(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
軸筒と、該軸筒に沿って前進位置と後退位置との間を進退するスライド体と、該スライド体に支持されて軸筒外に露出したクリップ体と、前記スライド体の進退により出没する筆記部とを備え、前記クリップ体における前記スライド体との支持点よりも後側の部分が軸筒径内方向へ押動されることによって、前記クリップ体における前記支持点よりも前側の部分を軸筒から離隔させて開放するようにしたクリップ開閉操作機能付出没式筆記具において、
前記クリップ体が前記後退位置で開放するのに伴って、前記クリップ体における前記支持点よりも後側の部分が、軸筒に対し凹凸状に嵌り合うようにしたことを特徴とするクリップ開閉操作機能付出没式筆記具。
前記クリップ体における前記支持点よりも後側の部分は、前記クリップ体が前記後退位置で開放状態から閉鎖するのに伴って、軸筒から離れて凹凸状に嵌り合っていない状態になることを特徴とする請求項1記載のクリップ開閉操作機能付出没式筆記具。
前記クリップ体における前記支持点よりも後側の裏面に、クリップ幅方向へ間隔を置くとともに前後方向へ連続する二つの突片部を設けるとともに、軸筒の後端側には、前記二つの突片部の内側に嵌り合う凸部を設け、
これら二つの突片部と凸部により前記凹凸状の嵌り合いが構成されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ開閉操作機能付出没式筆記具。
軸筒外周面において前記凸部をクリップ幅方向に挟む両側に、後方へ向かって軸筒径内方向へ傾斜する傾斜面を形成し、前記クリップ体が、前記二つの突片部の間に前記凸部を嵌め合せるとともに、前記二つの突片部の突端を、前記傾斜面に当接させるようにしたことを特徴とする請求項3記載のクリップ開閉操作機能付出没式筆記具。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施の形態の第一の特徴は、軸筒と、該軸筒に沿って前進位置と後退位置との間を進退するスライド体と、該スライド体に支持されて軸筒外に露出したクリップ体と、前記スライド体の進退により出没する筆記部とを備え、前記クリップ体における前記スライド体との支持点よりも後側の部分が軸筒径内方向へ押動されることによって、前記クリップ体における前記支持点よりも前側の部分を軸筒から離隔させて開放するようにしたクリップ開閉操作機能付出没式筆記具において、前記クリップ体が前記後退位置で開放するのに伴って、前記クリップ体における前記支持点よりも後側の部分が、軸筒に対し凹凸状に嵌り合うようにした。
この構成によれば、クリップ体を後退位置で開放すると、該クリップ体の後端側の部分が軸筒に対し凹凸状に嵌り合う。したがって、クリップ体が、開放状態で軸筒周方向やクリップ幅方向等、軸筒軸方向に対し交差する方向へがたつくのを防ぐことができる。
【0010】
第二の特徴としては、前記クリップ体における前記支持点よりも後側の部分は、前記クリップ体が前記後退位置で開放状態から閉鎖するのに伴って、軸筒から離れて凹凸状に嵌り合っていない状態になるように構成する。
この構成によれば、クリップ体を開放状態から閉鎖する際には、クリップ後端側の凹凸状の嵌り合いが解除される。したがって、前記凹凸状に嵌り合う部分により摩擦抵抗を生じるようなことを防止でき、クリップ体の進退や回動をスムーズに行うことができる。
【0011】
第三の特徴としては、前記クリップ体における前記支持点よりも後側の裏面に、クリップ幅方向へ間隔を置くとともに前後方向へ連続する二つの突片部を設けるとともに、軸筒の後端側には、前記二つの突片部の内側に嵌り合う凸部を設け、これら二つの突片部と凸部により前記凹凸状の嵌り合いが構成されるようにした。
この構成によれば、クリップ体を開放した際に、該クリップ体の二つの突片部の間に凸部が嵌り合うため、軸筒軸方向に対する交差方向のがたつきを効果的に防止することができる。
【0012】
第四の特徴としては、軸筒外周面において前記凸部をクリップ幅方向に挟む両側に、後方へ向かって軸筒径内方向へ傾斜する傾斜面を形成し、前記クリップ体が、前記二つの突片部の間に前記凸部を嵌め合せるとともに、前記二つの突片部の突端を、前記傾斜面に当接させるようにした。
この構成によれば、クリップ体を開放した際に、該クリップ体の二つの突片部の間に凸部が嵌り合うとともに、二つの突片部が軸筒後端の傾斜面に当接するため、軸筒軸方向に対する交差方向のがたつきを効果的に防止することができる上、開放状態のクリップ体が前方へスライドしたり前後にがたついたりするのを防止することもできる。
