特許第6099317号(P6099317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099317
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】建築物の屋根の棟構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/16 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   E04D13/16 M
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-97752(P2012-97752)
(22)【出願日】2012年4月23日
(65)【公開番号】特開2013-224557(P2013-224557A)
(43)【公開日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082669
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 賢三
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100095061
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 恭介
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【審査官】 油原 博
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−226949(JP,A)
【文献】 特開2005−048422(JP,A)
【文献】 特開2003−056145(JP,A)
【文献】 特開昭60−109460(JP,A)
【文献】 特開平11−044035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/16、13/18
H02S 20/23、40/12
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の屋根の棟部に設けられる棟構造であって、
棟部には棟構造内部と軒から棟に至る屋根裏面とを連通する空気層を形成し、
前記棟構造を形成する換気面は、横向きの複数のルーバーを、換気部である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、
少なくとも1つ以上の換気部は、棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出する導出部であり、該導出部は、換気部を挟んで対向する端縁の風上に、換気面を形成するルーバーの1つ以上に取り付けた起立状部を設けていることを特徴とする建築物の屋根の棟構造。
【請求項2】
屋根は、太陽電池にて構築されていることを特徴とする請求項1に記載の建築物の屋根の棟構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棟構造の換気面への風の吹き付けを効率よく利用して小屋裏や屋根の裏面側で温められた空気を棟構造から速やかに排出し、棟部構造内に滞留する熱量を強制的に放出することができ、例えば屋根が太陽電池で構成される際にも、太陽電池セルの温度上昇による発電効率の低下を防ぐことができる建築物の屋根の棟構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物は、日照等によって内部の空気が温められ、その空気は温度差による自然対流によって上昇し、建築物内の高い位置である小屋裏(棟部)に滞留しやすいものであった。
また、建築物の棟部は、屋内側や屋根裏面の温められた空気を排出するために開口部が設けられ、その開口部を覆う棟構造とすることで換気を行うものであった。
近年、太陽光を屋根に設置することが進められているが、太陽電池の裏面においても上記と同様な「高温」の問題が生じている。そして、太陽電池は、高温になることで発電効率が低下するという問題がある。
【0003】
例えば特許文献1などには、換気棟の内部を小屋内部や屋根裏面と連通させることにより、温められた空気が上昇する自然対流により、排気することができる換気棟が記載されている。
また、特許文献2には、軒先側から導入した空気を太陽電池の裏面側を通し、棟頂部に位置する小屋裏にてファンを稼働して排気する構成が記載されている。
さらに、特許文献3には、太陽電池を設置した屋根構造が記載され、軒先から外気を導入し、棟部で排出する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−36648号公報
【特許文献2】特開2001−90296号公報
