エポキシ化反応が開始し得る。二酸化炭素と追加的な供給材料成分とは、いつでも、好ましくは、初期始動の供給材料への酸素の最初の添加と同時または直後に添加され得る。上述のように、初期始動段階の間において、触媒は、触媒が始動工程後に通常の初期的な運転条件下に「ラインアウト」された後に生じる選択性でまたはこの付近で、エチレンオキシドを生成することができる。初期始動段階の間において、触媒は、エチレンオキシドが、通常のエチレンオキシド製造の間の目的の製造量の45から75%、特に同じ基準で50から70%の量を製造される条件下で運転される。
【0027】
場合によって、初期始動段階後に、触媒を、初期始動の供給材料に対して低減された量の有機塩化物を含む供給材料と接触させることができる。分かりやすさのみのために、工程のこのステップは、「中間始動段階」の用語により以下に示される。好ましくは、中間始動の供給材料は、通常のエチレンオキシド製造の初期的な時間の間に用いられる最適量未満の量で有機塩化物を含むことができる。有機塩化物の最適量に関する議論については、本明細書に参照により組み込まれるEP−A−352850、US−A−4761394および US−A−4766105を参照されたい。
【0028】
中間始動段階の間における中間始動の供給材料中の有機塩化物量は、初期始動の供給材料中の量の80%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは初期始動の供給材料中の有機塩化物量の70%以下であることができる。中間始動段階の間における中間始動の供給材料中の有機塩化物量は、初期始動の供給材料中の量の少なくとも45%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは初期始動の供給材料中の有機塩化物量の少なくとも55%であることができる。中間始動段階の間における中間始動の供給材料中の有機塩化物量は、全供給材料に対する塩化物のモルとして算出して、1×10
−4モル−%超、特定すると少なくとも1.2×10
−4モル−%、より特定すると少なくとも1.4×10
−4モル−%であることができる。
【0029】
中間始動段階の間における追加的な供給材料成分には、初期始動段階の間における供給材料の中で用いるための、本明細書に記載の成分を挙げることができる。好ましくは、有機塩化物量のみが減少することができ、供給材料中の他成分は初期始動の供給材料中と実質的に同じく残存する。
【0030】
中間始動段階の間において、触媒温度は、好ましくは、エポキシ化工程が始動工程後に通常の運転条件下に「ラインアウト」された後の、通常の初期的な触媒運転温度と実質的に同じ温度であることができる。好ましくは、触媒温度は、250℃未満、好ましくは245℃以下であることができる。触媒温度は、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも220℃、より好ましくは少なくとも230℃であることができる。反応器の入口圧力は、4000kPa絶対圧以下、好ましくは3500kPa絶対圧以下、より好ましくは2500kPa絶対圧以下であることができる。反応器の入口圧力は、少なくとも500kPa絶対圧である。以下に定義される気体時空間速度、すなわち「GHSV」は、充填触媒床を含む気相工程を利用した場合に、500から10000Nl/(l.h)の範囲内であることができる。中間始動段階の継続時間は、72時間以下、特定すると1から36時間、より特定すると2から24時間、例えば3から10時間であることができる。中間始動段階の間において、触媒は、エチレンオキシドが、通常のエチレンオキシド製造の間の目的の製造量の90から100%、特定すると同じ基準で95から100%の量で製造される条件下で運転され得る。
【0031】
初期始動段階後、または場合によって中間始動段階後に、供給材料中の有機塩化物量は、実質的に最適な選択性でエチレンオキシドを製造するために実施可能である値に調節され、特定すると、通常の初期的なエチレンオキシド製造条件下で最適な選択性を生じる有機塩化物の最適量の25%以内、より特定すると最適量の10%以内である量の値に調節され、最も特定すると、通常の初期的なエチレンオキシド製造条件下で最適な選択性を生じる有機塩化物の最適量に調節される。分かりやすさのみのために、エポキシ化工程のこの段階、すなわち、有機塩化物が通常の初期的なエチレンオキシド製造についての最適水準の選択性を得るように調節される始動工程の段階は、本明細書において「始動調節段階」の用語により示される。
【0032】
