(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれかに記載のインク組成物をインクジェット法によって基材に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を光又は熱エネルギーにより硬化させる工程とを含む請求項4記載の高誘電率膜の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のインク組成物は、(A)表面修飾粒子、下記(B)バインダ成分及び溶媒を含む。
上記(A)成分は、上記式(1)で表されるウレタン結合含有ジオール(メタ)アクリレート単量体(U)(以下、単量体(U)と略すことがある)が表面に共有結合したチタン酸バリウム粒子、または単量体(U)と架橋性単量体(X)とを含む単量体組成物(m1)を重合して得た重合体(PU)が表面に共有結合したチタン酸バリウム粒子である。
【0010】
(A)成分に用いるチタン酸バリウム粒子は、高い誘電率を有するBaTiO
3粒子である。ここで、BaTiO
3粒子のBa及び/又はTiは他の元素により置換されていても良い。このような粒子は、Ba
1-xA
xTi
1-yB
yO
3として表される。式中x及びyは通常0.5以下である。Aとしては、例えばCa,Mg,Sr,Li,Na,Kが挙げられ、Bとしては、例えば、Nb,Ta,V,Cr,Mo,W,Zr,Hfが挙げられる。
上記チタン酸バリウム粒子は、本発明のインク組成物を用いて製造される高誘電率膜の誘電率の観点から、その粒子形態における比誘電率は200以上であることが好ましい。チタン酸バリウムの粒子形態における比誘電率の測定は、粒子を液体に分散させた懸濁液の比誘電率から体積対数混合則を用いて外挿することで、もしくは当該懸濁液の交流インピーダンス測定から複素インピーダンスプロットを行って解析することで算出することができる。
【0011】
上記チタン酸バリウム粒子の製造方法は特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。例えば、有機金属化合物である金属アルコキシドから作製するゾル−ゲル法や、アルコキシドと水酸化物もしくは酸化物から作製するアルコキシド法、水熱合成法や共沈法、固相法、シュウ酸法により得ることができる。ゾル−ゲル法やアルコキシド法に代表される液相合成法は粒子合成段階から微細な粒子が得られる点で好適な方法であるが、その他の方法で粒子を作製し、ビーズミルなどの周知の微粒化装置を用いて上記粒子径を満足するよう微細化しても良い。
【0012】
(A)成分に用いる単量体(U)は、上記式(1)で示される。式(1)において、R
1は水素原子又はメチル基を表す。R
2は−(CH
2)n−を示し、nは1〜4の整数である。
単量体(U)としては、例えば、グリセリル−1−(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、3,4−ジヒドロキシブチル−1−(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタンが挙げられる。
【0013】
上記重合体(PU)を製造するための単量体組成物(m1)の構成成分である架橋性単量体(X)としては、例えば、多官能性ビニル単量体、エポキシ基含有ビニル単量体、N−メチロール基又はN−メチロールエーテル基含有ビニル単量体、及びアルコキシシリル基含有ビニル単量体の少なくとも一種が挙げられる。
多官能性ビニル単量体としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。
N−メチロール基またはN−メチロールエーテル基含有ビニル単量体としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
アルコキシシリル基含有ビニル単量体としては、例えば、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
単量体組成物(m1)に用いる架橋性単量体(X)としては、チタン酸バリウム粒子と共有結合された重合体(PU)が硬化時に、後述する(B)バインダ成分と架橋反応を起こす際の架橋性官能基の反応性、及びインク組成物中での架橋性官能基の安定性を両立させる観点からは、N−メチロール(メタ)アクリルアミドの使用が好ましい。
【0014】
単量体組成物(m1)には必要に応じて、単量体(U)及び架橋性単量体(X)と共重合可能な任意の単量体を含んでいても良い。該任意の単量体としては、例えば、メチルメタクリレートが挙げられる。任意の単量体を含有する場合の含有割合は、単量体組成物(m1)中、50質量%以下が好ましい。
【0015】
