(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
[ポリオキシアルキレン系化合物]
本発明の重合体は、上記一般式(1)で表わされる構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の存在下で、ビニルラクタム系単量体を必須とする単量体(単量体組成物)を重合する工程を必須として製造される重合体である。本構成により、本発明の重合体のシリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が向上する傾向にある。なお、「本発明の重合体」には、(i)一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物とビニルラクタム系単量体を必須にする単量体とが共重合した重合体(典型的には一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物にビニルラクタム系単量体を必須にする単量体がグラフト重合した重合体)の他に、(ii)未反応の一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物、および(iii)ビニルラクタム系単量体が一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物と無関係に重合した重合体(ビニルラクタム系単量体のみが重合した重合体、ビニルラクタム系単量体とその他の単量体が共重合した重合体)が含まれ得る。
【0019】
上記一般式(1)において、R
0は、炭素数1〜20の有機基を表すが、当該有機基は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等を含んでいてもよく、有機基全体として炭素数1〜20であれば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミノ基等の置換基を含んでも良い。好ましくは炭素数1〜4の有機基である。具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が例示され、エチレン基(−CH
2CH
2−)が特に好ましい。
【0020】
一般式(1)におけるR
1は、炭素数2〜20のアルキレン基を表すが、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、オクチレン基、等が例示される。ポリアルキレングリコールのシリカ系のスケール防止効果が向上することから、R
1は、炭素数2〜8のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2〜4のアルキレン基であることが更に好ましく、炭素数2〜3のアルキレン基であることが特に好ましい。なお、R
1としては、1種のみが単独で存在しても良いし、2種以上が混在していても良い。
上記一般式(1)においてオキシアルキレン基により形成される基(すなわち、(−O−R
1−)
n)は、オキシエチレン基(−O−CH
2−CH
2−)が、全オキシアルキレン基100モル%に対し、50〜100モル%であることが好ましい。上記範囲であることにより、シリカスケールの抑制効果がさらに向上する傾向にある。より好ましくは、60モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、特に好ましくは80モル%以上であり、最も好ましくは90モル%以上である。
【0021】
上記一般式(1)において、mは、1〜3の数であるが、mは、1であることが好ましい。mが1であるときは、ポリオキシアルキレン系化合物は、下記一般式(1−1)で表わされる構造を有する。
【0023】
式中、R
0は、炭素数1〜20の有機基を表し、R
1は、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、R
2は、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
【0024】
上記一般式(1)において、nは、オキシアルキレン基(−O−R
1−)の平均付加モル数を表し、1〜300の数であり、好ましくは3〜150であり、より好ましくは5〜100であり、さらに好ましくは7〜60である。上記範囲であれば、シリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が向上する傾向にある。
【0025】
上記一般式(1)におけるR
2は、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表すが、当該炭素数1〜20の有機基は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等を含んでいてもよく、有機基全体として炭素数1〜20であれば、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミノ基等の置換基を含んでも良い。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が例示される。
R
2は、好ましくは水素原子または炭素数1〜4の有機基であり、特に好ましくは水素原子である。
【0026】
〔一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の製造方法〕
一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物は、収率が向上する傾向にあることから、下記一般式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程(以下、「工程(1)」ともいう。)を必須とする方法により製造することが好ましい。
【0028】
上記一般式(2)において、mは1〜3の数を表わす。
上記反応により、下記一般式(3)で表される化合物が得られることになる。
【0030】
式中、R
0は、炭素数1〜20の有機基を表し、R
1は、同一若しくは異なって、炭素数2〜20のアルキレン基を表し、mは1〜3の数を表わし、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数であって、1〜300の数を表す。
上記一般式(3)で表される化合物は、更に末端の水酸基をハロゲン化アルキルや酸無水物等と反応させることにより修飾しても良い。
【0031】
上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物の製造方法としては、特に限定はされないが、γ−ブチロラクトン等の5〜7員環のラクトン類とアミノアルコール類を反応させる方法が好ましく、例えば特開2002−167375号公報等に開示の方法により製造することができる。
上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物としては、例えばN−ヒドロキシエチルピロリドン、N−ヒドロキシプロピルピロリドン、N−ヒドロキシブチルピロリドン等が例示される。
【0032】
一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物は、上記工程(1)を含まない方法で製造しても構わない。例えば(i)上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物と、(ii)ポリアルキレングリコール鎖並びにイソシアネート基、エポキシ基、エステル基、アミド基等の水酸基と反応し得る反応性基とを有する化合物とを反応させることにより製造しても良い。