【0013】
なお、本明細書中、軸筒軸方向とは、軸筒の中心線の延びる方向を意味する。また、「前」とは、軸筒軸方向の一方側であって筆記部の先端方向を意味する。また、「後」とは、軸筒軸方向の前記一方側に対する逆方向側を意味する。また、「軸筒径方向」とは、軸筒軸方向に対し直交する方向を意味する。また、「軸筒径外方向」又は「軸筒遠心方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒中心から離れる方向を意味する。「軸筒径内方向」又は「軸筒求心方向」とは、軸筒径方向に沿って軸筒中心へ近づく方向を意味する。また、「クリップ幅方向」とは、クリップの前後方向に対し直交する方向であってクリップの厚み方向ではない方向を意味する。
【0014】
次に、上記特徴を有する本実施の形態の好ましい具体例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
この出没式筆記具1は、
図1〜
図25に示すように、前後方向へわたる案内孔12a,12bを周壁に有する略円筒状の軸筒10と、案内孔12a,12bから軸筒外に露出した複数の押子20,30と、各押子20,30に対し着脱交換可能に装着されたシャープペンシル用リフィール40及びボールペン用リフィール50とを備た多機能(多色)筆記具である。
そして、この出没式筆記具1は、選択された押子20(又は30)を後退位置から前進位置まで前進させた際に、該押子20(又は30)に対応する筆記部41(又は51)を突出するとともに、押子20(又は30)を軸筒内側へ沈み込ませて係止部12c2(又は12d2)に係止する。また、出没式筆記具1は、前記係止状態を、所定の解除操作(図示例によれば他の押子30(又は20)を前進させる操作)により解除し、先に前進した押子20(又は30)を後退させるとともに筆記部41(又は51)を没入させる。
また、同出没式筆記具1は、一つの押子20を開閉操作可能なクリップとしても兼用することができるクリップ開閉操作機能付出没式筆記具として構成される。
【0016】
各構成要素について詳細に説明すれば、先ず、軸筒10は、前軸11に対し、後軸12を着脱可能に接続してなる長尺円筒状の部材であり、その軸方向の全長にわたる全外周面には、軸筒外径面10aよりも径外方向へ突出する突起物がない。
そして、この軸筒10の内部には、
図1〜
図4に示すように、シャープペンシル用リフィール40及びボールペン用リフィール50、これらリフィール40,50をそれぞれ軸方向へ案内するリフィールガイド部材61、これらリフィール40,50をそれぞれ後方へ付勢する付勢部材62(図示例によれば圧縮スプリング)、シャープペンシル用リフィール40の後端に接続されるとともに押子20を構成するスライド体21、ボールペン用リフィール50の後端に接続された押子30等が設けられている。
【0017】
なお、
図1〜
図4は、当該出没式筆記具1の基本構造を明確に示すために、一つのシャープペンシル用リフィール40および一つのボールペン用リフィール50のみを具備した例を示しているが、これらリフィールの数は単数又は複数とすることが可能であり、
図6〜
図12の具体例では、一つのシャープペンシル用リフィール40と四つのボールペン用リフィール50を内在可能な軸筒10を示している。
【0018】
前軸11は、前端部に、筆記部41,51を出没させるための開口部11aを有する略円筒状の部材であり、後軸12に対し着脱可能に螺合接続されている。
【0019】
後軸12は、外周部に突出部分を有しない略長尺円筒状の部材である。この後軸12は、その外周面を後方へ向かって徐々に軸筒中心側へ若干傾斜する傾斜面状に形成しており、この傾斜角度は、該外周面への転写印刷を容易に行える程度に設定される。なお、転写印刷をより容易にするために、後軸12を全長にわたって同径に形成するようにしてもよい。
この後軸12は、その後端側周壁に、押子20,30を軸筒軸方向へ案内する案内孔12a,12bを有する。また、後軸12内には、該後軸12とは別体の筒状スライド体12cが設けられる(
図2〜
図4参照)。
【0020】
複数の案内孔12a,12bのうち、一方の案内孔12aは、開閉機能付クリップを構成する押子20を案内するものであり、他方の案内孔12bは、ボールペン用リフィール50に対応する押子30を案内するものである(
図2〜
図4参照)。