単量体組成物(m1)において、単量体(U)の含有割合は任意であり、架橋性単量体(X)及び任意の単量体の種類や量に応じて適宜選択できる。単量体組成物(m1)を重合して得られる重合体(PU)とチタン酸バリウム粒子の結合力を確保する観点、及び本発明のインク組成物中の各成分と重合体(PU)の相溶性の観点から、単量体組成物(m1)中における単量体(U)の含有割合は、好ましくは1〜70質量%、より好ましくは10〜60質量%である。
単量体組成物(m1)において、架橋性単量体(X)の含有割合は、通常、2〜99質量%であり、好ましくは5〜60質量%である。2質量%未満の場合には、硬化時の(PU)と後述する(B)バインダ成分との架橋点が少なく、高誘電率膜の耐久性が低下する恐れがある。
【0016】
重合体(PU)は、単量体組成物(m1)を、例えば、公知の溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の方法を用いて製造することができる。具体的には、必要に応じて重合系を不活性ガス雰囲気下にし、重合温度0〜100℃、重合時間1〜48時間の条件でラジカル重合開始剤の存在下ラジカル重合させる方法により製造することができる。必要に応じて、再沈殿法、透析法、限外濾過法等の一般的な精製法によって重合体の精製を行うことができる。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーオキシネオデカノエート等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤の使用量は、単量体組成物(m1)100質量部に対して0.01〜10質量部が好ましい。
重合体(PU)の重量平均分子量は、通常5000〜1000000が好ましい。
【0017】
(A)成分を製造するにあたり、チタン酸バリウム粒子と、単量体(U)、または重合体(PU)との使用量は、当該単量体(U)、または重合体(PU)をチタン酸バリウム粒子表面に十分量結合させインク組成物の安定性を確保する観点、並びに当該チタン酸バリウム粒子への結合効率の観点から、チタン酸バリウム粒子100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましい。
【0018】
(A)成分の製造は、例えば、チタン酸バリウム粒子と、単量体(U)、または重合体(PU)とを溶媒の存在下、ビーズミル処理する方法により行うことができる。この方法では、ビーズの衝突によって、チタン酸バリウム粒子の活性表面が新たに出現するため、単量体(U)、または重合体(PU)のヒドロキシル基と、チタン酸バリウム粒子活性表面の金属原子の間で、効率よく共有結合を形成させることができる。
上記ビーズミル処理により得られた、溶媒及び(A)表面修飾粒子を含む分散液は、そのまま本発明のインク組成物に使用することもできる。この際、該分散液には、チタン酸バリウム粒子に共有結合していない単量体(U)、または重合体(PU)が存在する可能性があるが問題はない。
【0019】
チタン酸バリウム粒子と、単量体(U)、または重合体(PU)との共有結合は、公知の分析法によって確認できる。例えば、(A)表面修飾粒子について熱重量分析を行い、単量体(U)、または重合体(PU)の熱分解に由来する重量減少を検出する方法、(A)表面修飾粒子について元素分析を行い、単量体(U)、または重合体(PU)に由来する窒素原子を定量する方法が挙げられる。元素分析による窒素原子定量は感度が高く、単量体(U)、または重合体(PU)の結合量が少量である場合でも分析が可能である。
【0020】
(A)表面修飾粒子の粒子径は、平均粒子径(D50)として10〜500nmが好ましく、10〜100nmがより好ましい。D50が10nmより小さいと、サイズ効果によって表面修飾粒子の比誘電率が顕著に低下するおそれがある。一方500nmを超えると、表面修飾粒子の質量が大きいため、インク内で該粒子が沈降するおそれがある。
【0021】
本発明のインク組成物に含まれる(B)バインダ成分は、架橋性単量体(X)、または架橋性単量体(X)を含む単量体組成物(m2)を重合して得た重合体(PX)である。
(B)バインダ成分において、架橋性単量体(X)は、上記(A)成分で説明した架橋性単量体(X)と同様なものが例示できる。
(B)成分は、(A)表面修飾粒子の表面の単量体(U)、または重合体(PU)と結合し、かつ自身で架橋反応を生じることによって、硬化することにより密に架橋して(A)表面修飾粒子を固定する役割がある。このような(A)成分表面上の単量体(U)、または重合体(PU)と結合できる点、及び密な架橋が可能な点から、架橋性単量体(X)の好ましい例としては、多官能性ビニル単量体であるトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、並びにN−メチロール基含有ビニル単量体であるN−メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0022】