【0033】
工程(1)は、上記の通り、(i)上記構造式(2)で表される構造単位及び水酸基を有する化合物(以下、「化合物A」とも言う)と、(ii)炭素数2〜20のアルキレンオキシドを反応させる工程である。
工程(1)は、化合物Aとアルキレンオキシドを無触媒で、または触媒存在下で反応させる。反応速度の観点から、工程(1)は触媒存在下で行うことが好ましい。好ましい触媒としては酸触媒または塩基性触媒である。
上記酸触媒としては、硫酸、リン酸などの鉱酸、四塩化スズ、三フッ化ホウ素等のルイス酸が挙げられるが、中でも四塩化スズ、五塩化アンチモン、三フッ化ホウ素またはその錯体が、ポリアルキレングリコールのスケール防止能が向上することから好ましい。上記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0034】
工程(1)は、反応圧力としては、常圧から20Kg/cm
2G、好ましくは1〜10Kg/cm
2Gである。また、反応温度としては好ましくは20〜180℃、更に好ましくは30〜160℃で行なわれる。
【0035】
工程(1)は、通常、化合物Aを反応器に仕込む工程(1−1)、アルキレンオキシドを反応器に添加する工程(1−2)と、化合物Aとアルキレンオキシドを反応させる工程(1−3)を含む。
好ましくは更に、反応触媒を添加する工程(1−4)を含む。(1−4)の工程を含むことにより、反応効率が向上し、不純物を低減させることができる為、得られるポリアルキレングリコールのスケール防止能が向上する傾向にある。
更に(1−2)または(1−3)の工程の前または途中に、好ましくは(1−4)の工程の後に、水分等の不純物を除去する工程(A−5)を設けても良い。
上記(1−2)の工程と(1−3)の工程は同時に開始しても、(1−2)の工程よりも(1−3)の工程を後に開始しても良いが、(1−2)の工程終了後、(1−3)の工程を継続する(すなわち、(1−2)の工程よりも(1−3)の工程を後に終了させる)ことが好ましい。(1−2)の工程の後に、(1−3)の工程の全部または一部を行なうことにより、ポリアルキレングリコールを効率よく製造することが可能となる。
また、工程(1−4)は、(1−2)の工程、(1−3)の工程の前に行なうことが好ましい。
【0036】
上記工程(1)は、通常窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行なうことが好ましい。また、反応後に窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で保存しても良い。
上記工程(1)は、好ましくは無溶媒で行なわれるが、溶媒を使用しても良い。溶媒を使用する場合、化合物A、アルキレンオキシドを溶解できるものが好ましい。
【0037】
上記工程(1)において、化合物Aは予め全量反応器に仕込む(初期仕込み)ことが好ましい。初期仕込みすることにより、付加モル数の分布が狭くなり、例えば無機粒子の分散性能等が向上する。一方、アルキレンオキシドは初期に全量添加しても良いが、反応開始以後に徐々に反応器に添加することが好ましい。徐々に添加する場合は、回分式であっても連続式であっても良い。
【0038】
なお、上記工程(1)は、更に複数の工程に分割することも可能である。例えば、化合物Aに少量のアルキレンオキシドを付加する工程と、当該工程により得られたポリアルキレングリコールに更にアルキレンオキシドを付加する工程とを設け、2段階または3段階以上でアルキレンオキシドを付加しても良い。
【0039】
上記工程(1)の後または途中に、反応液中の触媒を除去する工程があっても良い。例えば、反応途中のポリアルキレングリコールが水に不溶の場合、水等で洗浄後に静置し、有機層と水層とを分離し触媒を除去することができる。上記洗浄は、例えば攪拌槽やラインミキサーで、20〜150℃で行なうことができる。
【0040】
一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の製造方法は、必要に応じて、工程(1)その他の反応工程の後または途中に、精製工程を設けても良い。精製工程としては、残存原料、副生成物、水分、触媒の残渣等を除去する工程や、触媒を中和する工程等が例示される。
触媒を中和する工程としては、例えば、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム存在下で反応した場合、その際の中和剤としては硫酸、酢酸、あるいは活性白土等の固体酸を使用することができる。
【0041】
本発明の重合体は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位(上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物と単量体との共重合体に含まれる単量体に由来する構造単位以外の構造部分、および未反応の上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物)を、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位と全単量体に由来する構造単位(ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位、およびその他の単量体に由来する構造単位)の合計100質量%に対して1質量%以上、99質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、40質量%以上、98質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上、90質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以上、70質量%以下である。
【0042】
本発明の重合体は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位を上記範囲で有することにより、シリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が顕著に向上する傾向にある。
また、本発明の重合体は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位を上記範囲で有することにより、例えばインク組成物における色材分散剤として使用する場合に、乾燥状態でも滑らかなことから、例えば筆記具であれば目詰まりを起こしにくく、書き味も滑らかなものとなる。
【0043】
[単量体に由来する構造単位]
<ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位(a)>
本発明の重合体は、ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位(a)を、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位と全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対して1質量%以上、99質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは2質量%以上、60質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上、50質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以上、50質量%以下である。上記範囲であることにより、シリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が向上する傾向にある。