【特許文献3】特開平11−44035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の棟構造では、前述のように自然対流によって排気されるものであるため、十分な通気(換気)が行われず、極めて効率が悪いものであった。
また、前記特許文献2では、ファンを稼働して積極的に排気するものであるが、所定の効果を得ようとすると、ファンの稼働時間も長くなり、ファンの稼働に伴う熱量も発生するため、有効な方法とは言えないものであった。
さらに、前記特許文献3では、軒先からの外気の導入量によって棟部からの排出量が左右され、効率的なものでない。また、このような軒先から導入する仕様にあっては、その大半が導入部が下向きであるため、空気層内の空気を常に排出できるほどの導入量は期待できないものであった。
【0006】
そこで、本発明は、ファンのような電気設備を用いることなく、棟構造の換気面への風の吹き付けを効率よく利用して小屋裏や屋根の裏面側で温められた空気を棟構造から速やかに排出し、棟部構造内に滞留する熱量を強制的に放出することができ、例えば屋根が太陽電池で構成される際にも、太陽電池セルの温度上昇による発電効率の低下を防ぐことができる建築物の屋根の棟構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、建築物の屋根の棟部に設けられる棟構造であって、棟部には棟構造内部と軒から棟に至る屋根裏面とを連通する空気層を形成し、前記棟構造を形成する換気面は、横向きの複数のルーバーを、換気部である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、少なくとも1つ以上の換気部は、棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出する導出部であり、該導出部は、換気部を挟んで対向する端縁の風上に、換気面を形成するルーバーの1つ以上に取り付けた起立状部を設けていることを特徴とする建築物の屋根の棟構造に関するものである。
【0008】
また、本発明は、前記棟構造において、屋根は、太陽電池にて構築されていることを特徴とする建築物の屋根の棟構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の建築物の屋根の棟構造は、少なくとも1つ以上の換気部の風上側に起立状部を設けることで導出部とすることができ、該導出部にて棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出することができ、棟構造内部及び屋根裏面の空気層の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがなく、例えば夏季には涼しく、冬季には暖かい室内環境の建築物とすることができる。
しかも起立状部は、屋根面に取り付けるものではなく、換気面を形成するルーバーの1つ以上に取り付けるので、屋根の仕様に何等影響を受けるものでもなく、取付や交換も極めて容易に実施することができる。
【0011】
また、屋根が太陽電池にて構築されている場合には、太陽電池裏面の温められた空気及び熱量を放出することで、太陽電池セルの温度上昇を抑え、発電効率の低下を防ぐことができる。
この場合も起立状部は太陽電池やその固定部材等に取り付けるものではなく、換気面を形成するルーバーに取り付けるので、太陽電池やその固定部材等の仕様に何等影響を受けるものでもないので、取付や交換も極めて容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)屋根が太陽電池を用いた屋根構造である本発明の第1実施例の棟構造を示す側断面図、(b)第1実施例における起立状部による風の導出作用を示す拡大断面図である。
図2】(a)屋根が外壁通気構造である本発明の第2実施例の棟構造を示す側断面図、(b)第2実施例における起立状部による風の導出作用を示す拡大断面図である。
図3】(a)〜(f)ルーバー形状の実施バリエーションを示す側断面図である。
図4】(a)〜(h)起立状部の取付バリエーションを示す側断面図である。
図5】(a)〜(c)導出部の配列バリエーションを示す側断面図である。
図6】(a)〜(f)その他のバリエーションを示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の建築物の屋根の棟構造は、建築物の屋根の棟部に設けられる棟構造であって、屋根の裏面には軒から棟に連通する空気層が形成され、該空気層を棟構造内部と連通させ、棟構造を形成する換気面は、横向きの複数のルーバーを、換気部である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、少なくとも1つ以上の換気部は、棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出する導出部であり、該導出部は、換気部を挟んで対向する端縁の風上に起立状部を設けていることを特徴とする。
