特許第6099460号(P6099460)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099460
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】搬送ロボット及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/00 20060101AFI20170313BHJP
   G05D 1/02 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   B25J13/00 Z
   G05D1/02 G
   G05D1/02 T
【請求項の数】7
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-75048(P2013-75048)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-198368(P2014-198368A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2016年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】391032358
【氏名又は名称】平田機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】梅田 知弥
(72)【発明者】
【氏名】中内 務
(72)【発明者】
【氏名】前田 正英
【審査官】 臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−298417(JP,A)
【文献】 特開2006−100201(JP,A)
【文献】 特開平09−306477(JP,A)
【文献】 特開昭59−156692(JP,A)
【文献】 特開平05−285875(JP,A)
【文献】 特開2005−231789(JP,A)
【文献】 特開平10−264069(JP,A)
【文献】 特開2004−281127(JP,A)
【文献】 特開2009−249176(JP,A)
【文献】 特開平05−008682(JP,A)
【文献】 特開2006−088293(JP,A)
【文献】 特開2001−031297(JP,A)
【文献】 特開平04−371458(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0041056(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/04−15/08
B60P 1/54
B65H 16/06−67/06
G05D 1/02
H01M 4/02− 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心材に電極帯を巻き回したフープを搬送する搬送ロボットであって、
ロボット本体部と、
前記ロボット本体部に装着され、前記フープを保持するヘッドユニットと、
前記ロボット本体部を移動する移動装置と、を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記心材を保持する保持機構と、
前記フープから引き出された前記電極帯を保持する保持ユニットと、を備え、
前記保持ユニットが交換自在であり、
前記保持ユニットは、
前記フープから引き出された前記電極帯を保持する電極帯保持機構と、
前記フープから引き出された前記電極帯に当接し、電極帯の張力を調整する張力調整機構と、を備える、
ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項2】
心材に電極帯を巻き回したフープを搬送する搬送ロボットであって、
ロボット本体部と、
前記ロボット本体部に装着され、前記フープを保持するヘッドユニットと、
前記ロボット本体部を移動する移動装置と、を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記心材を保持する保持機構と、
前記フープから引き出された前記電極帯を保持する保持ユニットと、を備え、
前記保持ユニットが交換自在であり、
前記ロボット本体部は多関節アームであり、
前記移動装置は、前記多関節アームを搭載して、所定の方向に走行する走行ユニットを備え、
前記搬送ロボットは、
前記走行ユニットに搭載され、前記フープを囲包するカバー部材を更に備え、
前記多関節アームは、
前記ヘッドユニットが前記フープを保持した状態で、前記カバー部材内に前記フープを格納可能であり、
前記走行ユニットの走行中、前記フープは前記カバー部材内に格納された状態が維持される、
ことを特徴とする搬送ロボット。
【請求項3】
心材に電極帯を巻き回したフープを搬送する搬送ロボットを備えた搬送システムであって、
前記搬送ロボットは、
ロボット本体部と、
前記ロボット本体部に装着され、前記フープを保持するヘッドユニットと、
前記ロボット本体部を移動する移動装置と、を備え、
前記ヘッドユニットは、
前記心材を保持する保持機構と、
前記フープから引き出された前記電極帯を保持する保持ユニットと、を備え、
前記保持ユニットが交換自在であり、
前記搬送システムは、更に、
陽極用の前記保持ユニットと、陰極用の前記保持ユニットとが配設される、保持ユニット準備装置を備える、
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
前記ロボット本体部は多関節アームであり、
前記移動装置は、前記多関節アームを搭載して、所定の方向に走行する走行ユニットを備え、
前記保持ユニット準備装置は、前記走行ユニットの走行経路に沿った位置に配置されている、
ことを特徴とする請求項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記保持ユニット準備装置は、前記ヘッドユニットを洗浄する洗浄機構を備える、
ことを特徴とする請求項に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記搬送システムは、更に、前記フープから前記電極帯を引き出す引出装置を備え、
前記搬送ロボットは、前記引出装置により前記電極帯が引き出された前記フープを、前記引出装置から処理装置へ搬送する、
ことを特徴とする請求項に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記搬送システムは、更に、前記引出装置へ前記フープを供給する、前記搬送ロボットとは別の搬送ユニットを備える、
