特許第6099360号(P6099360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099360アンニンコウ抽出液の高分子画分による免疫機能強化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099360
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】アンニンコウ抽出液の高分子画分による免疫機能強化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20170313BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20170313BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170313BHJP
   A23L 31/00 20160101ALI20170313BHJP
【FI】
   A61K36/07
   A61P37/08
   A61P37/02
   A61P1/04
   A61P1/02
   A61P1/00
   A61P19/02
   A61P29/00 101
   A61P11/02
   A61P11/06
   A61P17/00
   A61P9/00
   A61P43/00 111
   A23L31/00
【請求項の数】20
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2012-240606(P2012-240606)
(22)【出願日】2012年10月31日
(65)【公開番号】特開2014-88358(P2014-88358A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141381
【氏名又は名称】株式会社岩出菌学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】原田 栄津子
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−209092(JP,A)
【文献】 特開2008−099587(JP,A)
【文献】 特開2010−189284(JP,A)
【文献】 Food Sci Technol Res ,2011年,Vol.17,No.2,Page.103-110
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/00−36/9068
A23L 31/00
A61P 1/00
A61P 1/02
A61P 1/04
A61P 9/00
A61P 11/02
A61P 11/06
A61P 17/00
A61P 19/02
A61P 29/00
A61P 37/02
A61P 37/08
A61P 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンニンコウ(Grifola gargal)の子実体の熱水抽出液の高分子画分を含む、アレルギー疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤であって、高分子画分が分子量6000以上の物質からなる薬剤
【請求項2】
アレルギー疾患が気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、花粉症、口内炎、腸炎、潰瘍、狭心症、リウマチ様関節炎からなる群より選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
アンニンコウの子実体の熱水抽出液の高分子画分を含む、免疫機能調整剤であって、免疫機能の調整がIFN-γの産生促進、IL-12の産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制からなる群より選択され、高分子画分が分子量6000以上の物質からなる、免疫機能調整剤。
【請求項4】
免疫機能の調整がIFN-γの産生促進である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項5】
免疫機能の調整がIL-12の産生促進である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項6】
免疫機能の調整がIgEの産生抑制である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項7】
免疫機能の調整がMCP−1の産生抑制である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項8】
免疫機能の調整が制御性T細胞の増殖促進である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項9】
免疫機能の調整がNKT細胞増殖抑制である、請求項3に記載の免疫機能調整剤。
【請求項10】
高分子画分が分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を含む、請求項1から9のいずれかに記載の剤。
【請求項11】
アンニンコウの子実体の熱水抽出液の高分子画分を含む、アレルギー疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための飲食品組成物であって、高分子画分が分子量6000以上の物質からなる飲食品組成物
【請求項12】
アレルギー疾患が気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、花粉症、口内炎、腸炎、潰瘍、狭心症、リウマチ様関節炎からなる群より選択される、請求項11に記載の飲食品組成物。
【請求項13】
アンニンコウの子実体の熱水抽出液の高分子画分を含む、免疫機能調整用の飲食品組成物であって、免疫機能の調整がIFN-γの産生促進、IL-12の産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制からなる群より選択され、高分子画分が分子量6000以上の物質からなる、飲食品組成物。
【請求項14】
免疫機能の調整がIFN-γの産生促進である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項15】
免疫機能の調整がIL-12の産生促進である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項16】
免疫機能の調整がIgEの産生抑制である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項17】
免疫機能の調整がMCP−1の産生抑制である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項18】
免疫機能の調整が制御性T細胞の増殖促進である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項19】
免疫機能の調整がNKT細胞増殖抑制である、請求項13に記載の飲食品組成物。
【請求項20】
高分子画分が分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を含む、請求項11から19のいずれか記載の飲食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンニンコウ抽出液の高分子画分によるアレルギー疾患の治療や予防に関する。また本発明は、アンニンコウ抽出液の高分子画分、及び当該高分子画分の免疫機能の調整のための利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アレルギー疾患の患者数は、先進国を中心に急激に増加している。日本の全人口の3人に1人が何らかのアレルギー疾患に罹患しており、近年はさらに増加が加速しているのが現状である。その増加の主体は、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)と喘息患者の増加によるものと考えられている。また、その重症化も進み、日常生活に著しい支障を慢性的にきたすことから 、国民の健康上重大な問題となっている。これらアレルギー疾患の治療には、抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬、副腎皮質ステロイド薬、気管支拡張薬、免疫抑制薬を用いた対症療法が中心である。これらの対処療法には、奏功性の向上や副作用の克服等の課題が指摘されている。さらに、難病性の喘息、アトピー性皮膚炎等は、これらのアレルギー治療薬では十分な治療効果が得られていないことも少なくない。このため、副作用を軽減した奏功性の高いアレルギー疾患治療法の確立が切望されている。