【0044】
本発明においてビニルラクタム系単量体(単量体(A)ともいう)とは、1分子に1以上のラクタム環構造と、1以上の炭素炭素二重結合とを有する単量体である。
ビニルラクタム系単量体としては、環状のラクタム環を有する単量体であり、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニル−4−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−プロピルピロリドン、N−ビニル−4−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−4−メチル−5−プロピルピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチルピロリドン、N−ビニル−5−プロピルビロリドン、N−ビニル−5−ブチルピロリドン、N−ビニル−4−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−メチルカプロラクタム、N−ビニル−6−プロピルカプロラクタム、N−ビニル−7−ブチルカプロラクタム等が例示される。ビニルラクタム系単量体のなかでも、重合性が高く、残存単量体を低減することが可能であること、得られる重合体の無機粒子の分散性が向上することから、n−ビニルピロリドン、n−ビニルカプロラクタムから選ばれる単量体がより好ましい。これらのビニルラクタム系単量体は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位(a)とは、ビニルラクタム系単量体の重合性の不飽和二重結合が単結合になった構造であり、例えばビニルラクタム系単量体がn−ビニルピロリドンの場合、構造単位(a)は、下記構造式(4)で表すことができる。
【0047】
本発明の重合体が「ビニルラクタム系単量体に由来する構造単位(a)」を有するとは、最終的に得られた重合体が、ビニルラクタム系単量体の重合性の炭素炭素二重結合を単結合に置き換えた構造単位を含むことを意味する。
【0048】
<その他の単量体に由来する構造単位(e)>
本発明の重合体は、その他の単量体に由来する構造単位(e)を有していても良い。本発明の重合体の、その他の単量体に由来する構造単位(e)の含有量は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物に由来する構造単位と全単量体に由来する構造単位の合計100質量%に対して0質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。本発明において、全単量体由来の構造とは上記の通りである。その他の単量体に由来する構造単位(e)が上記範囲内を超えた場合、重合体のシリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が低下する傾向にある。より好ましくは0質量%以上、15質量%以下であり、更に好ましくは0質量%以上、10質量%以下である。
【0049】
その他の単量体(E)としては、特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される(但し、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物、単量体(A)は、その他の単量体(E)には含まれない。)。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、α−ヒドロキシアクリル酸、およびこれらの塩等、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、2−メチレングルタル酸、及びこれらの塩(一方のカルボキシル基のみが塩型である場合を含む)等の不飽和カルボン酸系単量体;ビニルスルホン酸、1−アクリルアミド−1−プロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−プロパンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸、およびこれらの塩等のスルホン酸基含有単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;(メタ)アリルアルコール、イソプレノール、等の不飽和アルコール系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体;スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル;ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環式芳香族炭化水素基とアミノ基を有するビニル芳香族系アミノ基含有単量体およびこれらの4級化物や塩;ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート類およびこれらの4級化物や塩;ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン等のアリルアミン類およびこれらの4級化物や塩;(i)(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルのエポキシ環に、(ii)ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジn−ブチルアミン等のジアルキルアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン、イミノジ酢酸、グリシン等のアミノカルボン酸、モルホリン、ピロール等の環状アミン類等のアミンを反応させることにより得られる単量体およびこれらの4級化物や塩等、が挙げられる。
なお、上記カルボン酸の塩、スルホン酸の塩としては、金属塩、アンモニウム塩、1〜4級のアミン塩が挙げられる。
また、上記他の単量体(E)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0050】