この構成により、少なくとも1つ以上設けた導出部にて棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出することができるので、棟構造内部と連通する空気層の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがなく、例えば夏季には涼しく、冬季には暖かい室内環境の建築物とすることができる。
【0014】
本発明に用いる棟構造は、換気面が、横向きの複数のルーバーを換気部である所定間隔を隔てて上下方向に多数連続させて形成してなる構成である。この換気面を構成するルーバーとしては、複数の折曲部分を有する成形体でも、湾曲部分を含む成形体でもよく、特に形状を限定するものではないが、後述する図示実施例に用いたルーバーのように傾斜角度が相違するものの複数の下り傾斜面にて形成される成形体を用いることが望ましく、また外面側と内面側との二重に取り付けるようにしてもよい。
【0015】
隣接するルーバー間に形成される所定間隔の換気部は、下方から吹き上げる風に直交する方向、略水平状の横向きに形成される。この換気部は、後述する起立状部を形成する位置によって、棟構造内部の空気を棟構造外部へ導出する導出部となったり、逆に棟構造内部へ棟構造外部の空気を導入する導入部となったりもする。なお、この換気部には、パンチング、メッシュ、網等の空気の流れを阻害しないものであればごみ等の侵入を防止する部材を配してもよい。
【0016】
起立状部は、換気部を挟んで対向する端縁の風上に設けるものであって、換気面への風の吹き付けを上方へ導く乱流を形成することにより、棟構造内部の空気を棟構造外部へ吸い出すように導出する役割を果たす。
この起立状部は、全ての換気部に設けるものであっても、部分的に設けるものであってもよい。また、隣接する或いは複数のルーバーを跨ぐように設けるものであってもよい。また、起立状部は、ルーバーの横辺に対して全長に亘って設けるものでも部分的に設けるものであってもよい。更に、起立状部は、換気面に対して略鉛直状であっても、内側(軒側)、外側(棟側)への傾斜状であってもよい。
また、起立状部は、ルーバーに予め一体状に設ける(当該ルーバーを変形することを含む)ものであっても、別体からなる起立状部をビス、ボルト・ナット等の締着や嵌合、係合、接着或いはこれらを併用してルーバーに取り付けるものであってもよい。
【0017】
本発明の棟構造を適用する屋根としては、屋根の裏面に、軒から棟に連通する空気層が形成される構造を有するものであればよく、該空気層を棟構造内部と連通させる。このような屋根としては、内壁に透湿防水シートを貼り付け、外壁との間に通気層を設ける屋根構造や裏面側に空気層を介して屋根材を兼ねる太陽電池を取り付ける屋根構造などを例示できる。
【0018】
下層材又は壁としては、既存の瓦、スレート、金属等の公知の屋根であっても、新たに敷設される瓦、スレート、金属等からなる屋根であっても、太陽電池の裏面側に屋根としての雨仕舞性能を有するものであれば、その仕様を問うものではなく、例えば塩ビ等の防水シートからなる防水層でもよい。また、金属(板)等によって構成される既存もしくは新設の屋根は、横葺き状、縦葺き(瓦棒葺き、平滑状等)、折板等の如何なるものであってもよい。
【0019】
太陽電池としては、結晶系等の太陽電池セルをガラス等に積層させてモジュール化したものであっても、アモルファス等の薄膜のものであってもよく、薄膜等にあっては、基材となる金属板等に一体化してシート状(板状)或いはボード状にしたものでもよい。
また、太陽電池は、上記のモジュール、シート、ボード等をそのまま敷設するものでも、周縁に枠体(フレーム)を配して敷設するものでもよい。また、発電量を増大させるために両面受光(発電)型の太陽電池を用いてもよく、この場合、太陽電池の下方に反射部を介在させればよく、下層材が兼用するものでも別途設けるものでもよい。
【0020】
前記両面受光型のセルの下方に設けられる反射部は、太陽光を反射させてセルの裏面側へ太陽光を照射するものであって、例えば全面に設けるものでも部分的に設けるものでもよい。材質等にあっても、鉄、ステンレス、アルミ等の鋼板や銅板、或いは表面処理鋼板や塩ビ等の被覆鋼板でもよく、板状、フィルム状でもよい。また、硬質樹脂板や樹脂シート、アスファルト等の含浸シートでもよい。上記反射部は、白、シルバー等に塗装されたものでも、反射性(光沢を含む)のトップコートを施したものでもよく、表面に鏡面仕上げを施したもの、これらの態様を複数兼ねるものでもよい。さらに、反射部は、略平坦状のものでも、角波状、円弧状でもよい。また、新設・既設屋根上に両面受光型モジュールを配設する場合、上述のような反射部を別途に又は新規に用いるものでもよいし、対象領域に相当する領域上に反射性能を有する塗料等を塗布して反射部を形成するものでもよい。