始動工程が、中間始動段階を含まない場合において、条件は、エチレンオキシドが通常のエチレンオキシド製造の間の目的の製造量の90から100%、特定すると同じ基準で95から100%の量で製造される条件下で、触媒が運転される調節段階の間に変化され得る。
【0033】
始動工程が中間始動段階を含む場合に、有機塩化物量は増加される。供給材料中の有機塩化物量の増加は、全供給材料に対する塩化物のモルとして算出して、少なくとも2×10
−5モル−%、適切には少なくとも3×10
−5モル−%、特定すると少なくとも5×10
−5モル−%であることができる。
【0034】
本エポキシ化工程は、空気ベースまたは酸素ベースであることができ、「Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology」第3編、9巻、1980年、445−447頁を参照されたい。空気ベースの工程において、空気、または酸素で富化した空気は、酸化剤源として用いられるが、酸素ベースの工程において、高純度(少なくとも95モル−%)または非常に高純度(少なくとも99.5モル−%)の酸素は、酸化剤源として用いられる。酸素ベースの工程のさらなる説明について、参照により組み込まれるUS−6040467が参照され得る。現在、ほとんどのエポキシ化プラントは酸素ベースであり、これは、本発明の好ましい実施形態である。
【0035】
本工程において用いるための有機塩化物は、塩化炭化水素であることができる。好ましくは、有機塩化物は、塩化メチル、塩化エチル、エチレンジクロリド、塩化ビニルまたはこれらの混合物の群から選択される。最も好ましい反応調節剤は、塩化エチル、塩化ビニルおよびエチレンジクロリドである。
【0036】
エチレン、酸素および有機塩化物の他に、通常のエポキシ化工程の間における製造供給材料は、窒素含有反応調節剤、二酸化炭素、不活性ガスおよび飽和炭化水素等の、1種または複数の場合による成分を含有することができる。
【0037】
窒素酸化物、ニトロメタン、ニトロエタンおよびニトロプロパン等の有機ニトロ化合物、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンまたはアンモニアは、エポキシ化工程における反応調節剤として用いられ得る。エチレンのエポキシ化の運転条件下において、窒素含有反応調節剤は、硝酸塩または亜硝酸塩の前駆体である、すなわち、それらは、いわゆる硝酸塩形成化合物または亜硝酸塩形成化合物であると、しばしば考えられる。窒素含有反応調節剤のさらなる説明について、本明細書に参照により組み込まれるEP−A−3642およびUS−A−4822900が参照され得る。
【0038】
適切な窒素酸化物は、式中、xが1から2.5の範囲内である、一般式NO
xのものであり、例えばNO、N
2O
3、N
2O
4およびN
2O
5が挙げられる。適切な有機窒素化合物は、ニトロ化合物、ニトロソ化合物、アミン、硝酸塩および亜硝酸塩、例えばニトロメタン、1−ニトロプロパンまたは2−ニトロプロパンである。
【0039】
二酸化炭素は、エポキシ化工程における副生成物である。しかし、二酸化炭素は、触媒活性に対して不利な影響を一般に有するので、高濃度の二酸化炭素は一般に避けられる。通常のエポキシ化工程の間における一般的なエポキシ化反応器供給材料は、全供給材料に対して10モル−%以下、好ましくは全供給材料に対して5モル−%以下の、供給材料中の二酸化炭素量を含有することができる。全供給材料に対して、3モル−%未満、好ましくは2モル−%未満、より好ましくは1モル−%未満の二酸化炭素量が用いられ得る。商業運転下において、全供給材料に対して、少なくとも0.1モル−%、特定すると少なくとも0.2モル−%の二酸化炭素量が、供給材料中に存在することができる。
【0040】
不活性ガスは、例えば、窒素もしくはアルゴンまたはこれらの混合物であることができる。適切な飽和炭化水素は、プロパンおよびシクロプロパン、特にメタンおよびエタンである。飽和炭化水素は、酸素可燃限界を上昇させるために、供給材料に添加され得る。
【0041】
通常のエチレンオキシド製造段階において、本発明は、エポキシ化工程の技術分野において公知の方法を用いることにより実施され得る。このようなエポキシ化法のさらなる詳細について、例えば、本明細書に参照により組み込まれるUS−A−4761394、US−A−4766105、US−B1−6372925、US−A−4874879およびUS−A−5155242が参照され得る。
【0042】
