(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、これを解消しようとするものである。具体的には、本発明は、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても適度に濃く描画可能であって、描画した部分をハイライトすることが可能で、上から半透明のシートを被せた場合、複写機によるコピーにおいて描画した部分が複写されない固形描画材を提供することを課題とする。さらに詳しくは、透明プラスチック、ガラス等透明な描画面に適度に濃く明確に描画可能でありながら、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい固形描画材を提供することを課題とする。また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材を提供することを課題とする。また、このような固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を行った結果、少なくとも樹脂、ワックス類、色材、白色の体質材からなる固形描画材において、樹脂としてロジン及び/又はロジンのグリセリンエステル等ロジン変成物を0.5重量%から20重量%、ワックス類として融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルを8重量%から50重量%の範囲で含むことにより、上記目的の固形描画材が得られることを見出し、下記のとおり、本発明を完成するに至ったのである。
【0011】
(1)第1の発明
上記の課題に鑑み、本願の第1の発明は、少なくとも樹脂成分、ワックス成分、色材及び白色の体質材を含有するとともに二酸化チタンを含有しない固形描画材20において、
前記樹脂成分として、ロジン及びロジン変成物のうち少なくとも一方を0.5重量%以上20重量%以下の範囲で含有し、
前記ワックス成分として、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方を8重量%以上50重量%以下の範囲で含有し、
前記白色の体質材は、二酸化チタン以外のものであって、窒化ホウ素、窒化ケイ素、微粉ケイ酸、微粉ケイ酸塩、炭酸カルシウム、雲母
、カオリナイト、デッカイト、ハロイサイト、セリサイト、モンモリロナイト、タルク
、硫化亜鉛、酸化亜鉛
及び硫酸バリウ
ムから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物
を合計で5重量%以上50重量%以下の範囲で含有するとともに、
融点40℃超の成分のみから成ることを特徴とする固形描画材。
【0012】
本発明において、「樹脂成分」として用いられるロジン及びロジン変成物は、一般的にロジン及びロジン変成物として分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。また、ロジンの主成分であるアビチエン酸を使用することも可能である。なお、ここで「ロジン変成物」とは、ロジンのグリセリンエステル等をいう。
これらは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形描画材20の着色性、硬さによって適宜選択される。
この樹脂成分の含有率は0.5重量%以上20重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が0.5重量%を下回ると、平滑面での定着性が劣り着色が不十分であり、また強度的に弱く、実用的でない。一方、20重量%を上回ると硬く、やはり平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。
【0013】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にグリセリン脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリド等、また、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれも用いることができる。さらに、これら以外のものとしては、グリセリン脂肪酸エステルを主成分とするハゼロウ、ウルシロウ等のモクロウ類、ヤマハゼロウ、ヤマウルシロウ等のスマックワックス類等の天然物のいずれをも用いることができる。
【0014】
本発明において、「ワックス成分」として用いられるペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸ペンタエリスリット、ステアリン酸ペンタエリスリット等、また、モノペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、トリペンタエリスリット、テトラペンタエリスリットのいずれも用いることができる。なお、融点が45℃を下回ると、実用上の強度が弱すぎ、固形描画材20を細く成形すると折れやすくなる。
【0015】
これら本発明に用いるグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形描画材20の着色性、硬さによって適宜選択される。
上記ワックス成分の含有率は8重量%以上50重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が8重量%を下回ると硬く、平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。一方、50重量%を上回ると強度的に弱くなり、実用的でない。
【0016】
本発明における「色材」としては、染料のほか、ジスアゾイエローAAA、ピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等染付け顔料、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、紺青等の無機顔料等をすべて用いることができる。また、後述の通り、場合により蛍光染料又は蛍光顔料を用いることができる。