本発明の重合体は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の存在下でビニルラクタム系単量体を必須とする単量体(単量体組成物)を重合する工程を必須として製造されるものであるが、その際重合反応は、通常、重合開始剤を使用して行われる。該重合開始剤としては、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物へのビニルラクタム系単量体のグラフト重合が進行しやすいことから、有機過酸化物が好適である。有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2−(4−メチルシクロヘキシル)−プロパンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシ)p−イソプロピルヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルパーオキサイド類;tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシラウレート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシビバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルシクロヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、クミルパーオキシオクトエート、tert−ヘキシルパーオキシビバレート、tert−ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート等のパーオキシエステル類;n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレエート、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)オクタン等のパーオキシケタール類;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノイルパーオキサイド、サクシニックアシッドパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジミリスチルパーオキシジカーボネート、ジ−メトキシイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−アリルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;アセチルシクロヘキシルスルファニルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシアリルカーボネート等のその他の有機過酸化物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
これらの重合開始剤の中でも、本発明では、少なくとも脂肪族を含む有機過酸化物を使用することが好適であり、これにより、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物へのビニルラクタム系単量体のグラフト重合がより進行しやすくなり、シリカスケールのスケール抑制効果が向上する。中でも、重合工程における反応温度や、保存時の温度管理の点等を考慮すると、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチル−パーオキシ−イソプロピルモノカーボネート及び/又はtert−ブチル−パーオキシ−ベンゾエートを用いることが特に好適である。
【0052】
本発明の重合体の製造において、有機過酸化物を使用する場合の使用量は、重合に用いられる全単量体100質量%に対して、好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは2〜12質量%であり、さらに好ましくは3〜10質量%である。
【0053】
本発明の重合体の製造において、上記有機過酸化物に加えて、または上記有機過酸化物に加えて、他の重合開始剤を使用しても良い。他の重合開始剤としては、過酸化水素、他の有機過酸化物、過硫酸塩、アゾ化合物等が例示される。
【0054】
本発明の重合体の重量平均分子量は、各用途における所望の性能などを考慮して適宜設定されうるため、特に限定されないが、本発明の重合体の重量平均分子量は、具体的には、好ましくは100〜100000であり、より好ましくは500〜70000であり、さらに好ましくは1000〜50000である。この重量平均分子量の値が大きすぎると、粘度が高くなり、取扱いが煩雑になる虞がある。一方、この重量平均分子量の値が小さすぎると、シリカスケールの抑制効果やカーボンブラックの分散性が低下する傾向にある。なお、本発明の重合体の重量平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法により測定される値を採用するものとする。
【0055】
[重合体組成物]
本発明の重合体組成物は、本発明の重合体を必須に含む。この他、未反応のビニルラクタム系単量体、未反応の重合開始剤、重合開始剤分解物等の重合反応の原料残渣や副生成物、任意の他の化合物が含まれうる。
本発明の重合体組成物は、必要に応じて溶剤を含む。溶剤としては、水を必須として含むものが好ましく、水であることがより好ましい。本発明の重合体組成物が水等の溶剤を含む場合の溶剤の含有量は、取扱い性の観点から、重合体組成物100質量%に対して、10質量%〜99質量%であることが好ましい。
本発明の重合体組成物の残存単量体、単量体の副生成物、開始剤残渣の含有量は、重合体組成物の固形分に対し、合計で0〜60000ppmであることが好ましい。
【0056】
本発明の重合体(または重合体組成物)は、重合体(固形分換算)100質量%に対する、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の含有量は、例えば50質量%以下であることが好ましい。なお、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物とビニルラクタム系単量体との共重合体は、「上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン系化合物」には該当しないものとする。
【0057】
本発明の重合体(または重合体組成物)は、良好なシリカスケール分散性を有する。本発明において、本発明においてシリカスケール抑制効果は、後述するシリカスケール分散性試験で評価される。シリカスケール分散性が良好であると、シリカスケールが熱交換機等に沈着・成長することが抑制される。本発明の重合体は、シリカスケール分散能が0.21以上であることが好ましい。上記範囲であることにより、水処理剤等の添加剤として好ましく使用することができる。
【0058】
本発明の重合体(または重合体組成物)は、良好なカーボンブラック分散性を有する。本発明において、カーボンブラック分散性は、後述する方法によって評価される。
【0059】
[重合体(組成物)の製造方法]
本発明において、重合体(組成物)の製造方法については特に言及する場合を除き、特に制限はなく、従来公知の知見を適宜参照することにより、製造可能である。溶媒を使用して重合することも可能であるが、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物へのビニルラクタム系単量体のグラフト重合が進行しやすくなることから、好ましくは実質的に塊状重合(バルク重合)の形態で、具体的には、溶媒の含有量が反応系の全量に対して0質量%以上、10質量%以下で重合が行われる。この場合、塊状重合(バルク重合)に関する従来公知の知見が適宜参照され、さらに必要に応じて改良されうる。溶媒を使用する場合の使用量は、より好ましくは7質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以下である。
溶媒を使用する場合、例えば、イソブチルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル等のジエーテル類;酢酸、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルの酢酸エステル等の酢酸系化合物;等が挙げられる。これらの溶媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0060】
