特許第6099427号(P6099427)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099427
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 9/03 20060101AFI20170313BHJP
【FI】
   G05B9/03
【請求項の数】2
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-29629(P2013-29629)
(22)【出願日】2013年2月19日
(65)【公開番号】特開2013-171586(P2013-171586A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年1月7日
【審判番号】不服2015-22592(P2015-22592/J1)
【審判請求日】2015年12月24日
(31)【優先権主張番号】00215/12
(32)【優先日】2012年2月20日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング ラング
(72)【発明者】
【氏名】ハンスペーター ツィン
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ ボルハルダー
(72)【発明者】
【氏名】シャビエル アントナンザス
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 西村 泰英
【審判官】 平岩 正一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−82908(JP,A)
【文献】 特開2001−290519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の動作パラメータを監視し、且つ、少なくとも3個のセンサ(1〜3)を有しているセンサシステムを備えており、前記センサシステムからの測定データを制御システムの中央プロセッサ装置(5)の入力端に供給することができ、前記中央プロセッサ装置(5)自体は、出力端において、タービン又は電力プラント等の動作制御素子と通信する形式の、蒸気タービン、ガスタービン又は電力プラントの制御システムにおいて、
少なくとも、前記センサシステムの前記少なくとも3個のセンサ(1〜3)にはセンサ側プロセッサ回路(4)が対応付けられており、
該センサ側プロセッサ回路(4)は、対応付けられている前記少なくとも3個のセンサ(1〜3)からの信号のエラーの存在について継続的に検査して、各センサ(1〜3)にエラーがあるか否かを識別すると共に、センサ(1〜3)にエラーがあった場合は、当該センサからの信号が前記中央プロセッサ装置(5)の前記入力端に供給されないように、必ずブロックし、
前記センサ側プロセッサ回路(4)は、一つのチャネルにおいてエラーの無いものとして識別されたセンサからの信号を、そのまま転送するか、又は、更に処理して転送する、
なお、前記処理とは、前記センサ側プロセッサ回路(4)が、前記エラー無く動作しているセンサからの信号を、前記中央プロセッサ装置(5)に要求される所定のデータフォーマットに応じて変換することである、
ことを特徴とする、制御システム。
【請求項2】
前記センサ側プロセッサ回路(4)は、欠陥のあるセンサを報告するためにディスプレイ(7)を制御する、請求項1に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冗長式の複数のセンサを有しており、所定の動作パラメータを監視し、それらの動作パラメータに由来する測定データを制御システムの中央プロセッサ装置の入力端に供給することができるセンサシステムを含んでおり、中央プロセッサ装置自体は、出力端において、タービン又は電力プラント等の動作制御素子と通信する形式の、蒸気タービン及びガスタービン及び/又は電力プラントなどのための制御システムに関する。
【0002】
更に本発明は、その種の制御システムのためのセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
最適な動作のために、ガスタービン施設及び蒸気タービン施設においては種々のパラメータが監視される。このコンテキストにおいては、例えば、低振動又は最適な動作シーケンスが保証されるように動作パラメータを制御するために、ガスタービンの燃焼室内のノイズ又はタービンの部品内の振動もしくはタービンの部品における振動の検出に使用されるセンサシステムを参照する。