ことを特徴とする請求項に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心材に電極帯を巻き回したフープの搬送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオン電池などの二次電池の製造において、電極板の処理装置への供給は電極帯(帯状の電極板)を巻き回したフープ単位で行われている。二次電池の需要の増大に伴うフープの大型化により、フープの単体重量が増加し、作業員による手作業での搬送は困難な状況にある。そのため、処理装置に対するフープの自動搬送技術の開発が要望されている。フープ状の搬送対象物を搬送する搬送ロボットとしては、一般に、心材部分を保持して搬送するものが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−371458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理装置へのフープの供給は、単にフープを供給するだけでは足りず、電極帯の端部を処理装置側で把持可能なように渡すことが要求される場合がある。一方、電極板には陽極と陰極とがあり、これらの構成材料が接触することは避けなくてはならない。そこで、陽極フープと陰極フープとの搬送を全く別々の搬送系で行うことが考えられるが、システムが大型化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、電極帯の端部を処理装置側へ渡すことができ、かつ、陽極構成材料と陰極構成材料との接触を回避しつつ、フープの搬送を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、例えば、心材に電極帯を巻き回したフープを搬送する搬送ロボットであって、ロボット本体部と、前記ロボット本体部に装着され、前記フープを保持するヘッドユニットと、前記ロボット本体部を移動する移動装置と、を備え、前記ヘッドユニットは、前記心材を保持する保持機構と、前記フープから引き出された前記電極帯を保持する保持ユニットと、を備え、前記保持ユニットが交換自在であり、前記保持ユニットは、前記フープから引き出された前記電極帯を保持する電極帯保持機構と、前記フープから引き出された前記電極帯に当接し、電極帯の張力を調整する張力調整機構と、を備える、ことを特徴とする搬送ロボットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電極帯の端部を処理装置側へ渡すことができ、かつ、陽極構成材料と陰極構成材料との接触を回避しつつ、フープの搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の適用例である搬送システムの概略図。
図2】制御装置のブロック図。
図3】フープの説明図。
図4】(A)〜(E)は搬送ユニットの説明図。
図5】(A)及び(B)は引出装置の正面図及び側面図。
図6】(A)〜(C)は図5の引出装置の動作説明図。
図7】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図8】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図9】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図10】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図11】(A)〜(C)は図5の引出装置の動作説明図。
図12】(A)〜(C)は図5の引出装置の動作説明図。
図13】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図14】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図15】(A)及び(B)は図5の引出装置の動作説明図。
図16】搬送ロボットの概略図。
図17】(A)〜(C)はヘッドユニットの説明図。
図18図17のヘッドユニットの動作説明図。
図19】(A)及び(B)は図17のヘッドユニットの動作説明図。
図20】(A)は図16の搬送ロボットの走行時の姿勢を示す図、(B)は図16(A)のI−I線断面図。
図21】(A)〜(C)は図17のヘッドユニットの動作説明図。
図22】(A)〜(C)は図17のヘッドユニットの動作説明図。
図23】(A)〜(C)は図17のヘッドユニットの動作説明図。
図24】(A)は図17のヘッドユニットの動作説明図、(B)及び(C)は準備装置の説明図。
図25】(A)〜(C)はツール交換の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<搬送システムの概要>
図1は本発明の適用例ないし実施形態に係る搬送システムAの概略図である。なお、図1を含む各図において矢印X、Yは互いに直交する水平方向を示し、矢印Zは上下方向を示す。
【0010】
搬送システムAは、収納装置B、Bに収納されたフープ1を複数(ここでは3つ)の処理装置Cへ搬送するシステムである。フープ1は、その詳細は後述するが、巻体(ボビン)に電極板を帯状に巻き回した電極帯であり、陽極の電極帯を巻き回したフープ1と、陰極の電極帯を巻き回したフープ1とが存在する。収納装置Bはフープ1を収納する装置であり、処理装置Cは電極帯に対して処理を行う装置である。
【0011】
搬送システムAは搬送ユニット10と、引出装置20、20と、搬送ロボット30と、準備装置40、40と、を備える。引出装置20はフープ1からその電極帯を引き出す装置であり、準備装置40には搬送ロボット30のツールが配置される。
【0012】
本実施形態の場合、X方向に収納装置B、B、引出装置20、20、準備装置40、40及び複数の処理装置Cが順に配置されている。収納装置B、引出装置20及び準備装置40は、2つずつ設けられているが、一方が陽極フープ用、他方が陰極フープ用とされる。これは、陽極と陰極とで電極帯の構成材料が接触することを防止することを目的としている。
【0013】
搬送ユニット10はX方向に延設されたレールRL1上を往復移動する移動体、例えば本実施形態ではトラバーサであり、収納装置B、Bの正面と引出装置20、20の正面との間で移動する。搬送ユニット10は、レールRL1上を走行する走行ユニット11、フープ1を保持するヘッドユニット12及び走行ユニット11に搭載されヘッドユニット12を昇降する昇降機構13を備える。搬送ユニット10は、収納装置Bにおいてヘッドユニット12によりフープ1を保持し、保持したフープ1を引出装置20へ搬送する。なお、本実施形態の場合、収納装置B及び引出装置20のいずれにおいても、フープ1は巻体の回転軸方向がY方向を向いた姿勢で支持される。
【0014】
