【実施例1】
【0021】
図1(a)に示す本発明の第1実施例は、太陽電池1にて構築される屋根の裏面側に、軒から棟に連通する空気層10が形成され、該空気層10を棟構造4内部と連通させ、該棟構造4を形成する換気面40は、横向きの複数のルーバー41を、換気部42である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、最も下方に位置する換気部42は、棟構造4内部の空気を棟構造4外部へ導出する導出部2aである。そして、最下段に位置するルーバー41IIとして、立ち上げ片411(=起立状部3)を備えるものを固定してその棟側に位置する換気部42を導出部2aとした構成である。
【0022】
前記棟構造4は、右半を省略して示しているが、屋根の棟部に跨って略山形状を形成する左右の傾斜側面状の換気面40を主体とする。そして、金属板材等を適宜に折曲して断面が略S字状に形成される複数のルーバー41を、上下方向に多数段連続させ、端部に傾斜状に組み付けられる補助固定材43の外面側及び内面側に固定した構成である。なお、図中に示す符号44は、左右の補助固定材43を突き合わせた頂部に取り付ける頂部化粧材であって、外面側及び内面側のそれぞれの最上方に位置するルーバー41,41に跨るように固定されている。
前記ルーバー41は、上端及び下端にそれぞれ折り返し部が設けられ、補助固定材43の外面側に固定されている各ルーバー41は、外面側から見て上半に凸部が、下半に凹部が位置するように配設され、しかも各ルーバー41の上端は上段側のルーバー41の凹部内に非接触状に位置し、下端が下段側のルーバー41の凸部内に非接触状に位置するように配設されている。また、補助固定材43の内面側に固定するルーバー41は、補助固定材43の外面側に固定するルーバー41と略対称状となるように取り付けられている。
この構成の棟構造4では、外面側の各換気部42の開放部分が上方へ向くように形成されているため、棟構造4内に滞留する空気が上昇による排出を行いやすくした構成とし、侵入した雨水は内面のルーバー41によって室内側に侵入することなく下方へ排出(導く)構造となっている。
そして、この棟構造4を構成するルーバー41のうち、最も下方に位置するルーバー41IIとして、その上端を外側上方へ立ち上げ(立ち上げ片411)、この立ち上げ片411を略垂直状の起立状部3とした。
【0023】
この
図1(a)の棟構造では、白抜き矢印にて示すように軒側下方から棟側上方に向かって風(吹き上げ風)が吹いているため、風上側とは下方を指し、前述のようにその上端を外側上方へ立ち上げて起立状部3(立ち上げ片411)としたルーバー41IIを最も下方に位置させることにより、その上方に位置する換気部42が、棟構造4内部の空気を棟構造4外部へ導出する導出部2aとなる。
この起立状部3による空気の流れを、
図1(b)の拡大図にて説明すると、吹き上げ風W1が起立状部3に吹き付けられて上方へ向かう風W2となり、巻き戻る風W3となったり他の風の流れと共に流れる風W4となるが、起立状部3に当たった風が上方に乱流を起こし、換気部2上端を減圧状態とするため、棟構造4内部の空気が棟構造4外部へ吸い出される導出部2aとして作用することが実験によりわかった。そして、棟構造4内部は、太陽電池1の裏面側の軒から棟に連通する空気層10と連通しているので、
図1(a)にて破線矢印にて示す空気の流れが促進され、太陽電池1裏面の温められた空気及び熱量を放出することで、太陽電池1の温度上昇を抑え、発電効率の低下を防ぐことができる。
【0024】
この第1実施例における屋根は、太陽電池1にて構築される屋根構造が、雨仕舞い性能を有する下層材(既設屋根)6上に後述する持出部材7Aや支持部材7G等を介して構築された構成であって、これらの太陽電池1の構成、下層材6の構成について以下に簡単に説明する。
【0025】
前記下層材(既設屋根)6は、C形鋼からなる躯体6Aの上に、木毛セメント板等の下地材6B、防水シート6Cが敷設されて下地を構成し、該下地の上に断熱材6D及び流れ方向に沿う金属垂木6E(固定材6F、その固定具6g)が取り付けられ、その上に下層材(外装材)6として、横葺き外装材が施工されている。この下層材6は、面板部61の水上側端部に表面側へ略く字状に折り返して形成した被重合部63が形成され、水下側端部には裏面側へ略コ字状に折り返して形成した重合部62が形成され、下段側の外装材6の被重合部63に、上段側の外装材6の重合部62を重合状に係合させると共にピース状の吊子6Hにて下地上に固定されている。
【0026】
前記下層材(既設屋根)6の重合部分に、前記下地に沿う固定部の水上端縁を水下側から挿入するように持出部材7Aがビスである固定具7bにて固定され、L字材7D及び左右方向に配設する略矩形柱状のレール材7Fを介して流れ方向に連続する支持部材7Gが固定されている。
