特許第6099551号(P6099551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000002
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000003
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000004
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000005
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000006
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000007
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000008
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000009
  • 特許6099551-紙葉類取扱装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099551
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】紙葉類取扱装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/00 20160101AFI20170313BHJP
   G07D 7/20 20160101ALI20170313BHJP
   G07D 7/12 20160101ALI20170313BHJP
【FI】
   G07D7/00 Z
   G07D7/20
   G07D7/12
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-256810(P2013-256810)
(22)【出願日】2013年12月12日
(65)【公開番号】特開2015-114868(P2015-114868A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】特許業務法人明成国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144510
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 真由
(72)【発明者】
【氏名】田辺 崇
(72)【発明者】
【氏名】高井 知世
【審査官】 中村 泰二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−238165(JP,A)
【文献】 再公表特許第2008/026286(JP,A1)
【文献】 特開2012−084065(JP,A)
【文献】 特開2012−057049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00−9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を取扱う紙葉類取扱装置であって、
前記紙葉類の個体を識別しうる紙葉類識別子を取得する識別子取得部と、
前記紙葉類の落書きの有無を判別する第1の判別部と、
前記第1の判別部により判別された落書きが所定の第1の温度範囲において消色し、第2の温度範囲において復色する消色可能インクにより記載されたものか否かを判別する第2の判別部と、
前記第2の判別部により前記落書きが前記消色可能インクにより記載されたものと判別された場合に、前記落書きが前記消色可能インクにより記載されたものとして前記識別子を記憶する識別子記憶部と、
を備える、紙葉類取扱装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙葉類取扱装置において、
さらに、
前記紙葉類の温度を検出する温度検出部を備え、
前記第2の判別部は、
前記第1の判別部により落書き有りと判別され、かつ前記温度検出部により検出された温度が前記第2の温度範囲になったことがある場合に、前記落書きが前記消色可能インクにより記載されたものと判別する、紙葉類取扱装置。
【請求項3】
請求項1記載の紙葉類取扱装置において、
さらに、
前記紙葉類取扱装置に前記紙葉類が装填される際に、前記装填される紙葉類の画像を取得する画像取得部を備え、
前記第2の判別部は、
前記第1の判別部により落書き有りと判別された場合に、画像取得部において取得された画像に基づいて、前記紙葉類の装填時における落書きの有無を判別し、装填時において落書き成しと判別された場合に、前記落書きが前記消色可能インクにより記載されたものと判別する、紙葉類取扱装置。
【請求項4】
請求項2に記載の紙葉類取扱装置において、
前記第2の温度範囲は、−10℃以下である、紙葉類取扱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類取扱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣にボールペンなどで落書きがされている場合、その紙幣は損券としてATM(Automated Teller Machine)等の装置内で回収される(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−302109号公報