搬送ロボット30はX方向に延設されたレールRL2上を往復移動する多関節ロボットである。搬送ロボット30は引出装置20、20の正面、準備装置40、40の正面、及び各処理装置Cの正面の間で移動する。
【0015】
搬送ロボット30は、レールRL2上を走行する走行ユニット31、フープ1を保持するヘッドユニット32、走行ユニット11に搭載されヘッドユニット32を3次元的に移動するロボット本体部33、及び、カバー部材34を備える。搬送ロボット30は、引出装置20において電極帯が引き出されたフープ1を保持して引出装置20から処理装置Cへ搬送する。また、搬送ロボット30は準備装置40においてツール交換を行うことが可能である。なお、本実施形態の場合、フープ1は、処理装置Cにおいてはその軸方向をX軸方向とした姿勢で支持される。
【0016】
<制御装置>
搬送システムAの制御は制御装置とホストコンピュータとによって行うことができる。図2は制御装置の一例を示すブロック図である。制御装置50は、各構成毎に設けることができる。具体的には、各収納装置B、各処理装置C、搬送ユニット10、各引出装置20、搬送ロボット30及び各準備装置40にそれぞれ専用の制御装置5を設けることができる。
【0017】
制御装置50は、処理部51と、記憶部52と、インターフェース部53と、を備え、これらは互いに不図示のバスにより接続されている。処理部51は記憶部52に記憶されたプログラムを実行する。処理部51は例えばCPUである。記憶部52は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク等である。インターフェース部53は、処理部51と、外部デバイス(ホストコンピュータD、センサ54、アクチュエータ555)と、の間に設けられ、例えば、通信インターフェースや、I/Oインターフェースである。ホストコンピュータCは搬送システムA、各収納装置B、各処理装置Cの全体の制御に関する制御を司る。
【0018】
センサ54及びアクチュエータ55には、各構成の動作に必要なセンサや駆動源等が含まれる。駆動源としては、たとえば、モータが挙げられる。
【0019】
以上の構成からなる搬送システムAでは、制御装置50とホストコンピュータDとの制御により、収納装置B、Bに収納されたフープ1を引出装置20、20に搬送し、各引出装置20でフープ1の電極帯を所定量引き出し、いずれかの処理装置Cへ搬送する動作が繰り返し行える。以下、各構成について更に詳述する。
【0020】
<フープ>
まず、本実施形態で想定するフープ1の構成について図3を参照して説明する。フープ1は心材(巻体)2に帯BLTを巻き回して構成されている。帯BLTは電極帯(帯状の電極板)3、保護体4を含む。保護体4は電極帯3の端部に接続されている。保護体4は例えば紙の帯であり、フープ1の周面に電極帯3が露出しないように一巻以上の長さを有している。電極帯3には定ピッチでブランク3aが形成されている。ブランク3aは保護帯4から離間して形成されており、電極帯3を切断すべき位置の基準となる指標部を構成している。
【0021】
仮止め部材5は例えば一部に粘着性を有する付箋であり、保護帯1の端部をフープ1の周面に仮止めする。図3の上側に示すように、フープ1は帯BLTの最端部(保護体4の端部)が仮止め部材5で仮止めされた状態で、収納装置Bに収納されており、その後、引出装置20へ搬送される。そして、引出装置20で図3の下側に示すように仮止め部材5がフープ1周面から剥がされ、帯BLTが引き出される。その後、処理装置Cへ搬送されることになる。
【0022】
心材2は、貫通孔2aを有する筒体であり、例えば、樹脂材料から形成される。心材2の一方側の端面には被保持部2bが形成されている。被保持部2bは搬送時にヘッドユニット12、32にて保持される部分である。本実施形態では、保持をより確実にするため、被保持部2bを先端側で大径で根元側で小径の円錐筒状、言い換えると被保持部2bの周面を根元側から先端側に向かってオーバハング状に形成している。
【0023】
<搬送ユニット>
次に、搬送ユニット10について説明する。搬送ユニット10の昇降機構13がヘッドユニット12の高さを調整し、ヘッドユニット12がフープ1を保持する。そして、走行ユニット11が走行することでフープ1を搬送する。更に、ヘッドユニット12がフープ1を搬送先において引出装置20、20に投入する。
【0024】
図4(A)〜(E)は搬送ユニット10の説明図であり、特に、ヘッドユニット12の説明図である。図4(A)は主にヘッドユニット12の側面図を、図4(B)はヘッドユニット12の平面図を、それぞれ示している。
【0025】
ヘッドユニット12は、ベース部(本体部)121、保持機構122、一対の伸縮機構123、123及びカバー部材124を備える。ベース部121はヘッドユニット12の骨格をなし、昇降機構13に搭載されている。ベース部121は、心材2の貫通孔2aに嵌合される支持ロッド121aを含む。
【0026】
保持機構122は、フープ1を保持する機構であり、円盤状のベース部122a、複数の保持爪122b及びアクチュエータ122cを備える。保持爪122bは本実施形態の場合、4つ設けられており、90°間隔で配置されている。アクチュエータ122cは例えばモータである。ベース部122aは、4つの保持爪122bをアクチュエータ122cの駆動力で同期的に開閉する開閉機構を内蔵している。保持爪122bの数は、2つ、3つ又は5つ以上でも良く、例えば3つの場合、120°の等間隔で配置される。
【0027】
各伸縮機構123は、ガイド部123a、可動部123b及びアクチュエータ123cを備える。ガイド部123aは前部及び側部が開放した箱状をなし、ベース部121に固定されている。可動部123bは後部及び側部が開放した箱状をなし、ガイド部123aの案内によってY方向に進退自在とされている。アクチュエータ123cは、例えば、電動シリンダであり、ガイド部123aと可動部123bとの間に介在している。アクチュエータ123cの伸縮動作により可動部123bが進退する構成である。
【0028】
ベース部122aは可動部123bに固定されている。一対の伸縮機構123、123は同期的に制御され、ベース部122aをY方向に平行移動させる。これにより保持機構122の全体がベース部121に対し平行移動することになる。
【0029】
カバー部材124は、前部及び後部の中央部が開放した円筒状をなしており、フープ1を収容可能な大きさを有している。カバー部材124は保持機構122のベース部122aに固定されており、保持機構122と共に伸縮機構123によって移動する。
【0030】
図4(C)〜(E)は走行ユニット10が収納装置Bからフープ1を取り出す動作例を示している。収納装置Bにおいてフープ1は、その心材2の貫通孔2aに水平軸6が嵌合して水平軸6に支持されている。
【0031】