【0003】
アンニンコウ(Grifola gargal)は、チリ・パタゴニア原産で杏仁様の芳香が特徴的な食用担子菌で、ヒダナシタケ目、サルノコシカケ科、マイタケ属に属する木材腐朽菌である。これまで抗酸化作用・破骨細胞抑制作用や糖尿病・肥満症改善効果など、アンニンコウは多彩な機能性を持つことが明らかになっている。
しかしながら、アンニンコウ抽出液の炎症、アレルギー、および喘息疾患に対する抑制効果は、これまで報告されておらず、いずれの文献にも記載されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Singer, R., Mycoflora Australis. Nova Hedwigia, Beiheft 29, Chicago, USA, 381-382. (1969)
【非特許文献2】Rajchenberg, M., The Genus Grifola (Aphyllophorales, Basidiomycota) in Argentina revisted. Boletin de la Sociedad Argentina de Botanica. 37, 19-27. (2002)
【非特許文献3】原田栄津子,川出光生,松田陽介,目黒貞利:チリ産食用キノコ Grifola gargal Singer の形態学的および分子生物学的検討.菌日報 51,71-176. (2010)
【非特許文献4】Bruijn, J., Loyola, C., Aqueveque, P., Canumir, J., Cortez, M., France, A., Influence of heat treatment on the antioxidant properties of Grifola gargal hydro-alcoholic extracts. Micologia Aplicada Internacional. 20, 27-34. (2008)
【非特許文献5】Bruijn, J., Loyola, C., Aqueveque, P., Canumir, J., Cortez, M., France, A. Antioxidant properties of extracts obtained from Grifola gargal mushrooms. Micologia Aplicada Internacional. 21, 11-18.(2009)
【非特許文献6】Wu. J., Choi, J.H., Yoshida M., Hirai H., Harada, E., Masuda, K., Koyama T., Yazawa K., Noguchi, K., Nagasawa, K., Kawagishi H.,. Osteoclast-forming suppressing compounds, gargalols A, B, and C, from the edible mushroom Grifola gargal. Tetrahedron, 67, 6576‐6581.(2011)
【非特許文献7】原田栄津子,川出光生,斉藤正好,食用担子菌Grifola gargal低分子分画投与の抗肥満効果,日本農芸化学会2010年度大会,東京,2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、アンニンコウの熱水抽出液の高分子画分によるアレルギー疾患の治療剤や予防剤を提供することを課題とする。また本発明は、アンニンコウ抽出液の高分子画分、及び当該高分子画分による免疫機能を調整するための薬剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った。本発明者らは、アンニンコウの熱水抽出液、その低分子画分および高分子画分を使用し、免疫応答細胞からのサイトカイン産生能等を検討した。また、卵白アルブミン(OVA)で誘導した気管支喘息モデルマウスにアンニンコウの熱水抽出液、その低分子画分および高分子画分を投与し、気道過敏性の測定および、脾臓、気管支肺胞洗浄液(BALF)、血液中の免疫機能に及ぼす影響を検討した。
その結果本発明者らは、アンニンコウの熱水抽出液の高分子画分に、IFN-γ、IL-12 及びIL-10 の産生促進作用、や制御性T細胞の増殖促進作用及びNKT細胞増殖抑制作用があることを明らかにした。また喘息マウスモデルにおいてIgE、IgG、MCP-1を強力に抑制し、肺組織における粘液過多分泌や炎症を抑制する機能を持ち、アレルギーおよび喘息疾患に対する抑制効果が認められた。
さらに本発明者らは、アンニンコウの熱水抽出液の高分子画分が、分子量400000以上の成分と分子量22800の2つの成分からなることを明らかにした。
本発明はこのような知見に基づくものであり、以下の〔1〕〜〔20〕を提供する。
〔1〕食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方又はいずれか一方を含む、アレルギー疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤。
〔2〕食用キノコがGrifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔1〕に記載の薬剤。
〔3〕食用キノコが、アンニンコウ(Grifola gargal)、マイタケ(Grifola frondosa)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eringii)、シイタケ(Lentinula edodes)、ナメコ(Pholiota nameko)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)、オオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)、ヒメマツタケ(Agaricus blazei)、サウーバ(Tricholoma sp.)及びキッタリア(Cyttaria espinosae)からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔1〕又は〔2〕に記載の薬剤。
〔4〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)である、〔1〕から〔3〕のいずれかに記載の薬剤。
〔5〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体である、〔1〕から〔4〕のいずれかに記載の薬剤。
〔6〕アレルギー疾患が気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、花粉症、口内炎、腸炎、潰瘍、狭心症、リウマチ様関節炎からなる群より選択される、〔1〕から〔5〕のいずれかに記載の薬剤。
〔7〕食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方又はいずれか一方を含む、免疫機能調整剤。
〔8〕食用キノコがGrifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔7〕に記載の免疫機能調整剤。