【特許文献2】特開2003−242549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、温度条件によって消色するインクを用いた消色可能なペンが多く用いられるようになった。消色可能なペンによって記載された後、消色された文字等は、復色させることも可能である。例えば、株式会社パイロットコーポレーション製のフリクションボールは、65℃以上で消色し、−20℃以下で復色する。
【0005】
消色可能なペンによって落書きされた後に消色されてATMに入金された紙幣は、特許文献1、2に記載された技術では、落書きが判別されず正券として取り扱われる。
【0006】
しかしながら、例えば、寒冷地等では、気温の低下によりATM内の温度が、消色されたインクが復色する温度になる場合がある。そうすると、ATM内に保管されている紙幣において消色されていたインクが復色し、落書きが見える状態になる。その状態で、ATMの利用者が出金手続きを行った場合には、落書きされた紙幣(以下、「落書き券」ともいう)が出金紙幣として利用者に渡る場合や、出金時の損券として回収庫に回収される場合がある。
【0007】
そこで、消色可能なインクによって書かれた落書き券を判別することが可能な技術が望まれていた。なお、これらの課題は、紙幣だけでなく、商品券、小切手、トラベラーズ・チェック、カジノチケット、切符、宝くじ等の紙葉類を取り扱う装置に共通するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、紙葉類の個体を識別しうる紙葉類識別子を取得する識別子取得部と、紙葉類の落書きの有無を判別する第1の判別部と、第1の判別部により判別された落書きが所定の第1の温度範囲において消色し、第2の温度範囲において復色する消色可能インクにより記載されたものか否かを判別する第2の判別部と、第2の判別部により落書きが消色可能インクにより記載されたものと判別された場合に、落書きが消色可能インクにより記載されたものとして識別子を記憶する識別子記憶部とを備えてよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、消色可能なインクによって書かれた落書き券を判別することでき、消色可能なインクによって書かれた落書き券が判別された場合には、識別子が記憶されるため、記憶された識別子に基づいて、消色可能なインクによる落書き券を特定することができる。
【0010】
本発明は、紙葉類取扱装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、紙葉類取扱装置の製造方法や紙葉類取扱装置の制御方法、その制御方法を実現するコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した一時的でない記録媒体(non−transitory storage medium)等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を備えるATMの外観構成を説明する説明図である。
図2】本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を備えるATMの構成を説明するブロック図である。
図3】本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を示す説明図である。
図4】判別部の構成を示す説明図である。
図5】本発明の実施例1としての紙幣取扱装置における出金処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施例2の紙幣取扱装置における装填処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施例2の紙幣取扱装置における収納処理の流れを示すフローチャートである。
図8】実施例2の紙幣取扱装置における入金処理の流れを示すフローチャートである。
図9】実施例2の紙幣取扱装置における出金処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
A−1.現金自動取引装置(ATM)の構成:
図1、2を用いて、本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を備えるATMの構成について説明する。図1は、本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を備えるATMの外観構成を説明する説明図である。図1では、紙幣取扱装置100の使用態様の一例として、スタンドアロン設置型のATM10に紙幣取扱装置100が内蔵された状態を示している。ATM10は、紙幣取扱装置100と、通帳取扱装置200と、明細票発行装置300と、カード取扱装置400と、操作部500と、本体制御部記憶装置600(図示しない)と、本体制御部700と、装置筐体800と、を備える。
【0014】