走行ユニット10は、まず、図4(C)に示すようにヘッドユニット12がフープ1と同軸上で対面する位置に移動される。続いて図4(D)に示すように伸縮機構123、123を伸長させることで保持機構122が前進し、不示図のセンサが心材2の被保持部2bを検出し、前進位置において保持爪122bを閉じる。これにより、被保持部2bが保持爪122bに把持され、フープ1が保持機構122に保持された状態となる。このとき、フープ1の外周はカバー部材124で囲まれる。
【0032】
続いて図4(E)に示すように伸縮機構123、123を収縮して保持機構122を後退させる。これによりフープ1は、水平軸6から抜き出される。心材2の貫通孔2aには上述したベース部121の支持ロッド121aが嵌合した状態となる。以上により、フープ1が収納装置Bから取り出される。その後、搬送ユニット10は引出装置20へ移動して引出装置20にフープ1を搬出する。その際のヘッドユニット12の動作は、図4(C)〜図4(E)の取り出しの動作と逆の動作となる。
【0033】
<引出装置>
次に引出装置20について説明する。図5(A)は引出装置20の正面図、図5(B)は引出装置20の側面図である。引出装置20はフープ1から電極帯3を引き出す装置であるが、フープ1以外にも適用可能であり、心材に帯体を巻き回したもの全てに適用可能である。
【0034】
引出装置20は、回転機構21、移動機構22、引出機構23、観測機構24、移動機構25、テープ貼付機構26及びゴミ箱27を備え、これらがフレームFに支持されている。
【0035】
回転機構21は、回転軸211と回転軸211を回転させる駆動機構212とを備える。回転軸211はY方向に延びる水平軸であり、フープ1の心材2の貫通孔2aと嵌合する直径を有している。心材2の貫通孔2aと回転軸211とを嵌合することで心材2が回転軸211に保持され、したがってフープ1全体が回転軸211に支持される。なお、本実施形態では、貫通孔2aと回転軸211との嵌合で心材2を保持する構成としたが、心材2を把持する構成等、他の保持方式でも構わない。駆動機構212は、例えば、モータ等の駆動源と減速機とから構成される。駆動源の制御によって回転軸211の回転、停止及び回転速度を制御可能である。
【0036】
移動機構22は回転機構21をX方向に水平移動する機構であり、例えば、ボールねじ機構やベルト伝動機構、或いは、ラックピニオン機構から構成することができる。
【0037】
観測機構24は、センサユニット241と昇降機構242とを含む。センサユニット241にはセンサ243とエアノズル244とが設けられている。センサ243は例えばレーザ距離センサであり、X方向にレーザを照射してその反射光により対象物の位置(対象物までの距離)を計測する。エアノズル244には不図示のコンプレッサが接続され、エアを噴出する。エアの噴出は、電極帯3の引き出しの際、仮止め部材5の端部を立ち上げて保持しやすくする。詳細は後述する。昇降機構242は例えば電動シリンダであり、センサユニット241をZ方向に移動させる。
【0038】
図6(A)〜図8(B)は、回転機構21、移動機構22及び観測機構24の動作説明図である。これらの機構は、主に、フープ1の帯BLTの引き出し位置を調整する動作を行い、特に、引出機構23が帯BLTの端部(本実施形態の場合仮止め部材5)を保持する保持位置(端部保持位置)を調整する。以下、説明する。
【0039】
図6(A)はフープ1が引出装置20に搬送されてきた状態を示す。同図では搬送ユニット10の図示を省略しているが、既に説明したとおり、搬送ユニット10はフープ1収納装置Bから引出装置20に搬送する。そして、同図に示すように、搬送ユニット10は回転機構21の正面にフープ1を位置させ、図6(B)に示すように回転軸211に心材2の貫通孔2aを嵌合させ、フープ1を回転軸211に支持させる。
【0040】
次に、観測機構24は図6(C)に示すようにセンサ243の計測位置が、回転軸211の軸心と同じ高さhに位置するようにセンサユニット241を降下させる。続いてセンサ243の計測結果に基づき、フープ1の周面の水平方向端(本実施形態では正面視で右端)の位置を観測しながら(観測工程)、移動機構22を駆動し、回転機構21を水平移動する。図7(A)に示すように、フープ1の水平方向端が位置P1に合うように回転機構21は水平移動され、停止される。位置P1は引出機構23の端部保持位置(水平方向)である。
【0041】
回転機構21を水平移動することで、端部保持位置をフープ1の直径に関わらず、同じ位置とすることができる。図7(B)はその説明図である。破線はフープ1よりも直径が小さいフープ1’と、フープ1’の水平方向端を端部保持位置に合わせた状態での回転機構21の位置を示している。同図に示すように回転機構21を水平移動させることで、直径の異なるフープ1とフープ1’の水平方向端を同じ位置に位置させることができる。こうして、本実施形態では直径が異なるフープであっても、帯BLTを引き出す位置を同じにすることができる。
【0042】
次に、引出機構23が保持する仮止め部材5を位置P1に合わせる作業に移る。まず、駆動機構212を駆動して回転軸211を回転させる。すると、図8(A)に示すようにフープ1も回転する。フープ1の回転中、センサ243によりフープ1の周面を観測する(観測工程)。つまり、図7(A)の状態での観測はフープ1が静止状態であったが、今度はフープ1を回転させながらフープ1の周面における水平方向端の位置をセンサ243にて観測する。仮止め部材5が存在する部分では、フープ1の水平方向端の位置に変化が現れる。これをセンサ243で検出する。本実施形態ではセンサ243を仮止め部材5の検出用のセンサとしても活用している。
【0043】
センサ243の観測位置(図6(C)の高さh)で仮止め部材5が検出されると駆動機構212の駆動を停止する。これにより、仮止め部材5が位置P1に位置していることになる(図8(A))。
【0044】
このまま引出機構23により引出動作に移ることも可能であるが、フープ1は、一般には真円ではなく、心材2の中心が偏心している場合が多い。図8(A)の状態は、図7(A)の状態からフープ1を回転しているため、フープ1の偏心の影響で、仮止め部材5の実際の位置が位置P1からずれている場合がある。そこで、念のため、図8(B)に示すように、もう一度、センサ243の計測結果に基づき、フープ1の周面の水平方向端(仮止め部材5)の位置を観測しながら、移動機構22を駆動し、回転機構21を水平移動する。これにより、より確実に仮止め部材5を位置P1に位置させることができる。また、エアノズル244から仮止め部材5にエアを噴出してフープ1の周面から立ち上がらせ、捲っておく。これにより、仮止め部材5の保持が容易化する。
【0045】
次に、引出機構23及びその動作について説明する。まず、図5(A)及び(B)を参照して、引出機構23は引出開始機構23Aと引出継続機構23Bとを備える。引出開始機構23Aは仮止め部材5を保持して下方に引き下げる。引出継続機構23Bは引出開始機構23が下方に引き出した帯BLTを連続的に下方に引き出す。