重合体(PX)を製造する単量体組成物(m2)は、必要に応じて、架橋性単量体(X)と共重合可能な、例えば、メチルメタクリレート等の任意の単量体を含んでいてもよい。単量体組成物(m2)において任意の単量体の含有割合は、80質量%以下が好ましい。
単量体組成物(m2)から重合体(PX)を製造する方法は、上述の重合体(PU)の製造と同様に公知の方法を用いることができる。
得られる重合体(PX)の重量平均分子量は、通常5000〜1000000が好ましい。
【0023】
本発明のインク組成物に含まれる溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール等のグリコール系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート系溶媒が挙げられる。例えば、インク組成物をインクジェット法で塗布する場合、溶媒の蒸発速度及び吐出性の面から、グリコールエーテル系溶媒の使用が好ましく、ジエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。
溶媒の含有量は、(A)表面修飾粒子と(B)バインダ成分との合計100質量部に対して、1〜10000質量部が好ましい。
【0024】
本発明のインク組成物は、必要に応じて、公知の添加剤を含むことができる。該添加剤として、例えば、レベリング剤、粘度調整剤、消泡剤が挙げられる。添加する場合の割合としては、(A)表面修飾粒子と(B)バインダ成分の合計100質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましい。
【0025】
本発明のインク組成物において、(A)表面修飾粒子及び(B)バインダ成分の合計に占めるチタン酸バリウム粒子、即ち、単量体(U)、又は重合体(PU)が共有結合する前のチタン酸バリウム粒子の割合は、50〜99質量%、好ましくは60〜95質量%である。チタン酸バリウム粒子の割合が少ない場合、形成される高誘電率膜の比誘電率が低下するおそれがある。一方、チタン酸バリウム粒子の割合が多い場合、チタン酸バリウム粒子間に空隙が生じることで、得られる高誘電率膜において絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0026】
本発明のインク組成物の粘度は、これを塗布する方法に応じて適宜調整することができる。塗布性の観点から1〜100cPが好ましい。1cP未満では塗布時にインク組成物が流れやすく、塗膜が塗布後の形状を保てないおそれがある。一方100cPを超える場合は、塗布時のインク組成物の流動性が不十分で、得られる塗膜に欠陥が発生するおそれがある。
【0027】
本発明の高誘電率膜は、本発明のインク組成物を膜状に硬化させたものであって、例えば、基材上に層状に形成された膜でも良い。
本発明の高誘電率膜の厚さは特に限定されず、使用する電子部品等の用途に応じて適宜選択できるが、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは100nm〜1μmである。
【0028】
本発明の高誘電率膜の製造は、特に限定されないが、好ましくは、本発明のインク組成物をインクジェット法によって基材に塗布して塗膜を形成する工程と、該塗膜を光又は熱エネルギーにより硬化させる工程とを含む本発明の製造方法が挙げられる。
本発明の製造方法において、インク組成物を塗布する基材は特に限定されず、例えば、Au、Ag、Cu、Ni、Pt、ステンレス等の金属、シリコン等の半導体、酸化アルミ、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素等のセラミック、ポリイミド、ポリエステル、アクリル樹脂等のプラスチック製の基材が挙げられる。
本発明の製造方法では、インク組成物の基材への塗布方法として、微細なパターンを描画できる点から、インクジェット法を採用するが、本発明の高誘電率膜の製造には、インクジェット法の他に、スピンコート法、グラビアコート法、オフセット印刷法を採用することもできる。
【0029】
本発明の製造方法において、基材に塗布して塗膜を形成するには、通常、乾燥により行うことができる。該乾燥の温度は、当該インク組成物の組成と基材の耐熱性に応じて選択することができるが、当該インク組成物中の成分の耐熱性、及び溶媒の蒸発速度の観点から、50℃〜250℃が好ましい。
本発明の製造方法において、塗膜を光又は熱エネルギーにより硬化させるために、塗膜形成前に本発明のインク組成物に、光重合開始剤、熱重合開始剤、又はその他の硬化触媒を含有させることができる。これらは必ずしも必要ではない。基材の種類により加熱が困難な場合は、光硬化が有利である。