前記持出部材7Aの上面及び前記レール材7Fの水下側の側面には、それぞれ長さ方向に溝部が形成され、該溝部にそれぞれボルト材の頭部を収納した状態でスライド可能であり、ナットを締め付けて留め付けることができる。図中、7eは、持出部材7A、レール材7Fの各溝部に取り付けられたボルトナットである。そのため、何れかのボルトナット7eを緩めた状態で左右方向に適宜に位置調整が可能であり、締め付けることでレール材7F及びその上の支持部材7Gを所望の位置に固定することができる。
【0027】
このような構造を有する第1実施例の棟構造では、起立状部3を設けて形成した導出部2aにて棟構造4内部の空気を棟構造外部へ導出することができ、棟内部、及びそれと連通する屋根裏面の空気層の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがない室内環境の建築物とすることができる。
【0028】
また、この第1実施例では、屋根が太陽電池1にて構築されているが、太陽電池1裏面に滞留する温められた空気及び熱量を放出することで、太陽電池1の温度上昇を抑え、発電効率の低下を防ぐことができる。
【0029】
図2に示す本発明の第2実施例は、横葺き屋根8の裏面側に、軒から棟に連通する空気層80が形成され、該空気層80を棟構造4'内部と連通させ、該棟構造4'を形成する換気面40'は、横向きの複数のルーバー41'を、換気部42'である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、最も下方に位置する換気部42'は、棟内部の空気を棟外部へ導出する導出部2aである。そして、最下段に位置するルーバー41'に、跳ね上げ状になるように弧状片3aをビス固定(ビス3b)して起立状部3とし、その棟側に位置する換気部42'を導出部2a'とした構成である。
【0030】
なお、この第2実施例における棟構造4'は、ルーバー41'の断面形状が僅かに異なる以外は、前記第1実施例における棟構造4とほぼ同様であるから、同一符号に『'』を付して説明を省略する。
【0031】
この第2実施例における屋根は、C形鋼からなる躯体8Aの上に、流れ方向に連続する縦桟材8Bが配設されて下地を構成し、該下地の上に下層材(外装材)8として、横葺き外装材が施工されている。この下層材8は、面板部81の水上側端部に表面側へ略く字状に折り返して形成した被重合部83が形成され、水下側端部には裏面側へ略コ字状に折り返して形成した重合部82が形成され、下段側の外装材8の被重合部83に、上段側の外装材6の重合部82を重合状に係合させている。
【0032】
そして、この
図2(a)の棟構造でも、白抜き矢印にて示すように軒側下方から棟側上方に向かって風(吹き上げ風)が吹いているため、前述のように最も下方に位置する換気部42'が、棟内部の空気を棟外部へ導出する導出部2a'となる。
この起立状部3による空気の流れを、
図2(b)の拡大図にて説明すると、吹き上げ風W1が起立状部3に誘導されて上方へ向かう風W2となって巻き戻る風W3となり、導出部2a'の上方に乱流を起こして減圧状態とするため、棟内部の空気が棟外部へ吸い出される導出部2a'として作用することが実験によりわかった。そして、棟内部は、屋根8の裏面側の軒から棟に連通する空気層80と連通しているので、
図2(a)にて破線矢印にて示す空気の流れが促進され、棟内部及び屋根裏面の空気層80の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがなく、室内環境の建築物とすることができる。
【0033】
図3は、最下段のルーバー41に一体的に起立状部3を設けるバリエーションを示すものであり、より詳しくは最下段に設けるルーバー41に代えて、立ち上げ片413〜418が起立状部3であるバリエーション(ルーバー41III〜41VIII)を示す。なお、この構成以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3(a)は、弧状に形成した立ち上げ片413を設けたルーバー41IIIを用いるものであって、別体の弧状片3aを固定した前記第2実施例と全く同様に風が誘導され、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(b)は、上方へ傾斜状に立ち上げた先端を下方へ折り返した略へ字状の立ち上げ片414を設けたルーバー41IVを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(c)は、平坦状の棟端を上方へ弧状に形成した立ち上げ片415を設けたルーバー41Vを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(d)は、上端を更に上方へ略へ字状に形成した立ち上げ片416を設けたルーバー41VIを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(e)は、傾斜状に立ち上げた立ち上げ片417を設けたルーバー41VIIを、最下段のルーバー41の外側へ沿うように固定したものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(f)は、傾斜状に立ち上げた立ち上げ片418を設けたルーバー41VIIIを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
