特許第6099409号(P6099409)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099409
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】屋外作業用の仮設屋根構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20170313BHJP
   E04G 21/28 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   E04B1/343 U
   E04G21/28 A
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-7937(P2013-7937)
(22)【出願日】2013年1月18日
(65)【公開番号】特開2014-136956(P2014-136956A)
(43)【公開日】2014年7月28日
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】北嶋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐哉
(72)【発明者】
【氏名】舘岡 一将
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−288097(JP,A)
【文献】 実開平06−037453(JP,U)
【文献】 特開平06−185223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04G 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上に略平行に設置された一対のレール部材と、当該一対のレール部材上を移動可能に設けられた複数の屋根ユニットと、当該複数の屋根ユニットのうち隣り合うもの同士を連結する連結部材と、を備え、
当該屋根ユニットは、前記一対のレール部材同士の間を跨いで設けられた一対の柱梁部材と、当該一対の柱梁部材同士を連結する水平部材および斜め部材と、前記一対の柱梁部材の間の空間を覆うシート部材と、備え、
前記各柱梁部材は、前記各レール部材上に設けられた一対の柱部材と、当該一対の柱部材間に架設された梁部材と、を備え、
少なくとも1つの屋根ユニットのシート部材、水平部材および斜め部材を取り外すことで、屋根の任意の位置に任意の大きさの開口を設けることが可能であることを特徴とする屋外作業用の仮設屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構造およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物等の構造物の建設工事では、季節や天候に左右されずに屋外作業を行うため、屋外の作業場を仮設構造物や移動式テントで覆うことが提案されている。
【0003】
仮設構造物は、屋外の作業場の周囲に設けられた仮設足場と、この仮設足場の上に架設されてこの仮設足場で囲まれた空間を覆う仮設屋根と、を備える(特許文献1参照)。仮設屋根は、仮設足場上に対向配置された一対のレールと、これら一対のレール間に架設された複数本の立体トラスと、これら立体トラスの上に設けられた屋根葺き材と、を備える。この仮設構造物によれば、立体トラスをレールに沿って移動することで、仮設屋根の全体を折り畳みながら開閉可能となっている。
【0004】
移動式テントは、4本の支柱と、これら4本の支柱間に架設された鉄骨製の骨組と、この骨組を覆うシートと、を備える(特許文献2参照)。4本の支柱のそれぞれの下端には、走行可能な車輪が取り付けられている。この移動式テントは、地上を走行させることで、任意の場所に設置可能であり、この移動式テントの前後の側面には、開口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2560962号公報
【特許文献2】特開2011−149174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された仮設構造物では、屋外作業場を囲んで仮設足場を組み立てるため、仮設構造物の組立てや解体に時間がかかる、という問題があった。
また、資材の搬出入を行う場合には、仮設屋根を片側から折り畳んで、開口を設けることになる。よって、天候が悪い場合であっても、所定の位置に資材を揚重するために、必要以上に大きな開口ができてしまい、良好な作業環境を維持できない場合があった。
【0007】
また、特許文献2に示された移動式テントでは、資材の搬出入を行う場合、台車などで側面の開口を通して資材を搬出入する必要があり、資材を搬出入に手間がかかる、という問題があった。
【0008】
