(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、安全性に優れかつ環境に配慮されているとともに、優れた抗菌性能を発揮し得る抗菌性組成物およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トチュウ由来のバイオポリマーを有効成分として含有する、抗菌性組成物である。
【0008】
1つの実施態様では、上記トチュウ由来のバイオポリマーは、1×10
3から5×10
6の重量平均分子量を有する。
【0009】
1つの実施態様では、上記トチュウ由来のバイオポリマーは、トチュウを生物学的に腐朽させてトチュウ分解産物を得、かつ該トチュウ分解産物を洗浄することにより得られたエラストマーである。
【0010】
さらなる実施態様では、上記洗浄は高圧水洗である。
【0011】
さらなる実施態様では、上記トチュウ由来のバイオポリマーは、上記エラストマーを有機溶媒で抽出した溶媒改質物である。
【0012】
さらなる実施態様では、上記トチュウ由来のバイオポリマーは、上記エラストマーまたは上記溶媒改質物を、75℃から130℃にて5分以上加熱して得られた加熱改質物である。
【0013】
さらなる実施態様では、上記トチュウは、トチュウの種子、果皮、葉、樹皮、および根からなる群から選択される少なくとも1つの部位である。
【0014】
1つの実施態様では、本発明の抗菌性組成物は、グラム陰性菌、グラム陽性菌または真菌に対する抗菌作用を有する。
【0015】
本発明はまた、抗菌性組成物の製造方法であって、
トチュウを生物学的に腐朽させてトチュウ分解産物を得る工程、および
該トチュウ分解産物を洗浄する工程
を包含する、方法である。
【0016】
1つの実施態様では、上記洗浄は高圧水洗である。
【0017】
さらなる実施態様では、さらに、上記トチュウ分解産物を洗浄して得たエラストマーを、有機溶媒で抽出して溶媒改質物を得る工程を包含する。
【0018】
さらなる実施態様では、さらに、上記トチュウ分解産物を洗浄して得たエラストマーまたは上記溶媒改質物を、75℃から130℃にて5分以上加熱して加熱改質物を得る工程を包含する。
【0019】
1つの実施態様では、上記トチュウは、トチュウの種子、果皮、葉、樹皮、および根からなる群から選択される少なくとも1つの部位である。
【0020】
本発明はまた、抗菌性組成物の製造方法であって、トチュウを有機溶媒で抽出してトチュウ抽出物を得る工程を包含する、方法である。
【0021】
1つの実施態様では、上記有機溶媒は、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、石油エーテル、石油ベンジンおよびテトラヒドロフランからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒である。
【0022】
1つの実施態様では、上記製造方法は、さらに上記トチュウ抽出物を75℃から130℃にて5分以上加熱して加熱改質物を得る工程を包含する。
【0023】
1つの実施態様では、上記トチュウは、トチュウの種子、果皮、葉、樹皮、および根からなる群から選択される少なくとも1つの部位である。
【0024】
本発明はまた、上記抗菌性組成物を用いて成形された抗菌性を有する樹脂成形体である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、優れた抗菌性能を発揮するとともに、ヒトへの安全性に優れ、かつ製造および廃棄の際の環境負荷を低減することができる。さらに、本発明によれば、抗菌性組成物を簡便に製造することができる。さらに、本発明の抗菌性組成物の製造には大型設備を必要としないので、例えば、トチュウの原木を栽培する山間部での製造も可能である。さらに、本発明の抗菌性組成物は有効成分であるトチュウ由来のバイオポリマーのエラストマーとしての性質を活かして種々の工業製品に応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の抗菌性組成物は、トチュウ由来のバイオポリマーを有効成分として含有する。
【0028】
本発明におけるトチュウ由来のバイオポリマーとは、トチュウから得ることのできるエラストマーを言う。本発明において、トチュウ由来のバイオポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1×10
3〜5×10
6、より好ましくは1×10
4〜5×10
6、さらにより好ましくは1×10
5〜5×10