一方の案内孔12aは、前後方向へ連続する長尺状の貫通孔であり、軸筒周方向(
図6の上下方向)の両側に略平行な2直線状に並ぶ両縁部を、その前部側の第一縁部12a1と、該第一縁部12a1よりも後側に連続する第二縁部12a2と、該第二縁部12a2よりも後側に連続する第三縁部12a3とから構成している。
【0021】
第一縁部12a1は、第二縁部12a2よりも前側の所定範囲に設けられる(
図6及び
図7参照)。この第一縁部12a1は、軸筒外径面10aを周方向において案内孔12a側へ連続させた仮想外径面10x(
図11(a)参照)よりも凹んだ平坦面状に形成されている。
この第一縁部12a1の軸筒軸方向の長さは、押子20が、第二縁部12a2に沿って前進した後に軸筒内側へ沈み込んで鉛芯繰出しのために進退操作されるように適宜に設定される。
【0022】
第二縁部12a2は、前記仮想外径面10xを径外方向へ超えない範囲で、第一縁部12a1よりも径外方向へ突出した縁部分である。この第二縁部12a2は、図示例によれば、軸筒外径面10aと案内孔12aの内側面との交差部分であり、前記仮想外径面10xと略同径である(
図11(b)参照)。
【0023】
第三縁部12a3は、軸筒10の外周面における第二縁部12a2よりも後側の所定範囲を、第二縁部12a2から後方へ向かって軸筒径内方向へ傾斜する傾斜面12eとすることで形成され、該傾斜面12eと案内孔12a内側面との交差部分である(
図6参照)。
【0024】
前記傾斜面12eは、軸筒10の外周面の後端側に配置された平坦状の傾斜面であり、押子20を構成するクリップ体22が開放した際に(
図4参照)、該クリップ体22の後端側を受ける。
また、この傾斜面12eは、案内孔12aの後部側及び後述する凸部12fを挟むようにして軸筒周方向の両側に設けられる。二つの傾斜面12e,12eの間であって、案内孔12aよりも後側となる部分には、クリップ体22の後端側に対し凹凸状に嵌り合う凸部12fが設けられる(
図6参照)
【0025】
凸部12fは、軸筒10における傾斜面12eを有する範囲の外径面10b(
図6参照)よりも大きくならない範囲で、傾斜面12eよりも径外方向へ突出するように形成される。この凸部12fの突出量は、クリップ体22が開放した際に該クリップ体22の後端側に嵌り合い、クリップ体22が閉鎖した際には該クリップ体22の後端側から離脱するように設定されている。
【0026】
他方の案内孔12bは、案内孔12aと略同長さで且つ案内孔12aよりも狭い幅で、前後方向へ連続する長尺状の貫通孔である。
【0027】
筒状スライド体12cは、後軸12内の後端側に挿入され、軸筒10から後方へ突出する部分にノック部13を嵌め合せている(
図2参照)。そして、この筒状スライド体12cは、後軸12の後方へ突出するノック部13のノック操作により、前後方向へ進退して、シャープペンシル用リフィール40を繰出し動作させる。なお、シャープペンシル用リフィール40からの鉛芯の繰出しは、開閉操作機能付クリップである押子20が前進位置にある際、該押子20を進退させる操作と、ノック部13をノックする操作との何れかの選択操作により可能である。
この筒状スライド体12cの周壁には、押子20,30を前後スライド可能に受ける平坦面状のスライド面12c1,12d1や、該スライド面12c1,12d1に沿って前進した際の押子20,30を軸筒内側へ沈み込ませて係止する段状の係止部12c2,12d2等が設けられる。
【0028】
押子20は、案内孔12aに嵌り合って前後へ進退可能なスライド体21と、該スライド体21に支持されて軸筒外へ露出したクリップ体22と、クリップ体22を閉鎖方向へ付勢する付勢部材23と、クリップ体22に対し着脱交換可能に装着された識別部24とを備え、クリップ体22におけるスライド体21との支持点Pよりも後側の部分が軸筒径内方向へ押動されることによって、クリップ体22における支持点Pよりも前側の部分を軸筒外周面から離隔させて開放する開閉操作機能付クリップを構成している。
【0029】
スライド体21は、案内孔12aに沿って前後へスライドするように形成される。このスライド体21には、案内孔12a内で係止部12c2に係止される被係止部21aや、軸筒外径方向へ突出してクリップ体22を回動可能に支持する支持凸部21b、シャープペンシル用リフィール40を接続するリフィール接続部21c等が設けられる。
前記支持凸部21bは、クリップ体22を、支持点Pを中心にして回転するように支持している。この支持構造は、例えば、軸と孔による軸受構造や、凸部と凹部による軸受構造、その他の軸受構造等とすればよい。
