【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、挿通孔を有する筒状の本体ゴム弾性体を備えていると共に、該本体ゴム弾性体が周上の一部で周方向に分断されており、該本体ゴム弾性体の分断部からスタビライザバーが該挿通孔に挿入されると共に、該本体ゴム弾性体の外周面が車両ボデー側に取り付けられることにより、該スタビライザバーを該車両ボデーに弾性支持せしめるようにされたスタビライザブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の前記挿通孔に対する前記スタビライザバーの挿通によって該本体ゴム弾性体が軸直角方向に予圧縮されるようになっていると共に、該挿通孔の内径寸法が軸方向両端部分において軸方向中間部分よりも小さくされている一方、該本体ゴム弾性体の該挿通孔には軸直角方向で対向して内方に突出する一対の突起部が該本体ゴム弾性体の前記分断部を周方向に外れて形成されており、該突起部が周方向に所定幅をもって軸方向に連続して延びていると共に、該突起部の周方向両端には該挿通孔の内周面から内周側に立ち上がる段差が形成されて
おり、且つ、該本体ゴム弾性体の該挿通孔の内径が、該突起部の形成部位と該突起部を外れた部位とを含む全周に亘って該スタビライザバーの外径よりも小さくされて、該挿通孔の内周面の全体が該スタビライザバーの外周面に当接されて予圧縮されるようになっていると共に、該スタビライザバーの該挿通孔への挿通による該本体ゴム弾性体の圧縮率が、該一対の突起部の形成部分において該一対の突起部を外れた部分よりも20%〜30%大きく設定されていることを、特徴とする。
【0010】
このような第一の態様に従う構造とされたスタビライザブッシュによれば、本体ゴム弾性体の挿通孔内に突出する一対の突起部が形成されていることから、それら一対の突起部の対向方向において本体ゴム弾性体の予圧縮量が周上で部分的に大きくされる。それ故、一対の突起部が対向配置される特定の軸直角方向において、予圧縮による大きなばね定数を設定することができる。
【0011】
しかも、一対の突起部の各周方向両端には挿通孔の内周面から内周側に立ち上がる段差が形成されており、一対の突起部が形成された部分と、それら一対の突起部を周方向に外れた部分とにおいて、本体ゴム弾性体の予圧縮量が大きく異なるようになっている。それ故、一対の突起部が形成される特定の軸直角方向でばね定数を大きく設定しつつ、他の方向ではばね定数を小さく設定することが可能であり、要求特性に応じたばね比を容易に得ることができる。
【0012】
加えて、挿通孔の内径寸法が軸方向両端部分において軸方向中間部分よりも小さくされていることにより、軸方向両端部分が大きく予圧縮されて、挿通孔の内周面とスタビライザバーの外周面との間に外部から異物が侵入するのを防ぐことができると共に、軸方向中間部分の圧縮量を調節することで、ばね特性を適切に調節することができる。特に、一対の突起部が形成される方向において、軸方向全長に亘って略一定の大きな圧縮量を確保しようとすると、スタビライザバーを挿通孔に嵌め入れ難くなるおそれがあるが、挿通孔の軸方向中間部分が軸方向両端部分よりも大径とされて、本体ゴム弾性体の圧縮量が軸方向中間部分で低減されることによって、必要なばねを確保しながら充分な組付け易さも実現することができる。
さらに、本態様では、一対の突起部の形成方向で本体ゴム弾性体のばね定数が適切に調節されることから、一対の突起部の形成方向と他の方向との間で充分に大きなばね比を得ることができると共に、ばねが硬すぎることによってスタビライザバーを挿通孔に組み付け難くなる等の不具合を回避することもできる。
【0013】
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の内径寸法が、前記一対の突起部を外れた部位の軸方向両端部分において該一対の突起部の形成部位における軸方向中間部分よりも大きくされているものである。
【0014】
第二の態様によれば、一対の突起部が形成された部分の全体が、一対の突起部を外れた部分に対して大きく圧縮されることから、一対の突起部が形成された特定の軸直角方向において、他の方向よりも充分に硬いばねを実現して、要求特性に応じたばね比を有利に実現することができる。
【0015】
本発明の第三の態様は、第一又は第二の態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の内径寸法が、軸方向両端部分の所定長さに亘って一定とされているものである。
【0016】
第三の態様によれば、本体ゴム弾性体の軸方向両端部分が所定長さに亘ってスタビライザバーに押し当てられることから、異物の侵入が問題になり易い軸方向両端部分においてシール性が確保されると共に、シール部分がある程度の長さで設けられることで、スタビライザバーのこじり変位等に対しても、シール性が保持される。