本発明における「白色の体質材」としては二酸化チタン以外のもの、
具体的には、窒化ホウ素、窒化ケイ素、微粉ケイ酸、微粉ケイ酸塩、炭酸カルシウム、雲母
、カオリナイト、デッカイト、ハロイサイト、セリサイト、モンモリロナイト、タルク
、硫化亜鉛、酸化亜鉛
及び硫酸バリウム
の公知の体質材
を用いることができる。
この白色の体質材の含有量が5重量%を下回ると、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に適度に濃く明確に描画することができず、薄い描画面となり、好ましくない。また、この白色の体質材は、あまり多量に添加しても期待される性能向上には役立たず、かえって阻害してしまう。その上限の添加量は通常50重量%程度である。
【0017】
(2)第2の発明
また、本願の第2の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記樹脂成分と前記ワックス成分との比率が2:1〜1:25の範囲にあることを特徴とする。
樹脂成分の含有量がワックス成分に対し1:25より少ないと、得られる固形描画材20が脆く、また平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。また、樹脂成分の含有量がワックス成分に対し2:1より多いと固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分である。
要するに、樹脂成分と、ワックス成分とが好適な比率(すなわち、2:1〜1:25の範囲内)で混合されれば、平滑面での定着性が良好で、着色が良い固形描画材20が得られることになる。
なお、樹脂成分とワックス成分との混合は、事前に溶融混合しておくことも可能であるし、また、固形描画材20の製造工程において、他の配合物とミキサー中等で混合することも可能であり、その製造方法については特に限定されない。
【0019】
なお、融点が45℃を下回るグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステルや、ホホバ油等のワックス、スピンドル油、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、α−オレフィンオリゴマー、シリコーン油等の天然又は合成油であっても、上記の各成分の好適な含有量に影響を及ぼさない範囲であれば使用することができる。特に融点が40℃以下の成分(たとえば、融点が40℃以下のワックスやオイル等の有機成分)でも、固形描画剤20の全体に占める含有量が4.5重量%以下であれば使用することができる。しかし、固形描画材20を細く成形したい場合や、先端を尖らせたい場合には、強度の観点から、これらの低融点成分はなるべく含有しないことが望ましい。
【0020】
(
3)第
3の発明
また、本願の第
3の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記樹脂成分以外の追加樹脂成分としてポリエチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体のうちの少なくとも一方を20重量%以下の範囲で含有するとともに、
前記ワックス成分以外の追加ワックス成分として融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を30重量%以下の範囲で含むことを特徴とする。
すなわち、追加樹脂成分として、20重量%以下のポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体を、強度向上、硬さ、書き味調整等の目的で、前記樹脂成分と併用することができる。この追加樹脂成分が20重量%を超えると、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対する着色力が劣り、薄い描線となるため、好ましくない。
なお、以上の場合、前記樹脂成分と前記追加樹脂成分との合計含有量は、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると30重量%以下とすることが好ましい。
【0021】
また、前記追加樹脂成分としてのポリエチレン及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体と、前記樹脂成分としての、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及び/又はペンタエリスリトール脂肪酸エステルとは相溶性が低いため、追加ワックス成分として30重量%以下の融点45℃以上のパラフィンワックス、オゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を併せて使用されることとなっている。
追加ワックス成分として用いられるオゾケライト、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックスは従来公知のものがすべて使用できるが、パラフィンワックスは強度の点で、融点45℃以上であることが好ましい。その含有量はコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点で30重量%以下とすることが好ましい。
また、前記ワックス成分と前記追加ワックス成分との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましいが、強度の点で65重量%以下が望ましい。さらに、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
【0022】
(
4)第
4の発明
また、本願の第
4の発明は、前記第