通常のエチレンオキシド製造段階において、この方法は、広範囲から選択される反応温度を用いて行われ得る。好ましくは、反応温度は、150から325℃の範囲内、より好ましくは180から300℃の範囲内である。
【0043】
通常のエチレンオキシド製造段階において、供給材料中の成分の濃度は、以下に記載のように広い範囲内で選択され得る。
【0044】
製造供給材料中に存在するエチレン量は、広い範囲内で選択され得る。供給材料中に存在するエチレン量は、全供給材料に対して80モル−%以下である。好ましくは、それは、同じ基準で0.5から70モル−%、特定すると1から60モル−%の範囲内である。好ましくは、製造供給材料中のエチレン量は、始動工程中に用いられるのと実質的に同じである。必要に応じてエチレン濃度は、触媒の寿命の間において増加されることができ、これにより、触媒が劣化した運転段階において選択性が改善されることができ、US−B1−6372925を参照されたく、この方法は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0045】
製造供給材料中に存在する酸素量は、広い範囲内で選択され得る。しかし、実際に酸素は、可燃性の領域を避ける量で一般に適用される。適用酸素量は、全供給材料の4から15モル−%、より一般的に5から12モル−%の範囲内である。
【0046】
可燃性の領域外に留めるために、供給材料中に存在する酸素量は、エチレン量が増加されるにつれて低下され得る。実際の安全運転範囲は、供給材料の組成とともに、反応の温度および圧力等の反応条件にも依存する。
【0047】
有機塩化物は、製造供給材料中に少量で、例えば、全製造供給材料に対する塩化物のモルとして算出して0.1モル−%以下、例えば、全製造供給材料に対する塩化物のモルとして算出して0.01×10
−4から0.01モル−%で用いた場合に、反応調節剤として一般に有効である。特に、有機塩化物は、全製造供給材料に対する塩化物のモルとして算出して1×10
−4から50×10
−4モル−%、特定すると1.5×10
−4から25×10
−4モル−%、より特定すると1.75×10
−4から20×10
−4モル−%の量で供給材料中に存在することができるのが好ましい。窒素含有反応調節剤が適用される場合に、これらは、製造供給材料中に少量で、例えば、全製造供給材料に対する窒素のモルとして算出して0.1モル−%以下、例えば、全製造供給材料に対する窒素のモルとして算出して0.01×10
−4から0.01モル−%で存在することができる。特に、窒素含有反応調節剤は、全製造供給材料に対する窒素のモルとして算出して0.05×10
−4から50×10
−4モル−%、特定すると0.2×10
−4から30×10
−4モル−%、より特定すると0.5×10
−4から10×10
−4モル−%の量で供給材料中に存在することができるのが好ましい。
【0048】
通常のエチレンオキシド製造段階の間はいつでも、製造供給材料中の有機塩化物量は、エチレンオキシド形成に対する最適な選択性を達成するために調節され得る。
【0049】
不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンは、全供給材料に対して0.5から90モル−%の量で製造供給材料中に存在することができる。空気ベースの工程において、不活性ガスは、30から90モル−%、一般に40から80モル−%の量で製造供給材料中に存在することができる。酸素ベースの工程において、不活性ガスは、0.5から30モル−%、一般に1から15モル−%の量で製造供給材料中に存在することができる。飽和炭化水素が存在する場合において、これらは、全製造供給材料に対して80モル−%以下、特定すると同じ基準で75モル−%以下の量で存在することができる。頻繁に、それらは、少なくとも30モル−%、より頻繁に同じ基準で少なくとも40モル−%の量で存在する。
【0050】
通常のエチレンオキシド製造段階において、エポキシ化工程は、好ましくは、1000から3500kPaの範囲内の反応器入口圧力で行われる。「GHSV」、すなわち気体時空間速度は、1時間当たりに充填触媒の1単位体積を通過する、常温および常圧(0℃、1atm、すなわち101.3kPa)のガスの単位体積である。好ましくは、エポキシ化工程が充填触媒床を含む気相工程である場合に、GHSVは、1500から10000Nl/(l.h)の範囲内である。好ましくは、その工程は、1時間当たりで触媒1m
3当たりに製造されるエチレンオキシド0.5から10kモル、より特定すると、1時間当たりで触媒1m
3当たりに製造されるエチレンオキシド0.7から8kモル、例えば、1時間当たりで触媒1m