【0046】
引出開始機構23Aは、保持ユニット231、移動機構232、スライダ233、レール部材234、昇降機構235、定滑車236、線材237、錘部材238を備える。保持ユニット231は、仮止め部材5を保持するユニットであり、本実施形態の場合、一対の爪部を開閉する爪開閉機構である。しかし、例えば、吸着により仮止め部材5を保持するユニットであってもよい。
【0047】
保持ユニット231は、その爪部が位置P1上に位置するように配置されるが、引出継続機構23Bの動作中は、移動機構232によって退避位置に移動される。
【0048】
移動機構232はX方向に保持ユニット231を移動する機構であり、例えば、電動シリンダから構成される。スライダ233はレール部材234の案内により上下に移動自在に設けられている。保持ユニット231と移動機構232とはスライダ233に搭載されている。
【0049】
レール部材234は上下方向に柱状に延設されており、スライダ233と係合してそのZ方向の移動を案内する。昇降機構235は保持ユニット231を上昇させる機構であり、例えば、電動シリンダである。定滑車236はレール部材234の頂部に回転自在に支持されている。錘部材238は、錘Wの搭載数を選択することでその総重量を任意に調整可能となっている。スライダ233と錘部材238は、スライダ233がレール部材234の正面側に、錘部材238がレール部材234の背面側に、それぞれ位置し、定滑車236に架け渡された線材237の各端部に接続されている。つまり、保持ユニット231と錘部材238は線材237で連結されている。
【0050】
次に、引出開始機構23Aによる引出開始動作について図9(A)〜図10(B)を参照して説明する。本実施形態では、保持ユニット231等の自重で帯BLTを引き出す構成としている。
【0051】
まず、図9(A)及び図9(B)に示すように観測機構24のセンサユニット241を上昇して退避させ、昇降機構235を駆動してスライダ233を上昇させる。錘部材238は降下することになる。保持ユニット231は、位置P1上を上昇し、やがて、仮止め部材5を保持可能な端部保持位置P2(高さ方向)に到達する。そこで、保持ユニット231の一対の爪部により仮止め部材5を保持する。続いて、昇降機構235及び回転機構21を駆動力を発揮しないフリーな状態とする。これにより、図10(A)及び図10(B)に示すように、フープ1は回転軸211に保持されたまま、自由回転可能な状態となり、また、保持ユニット231は、その自重(及びスライダ233並びに移動機構232の自重)で降下する(引出工程)。このとき、錘部材238は保持ユニット231が急激に降下しないようにするためのバランス錘として機能することになる。
【0052】
このようにして帯BLTを引き出すことで、比較的簡易に帯BLTの引き出しを行える。詳しく述べると、帯BLTの引き出し開始を、例えば、回転機構21によるフープ1の回転や、保持ユニット231の強制的な移動制御によって行おうとすると、その同調制御は必ずしも容易ではない。本実施形態のように、回転機構21が、保持ユニット231の自重で帯BLTが引き出されるよう、フープ1の回転を調整自在に保持することで、保持ユニット231等の自由落下という、物理の自然現象を利用することで、複雑な制御や機構を要せずに、帯BLTの引き出し開始を行える。
【0053】
なお、回転機構21は保持ユニット231等の自由落下を助成する方向(同図で言えば時計回り)に所定の回転速度で回転させてもよい。これにより、保持ユニット231等の自由落下及びその加速度による張力の変動を抑えながら引き出すことができる。
【0054】
このまま保持ユニット231を下方へ落下させれば、帯BLTを完全に引き出すことができるが、引き出す位置が徐々に変化してしまう。特に、図7(B)に示したように、直径が異なるフープ1で引き出された帯BLTが異なってしまうことになる。そこで、本実施形態では、帯BLTを所定量引き出すと、引き出しを一時中止する。帯BLTの引出中止は、回転機構21によりフープ1の回転をロックすることで行える。
【0055】
そして、移動機構25が帯BLTの位置を調整する。図11(A)〜図11(C)はその説明図である。
【0056】
移動機構25は、軸部材251、移動ユニット252及び移動ユニット253を備える。軸部材251はY方向に水平に延びる軸体であり、移動ユニット252に支持されている。移動ユニット252は軸部材251を支持するとともにX方向に移動させるユニットであり、例えば電動シリンダである。移動ユニット252はレール252a上でY方向に移動自在に設けられている。移動ユニット253は移動ユニット252をY方向に移動させるユニットであり、例えば電動シリンダである。なお、軸部材252を移動ユニット253に支持させ、移動ユニット252が移動ユニット253をX方向に移動する構成でもよい。
【0057】
軸部材251は、帯BLTの引出中止までは図11(A)に示すように、フープ1よりも後方に待機している。そして、移動ユニット253を駆動して移動ユニット252をY方向に前進させる。これにより図11(B)に示すように軸部材251が帯BLTの端部とフープ1の周面との隙間領域S(図10(A)、図11(C)参照)に進出する(軸部材移動工程)。続いて、図11(C)に示すように移動ユニット252を駆動して軸部材251をX方向(帯BLTをフープ1から遠ざける方向)に移動する。
【0058】
軸部材251を進出させる際に、最初から図11(C)の位置に進出させることも不可能ではない。しかし、軸部材251が帯BLTと干渉する場合がある。そこで、フープ1側に軸部材251を進出させたのち、X方向に移動している。
【0059】
軸部材251が同じ位置に位置することで、直径が異なるフープ1を取り扱う場合であっても、帯BLTが引き出される位置を常に一定にすることができる。また、帯BLTに適度な張力を付与することができる。
【0060】
さて、本実施形態では図11(C)に示すように、移動機構22によって回転機構21もX方向に水平移動させる。この移動方向は、軸部材251から遠ざかる方向である。これにより、フープ1が軸部材251から離間する方向にフープ1を水平移動される(水平移動工程)。これにより、帯BLTに、より適切な張力を付与することができる。その後、再び、回転機構21を駆動力を発揮しないフリーな状態とする。これにより、フープ1は回転軸211に保持されたまま、自由回転可能な状態となり、また、保持ユニット231は、その自重で降下する。なお、既に述べたとおり、回転機構21は保持ユニット231等の自由落下を助成する方向に所定の回転速度で回転させてもよい。
【0061】