〔9〕食用キノコが、アンニンコウ(Grifola gargal)、マイタケ(Grifola frondosa)、ヒラタケ(Pleurotus ostreatus)、エリンギ(Pleurotus eringii)、シイタケ(Lentinula edodes)、ナメコ(Pholiota nameko)、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)、オオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)、ヒメマツタケ(Agaricus blazei)、サウーバ(Tricholoma sp.)及びキッタリア(Cyttaria espinosae)からなる群より選択される少なくとも一つのキノコである、〔7〕又は〔8〕に記載の免疫機能調整剤。
〔10〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)である、〔7〕から〔9〕のいずれかに記載の免疫機能調整剤。
〔11〕食用キノコがアンニンコウ(Grifola gargal)の子実体である、〔7〕から〔10〕のいずれかに記載の免疫機能調整剤。
〔12〕免疫機能の調整がサイトカイン産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制からなる群より選択される、〔7〕から〔11〕のいずれかに記載の免疫機能調整剤。
〔13〕サイトカインがIFN-γ、IL-10及びIL-12からなる群より選択される、〔12〕に記載の免疫機能調整剤。
〔14〕高分子画分が以下の工程を含む方法によって得られる、〔1〕から〔6〕のいずれかに記載の薬剤又は〔7〕から〔13〕のいずれかに記載の免疫機能調整剤;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分を取得する工程。
〔15〕高分子画分が分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を含む、〔14〕に記載の薬剤又は免疫機能調整剤。
〔16〕以下(a)から(c)の工程を含む方法によって調製される食用キノコの熱水抽出液の高分子画分であって、IFN-γ、IL-10又はIL-12の産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する高分子画分;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分を取得する工程。
〔17〕工程(c)の画分から分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を抽出する工程をさらに含む、〔16〕に記載の高分子画分。
〔18〕〔1〕から〔6〕、〔14〕及び〔15〕のいずれかに記載の薬剤、〔7〕から〔15〕のいずれかに記載の免疫機能調整剤、並びに〔16〕又は〔17〕に記載の高分子画分からなる群より選択される少なくとも1つを含む食品。
〔19〕以下(a)から(c)の工程を含む食用キノコの熱水抽出液の高分子画分であって、IFN-γ、IL-10又はIL-12の産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制からなる群より選択される少なくとも1つの活性を有する高分子画分の製造方法;
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分を取得する工程。
〔20〕工程(c)の画分から分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を抽出する工程をさらに含む、〔19〕に記載の方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、アンニンコウの熱水抽出液の高分子画分による免疫機能調整剤、並びにアレルギー疾患の治療及び予防の両方またはいずれか一方のための薬剤が提供された。アンニンコウは、従来より食品として使用されている。従って安全性が非常に高く、副作用のリスクが小さい治療あるいは予防効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、アンニンコウ子実体の熱水抽出の工程を示す図である。
図2図2は、マウス脾臓細胞刺激試験の結果を示すグラフである。
図3図3は、抗IL-10抗体または抗IL-12抗体の存在下におけるマウス脾臓細胞刺激試験の結果を示すグラフである。
図4図4は、マウス腹腔マクロファージ刺激試験の結果を示すグラフである。
図5図5は、気管支喘息モデルマウスを用いた動物実験の工程を示す図である。
図6図6は、気道過敏性試験の結果を示すグラフである。
図7図7は、気管支肺胞洗浄液(BALF)および血液(PLASMA)中のIgE濃度の測定結果を示すグラフである。
図8図8は気管支肺胞洗浄液(BALF)および血液(PLASMA)中のIgG濃度の測定結果を示すグラフである。
図9図9は、血液(PLASMA)中のMCP-1濃度の測定結果を示すグラフである。
図10図10は、血液(PLASMA)中のINF-γおよびIL-12濃度の測定結果を示すグラフである。
図11図11は、気管支肺胞洗浄液(BALF)および血液(PLASMA)中のIL-10濃度の測定結果を示すグラフである。
図12図12は、NKT細胞の増殖活性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を含む、アレルギー疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤に関する。また本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を含む、免疫機能調整剤に関する。
【0010】
食用キノコは、当該キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分が抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整活性を有する限り、特に限定されない。そのような食用キノコの例として、Grifola属、Pleurotus属、Lentinula属、Pholiota属、Agrocybe属、Leucopaxillus属、Agaricus属、Tricholoma属からなる群より選択されるキノコが挙げられる。
このような食用キノコとして、より具体的には、
・アンニンコウ(学名:Grifola gargal)
・マイタケ(学名:Grifola frondosa)
・ヒラタケ(学名:Pleurotus ostreatus)
・エリンギ(学名:Pleurotus eringii)
・シイタケ(学名:Lentinula edodes)
・ナメコ(学名:Pholiota nameko)
・ヤナギマツタケ(学名:Agrocybe cylindracea)
・オオイチョウタケ(学名:Leucopaxillus giganteus)
・ヒメマツタケ(学名:Agaricus blazei)
・サウーバ(学名:Tricholoma sp.)
・キッタリア(学名:Cyttaria espinosae)
などを挙げることができるが、これらに限定されない。
上述の食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分が抗アレルギー活性または免疫機能調整活性を有するか否かは、例えば、上述の食用キノコの熱水抽出液、または当該抽出液の高分子画分のIgEの産生抑制作用、MCP−1の産生抑制作用、サイトカイン産生促進活性、制御性T細胞の増殖促進活性及びNKT細胞増殖抑制作用などを、in vivoあるいはin vitroで測定することにより判定することができる。
【0011】