本発明は、良好な作業環境を維持しつつ、資材を簡単に搬出入できる屋根構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の屋根構造(例えば、後述の屋根構造1)は、地盤上に略平行に設置された一対のレール部材(例えば、後述のレール部材10)と、当該一対のレール部材上を移動可能に設けられた複数の屋根ユニット(例えば、後述の屋根ユニット20)と、当該複数の屋根ユニットのうち隣り合うもの同士を連結する連結部材(例えば、後述の連結部材30)と、を備え、当該屋根ユニットは、前記一対のレール部材同士の間を跨いで設けられた一対の柱梁部材(例えば、後述の柱梁部材21)と、当該一対の柱梁部材同士を連結する水平部材(例えば、後述の水平部材22)と、前記一対の柱梁部材の間の空間を覆うシート部材(例えば、後述のシート部材24)と、備え、前記各柱梁部材は、前記各レール部材上に設けられた一対の柱部材(例えば、後述の柱部材211)と、当該一対の柱部材間に架設された梁部材(例えば、後述の梁部材212)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の屋根構造は、少なくとも1つの屋根ユニットのシート部材および水平部材を取り外すことで、屋根の一部に開口(例えば、後述の開口26)を設けることが可能であることを特徴とする。
【0011】
本発明の屋根構造の構築方法は、地盤上に略平行に一対のレール部材を設置する工程(例えば、後述のステップS1)と、前記一対のレール部材の一端側(例えば、後述の組立てヤードC)において、前記一対のレール部材同士の間を跨いで設けられた一対の柱梁部材と、当該一対の柱梁部材同士を連結する水平部材と、を含む屋根ユニットを組み立てる工程(例えば、後述のステップS2、S3)と、当該組み立てた屋根ユニットを、レール部材に沿って所定位置まで移動して、当該組み立てた屋根ユニットと既に配置された屋根ユニットとを連結部材で連結する工程(例えば、後述のステップS4、S5)と、前記各屋根ユニットの一対の柱梁部材の間の空間をシート部材で覆う工程(例えば、後述のステップS7)と、備えることが好ましい
【0012】
この発明によれば、屋根構造で作業場所を覆うことにより、無柱で全天候型の空間を確保できるから、屋外作業を長期に亘って円滑に実施できる。
また、一対の柱梁部材、水平部材、およびシート部材を含んで屋根ユニットを構成したので、任意の屋根ユニットのシート部材および水平部材を取り外すことにより、任意の位置に任意の大きさの開口を設けることができる。よって、開口が必要以上に大きくなることはないので、良好な作業環境を維持できる。また、クレーンなどで上方から資材を搬出入できるので、資材を簡単に搬出入できる。
【0013】
また、屋根ユニットの個数を調整することにより、作業計画に応じて、屋根構造で覆われる空間の大きさを適宜調整できる。
また、柱梁部材の間隔および水平部材の長さを調整することにより、屋根ユニットの長さを任意に設定できる。
また、レール部材の一端側を組立てヤードとし、この組立てヤードにおいて屋根ユニットを順次組み立ててレール上を移動させることで、屋根構造全体を組み立てる。よって、屋根ユニットを組み立てるための足場や小型の揚重機を組立てヤードにのみ配置すればよいので、低コストで効率よく屋根構造を組み立てることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、屋根構造で作業場所を覆うことにより、無柱で全天候型の空間を確保できるから、屋外作業を長期に亘って円滑に実施できる。また、一対の柱梁部材、水平部材、およびシート部材を含んで屋根ユニットを構成したので、任意の屋根ユニットのシート部材および水平部材を取り外すことにより、任意の位置に任意の大きさの開口を設けることができる。よって、開口が必要以上に大きくなることはないので、良好な作業環境を維持できる。また、クレーンなどで上方から資材を搬出入できるので、資材を簡単に搬出入できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る屋根構造の斜視図である。
図2】前記実施形態に係る屋根構造の屋根ユニットの斜視図である。
図3】前記実施形態に係る屋根ユニット同士を連結する連結部材の斜視図である。
図4】前記実施形態に係る屋根構造を組み立てる手順のフローチャートである。
図5】前記実施形態に係る屋根構造を組み立てる手順を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る屋根構造1の斜視図である。
【0017】
屋根構造1は、屋外の作業場所Sを挟んで地盤上に略平行に設置された一対のレール部材10と、これら一対のレール部材10上を移動可能に設けられた複数ここでは5つの屋根ユニット20と、これら5つの屋根ユニット20のうち隣り合うもの同士を連結する連結部材30と、を備える。
レール部材10は、レール部材10は、例えばH鋼であり、フランジが略水平になるように設置される。
【0018】
図2は、屋根ユニット20の斜視図である。図2では、理解の容易のため、シート部材24および斜め部材23を省略している。
屋根ユニット20は、一対のレール部材10同士の間を跨いで設けられた一対の柱梁部材21と、これら一対の柱梁部材21同士を連結する複数本の水平部材22および斜め部材23と、一対の柱梁部材21の間の空間を上から覆うシート部材24と、柱梁部材21の下端に設けられた走行車輪25と、備える。
ここで、柱梁部材21および水平部材22は、屋根ユニット20の骨組みであり、シート部材24は、この屋根ユニット20の骨組みを覆うように張設される。
【0019】