3の発明の特徴に加え、前記ポリエチレンは低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン及び超低密度ポリエチレンから成る群から選ばれる1種又は2種以上の混合物であり、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体は酢酸ビニル含有量が30重量%以下、かつ、メルトフローレートが2g/分以上であることを特徴とする。
【0023】
すなわち、本発明で用いるポリエチレンは、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレンのいずれか1種類、又は、これらの混合物から選択することが好ましい。さらには、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが望ましい。
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、その他配合材との混練性、成形性や、コート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性の点に鑑みれば、酢酸ビニル含有量が30重量%以下、メルトフローレートが2g/分以上であるものから選択することが好ましい。
【0024】
(
5)第
5の発明
また、本願の第
5の発明は、前記第
3又は第
4の発明の特徴に加え、前記追加樹脂成分と、前記追加ワックス成分との比率が3:1〜1:20の範囲にあることを特徴とする。
ここで、追加樹脂成分の比率が追加ワックス成分に対して3:1より多い場合は固形描画材20が硬くなってしまい、着色性が不十分となる。また、追加樹脂成分の比率が追加ワックス成分に対して1:20より少ない場合は、得られる固形描画材20が脆くなってしまい、強度的に不十分である。
【0025】
(
6)第
6の発明
また、本願の第
6の発明は、前記第1の発明の特徴に加え、前記色材として蛍光染料又は蛍光顔料を含むことを特徴とする。
本来、色材としては、染料、比重があまり重くない一般的な顔料、二酸化チタン以外の顔料を適宜使用することができる。しかし、本発明の固形描画材は、下地が透けて見えることも一つの特徴であるため、アンダーラインマーカーとして利用可能であるので、塗布した箇所を目立たせるためには、染料あるいは顔料の一部又は全部を蛍光染料又は蛍光顔料とすれば、下地の隠ぺいをせず、かつ、塗布部分のハイライトを行うことのできる固形描画材とすることができる。
このハイライトされた塗布部分は、完全には隠ぺいされていないものの、半隠ぺいの状態である。ここに、半透明のシート、特に、固形描画材と同色の半透明シートを上から被せると、ほぼ完全な隠ぺい状態となる。この半透明シートを被せた状態で、複写機によりコピーを行っても、複写物では、その塗布された部分は像が消されて見ることはできなくなる。これによって、たとえば、教科書等の一部に本発明の固形描画材によってマーキングを行い、その上から半透明シートを被せ、コピーを撮れば、即席の穴埋め問題集を作成することができる。
【0026】
本発明で用いることができる蛍光染料としては、ヒドロキシトリスルホン酸(C.I.ソルベントグリーン7),フラビン(C.I.ベーシックイエロー1),酸性フラビン(C.I.アシッドイエロー7),ローダミンB(C.I.ベーシックバイオレット10),ローダミンF4G(C.I.ベーシックレッド1)等を使用することができる。
蛍光顔料としては、昼光蛍光染料をたとえば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂及びその共縮重合体等の合成樹脂に昼光蛍光強度が最大になる濃度で溶解し、蛍光性樹脂の微粉体としたものであり、その合成樹脂は、製造時の加熱、攪拌、混練、押し出し成形等に充分耐え得る耐熱性を有するものが好ましい。このような耐熱性の合成樹脂を用いた蛍光顔料を使用する事により製造時に顔料の凝集がなく良好な発色が得られる。かかる蛍光顔料としては、シンロイヒカラーSB−11(レッド・オレンジ)、シンロイヒカラーSB−13(レッド)、シンロイヒカラーSB−14(オレンジ)、シンロイヒカラーSB−15(イエロー)、シンロイヒカラー17(ピンク)、シンロイヒカラーSB−37(マゼンタ)等のシンロイヒカラーSBシリーズ(シンロイヒ社製)、エポカラーFP−112(ピンク)、エポカラーFP−113(レッド)、エポカラーFP−114(レッド)、エポカラーFP−115(レッド)、エポカラーFP−116(オレンジ)、エポカラーFP−117(イエロー)、エポカラーFP−101(ホワイト)、エポカラーFP−10(ピンク)、エポカラーFP−20(レッド)、エポカラーFP−30(レッド)、エポカラーFP−40(オレンジ)、エポカラーFP−3000(イエロー)、エポカラーFP−3000G(イエロー)、エポカラーFP−1007H(グリーン)、エポカラーFP−1025H(グリーン)、エポカラーFP−1050(ブルー)等のエポカラーFPシリーズ(日本触媒社製)、NKW−2100Eシリーズ、NKW−6200Eシリーズ(日本蛍光社製)、Ryudye−LUMINOUSシリーズ(大日本インキ社製)等を使用することができる。
【0027】
(
7)第
7の発明
また、本願の第
7の発明に係る固形描画具10は、前記第1の発明に係る固形描画材20と、
該固形描画材20の外周面に2周以上巻き回されるとともに、表面加工紙、合成紙、ポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンにより形成されている保護シート30とを備え、
該固形描画材20は該保護シート30ごと鉛筆削り器で切削するものであることを特徴とする。
「保護シート30」とは、この固形描画材20の外周面に、手指の汚れ防止や固形描画材20の保護あるいや補強のために巻き回されるシート状構造物をいう。
そして、この固形描画材20にこの保護シート30が巻き回されているものが「固形描画具10」である。