サイトカインとしては、IFN-γ、IL-10及びIL-12などを挙げることができるがこれらに限定されない。対照と比較して、上述の食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分がこれらサイトカインの産生を促進した場合、IL−10や制御性T細胞の増殖を促進した場合、あるいはNKT細胞の増殖を抑制した場合、上述の食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分は抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整活性を有すると判定することができる。本発明において免疫機能調整活性とは、上述のサイトカインの産生を促進させる活性、あるいは制御性T細胞の増殖を促進させる活性、または、NKT細胞増殖を抑制させる活性をいう。なおNKT細胞については、気道過敏症をひき起こす細胞であるという報告がある(Asuka Terashima , Hiroshi Watarai, Sayo Inoue, Etsuko Sekine, Ryusuke Nakagawa, Koji Hase , Chiaki Iwamura , Hiroshi Nakajima, Toshinori Nakayama and Masaru Taniguchi.A novel subset of mouse NKT cells bearing the IL-17 receptor B responds to IL-25 and contributes to airway hyperreactivity. J. Exp. Med.,205(12) 2727-2733 (2008))。
あるいは、上述の食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分をアレルギー性疾患の症状を有する対象に投与し、対象におけるこれらの症状を観察し、またはこれらの症状の指標となるマーカーを測定、検出することにより、抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整活性を判定することもできる。アレルギー性疾患としては、後述の気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、花粉症、口内炎、腸炎、潰瘍、狭心症、リウマチ様関節炎などが挙げられるがこれらに限定されない。食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分を投与しない対照と比較してこれらアレルギー性疾患の症状が抑制または緩和した場合、あるいは対照と比較してこれらの疾患の公知の診断マーカーの値が減少した場合、上述の食用キノコの熱水抽出液または当該抽出液の高分子画分は抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整活性を有すると判定することができる。例えば喘息の場合、IgEの上昇や気道過敏性の亢進の有無を指標にこれらの活性を判定することができる。
【0012】
上に挙げた食用キノコのうち、マイタケ、ヒラタケ、エリンギ、シイタケ、ナメコ、オオイチョウタケ及びヤナギマツタケの7種は、日本において食用として栽培されているキノコである。またアンニンコウ、ヒメマツタケ、サウーバ及びキッタリアの4種は、南アメリカに生息している食用キノコである。
【0013】
本発明においては、食用キノコとして、特にアンニンコウが好ましい。アンニンコウは、菌糸体及び子実体のいずれも使用することができるが、本発明においては子実体が好ましい。
アンニンコウは、南アメリカのパタゴニア地方のNotofagus sp.の枯れ木や倒木に発生する担子菌類ヒダナシタケ目サルノコシカケ科マイタケ属に属する木材腐朽菌である。近年、菌床栽培も可能となった。アンニンコウの菌床栽培は、当業者であれば、例えば特開2007−20560に開示の方法にしたがって行うことができる。あるいは、例えば以下の組成からなる培地にアンニンコウ種菌(例えば、株式会社岩出菌学研究所保存のIwade−GG010株)を接種後、例えば培養温度20℃、湿度70%の恒温室内で90日間培養する。そして、培養物を以下に示す低温処理および発生処理を行うことにより、アンニンコウの子実体を得ることができる。なお、アンニンコウ種菌の培養により、菌糸が培地全体に蔓延し、ベンズアルデヒドを主成分とする強い芳香が培養室全体に広がる。この強烈な芳香はアンニンコウに特徴的なものである。
(培地組成)
基材:ナラ類、クヌギ等の広葉樹おが屑
栄養剤:米ぬか、フスマ等
基材:栄養剤=5:1(体積比)にて、混合し、含水率65%とするように、水を加える。
このように調整した培地は、培養ビンや培養袋に入れて、高圧下で滅菌し、冷却後に使用することができる。
(低温処理)
充分に蔓延した菌糸体に刺激を与える。刺激は光照射、低温であり、光刺激は、照度2000Lx 程度である。低温刺激として、室温を10℃に維持する。菌糸培養中にベンズアルデヒドを主成分とする強い芳香を放散するが、この芳香が急に激減する時期に刺激を与える(例えば培養90日後)。
このような刺激を与えると、原基が発生し、原基の表面が白から、灰色、黒色へ、変化する。変化した後に、発生処理を行う。
(発生処理)
例えば相対湿度90〜100%、温度15℃の条件で、子実体を発生させることができる。上記のように原基の表面が黒色化した後、培養袋を開封し、培地の空気の循環を促して、培地中の二酸化炭素の濃度を下げ、子実体を発生させることができる。種菌の接種から約120日で、培地2kgからアンニンコウの子実体約400g(生きのこ)を収穫できる。
【0014】
本発明の「食用キノコの熱水抽出液」は、食用キノコに由来する1つの成分または複数の成分を含むものであって、食用キノコを熱水中で浸漬することによって得られるものから残渣を取り除くことによって得られるものであれば特に限定されない。例えば、食用キノコの熱水抽出物から残渣を取り除くことによって得られる上澄み液、当該上済み液の濃縮液、凍結乾燥品なども、抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整機能が損なわれない限り、本発明の「食用キノコの熱水抽出液」に含まれる。
【0015】
食用キノコの熱水抽出物は、例えば、食用キノコの乾燥品を粉砕機で粉砕し、それを大量の熱水で煮込むことによって得ることができる。食用キノコの乾燥は、例えば、キノコに40乃至50℃(好ましくは45℃前後)の温風を一昼夜あて、その後60乃至80℃(好ましくは70℃前後)の温風を、例えば約1時間あてることにより行うことができるがこれに限定されない。食用キノコの乾燥品の粉末化は、例えば、乾燥後のキノコをミキサーで粉砕することによって行うことができる。
【0016】
このようにして得られる食用キノコの粉末は、大量の熱水で処理される。具体的には、例えば、食用キノコの乾燥粉末を熱水に入れ、温度を一定に保ちながら、食用キノコと熱水との混合物を攪拌することにより、食用キノコの熱水抽出物を取得することができる。熱水の温度は、例えば70℃から120℃、好ましくは80℃から110℃、より好ましくは85℃から100℃、特に好ましくは90℃から95℃を例示することができるがこれらに限定されない。また抽出時間は、例えば4時間から8時間、好ましくは5時間から7時間、特に好ましくは6時間程度を例示することができるがこれらに限定されない。また熱水抽出は、通常、中性、常圧の条件下で行うが、減圧、加圧条件下で行うこともできる。
【0017】
本発明の「食用キノコの熱水抽出物の熱水抽出液」は、例えば、上述の方法にしたがって得られる食用キノコの熱水抽出物から残渣を取り除き、上澄み液を分離することにより取得することができる。上澄み液の分離は、例えばセライト濾過、薮田式ろ過、フィルタープレス、遠心分離、限外濾過などによって行うことができるがこれに限定されない。熱水抽出物から上澄み液の分離は、熱水抽出物を遠心分離し、食用キノコの乾燥粉末を沈澱させた後に行うことが好ましい。またこの工程は、上述の方法にしたがって得られる熱水抽出物を篩にかけることによって、食用キノコの乾燥粉末を分離・除去した後に行うこともできる。
【0018】
上述の食用キノコと熱水の混合物の攪拌の工程と、それにより得られる熱水抽出物から上澄み液を分離する工程は、それぞれ、1回又は複数回行うことができる。あるいは、熱水抽出物から上澄み液を分離することにより得られる食用キノコの残渣に新たな熱水を加え、それにより得られる食用キノコの残渣と熱水の混合物を攪拌し、当該混合物(新たな熱水抽出物)から上澄み液を分離し、熱水抽出液を取得することもできる。本発明においては、食用キノコと熱水の混合物の攪拌時間を例えば30分程度とした場合、食用キノコと熱水の混合物の攪拌と、それにより得られる熱水抽出物からの上澄み液の分離の工程を、好ましくは2乃至5回程度、特に好ましくは3又は4回行うことができる。