紙幣取扱装置100は、利用者等が入金した紙幣を収納し、また、利用者の要求に応じて収納された紙幣を利用者に供給する装置である。さらに、紙幣取扱装置100は、出金時に消色可能なインクによる落書き券を判別する機能を有する。ここで、消色可能なインクとは、所定の温度範囲で消色し、別の所定の温度範囲で復色するインクである。本実施形態では、65℃以上で消色し、−10℃以下で復色するインクを対象としている。筆記具は消色可能なインクを利用していればよく、ボールペン、蛍光ペン、色鉛筆等種々の筆記具が対象となる。
【0015】
通帳取扱装置200には通帳を出し入れする通帳スロット202が、明細票を出し入れする明細票発行装置300には明細票スロット302が、カード取扱装置400にはカードを出し入れするカードスロット402が、それぞれ設けられている。操作部500は、利用者、係員、保守員等が操作するための液晶パネルを備え、取引の内容等を表示する表示機能とタッチパッドのような位置入力機能とを有する。紙幣取扱装置100は、図示するように、シャッタ112が、装置筐体800の表面に露出するように配置されている。
【0016】
図2は、本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を備えるATMの構成を説明するブロック図である。図示するように、ATM10は、通信回線でホストコンピュータ20やサーバー30と接続され、取引情報やATM10の稼動状況などの送受信を行う。
【0017】
紙幣取扱装置100と、通帳取扱装置200と、明細票発行装置300と、カード取扱装置400と、操作部500と、本体制御部記憶装置600とは、本体制御部700に接続され、本体制御部700によって制御されている。例えば、利用者が、ATM10を利用して、出金を行なう場合、本体制御部700は、通帳取扱装置200およびカード取扱装置400を制御して、キャッシュカードや通帳から情報を読み取って、利用者を認証する。また、本体制御部700は、利用者が操作部40を介して入力した金額に関する情報に基づいて、紙幣取扱装置100を制御して、所望の金額の紙幣を利用者に供給させる。なお、シャッタ112は、本体制御部700の指示に応じて自動的に開閉する。
【0018】
また、本体制御部700を、その他、外部インタフェース部、係員操作部、外部記憶装置等(図示しない)と接続して、ATM10のメンテナンス作業の際の情報の授受等を、本体制御部700によって制御するようにしてもよい。
【0019】
本体制御部記憶装置600は、プログラム、カードデータ、紙幣取扱装置から報告された紙幣データ等を記憶する。紙幣取扱装置100は判別部150を備える。判別部150は、紙幣の寸法、金種、真偽、搬送状態、損券、落書き券を判別する。
【0020】
寸法判別では、寸法が異常のものをリジェクトと判別する。金種判別では、1万円札、5千円札等の金種を判別すると共に、金種が不明の場合にはリジェクトと判別する。真偽判別では、紙幣が真券か偽券か偽券と疑わしい券(以下、真偽不確定券ともいう)かを判別する。搬送状態判別では、紙幣にスキュー異常(傾き異常)、シフト異常、重送異常(重なり)等があれば、搬送異常でリジェクトと判別する。損券判別では、紙幣に汚れ、耳折れ、破れ、穴がある場合は、損券でリジェクトと判別される。落書き券判別では、落書きがある場合には、リジェクトと判別されるが、さらに後に詳述するように、消色可能なインクによる落書き券か否かを判別する。
【0021】
判別部150は、利用者が入金する際、金融機関の保守員により紙幣が装填される際、出金される際に、判別部150を通過する紙幣それぞれについて上記の判別を行い、判別結果に基づいて、紙幣の搬送先を決定する。紙幣取扱装置100については、後に詳述する。
【0022】
A−2.紙幣取扱装置:
図3に基づいて、本発明の実施例1としての紙幣取扱装置100の構成について説明する。図3は本発明の実施例1としての紙幣取扱装置を示す説明図である。図示するように、紙幣取扱装置100は、入出金部110、入出金シャッタ112、ホッパ120、リジェクトスタッカ130、搬送路140、ゲート181〜187、判別部150、一時保管庫160、回収庫170、リサイクル庫191〜193、装填回収庫194、収納庫195を備える。
【0023】
入出金部110は、ホッパ120、リジェクトスタッカ130を備え、利用者との間で紙幣の授受を行う。ホッパ120は、利用者が入金する際に紙幣を投入する場合に利用され、リジェクトスタッカ130は、主にリジェクトされた紙幣を利用者に返却する場合に利用される。搬送路140は、判別部150による上述の判別結果に応じて、ゲート182〜187を利用して、対応する保管庫に紙幣を搬送する。
【0024】
一時保管庫160には紙幣が一時的に保管され、回収庫170には偽券や利用者の取り忘れた紙幣が収納され、収納庫195にはリサイクルされない紙幣が収納される。装填回収庫194には、金融機関の保守員により紙幣が装填される。リサイクル庫191〜193には入出金部110を介して入金されリサイクルされる紙幣が収納されたり、金融機関の保守員により装填回収庫194に装填された紙幣が収納される。判別部150については後に詳述する。
【0025】
利用者が入金する場合の紙幣取扱装置100の動作について、図3に基づいて説明する。
利用者により入出金部110に紙幣が投入されると、入出金部110内のホッパ120から紙幣が1枚ずつ分離され、搬送路140上に繰り出される。判別部150において上述の通り、紙幣の金種、真偽、搬送状態及び記番号等が判別され、紙幣の収納先が決定される。