【0017】
本発明の第四の態様は、第一〜第三の何れか1つの態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記突起部の突出寸法が周方向で一定とされているものである。
【0018】
第四の態様によれば、一対の突起部の形成部分において周上で略一定の圧縮量が確保されて、目的とするばね定数を容易且つ高度に設定することができる。更に、突起部の全体が略一様に圧縮されることで、予圧縮による応力が分散されて、耐久性の向上も図られ得る。
【0019】
本発明の第五の態様は、第一〜第四の何れか1つの態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記突
起部の周方向幅寸法:bが、前記スタビライザバーの直径:Dに対して、0.5D<b<0.9Dの範囲に設定されているものである。
【0020】
第五の態様によれば、スタビライザバーの挿通孔への装着時に、一対の突
起部が倒れ変形等の歪な変形を生じることなく突出方向に安定して圧縮されると共に、一対の突
起部が形成された特定方向のばね定数を選択的に高めて、ばね比のチューニング自由度を有利に得ることができる。
【0023】
本発明の第
六の態様は、第一〜第
五の何れか1つの態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の径方向中間部分には周方向に延びる中間板が固着されており、該本体ゴム弾性体の軸方向両端部における該中間板の内周側には、軸方向端面に開口する複数の肉抜凹部が形成されているものである。
【0024】
第
六の態様によれば、肉抜凹部の形成部分において本体ゴム弾性体の軸方向長さが実質的に小さくなることから、ねじり方向のばね定数が小さくなって、スタビライザバーのねじりに対する本体ゴム弾性体の追従性が高められる。それ故、スタビライザバーのねじりに対して、スティックスリップ等に起因する異音を低減することができる。
【0025】
しかも、肉抜凹部は、本体ゴム弾性体に対して、中間板の内周側において形成されていると共に、軸方向中間部分よりも内径が小さく厚肉とされた軸方向両端部分に形成されている。これにより、本体ゴム弾性体の軸方向両端部分における変形剛性が適切に低減されて、スタビライザバーと本体ゴム弾性体の間のシール性を確保しながら、スタビライザバーの挿通孔への挿通を容易に行うことができる。加えて、本体ゴム弾性体において肉抜凹部の内周側でスタビライザバーの外周面に重ね合わされる部分は、肉抜凹部によって変形を許容され易くなっていることから、スタビライザバーの外周面への弾性的な密着を充分に実現しながら、スタビライザバーのこじり等の変位に対する追従性が向上して、異物の侵入をより効果的に防ぐことができる。
【0026】
本発明の第
七の態様は、第
六の態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記肉抜凹部が前記中間板の内周面に隣接して形成されているものである。
【0027】
第
七の態様によれば、本体ゴム弾性体において中間板で拘束される部分が小さくなって、ねじり方向のばねをより小さく設定することができることから、スタビライザバーのねじりに対する追従性が向上して、スティックスリップ等に起因する異音を防ぐことができる。
【0028】
本発明の第
八の態様は、第
六又は第
七の態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記突起部の突出方向に延びる弾性主軸上を周方向に外れた位置に前記肉抜凹部が形成されているものである。
【0029】
第
八の態様によれば、一対の突起部の圧縮量が肉抜凹部の形成によって低減されるのを抑えて、一対の突起部の形成部分において予圧縮による高いばね定数を設定することができる。
【0030】
本発明の第
九の態様は、第
六〜第
八の何れか1つの態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、前記本体ゴム弾性体の前記分断部を周方向に外れた位置に前記肉抜凹部が形成されているものである。
【0031】
第
九の態様によれば、分断部における本体ゴム弾性体の変形剛性が肉抜凹部の形成によって低下するのを防いで、本体ゴム弾性体の分断部における歪な変形や、装着状態における分断部の隙間の形成等が回避される。
【0032】
本発明の第
十の態様は、第
六〜第
九の何れか1つの態様に記載されたスタビライザブッシュにおいて、複数の前記肉抜凹部が互いに同じ形状とされていると共に、該肉抜凹部が前記本体ゴム弾性体の周上で等間隔に配置されているものである。
【0033】
第
十の態様によれば、軸方向およびねじり方向のばね定数が肉抜凹
部の形成によって周上でばらつくのを防いで、目的とするばね特性を容易に且つ精度良く設定することができる。