【0019】
本発明においては、食用キノコの熱水抽出液を濃縮して使用することもできる。濃縮は、例えば逆相高速液体クロマトグラフィ(逆相HPLC)を使用して行うことができる。また本発明の熱水抽出液は、凍結乾燥又は噴霧乾燥した形態ものとして使用することもできる。凍結乾燥、噴霧乾燥は、この分野で通常行われている条件及び方法で行うことができる。本発明においては、熱水抽出液の濃縮や凍結乾燥、噴霧乾燥を複数回行うことができる。
【0020】
本発明においては、「食用キノコの熱水抽出液の高分子画分」及びその濃縮物あるいは乾燥産物を、アレルギー疾患の治療や予防、又は対象における免疫機能の調整のために使用することが好ましい。
本発明において高分子画分とは、食用キノコの熱水抽出液を限外濾過膜などの濾過膜を使用して高分子側と低分子側に分画した際に、高分子側に得られる画分をいう。あるいは本発明の「食用キノコの熱水抽出液の高分子画分」は、濾過膜を使用してある分子量を境として食用キノコの熱水抽出液を分画した場合に、膜を透過しない画分と言い換えることもできる。本発明の高分子画分は、抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整機能を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、分子量1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、10000、20000、30000、40000、50000から選択される2点の分子量を下限(「〜以上、又は、〜より高い)及び上限(〜以下、又は、〜より低い)とする範囲により示される分子量の範囲にある物質を分離するための分離膜によって、高分子側に分離される画分であることが好ましい。本発明においては、分子量6000を好ましい例として挙げることができるがこれに限定されない。
このような高分子画分は、食用キノコの熱水抽出液を、上述の分子量の範囲内にある分子の分離に使用可能な濾過膜を使用する限外濾過などによって取得することができる。上澄み液に含まれる成分を分離膜で分画するに際し、上澄み液は、そのまま使用してもよいし、ある程度濃縮した後に使用してもよい。あるいは、上澄み液を一旦凍結乾燥や噴霧乾燥等の方法で粉末化し、その粉末を水に溶解させて得られる水溶液の形態で使用してもよい。
【0021】
本発明のアレルギー疾患には、特定の抗原に対す過剰反応(アレルギー反応)が関与するあらゆる疾患が含まれる。アレルギー反応の分類としてI型、II型、III型、IV型が知られている。本発明のアレルギー疾患は、これらのアレルギー反応が関与する疾患である限り特に限定されない。アレルギー性疾患の例として、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支炎、花粉症、口内炎、腸炎、潰瘍、狭心症、リウマチ様関節炎などを示すことができるがこれらに限定されない。
また本発明のアレルギー性疾患には、自己免疫疾患も含まれる。自己免疫疾患とは、自己の体を構成する物質を抗原として、免疫反応が起こる疾患をいう。自己免疫疾患としては関節リウマチや全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群などの全身性自己免疫疾患、ギラン・バレー症候群やバセドウ病などの臓器特異性自己免疫疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
【0022】
本発明の食用キノコの熱水抽出液、当該抽出液の高分子画分は、サイトカイン産生促進、制御性T細胞の増殖促進などの免疫調整機能を有する。サイトカインとしては、IFN-γ、IL-10及びIL-12などが挙げられるがこれらに限定されない。サイトカイン産生促進の有無、制御性T細胞の増殖促進の有無は、実施例に記載の方法の他、例えば次の文献に記載の方法にしたがって行うことができる。
・TakagiT., Taguchi O., Toda M., Boveda Ruiz D., Gil Bernabe P., D'Alessandro-Gabazza C. N., Miyake Y., Kobayashi T., Aoki S., Chiba F., Yano Y., Conway E. M., Munesue S., Yamamoto Y., Yamamoto H., Suzuki K., Takei Y., Morser J. and Gabazza E. C. Inhibition of Allergic Bronchial Asthma by Thrombomodulin Is Mediated by Dendritic Cells. Am J Respir Crit Care Med, 183, 31-42.(2011)
・Boveda-Ruiza D., D'Alessandro-Gabazzaa C. N., Masaaki Toda M., Takagi T., Naito M., Matsushima Y., Matsumoto T, Kobayashi T., Gil-Bernabe P., Chelakkot-Govindalayathila A-L., Miyake Y., Yasukawa A., Morser J., Taguchi O., Gabazza E.C. Differential role of regulatory T cells in early and late stages of pulmonary fibrosis. Immunobiology, 22 May (2012).
・Ioannis Kotsianidis, Evangelia Nakou, Irene Bouchliou, Argyrios Tzouvelekis, Emmanouil Spanoudakis, Paschalis Steiropoulos, Ioannis Sotiriou, Vassilis Aidinis, Dimitrios Margaritis, Costas Tsatalas, and Demosthenes Bouros Global.Impairment of CD41CD251FOXP31 Regulatory T Cells in Idiopathic Pulmonary Fibrosis, Am J Respir Crit Care Med.2009 Jun 15;179(12):1121-30.
【0023】
また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の高分子画分を含む、アレルギー疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤に関する。また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の高分子画分を含む、免疫機能調整剤に関する。
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分を取得する工程。
食用キノコの粉末、当該粉末の熱水抽出液、熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分取得方法は上に述べた。食用キノコとしてはアンニンコウの子実体が好ましいがこれに限定されない。本発明の薬剤又は免疫機能調整剤は、分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方を含む。あるいは、分子量400000以上の物質及び分子量22800の物質の両方又はいずれか一方からなる。これらの物質は、例えば食用キノコの熱水抽出液の高分子画分をゲル濾過クロマトグラフィーにより分子量に応じて分画することにより取得することができる。各画分を構成する物質の分子量は、分子量マーカーはカラムを通して溶出させることによって判定することができる。
【0024】
また本発明は、以下の工程を含む方法によって得られる食用キノコの熱水抽出液の高分子画分に関する。さらに本発明は、以下の工程を含む食用キノコの熱水抽出液の高分子画分の製造方法に関する。