【0004】
この場合一般的には、エラーの無い動作のためにセンサシステムを定期的に監視すること、及び/又は、制御システムの動作に必要とされる、関連する変数を導出するためにセンサ信号を使用することが必要である。
【0005】
従って、中央プロセッサ装置は、動作制御素子又は燃焼プロセスのために燃料又は空気の供給を制御する素子に対する出力コマンドを形成する前に、広範な事前作業を実行しなければならない。この事前作業は、あらゆるケースにおいて使用されるセンサシステムに適合させなければならない種々のプロセッサ機能を表しているに等しい。
【0006】
これによって、センサシステムの設計を事後的に容易に修正することができないという問題が生じる。これは例えば、設計を修正することによって、センサシステムの信号フォーマットも修正され、この修正された信号フォーマットを容易に処理できないことに起因する。
【0007】
特許文献1には、回転する機械部品の回転速度を冗長式のセンサ及び評価回路によって求めるための装置が開示されている。この刊行物に開示されている装置は、並列に配置されており、且つ、それぞれが別個のチャネルの形態である二つの部分装置から構成されている。それらの部分装置の内の一方は回転速度を監視するタスクを実行するには十分である。センサ信号は、いずれの場合も二つの評価回路によって評価される。「三つの内の二つ」の冗長性は、各部分装置における回転速度信号に関して提供される。即ち、各部分装置の信号入力端に供給される少なくとも三つの回転速度信号の内の一つに誤りがある可能性があり、その際に、その誤りによって危険に晒される各部分装置の機能を監視する必要は無い。施設の高い可用性及び信頼性をこの技術的な解決手段によって達成することはできるが、装置の増大した費用はやむを得ない不利益に他ならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO 2004/005938 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このことは、センサシステムに関する高い汎用性、従って施設の高い信頼性及び可用性を比較的僅かな費用で保証することができる制御システムを提供するという課題を基礎とする本発明の出発点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、センサシステムの少なくとも幾つかの冗長式のセンサにはセンサ側プロセッサ回路が対応付けられており、このセンサ側プロセッサ回路が、対応付けられている(一つ又は複数の)センサをエラーの無い動作について継続的に検査し、中央プロセッサ装置の入力端を(一つ又は複数の)センサからのエラーのある信号から保護又はブロックし、センサ側プロセッサ回路は単に、エラーの無いものとして識別されたセンサからの信号を一つのチャネルにおいてその都度転送するか、又は更に処理することによって解決される。
【0011】
従って、本発明は、センサをエラーの無い動作について継続的に監視又は検査し、また出力端においては、エラーの無いものとして識別されたセンサからの信号と所定の相関関係を有している信号のみを送信するプロセッサ回路が対応付けられているセンサによって特徴付けられているセンサ装置を含む。
【0012】
本発明は、エラーの無い動作についてセンサを検査し、また中央処理コントローラに対するセンサ信号をその中央処理コントローラの外側において調整し、それにより、中央処理コントローラは、それぞれの施設の動作シーケンスを制御するための「コア機能」のみを実行すれば良いという一般的なコンセプトを基礎としている。
【0013】
従ってその結果、中央プロセッサ装置の作業を、動作素子に関する最適な操作変数を求めるための純粋な計算機能に制限することができる。反対に、それぞれの計算プロセスに必要とされる入力変数の形成及びフォーマッティングは「外部委託」される。
【0014】
本発明の一つの有利な実施の形態によれば、基本的には公知のやり方で、個々のセンサに欠陥がある場合でも、最適な動作シーケンスを保証することができるようにするために、それぞれが冗長式の複数のセンサから成る複数のセンサグループを有しているセンサシステムが設けられている。
【0015】