【0026】
ホッパ120に投入された紙幣は、一旦、一時保管庫160か回収庫170に保管され、入金が確定されると、一時保管庫160から金種に応じてリサイクル庫191〜193に移され収納される。
【0027】
判別部150において、真券と判別された紙幣と真偽不確定券と判別された紙幣は、一旦、一時保管庫160に保管される。一方、偽券と判別された紙幣は、ゲート183で行き先が切替えされ、回収庫170に収納される。金種不明、寸法異常、搬送異常、損券、落書き券等、真偽判別以外の判別でリジェクトと判別された紙幣は、ゲート182が切替えられ、入出金部110のリジェクトスタッカ130に戻され、利用者に返却される。
【0028】
利用者が入金取引を確定すると、一時保管庫160に入っている紙幣は、再度、判別部150において判別され、真券と判別された紙幣はリサイクル庫191〜193に収納され、それ以外の紙幣は収納庫195に収納される。すなわち、真券はリサイクルされ、それ以外の紙幣はリサイクルされない。
【0029】
例えば、1枚目が真券と判別され、リサイクルされる紙幣で、2枚目がそれ以外の紙幣(偽券、真偽不確定券、金種不明券、損券、落書き券等)であって、リサイクルされない紙幣の場合について説明する。1枚目の紙幣は、一時保管庫160から搬送路140に繰り出され、ゲート183、ゲート182、判別部150を通過すると、ゲート181が切替えられ、リサイクル庫191〜193のある方向に搬送される。例えば、リサイクル庫192に収納される場合には、ゲート185で搬送方向が切替えられ、1枚目の紙幣がリサイクル庫192に収納される。
【0030】
2枚目の紙幣は、1枚目の紙幣と同様に、一時保管庫160から搬送路140に繰り出されて搬送されるが、ゲート185が元に戻されるため、ゲート186を通過し、その後、切替えられたゲート187を通過して、収納庫195に収納される。
【0031】
一方、利用者が入金取引を取り消した場合は、紙幣はゲート183、ゲート182、判別部150、ゲート181を通過して、ホッパ120に戻され、利用者に返却される。
【0032】
A−3.判別部:
紙幣取扱装置100が備える判別部150について、図2、4に基づいて説明する。
図2に示すように、判別部150は、画像センサ部152と、温度センサ部154と、判別部記憶装置156と、を備える。画像センサ部152は、後述する透過式光学センサ152A、反射式カラー光学センサ152B、152C、透過式紫外線センサ152Dを備え、判別部150を通過する紙幣の画像を取得する。温度センサ部154は、判別部150の周辺温度を常時測定する。
【0033】
判別部150は、取得された画像データに基づいて、上述した紙幣の寸法、金種、真偽、搬送状態、損券、落書き券や、厚み、記番号等を判別する。また、判別部150は、温度センサ部154において常時取得される温度データに基づいて、温度が−10℃以下になった場合に低位温度フラグを立てる。
【0034】
画像センサ部152において取得された画像データ、温度センサ部154において取得された温度データ、低位温度フラグ等は、判別部記憶装置156に記憶される。判別部記憶装置156には、こうしたセンサからのデータの他、判別部150において判別された紙幣に関する情報(以下、紙幣固有情報とも称する)等も記憶される。
【0035】
判別部記憶装置156に記憶されたこれらのデータは、本体制御部700を介して本体制御部記憶装置600やホストコンピュータ20の備える記憶装置(図示しない)に記憶されてもよい。
【0036】
図4は、判別部の構成を示す説明図である。図4(A)は、判別部の紙幣が通過する様子を示し、図4(B)は、判別部の側面を示す。
図4(B)に示すように、判別部150は、判別部上部150Aと判別部下部150Bとを備え、判別部上部150Aと判別部下部150Bとの間を紙幣が通過可能に構成されている。判別部上部150Aと判別部下部150Bとは、それぞれ、ローラー158A、158B、158Cを備える。紙幣は、上下のローラーに挟まれて、ローラーの回転により、矢印の方向に搬送される。
【0037】
判別部150は、画像センサ部152として、透過式光学センサ152A、反射式カラー光学センサ152B、152C、透過式紫外線センサ152Dを備える。透過式光学センサ152Aは、透過式であるため、判別部上部150Aと判別部下部150Bとに対になって備えられ、1対のセンサによって、紙の厚みや紙質を含めて両面の画像が重なった状態での画像データを取得する。
【0038】
判別部上部150Aが備える反射式カラー光学センサ152Bによって紙幣の上面の画像データを取得し、判別部下部150Bが備える反射式カラー光学センサ152Bによって紙幣の下面の画像データを取得する。透過式紫外線センサ152Dも透過式光学センサ152Aと同様に、判別部上部150Aと判別部下部150Bとに対になって備えられる。各センサ152A〜152Dは、図4(A)に示すように、複数個が、ローラー158A〜158Cに沿って、ライン状に設置されている。
【0039】
A−4.出金処理:
利用者がATM10を利用して出金手続きを行う場合の処理について、図5に基づいて説明する。上述の通り、実施例1において、出金時に消色可能なインクによる落書き券を判別している。図5は、本発明の実施例1としての紙幣取扱装置における出金処理の流れを示すフローチャートである。本出金処理は、利用者がATM10の操作部500を利用して出金を選択することにより開始される。
【0040】
本体制御部700は、出金の指示を受付けると紙幣取扱装置100を制御して、指定された金種の紙幣をリサイクル庫191〜193のいずれかから1枚ずつ搬送路140へ繰り出す(ステップS100)。繰り出された紙幣が搬送路140を通って、判別部150に入ると、判別部150は、画像センサ部152によって通過した紙幣の画像を読取り、取得された画像データを判別部記憶装置156に記憶させる(ステップS102)。
【0041】
判別部150は、判別部記憶装置156に記憶された画像データに基づいて、紙幣の寸法、金種、真偽、搬送状態、損券、落書き券等の判別を行い、金種、汚れなどの特徴を紙幣固有情報として、図3の下欄に示すように、記番号、画像データと共に判別部記憶装置106に記憶させる(ステップS104)。
【0042】
判別部150は、ステップS104で行った判別処理の結果に基づいて、その紙幣に異常があるか否か判断する(ステップS106)。具体的には、搬送異常があり、寸法、金種、真偽、損券、落書き券の判別がリジェクトになった場合は、紙幣に異常があると判断される。一方、搬送異常がなく、寸法、金種、真偽、損券、落書き券の判別もリジェクトにならかった場合は、紙幣に異常がないと判断される。
【0043】
ステップS106において紙幣に異常があると判断された場合は(ステップS106におけるYES)、判別部150は、ステップS104で行った判別処理の結果に基づいて、落書きがあるか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108において落書きがあると判断された場合には(ステップS108におけるYES)、判別部150は、判別部記憶装置156に記憶された低位温度フラグに基づいて、紙幣の温度が−10℃以下になった可能性があるか否かを判断する(ステップS110)。低位温度フラグが立っていた場合は、紙幣の温度が−10℃以下になった可能性があると判断される。なお、本実施形態では、紙幣の温度として温度センサ部154によって測定される温度センサ部154の周辺温度を用いている。
【0044】
ステップS110において紙幣の温度が−10℃以下になった可能性があると判断された場合は(ステップS110におけるYES)、消色可能なインクによる落書き券として記番号を判別部記憶装置156に記憶させる(ステップS112)。本体制御部700は、紙幣取扱装置100を制御して、その紙幣を収納庫195に収納させ(ステップS114)、ステップS100に戻る。
【0045】
ステップS108において落書き無しと判断された場合と、ステップS110において−10℃以下になった可能性がないと判断された場合は、消色可能なインクによる落書き券ではないため消色可能なインクによる落書き券としての記番号は記憶されず、その紙幣は収納庫195に収納される(ステップS114)。
【0046】
消色可能なインクによる落書き券と判別された紙幣を含め紙幣に異常があると判別された紙幣は、リサイクルされない収納庫195に収納されるため、出金されない。
【0047】
ステップS106において紙幣に異常がないと判断された場合は(ステップS106におけるNO)、本体制御部700は、紙幣取扱装置100を制御して、その紙幣を入出金部110に収納させ(ステップS116)、入出金部110内の紙幣が利用者が指定した枚数になったか否かを判断する(ステップS118)。指定された枚数になった場合には(ステップS118におけるYES)、出金処理を終了し、指定された枚数になっていない場合には(ステップS118においてNO)、ステップS100に戻る。
【0048】
実施例1のATM10において、出金時に判別部150において行われた判別処理に基づいて、リジェクトされた紙幣に関する情報を操作部500に表示させることができる。例えば、搬送異常、寸法異常、金種異常、真偽異常、損券それぞれの件数を表示させる。落書き券については、消色可能なインクによる落書き券と、消色不可能なインクによる落書き券とに分けて、それぞれの件数と、金種と共に記番号を表示させる。さらに、件数だけでなく、紙幣画像を表示させてもよいし、損券の詳細な情報(汚れ、耳折れ、破れ、穴等)を表示させてもよい。例えば、金融機関の保守員が、これらの情報を操作部に表示させることにより、保守点検に利用することができ、使い勝手が向上する。
【0049】
実施例1の紙幣取扱装置100は、出金処理において落書き券が判別された場合に、温度が−10℃以下になった可能性がある場合には、その落書きが消色可能なインクによる落書きであると判断している。そのため、例えば、消色可能なインクであって、−10℃以下で復色するインクよって落書きされた落書き券を判別することができる。
【0050】
実施例1において、ステップS110において温度が−10℃以下になった可能性のある場合に、消色可能なインクによる落書き券と判別しているが、消色可能なインクによる落書き券と判別する閾値となる温度は−10℃以下に限定されず、対象とする消色可能なインクの復色する温度範囲に応じて適宜設定可能である。例えば、60℃以上で復色するインクの場合には、閾値となる温度を60℃以上に設定すればよい。−10℃〜10℃で復色するインクの場合には、閾値となる温度を−10℃〜10℃に設定すればよい。