最終的に図12(A)の位置まで降下して、帯BLTの初期の引き出しが完了する。保持ユニット231は仮止め部材5の保持を解除する。続いて、引出継続機構23Bによる帯BLTの引き出しを開始する。
【0062】
図12(A)及び図12(B)を参照して、引出継続機構23Bはベース部2311、センサ2312、切断機構2313、挟持機構2314、一対の送出ローラ2315、及び、移動機構2316を備える。
【0063】
ベース部2311はセンサ2312、切断機構2313、挟持機構2314及び一対の送出ローラ2315をその正面に支持するとともに、これらの駆動機構等を内蔵している。ベース部2311はレール2311a上をY方向に移動可能である。
【0064】
センサ2312は帯BLTのブランク3aを検出するセンサである。
【0065】
切断機構2313はX方向に開閉する一対のカッタ刃を備え、センサ2312の検出結果に基づいて、ブランク3aの箇所で帯BLTを切断する。挟持機構2314はX方向に開閉する一対の挟持部を備える。一対の送出ローラ2315は帯BLTを挟持搬送可能な圧着位置と、互いに分離した分離位置とでX方向に開閉する。図12(A)の状態では、切断機構2313、挟持機構2314及び一対の送出ローラ2315はいずれも開状態にある。移動機構2316は例えば電動シリンダであり、ベース部2311をY方向に進退させる。
【0066】
図12(B)に示すように、引出開始機構23Aによる引出開始動作中は、ベース部2311が後方に待機した状態にある。そして、引出開始機構23Aによる引出動作が完了し、保持ユニット231がベース部2311よりも下方に到達すると図12(C)に示すように移動機構2316を駆動して、ベース部2311を前進させる。
【0067】
ベース部2311を前進させる際、切断機構2313、挟持機構2314及び一対の送出ローラ2315は開状態にあり、ベース部2311を前進させると帯BLTは開状態にある切断機構2313の一対のカッタ刃の間、開状態にある挟持機構2314の一対の挟持部の間、及び、開状態(分離位置)にある一対の送出ローラ2315の間、を通過するように引き出された状態にある。換言すると、引出開始機構23Aによる引き出しとベース部2311よりも上方に位置する軸部材251による帯BLTの通過位置調整によって、帯BLTを挟んで両側に、引出継続機構23Bにおける一対の送出ローラ2315等が位置するように設定される。
【0068】
次に、図13(A)に示すように分離位置にある一対の送出ローラ2315を圧着位置に移動し、一対の送出ローラ2315で帯BLTを挟持する。同時に、移動機構232を駆動して、帯BLTと干渉しないように保持ユニット231を退避させる。続いて、図13(B)に示すように一対の送出ローラ2315を回転することで帯BLTを連続的に下方に搬送する(引き出す)。帯BLTはゴミ箱27内へ順次送り出されていくことになる。このとき、回転機構21はフープ1を回転駆動させてもよいし、回転自由な状態としてもよい。
【0069】
センサ2312で帯BLTのブランク3aが検出されると、図14(A)に示すように、一対の送出ローラ2315が圧着位置のまま、回転を停止し、挟持機構2314が閉状態とされ、帯BLTを挟持する。その後、搬送ロボット30がフープ1を受け取りに来るために、引出装置20側に移動する。
【0070】
搬送ロボット30が到着し、帯BLTを搬送ロボット30の保持部3252a(後述する)で挟んだ後、切断機構2313が帯BLTをブランク3aの部分で切断する。帯BLTは、保護帯4を含むブランク3aよりも先の部分がゴミ箱27内に落下する。その後、搬送ロボット30はフープ1を引出装置20から抜き出すことになる。切断機構2313を切断位置の後方で待機させておき、切断時のみ、前方に移動させて切断するようにしても良い。
【0071】
最後に、引出装置20のテープ貼付機構26について図15(A)及び図15(B)を参照して説明する。テープ貼付機構26は搬送ロボット30が抜き出したフープ1の帯BLTの切断端周辺にテープを貼り付ける機構である。このテープは、処理装置Cにおいて処理中の電極帯3に、搬送ロボット30が搬送してきた新しいフープ1の帯BLTを接続するために用いるものである。
【0072】
テープ貼付機構26は、テープ準備装置261と、吸着ユニット262と、移動機構263とを備える。テープ準備装置261は所定長さの粘着テープTを準備する。吸着ユニット262はテープ準備装置261が準備した粘着テープの表面(非粘着面)を吸着保持する。移動機構263は吸着ユニット262をY方向及びZ方向に移動可能であり、吸着ユニット262を移動して、引出装置20の正面で待機している搬送ロボット30が保持しているフープ1の帯BLT端部に粘着テープを貼り付ける。その際、搬送ロボット30が備える反力軸3254(後述する)で反力を取りながら粘着テープを貼り付けることが可能である。
【0073】
<搬送ロボット>
図16を参照して搬送ロボット30について説明する。同図は搬送ロボット30の一姿勢を示す図である。既に図1を参照して説明したとおり、搬送ロボット30は、レールRL2上を走行する走行ユニット31、フープ1を保持するヘッドユニット32、走行ユニット11に搭載されヘッドユニット32を3次元的に移動するロボット本体部33、及び、カバー部材34を備える。走行ユニット31は、例えば、モータを駆動源としたボールねじ機構、ベルト伝動機構、或いは、ラック−ピニオン機構を駆動機構として備えて走行する。
【0074】
ロボット本体部33は、ベース部331、旋回部332、アーム部333〜336を備える多関節アームを構成している。ベース部331は走行ユニット31に搭載されている。旋回部332はZ方向の軸L1周りにベース部331に対して旋回自在にベース部331に搭載されている。
【0075】
アーム部333は旋回部332に対して同図の姿勢でY方向の軸L2周りに旋回部332に対して回動自在に旋回部332に支持されている。アーム部334はアーム部333に対して同図の姿勢でY方向の軸L3周りに回動自在にアーム部333に支持されている。アーム部335はアーム部334に対して同図の姿勢でX方向の軸L4周りに回転自在にアーム部334に支持されている。アーム部336はアーム部335に対して同図の姿勢でY方向の軸L5周りに回動自在にアーム部材335に支持されている。このようにロボット本体部33は5軸のロボットとされている。
【0076】
ヘッドユニット32はアーム部336に装着されており、走行ユニット31やロボット本体部33によって3次元的に移動される。
【0077】
図17(A)〜(C)はヘッドユニット32の説明図であり、順に、ヘッドユニット32の正面図、平面図、側面図である。なお、同図におけるX、Y、Zの各方向は図16の姿勢におけるヘッドユニット32の向きを基準としている。
【0078】