【0030】
重合開始剤は公知の化合物を用いることができ、光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが挙げられる。熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル等の有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が挙げられる。重合開始剤を用いる場合の使用量は、インク組成物中の(B)バインダ成分100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
【0031】
上記その他の硬化触媒は、(B)バインダ成分の種類に応じて公知の化合物から適宜選択することができる。その他の硬化触媒としては、例えば、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性化合物、トリエチルアミン、イミダゾール等の塩基性化合物、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ジイソプロポキシチタンビス(アセチルアセトナート)、チタンテトラ(アセチルアセトナート)等の金属化合物が挙げられる。その他の硬化触媒を用いる場合の使用量は、通常、インク組成物中の(B)バインダ成分100質量部に対して0.1〜5質量部である。
【0032】
本発明の製造方法において、上記塗膜を光硬化させるには、例えば、紫外線または電子線照射により実施できる。設備の安価さから、紫外線を用いるのが好ましい。一方、熱硬化させる場合は、その硬化温度を、熱重合開始剤の有無や用いる(B)バインダ成分の種類によって適宜選択して決定できる。通常は50〜250℃が好ましい。なお、熱硬化の場合、基材上にインク組成物を塗布してから乾燥させて塗膜を形成させる工程と、当該塗膜を熱硬化させる工程とを分けずに実施することもできる。
【0033】
本発明のコンデンサは、本発明の高誘電率膜と、電極とを備える。このようなコンデンサは、例えば、下部電極、本発明の高誘電率膜、及び上部電極をこの順で積層することによって作製することができる。
下部電極及び上部電極の素材については公知の導電性素材を用いることができる。例えば、Al、Ag、Cu、Pt等の金属、ITO、ZnO等の導電性金属酸化物、又はカーボンナノチューブ複合材料等の導電性有機素材が挙げられる。
上記電極の作製方法は特に限定されず、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法等の蒸着法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法等のウェットコーティング法が挙げられる。
【0034】
本発明のコンデンサにおいて、高誘電率膜の厚さは特に限定されないが、好ましくは10nm〜10μm、より好ましくは100nm〜1μmである。高誘電率膜が薄いと絶縁破壊が起こりやすくなるおそれがある。一方厚いとコンデンサの静電容量が低下し、十分な性能が得られないおそれがある。
本発明のコンデンサは、誘電特性が良好な高誘電率膜を用いているため、特に、静電容量密度に優れ、誘電損出やリーク電流を抑制することができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
製造例1−1 (A)表面修飾粒子用重合体PU−1の合成
単量体(U)としてグリセリル−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン(GLYMOU)5質量部、架橋性単量体(X)としてN−メチロールアクリルアミド1質量部、他の単量体としてメチルメタクリレート4質量部及び重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を、水8質量部とエタノール32質量部の混合溶媒に溶解させ、30分間窒素置換した後60℃で24時間重合させた。重合後の溶液をイソプロピルアルコールに注いで重合体を沈殿させ、沈殿物を回収した後40℃で1日減圧乾燥させて重合体PU−1を得た。
得られた重合体PU−1の重量平均分子量を、10mMのLiClを溶解させたエタノール/水(容積比3/7)混合溶媒を溶離液としたサイズ排除クロマトグラフィーを用いて、RI検出器及びポリエチレンオキシド標準により測定したところ30000であった。
【0036】
製造例1−2 (B)バインダ成分用重合体PX−1の合成
架橋性単量体(X)としてN−メチロールアクリルアミド4質量部、メチルメタクリレート6質量部及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を、水8質量部とエタノール32質量部の混合溶媒に溶解させ、30分間窒素置換した後60℃で24時間重合させた。重合後の溶液をイソプロピルアルコールに注いで重合体を沈殿させ、沈殿物を回収した後40℃で1日減圧乾燥させて重合体PX−1を得た。