6である。このような高分子量を有するバイオポリマーは、固形のエラストマー特性を有し、工業原料として種々の樹脂成形に応用することができる。特に高圧洗浄により得られるバイオポリマーは、繊維状の形態であり、繊維の融合箇所が存在する。
【0029】
本発明におけるトチュウ由来のバイオポリマーは、例えば、トチュウを生物学的に腐朽させてトチュウ分解産物を得、かつこのトチュウ分解産物を洗浄することにより得ることができる。
【0030】
本発明におけるトチュウ由来のバイオポリマーは、トランス型ポリイソプレノイドを主成分として含有する。このトランス型ポリイソプレノイドは、従来の溶媒抽出法によって得られるトチュウゴムに比べて高分子量である。
【0031】
トチュウ由来のバイオポリマーを得るために用いられるトチュウ(Eucommia ulmoides O.)は、木本性の蕎木である。トチュウは、植物体の全草にトランス型ポリイソプレノイドを含んでおり、いずれの部位を用いてもよい。トランス型ポリイソプレノイドを多く含む点で、トチュウの種子、果皮(それぞれ約20重量%以上含有)、樹皮(12重量%以上)、根(約3重量%)および葉(約3重量%)が好適に用いられる。より好ましくは種子および果皮である。トチュウは、生のまま用いてもよいし、乾燥物などの加工物を用いてもよい。特にトチュウの種子および果皮として、トチュウの搾油残物を用いることが可能であり、このことは、廃棄物の有効利用の観点から好適である。
【0032】
本発明の抗菌性組成物は、全体重量を基準として、上記トチュウ由来のバイオポリマーを例えば、10重量%以上、好ましくは30重量%〜100重量%、より好ましくは50重量%〜100重量%含有する。
【0033】
本発明の抗菌性組成物は、上記トチュウ由来のバイオポリマー以外に他のポリマー(例えば、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、フェノール樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、および/またはポリアミド)および/または他の添加剤を含有していてもよい。このような他の添加剤の例としては、着色剤、難燃剤、滑剤、充填剤、および展着剤、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0034】
着色剤としては、例えば、ペリレン系染料、クマリン系染料、チオインジゴ系染料、アンスラキノン系染料、チオキサントン系染料、紺青等のフェロシアン化物、ペリノン系染料、キノリン系染料、キナクリドン系染料、ジオキサジン系染料、イソインドリノン系染料、フタロシアニン系染料等の有機系色剤、およびカーボンブラック、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールAオリゴマーなどの臭素系難燃剤、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェートなどのモノリン酸エステル類、ビスフェノールAジホスフェート、レゾルシンジホスフェート、テトラキシレニルレゾルシンジホスフェートなどオリゴマータイプの縮合リン酸エステル類、ポリリン酸アンモニウムおよび赤燐などのリン系難燃剤、各種シリコーン系難燃剤が挙げられる。難燃性を一層向上させるために、芳香族スルホン酸の金属塩、パーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩を含有させてもよい。
【0036】
滑剤の例としては、パラフィンワックス、n−ブチルステアレート、合成蜜蝋、天然蜜蝋、グリセリンモノエステル、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、およびペンタエリスリトールテトラステアレート、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
充填剤の例としては、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、ガラス繊維、ガラス球、ガラスフレーク、カーボン繊維、タルク、マイカ、および各種ウィスカー類、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本発明における上記他の添加剤の含有量は特に限定されない。上記トチュウ由来のバイオポリマーが有する抗菌性能を阻害しない範囲において、任意の含有量が当業者によって選択され得る。