ヘッドユニット32は、搬送ユニット10のヘッドユニット12と基本的構成を共通とするが、更に、多機能化されている。
【0079】
ヘッドユニット32は、ベース部(本体部)321、保持機構322、一対の伸縮機構323、323、カバー部材324、保持ユニット325、及び、心材取出機構328を備える。ベース部321はヘッドユニット32の骨格をなし、アーム部336に取り付けられている。ベース部321は、心材2の貫通孔2aに嵌合する支持ロッド321aを含む。
【0080】
保持機構322は、フープ1を保持する機構であり、円盤状のベース部322a、複数の保持爪322b及びアクチュエータ322cを備える。保持爪322bは本実施形態の場合、4つ設けられており、90°間隔で配置されている。アクチュエータ322cは例えばモータである。ベース部322aは、4つの保持爪322bをアクチュエータ322cの駆動力で同期的に開閉する開閉機構を内蔵している。保持爪322bの数は、2つ、3つ又は5つ以上でも良く、例えば3つの場合、120°の等間隔で配置される。
【0081】
各伸縮機構323は、ガイド部323a、可動部323b及びアクチュエータ323cを備える。ガイド部323aは前部及び側部が開放した箱状をなし、ベース部321に固定されている。可動部323bは後部及び側部が開放した箱状をなし、ガイド部323aの案内によってX方向に進退自在とされている。アクチュエータ323cは、例えば、電動シリンダであり、ガイド部323aと可動部323bとの間に介在している。アクチュエータ323cの伸縮動作により可動部323bが進退する構成である。
【0082】
ベース部322aは可動部323bに固定されている。一対の伸縮機構323、323は同期的に制御され、ベース部322aを平行移動させる。これにより保持機構322全体がベース部321に対し平行移動することになる。
【0083】
カバー部材324は、前部及び後部の中央部が開放した円筒状をなしており、フープ1を収容可能な大きさを有している。カバー部材324は保持機構322のベース部322aに固定されており、保持機構322と共に伸縮機構323によって移動する。
【0084】
カバー部材324の周縁の一部には切欠き324aが形成され、そこに保持ユニット325が配置されている。保持ユニット325はツールチェンジャ326及び支持部材327を介してベース部321に支持されている。
【0085】
保持ユニット325は、ベース部3251、保持機構3252、張力調整機構3253及び反力軸3254を備える。ベース部3251は保持機構3252、張力調整機構3253及び反力軸3254を支持すると共にツールチェンジャ326に脱着される部分である。保持機構3252は、一対の保持部3252aを開閉するアクチュエータを備え、フープ1から引き出された電極帯3を一対の保持部3252aで挟持して保持する。張力調整機構3253は、軸3253aをY−Z平面上に移動させるアクチュエータを備え、フープ1から引き出された電極帯3に軸3253aを当接し、電極帯3の張力を調整する。反力軸3254は、すでに説明したとおり、テープ貼付機構26により帯BLTの端部にテープTを貼り付ける際に、吸着ユニット262の押圧反力を受ける。
【0086】
図18(A)〜図19(B)はヘッドユニット32が引出装置20からフープ1を取り出す動作例を示している。フープ1の取り出し方自体は走行ユニット10のヘッドユニット12と同様である。ただし、引出装置20によってフープ1は帯BLT(電極帯3)が引き出された状態にあり、保持ユニット325で帯BLTを保持する点が異なっている。
【0087】
まず、図18(A)に示すように、ヘッドユニット32がフープ1と同軸上で対面する位置に移動される。このとき、引出装置20は上述した図14(A)の状態にある。そこで、引き出された帯BLTと保持機構3252との位置が合うようにヘッドユニット32の向きが予め定めた向きとされる。
【0088】
続いて伸縮機構323、323を伸長して保持機構322を前進させ、保持爪322bを閉じる。これにより、被保持部2bが保持爪322bに把持され、フープ1が保持機構322に保持された状態となる。このとき、フープ1の外周はカバー部材324で囲まれる。また、引き出された帯BLTが保持機構3252の一対の保持部3252a間に介在する状態となる。図18(B)はこの状態を示している。そこで、図19(A)及び図19(B)に示すように一対の保持部3252aを閉状態として帯BLTを挟持する。引出装置20側では切断機構2313により帯BLTの切断が行われる(図14(B))。
【0089】
また、張力調整機構3253が軸3253aを移動して帯BLTに軸3253aを当接させる。これにより帯BLTに適度な張力が付与される。軸3253aの移動に合わせて、引出装置20の移動ユニット252を駆動して軸部材251をフープ1側に移動し、更に、移動ユニット253を駆動して移動ユニット252(及び軸部材251)を後退する。これにより、帯BLTの張力調整の役割を引出装置20側から搬送ロボット30側にスムーズに移行できる。
【0090】
この後、伸縮機構323、323を収縮して保持機構322を後退させる。これによりフープ1は、回転軸211から抜き出される。心材2の貫通孔2aは上述したベース部321の支持ロッド321aが嵌合された状態となる。続いて、ヘッドユニット32はテープ貼付機構26によるテープTの貼付位置に移動され、帯BLTの端部にテープTが貼付されることになる。
【0091】
以上により、フープ1が、帯BLTが引き出された状態で、引出装置20から取り出される。その後、搬送ロボット30は処理装置Cへ移動して処理装置Cにフープ1を投入する。移動の際、フープ1の周面には電極帯3が露出しているので、走行ユニット10によるフープ1の搬送時と比較して、粉塵が付着するおそれが高くなる。
【0092】
そこで、カバー部材324だけではなく走行ユニット31に搭載したカバー部材34でフープ1を囲包する。図20(A)は、搬送ロボット30の移動時の姿勢を示し、図20(B)は図20(A)のI−I線に沿う断面図である。カバー部材34は、その背面側にヘッドユニット32のカバー部材324周辺を格納可能な凹部34aを有している。凹部34aはカバー部材324及び保持ユニット325を囲包している。このようにフープ1及び引き出された電極帯3がカバー部材34に格納された状態を維持しつつ、搬送ロボット30が処理装置C側へ移動することで、電極帯3に対する粉塵の接触を抑制した状態でフープ1を搬送し、処理装置Cに供給する。
【0093】
次に、搬送ロボット30が処理装置Cに到達すると、ヘッドユニット32から処理装置Cへフープ1が投入される。その際の動作は取り出しの動作と逆の動作となることは走行ユニット10について説明したとおりである。その際、フープ1全体だけでなく引き出した電極帯3も処理装置Cに渡すことが可能である。