3当たりに製造されるエチレンオキシド5kモルの範囲内の作業速度で行われる。本明細書において用いられるように、作業速度は、1時間当たりで触媒の単位体積当たりに製造されるエチレンオキシド量であり、選択性は、転換されたエチレンのモル量に対する、形成されたエチレンオキシドのモル量である。適切には、その工程は、製造混合物中のエチレンオキシド分圧が5から200kPaの範囲内、例えば11kPa、27kPa、56kPa、77kPa、136kPaおよび160kPaである条件下で行われる。本明細書において用いられる「製造混合物」の用語は、エポキシ化反応器の出口から回収される生成物を指すものと理解される。
【0051】
一般に、エポキシ化触媒は、担持された触媒である。担体は、広範囲の材料から選択され得る。このような担体材料は、天然または人工の無機材料であることができ、これらには、炭化ケイ素、粘土、軽石、ゼオライト、木炭および炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカおよびこれらの混合物等の耐熱性担体材料が好ましい。最も好ましい担体材料はα−アルミナである。
【0052】
担体の表面積は、担体の重量に対して、適切には少なくとも0.1m
2/g、好ましくは少なくとも0.3m
2/g、より好ましくは少なくとも0.5m
2/g、特定すると少なくとも0.6m
2/gであることができ、表面積は、担体の重量に対して、適切には20m
2/g以下、好ましくは10m
2/g以下、より好ましくは6m
2/g以下、特定すると4m
2/g以下であることができる。本明細書において用いられる「表面積」は、Journal of the American Chemical Society 60(1938年)309−316頁に記載のB.E.T法(ブルナウアー、エメットおよびテラー)により決定される表面積に関すると理解される。高表面積担体は、特に、これらがシリカ、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の成分を場合によってさらに含むアルファアルミナ担体である場合に、改善された運転の性能および安定性をもたらす。
【0053】
担体の吸水は、適切には少なくとも0.2g/g、好ましくは少なくとも0.25g/g、より好ましくは少なくとも0.3g/g、最も好ましくは少なくとも0.35g/gであることができ、吸水は、適切には0.85g/g以下、好ましくは0.7g/g以下、より好ましくは0.65g/g以下、最も好ましくは0.6g/g以下であることができる。担体の吸水は、0.2から0.85g/gの範囲内、好ましくは0.25から0.7g/gの範囲内、より好ましくは0.3から0.65g/g、最も好ましくは0.42から0.52g/gであることができる。吸水がより多いことは、含浸による担体上での金属および促進剤のより効率的な付着の点から有利になり得る。しかし、吸水がより多いと、そこから作製される担体、すなわち触媒は、より低い破砕強度を有することがある。本明細書において用いられるように、吸水は、ASTM C20に従って測定されているとみなされ、吸水は、担体の重量に対する、担体の細孔中に吸収され得る水の重量として表わされる。
【0054】
担体は、担体上に触媒成分を付着させる前に、可溶性の残留物を除去するために洗浄され得る。さらに、燃却材料を含む、担体を形成するために用いられる材料は、可溶性の残留物を除去するために洗浄され得る。このような担体は、本明細書に参照により組み込まれるUS−B−6368998およびWO−A2−2007/095453に記載されている。一方、未洗浄の担体も、首尾よく用いられ得る。担体の洗浄は、一般に、可溶性および/またはイオン性の材料の大部分を担体から除去するために有効な条件下で行われる。
【0055】
洗浄液は、例えば、水、1種もしくは複数の塩を含む水溶液、または水性の有機の希釈剤であることができる。水溶液中に含まれるために適切な塩には、例えばアンモニウム塩が挙げられ得る。適切なアンモニウム塩には、例えば、硝酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウム、フッ化アンモニウム、ならびに酢酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム、クエン酸水素アンモニウム、ギ酸アンモニウム、乳酸アンモニウムおよび酒石酸アンモニウム等のカルボン酸アンモニウムが挙げられ得る。適切な塩には、アルカリ金属硝酸塩、例えば硝酸リチウム、硝酸カリウムおよび硝酸セシウム等の他の種類の硝酸塩も挙げられ得る。水溶液中に存在するすべての塩の適量は、少なくとも0.001重量%、特定すると少なくとも0.005重量%、より特定すると少なくとも0.01重量%であることができ、10重量%以下、特定すると1重量%以下、例えば0.03重量%であることができる。含まれてもいなくてもよい、適切な有機の希釈剤は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジメチルホルムアミド、アセトンまたはメチルエチルケトンの1種または複数である。