そのような施設の実施の形態の場合、本発明によれば有利には、センサグループを成す冗長式の複数のセンサに対応付けられている別個のプロセッサ回路が設けられており、このプロセッサ回路は各センサをエラーの無い動作について監視し、グループ内のあるセンサに欠陥がある場合には、そのグループ内のエラーの無いセンサからの信号のみを更に処理し、中央プロセッサ装置に対する入力信号を形成する。
【0016】
それと同時に、センサグループに対応付けられているプロセッサ回路はディスプレイを制御し、それによりエラー信号がディスプレイ上に表示され、欠陥のあるセンサを次の機会に置換することができる。
【0017】
センサグループに対応付けられているセンサ側プロセッサ回路はいずれの場合にもエラーの無いセンサからの信号だけを処理し、その信号を中央プロセッサ装置へと供給するので、動作中のセンサの置換に適したやり方でセンサが設けられている場合、原理的には、それぞれの施設の動作中に欠陥のあるセンサを置換することが可能である。いずれの場合にも、センサシステムはセンサ側プロセッサ回路を介して本発明による中央プロセッサ装置と通信するので、制御システムの作業に欠陥があることはない。
【0018】
本発明の更に重要な特徴及び利点は従属請求項、図面、また図面を参照する関連する説明より明らかになる。
【0019】
勿論、上述の特徴及び下記において説明する特徴は、それぞれ既述の組み合わせのみで使用されるのではなく、本発明の範囲から逸脱することなく別の組み合わせ又は単独で使用することができる。
【0020】
本発明の有利な実施例は図面に示されており、それらの実施例を以下において詳細に説明する。同一の参照符号は同一、又は類似する、又は機能的に同一のコンポーネントを表している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】センサグループと所属のプロセッサ回路の概略図を示す。
図2】センサ側プロセッサ回路によるセンサ信号の例示的な処理を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1によれば、電力プラント(詳細には図示していない)は、所定のパラメータの検出に使用することができる冗長式のセンサ1〜3を有することができる。例えば、センサ1〜3はガスタービン施設の燃焼室装置のノイズ又は蒸気タービン施設のノイズ等を検出することができる。本発明によれば、冗長式のセンサ1〜3には一つのセンサ側プロセッサ回路4が対応付けられており、このセンサ側プロセッサ回路4の動作を以下において詳細に説明する。プロセッサ回路4はセンサ信号を、事前に規定可能な調整が行なわれた後に、電力プラントの制御システムの中央プロセッサ装置5に転送する。続いて、中央プロセッサ装置5は、基本的には公知のやり方で、例えば燃料供給用の動作制御素子を制御するドライバ6のための信号を形成する。
【0023】
このセンサ側プロセッサ回路4は少なくとも一つの入力端プロセッサユニット4’を有しており、この入力端プロセッサユニット4’はセンサ1〜3からの信号を受信し、それらの信号をエラーの存在について検査する。この検査を、例えばセンサのノイズスペクトルを評価することによって実施することができる。しかしながら原理的には、所望のあらゆる形式のエラー検査が可能である。全てのセンサ1〜3からの信号にエラーが無い場合、機能的にスイッチのように動作する別のプロセッサユニット4''における基本的に任意の条件に従い、それぞれのセンサ信号を転送するためにセンサ1〜3の内の一つが選択される。
【0024】
プロセッサユニットがセンサ1〜3の内の一つの動作に欠陥があることを確認した場合には、プロセッサユニット4''はそれぞれのセンサ信号を転送するために、動作にエラーの無いセンサの内の一つを選択する。いかなる場合においても、動作に欠陥のあるセンサはその信号の転送から排除される。
【0025】
プロセッサユニット4''によってそれぞれ転送されるセンサ信号をダウンストリームプロセッサユニット4'''において更に「調整する」ことができる。このことは、例えば、中央プロセッサ装置5がそれぞれのセンサ信号の直接的な処理に適したものでない場合には好適である。何故ならば、中央プロセッサ装置5は例えば変換によってセンサ信号から導出された信号しか処理できないからである。
【0026】
このことを、以下では図2を参照しながら説明する。一般性を制限することなく、センサ1〜3はノイズを検出することができる。動作にエラーが無い場合、各センサ1〜3は、図2のAに応じた時間tを基礎とする出力信号Aを形成する。この場合、出力信号Aは、検出すべきノイズの音波振動に類似するように振動するダイアフラムの運動の振幅を表すことができる。