【0094】
一方、処理装置Cには、電極帯3が全て引き出されて処理され、心材2のみが残存している場合がある。そこで、心材2を心材取出機構328で取り出すことができる。図21(A)〜図21(C)を参照して心材取出機構328について説明する。
【0095】
心材取出機構328は、保持ユニット3281と、伸縮機構3282、3283と、を備え、支持部材329を介してベース部321に支持されている。保持ユニット3281は4本の保持棒3281aを開閉させるユニットである。伸縮機構3282は保持ユニット3281をX方向に往復移動させ、伸縮機構3283は伸縮機構3282をY方向に往復移動させる。
【0096】
伸縮機構3282、3283は、伸縮機構323と同様の構成であり、ガイド部3282a、3283a、可動部3282b、3283b及びアクチュエータ3282c、3283cを備える。そして、アクチュエータ3282c、3283cの伸縮動作により可動部3282b、3283bが進退する構成である。
【0097】
保持ユニット3281は可動部3282bに固定され、ガイド部3282aは可動部3283bに固定されている。そして、ガイド部3283bは支持部材329に固定されている。
【0098】
伸縮機構3282、3283は通常時は収縮状態にあり、保持ユニット3281はカバー部材324の背後に隠れている。心材2を取り出す場合、図22(A)に示すように、伸縮機構3283が伸長して伸縮機構3282と保持ユニット3281がカバー部材324の背後から側方(図22(A)中では右方)へ進出する。更に、図22(B)に示すように伸縮機構3282が伸長して保持ユニット3281がカバー部材324よりも前方(図22(B)中では左方)に進出することになる。
【0099】
保持ユニット3281の4本の保持棒3281aは、図22(C)に示すように、その開状態において心材2を囲包可能であり、その閉状態において心材2を挟持して保持する。
【0100】
図23(A)〜(C)は心材取出機構328が処理装置Cから心材2を取り出す動作例を示している。処理装置Cにおいて心材2は、その貫通孔2aに水平軸7が嵌合して水平軸7に支持されている。なお、水平軸7は回転自在に支持されている。
【0101】
心材取出機構328は、まず、図22(A)を参照して説明したように、伸縮機構3283が伸長して伸縮機構3282と保持ユニット3281がカバー部材324の背後から側方へ出没した状態とされる。そして、図23(A)に示すように保持ユニット3281が心材2と同軸上で対面する位置にヘッドユニット32が移動される。
【0102】
続いて図23(B)に示すように伸縮機構3282が伸長して保持ユニット3281を前進させる。これにより、4本の保持棒3281aが心材2の周囲を囲包する。保持棒3281aを閉状態とすると心材2が保持ユニット3281に保持される。
【0103】
続いて伸縮機構3282を収縮し、更に、伸縮機構3283も伸縮すると、心材2をカバー部材324の背後に位置させることができる。
【0104】
水平軸7は空きの状態となるので、ヘッドユニット32が保持している新たなフープ1を支持させる(セットする)ことができる。そこで、図23(D)に示すように水平軸7とフープ1が同軸上に位置するようにヘッドユニット32を移動する。ヘッドユニット32からフープ1を水平軸7へ搬出すると、一単位のフープ1の搬送が完了する。
【0105】
その後、搬送ロボット30は引出装置20に戻って新たなフープ1の搬送を行うが、電極帯3の極が異なる場合には保持ユニット325を交換する。保持ユニット325は電極帯3に接触しているため、異極間で同じ保持ユニット325を用いることは、陽極と陰極とで電極帯3の構成材料が接触することになり好ましくない。
【0106】
本実施形態の場合、保持ユニット325はツールチェンジャ326を介してベース部321に支持されているため、その交換が可能である。図24(A)は保持ユニット325の脱着態様を示している。同図に示すように、ツールチェンジャ326とベース部3251とを切り離すことで、保持ユニット325を取り外すことができ、ベース部3251に別の保持ユニット325を装着することで保持ユニット325の交換が可能である。
【0107】
既に述べたように、準備装置40は2つ設けられており、一方が陽極フープ用、他方が陰極フープ用とされる。準備装置40には、保持ユニット325の載置部が設けられており、一方の準備装置40には陽極用の保持ユニット325が、他方の準備装置40には陰極用の保持ユニット325が、それぞれ載置されている。準備装置40は搬送ロボット30の走行ユニット31の走行経路(レールRL2)に沿った位置に配設されているので、準備装置40を経由することで搬送ロボット30は保持ユニット325を交換できる。
【0108】
図24(B)は準備装置40の平面図であり、準備装置40の天井部分には内部空間と連通した開口部41が形成されていると共にその近傍に保持ユニット325の載置部42が形成されている。図24(C)は保持ユニット325の正面の輪郭を開口部41に重ねた図であり、開口部41はヘッドユニット32を挿入可能な大きさを有すると共に、保持ユニット325のベース部3251と重なるように載置部42が配設されている。
【0109】
図25(A)〜図25(C)は準備装置40における保持ユニット325の交換態様を示している。ヘッドユニット32はその正面部分を下方に向けて準備装置40へ降下される。図25(A)に示すように、ヘッドユニット32は開口部41から準備装置40内に進入すると共に、保持ユニット325のベース部3251が載置部42に着座する。
【0110】
開口部41内には洗浄機構43が配設されている。洗浄機構43は本実施形態の場合、エアや洗浄液といった流体を噴出するノズルであり、図25(B)に示すように、カバー部材324内部にこの流体を吹き付ける。これによりヘッドユニット32の内側、つまり、フープ1を保持する部分が洗浄される。なお、準備装置40の内部空間を外部の吸引装置と連通させて排気することで、準備装置40内に粉塵等が残留することを防止できる。
【0111】
洗浄が完了すると、ツールチェンジャ326が駆動し、ヘッドユニット32から保持ユニット325を分離する。そして、図25(C)に示すようにヘッドユニット32を上昇させる。この後、ヘッドユニット32はもう一方の準備装置40に移動して、先ほど切り離した保持ユニット325とは異極の電極帯3用の保持ユニット325をヘッドユニット32に装着し、フープ1の搬送作業を行うことになる。
【0112】
このように搬送ロボット30は電極帯3の端部を処理装置C側へ渡すことができ、かつ、陽極構成材料と陰極構成材料との接触を回避しつつ、フープ1の搬送を行うことができる。
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