得られた重合体PX−1の重量平均分子量を製造例1‐1と同様に測定したところ25000であった。
【0037】
製造例2−1 表面修飾粒子の分散液A−1の合成
チタン酸バリウム(BaTiO
3、比誘電率450)粒子10質量部、単量体(U)としてGLYMOU0.5質量部及び溶媒としてジエチレングリコールモノメチルエーテル(DEGMME)90質量部を混合した液をビーズミルに投入し、直径0.3mmのジルコニアビーズで処理した。次いで直径0.03mmのジルコニアビーズで処理することで、DEGMME中に分散した表面修飾粒子の分散液A−1を得た。
次に、10質量部の分散液A−1に対して水10質量部を添加し、表面修飾粒子を沈降させてろ別した後、この粒子をさらに水で洗浄して、共有結合していないGLYMOUを除去した。続いて減圧乾燥を行うことで表面修飾粒子を回収した。回収した粒子について、デュマ法を用いてGLYMOUに由来する窒素原子の定量を行い、その値をGLYMOU(窒素含有量5.7質量%)の量に換算することで共有結合量を算出した。その結果、仕込んだGLYMOUの全量がBaTiO
3粒子に共有結合していることが確認された。
また、得られた表面修飾粒子のD50における粒子径を動的光散乱法により測定したところ20nmであった。
【0038】
製造例2−2 表面修飾粒子の分散液A−2の合成
BaTiO
3粒子10質量部、GLYMOU0.5質量部及び溶媒として1,3−ブチレングリコール(BG)90質量部を混合した。得られた混合液をビーズミルに投入し、直径0.3mmのジルコニアビーズで処理することで、BG中に分散した表面修飾粒子の分散液A−2を得た。
次に、製造例2−1と同様に表面修飾粒子におけるGLYMOUの共有結合量を算出した結果、仕込んだGLYMOUの全量がBaTiO
3粒子に共有結合していることが確認された。
また、得られた表面修飾粒子のD50における粒子径を動的光散乱法により測定したところ150nmであった。
【0039】
製造例2−3 表面修飾粒子の分散液A−3の合成
製造例2−2で得た分散液A−2を、さらに直径0.03mmのジルコニアビーズで処理することで、BG中に分散した表面修飾粒子の分散液A−3を得た。
次に、製造例2−1と同様に表面修飾粒子におけるGLYMOUの共有結合量を算出した結果、仕込んだGLYMOUの全量がBaTiO
3粒子に共有結合していることが確認された。
また、得られた表面修飾粒子のD50における粒子径を動的光散乱法により測定したところ20nmであった。
【0040】
製造例2−4 表面修飾粒子の分散液A−4の合成
BaTiO
3粒子10質量部、重合体(PU)としてPU−1 0.5質量部及びDEGMME90質量部を混合した。得られた混合液をビーズミルに投入し、直径0.3mmのジルコニアビーズで処理することでDEGMME中に分散した表面修飾粒子の分散液A−4を得た。
次に、製造例2−1と同様に表面修飾粒子を回収した。回収した粒子について、デュマ法を用いてPU−1に由来する窒素原子の定量を行い、その値をPU−1(窒素含有量4.8質量%)の量に換算することで共有結合量を算出した。その結果、仕込んだPU−1の全量がBaTiO
3粒子に共有結合していることが確認された。
また、得られた表面修飾粒子のD50における粒子径を動的光散乱法により測定したところ150nmであった。
【0041】
製造例2−5 表面修飾粒子の分散液A−5の合成
BaTiO
3粒子10質量部、ポリビニルブチラール(PVB)2質量部及びDEGMME90質量部を混合した液をビーズミルに投入し、直径0.3mmのジルコニアビーズで処理したところ、粒子が凝集し沈降した。そこで、さらにPVB13質量部及びDEGMME26質量部を添加して上記の処理を続行することで、DEGMME中に分散した表面修飾粒子の分散液A−5を得た。
次に、製造例2−1と同様に表面修飾粒子を回収した。回収した粒子について、熱重量測定(TG)法を用い、800℃まで加熱して結合したPVBを燃焼させた際の重量減少分を測定した。その結果、BaTiO
3粒子10質量部に対して5質量部のPVBが共有結合していることが確認された。
また、得られた表面修飾粒子のD50における粒子径を動的光散乱法により測定したところ150nmであった。
【0042】
実施例1−1
分散液A−1 804質量部、バインダ成分としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)16質量部、光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド(MAPO)0.8質量部及び溶媒としてDEGMME32質量部を混合しインク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0043】