【0039】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、特開2009−221306号公報に記載の方法を利用して上記トチュウ由来のバイオポリマーを得ることができる。
【0040】
次に、本発明の抗菌性組成物の製造方法の一例について説明する。
【0041】
本発明の方法においては、まず、上記トチュウが生物学的に腐朽させられる。
【0042】
すなわち、この生物学的な腐朽は、例えば、トチュウとトチュウの組織構造を崩壊され得る生物とを接触させることにより行われ得る。ここで、本願明細書における用語「腐朽」とは、トチュウが原形の状態ではあるが、白色腐朽菌などの生物に侵食されて手で接触した場合にトチュウの組織構造が容易に崩壊する状態をいう。この腐朽により、トチュウの組織構造を崩壊させ、その後の洗浄工程などの物理的作用によってトチュウ由来のバイオポリマーと組織との分離が容易となる。
【0043】
上記トチュウの組織構造を崩壊させ得る生物は、トチュウ組織、細胞、または細胞内成分(代謝産物など)を腐食・分解できる生物であればよく、特に制限されない。例えば、白色腐朽菌、褐色腐朽菌、軟腐朽菌などの腐朽菌類(真菌、粘菌などを含む)、微生物群(枯草菌、放線菌など)、および昆虫群(シロアリ、ダニなど)が挙げられる。これらの生物は単独で用いてもよく、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、真菌、粘菌、放線菌などの複合菌叢として腐葉土を用いてもよい。このような腐葉土は、例えば、クスノキ、アラカシ、シイ、タブなどの広葉樹林の表土と下層植生との間で生じる。本発明では、トチュウの組織を効率的に腐食し得る点で、および入手容易な点で、腐葉土を用いることが好ましい。
【0044】
トチュウと、トチュウの組織構造を崩壊させ得る生物との割合は、腐朽処理時間などを考慮して適宜設定され得る。例えば、腐葉土を用いる場合、腐葉土1重量部に対して、トチュウ(果皮)を30000重量部の割合で接触させることも可能である。接触方法としては、例えば、網袋などに入れたトチュウを、腐葉土中に埋没させる方法、網袋などに入れた腐葉土を、トチュウの搾油残渣(種子および果皮)内に投入する方法、腐葉土を水洗して得られる洗浄水をトチュウに給水する方法などが挙げられる。
【0045】
トチュウと、トチュウの組織構造を崩壊させ得る生物との接触時間および温度についても特に制限されない。接触温度は、生物が生存し得る温度範囲であればよい。接触時間は、生物およびトチュウの量、接触温度などに応じて適宜設定される。例えば、広葉樹林の腐葉土を利用して広葉樹林の林床でトチュウ果皮を腐朽させる場合、2週間〜3カ月間、好ましくは1カ月〜2カ月間の腐朽期間を要する。
【0046】
このようにしてトチュウが生物学的に腐朽され、トチュウ分解産物を得ることができる。
【0047】
次いで、得られるトチュウ分解産物を洗浄する。洗浄することによって、トチュウ分解産物中に含まれる組織塊、細胞乾燥物、一次代謝物、二次代謝物などの付着物をトチュウ由来のポリマーから除去することができる。洗浄には、例えば、水、界面活性剤(ツイーン(登録商標)など)を含む水溶液、ポリマーを溶解しない極性溶媒(エタノール、メタノール、ブタノールなど)が用いられる。コストの面および環境の観点から、好ましくは水が用いられる。
【0048】
洗浄は、付着物が除去されればよく、その方法は特に制限されない。例えば、水洗および揉粘を適宜(例えば、2回〜10回、好ましくは2回〜6回)繰り返すことによって行われる。付着物を効率的に除去する観点から、高圧下、すなわち常圧(10
5Pa)を超える圧力下で行うことが好ましい。例えば、高圧式洗浄機を用いて、吐出圧力0.1MPa〜15MPa、好ましくは2MPa〜8MPa、および吐出水量300L/時間〜400L/時間にて行われる。高圧水洗を行う場合、水洗および揉粘を繰り返して行う場合に比べて、短時間で高純度のトチュウ由来のポリマーを得ることができる。
【0049】
洗浄後、得られたポリマーについてさらにアルカリ処理を行ってもよい。アルカリ処理を行うことによって、リグニン、フェノールなどが容易に除去され、さらなる精製が可能である。アルカリ処理は、具体的には、洗浄したトチュウ分解産物を例えば0.1N〜4Nの水酸化ナトリウム水溶液などでさらに洗浄することによって行われる。アルカリ処理における洗浄方法は特に限定されず、当業者が任意の方法を選択することができる。
【0050】