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の一部または全部を反応系に仕込んだ状態で、重合を開始するとよい。上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物を幹とするグラフト重合が進行しやすくなる観点から、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の使用量の全量を反応系に仕込んだ状態で、重合を開始することが特に好ましい。
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、単量体成分および重合開始剤の一部または全部を反応系に添加しながら重合を行なう(すなわち重合開始以後に反応系に添加する)と良い。具体的には、ビニルラクタム系単量体の全量を反応系に添加しながら重合を行うことが好ましい。重合開始剤は、全量を反応系に添加しながら重合を行うことが好ましい。
好ましい態様として、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の全量を反応系に仕込み、反応系を昇温させた後、ビニルラクタム系単量体、必要に応じてその他の単量体、および重合開始剤をそれぞれ別々に添加して、重合反応を進行させる形態が例示される。かような形態によれば、得られる重合体の分子量が容易に調整されうるため、好ましい。なお、重合は、回分式で行われてもよいし、連続式で行われてもよい。
【0061】
本発明の重合体(組成物)の製造方法において、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物の使用量は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物と全単量体(ビニルラクタム系単量体、その他の単量体)の使用量の合計の質量100質量%に対して、1質量%以上、99質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは40質量%以上、98質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上、90質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以上、70質量%以下である。
本発明の重合体(組成物)の製造方法において、ビニルラクタム系単量体の使用量は、上記一般式(1)に記載の構造を有するポリオキシアルキレン系化合物と全単量体の使用量の合計の質量100質量%に対して、1質量%以上、99質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは2質量%以上、60質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上、50質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以上、50質量%以下である。
本発明の重合体(組成物)の製造方法において、その他の単量体の使用量は、上記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン系化合物と全単量体の使用量の合計の質量100質量%に対して、0質量%以上、58質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0質量%以上、40質量%以下であり、更に好ましくは0質量%以上、20質量%以下である。
【0062】
本発明の重合体(組成物)の製造方法において、重合温度は、100℃以上、160℃以下に設定することが好ましい。上記温度範囲で重合することにより、グラフト重合体の収率が向上する傾向にある。
上記重合温度の下限は好ましくは110℃以上、さらに好ましくは120℃以上であり、上記重合温度の上限は好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下である。
上記重合する工程(重合工程)は、その一部の時間において上記温度範囲になるように設定すれば良いが、重合時間(単量体を添加しながら重合を進める場合には、単量体を添加している時間をいい、単量体を一括で添加して重合開始剤を添加しながら重合を進める場合には、重合開始剤を添加している時間をいい、単量体および重合開始剤を共に一括で添加して重合する場合には加熱している時間をいう)の50%以上の時間帯において上記温度範囲に保持することが好ましく、80%以上の時間帯において上記温度範囲に保持することがより好ましく、重合時間の100%の時間帯において上記温度範囲に保持することが更に好ましい。
なお、重合時間以外の時間帯(重合開始前や重合終了後)においても上記温度範囲に設定しても構わない。
【0063】
本発明の重合体(組成物)の製造方法において、重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜240分である。なお、本発明において、「重合時間」とは上記の通りである。
【0064】
反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよいが、得られる重合体の分子量の点では、常圧下、または、反応系内を密閉し、加圧下で行うことが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点では、常圧(大気圧)下で行うことが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
【0065】
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、上述した重合開始剤に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。
重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0066】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
【0067】
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、単量体を重合する工程(重合工程)の他に、熟成工程を設けても良い。
熟成工程は、例えば、単量体の滴下終了後に、重合温度を保持したまま、あるいは重合温度を変化させて、熟成を行うことにより実施することができる。熟成工程を含むことにより、残存単量体の低減が可能となる。一方で、重合体(組成物)の色調が悪化する傾向にある。また経済性の面も考慮すると、熟成時間は短い方がよい。例えば熟成工程は、30分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0068】
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、熟成工程に加え、または熟成工程にかえて、さらに重合体組成物を水に溶解し、過酸化物を添加する後処理工程を設けても良い。該後処理工程を設けることにより、残存単量体の低減が可能となる。