また、反射部(材)を別途設ける場合、横桟又は縦桟の配設間隔に配する態様でも、太陽光を反射する部分(面板部)についても、平坦状でも、連続(角)波状でもよい。なお、この反射部を横桟又は縦桟の配設間隔に配する態様では、端縁を立ち上げ、縦桟間又は横桟間に嵌め付けるもの、縦残又は横桟等に係止させてもよく、ビス等で固定するものでもよい。
【実施例1】
【0021】
図1(a)に示す本発明の第1実施例は、太陽電池1にて構築される屋根の裏面側に、軒から棟に連通する空気層10が形成され、該空気層10を棟構造4内部と連通させ、該棟構造4を形成する換気面40は、横向きの複数のルーバー41を、換気部42である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、最も下方に位置する換気部42は、棟構造4内部の空気を棟構造4外部へ導出する導出部2aである。そして、最下段に位置するルーバー41IIとして、立ち上げ片411(=起立状部3)を備えるものを固定してその棟側に位置する換気部42を導出部2aとした構成である。
【0022】
前記棟構造4は、右半を省略して示しているが、屋根の棟部に跨って略山形状を形成する左右の傾斜側面状の換気面40を主体とする。そして、金属板材等を適宜に折曲して断面が略S字状に形成される複数のルーバー41を、上下方向に多数段連続させ、端部に傾斜状に組み付けられる補助固定材43の外面側及び内面側に固定した構成である。なお、図中に示す符号44は、左右の補助固定材43を突き合わせた頂部に取り付ける頂部化粧材であって、外面側及び内面側のそれぞれの最上方に位置するルーバー41,41に跨るように固定されている。
前記ルーバー41は、上端及び下端にそれぞれ折り返し部が設けられ、補助固定材43の外面側に固定されている各ルーバー41は、外面側から見て上半に凸部が、下半に凹部が位置するように配設され、しかも各ルーバー41の上端は上段側のルーバー41の凹部内に非接触状に位置し、下端が下段側のルーバー41の凸部内に非接触状に位置するように配設されている。また、補助固定材43の内面側に固定するルーバー41は、補助固定材43の外面側に固定するルーバー41と略対称状となるように取り付けられている。
この構成の棟構造4では、外面側の各換気部42の開放部分が上方へ向くように形成されているため、棟構造4内に滞留する空気が上昇による排出を行いやすくした構成とし、侵入した雨水は内面のルーバー41によって室内側に侵入することなく下方へ排出(導く)構造となっている。
そして、この棟構造4を構成するルーバー41のうち、最も下方に位置するルーバー41IIとして、その上端を外側上方へ立ち上げ(立ち上げ片411)、この立ち上げ片411を略垂直状の起立状部3とした。
【0023】
この図1(a)の棟構造では、白抜き矢印にて示すように軒側下方から棟側上方に向かって風(吹き上げ風)が吹いているため、風上側とは下方を指し、前述のようにその上端を外側上方へ立ち上げて起立状部3(立ち上げ片411)としたルーバー41IIを最も下方に位置させることにより、その上方に位置する換気部42が、棟構造4内部の空気を棟構造4外部へ導出する導出部2aとなる。
この起立状部3による空気の流れを、図1(b)の拡大図にて説明すると、吹き上げ風W1が起立状部3に吹き付けられて上方へ向かう風W2となり、巻き戻る風W3となったり他の風の流れと共に流れる風W4となるが、起立状部3に当たった風が上方に乱流を起こし、換気部2上端を減圧状態とするため、棟構造4内部の空気が棟構造4外部へ吸い出される導出部2aとして作用することが実験によりわかった。そして、棟構造4内部は、太陽電池1の裏面側の軒から棟に連通する空気層10と連通しているので、図1(a)にて破線矢印にて示す空気の流れが促進され、太陽電池1裏面の温められた空気及び熱量を放出することで、太陽電池1の温度上昇を抑え、発電効率の低下を防ぐことができる。
【0024】
この第1実施例における屋根は、太陽電池1にて構築される屋根構造が、雨仕舞い性能を有する下層材(既設屋根)6上に後述する持出部材7Aや支持部材7G等を介して構築された構成であって、これらの太陽電池1の構成、下層材6の構成について以下に簡単に説明する。
【0025】
前記下層材(既設屋根)6は、C形鋼からなる躯体6Aの上に、木毛セメント板等の下地材6B、防水シート6Cが敷設されて下地を構成し、該下地の上に断熱材6D及び流れ方向に沿う金属垂木6E(固定材6F、その固定具6g)が取り付けられ、その上に下層材(外装材)6として、横葺き外装材が施工されている。この下層材6は、面板部61の水上側端部に表面側へ略く字状に折り返して形成した被重合部63が形成され、水下側端部には裏面側へ略コ字状に折り返して形成した重合部62が形成され、下段側の外装材6の被重合部63に、上段側の外装材6の重合部62を重合状に係合させると共にピース状の吊子6Hにて下地上に固定されている。
【0026】