【0030】
クリップ体22は、軸筒10外周面と略平行に前方へ延設された表部22aと、該表部22aの幅方向(
図13の上下方向)の両側で軸筒側へ突出する二つの突片部22b,22bとから断面略凹状に形成される。
そして、このクリップ体22は、二つの突片部22b,22bがスライド体21の支持凸部21bに支持され、その支持点Pを中心にして回動する。
【0031】
表部22aには、識別部24を着脱交換可能に嵌合する被嵌合部22a1が設けられる(
図15参照)。
この被嵌合部22a1は、識別部24の識別本体部24aが挿入され嵌め合せられる識別本体部用凹部22a11と、該識別本体用凹部22a11内に位置するとともに識別部24の接続突部24bが挿入され嵌め合せられる被接続凹部22a12と、後述する被係合部25の片半部を構成する切欠部22a13とからなる。
【0032】
識別本体部用凹部22a11は、識別部24の識別本体部24aに対し若干の遊びを有する状態で嵌り合うように形成された凹部である(
図13〜
図15参照)。
【0033】
被接続凹部22a12は、押子20を軸筒径方向へ貫通する円筒状の孔であって、識別部24の接続突部24bを着脱可能に圧入するように形成される(
図13〜
図15参照)。
【0034】
切欠部22a13は、識別本体部用凹部22a11の表部側をクリップ幅方向へ貫通しており、図示例によれば、略半円状に形成されている(
図15参照)。
【0035】
突片部22b,22bは、表部22aのクリップ幅方向の両端部から軸筒側へ突出するとともに、クリップ体22の前後方向の略全長にわたって連続するように形成される(
図14〜
図15参照)。
これら突片部22b,22bの前端側は、軸筒側へ突出して玉部22b1を構成している。また、これら突片部22b,22bの後部側には、後述するスライド体21の支持凸部21bによって回転可能に支持される突起状の軸部22b2を有する(
図15参照)。
【0036】
また、付勢部材23は、圧縮コイルスプリングであり、スライド体21とクリップ体22の間において、支持点Pよりも後側に挿入されて、クリップ体22の後端側を軸筒10から離れる方向へ付勢している(
図2〜
図4参照)。
この付勢部材23は、クリップ体22を閉鎖方向へ付勢するものであればよく、引張バネや、板バネ、支持点Pに設けられるねじりコイルバネ等に置換することが可能である。
【0037】
識別部24は、リフィール40,50(又は筆記部41,50)の種別を表示する識別本体部24aと、識別本体部24aから突出する接続突部24bとを一体に備え、接続突部24bを押子20(詳細にはクリップ体22)に挿入し嵌め合せた際に、識別本体部24aがクリップ体22内に若干の遊びを有する状態で嵌り合うように構成される。
【0038】
識別本体部24aは、筆記部41,50の種別に対応する色を表示した状態でクリップ体22の外部に露出するように形成される。この識別本体部24aは、本実施の形態の一例によれば、接続突部24bと一体成形される合成樹脂材料の色を筆記部41に対応する色としているが、他例としては、該識別本体部24aの表面の一部又は全体に着色を施した態様とすることも可能である。
さらに、この識別本体部24aの他例としては、該識別本体部24aの外観形状によって筆記部41,50を識別できる態様としてもよく、例えば、該識別本体部24aを筆記部41,50に対応するマスコット形状とし、意匠上の体裁を向上するようにしてもよい。
【0039】
そして、この識別本体部24aには、切欠部24a1が設けられる(
図21参照)。この切欠部24a1は、クリップ前後方向の位置をクリップ体22の切欠部22a13に対応させるようにして、識別本体部24a前後方向の中央寄りに配置され、押子20をクリップ幅方向へ貫通するように形成される(
図24参照)。そして、この切欠部24a1は、クリップ体22の切欠部22a13と協働して、被係合部25を構成する。
【0040】
被係合部25は、クリップ体22の切欠部22a13と、識別部24の切欠部24a1とによって囲まれるとともにクリップ幅方向へ貫通する孔である。この被係合部25の内面には、該被係合部25の奥へ向かって内部空間を狭めるように傾斜面24a11が形成される。この傾斜面24a11は、被係合部25内に所定の治具Xが挿入された際に、治具Xから受ける押圧力が徐々に増加するように作用する(
図24及び
図25参照)。