【0028】
本発明において用いられる、固形描画材20に2周以上巻き回す保護シート30は、鉛筆削り器で切削可能であれば、合成樹脂、天然樹脂等プラスチック、セラミック、金属、紙、木材等、特に限定されず、いずれも使用できるが、2周以上巻き回すことを考慮し、適宜その材質が選択される。すなわち、保護シート30の材質は、複数回巻き回すことによる柔軟性、厚さ、及び鉛筆削り器で切削する際の削り器の刃の耐久性、切削性を考慮すると、紙又は合成樹脂が望ましい。
なお、保護シート30の材質としての紙については、吸湿により繊維が膨潤することで切削性が悪くなることを考慮し、アート紙又はコート紙等表面加工した紙や、ポリプロピレン製等の樹脂を配合した合成紙が望ましい。
【0029】
また、保護シート30の材質としての合成樹脂については、公知のシート材又はフィルム材であれば特に限定されず、使用可能である。しかし、強度や鉛筆削り器による切削性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又は二軸延伸ポリプロピレンを使用することが望ましい。
また、強度及び切削時のカスの散乱防止の点で、保護シート30の内面側の一部又は全部に接着剤が塗布されていることが望ましい。この接着剤の材質は、これまでシール、シート、フィルム等に使用されてきたものであれば、特に限定はなく、いずれも使用可能である。
【0030】
なお、固形描画材20と保護シート30を固定するため、保護シート30の最内層に当たる部位には接着剤が塗布されていることが望ましい。また、保護シート30の最外層は、その直下の層に対し接着剤で固定することが必要である。そして、これらの中間部分には接着剤は塗布されていてもされていなくてもいずれでもよく、あるいは接着力の弱い接着剤を使用するなど、接着強度を変えたり、求める特性に応じて適宜選択することが可能である。
また、本発明では固形描画材20に保護シート30を2周以上巻き回すが、極端に薄いと皺になりやすい。また、あまりに厚ければ、最内層の辺縁と重なる部分に段差ができやすく、常温では巻きにくく、そして時間が経てば剥れやすい。よって保護シート30の厚さは概ね1μm以上かつ200μm以下が好ましく、5μm以上かつ150μm以下がさらに望ましい。
【0031】
また、保護シート30の巻き回しの回数が2周未満であれば強度的補強効果が少ないが、あまり多くてもずれが生じたりして製造上の問題となる。よって、内部の固形描画材20の径と保護シート30の厚さとを調整し、概ね3周から20周巻き回すことが望ましい。
【0032】
(
8)その他
また、上記各成分以外にも、従来公知のカルナバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ケトンワックス、ポリプロピレンワックス、各種脂肪酸アミドのワックス類、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等の金属石鹸も適宜選択し、配合することとしてもよい。
この場合、これらの成分と、前記ワックス成分(又は前記ワックス成分及び前記追加ワ
ックス成分)との合計含有量は、概ね70重量%以下が好ましい。なお、強度の点に鑑みれば65重量%以下が望ましく、さらにはコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に描画する場合の描線濃度、定着性を考慮すると60重量%以下とすることが望ましい。
その他、本発明において、描線を水で溶解させたり、拭き取ったりする目的で、従来水溶性色鉛筆等で公知の界面活性剤、紫外線吸収剤等各種添加剤をこれまで述べてきた強度、平滑な非吸収面への描画、容易な消去性等の特徴を低下させない範囲で配合してもよい。
【発明の効果】
【0033】
従来の固形描画材では、軟質化のためオイル等配合比を増量してきたが、その結果、強度が低く、また軟らかい割りに平滑面に対しては、オイルのブリード等で滑って十分な着色性が得られていないのが現状であった。
これに対して、本発明の固形描画材では、特定の樹脂、ワックス類の組み合わせ、比率により、オイル等液体成分の含有量を極限まで減量でき、その結果、強く、かつ平滑な非吸収面へ描画可能な固形描画材が得られた。
すなわち、本発明によれば、滑らかな書き味を有し、特にコート紙、プラスチック、金属、ガラス、ホワイトボード等の平滑な非吸収面に対しても適度に濃く描画可能であって、描画した部分をハイライトすることが可能で、上から半透明のシートを被せた場合、複写機によるコピーにおいて描画した部分が複写されない固形描画材が提供される。さらに詳しくは、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画可能でありながら、優れた曲げ強度等の機械的強度を有し、折れにくい固形描画材が提供される。また、上記の非吸収面に描画した場合、布、ティッシュペーパー等紙類、ホワイトボード消去具等で容易に消去できる固形描画材が提供される。また、このような固形描画材の外周を保護シートで被覆しつつ、この保護シートに剥離や離断等のためのミシン目や切れ目等の特別の構造を設けることなく、固形描画材の摩耗に伴って描画可能な先端部分を新たに露出させることが可能な固形描画具が提供される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明する。
【0036】
(1)実施例及び比較例の組成及び製法
(1−1)実施例1
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):17重量%
窒化ホウ素(水島合金鉄社製):14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練した後、所定の型に流し込み、断面が一辺8.0mm×8.0mmの
図1(A)に示すような緑色の固形描画材20を得た。
【0037】
(1−2)実施例2