実施例1−2
分散液A−1 603質量部、バインダ成分としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)37質量部、MAPO1.9質量部及びDEGMME74質量部を混合しインク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を、各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0044】
実施例1−3
分散液A−2 402質量部、分散液A−3 402質量部、バインダ成分としてTMPTA16質量部、MAPO0.8質量部、溶媒として1,3−ブチレングリコール(BG)32質量部及びレベリング剤(商品名BYK−375、ビックケミー社製)0.2質量部を混合しインク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を、各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0045】
実施例1−4
分散液
A−4 904.5質量部、バインダ成分として重合体PX−1 5.5質量部、及び溶媒としてDEGMME11質量部を混合し、インク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を、各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0046】
比較例1−1
表面を修飾していないBaTiO
3粒子100質量部及びDEGMME900質量部を混合した。この際、BaTiO
3粒子がすぐに沈降しインク組成物を作製することができなかった。
【0047】
比較例1−2
分散液A−1 301.5質量部、バインダ成分としてTMPTA68.5質量部、MAPO3.4質量部及びDEGMME137質量部を混合しインク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を、各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0048】
比較例1−3
分散液A−5 564質量部及びレベリング剤(商品名BYK−375、ビックケミー社製)0.2質量部を混合しインク組成物を得た。得られたインク組成物の25℃における粘度をE型粘度計により測定した。結果を各成分の質量比及び表面修飾粒子のD50と共に表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例2−1〜2−4、比較例2−1及び2−2
表2に示す実施例又は比較例で調製したインク組成物を、インクジェット(IJ)法又はスピンコート法を用い、基板上に塗布して220℃で60分間乾燥させた。基板としては、シリコンウエハに酸化膜を施した基板にTiとPtをスパッタしたPt/Ti/SiO
2/Si基板を用いた。次いで、光硬化の場合は、窒素雰囲気下で照射強度が3J/cm
2となるように紫外線を照射して行い、高誘電率膜を形成した。一方、熱硬化の場合は、220℃で60分間加熱することで高誘電率膜を形成した。
また、IJ法によるインクジェットパターニングは、SIJテクノロジー社製サブフェムトインクジェット加工装置を用いて行った。具体的には、まずインク組成物をインクジェットノズルに充填し、基板とノズル間の距離がおよそ50μmとなる位置にセットした。インクジェットノズルに所定の交流電圧を印加してインクを吐出し、2mm/sの速度で基板を走査した。厚さが約600nmとなるように交流電圧を調整するとともに、必要に応じて複数回同じパターンを描画して5mm角の矩形パターンを形成した。スピンコート法の場合も同様な厚さの膜を形成した。
次に、得られた高誘電率膜を形成した各基板の該膜上に、1mmφのアルミニウム電極を蒸着することで、下部電極がPt、上部電極がアルミニウムのコンデンサを作製した。
次いで、得られた各コンデンサを、インピーダンスアナライザー(HP4192A;Agilent Technologies)及びpAメータ(HP4140B;Agilent Technologies)に接続し、静電容量密度、誘電損失及びリーク電流を評価した。結果を表3に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
以上の結果より、実施例のインク組成物から作製した高誘電率膜を備えたコンデンサは、静電容量密度に優れ、誘電損出やリーク電流を十分に抑制しうる優れた特性を示すことがわかった。したがって、本発明のインク組成物は、高誘電率膜形成用として有用であることが確認された。