なお、この傾斜面24a11は、図示例によれば、識別部24側のみに設けているが、同様の傾斜面を、クリップ体22側のみに設けたり、識別部24側及びクリップ体22側の双方に設けるようにしてもよい。
【0041】
接続突部24bは、その外周面に複数の縦リブ24b1を有し、これら縦リブ24b1をクリップ体22の被接続凹部22a12内周面に圧接している。
【0042】
また、押子30は、案内孔12b内のスライド面12d1に沿って前後へスライドするように形成された押子本体31と、押子本体31に着脱交換可能に装着された識別部32とから構成される(
図17参照)。
【0043】
押子本体31は、案内孔12b内の係止部12d2に係止される被係止部31aや、軸筒周壁から軸筒外径方向へ突出する操作部31b、ボールペン用リフィール50を接続するリフィール接続部31c等を備え、操作部31bに形成された被嵌合部31b1に識別部32を装着している。
【0044】
押子本体31の被嵌合部31b1は、クリップ体22の被嵌合部22a1と同様にして、識別本体部用凹部31b11、被接続凹部31b12、切欠部31b13等を有する(
図18参照)。
【0045】
識別部32は、上述した押子20の識別部24と同一形状の部品であり、識別部24と同様に、識別本体部32aと接続突部32bからなり、識別本体部32aに切欠部32a1を有し、接続突部32bに複数の縦リブ32b1を有し、切欠部32a1には傾斜面32a11が形成される。
この識別部32は、上記識別部24とは異なる色の合成樹脂材料から成形されている。
【0046】
そして、上記構成の押子本体31と識別部32の間には、押子20の構成と同様に、治具Xを挿入するための被係合部35が構成される。
【0047】
またシャープペンシル用リフィール40は、開閉操作機能付クリップを構成する押子20、又は出没式筆記具1のノック操作により、芯タンク42内の鉛芯を、前端の筆記部41から繰り出すように構成されている。
【0048】
また、ボールペン用リフィール50は、インクタンク52内のインクを筆記部51前端の転写ボールから突出するように構成されている。
【0049】
次に上記構成の出没式筆記具1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
先ず、出没式筆記具1の製造時においては、案内孔12a(又は12b)の両縁部に軸筒10の外径面よりも突出する部分がないため、軸筒外周面における案内孔12a(又は12b)の近傍に転写印刷による印刷表示部10a1を容易に施すことができる。より詳細に説明すれば、
図6〜
図8に示すように、例えば、後軸12の外周面であって、且つ、案内孔12a,12b、第一縁部12a1、傾斜面12e以外の範囲であって、該範囲に近接する部位に、星模様の印刷表示部10a1を容易に施すことができる。
ひいては、転写印刷によって軸筒デザインのバリエーションを大幅に増加することが可能となる。
【0050】
しかも、軸筒10の外径面よりも凹んだ案内孔12aと、該案内孔12aの後側で該案内孔12aよりも突出する第二縁部12a2とを有するため、
図3に示すように、開閉機能付クリップである押子20を前進させた際には、該押子20のクリップ体22及びスライド体21を軸筒中心側へ沈み込ませて、スライド体21の係止部12c2への係止を良好に行うことができる。なお、前進位置にある押子20(開閉操作機能付クリップ)は、
図3に示すように、クリップ体22の後端側が軸筒10の外周面に近接又は接触しているため、前端側を開放させることがない。
【0051】
また、
図4に示すように、クリップ体22を後退位置で開放した際には、該クリップ体22の支持点Pよりも後側の凹状部分が、軸筒10後端側の凸部12fに対し嵌り合う。より詳細に説明すれば、前記凹状部分を構成するクリップ体22幅方向両側の突片部22b,22bが、その内側面を、凸部12fの両側面に近接又は接触させるようにして、これら凹状部分と凸部12fとが嵌り合う(
図4及び
図5参照)。
さらに、この嵌り合いと略同時に、二つの突片部22b,22bの突端が、後軸12側の傾斜面12e,12eに当接する。
したがって、クリップ体22が、開放状態で軸筒周方向やクリップ幅方向等、軸筒軸方向に対し交差する方向へがたつくのを防ぐことができる。
【0052】
また、クリップ体22が閉鎖された際には、クリップ体22の後端側部分と凸部12fとの嵌り合いが解除される。すなわち、クリップ体22が閉鎖方向へ回動して、クリップ体22の後端側部分が凸部12fから離脱する(