(a)食用キノコの粉末を提供する工程、
(b)工程(a)の粉末の熱水抽出液を提供する工程、及び
(c)工程(b)の熱水抽出液から分子量が6000以上の物質からなる画分を取得する工程。
本発明の高分子画分は、サイトカイン産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、制御性T細胞の増殖促進及びNKT細胞増殖抑制などの免疫調整機能を有する。また本発明の高分子画分は、対象に投与した場合に、アレルギー性疾患の治療効果および/または予防効果を示す。
【0025】
本発明の薬剤又は免疫機能調整剤は、単独でヒトおよび動物におけるアレルギー性疾患の治療および/または予防に用いることができる。あるいは医薬品や食品に通常使用されうる他の成分と混合して経口投与することもできる。また、アレルギー性疾患の治療および/または予防効果が知られている他の化合物や微生物等と併用することもできる。
アレルギー性疾患の治療や予防の効果は、例えば気管支喘息であれば、実施例に示すように、気道過敏性試験やBALF中の免疫応答反応の測定などによって確認することができる。あるいは、血中のIgE濃度を指標に確認することができる。その他のアレルギー性疾患についても、当業者であれば、それぞれの疾患において確立された方法により治療効果や予防効果を判定することができる。
【0026】
本発明の薬剤又は免疫機能調整剤は、食用キノコの熱水抽出液および当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を主成分とするものであることが好ましい。本発明において「主成分とする」とは、当該薬剤又は免疫機能調整剤が目的とする活性(たとえば抗アレルギー活性あるいは免疫機能調整活性)の30%以上、好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上が、食用キノコの熱水抽出液および当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方によって達成されることをいう。
【0027】
本発明の薬剤又は免疫機能調整剤の投与量は、投与経路、ヒトを含む投与対象動物の年齢、体重、症状など、種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。本発明はこれに限定されないが、成人1日当たり、熱水抽出液の凍結乾燥粉末の量に換算して、10乃至200mg/kg体重程度であることが好ましく、20乃至100mg/kg体重程度であることがさらに好ましい。また熱水抽出液の高分子画分の摂取量は、特に限定されないが、成人1日当たり、高分子画分の凍結乾燥粉末の量に換算して、2乃至30mg/kg体重程度であることが好ましく、4乃至15mg/kg体重であることがさらに好ましい。しかしながら、長期間に亘って治療および/または予防の目的で摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよい。あるいは、本発明の薬剤又は免疫機能調整剤の有効成分は、食品としての安全性について問題がないので、上記範囲よりも多量に使用することもできる。
また本発明の薬剤又は免疫機能調整剤は、経口投与又は非経口投与(筋肉内、皮下、静脈内、坐薬、経皮、経胃管、経皮吸収等)のいずれでも投与することができる。また本発明の薬剤又は免疫機能調整剤は、湿布や塗布などの方法により局所投与することもできる。
【0028】
本発明の薬剤又は免疫機能調整剤の投与形態としては、その目的や投与経路等に応じて剤型を選択することができ、例えば錠剤、被覆錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、浸剤、煎剤、チンキ剤等が挙げられる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に対して必要に応じて充填剤、増量剤、賦形剤、結合剤、保湿剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。また、この医薬製剤中に着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤等や他の医薬品を含有させてもよい。
【0029】
また本発明は、本発明の薬剤又は免疫機能調整剤を構成する食用キノコの熱水抽出液および当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を含む、アレルギー性疾患の治療及び/又は予防用飲食品組成物を提供する。また本発明は、食用キノコの熱水抽出液および当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を含む免疫機能調整用の飲食品組成物を提供する。
【0030】
本発明の飲食品組成物は、保健機能食品や病者用食品にも適用することができる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたもので、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型からなる。本発明の薬剤又は免疫機能調整剤を構成する食用キノコの熱水抽出液および当該抽出液の高分子画分の両方又はいずれか一方を含有する特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品を直接摂取することによりアレルギー性疾患に対する治療及び/又は予防が可能となる。
【0031】
本発明の飲食品組成物は、具体的には、各種飲食品に本発明の薬剤又は免疫機能調整剤を添加し、これを摂取してもよい。本発明の飲食品組成物は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方をそのまま使用し、あるいは他の食品ないし食品成分と混合するなど、飲食品組成物における常法にしたがって使用できる。また、その性状についても、通常用いられる飲食品の状態、例えば、固体状(粉末、顆粒状その他)、ペースト状、液状または懸濁状のいずれでもよい。
【0032】
その他の成分についても特に限定されないが、本発明の飲食品組成物には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー類等を主成分として使用することができる。タンパク質としては、例えば大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質が挙げられる。糖質としては糖類、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂、パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロチン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、乳清ミネラルなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。これらは合成品、これらを多く含む食品由来のもののいずれであってもよい。
【0033】
本発明の薬剤又は免疫機能調整剤または飲食品組成物を構成する食用キノコの熱水抽出液又は当該抽出液の高分子画分の量は、その目的、用途(薬剤、飲食品組成物)に応じて任意に定めることができる。本発明はこれに限定されないがその含量としては、全体量に対して通常、0.001〜100%(w/w)、特に0.01〜100%(w/w)が好ましい。
【0034】
また本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を動物に経口投与する工程を含む、アレルギー性疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための方法に関する。また本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方を動物に経口投与する工程を含む、免疫機能の調整方法に関する。食用キノコの熱水抽出液及び/又は当該抽出液の高分子画分が投与される対象としては、哺乳動物が挙げられる。哺乳動物としてはヒト及びヒト以外の哺乳動物が挙げられ、好ましくはヒトやサルが挙げられ、より好ましくはヒトが挙げられる。
