(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の
図2に開示されているような構成では、指先の到達範囲が狭く、胸の前で手を合わせるような形態を取ることができない。また、モータ61及び減速機62により構成されるアクチュエータ60や、ベベルギア63などが、腕部4(上腕)から突出しており、外観上、人間の肩や腕に近いなだらかな形状とは言い難い。
【0005】
上記特許文献2では、
図1〜3に人型ロボットの一実施形態の外観図が示されているが、アクチュエータの軸線方向の寸法短縮に限界があることから、肩の部分が前後方向に長くなり、見た目が悪いという問題がある(当該特許文献2を引用する上記特許文献1の段落[0006]〜[0007]を参照)。また、上記特許文献2の
図4に腕の可動範囲が示されており、段落[0006]には胸の前で両手を合わせることができる旨などが記載されているが、例えば顔を覆う動作のようなさらに広範囲での動作が可能であるかどうかについては疑義が残る。
【0006】
上記特許文献3では、回転動作と揺動動作を複数組み合わせて行うことができる腕部を備えたロボットが開示されているが、ロボットの肩部については、人間に近い動きを実現することが非常に困難であった。すなわち、人間の肩部は、揺動動作と回転動作に加えて、捩り動作を含む動作が可能であり、このような動作の組み合わせによって、胸部の前方に腕部を移動させるなどの複雑な動きが可能となっている。特に、人間を胸部の前に抱きかかえて持ち上げるといった介護動作が可能な介護用ロボットなどでは、上記のような肩部の複雑な動きが不可欠である。
【0007】
図10は、従来の肩関節機構の構成の一例を概略的に示した模式図である。この
図10に示す例では、回転動作と揺動動作を行うことができる2つの関節機構(第1関節機構100及び第2関節機構200)を組み合わせることにより、胸部の前方に腕部を移動させることが可能な構成が示されている。第1関節機構100は、ロボット本体1に連結され、当該ロボット本体1に対して、回転軸104を中心とする揺動動作と、回転軸117を中心とする回転動作とを実現することができる。第2関節機構200は、第1関節機構100に連結され、当該第1関節機構100に対して、回転軸204を中心とする揺動動作と、回転軸217を中心とする回転動作とを実現することができる。
【0008】
しかし、このような構成では、人間に近い動きを実現することができず、複雑な動きを可能にするためには、多くの関節機構が必要になるため駆動機構が複雑になるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より人間に近い動きを実現することができる肩関節機構及びこれを備えたロボットを提供することを目的とする。また、本発明は、駆動機構を簡略化することができる肩関節機構及びこれを備えたロボットを提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、以下のような課題を解決するものである。
(1)ロボット本体内(胸側空間)に大型の駆動部品、モーター、減速機等を収容し、人間の標準体型に近付ける。さらに、肩を含む腕全体が動作時においても常に人間の形状に近似し、ボディースーツ(潜水用ウェア)などを着せた場合でも違和感のない機構とする。
(2)ロボット本体内(胸側空間)に上記部材を収容することにより腕側機構の軽量化を図り、重量物の取扱を可能にする。
(3)人間の肩関節の複雑な動きを模擬的に再現することにより、腕が胸の前側に届くことを可能にし、顔を覆う動作のような広範囲での動作を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る肩関節機構は、ロボット本体と上腕部材とを連結するための肩関節機構であって、前記ロボット本体に対して回転可能に連結される第1肩部材と、前記第1肩部材に対して揺動可能に連結されるとともに、前記上腕部材が回転可能に連結される第2肩部材とを備え、前記第2肩部材は、前記上腕部材の長手方向に対して交差方向に延びる回転軸線を中心に前記上腕部材を回転可能に保持することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、第1肩部材がロボット本体に対して回転可能に連結されるとともに、当該第1肩部材に対して第2肩部材が揺動可能に連結されている。さらに、第2肩部材に対して回転可能に連結された上腕部材が、当該上腕部材の長手方向に対して交差方向に延びる回転軸線を中心に回転可能に保持されることにより、いわゆるオフセット関節が上腕に形成されている。
【0013】