図5(a)参照)。したがって、クリップ体22は、軸筒10側からの摩擦抵抗を受け難く、容易に進退可能且つ回動可能な状態に保持される。
【0053】
その上、前記のようなクリップ体22の開放状態では、
図4に示すように、該クリップ体22の両突片部22b,22bの後端側が、軸筒外周面の傾斜面12e,12e(
図4及び
図6参照)に当接するため、クリップ体22が前後方向へがたつくのを防ぐことができる。
【0054】
また、リフィール40(又は50)を、好みの機能や色のものに交換する場合には、交換後のリフィール40(又は50)に対応するように識別部24(又は30)も容易に交換することができる。
この交換作業の手順を詳細に説明すれば、
図24及び
図25に示すように、押子20(又は30)の被係合部25(又は35)に対し、棒状の治具Xが挿入される。治具Xは、図示例によれば、ボールペン用リフィールであり、その先端チップが、被係合部25(又は35)に挿入される。
この際、被係合部25(又は35)は貫通孔であるため、挿入した治具Xの先端部(ボールペンリフィールの先端チップ)が損傷するようなことを防ぐことができる。
そして、治具Xを被係合部25(又は35)内へ押し込めば、治具Xの先端側が、識別部24(又は32)の傾斜面24a11(又は32a11)と、押子20(30)の双方に当接し摺接して、識別部24(又は32)が押子20(30)から抜け出て外れる。
なお、治具X先端を被係合部25(又は35)内へ差し込み、識別部24(又は32)を治具Xでこじ上げるようにして外すことも可能である。
【0055】
また、他の色の識別部24(又は32)を装着する際には、これら識別部24(又は識別部32)を、被嵌合部22a1(又は31b1)に手で押し込むようにすればよい。
【0056】
よって、上記出没式筆記具1によれば、リフィール40,50を好みの色や機能のものに交換した際に、その色や機能に対応するように、識別部24(又は32)を容易に交換することができる。
【0057】
次に、本実施の形態の他の具体例について説明する。なお、以下に示す出没式筆記具は、上述した出没式筆記具1を一部変更したものであるため、主に、その変更部分について詳細に説明し、重複する説明を省略する。
【0058】
図26〜
図28に示す出没式筆記具2は、前記出没式筆記具1に対し、後軸12を後軸12’に置換し、クリップ体22をクリップ体22’に置換したものである。
【0059】
クリップ体22’は、支持点Pよりも前側の内面に、該内面の他の部分よりも軸筒側へ突出する玉部22c’を有する。この玉部22c’は、軸筒側へ突出する突端部分をクリップ前後方向へ長い略矩形状に形成した平板状の部位である。
【0060】
後軸12’は、その周壁における案内孔12aよりも前側に、玉部22c’を没入させて前後方向へ案内するガイド溝12g’を、軸筒外径面10aよりも凹ませて設けている。このガイド溝12g’は、軸筒軸方向へわたって略同深さの長尺状の溝であり、クリップ体22’の前後ストロークよりも若干長い寸法に形成される。
【0061】
よって、
図26〜
図28に示す出没式筆記具2によれば、後軸12’の製造時に、該後軸12’の外周面であって、且つ、案内孔12a,12b、第一縁部12a1、傾斜面12e、ガイド溝12g’以外の範囲であって、該範囲の近傍となる部位に、転写印刷によって、星模様の印刷表示部10a1を容易に施すことができる。
しかも、クリップ体22’の玉部22c’を凹状のガイド溝12g’により受けるようにしているため、クリップ体22’が軸筒周方向へがたつくのを防ぐことができる。その上、進退するクリップ体22’の玉部22c’が軸筒外周面の印刷表示部10a1に摺接することはないので、玉部22c’に擦られて印刷表示部10a1が剥がれるようなことを防ぐことができる。
【0062】
また、
図29に示す出没式筆記具3は、前記出没式筆記具1に対し、前記後軸12を、外周面に突起を有する後軸12”に置換し、筒状スライド体12c及びノック部13を省いた構成となっている。
【0063】
後軸12”は、その後部側を凸湾曲状に徐々に縮径した略円筒状を呈し、その外周面において、案内孔12aよりも前側の部分から径外方向へ突出する玉部受け12h”、案内孔12aの後部側の両縁に沿って径外方向へ突出するガイド壁12i”,12i”、該ガイド片12i”よりも後側で径外方向へ突出する凸部12j”等を具備している。
【0064】
玉部受け12h”は、前後方向へわたる凸片状に形成され、クリップ体22裏面の略凹状の玉部22b1に嵌り合って、クリップ体22が周方向へがたつくのを防いだり、玉部22b1と軸筒外周面との間に被挟持物を挟んだ際の摩擦抵抗を増大したりする。