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):18重量%
ホワイトカーボン(AZ−200、東ソー・シリカ社製):12重量%
パーマネントレッド:11重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの
図1(B)に示すような赤色の固形描画材20を得た。
【0038】
(1−3)実施例3
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
ロジンエステル:6重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃) 21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
カオリン(RC−1、竹原化学工業社製):6重量%
アルミナ(低ソーダ電融アルミナ微粉LA、大平洋ランダム社製):15重量%
ジスアゾイエローAAA:10重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの
図1(B)に示すような黄色の固形描画材20を得た。
【0039】
(1−4)実施例4
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
ロジン:9重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:13重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):8重量%
特1号酸化亜鉛(ハクスイテック社製):10重量%
エポカラーFP−1050青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの
図1(B)に示すような蛍光青色の固形描画材20を得た。
【0040】
(1−5)実施例5
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
ロジンエステル:12重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:3重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム(NITOREX30P、日東粉化工業社製):6重量%
ホワイトカーボン(AZ−200、東ソー・シリカ社製):15重量%
シンロイヒカラーSB−14オレンジ:10重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に加熱溶融したまま、所定の型に流し込み、直径8.0mmの
図1(B)に示すような蛍光オレンジの固形描画材20を得た。
【0041】
(1−6)実施例6
ステアリン酸グリセリド(融点61℃):43重量%
ロジンエステル:16重量%
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):18重量%
窒化ホウ素(水島合金鉄社製):12重量%
NKW−3907E桃:11重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に加熱溶融したまま、所定の型に流し込み、
図2に示すような直径7.0mm、長さ120mmの蛍光ピンクの固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シート30を
図3に示すように5周巻き回し、
図2に示すような直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0042】
(1−7)実施例7
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの二軸延伸ポリプロピレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0043】
(1−8)実施例8
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmのアート紙製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0044】
(1−9)実施例9
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):17重量%
ホワイトカーボン(AZ−200、東ソー・シリカ社製):14重量%
エポカラーFP−1007H緑:10重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に加熱溶融したまま、所定の型に流し込み、直径7.0mm、長さ120mmの蛍光緑の固形描画材20を得た。これに、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのポリ塩化ビニル製の保護シート30を6周巻き回し、直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0045】
(1−10)実施例10
上記実施例9の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ80μm、横141mm、縦120mmのスチレン製の保護シート30に置き換えたこと以外は、上記実施例9と同様の製法で直径7.9mm、長さ120mmの固形描画具10を得た。
【0046】
(1−11)比較例1
ハゼロウ(融点52℃):43重量%
ロジン:16重量%
タルク:17重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの
図1(A)に示すような緑色の固形描画材を得た。
【0047】
(1−12)比較例2
ハゼロウ(融点52℃): 40重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):10重量%