【0056】
銀触媒の調製は、当技術分野において公知であり、公知の方法は、本発明の実施において用いられ得る触媒の調製に適用可能である。担体上に銀を付着させる方法には、銀カチオンおよび/または銀錯体を含有する銀化合物を担体または担体本体に含浸させることと、金属銀粒子を形成するための還元を行うこととが挙げられる。このような方法のさらなる記載について、本明細書に参照により組み込まれるUS−A−5380697、US−A−5739075、US−A−4766105およびUS−B−6368998が参照され得る。適切には、銀分散体、例えば銀ゾルは、担体上に銀を付着させるために用いられ得る。
【0057】
銀カチオンの金属銀への還元は、触媒が乾燥されるステップ中に達成され得るので、このような還元は、別個の工程ステップを要しない。これは、銀含有含浸溶液が還元剤、例えばシュウ酸塩、乳酸塩またはホルムアルデヒドを含む場合に当てはまることができる。
【0058】
かなりの触媒活性が、触媒の重量に対して、少なくとも10g/kgの触媒の銀含有率を用いることにより得られる。好ましくは、触媒は、10から500g/kg、より好ましくは50から450g/kg、例えば105g/kgまたは120g/kgまたは190g/kgまたは250g/kgまたは350g/kgの量で銀を含む。本明細書において用いられるように、別に明示されなければ、触媒の重量は、担体および触媒成分の重量を含む、触媒の全重量であるとみなされる。
【0059】
実施形態において、触媒は、触媒の全重量に対して、少なくとも150g/kgの触媒の銀含有率を用いる。好ましくは、触媒は、150から500g/kg、より好ましくは170から450g/kg、例えば190g/kgまたは250g/kgまたは350g/kgの量で銀を含む。
【0060】
本発明において用いるための触媒は、レニウム促進剤成分をさらに含む。レニウム促進剤を担体上に付着させることができる形態は、本発明に重要でない。例えば、レニウム促進剤は、酸化物として、またはオキシアニオンとして、例えば、レニウム酸塩または過レニウム酸塩として、塩または酸の形態で、適切に用意され得る。
【0061】
レニウム促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、少なくとも0.01mmol/kg、好ましくは少なくとも0.1mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.5mmol/kg、最も好ましくは少なくとも1mmol/kg、特定すると少なくとも1.25mmol/kg、より特定すると少なくとも1.5mmol/kgの量で存在することができる。レニウム促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、500mmol/kg以下、好ましくは50mmol/kg以下、より好ましくは10mmol/kg以下の量で存在することができる。
【0062】
実施形態において、レニウム促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、少なくとも1.75mmol/kg、好ましくは少なくとも2mmol/kgの量で存在することができる。レニウム促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、15mmol/kg以下、好ましくは10mmol/kg以下、より好ましくは8mmol/kg以下の量で存在することができる。
【0063】