各柱梁部材21は、各レール部材10上に設けられた一対の略鉛直に延びる柱部材211と、これら一対の柱部材211間に架設された梁部材212と、一対の柱部材211の柱頭部の間を連結する横架部材213と、を備える。
柱部材211は、例えば枠組足場である。
梁部材212は、例えばトラスであり、側面視で、中央部が上方に膨出した切妻形状である。
横架部材213は、梁部材212の下端同士を連結するものであり、レール部材10に略直交する方向に略水平に延びる棒状の部材である。
【0020】
水平部材22は、柱梁部材21に略直交する方向に略水平に延びる棒状の部材であり、斜め部材23は、柱梁部材21に傾斜した方向に延びる棒状の部材である。
また、上述の走行車輪25は、4本の柱部材211のそれぞれの下端に設けられる。
【0021】
上述の連結部材30は、隣り合う屋根ユニット20の柱部材211同士を連結するものである。連結部材30は、図3に示すように、半筒状の挟持部311が2つ並んで形成された一対の連結片31と、これら一対の連結片31同士を連結するねじ32と、を備える。この連結部材30によれば、一対の連結片31の各挟持部311で各柱部材211を挟み込んで、この状態でねじ32を締め付けることにより、連結片31の挟持部311で柱部材211を挟持して、隣り合う柱部材211同士を一体化できる。
【0022】
以上の屋根構造1では、図1に示すように、屋根ユニット20のシート部材24、水平部材22、および斜め部材23を取り外すことで、屋根の一部に開口26を設けることが可能となっている。
【0023】
以上の屋根構造1を組み立てる手順を、図4のフローチャートを参照しながら説明する。
ステップS1では、図5に示すように、一対のレール部材10を設置する。
ステップS2では、レール部材10の一端側である組立てヤードCにおいて、一対の柱梁部材21を組み立てる。具体的には、各柱梁部材21は、一対のレール部材10のそれぞれの上に柱部材211を建て込んで、これら柱部材211間に梁部材212および横架部材213を架設して組み立てる。
【0024】
ステップS3では、屋根ユニット20を組み立てる。具体的には、一対の柱梁部材21を水平部材22で連結する。
ステップS4では、組み立てた屋根ユニット20の走行車輪25をレール部材10上で走行させることで、図5中白抜き矢印で示すように、この屋根ユニット20をレール部材10に沿って、所定位置まで移動する。
ステップS5では、この組み立てた屋根ユニット20に対して既に屋根ユニット20が隣接配置されている場合には、これら組み立てた屋根ユニット20と既に配置された屋根ユニット20とを連結部材30で連結する。
【0025】
ステップS6では、屋根構造1の骨組みが完成したか否かを判定し、この判定がNoである場合には、ステップS2に戻り、この判定がYesである場合には、ステップS7に移る。
ステップS7では、屋根構造1を構成する各屋根ユニット20の骨組みにシート部材24を張設して、屋根構造1を完成させる。
【0026】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)屋根構造1で作業場所Sを覆うことにより、無柱で全天候型の空間を確保できるから、屋外作業を長期に亘って円滑に実施できる。
また、一対の柱梁部材21、水平部材22、斜め部材23、およびシート部材24を含んで屋根ユニット20を構成したので、任意の屋根ユニット20のシート部材24、水平部材22、および斜め部材23を取り外すことにより、任意の位置に任意の大きさの開口26を設けることができる。よって、開口26が必要以上に大きくなることはないので、良好な作業環境を維持できる。また、クレーンなどで上方から資材を搬出入できるので、資材を簡単に搬出入できる。
【0027】
また、屋根ユニット20の個数を調整することにより、作業計画に応じて、屋根構造1で覆われる空間の大きさを適宜調整できる。
また、柱梁部材21の間隔および水平部材22の長さを調整することにより、屋根ユニット20の長さを任意に設定できる。
また、レール部材10の一端側を組立てヤードCとし、この組立てヤードCにおいて屋根ユニット20を順次組み立ててレール部材10上を移動させることで、屋根構造1の全体を組み立てる。よって、屋根ユニット20を組み立てるための足場や小型の揚重機を組立てヤードCにのみ配置すればよいので、低コストで効率よく屋根構造1を組み立てることができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、柱部材211の下端に走行車輪25を設け、この走行車輪25をレール部材10上で走行させたが、これに限らず、走行車輪25を設けずに、柱部材211の下端面をレール部材10上で摺動させてもよい。
また、本実施形態では、柱部材211と梁部材212とを別部材としたが、これに限らず、柱部材211と梁部材212とを一体としてもよい。
また、本実施形態では、柱部材211を枠組足場としたが、これに限らず、単管を組み合わせて柱部材としてもよい。
【符号の説明】
【0029】
C…組立てヤード
S…作業場所
1…屋根構造
10…レール部材
20…屋根ユニット
21…柱梁部材
22…水平部材
23…斜め部材
24…シート部材
25…走行車輪
26…開口
30…連結部材
31…連結片
32…ねじ
211…柱部材
212…梁部材
213…横架部材
311…挟持部
図1
図2
図3
図4
図5