ホワイトミネラルオイル:10重量%
タルク:16重量%
二酸化チタン:14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をニーダーで加熱混合、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの緑色固形描画材を得た。
【0048】
(1−13)比較例3
ハゼロウ(融点52℃):15重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):10重量%
ロジン:16重量%
非晶性ポリα−オレフィン:0.5重量%
ホワイトミネラルオイル:10重量%
タルク:24.5重量%
ホワイトカーボン(AZ−200、東ソー・シリカ社製):14重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に加熱溶融したまま、所定の型に流し込み、冷却、固化して、断面が一辺8.0mm×8.0mmの緑色固形描画材を得た。
【0049】
(1−14)比較例4
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
ホワイトカーボン(AZ−200、東ソー・シリカ社製):15重量%
ジスアゾイエローAAA:10重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に加熱溶融したまま、所定の型に流し込み、直径8.0mmの黄色固形描画材を得た。
【0050】
(1−15)比較例5
ウルシロウ(融点52℃):22重量%
パラフィンワックス135F(日本精蝋):23重量%
マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋):5重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:22重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:15g/分)
タルク:8重量%
窒化ホウ素(水島合金鉄社製):10重量%
群青:6重量%
フタロシアニンブルー:4重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの青色固形描画材を得た。
【0051】
(1−16)比較例6
ハゼロウ(融点52℃):34重量%
パラフィンワックス155F(日本精蝋):15重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):15重量%
エチレン−酢酸ビニル共重合体:5重量%
(酢酸ビニル含有量:28重量%、メルトフローレート:40g/分)
炭酸カルシウム:6重量%
アルミナ(低ソーダ電融アルミナ微粉LA、大平洋ランダム社製):15重量%
ピラゾロンオレンジ:10重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの橙色固形描画材を得た。
【0052】
(1−17)比較例7
上記実施例6の保護シート30を、接着剤を含めた厚さ100μm、横138mm、縦120mmの上質紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記実施例6と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0053】
(1−18)比較例8
上記実施例6と同様の配合組成物をディスパーにて加熱混合し、分散させた後に2本ロールで混練した後、加熱溶融させ、所定の型に流し込み、直径7.8mm、長さ120mmの赤色の固形描画材を得た。これに、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのポリプロピレン合成紙製の保護シートを巻き回し、合わせ部を接着剤で貼り合わせ、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0054】
(1−19)比較例9
上記比較例7の保護シートを、厚さ80μm、横28mm、縦120mmのアート紙製の保護シートに置き換えたこと以外は、上記比較例7と同様の製法で直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0055】
(1−20)比較例10
ウルシロウ(融点52℃):15重量%
フィッシャー・トロプシュワックス(融点110℃):21重量%
モンタンワックス:12重量%
低密度ポリエチレン(住友化学):21重量%
カオリン:6重量%
タルク(NANO ACE D−600、日本タルク社製):15重量%
ジスアゾイエローAAA:2重量%
フタロシアニングリーン:8重量%
上記配合組成物をディスパーにて加熱混合させ、分散させた後に2本ロールで混練し、所定の型に流し込み、直径8.0mmの緑色の固形描画材を得た。
【0056】
(1−21)比較例11
上記実施例6と同様の固形描画材の外周面に接着剤を塗布し、外径8.0mm、内径7.1の木軸に装填し、直径8.0mm、長さ120mmの固形描画具を得た。
【0057】
(2)評価方法(実施例1〜5、比較例1〜6)
上記実施例1〜5及び比較例1〜6の固形描画材について、強度、紙、PETフィルム、ガラス、ホワイトボードに描画する際の着色性及び消去性について、評価、確認した。
【0058】
(2−1)強度
各固形描画材について、23℃の温度下、支点間40mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0059】
(2−2)着色性
実施例1並びに比較例1〜3に係る固形描画材はカッターナイフで先端を切削して尖らせた。実施例2〜5及び比較例4〜6に係る固形描画材は小型ミニシャープナーで先端を切削して尖らせた。これらのそれぞれを用いて、コピー用紙、PETフィルム、ガラス坂、ホワイトボード(WB)に描画し、その時の着色性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は以下のとおりとした。