また本発明は、アレルギー性疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のために使用するための、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方に関する。また本発明は、免疫機能の調整に用いるための、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方に関する。
あるいは本発明はアレルギー性疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤の製造における、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方の使用に関する。また本発明は、免疫機能調整剤の製造における、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方の使用に関する。
また本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方と薬学的に許容される担体を配合する工程を含む、アレルギー性疾患の治療及び予防の両方又はいずれか一方のための薬剤の製造方法に関する。さらに本発明は、食用キノコの熱水抽出液及び当該抽出液の高分子画分の両方またはいずれか一方と薬学的に許容される担体を配合する工程を含む、免疫機能調整剤の製造方法に関する。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
〔実施例1〕免疫応用細胞からのサイトカイン産生能
1.アンニンコウからの有効成分の熱水抽出液の調製
(1)キノコの乾燥粉末の調整
アンニンコウ(株式会社岩出菌学研究所にて人工栽培したもの)の子実体(川出光生, 原田栄津子,西岡宏樹,目黒貞利:チリ産食用担子菌Grifola gargal,の菌床栽培―栽培に適した菌株のスクリーニング―日本きのこ学会誌, 17, 75-79.(2009))に45℃の温風を一昼夜あて、その後、70℃の温風を1時間あてた。得られたアンニンコウ子実体乾燥品を粉砕機にて粉砕し、粉末とした。
【0036】
(2)熱水抽出および限外濾過膜による分画
アンニンコウ子実体乾燥粉末200kgを200メッシュで篩、水21キロリットルを混合し、90〜95℃で6時間熱水抽出した。薮田式ろ過圧搾機にて、セライト濾過することで、抽出残渣を除去し、熱水抽出液(上澄み液)を得た。得られた熱水抽出液は、旭化成ケミカルズ株式会社製の限外濾過膜(旭化成UFモジュールマイクロ―ザRACP;分子量:6000)を用い、23-27℃、循環流量5-7l/minにて,限外ろ過を行い、分子量6,000以上の高分子画分(GHF)、および分子量6,000以下の低分子画分(GLF)を得た。これを減圧条件下で濃縮、121℃、20分で高圧滅菌し、ついで、株式会社宝製作所製の真空凍結乾燥器を用いて、凍結乾燥を行った(図1)。
【0037】
2.免疫応答細胞からのサイトカイン産生能の測定
(1)マウス脾臓細胞刺激試験1(IFN−γ、及びIL−10の測定
BALB/cマウスから脾臓を無菌的に取り出し、10%(V/V)熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を加えたRPMI−1640培地中で脾臓細胞懸濁液を調整した。ナイロンフィルターでろ過したろ液を1,500rpm(回転/分)、4℃、5分間の遠心分離に供し、脾臓細胞のペレットを回収した。このペレットを0.144M塩化ナトリウム−0.017Mトリス塩酸緩衝液(pH7.65)に再懸濁し、37℃で2.5分間、5%CO下でインキュベートして赤血球を溶血させ、最終的に実験に用いる脾臓細胞(4×10/ml)を調製した。上記で得た脾臓細胞に熱水抽出液(GF:2%)、低分子画分(GLF:0.2%)、高分子画分(GHF:0.2%)を最終容量250μlになるように加え、37℃、5%CO2下で48時間共培養した。
培養後、上清中のIFN-γ、IL-10をELISA法によって検出し、その濃度を決定した。アンニンコウ抽出液の代替にリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)と共培養した脾臓細胞をコントロールとした(図2)。
図2に示すように、GHFは、GF、GLFと比較しIFN-γの産生を強力に誘導した。しかし、IL-10については、GF、GHF 、GLFによる産生量は同程度あり、GHFと他の抽出液であるGF、GLFとの間に大きな差は認められなかった。IFN-γは、Th1型のサイトカインであり、免疫アジュバントとして感染防御、抗腫瘍、アレルギー改善効果などが期待される。IL-10は、免疫抑制効果として皮膚の炎症、自己免疫疾患の改善効果などが期待できる。
【0038】
(2)マウス脾臓細胞刺激試験2(IFN−γ、及びIL−10の測定)
BALB/cマウスから脾臓を無菌的に取り出し、10%(V/V)熱不活性化ウシ胎児血清(FCS)を加えたRPMI−1640培地中で脾臓細胞懸濁液を調整した。ナイロンフィルターでろ過したろ液を1,500rpm(回転/分)、4℃、5分間の遠心分離に供し、脾臓細胞のペレットを回収した。このペレットを0.144M塩化ナトリウム−0.017Mトリス塩酸緩衝液(pH7.65)に再懸濁し、37℃で2.5分間、5%CO下でインキュベートして赤血球を溶血させ、最終的に実験に用いる脾臓細胞(1×10/ml)を調整した。上記で得た脾臓細胞を、まず熱水抽出液(GF:2%)、低分子画分(GLF:0.2%)、高分子画分(GHF:0.2%)を最終容量1mlで、37℃、5%CO2下で48時間共培養した。次に、脾臓細胞を洗浄してアンニンコウの熱水抽出液を除き、1×10個/mlに調整して、ラットIgG(Rat IgG)、抗ヒトIL-12 モノクローナル抗体(aIL-12)、抗ヒトIL-10モノクローナル抗体(aIL-10)(最終濃度0.5μg/ml)を含有するRPMI-1640培地にて、最終容量250μLで37℃、5%CO2下で再び、36時間培養した。
培養後、上清中のIFN−γ及びIL-10をELISA法によって検出し、その濃度を決定した。アンニンコウ抽出液の代替にPBS(pH7.4)と共培養した脾細胞をコントロール(Ab)とした(図3)。
図3に示すように、GHFは、抗IL-10抗体 との培養においてはINF-γの産生を促進させた。一方、抗IL-12抗体との培養においてはINF-γ産生が抑制された。このことから、GHFは、IL-12を介してIFN-γを産生させることが判明した。
【0039】
(3)マウス腹腔マクロファージ(PEC)刺激試験(IL−12の測定)
C56BL/6マウスに2mlの10%チオグリコレート培地を腹腔内投与し、4日後にマウス腹腔内をPBSで洗浄することによりPECを回収した。細胞をRPMI-1640培地で清浄した後、4×106個/mlに調整した。このPECと、10%FCSを含有するRPMI-1640培地中で熱水抽出液(GF:2%)、低分子画分(GLF:0.2%)、高分子画分(GHF:0.2%)を加え、最終容量250μlとし、5%CO2下、37℃で、4時間、8時間、12時間、24時間にて、共培養した。
培養後、上清中のIL-12をELISA法によって、検出し、その濃度を決定した。アンニンコウ抽出液の代替にPBS(pH7.4)と共培養したPECをコントロールとした(図4)。
図4に示すように、GHFは、共培養後8時間から樹状細胞(BMDC)からのIL-12産生促進作用が確認された。一方GF、GLFでは、活性は認められなかった。マクロファージはIL-12の最も効率的な産生細胞のひとつであり、IL-12は、NK細胞やT細胞に作用して、IFN-γの産生を誘導することが知られている。これによって、Th1が活性化され、Th1/Th2バランスの不均等が是正されると考えられる。
【0040】
〔実施例2〕気管支喘息モデルマウスを用いた動物実験
実施例1より、GHFは、マウス脾臓細胞に対してIFN-γ産生を促進し、マウス腹腔マクロファージに対してIL-12 産生を誘導する免疫調整作用等を有することが確認された。このことから実施例2では、GHFを使用して、動物実験を行った。