実施形態において、触媒は、担体上に付着させたカリウム促進剤をさらに含むことができる。カリウム促進剤を、触媒の重量に対する付着させたカリウム元素の総量として算出して、少なくとも0.5mmol/kg、好ましくは少なくとも1mmol/kg、より好ましくは少なくとも1.5mmol/kg、最も好ましくは少なくとも1.75mmol/kgの量で付着させることができる。カリウム促進剤を、同じ基準で、20mmol/kg以下、好ましくは15mmol/kg以下、より好ましくは10mmol/kg以下、最も好ましくは5mmol/kg以下の量で付着させることができる。カリウム促進剤を、同じ基準で、0.5から20mmol/kg、好ましくは1から15mmol/kg、より好ましくは1.5から7.5mmol/kg、最も好ましくは1.75から5mmol/kgの範囲内の量で付着させることができる。本発明により調製された触媒は、特に、反応供給材料が少量の二酸化炭素を含有する条件下で運転された際に、触媒の選択性、活性および/または安定性に改善を示すことができる。
【0064】
本発明において用いるための触媒は、レニウム共促進剤をさらに含むことができる。レニウム共促進剤は、タングステン、モリブデン、クロム、硫黄、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され得る。
【0065】
レニウム共促進剤は、触媒の重量に対する元素(すなわち、タングステン、クロム、モリブデン、硫黄、リンおよび/またはホウ素の合計)として算出して、少なくとも0.1mmol/kg、より一般に少なくとも0.25mmol/kg、好ましくは少なくとも0.5mmol/kgの総量で存在することができる。レニウム共促進剤は、同じ基準で、40mmol/kg以下、好ましくは10mmol/kg以下、より好ましくは5mmol/kg以下の総量で存在することができる。レニウム共促進剤を担体上に付着させることができる形態は、本発明に重要でない。例えば、それは、酸化物として、またはオキシアニオンとして、例えば、硫酸塩、ホウ酸塩またはモリブデン酸塩として、塩または酸の形態で、適切に用意され得る。
【0066】
実施形態において、触媒は、レニウム促進剤およびタングステンを、2を超える、より好ましくは少なくとも2.5、最も好ましくは少なくとも3の、レニウム促進剤のタングステンに対するモル比で含有する。レニウム促進剤のタングステンに対するモル比は、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であることができる。
【0067】
実施形態において、触媒は、レニウム促進剤に加えて、第1の共促進剤成分および第2の共促進剤成分を含む。第1の共促進剤は、硫黄、リン、ホウ素およびこれらの混合物から選択され得る。第1の共促進剤は、元素として硫黄を含むのが特に好ましい。第2の共促進剤成分は、タングステン、モリブデン、クロムおよびこれらの混合物から選択され得る。第2の共促進剤成分は、元素としてタングステンおよび/またはモリブデン、特にタングステンを含むのが特に好ましい。第1の共促進剤および第2の共促進剤の成分を、担体上に付着させることができる形態は、本発明に重要でない。例えば、第1の共促進剤および第2の共促進剤の成分は、酸化物として、またはオキシアニオンとして、例えば、タングステン酸塩、モリブデン酸塩または硫酸塩として、塩または酸の形態で、適切に用意され得る。
【0068】
この実施形態において、第1の共促進剤は、触媒の重量に対して、元素の総量(すなわち、硫黄、リンおよび/またはホウ素の合計)として算出して、少なくとも0.2mmol/kg、好ましくは少なくとも0.3mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.5mmol/kg、最も好ましくは少なくとも1mmol/kg、特定すると少なくとも1.5mmol/kg、より特定すると少なくとも2mmol/kgの総量で存在することができる。第1の共促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、50mmol/kg以下、好ましくは40mmol/kg以下、より好ましくは30mmol/kg以下、最も好ましくは20mmol/kg以下、特定すると10mmol/kg以下、より特定すると6mmol/kg以下の総量で存在することができる。
【0069】
この実施形態において、第2の共促進剤成分は、触媒の重量に対して、元素の総量(すなわち、タングステン、モリブデンおよび/またはクロムの合計)として算出して、少なくとも0.1mmol/kg、好ましくは0.15mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.2mmol/kg、最も好ましくは少なくとも0.25mmol/kg、特定すると少なくとも0.3mmol/kg、より特定すると少なくとも0.4mmol/kgの総量で存在することができる。第2の共促進剤は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、40mmol/kg以下、好ましくは20mmol/kg以下、より好ましくは10mmol/kg以下、最も好ましくは5mmol/kg以下の総量で存在することができる。