前記下層材(既設屋根)6の重合部分に、前記下地に沿う固定部の水上端縁を水下側から挿入するように持出部材7Aがビスである固定具7bにて固定され、L字材7D及び左右方向に配設する略矩形柱状のレール材7Fを介して流れ方向に連続する支持部材7Gが固定されている。
前記持出部材7Aの上面及び前記レール材7Fの水下側の側面には、それぞれ長さ方向に溝部が形成され、該溝部にそれぞれボルト材の頭部を収納した状態でスライド可能であり、ナットを締め付けて留め付けることができる。図中、7eは、持出部材7A、レール材7Fの各溝部に取り付けられたボルトナットである。そのため、何れかのボルトナット7eを緩めた状態で左右方向に適宜に位置調整が可能であり、締め付けることでレール材7F及びその上の支持部材7Gを所望の位置に固定することができる。
【0027】
このような構造を有する第1実施例の棟構造では、起立状部3を設けて形成した導出部2aにて棟構造4内部の空気を棟構造外部へ導出することができ、棟内部、及びそれと連通する屋根裏面の空気層の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがない室内環境の建築物とすることができる。
【0028】
また、この第1実施例では、屋根が太陽電池1にて構築されているが、太陽電池1裏面に滞留する温められた空気及び熱量を放出することで、太陽電池1の温度上昇を抑え、発電効率の低下を防ぐことができる。
【0029】
図2に示す本発明の第2実施例は、横葺き屋根8の裏面側に、軒から棟に連通する空気層80が形成され、該空気層80を棟構造4'内部と連通させ、該棟構造4'を形成する換気面40'は、横向きの複数のルーバー41'を、換気部42'である所定間隔を隔てて上下方向に多数段連続させて形成してなり、最も下方に位置する換気部42'は、棟内部の空気を棟外部へ導出する導出部2aである。そして、最下段に位置するルーバー41'に、跳ね上げ状になるように弧状片3aをビス固定(ビス3b)して起立状部3とし、その棟側に位置する換気部42'を導出部2a'とした構成である。
【0030】
なお、この第2実施例における棟構造4'は、ルーバー41'の断面形状が僅かに異なる以外は、前記第1実施例における棟構造4とほぼ同様であるから、同一符号に『'』を付して説明を省略する。
【0031】
この第2実施例における屋根は、C形鋼からなる躯体8Aの上に、流れ方向に連続する縦桟材8Bが配設されて下地を構成し、該下地の上に下層材(外装材)8として、横葺き外装材が施工されている。この下層材8は、面板部81の水上側端部に表面側へ略く字状に折り返して形成した被重合部83が形成され、水下側端部には裏面側へ略コ字状に折り返して形成した重合部82が形成され、下段側の外装材8の被重合部83に、上段側の外装材6の重合部82を重合状に係合させている。
【0032】
そして、この図2(a)の棟構造でも、白抜き矢印にて示すように軒側下方から棟側上方に向かって風(吹き上げ風)が吹いているため、前述のように最も下方に位置する換気部42'が、棟内部の空気を棟外部へ導出する導出部2a'となる。
この起立状部3による空気の流れを、図2(b)の拡大図にて説明すると、吹き上げ風W1が起立状部3に誘導されて上方へ向かう風W2となって巻き戻る風W3となり、導出部2a'の上方に乱流を起こして減圧状態とするため、棟内部の空気が棟外部へ吸い出される導出部2a'として作用することが実験によりわかった。そして、棟内部は、屋根8の裏面側の軒から棟に連通する空気層80と連通しているので、図2(a)にて破線矢印にて示す空気の流れが促進され、棟内部及び屋根裏面の空気層80の空気の流れを著しく速め、外気温の影響を室内に及ぼすことがなく、室内環境の建築物とすることができる。
【0033】
図3は、最下段のルーバー41に一体的に起立状部3を設けるバリエーションを示すものであり、より詳しくは最下段に設けるルーバー41に代えて、立ち上げ片413〜418が起立状部3であるバリエーション(ルーバー41III〜41VIII)を示す。なお、この構成以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
図3(a)は、弧状に形成した立ち上げ片413を設けたルーバー41IIIを用いるものであって、別体の弧状片3aを固定した前記第2実施例と全く同様に風が誘導され、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(b)は、上方へ傾斜状に立ち上げた先端を下方へ折り返した略へ字状の立ち上げ片414を設けたルーバー41IVを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(c)は、平坦状の棟端を上方へ弧状に形成した立ち上げ片415を設けたルーバー41Vを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(d)は、上端を更に上方へ略へ字状に形成した立ち上げ片416を設けたルーバー41VIを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(e)は、傾斜状に立ち上げた立ち上げ片417を設けたルーバー41VIIを、最下段のルーバー41の外側へ沿うように固定したものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