【0035】
図4は、最下段又は下から2番目のルーバー41に別体の成形材3I〜3VIIIを取り付けて起立状部3とするバリエーションを示す。これらの何れの成形材3I〜3VIIIも、必要に応じてピース材でも連続材でも対応可能であり、それぞれの導出部2aから棟内部の空気が排出される。なお、この構成以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図4(a)は、金属板材等を略へ字状に成形した成形材3Iを最下段のルーバー41の上方に沿わせて固定したものである。
図4(b)は、金属製又は硬質樹脂製の押出型材(成形材3II)を下から2番目のルーバー41の上端にビス固定したものである。
図4(c)は、下から2番目のルーバー41"を金属製又は硬質樹脂製の押出型材とすると共に、その上端に金属製又は硬質樹脂製の押出型材(成形材3III)をビス固定したものであり、2部材からなるルーバーを用いると見なすこともできる。
図4(d)は、略碇状の成形材3IVを下から2番目のルーバー41に対して図中に点線で示すように取り付け、ビスや接着剤等を用いることなく回動(傾動)自在に取り付けられるものである。
図4(e)は、上方に開放する嵌合溝を形成した成形材3Vを下から2番目のルーバー41の上端に嵌合状に取り付けるものである。
図4(f)は、前記
図4(a)とほぼ同様な形状を押出型材で成形し、最下段のルーバー3VIとした。
図4(g)は、成形材3VIIが金属板材等から作成したこと以外は、
図4(f)と全く同様である。
図4(h)は、厚肉の金属板材等からなる成形材3VIIIが最下段のルーバー41の上端にカシメて取り付けられているものである。
【0037】
図5は、換気面40に設ける導出部2aの配列バリエーションを示す。
図5(a)及び
図5(b)は、前記
図4(f)における成形材3VIとほぼ同形状のアルミ押出材からなるルーバー4IXを、換気面40の最下段のルーバー41に代えて配設した用いた以外は、前記第1実施例と同様であり、加えて
図5(b)では下から5番目にもルーバー4IXを配設した。これにより、
図5(a)では、換気面40の最下段の換気部42が導出部2aとなり、これに加えて
図5(b)では、換気面40の中程にも導出部2aが設けられる。
また、
図5(c)は、前記
図3(a)におけるルーバー41IIIと近似する形状のルーバー4Xを、通常のルーバー41と交互に配設し、換気面40のほぼ全面に亘って導出部2aが設けられるものとなる。
このように導出部2aは、一箇所のみに限定されず、二箇所、或いはそれ以上に設けるようにしてもよい。
【0038】
図6は、それ以外のバリエーションを示す。
図6(a)は、隣接する二つのルーバー41,41に跨るように上方へ山状に突出する成形材51を固定するものであり、図中に示した点線で囲む部分にパンチング(穴あけ)加工を施し、ビス止めして取り付けられる。
図6(b)は、ルーバー41の上方縦部に、ルーバー41を転用した成形材52の下方縦部をビス止めして取り付けたものである。
これらの
図6(a)の成形材51、及び
図6(b)の上方の成形材52は、既設の棟構造に後付けすることができる。
図6(c)は、最下段のルーバー41に代えて複数部材を組み合わせて形成される起立状部53を取り付けたものであり、補助固定材43の外面側のルーバー41は上下を逆に取り付けている。
図6(d)は、最下段のルーバー41と下から2段目のルーバー41との間に複数部材を組み合わせて形成される起立状部54を取り付けたものである。
図6(e)は、最下段のルーバー41に代えて上方へ高く略く字状に立ち上げると共に下端を下から2段目のルーバー41に固定した起立状部55を取り付けたものである。
図6(f)は、最下段のルーバー41に代えて上方へ高く立ち上げた部材と略コ字状の部材とからなる起立状部56を取り付けたものである。
これらの
図6(d)〜(f)では、導出部2aは、2段目のルーバー41の棟側に形成されるが、起立状部54〜56にパンチング(穴あけ)加工を施してこの穴も図中に点線で示すように導出部2aとすることができる。、