後処理工程で添加する過酸化物としては、過酸化水素;無機過酸化物(ペルオキソ二硫酸塩(過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、ペルオキソホウ酸塩、亜ジチオン酸塩、亜硫酸水素塩、二亜硫酸塩等);有機過酸化物(重合開始剤として例示したもの、過酢酸、過酢酸塩類(過酢酸ナトリウム等)、過炭酸塩類(過炭酸ナトリウム等)等)が挙げられるが、水溶性のものが好ましく、水溶性の弱酸化物がより好ましく、過酸化水素が最も好ましい。
後処理工程で過酸化物を用いる場合、過酸化物とともに過酸化物の分解を促進しうる分解促進剤を併用することが好ましい。前記分解促進剤としては、アミン類、アスコルビン酸、鉄等の還元剤や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。前記分解促進剤としては、還元剤が好ましく、アスコルビン酸が最も好ましい。
後処理工程で過酸化物やその分解促進剤を使用する場合、その合計を重合体100質量%に対して0.01〜10質量%にすることが好ましい。より好ましくは0.05〜5質量%であり、さらに好ましくは0.1〜2質量%である。
本発明の重合体(組成物)の製造方法は、さらに、中和工程や希釈工程、濃縮工程、乾燥工程を含んでいても良い。
【0069】
[本発明の重合体の用途]
本発明の重合体は、水処理剤(スケール防止剤、防食剤等)、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。
【0070】
<水処理剤>
本発明の重合体は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、キレート剤を用いても良い。
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、逆浸透膜処理装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜、地熱水系、洗浄水系等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0071】
本発明の水処理剤は、本発明の重合体を固形分濃度で1〜50質量%含むことが好ましく、1〜40質量%含むことがより好ましく、1〜20質量%含むことがさらに好ましい。本発明の水処理剤において、重合体以外の残部は水等の溶剤、及び上記に例示した任意成分である。
【0072】
本発明の水処理剤は、例えば、冷却水系、ボイラー水系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜、地熱水系等の水系に、そのまま添加すれば良い。また、本発明の水処理剤を水系に添加する際には、リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加しても良い。リン酸系化合物および/または亜鉛塩を併せて添加することにより、水系の流路として用い得る鉄の配管の腐食を防ぐことができる。リン酸系化合物としては、例えば、重合リン酸および/またはその塩、リン酸および/またはその塩、ホスホン酸および/またはその塩などが挙げられる。亜鉛塩としては、例えば、硝酸亜鉛、塩化亜鉛などが挙げられる。添加し得るリン酸系化合物や亜鉛塩は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0073】
<繊維処理剤>
本発明の重合体は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明の重合体を含む。
上記繊維処理剤における本発明の重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100質量%であり、より好ましくは5〜100質量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。上記繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0074】
本発明の重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明の重合体1質量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100質量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0075】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明の重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明の重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
【0076】
<色材組成物>
本発明で用いる色材としては、従来公知の染顔料を使用することができるが、耐久性の点から顔料(有機顔料、無機顔料)が好ましい。
【0077】
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等が挙げられる。
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)が挙げられる。
染料としては、アゾ系染料、アントラキノン系染料、フタロシアニン系染料、キノンイミン系染料、キノフタロン系染料、キノリン系染料、ニトロ系染料、カルボニル系染料、メチン系染料、ピロドン系染料、ピラゾロン系染料、アクリド系染料等が挙げられる。
これらの顔料、及び染料は、単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
本発明で用いる色材は、その目的及び用途に応じて、適切な数平均粒子径を有するものを使用すればよい。例えば、透明性が必要な場合には、数平均粒子径が0.1μm以下の小さい色材を用いることが好ましい。また、隠蔽性が必要な場合には、数平均粒子径が0.5μm以上の大きい色材を用いることが好ましい。なお、色材の数平均粒子径は、例えば、株式会社島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3000Jを用いて測定することができる。
本発明で用いる色材は、その目的及び用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティング等の表面処理が施されていてもよい。
【0079】
本発明の色材組成物における色材の含有量は、その目的及び用途に応じて適宜設定すればよいが、色材の分散安定性を考慮すると、重合体1質量部に対して0.01〜5000質量部が好ましく、0.1〜2000質量部がより好ましく、1〜1000質量部がさらに好ましく、10〜500質量部が最も好ましい。かかる範囲内において、色材が安定に分散した色材組成物を得ることができる。
【0080】
本発明の色材組成物は、本発明の重合体を0.02〜99質量%含むことが好ましい。
【0081】
本発明の色材組成物は、本発明の重合体及び色材以外に、他の重合体や、下記の溶媒や添加剤を含んで構成されてもよい。
【0082】
本発明の色材組成物に含まれ得る溶媒としては極性溶媒が挙げられる。かかる極性溶媒としては、水性溶媒および有機溶媒の双方を用いることができ、水性溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、へキシレングリコール等が挙げられる。有機溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、互いに溶解するのであれば併用してもよい。有機溶媒にはクレゾール、フェノール、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を混合することもできる。