このように、ロボット本体に対する第1肩部材の回転動作と、第1肩部材に対する第2肩部材の揺動動作と、第2肩部材に対する上腕部材のオフセット関節による回転動作という3つの動作の組み合わせにより、揺動動作と回転動作が可能な関節機構を2つ組み合わせた構成や、特許文献1〜3の構成と比較して、より人間に近い動きを実現することができる。
【0014】
また、上記3つの動作は、揺動動作と回転動作が可能な関節機構を2つ組み合わせた構成や、特許文献1〜3の構成と比較して、より簡単な駆動機構で実現することが可能であり、駆動機構を簡略化することができる。
【0015】
前記肩関節機構は、第1モータ、第2モータ及び第3モータからなる3つのモータと、前記第1モータ及び前記第2モータの回転方向の組み合わせに応じて、前記第1肩部材に対して前記第2肩部材を揺動させる状態と、前記第2肩部材に対して前記上腕部材を回転させる状態とを切替可能な第1動力伝達機構と、前記第3モータの回転に伴い、前記ロボット本体に対して前記第1肩部材を回転させるための第2動力伝達機構とを備えていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、3つのモータを用いて上記3つの動作を実現することができるので、特許文献1〜3のような他の構成と比較して、駆動機構を簡略化することができる。
【0017】
前記3つのモータが、前記ロボット本体内に配置されていることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、3つのモータがロボット本体内(胸側空間)に配置されるので、上腕側にモータを配置しない分だけ大きな荷重に耐え得るという効果がある。
【0019】
本発明に係るロボットは、前記肩関節機構と、当該肩関節機構により連結されたロボット本体及び上腕部材とを備えたことを特徴とする。
【0020】
このような構成によれば、本発明に係る肩関節機構と同様の上記効果を奏するロボットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットの外観構成を示した部分正面図である。
図2は、
図1のロボットを斜め上方から見た部分斜視図である。このロボットは、例えば介護用ロボットなどの人間と接触するロボットであり、胴部を構成するロボット本体1、肩部を構成する肩関節機構2、腕部を構成する上腕部材3といった人体と同様の部位を有する人型ロボットである。なお、
図2では、ロボット本体1における肩関節機構2との連結部近傍を透視した状態を示している。
【0023】
肩関節機構2は、ロボット本体1と上腕部材3とを連結するための機構であり、回転軸4を介して互いに揺動可能に連結された第1肩部材11及び第2肩部材12を備えている。第1肩部材11は、ロボット本体1に対して回転可能に連結される連結部111と、当該連結部111からそれぞれ突出し、互いに所定間隔を空けて平行に延びる2つの突出部112とが一体的に形成されることにより構成されている。第2肩部材12は、上腕部材3に対して回転可能に連結される連結部121と、当該連結部121からそれぞれ突出し、互いに所定間隔を空けて平行に延びる2つの突出部122とが一体的に形成されることにより構成されている。
【0024】
第1肩部材11の2つの突出部112と第2肩部材12の2つの突出部122とは、回転軸4を介して互いに回転可能に連結されており、これにより、第1肩部材11と第2肩部材12とが回転軸4を中心に揺動可能となっている。第1肩部材11の2つの突出部112が互いに所定間隔を空けて配置されるとともに、第2肩部材12の2つの突出部122が互いに所定間隔を空けて配置されることにより、これらの突出部112間及び突出部122間には、各種部品を配置するための内部空間5が形成されている。
【0025】
図3Aは、肩関節機構2の斜視図である。
図3Bは、肩関節機構2の平面図である。
図3Cは、肩関節機構2の正面図である。
図3Dは、肩関節機構2の側面図である。
図3Eは、
図3Bにおける肩関節機構2のA−A断面図である。これらの
図3A〜
図3Eでは、肩関節機構2とともに上腕部材3の一部も示されている。
【0026】
図3Cに示すように、上腕部材3は、一直線上に延びる中心軸線33に沿って長尺形状を有しており、第2肩部材12に対向する端面(上端面31)が、当該上腕部材3の長手方向D1に直交する方向(直交方向D2)に対して交差方向に延びるように形成されている。第2肩部材12は、上腕部材3を上端面31に対して直交方向に延びる回転軸線32を中心に回転可能に保持する保持部材として機能している。
【0027】
