特許第6099341号(P6099341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099341板状コンクリート構造物のせん断補強構造
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  • 特許6099341-板状コンクリート構造物のせん断補強構造 図000002
  • 特許6099341-板状コンクリート構造物のせん断補強構造 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099341
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】板状コンクリート構造物のせん断補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/01 20060101AFI20170313BHJP
   E03F 3/04 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   E04C5/01
   E03F3/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-205431(P2012-205431)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58841(P2014-58841A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 宏光
(72)【発明者】
【氏名】西内 美宣
(72)【発明者】
【氏名】大越 靖広
(72)【発明者】
【氏名】西垣 和弘
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−016893(JP,A)
【文献】 特開平04−136337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/01
E03F 3/04
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状コンクリート構造物に当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように設けられた孔内に挿入された棒状の補強材と上記孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように上記孔内に固定され、かつ、当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差するとともに上記孔の延長方向と交差する方向に延長するように設けられた上記孔とは別の孔内に挿入された上記棒状の補強材とは別の棒状の補強材と上記別の孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記別の棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差するとともに上記棒状の補強材の延長方向と交差する方向に延長するように上記別の孔内に固定されたことを特徴とする板状コンクリート構造物のせん断補強構造。
【請求項2】
板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの内部空間側からボックスカルバートの壁に形成された孔であることを特徴とする請求項1に記載の板状コンクリート構造物のせん断補強構造。
【請求項3】
板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの壁の上端面からボックスカルバートの壁に形成された孔であることを特徴とする請求項1に記載の板状コンクリート構造物のせん断補強構造。
【請求項4】
板状コンクリート構造物に当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように設けられた孔内に挿入された棒状の補強材と上記孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように上記孔内に固定された板状コンクリート構造物のせん断補強構造であって、
板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの壁の上端面からボックスカルバートの壁に形成された孔であることを特徴とする板状コンクリート構造物のせん断補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバートの壁等の板状コンクリート構造物のせん断補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に埋設される例えば断面四角形状の箱筒状の鉄筋コンクリート構造物であって、通路、水路、共同溝などに利用されるボックスカルバートの壁のせん断耐力を向上させるために、当該壁のせん断方向と平行な方向に沿って延長する孔(即ち、壁面に対して垂直に延長する孔)を壁に形成し、当該孔内に棒状の補強材を挿入し、当該孔の内壁と補強材との間に充填材を充填することにより、当該壁のせん断補強構造を構築することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ボックスカルバートの板状コンクリート構造物としての壁に棒状の補強材を挿入するための孔は、一般的に、ボックスカルバートの内部空間側からボックスカルバートの壁面に穿孔することにより形成する。しかしながら、ボックスカルバートの内部空間の壁際(壁前)に、配管、ケーブル、その他の支障物が存在している場合には、当該支障物が障害となって当該支障物の後ろの壁面に対して垂直に掘削ドリルを突き当てることができないため、作業者がボックスカルバートの内部空間側から壁面に対して垂直に延長するような孔を当該壁に形成することができず、せん断補強構造を構築できないという問題点があった。
本発明は、板状コンクリート構造物にせん断方向と平行な方向に沿って延長する孔を形成せずとも、板状コンクリート構造物のせん断耐力を向上させることができる板状コンクリート構造物のせん断補強構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る板状コンクリート構造物のせん断補強構造は、板状コンクリート構造物に当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように設けられた孔内に挿入された棒状の補強材と上記孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように上記孔内に固定され、かつ、当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差するとともに上記孔の延長方向と交差する方向に延長するように設けられた上記孔とは別の孔内に挿入された上記棒状の補強材とは別の棒状の補強材と上記別の孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記別の棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差するとともに上記棒状の補強材の延長方向と交差する方向に延長するように上記別の孔内に固定されたので、板状コンクリート構造物にせん断方向と平行な方向に沿って延長する孔を形成せずとも、板状コンクリート構造物のせん断耐力を向上させることができる板状コンクリート構造物のせん断補強構造を実現できる。