【0083】
本発明の色材組成物には、必要に応じて例えば、有機シラン、充填剤、摩滅剤、誘電体、潤滑剤等の各種公知の添加物が、本発明の効果が損なわれない範囲で含まれてもよい。
【0084】
<無機顔料分散剤>
本発明の重合体は、無機顔料分散剤に用いることができる。
本発明の無機顔料分散剤中における、本発明の重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100質量%である。
本発明の無機顔料分散剤は、必要に応じて他の配合剤として、ポリビニルアルコール等の任意の適切な水溶性重合体、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩等を含んでいてもよい。本発明の無機顔料分散剤は、水等の溶剤を含んでいても良い。
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0085】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100質量部に対して、0.05〜2.0質量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0086】
<洗剤ビルダー>
本発明の重合体は、洗剤ビルダーとして用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
すなわち、本発明の重合体は、洗剤組成物にも添加しうる。上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤組成物、繊維工業その他の工業用洗剤組成物、硬質表面洗浄剤組成物等が含まれ、さらに例えば漂白洗剤組成物等の洗剤組成物に含まれる特定の成分の働きを高めた洗剤組成物も含まれる。
洗剤組成物における当該重合体の含有量は特に制限されないが、優れたビルダー性能を発揮しうるという観点からは、重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0087】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0088】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
界面活性剤の配合割合は、洗剤組成物の全量に対して10〜70質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜60質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞がある。
上記界面活性剤として具体的には、アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩等;ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキエチレンアルキルフェニルエーテル等;カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等;が例示される。
【0089】
本発明の洗剤組成物は、本発明の重合体、界面活性剤以外の添加剤(その他の添加剤)として、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸(塩)等のアルカリビルダー;トリポリリン酸(塩)、クエン酸(塩)、アクリル酸−マレイン酸共重合体(塩)、エチレンジアミンテトラ酢酸(塩)、ボウ硝、ゼオライト等のキレートビルダー;(メタ)アクリル酸の共重合体(塩)、カルボキシメチルセルロース(塩)等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤;ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤;ソイルリリース剤;ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤;柔軟剤;pH調節のためのアルカリ性物質;香料;可溶化剤;蛍光剤;着色剤;起泡剤;泡安定剤;つや出し剤;殺菌剤;漂白剤;漂白助剤;酵素;染料;溶媒等を添加しても良い。上記その他の添加剤における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が例示される。
上記その他の添加剤の合計の配合割合は、洗浄剤組成物100質量%に対して15〜89.9質量%が好ましく、30〜84.7質量%がより好ましい。
本発明の洗剤組成物が粉末洗剤組成物の場合には、ゼオライトを配合することが好ましい。
本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物の場合には、水を液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%含むことが好ましく、1.5〜50質量%含むことがより好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は質量基準である。
【0091】
<固形分の測定>
130℃に加熱したオーブンで重合体組成物1.0g+水3.0gを1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0092】
<重合体の分子量の測定条件>
重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
GPCの測定条件:
装置:東ソー株式会社製 HLC−8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 SHODEX Asahipak GF−310−HQ, GF−710−HQ,GF−1G−7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENE GLYCOL
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(wt/wt).
<ビニルラクタム系単量体の測定条件>
単量体の定量は、液体クロマトグラフィーを用いて定量した。
液体クロマトグラフィーの測定条件:
測定装置:株式会社資生堂製 NANO SPACE SI−2
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C18 UG120
温度:20.0℃
溶離液:メタノール/水=1/24(1−ヘプタンスルホン酸ナトリウム0.4質量%含有)
流速:100μL/min
検出器:UV(検出波長235nm).
<シリカスケール分散性の評価>
試験管(IWAKI GLASS製:直径18mm、高さ180mm)にシリカスケールとしてタルク(和光純薬社製、和光1級、平均粒径7〜12μm)0.3gを入れた後、タルクを含めて合計30gとなるようにほう酸−ほう酸ナトリウムpH緩衝液と純水と共重合体水溶液とを順に加えて、重合体を固形分濃度で50mg/L含む、pH8.5の分散性試験液を調製した。蓋をして密封した後、試験管を振ってタルクを均一に分散させた。試験管を室温(約20℃)で1時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5mL採取した。この液をUV分光光度計(島津製作所製 UV―1800)を用いて、波長380nmの条件で1cmセル吸光値(ABS)を測定し、この値をシリカスケール分散能とした。