【0065】
ガイド壁12i”,12i”は、スライド体21の支持凸部21bをクリップ幅方向の両側から挟むようにして軸筒外周面から突出し、スライド体21の進退を案内するとともに、該スライド体21が周方向へがたつくのを防ぐ。
【0066】
凸部12j”は、後軸12における最後端側の外周面から径方向へ突出し、開放した際にクリップ体22の後端側の部分に対し嵌り合う。
【0067】
上記構成の出没式筆記具3によれば、後軸12”に該後軸12”の外周面よりも径外方向へ突出する部分があるため上記出没式筆記具1,2に比べて転写印刷はし難いが、凸部12j”の突出量を比較的大きく確保しているため、開放時におけるクリップ体22のがたつきを効果的に防ぐことができる。
【0068】
なお、上記出没式筆記具1,2,3によれば、複数の押子20,30を具備するようにしたが、他例としては、単数の押子を具備した態様とすることも可能である。
【0069】
また、上記出没式筆記具1,2,3は、識別部24(又は32)を押子20(又は30)に圧入嵌合するようにしたが、これらは着脱可能に接続されていればよく、図示例以外の構造とすることも可能である。
【0070】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、識別部24,32を押子20(又は30)から突出させて、識別部24,32が手掛け部としても機能するようにしたが、他例としては、識別部24,32を押子20(又は30)と面一にした態様や、識別部24,32を押子20(又は30)内に目視可能に没入した態様とすることも可能である。
【0071】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、識別部24,32を同一の外観形状としたが、他例としては、複数の識別部のうち、その一部または全部を他のものとは異なる外観形状にしてもよい。
【0072】
また、上記識別部24,32は、筆記部41,51の種別に応じた色を表示するようにしたが、この識別部の他例としては、筆記部の種別に応じた所定形状を有する態様、筆記部の種別に応じた文字や記号、模様、図形等を表示した態様等とすることが可能である。
【0073】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、識別部24,32を外すための治具Xとしてポールペンを用いたが、他例としては、治具Xとして爪楊枝やその他の棒状部材又は先細状部材を用いることも可能である。さらに、治具Xを用いずに、識別部24,32を手で押したり引っ張ったりして着脱する態様とすることも可能である。
【0074】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、特に好ましい具体例として、第二縁部12a2を軸筒10の仮想外径面10x(
図11参照)と略同径にしたが、他例としては、第二縁部12a2を、仮想外径面10xよりも小さい直径の範囲内で第一縁部12a1よりも突出させた態様とすることも可能である。
【0075】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、クリップ体22が後退位置で開放するのに伴って、クリップ体22における支持点Pよりも後側の凹状部分が、軸筒10側の凸部12fに対し嵌り合うようにしたが、他例としては、クリップ体22の後端側に軸筒10側へ突出する凸部を設けるとともに軸筒10側には凹部を設け、これら凸部と凹部を嵌脱するようにしてもよい。
【0076】
また、上記出没式筆記具1,2によれば、押子20,30を前後スライド可能に受けるスライド面12c1,12d1や、該スライド面12c1,12d1に沿って前進した際の押子20,30を軸筒内側へ沈み込ませて係止する係止部12c2,12d2を、後軸12内の筒状スライド体12cに設けたが、他例としては、これらスライド面及び係止部を軸筒の周壁に直接設けた態様とすることも可能である。
【0077】
また、上記出没式筆記具1,2,3によれば、識別部24,32をクリップ体22又は押子本体31に対し着脱可能に構成したが、他例としては、識別部24,32をクリップ体22又は押子本体31に対し着脱不能に取り付けた態様や、識別部24,32をクリップ体22又は押子本体31に一体成形した態様、識別部24,32を有さないクリップ体22及び押子本体31を構成した態様等とすることも可能である。