また、板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの内部空間側からボックスカルバートの壁に形成された孔であるので、ボックスカルバートの壁にせん断方向と平行な方向に沿って延長する孔を形成せずとも、ボックスカルバートの壁のせん断耐力を向上させることができるせん断補強構造を実現できる。
また、板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの壁の上端面からボックスカルバートの壁に形成された孔であるので、ボックスカルバートの内部空間側から壁に孔を形成する作業を行えないような場合であってもボックスカルバートの壁のせん断耐力を向上させることができるせん断補強構造を実現できる。
また、本発明に係る板状コンクリート構造物のせん断補強構造は、板状コンクリート構造物に当該板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように設けられた孔内に挿入された棒状の補強材と上記孔の内壁との間に充填材が設けられて、上記棒状の補強材が板状コンクリート構造物の部材軸に対して斜めに交差する方向に延長するように上記孔内に固定された板状コンクリート構造物のせん断補強構造であって、板状コンクリート構造物が地中に設置されたボックスカルバートの壁であり、上記孔がボックスカルバートの壁の上端面からボックスカルバートの壁に形成された孔であるので、ボックスカルバートの内部空間側から壁に孔を形成する作業を行えないような場合であってもボックスカルバートの壁のせん断耐力を向上させることができるせん断補強構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】ボックスカルバートの壁のせん断補強構造を示す図(実施形態1)。
図2】ボックスカルバートの壁のせん断補強構造を示す図(実施形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
板状コンクリート構造物のせん断補強構造の一例としての、例えば、ボックスカルバートの壁のせん断補強構造について、図1を参照して説明する。
ボックスカルバート(暗渠)1は、地中100に埋設される例えば断面四角形状の箱筒状の鉄筋コンクリート構造物であり、通路、水路、共同溝などに利用される。
【0008】
実施形態1では、ボックスカルバート1の内部空間2側からボックスカルバート1の壁3に棒状の補強材4を挿入するための孔5を形成する際に、当該孔5を、ボックスカルバート1の延長方向に沿ったボックスカルバート1の中心線(中心軸)10と直交する面11上において当該壁3のせん断方向12に対して斜めに交差する方向に延長するように形成する。
言い換えれば、当該孔5を、ボックスカルバート1の中心線10と直交する面11上において当該壁3の部材軸13に対して斜めに交差する方向に延長するように形成する。尚、壁3の部材軸13とは、壁3に対する垂直軸である。
即ち、ボックスカルバート1の壁3におけるボックスカルバート1の中心線10と直交する面11上において孔の中心線14(中心軸)が傾斜して延長する孔5を形成する。
【0009】
そして、ボックスカルバート1の内部空間2側から棒状の補強材4を当該孔5内に挿入した後に当該孔5の内壁と補強材4との間にモルタル等の充填材(グラウト)15を充填することにより、あるいは、ボックスカルバート1の内部空間2側から当該孔5内に充填材15を充填した後に当該孔5内に棒状の補強材4を挿入することにより、ボックスカルバート1の壁3におけるボックスカルバート1の中心線10と直交する面11上において棒状の補強材4の中心線(中心軸)が当壁3のせん断方向12に対して斜めに交差する方向に延長するように(言い換えれば、補強材4の中心線が当該壁3の部材軸13に対して斜めに交差する方向に延長するように)孔5内に固定されたせん断補強構造20が構築される。
つまり、ボックスカルバート1の壁3におけるボックスカルバート1の中心線10と直交する面11上において棒状の補強材4の中心線が傾斜して延長するように孔5内に固定されたせん断補強構造20が構築されるので、ボックスカルバート1の壁3のせん断耐力を向上させることができる。
【0010】
実施形態1によれば、ボックスカルバート1の壁3にせん断方向12と平行な方向に沿って延長する孔を形成せずとも、ボックスカルバート1の壁3のせん断耐力を向上させることができるせん断補強構造20を構築できる。
また、ボックスカルバート1の内部空間2の壁際(壁前)に、配管、ケーブル、その他の支障物が存在している場合において、当該支障物の後ろの壁部分にせん断補強構造20を形成できるようになるため、ボックスカルバート1の壁3のせん断耐力を向上させることができる。
【0011】
実施形態2
実施形態1では、ボックスカルバート1の内部空間2側からボックスカルバート1の壁3に棒状の補強材4を挿入するための孔5を形成したが、図2に示すように、地上28からボックスカルバート1の壁3の上端面29に到達する孔30を開削して、ボックスカルバート1の壁3の上端面29からボックスカルバート1の壁3に棒状の補強材4を挿入するための孔5を形成し、ボックスカルバート1の壁3の上端面29から孔5内に棒状の補強材4を挿入するようにしてせん断補強構造20を構築してもよい。
尚、実施形態2においても実施形態1と同様に、ボックスカルバート1の壁3におけるボックスカルバート1の中心線10と直交する面11上において、孔5が壁3のせん断方向12に対して斜めに交差する方向に延長するように(言い換えれば、孔5の中心線が当該壁3の部材軸13に対して斜めに交差する方向に延長するように)壁3に形成され、かつ、棒状の補強材4の中心線が壁3のせん断方向12に対して斜めに交差する方向に延長するように(言い換えれば、補強材4の中心線が壁3の部材軸13に対して斜めに交差する方向に延長するように)孔5内に固定されたせん断補強構造20が構築される。
【0012】
実施形態2によれば、実施形態1と同じ効果が得られる。また、実施形態2によれば、ボックスカルバート1の内部空間2が狭くて、内部空間2側から壁3に孔5を形成する作業を行えないような場合であってもボックスカルバート1の壁3のせん断耐力を向上させることができるせん断補強構造20を構築できるようになる。
【0013】
尚、実施形態1;2では、ボックスカルバート1の壁3のせん断補強構造20を例にして説明したが、本願発明のせん断補強構造は、建築物の壁、梁、床、山岳トンネルの覆工コンクリート等の板状コンクリート構造物にも適用できる。
【0014】
板状コンクリート構造物は、無筋コンクリート構造物であってもよいし、鉄筋コンクリート構造物であってもよい。
【0015】
また、棒状の補強材4としては、例えば、鉄筋や特許文献1に開示されたような補強部材(両端に定着板を備えた棒状補強部材)等を用いればよい。
【符号の説明】
【0016】
1 ボックスカルバート、2 ボックスカルバートの内部空間、
3 ボックスカルバートの壁(板状コンクリート構造物)、4 棒状の補強材、5 孔、12 せん断方向、15 充填材、29 ボックスカルバートの壁の上端面、
100 地中。
図1
図2