このように、上腕部材3を長手方向D1に対して交差方向に延びる回転軸線32を中心に回転させる関節(いわゆるオフセット関節)を用いることにより、回転軸線32を中心とする上腕部材3の回転位置に応じて、当該上腕部材3の第2肩部材12に対する角度を変化させることができる。直交方向D2に対する上腕部材3の上端面31の傾斜角度θ、すなわち上腕部材3の長手方向D1に対する回転軸線32の傾斜角度θは、必要な上腕部材3の角度変化量に応じて適宜に設定可能であり、本実施形態では上記傾斜角度θが30°に設定されている。
【0028】
本実施形態では、上腕部材3の上端面31は円形状の端面からなり、第2肩部材12の上腕部材3に対向する端面(下端面123)は、上腕部材3の上端面31の端面形状に対応する円形状の端面からなる。上腕部材3の上端面31と第2肩部材12の下端面123は、完全に一致する円形状であることが好ましいが、若干量の外径の相違があってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、上腕部材3及び第2肩部材12の互いに対向する端面31,123は円形状であるが、上腕部材3及び第2肩部材12の連結部分を上記端面31,123に対して交差方向に切断したときの断面は、円形状とはならず、楕円形状となっている。これにより、上記連結部分における表面の起伏の変化がより小さく、より人間の関節に近い外観を有するオフセット関節機構とすることが可能である。
【0030】
図4は、肩関節機構2の内部構成を説明するための断面図である。
図1、
図2及び
図4を参照して、本実施形態に係るロボットには、肩関節機構2及び上腕部材3を動作させるための駆動源として、3つのモータ13,14,15が備えられている。第1モータ13及び第2モータ14は、それぞれの駆動軸131,141が平行に延びるようにロボット本体1側に並べて配置されている(
図1参照)。これらの第1モータ13及び第2モータ14は、第1肩部材11の連結部111により保持されている。
【0031】
図4に示すように、第1モータ13の駆動軸131には第1かさ歯車(べベルギア)161が取り付けられ、第2モータ14の駆動軸141には第2かさ歯車162が取り付けられている。これらの第1かさ歯車161及び第2かさ歯車162は、同径で同一の歯数を有している。第1肩部材11の連結部111には、第1モータ13の駆動軸131を挿通させるための挿通孔113と、第2モータ14の駆動軸141を挿通させるための挿通孔114とが形成されている。
【0032】
したがって、ロボット本体1に対して回転可能に連結された連結部111の挿通孔113,114に、第1モータ13及び第2モータ14の駆動軸131,141をそれぞれ挿通させることにより、これらの駆動軸131,141に取り付けられたかさ歯車161,162を突出部112間及び突出部122間に形成された内部空間5内に配置することができる。
【0033】
内部空間5内には、第1かさ歯車161に噛み合う第3かさ歯車163と、第2かさ歯車162に噛み合う第4かさ歯車164とが配置されている。これらの第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164は、同径で同一の歯数を有している。第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164は、それらの中心部が回転軸4に取り付けられており、それぞれ当該回転軸4を中心に回転可能となっている。第3かさ歯車163は第1肩部材11の一方の突出部112に近接配置され、第4かさ歯車164は他方の突出部112に近接配置されることにより、第3かさ歯車163と第4かさ歯車164との間には空間が形成されている。
【0034】
第3かさ歯車163と第4かさ歯車164との間の空間には、回転軸4に対して直交方向に延びる回転軸17を中心に回転可能な第5かさ歯車165が配置されている。第5かさ歯車165には、第3かさ歯車163に固定された第6かさ歯車166と、第4かさ歯車164に固定された第7かさ歯車167とが、第5かさ歯車165を挟んで両側でそれぞれ当該第5かさ歯車165に噛み合っている。これらの第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167は、同径で同一の歯数を有している。第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167は、第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164よりも小径の歯車からなり、第3かさ歯車163及び第4かさ歯車164と同様に、回転軸4を中心に回転可能となっている。