シリカスケール分散能の値が大きいほどシリカスケール分散性に優れ、シリカスケールの抑制効果が高いことを示す。
【0093】
<カーボンブラック分散性の評価>
試験管(IWAKI GLASS製:直径18mm、高さ180mm)にカーボンブラック(洗濯科学協会より入手)0.03gを入れた後、カーボンブラックを含めて合計30gとなるようにほう酸−ほう酸ナトリウムpH緩衝液と純水と共重合体水溶液とを順に加えて、重合体を固形分濃度で100mg/L含む、pH8.5の分散性試験液を調製した。蓋をして密封した後、試験管を振ってカーボンブラックを均一に分散させた。試験管を室温(約20℃)で4日間静置し、カーボンブラックの分散状態を目視で確認した。
○:試験管上部まで分散、 △:試験管の中間まで分散、 ×:沈降。
【0094】
<実施例1>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに2‐ヒドロキシエチルピロリドン1モルに対してエチレンオキサイドを平均30モル付加させて得られた化合物(以下、HEP30と称す。) 71.6gを仕込み、攪拌下135℃に昇温した後、N−ビニルピロリドン(以下、NVPとも称す。)71.6g、および、ジ−tert−ブチルパーオキシド(以下、PBDとも称す)7.16gを、それぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、NVPが205分間、PBDが225分間とした。なおNVPの滴下開始はPBDの20分後とした。滴下終了までの間、温度は135℃を維持した。さらに同温度を、滴下終了後60分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合完結後、反応溶液を放冷してから、純水150.4gを加えて希釈した。このようにして、本発明の重合体(1)を含む、固形分濃度48.6重量%の重合体組成物(1)を得た。
得られた重合体の分子量は9500であった。
【0095】
<実施例2>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量300mLのガラス製セパラブルフラスコにHEP30を62.6g仕込み、攪拌下135℃に昇温した後、NVP62.6g、および、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(以下、PBIとも言う)6.26gを、それぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、NVPが205分間、PBIが215分間とした。なおNVPの滴下開始はPBIの10分後とした。滴下終了までの間、温度は135℃を維持した。さらに同温度を、滴下終了後60分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合完結後、反応溶液を放冷してから、純水131.5gを加えて希釈した。このようにして、本発明の重合体(2)を含む、固形分濃度48.0重量%の重合体組成物(2)を得た。
得られた重合体の分子量は49000であった。
【0096】
<比較例1>
上記HEP30を、比較重合体(1)とした。
【0097】
<比較例2>
マックスブレンド(住友重機械工業株式会社の登録商標)型の攪拌翼、ガラス製の蓋を備えたSUS304製反応容器に、イオン交換水339.0質量部、ジエタノールアミン1.0質量部、次亜リン酸ナトリウム一水和物(以下「SHP」と称する)60質量部(酸型換算(次亜リン酸換算)37.4質量部)を仕込み、90℃に昇温した。NVP500質量部を180分かけて、2,2’−アゾビス−2−アミジノプロパン二塩酸塩(和光純薬工業株式会社製、以下「V−50」と称する)10質量部とイオン交換水90質量部からなる重合開始剤水溶液を210分かけて
、反応容器に添加した。さらに「V−50」0.5質量部とイオン交換水4.5質量部からなるブースター水溶液を、それぞれ重合開始から210分後、240分後に一括で添加した。さらにpH調整剤として、10質量%マロン酸水溶液8.0質量部を、重合開始から210分後に添加することにより、比較重合体(2)を含む固形分56.8質量%の比較重合体組成物(2)を得た。含まれる重合体のK値は10であった。
【0098】
<比較例3>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量300mLのガラス製セパラブルフラスコにメタノールに対してエチレンオキサイドを平均25モル付加させて得られた化合物(以下、PGM25と称す。) 71.6gを仕込み、攪拌下135℃に昇温した後、NVP71.6g、および、PBDと7.16gを、それぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、NVPが205分間、PBDが225分間とした。なおNVPの滴下開始はPBDの20分後とした。滴下終了までの間、温度は135℃を維持した。さらに同温度を、滴下終了後60分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合完結後、反応溶液を放冷してから、純水150.4gを加えて希釈した。このようにして、比較重合体(3)を含む、固形分濃度48.6重量%の比較重合体組成物(3)を得た。
得られた比較重合体の分子量は7000であった。
【0099】
<比較例4>
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量300mLのガラス製セパラブルフラスコにPGM25を62.6g仕込み、攪拌下135℃に昇温した後、NVP62.6g、および、PBIと6.26gを、それぞれ別の滴下口より滴下した。それぞれの滴下時間は、NVPが205分間、PBIが215分間とした。なおNVPの滴下開始はPBIの10分後とした。滴下終了までの間、温度は135℃を維持した。さらに同温度を、滴下終了後60分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。重合完結後、反応溶液を放冷してから、純水131.5gを加えて希釈した。このようにして、比較重合体(4)を含む、固形分濃度48.3重量%の比較重合体組成物(4)を得た。
得られた比較重合体の分子量は16500であった。
【0100】
表1に、重合体および比較重合体のシリカスケール分散能を測定した結果を示す。
【0101】
【表1】
【0102】
表1から明らかなように、本発明の重合体は、従来の重合体に比して、優れたシリカスケールの分散性(シリカスケール抑制効果)を有していることが明らかとなった。よって、本発明の重合体は水処理剤として好適に使用できる。
なお、表1中の「×」は全く分散しなかったことを意味する。
【0103】
表2に、重合体および比較重合体のカーボンブラックの分散性を測定した結果を示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表2から明らかなように、本発明の重合体は、従来の重合体に比して、優れたカーボンブラックの分散性を有していることが明らかとなった。よって、本発明の重合体は色材分散剤として好適に使用できる。