(1)動物
BALB/cマウス 雌(6週齢)を卵白アルブミン(OVA)にて感作した。予備飼育3日後から、これらモデルマウスを3群に分け、比較検討した(図5)。
[モデルマウス]
ポジティブコントロール:OVA非感作+生理食塩水吸入群(SAL/SAL)
ネガティブコントロール:OVA感作+通常飼料群(NOR/OVA)
GHF処理:OVA感作+2%GHF含有飼料群 (GHF/OVA)
【0041】
(2)工程
マウスにアレルギー抗原として卵白アルブミン(OVA)を体重20グラムあたり10マイクログラム腹腔内投与して初回免疫を行った。その7日後(一週間後)に、同様の措置をして、2回目の免疫を行い、同様にその7日後に3回目の免疫を行った。
一方、初回免疫後21日目から6日間毎日OVA吸入を実施してマウスを感作し、アレルギー性喘息を誘発した。OVA吸入最終日にアレルギー性喘息の評価として、気道洗浄液中の細胞数の測定、気道過敏性を測定した。その後、解剖し、気管支肺胞洗浄液(BALF)や血液(PLASMA)を収得し、脾臓を無菌的に取りだした。
【0042】
(3)気道過敏性試験
最終卵白アルブミン(OVA)感作24時間後、Penh値を測定した(図6)。
図6に示すように、免疫していないSAL/SAL群では、OVA吸入によって気道過敏性(Penh値)ほとんど増加しなかった。しかし、OVA感作したNOR/OVA群のメタコリンを処理した際Penhの値は、SAL/SAL群に比べて著しく増加した。NOR/OVA群と比較して、GHFを処理したGHF/OVA群は、5mg/mlのメタコリンを処理した際、Penh値は有意に減少した。また、10mg/mlのメタコリンを処理した際でも、同様に減少傾向にあった。
【0043】
(4)BALFおよびPLASMA中の免疫応答反応
最終誘発48時間後、マウスに対してペントバルビタール(pentobarbital)を過量使用して致死させ、気管切開術を行った。PBSを肺に流入した後、導管カニューレ押入させることにより、気管支肺胞洗浄液(BALF)を収得した。BALFを遠心分離して、上清液を収集し、使用前に−80℃で貯蔵した。BALF内のIgE(図7)、IgG(図8)、IL-10(図11)量は、製造社の指示に従い、特異的マウスELISAキットで測定した。
また、気道切開術の後、心臓穿刺(cardiac puncture)によって血漿(PLASMA)を得た。PLASMAを遠心分離して、PLASMA中のIgE(図7)、IgG(図8)、IFN-γ(図10)、MCP-1(図9)、IL-10(図11)、IL-12(図10)量は、製造社の指示に従い、特異的マウスELISAキットで測定した。図7図8および図9に示したように、SAL/SAL群では、免疫グロブリンIgE(図7)、IgG(図8)や炎症性マーカーであるMCP-1(図9)レベルは低く、アレルギー症状や炎症は認められなかった。しかしNOR/OVA群では、それらサイトカインの上昇が顕著に認められアレルギー状態にあることが示されたが、GHF処理のGHF/OVA群では、PLASMAやBALFいずれのIgE、IgG値も抑制されており、MCP-1レベルは、著しく減少し、アレルギー抑制効果、抗炎症効果を示した。
【0044】
実施例1の細胞実験では、GHF中は、IL-12を介してIFN-γを産生する能力を持つことが認められた。図10に示すように、モデルマウスを使用した動物実験においても、IFN-γやIL-12の産生を促進することを確認できた。IL-12はアレルギー因子であるIgEなどの抑制に重要な働きを示していることから、GHFのアレルギー改善効果は、生体内においても、IL-12産生を介していることが示された。
【0045】
さらに図11に示すように、IL-10の値は、PLASMA、BALF のいずれにおいてもGHF/OVA群にて上昇しており、GHF 中には、 IL-10 の産生を促進する作用もあることが認められた。IL-10は、主にTh2細胞や制御性T細胞、活性化B細胞、単球、肥満細胞からも産生される。IL-10は、おもに単球系細胞に作用して炎症性サイトカインの産生を始めとする免疫機能を抑制的に制御するため、炎症の抑制に重要な役割を果たしている。
これらの結果より、GHFは、生体内において、IL-12産生促進作用だけでなく、強いIL-10産生促進作用も有することが明らかとなった。
【0046】
(5)脾臓での免疫機能
解剖後に取りだした脾臓からT細胞、制御性T細胞(Treg細胞)及びNKT細胞増殖抑制など免疫細胞の割合を測定した。
T細胞に関してはほとんど差が見られなかったが、Treg細胞が、有意に増加していることが確認できた。Treg 細胞は、免疫システムの行き過ぎた応答の抑制において極めて重要な役割を果たすT細胞の一種であり、制御性T細胞は、喘息をはじめとしたアレルギー性炎症を制御している。このことから、Treg細胞の値を上昇させる作用をもつGHFは、異常な免疫反応を抑制することで、炎症を緩和し、アレルギー性喘息などの緩和効果を持つことが示された。また、気道過敏症をひき起こす細胞であるといわれているNKT細胞の増殖を、GHFは抑制することも明らかにした(図12)。
【0047】
以上のように、GHFは、Th1を活性化させるIFN-γ、およびIL-12の産生促進作用のほかに、アレルギー性炎症を制御するIL-10 の産生促進や制御性T細胞の増殖の促進、あるいは、NKT細胞の増殖を抑制することで、卵白アルブミン(OVA)で誘発された喘息マウスモデルにおいてPLASMAやBALFで増加したIgE、IgGを強力に抑制し、アレルギー症状や気道過敏性を改善し、肺組織における粘液過多分泌を抑制する機能を持つことが認められた。
アレルギーの発症機構は病態に関わらず、アレルギー抗原に特異的なTh2細胞の活性化が引き金となっている。このため、アンニンコウ(GHF)の免疫抑制効果を考慮すると、喘息以外のアレルギー疾患、アトピー性皮膚炎などの疾患に対しても有効と考えられ、難治性アレルギー疾患の治療法につながる可能性がある。したがって、アンニンコウは、炎症、アレルギーおよび喘息疾患を予防、および治療するための治療薬、または、健康機能食品として使用できると思われる。
【0048】
〔実施例3〕有効成分の構造
アンニンコウ高分子画分(GHF)に、どのような分子量をもつ物質が含まれるのか検討した。
(1)分析
GHF30mg/mlをゲルろ過クロマトグラフィー(充填剤:Sephacry S-300HR, 展開溶液:1/15Mリン酸緩衝駅)を用いて150滴ずつ流速1.0mL/min で120本分取した。そして各フラクションをフェノール硫酸法にて分光光度計490nmの吸光度を測定した。その後各フラクションを4つのフラクションに分け、濃縮し、凍結乾燥した。また、グルコース(濃度200μg/ml,100μg/ml,50μg/ml,10μg/ml,1μg/ml)で検量線を作成し、回収量を求めた。さらに、分子量マーカー(Mw788000, Mw212000, Mw112000, Mw22800, Mw18800, Mw5900)をカラムに流し、分子量を求めた。
(2)分子量
溶出量208mlと314mlに2つのピークが得られた。溶出量208mlは分子量400000以上の物質であることがわかり、溶出量314mlは分子量22800であることがわかった。すなわち、GHFは、分子量400000以上の成分と分子量22800の2つの成分からなることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明により、アンニンコウの熱水抽出液の高分子画分を有効成分とする免疫機能強化剤が提供された。本発明の免疫機能強化剤は、IFN-γ、IL-10 およびIL-12の産生促進、IgEの産生抑制、MCP−1の産生抑制、さらには、アレルギー性炎症を制御している制御性T細胞の増殖、及び気道過敏性の改善に関わるNKT細胞増殖抑制を通してアレルギー疾患の症状を緩和する。またアンニンコウは、従来より食品として使用されており、安全性が保障されている。従って本発明の免疫機能強化剤は、アレルギー性疾患の治療や予防の分野において有用である。
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