【0035】
第5かさ歯車165が取り付けられた回転軸17は、第2肩部材12により回転可能に保持されている。回転軸17には第1平歯車181が取り付けられており、当該第1平歯車181が、第2肩部材12の連結部121に回転可能に保持された第2平歯車182と噛み合っている(
図3B及び
図3E参照)。第2肩部材12の連結部121には、上腕部材3の回転軸線32を形成する回転軸37が回転可能に保持されており、当該回転軸37に取り付けられた第3平歯車183が、上記第2平歯車182に噛み合っている。
【0036】
図5は、干渉駆動機構について説明するための概略図である。干渉駆動機構は、回転動作と揺動動作を実現することができる機構であって、
図4に示したような機構により実現することができる。この例における干渉駆動機構では、第1モータ13及び第2モータ14が駆動源となっている。
【0037】
この干渉駆動機構では、第1モータ13の動力が伝達される第6かさ歯車166と、第2モータ14の動力が伝達される第7かさ歯車167とが、共通の第5かさ歯車165に噛み合っているため、第1モータ13及び第2モータ14の回転方向の組み合わせに応じて、異なる態様で動力が伝達されるようになっている。
【0038】
図5(a)のように、第1モータ13及び第2モータ14がいずれも回転する場合であって、それぞれ同方向に回転する場合には、回転軸4を中心に第3かさ歯車163及び第6かさ歯車166が回転する方向と、第4かさ歯車164及び第7かさ歯車167が回転する方向とが、互いに逆方向となる。
【0039】
このように、第5かさ歯車165を挟んで両側に配置された第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167が互いに逆方向に回転する場合には、第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167が、第5かさ歯車165を同方向に回転させるように動力を伝達する。そのため、互いに同方向である第1モータ13及び第2モータ14の回転方向に応じて、すなわち、いずれも正転するか、又は、いずれも逆転するかに応じて、第5かさ歯車165に取り付けられた回転軸17の回転方向が切り替わるようになっている。
【0040】
上記のような
図5(a)の態様では、回転軸17が回転することにより、当該回転軸17に連結された上腕部材3の回転動作を実現することができる。
【0041】
図5(b)のように、第1モータ13及び第2モータ14がいずれも回転する場合であって、それぞれ逆方向に回転する場合には、回転軸4を中心に第3かさ歯車163及び第6かさ歯車166が回転する方向と、第4かさ歯車164及び第7かさ歯車167が回転する方向とが、互いに同方向となる。
【0042】
このように、第5かさ歯車165を挟んで両側に配置された第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167が同方向に回転しようとする場合には、第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167が、第5かさ歯車165を互いに逆方向に回転させるように動力を伝達するため、第5かさ歯車165は回転できない。したがって、第5かさ歯車165は、第6かさ歯車166及び第7かさ歯車167に噛み合った状態のまま回転軸4を中心に回転し、当該第5かさ歯車165を保持する保持部材12が回転軸4を中心に回転することとなる。そのため、互いに逆方向である第1モータ13及び第2モータ14の回転方向に応じて、すなわち、第1モータ13が正転し第2モータ14が逆転するか、又は、第1モータ13が逆転し第2モータ14が正転するかに応じて、回転軸4を中心とする保持部材12の回転方向が切り替わるようになっている。
【0043】
上記のような
図5(b)の態様では、回転軸4を中心に保持部材12が回転することにより、保持部材12の揺動動作を実現することができる。
【0044】
図6は、干渉駆動機構の動作パターンについて説明するための図である。
【0045】
動作パターンP1は、
図5(a)に示したパターンであり、第1モータ13及び第2モータ14がいずれも正転することにより、第5かさ歯車165に取り付けられた回転軸17が逆転するようになっている。一方、動作パターンP2では、第1モータ13及び第2モータ14がいずれも逆転することにより、第5かさ歯車165に取り付けられた回転軸17が正転するようになっている。
【0046】
動作パターンP3は、