上記のように、腐朽工程および洗浄工程を経ることによって、トチュウ由来のバイオポリマーでなる抗菌性組成物を得ることができる。このようなトチュウ由来のバイオポリマーでなる抗菌性組成物について、トチュウの乾燥物から得られるバイオポリマーの収率は、乾燥トチュウの重量を基準として、例えば、20重量%以上、好ましくは22重量%〜35重量%程度である。
【0051】
本発明の抗菌性組成物に含まれるトチュウ由来のバイオポリマーは、トランス型イソプレノイドを主成分として含み、必要に応じてセルロースを含み得る。当該トチュウ由来のバイオポリマーにおけるトランス型イソプレノイドの含有量は、当該バイオポリマーの全体重量を基準として、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、さらになお好ましくは90重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。100重量%であってもよい。さらに当該トチュウ由来のバイオポリマーは、硬質ゴムであり、表面硬度が高く、熱可塑性、電気絶縁性、耐酸性、耐アルカリ性などの種々の優れた性質を有している。
【0052】
本発明の抗菌性組成物に含まれるトチュウ由来のバイオポリマーにセルロースが含まれる場合、当該バイオポリマーは、トランス型イソプレノイドとセルロースとの混合ゴムとして構成されている。このような混合ゴムは、例えば、上記洗浄工程の後、アルカリ処理を行うことによって得ることができる。
【0053】
なお、本発明の抗菌性組成物を構成するバイオポリマーは、上記で得られたトチュウ由来のバイオポリマーを改質したものもさらに包含し得る。このような改質加工は、例えば、溶媒溶解加工、熱溶解加工などが行われる。溶媒溶解加工は、例えば、上記で得られたトチュウ由来のバイオポリマーをトルエン、クロロホルム、またはホルムアルデヒド、あるいはこれらの混合溶媒などの有機溶媒に溶解し、次いで乾燥させ、溶媒を留去して溶媒改質物を得ることによって行われる。熱溶解加工は、例えば、トチュウ由来のバイオポリマーまたは上記溶媒改質物を75℃〜130℃にて5分以上加熱して加熱改質物を得ることによって行われる。このような改質加工により、例えば、滑らかでかつ肌触りがよいポリマーでなる抗菌性組成物を得ることができる。
【0054】
上記にて得られたトチュウ由来のバイオポリマーは、必要に応じて上記他の添加剤が当業者に公知の手段・方法を用いて添加され、例えば均一になるまで混合される。
【0055】
このようにして、本発明の抗菌性組成物を得ることができる。
【0056】
あるいは、本発明の抗菌性組成物は、以下のようにして製造することもできる。以下に本発明の抗菌性組成物の製造方法の他の例について説明する。
【0057】
まず、トチュウを有機溶媒で抽出してトチュウ抽出物が生成される。
【0058】
当該他の製造方法において、トチュウは、上記と同様に、例えば、トチュウの種子、果皮、葉、樹皮、および根、またはこれらの組合せを使用することができる。
【0059】
使用可能な有機溶媒も、特に限定されないが、例えば、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、石油エーテル、石油ベンジンまたはテトラヒドロフラン、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。有機溶媒での抽出後、当業者に周知の手段を用いて、抽出液から溶媒が留去することによってトチュウ抽出物が生成される。
【0060】
なお、上記他の製造方法によって得られたトチュウ抽出物を、例えば、さらに75℃〜130℃にて5分以上加熱することにより、加熱改質物を形成し、これを抗菌性組成物として使用することもできる。このような加熱による改質加工により、例えば、滑らかでかつ肌触りがよいポリマーでなる抗菌性組成物を得ることができる。
【0061】
さらに、このトチュウ抽出物または加熱改質物には、必要に応じて上記他の添加剤が当業者に公知の手段・方法を用いて添加され、例えば均一になるまで混合される。
【0062】
このようにして、本発明の抗菌性組成物を得ることができる。
【0063】
本発明の抗菌性組成物は、樹脂添加剤の1種として、例えば、抗菌性の付与が所望される他の樹脂成分に添加されてもよく、あるいは本発明の抗菌性組成物それ自体を、抗菌性を有する樹脂組成物としてそのまま使用してもよい。
【0064】
本発明の抗菌性組成物は、例えば、飲食物や飲料水、化粧品などの製品を入れた容器や、歯ブラシ、文具、家電製品などの生活日用品や手すり、ドア把手などの建築資材等に至るまでヒトが直接触れる樹脂成形体に用いることができる。
【0065】