【0027】
ここでは一例として、中央プロセッサ装置5が出力信号Aを直接的に処理することは全く意図していないことを前提とする。むしろ、中央プロセッサ装置5を、自身の出力信号を決定するために音波振動のスペクトルを処理するように設計することができる。このスペクトルは一例として図2のBに示されており、音波振動の強度Iが周波数fとの関係で示されている。
【0028】
ここで中央プロセッサ装置5が図2のBに応じた信号を必要とする場合、センサ側プロセッサ回路4のプロセッサユニット4'''はスペクトル分析を実行し、それにより図2のAに応じた信号を図2のBに応じた信号に変換することができる。従ってこの実施例において、プロセッサユニット4'''は、エラー無く動作しているセンサ1〜3からの信号を、中央プロセッサ装置の作業に適した信号に変換するために使用される。つまりプロセッサユニット4'''は、中央プロセッサ装置5に供給することを意図した、変換された形態でのみプロセッサ装置によって処理することができる信号を相応に変換するインタフェース機能を有している。
【0029】
そのようにして、中央処理装置を「支援する」ことができるか、又は、中央処理装置を専ら「コア活動」を実行するために設計することができる。これによって、センサの設計が変更され、またセンサ信号の構造について関連する変更が行なわれた場合、センサ側プロセッサユニット4だけが相応に適合されていれば良いという利点も同時に提供される。つまり、センサ側プロセッサユニット4とは異なり、中央プロセッサ装置5に対して何ら変更は行なわれないままである。このことはそれと同時に、センサシステムが変更された場合であっても実行すべき動作形式は変更されないことから、中央プロセッサ装置5が比較的単純な設計を有することができるという利点にも関連付けられている。信号変換に関する別の可能性を図2のA及びCを用いて説明する。
【0030】
この例においてセンサ1〜3は振動を検出することができ、出力信号Aはこの場合、検出された振動の振幅を表すことができる。ここでは、異なる振幅の周波数分布のみが中央プロセッサ装置5の作業にとって重要であることを前提とする。そのような場合、プロセッサユニット4'''は図Aに示されているセンサ信号を、種々の振幅Aの周波数分布Hを表す図Cに示されている信号に変換することができる。
【0031】
要約すると、本発明は、冗長式のセンサ1〜3にはセンサ側プロセッサ回路4が対応付けられており、このセンサ側プロセッサ回路4は一方ではセンサをエラーの無い動作について検査し、冗長式のセンサにおいてエラー無く動作しているセンサの内の一つをその都度選択し、そのようなエラー無く動作しているセンサのセンサ信号を転送するという作用効果を奏することができるという特徴を有している。従って、本発明によるこの解決手段においては、中央プロセッサ装置5に対して信号を供給するセンサが常に一つ存在している。つまり、単一チャネル保護システムにおけるより高い信頼性及び可用性を達成するために、センサの冗長性が高められている。
【0032】
他方では、センサ側プロセッサ回路4は、転送すべきセンサ信号を中央プロセッサ装置5の作業にとって最適な形式に変換するために使用される。従って、中央プロセッサ装置は「コア機能」のみを実行すれば良い。つまりセンサ側プロセッサ回路4は、中央プロセッサ装置のための事前作業を担い、それにより、中央プロセッサ装置はその負荷が非常に軽減されており、最終的にはより高い信頼性を有することができる。
【0033】
センサ側プロセッサ回路4は動作に欠陥があるセンサからの全ての信号を抑制するので、施設を動作させながら、それと同時にセンサを置換することができる。このコンテキストにおいて、有利には、センサ側プロセッサ4は置換されるべきセンサを指示するディスプレイ7を制御する。必要であれば、実行すべき検査作業もディスプレイ7に表示することができる。原則として、それぞれのセンサ側プロセッサ回路4が相応の情報を中央プロセッサ装置5に転送する場合に、ディスプレイ7を中央プロセッサ装置5によって事前に制御することもできるが、センサ側プロセッサ回路4は欠陥のあるセンサをいずれにせよ検出しなければならないので、センサ側プロセッサ回路4によるディスプレイ7の制御が有利である。
【符号の説明】
【0034】
1,2,3 センサ、 4 センサ側プロセッサ回路、 5 中央プロセッサ装置、 6 ドライバ、 7 ディスプレイ、 A 振幅、 f,H 周波数、 I 強度
図1
図2