図5(b)に示したパターンであり、第1モータ13が正転し第2モータ14が逆転することにより、回転軸4を中心に保持部材12が回転するようになっている。一方、動作パターンP4では、第1モータ13が逆転し第2モータ14が正転することにより、動作パターンP3とは逆方向に保持部材12が回転するようになっている。
【0047】
動作パターンP5では、第1モータ13のみが正転し、第2モータ14は回転しないことにより、回転軸4を中心に第3かさ歯車163及び第6かさ歯車166が回転する。この場合には、第6かさ歯車166に噛み合っている第5かさ歯車165を介して、当該第5かさ歯車165に取り付けられている回転軸17が逆転する。このとき、第2モータ14の駆動が停止していることにより、第5かさ歯車165は、第7かさ歯車167から抵抗を受けて回転軸4を中心に回転し、当該第5かさ歯車165を保持する保持部材12が回転軸4を中心に、動作パターンP3と同方向に回転することとなる。
【0048】
動作パターンP6では、第1モータ13のみが逆転し、第2モータ14は回転しないことにより、第3かさ歯車163及び第6かさ歯車166が、動作パターンP5とは逆方向に回転する。この場合には、第6かさ歯車166に噛み合っている第5かさ歯車165を介して、当該第5かさ歯車165に取り付けられている回転軸17が正転する。このとき、第2モータ14の駆動が停止していることにより、第5かさ歯車165は、第7かさ歯車167から抵抗を受けて回転軸4を中心に回転し、当該第5かさ歯車165を保持する保持部材12が回転軸4を中心に、動作パターンP4と同方向に回転することとなる。
【0049】
動作パターンP7では、第2モータ14のみが正転し、第1モータ13は回転しないことにより、回転軸4を中心に第4かさ歯車164及び第7かさ歯車167が回転する。この場合には、第7かさ歯車167に噛み合っている第5かさ歯車165を介して、当該第5かさ歯車165に取り付けられている回転軸17が逆転する。このとき、第1モータ13の駆動が停止していることにより、第5かさ歯車165は、第6かさ歯車166から抵抗を受けて回転軸4を中心に回転し、当該第5かさ歯車165を保持する保持部材12が回転軸4を中心に、動作パターンP4と同方向に回転することとなる。
【0050】
動作パターンP8では、第2モータ14のみが逆転し、第1モータ13は回転しないことにより、回転軸4を中心に第4かさ歯車164及び第7かさ歯車167が回転する。この場合には、第7かさ歯車167に噛み合っている第5かさ歯車165を介して、当該第5かさ歯車165に取り付けられている回転軸17が正転する。このとき、第1モータ13の駆動が停止していることにより、第5かさ歯車165は、第6かさ歯車166から抵抗を受けて回転軸4を中心に回転し、当該第5かさ歯車165を保持する保持部材12が回転軸4を中心に、動作パターンP3と同方向に回転することとなる。
【0051】
上記動作パターンP1〜P4では、回転軸17の回転、又は、回転軸4を中心とする保持部材12の回転のいずれか一方の動作が、2つのモータ13,14の駆動により行われるため、動作パターンP5〜P8と比較して、トルクを倍にすることができるという効果がある。一方、上記動作パターンP5〜P8では、回転軸17の回転に基づく上腕部材3の回転動作と、保持部材12の揺動動作とを同時に実現することができる。これらの動作パターンP1〜P8は、負荷及び動作時間を考慮して選択される。例えば、負荷が大きい場合には、動作パターンP1〜P4を選択し、動作時間を短くする場合には、動作パターンP5〜P8を選択することができる。
【0052】
図5及び
図6を用いて説明したような動力伝達機構は、第1モータ13及び第2モータ14の回転方向の組み合わせに応じて、第1肩部材11に対して第2肩部材12を揺動させる状態と、第2肩部材12に対して上腕部材3を回転させる状態とを切替可能な第1動力伝達機構41を構成している。
【0053】
本実施形態に係るロボットには、上記第1動力伝達機構41に加えて、第3モータ15の回転に伴い、ロボット本体1に対して第1肩部材11を回転させるための第2動力伝達機構42が備えられている。この第2動力伝達機構42は、互いに噛み合うウォーム151及びウォームホイール19からなるウォームギアを備えている。ウォームホイール19は、円板の外周面に歯車が形成された構成であり、その中心軸線が第1モータ13及び第2モータ14の駆動軸131,141に対して平行になるように、第1肩部材11の連結部111に固定されている。ウォーム151は、第3モータ15の駆動軸に取り付けられている。第3モータ15の駆動軸は、第1モータ13及び第2モータ14の駆動軸131,141に対して垂直に延びており、当該駆動軸に取り付けられたウォーム151は、その中心軸線がウォームホイール19の中心軸線に対して垂直になるようにして、当該ウォームホイール19の外周面に形成された歯車と噛み合っている。