【0070】
実施形態において、第1の共促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、1を超えることができる。この実施形態において、第1の共促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5、最も好ましくは少なくとも2、特定すると少なくとも2.5であることができる。第1の共促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であることができる。
【0071】
実施形態において、レニウム促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、1を超えることができる。この実施形態において、レニウム促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、好ましくは少なくとも1.25、より好ましくは少なくとも1.5であることができる。レニウム促進剤の第2の共促進剤に対するモル比は、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であることができる。
【0072】
実施形態において、触媒は、触媒の重量に対して、1mmol/kgを超える量でレニウム促進剤を含み、担体上に付着させた第1の共促進剤および第2の共促進剤の総量は、触媒の重量に対する元素の総量(すなわち、硫黄、リン、ホウ素、タングステン、モリブデンおよび/またはクロムの合計)として算出して、3.8mmol/kg以下であることができる。この実施形態において、第1の共促進剤および第2の共促進剤の総量は、好ましくは触媒の3.5mmol/kg以下、より好ましくは3mmol/kg以下であることができる。この実施形態において、第1の共促進剤および第2の共促進剤の総量は、好ましくは少なくとも触媒の0.1mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.5mmol/kg、最も好ましくは少なくとも1mmol/kgであることができる。
【0073】
触媒は、好ましくは、担体上に付着させたさらなる元素をさらに含むことができる。好適なさらなる元素は、窒素、フッ素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ハフニウム、ジルコニウム、バナジウム、タリウム、トリウム、タンタル、ニオブ、ガリウムおよびゲルマニウムならびにこれらの混合物の1種または複数であることができる。好ましくは、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウムおよび/またはセシウムから選択される。好ましくは、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウムおよびバリウムから選択される。好ましくは、さらなる元素は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、0.01から500mmol/kg、より好ましくは0.5から100mmol/kgの総量で触媒中に存在することができる。さらなる元素は、任意の形態で用意され得る。例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の塩または水酸化物が適している。例えば、リチウム化合物は、水酸化リチウムまたは硝酸リチウムであることができる。
【0074】
実施形態において、触媒は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、3.5mmol/kg超、特定すると少なくとも3.6mmol/kg、より特定すると少なくとも3.8mmol/kgの量でさらなる元素としてセシウムを含むことができる。この実施形態において、触媒は、触媒の重量に対する元素の総量として算出して、15mmol/kg以下、特定すると10mmol/kg以下の量でセシウムを含むことができる。
【0075】
本明細書において用いられるように、別に明示されなければ、触媒中に存在するアルカリ金属量と、担体中に存在する水浸出可能成分量とは、100℃で脱イオン水により触媒または担体から抽出され得る限りの量であるとみなされる。抽出法は、脱イオン水20ml分の中で触媒または担体の10グラムの試料を5分間100℃で加熱し、公知の方法、例えば原子吸光分光を用いることにより、合わせた抽出物中で関連する金属を決定することにより、触媒または担体の10グラムの試料を3回抽出することを含む。