本発明の抗菌性組成物およびそれを用いた得られた抗菌性を有する樹脂成形体は、例えば、グラム陰性菌、グラム陽性菌または真菌に対する抗菌作用を有する。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0067】
(実施例1:抗菌性組成物の製造)
1kgのトチュウ由来の搾油残物(トチュウ種子および果皮を含む)を網袋(ナイロンメッシュ2mm角の袋)に入れ、広葉樹林(クスノキ、シイ、タブなど)の腐葉層(地上から約5cmの深さ)に埋没させ、2カ月間放置した。網袋の中のトチュウが腐朽していることを手で触って容易に崩壊することにより確認した後、水洗し、トチュウゴム粗精製物を得た。
【0068】
さらに、この粗精製物を吐出圧力0.2MPa〜0.9MPaおよび吐出水量370L/時間の条件で水洗し、トチュウ由来のバイオポリマーを得た。このバイオポリマーの収量は、0.3kgであり、収率は約30%であった。なお、上記粗精製物からトチュウ由来のバイオポリマーを得るのに要した作業時間は、約1時間であった。
【0069】
得られたトチュウ由来のバイオポリマーの平均分子量をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にて測定したところ、数平均分子量(Mn)が6.6×10
4、重量平均分子量(Mw)が1.25×10
5、そして多分散度(Mw/Mn)が1.9であった。
【0070】
得られたトチュウ由来のバイオポリマーについて、
1H−NMR分析を行ったところ、夾雑物の少ない高純度(約95%以上)のトランス型イソプレノイドであることを確認することができた。
【0071】
本実施例で得られたトチュウ由来のバイオポリマーを、他の添加剤を加えることなく、抗菌性組成物として使用することとした。
【0072】
(実施例2:抗菌性組成物2の製造)
実施例1で得られた抗菌性組成物(トチュウ由来のバイオポリマー)10gを1Lのトルエンに添加し、撹拌してトルエン可溶部を回収した。得られたトルエン可溶部のトルエンを留去させることにより、精製エラストマーを得た。
【0073】
本実施例で得られた精製エラストマーを、他の添加剤を加えることなく、抗菌性組成物として使用することとした。
【0074】
(実施例3:抗菌性組成物の抗菌性評価)
実施例1で得られた抗菌性組成物を、オープンロールで素練を行い、得られた素練物を熱プレスにより成型し、JIS Z2801規格の試験片を作成した。
【0075】
得られた試験片について、JIS Z2801(抗菌加工製品・抗菌試験方法・抗菌効果)に従って、大腸菌(Eschericha coli)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、および黒皮カビ(Cladosporium cladosporioides)の初期(試験開始時)および24時間後の生菌数を測定した。これと同様にして、コントロールとして、汎用樹脂であるポリエチレンを試験片に用いた場合の各接種菌に対する初期および24時間後の生菌数を測定した。さらに、同JIS Z2801に従ってそれぞれの抗菌活性値を算出した。
【0076】
得られた結果を表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1に示すように、実施例1で得られた抗菌性組成物は、いずれの接種菌に対しても、抗菌活性値は効果があるとされる2.0を大幅に上回っており、大腸菌、黄色ブドウ球菌および黒皮カビのいずれに対しても優れた抗菌性能を有していたことがわかる。
【0079】
(実施例4:抗菌性組成物2の抗菌性評価)
実施例1で得られた抗菌性組成物の代わりに、実施例2で得られた抗菌性組成物2を用いたこと以外は、実施例3と同様にして試験片を作成し、JIS Z2801に従う各接種菌に対する初期(試験開始時)および24時間後の生菌数を測定した。これと同様にして、コントロールによる24時間後の生菌数を測定した。さらに、同JIS Z2801に従ってそれぞれの抗菌活性値を算出した。
【0080】
得られた結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
表2に示すように、実施例2で得られた抗菌性組成物については、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対して抗菌活性値は効果があるとされる2.0を大幅に上回っていた。黒皮カビに対しては抗菌活性がやや低いものであったが、コントロールと比較して優れた抗菌性能を示していた。