図3(f)は、傾斜状に立ち上げた立ち上げ片418を設けたルーバー41VIIIを用いるものであって、導出部2aから棟内部の空気が排出される。
【0035】
図4は、最下段又は下から2番目のルーバー41に別体の成形材3I〜3VIIIを取り付けて起立状部3とするバリエーションを示す。これらの何れの成形材3I〜3VIIIも、必要に応じてピース材でも連続材でも対応可能であり、それぞれの導出部2aから棟内部の空気が排出される。なお、この構成以外は、前記第1実施例と全く同様であるから、図面に同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図4(a)は、金属板材等を略へ字状に成形した成形材3Iを最下段のルーバー41の上方に沿わせて固定したものである。
図4(b)は、金属製又は硬質樹脂製の押出型材(成形材3II)を下から2番目のルーバー41の上端にビス固定したものである。
図4(c)は、下から2番目のルーバー41"を金属製又は硬質樹脂製の押出型材とすると共に、その上端に金属製又は硬質樹脂製の押出型材(成形材3III)をビス固定したものであり、2部材からなるルーバーを用いると見なすこともできる。
図4(d)は、略碇状の成形材3IVを下から2番目のルーバー41に対して図中に点線で示すように取り付け、ビスや接着剤等を用いることなく回動(傾動)自在に取り付けられるものである。
図4(e)は、上方に開放する嵌合溝を形成した成形材3Vを下から2番目のルーバー41の上端に嵌合状に取り付けるものである。
図4(f)は、前記図4(a)とほぼ同様な形状を押出型材で成形し、最下段のルーバー3VIとした。
図4(g)は、成形材3VIIが金属板材等から作成したこと以外は、図4(f)と全く同様である。
図4(h)は、厚肉の金属板材等からなる成形材3VIIIが最下段のルーバー41の上端にカシメて取り付けられているものである。
【0037】
図5は、換気面40に設ける導出部2aの配列バリエーションを示す。
図5(a)及び図5(b)は、前記図4(f)における成形材3VIとほぼ同形状のアルミ押出材からなるルーバー4IXを、換気面40の最下段のルーバー41に代えて配設した用いた以外は、前記第1実施例と同様であり、加えて図5(b)では下から5番目にもルーバー4IXを配設した。これにより、図5(a)では、換気面40の最下段の換気部42が導出部2aとなり、これに加えて図5(b)では、換気面40の中程にも導出部2aが設けられる。
また、図5(c)は、前記図3(a)におけるルーバー41IIIと近似する形状のルーバー4Xを、通常のルーバー41と交互に配設し、換気面40のほぼ全面に亘って導出部2aが設けられるものとなる。
このように導出部2aは、一箇所のみに限定されず、二箇所、或いはそれ以上に設けるようにしてもよい。
【0038】
図6は、それ以外のバリエーションを示す。
図6(a)は、隣接する二つのルーバー41,41に跨るように上方へ山状に突出する成形材51を固定するものであり、図中に示した点線で囲む部分にパンチング(穴あけ)加工を施し、ビス止めして取り付けられる。
図6(b)は、ルーバー41の上方縦部に、ルーバー41を転用した成形材52の下方縦部をビス止めして取り付けたものである。
これらの図6(a)の成形材51、及び図6(b)の上方の成形材52は、既設の棟構造に後付けすることができる。
図6(c)は、最下段のルーバー41に代えて複数部材を組み合わせて形成される起立状部53を取り付けたものであり、補助固定材43の外面側のルーバー41は上下を逆に取り付けている。
図6(d)は、最下段のルーバー41と下から2段目のルーバー41との間に複数部材を組み合わせて形成される起立状部54を取り付けたものである。
図6(e)は、最下段のルーバー41に代えて上方へ高く略く字状に立ち上げると共に下端を下から2段目のルーバー41に固定した起立状部55を取り付けたものである。
図6(f)は、最下段のルーバー41に代えて上方へ高く立ち上げた部材と略コ字状の部材とからなる起立状部56を取り付けたものである。
これらの図6(d)〜(f)では、導出部2aは、2段目のルーバー41の棟側に形成されるが、起立状部54〜56にパンチング(穴あけ)加工を施してこの穴も図中に点線で示すように導出部2aとすることができる。、
【符号の説明】
【0039】
1 (両面受光型)太陽電池
10 (裏面の)空間層
2 換気部
2a 導出部
3 起立状部
4 棟構造
41 ルーバー
42 換気部
43 補助固定材
8 屋根(横葺き外装構造)
80 空間層
図1
図2
図3
図4
図5
図6