【0076】
本明細書において用いられるように、別に明示されなければ、触媒中に存在するアルカリ土類金属量と、担体中に存在する酸浸出可能成分量とは、100℃で脱イオン水中の10重量%硝酸により触媒または担体から抽出され得る限りの量であるとみなされる。抽出法は、10重量%硝酸100ml分で触媒または担体の10グラムの試料を30分間(1atm、すなわち101.3kPa)煮沸し、公知の方法、例えば原子吸光分光を用いることにより、合わせた抽出物中で関連する金属を決定することにより、触媒または担体の10グラムの試料を抽出することを含む。本明細書に参照により組み込まれるUS−A−5801259が参照される。
【0077】
生成されたエチレンオキシドは、当技術分野において公知の方法を用いることにより、例えば、反応炉出口流からのエチレンオキシドを水中に吸収し、場合によって水溶液から蒸留でエチレンオキシドを回収することにより、生成混合物から回収され得る。エチレンオキシドを含有する水溶液の少なくとも一部は、エチレンオキシドを、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネートまたはアルカノールアミン、特に、エチレングリコール、エチレングリコールエーテル、エチレンカルボネートまたはアルカノールアミンに転換するための次の工程において適用され得る。
【0078】
エポキシ化工程において生成されたエチレンオキシドは、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネートまたはアルカノールアミンに転換され得る。本発明は、エチレンオキシドを製造するためのより魅力ある工程につながるので、それは同時に、本発明によるエチレンオキシドの製造と、1,2−ジオール、1,2−ジオールエーテル、1,2−カルボネートおよび/またはアルカノールアミンの製造における、得られたエチレンオキシドの次なる使用とを含む、より魅力ある工程につながる。
【0079】
1,2−ジオール(すなわちエチレングリコール)または1,2−ジオールエーテル(すなわちエチレングリコールエーテル)への転換は、例えば、酸または塩基の触媒を適切に用い、エチレンオキシドを水と反応させることを含むことができる。例えば、主に1,2−ジオールを作製し、1,2−ジオールエーテルを作製しないために、エチレンオキシドは、酸触媒、例えば全反応混合物に基づいて0.5−1.0重量%の硫酸の存在下で、1bar絶対圧で50−70℃での液相反応において、または130−240℃および20−40bar絶対圧で、好ましくは触媒不存在下での気相反応において、10倍モルの過剰な水と反応され得る。このような大量の水の存在は、1,2−ジオールの選択的形成に有利であることができ、反応温度の制御を助ける、反応発熱量の抑制として機能することができる。水の割合を低下させると、反応混合物中の1,2−ジオールエーテルの割合は増加される。代わりの1,2−ジオールエーテルは、水の少なくとも一部をアルコールで置き換えることにより、エチレンオキシドを、アルコール、特にメタノールまたはエタノール等の第一級アルコールで転換することにより調製され得る。
【0080】
エチレンオキシドは、エチレンオキシドを二酸化炭素と反応させることにより、対応する1,2−カルボネートに転換され得る。必要に応じて、エチレングリコールは、次いで1,2−カルボネートを、グリコールを形成するための水またはアルコールと反応させることにより調製され得る。適用可能な方法について、本明細書に参照により組み込まれるUS−6080897が参照される。
【0081】
アルカノールアミンへの転換は、例えば、エチレンオキシドをアンモニアと反応させることを含むことができる。無水アンモニアは、一般に、モノアルカノールアミンの製造を有利にするために用いられる。エチレンオキシドのアルカノールアミンへの転換において適用可能な方法について、例えば、本明細書に参照により組み込まれるUS−A−4845296が参照される。
【0082】
1,2−ジオールおよび1,2−ジオールエーテルは、多様な工業的用途、例えば、食物、飲料、タバコ、化粧品、熱可塑性ポリマー、硬化性樹脂系、洗剤、伝熱系等の分野において用いられ得る。1,2−カルボネートは、希釈剤として、特定すると溶媒として用いられ得る。アルカノールアミンは、例えば、天然ガスの処理(「スイートニング」)において用いられ得る。