【0054】
このような構成により、第3モータ15が回転すれば、当該第3モータ15の駆動軸にウォーム151及びウォームホイール19を介して連結された第1肩部材11が回転し、これにより、肩関節機構2全体が回転するようになっている。このとき、第3モータ15の回転方向に応じて、すなわち、正転するか、又は、逆転するかに応じて、ロボット本体1に対する肩関節機構2の回転方向が切り替わるようになっている。
【0055】
このように、本実施形態に係る肩関節機構2を用いることにより、第1モータ13及び第2モータ14の回転方向の組み合わせに応じた上記動作パターンP1〜P8に、第3モータ15の回転方向に応じたロボット本体1に対する肩関節機構2の回転を組み合わせることができるので、人間の肩関節の複雑な動きを模擬的に再現することができる。
【0056】
図7は、肩関節機構2の構成を概略的に示した模式図である。本実施形態では、第1肩部材11がロボット本体1に対して回転可能に連結されるとともに、当該第1肩部材11に対して第2肩部材12が揺動可能に連結されている。さらに、第2肩部材12に対して回転可能に連結された上腕部材3が、当該上腕部材3の長手方向D1に対して交差方向に延びる回転軸線32を中心に回転可能に保持されることにより、いわゆるオフセット関節が上腕に形成されている。
【0057】
このように、ロボット本体1に対する第1肩部材11の回転動作と、第1肩部材11に対する第2肩部材12の揺動動作と、第2肩部材12に対する上腕部材3のオフセット関節による回転動作という3つの動作の組み合わせにより、揺動動作と回転動作が可能な関節機構を2つ組み合わせた構成(
図10のような構成)や、特許文献1〜3の構成と比較して、より人間に近い動きを実現することができる。
【0058】
また、上記3つの動作は、揺動動作と回転動作が可能な関節機構を2つ組み合わせた構成(
図10のような構成)や、特許文献1〜3の構成と比較して、より簡単な駆動機構で実現することが可能であり、駆動機構を簡略化することができる。
【0059】
特に、本実施形態では、3つのモータ13,14,15を用いて上記3つの動作を実現することができるので、特許文献1〜3のような他の構成と比較して、駆動機構を簡略化することができる。また、3つのモータ13,14,15がロボット本体1内(胸側空間)に配置されるので、上腕側にモータを配置しない分だけ大きな荷重に耐え得るという効果がある。
【0060】
図8は、成形後のロボットの外観構成を示した部分正面図である。ロボット本体1は外装部材1Aにより、肩関節機構2は外装部材2Aにより、上腕部材3は外装部材3Aにより、それぞれ人間に近い滑らかな表面に成形される。肩関節機構2の外装部材2Aの表面は、球面を含む形状であることが好ましい。
【0061】
ロボット本体1の外装部材1Aと肩関節機構2の外装部材2Aとの連結部には、カバー部材10が取り付けられている。このカバー部材10は、外装部材1A,2A間の隙間を塞ぐためのものであり、人間に近い滑らかな表面に成形されている。また、カバー部材10は、
図8に破線で示すように、第1肩部材11に対して第2肩部材12を揺動させる際に動作範囲を制限しないような形状となっている。
【0062】
このように、ロボット本体1内(胸側空間)に大型の駆動部品、モーター、減速機等を収容し、人間の標準体型に近付けることができる。さらに、肩を含む腕全体が動作時においても常に人間の形状に近似し、ボディースーツ(潜水用ウェア)などを着せた場合でも違和感のない機構とすることができる。さらに、ロボット本体1内(胸側空間)に上記部材を収容することにより腕側機構の軽量化を図り、重量物の取扱を可能にすることができる。
【0063】
図9は、ロボットの動作態様の一例を示した斜視図である。本実施形態のような肩関節機構2を用いることにより、例えば
図9に示すような態様でロボットを動作させることができる。すなわち、
図9(a)の状態から、肩関節機構2全体を回転させながら、上腕部材3に対して回転可能に取り付けられた下腕部材20を回転させ(
図9(b)〜(c))、さらに肩関節機構2に対して上腕部材3を回転させることにより(
図9(d))、腕が胸の前側に届くことを可能にし、顔を覆う動作のような広範囲での動作を可能にしている。
【0064】
上述のようなオフセット関節機構や肩関節機構は、介護用ロボットに限らず、他の各種ロボットに適用可能であり、特に、人間と接触するロボットに好適に適用可能である。