A″:描線が濃すぎ、下地の文様や文字が全く見えなかった。
A′:描線が濃すぎ、下地の文様や文字が見えにくかった。
A:描線が濃く、はっきり見えるが、下地の文様や文字もよく判別できる程度であった。
B:描線が薄すぎてマーキングが見え辛かったが、下地の文様や文字もよく判別できる程度であった。
C:描線が薄すぎてマーキングが見え辛く、マーキングの有無が分からない。
D:描線はかなり掠れており、注意しないと見えない。
E:描線はほとんど見えない、若しくは描けない。
【0060】
(2−3)複写機消去性
上記(2−2)でコピー用紙に描いた描線の上に光透過率50%のPETフィルムを被せ、RICOH社製 imagio MP C6001の白黒コピーの標準状態でコピーを行い、その時の消去性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記のとおりとした。
A:下地の文字は完全に消え全く判別できなかった。
B:下地の文字は一部見えるが判別できなかった。
C:下地の文字は薄く見え注意深い観察により判別可能である。
D:下地の文字はやや薄く見え普通に判別できる。
E:下地の文字は普通に見え問題なく判別できる。
【0061】
(2−4)消去性
上記(2−2)でPETフィルム、ガラス坂、ホワイトボードに描いた描線をティッシュペーパーで擦り、その時の消去性をA〜Eの5段階で評価した。評価基準は下記のとおりとした。
A:良く消えて全く跡が残らない。
B:消えるが少し跡が残る。
C:描線の形が消えずに残る。
D:ほとんど消えない。
E:全く消えない(ただし、上記(2−2)の評価がD又はEであった場合はこの評価とした)。
【0062】
(2−5)評価結果
上記実施例1〜5及び比較例1〜6を用いた上記各評価方法についての評価結果を、下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上記のとおり、本発明の実施例1〜5に係る固形描画材はいずれも良好な結果を示した。すなわち、強度については、実施例1〜5はいずれも実用に十分な数値を示した。また、いずれの描画対象物についても、着色性及び消去性ともにA評価を得た。ただし、ホワイトボードに描いた場合の消去性は、市販のホワイトボード専用マーカーの消去性よりやや劣るためB判定となった。
【0065】
これに対し、本発明の範囲外である比較例1〜6の試験結果は、コピー紙への着色性の評価以外はいずれも評価が劣るという結果となり、必然的に複写機消去性も劣る結果となった。
まず、比較例
2はハゼロウのみでロジン等が配合されていないため、描画時に先端が折れやすかった。また、軟らかい割りに平滑面に対して滑ってしまい、下地の文様や文字が見える程度に描画できない結果となった。
比較例
3は、オイル量が多いため、描画時に先端が折れやすかった。また、平滑面に描いた描線を擦って消す際、描線を引き伸ばして消えにくかった。
比較例
4〜
6は強度も強く、紙に描画する場合はほとんど問題なかったが、平滑面に描画する場合、滑って描画ができない、という結果となった。
【0066】
(3)評価方法(実施例6〜10、比較例7〜11)
上記実施例6〜10及び比較例6〜11の固形描画具について、強度及び鉛筆削り器による切削性について評価した。
【0067】
(3−1)強度
各固形描画材について、23℃又は40℃の温度下、支点間60mmで3点曲げ強度測定し、折損した際の荷重(単位:N)を求めた。
【0068】
(3−2)鉛筆削り器による切削性
モニター5名に、三菱鉛筆製ミニ鉛筆削り器(商品名:ポケットシャープナーDPS−101 PLT)を用いて常温・常湿(23℃、50%)の環境下及び高温・高湿(35℃、80%)の環境下にて先端が尖るように(
図4参照)切削させたうえで、その切削性を下記の1〜5点の5段階で官能評価させ、その平均点を求めた。
1:著しく悪い。
2:悪い。
3:良くも悪くもない。
4:良い。
5:著しく良い。
【0069】
(3−3)評価結果
各実施例及び比較例を用いた上記評価方法についての評価結果を、下記表2に示す。
【0070】
【表2】
【0071】
上記のとおり、本発明の実施例6〜10に係る固形描画具はいずれの評価方法も良好な結果を示した。すなわち、固形描画具自体の強度は、23℃及び40℃の両方の温度条件を通じて、少なくとも50N以上の値を示した。また、切削性についても、常温・常湿及び高温・高湿の両方の測定条件を通じて、いずれの実施例でも平均にして4点を上回る高評価であった。また、切削の際、保護シートが剥れたり破れたりすることもなかった。
【0072】
これに対し、本発明の範囲外である比較例
7〜1
1の試験結果においては、各々少なくとも1個の項目において評価結果が劣ることとなった。
比較例
7で保護シートとして使用した上質紙は、堅く吸湿しやすいため、これを巻き回した比較例
7では、固形描画材を同じくする実施例
6に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。特に高温・高湿の条件下では、保護シートが破れるという結果となった。
比較例
8及び
9は、保護シートの巻き回しが1周のため弱くて折れやすく、固形描画具としては強度不足であった。また、保護シートの接着材は重ね合わせる部位のみに塗布されていたため、保護シートが固形描画材から剥れやすかった。このことによって、固形描画材を同じくする実施例6に比べ、明らかに切削性が劣ることとなった。
比較例
10は切削性については問題なかったが、強度が著しく弱く、折れやすいため実用には適さないと思われる。
比較例1
1は、同じ固形描画材を使用した実施例6よりも木軸を備える分だけ堅牢で強度は強かった。しかし、木軸の厚さが0.1mmと薄かったため、固形描画材との接着強度が弱く、特に高湿条件下では軸が割れてしまい、実施例6に比べ切削性の評価が著しく低下することとなった。