【0051】
実施例1において、−10℃以下で復色するインクによる落書きを対象としており、閾値となる温度を対象とするインクの復色温度範囲と同一の−10℃以下に設定しているが、誤差や余裕を見込んだ範囲設定も、復色温度範囲と同一に設定したものとみなしてよい。例えば、−10℃以下で復色するインクを対象とした場合に、閾値となる温度を0℃以下に設定してもよい。
【0052】
さらに、実施例1の紙幣取扱装置100によれば、消色可能なインクによる落書き券としてその記番号が判別部記憶装置156に記憶されるため、紙幣取扱装置100内に収納されている消色可能なインクによる落書き券を特定することができる。例えば、装填時には落書きが消色しており、落書き券が装填されていないと見なされている場合であっても、判別部記憶装置156に記憶された記番号に基づいて、消色可能なインクによる落書き券が予め装填されていたことを確認することができる。
【0053】
また、落書き券として収納庫195に収納されたものの、収納庫195内が高温になり落書きが消色する場合がある。この場合にも、判別部記憶装置156に記憶された記番号に基づいて、消色可能なインクによる落書き券を特定することができる。そのため、正券が損券として収納庫195に収納されたのではないことを確認することができる。これにより、金融機関等の紙幣取扱装置100の設置者にとって、使い勝手が向上される。
【0054】
実施例1の紙幣取扱装置100は、温度に基づいて、消色可能なインクによる落書き券を判別している。温度検出部は、従来の紙葉類取扱装置においても備えられていることが多いため、低コスト化、製造の容易化、省資源化を図ることができる。
【実施例2】
【0055】
図6〜9に基づいて、実施例2の紙幣取扱装置100Aについて説明する。実施例2の紙幣取扱装置100Aは、判別部150Aにおいて行われる消色可能なインクによる落書き券の判別方法が実施例1と異なり、温度センサ部154を備えないものの、他の構成は同一なので構成の説明を省略する。実施例2の紙幣取扱装置100Aでは、出金時の紙幣の画像データと、装填時の紙幣の画像データと、入金時の紙幣の画像データとに基づいて、消色可能なインクによる落書き券を判別する。本実施例における紙幣の装填および入金が請求項3における装填に相当する。
【0056】
図6は、実施例2の紙幣取扱装置における装填処理の流れを示すフローチャートである。本装填処理は、金融機関等の保守員が装填回収庫194に紙幣を装填し、操作部500を介して装填を指示することにより開始される。
【0057】
本体制御部700は、装填指示を受付けると(ステップS200)、紙幣取扱装置100Aを制御して、紙幣の収納処理を行う(ステップS300)。装填回収庫194内に紙幣があるか否かを判断し(ステップS200)、装填回収庫194内の紙幣がなくなるまで収納処理を繰り返す。
【0058】
図7は、実施例2の紙幣取扱装置における収納処理の流れを示すフローチャートである。
本体制御部700は、紙幣取扱装置100Aを制御して、装填回収庫194から搬送路140へ1枚ずつ紙幣を繰り出す(ステップS302)。繰り出された紙幣が搬送路140を通って、判別部150Aに入ると、判別部150Aは、画像センサ部152によって通過した紙幣の画像を読取り、取得された画像データを判別部記憶装置156に記憶させる(ステップS304)。判別部150Aは、判別部記憶装置156に記憶された画像データに基づいて、寸法異常、金種異常、真偽異常、搬送状態異常、損券、落書き券等の異常があるか否かを判別する(ステップ306)。
【0059】
ステップS306において異常がない場合、金種、汚れなどの特徴を紙幣固有情報として、画像データ、記番号と共に判別部記憶装置106に記憶させる(ステップS310)。本体制御部700は、紙幣取扱装置100Aを制御して、その紙幣を、リサイクル庫191〜193のいずれかに収納させる(ステップS312)。ステップS308において異常有りと判別された場合、本体制御部700は、紙幣取扱装置100Aを制御して、その紙幣を、リサイクルしない紙幣を入れる収納庫195に収納させる(ステップS314)。
【0060】
このようにして、装填回収庫194に装填された紙幣のうち、判別部150Aにおいて異常無しと判別された紙幣は、記番号、画像データを含む紙幣固有情報を記憶され、リサイクル庫191〜193に収納される。
【0061】
図8は、実施例2の紙幣取扱装置における入金処理の流れを示すフローチャートである。本入金処理は、ATM10の利用者が入出金部110のホッパ120に紙幣を投入し、操作部500を介して入金を指示することにより開始される。
【0062】
本体制御部700は、入金指示を受付けると(ステップS400)、紙幣取扱装置100Aを制御して、紙幣の収納処理を行う(ステップS300)。ホッパ120内に紙幣があるか否かを判断し(ステップS402)、ホッパ120内の紙幣がなくなるまで収納処理を繰り返す。入金処理における収納処理は、装填処理における収納処理と同様であり、上述の装填処理中に行われる収納処理における装填回収庫194をホッパ120に置き換えればよい。
【0063】
図9は、実施例2の紙幣取扱装置における出金処理の流れを示すフローチャートである。実施例2における出金処理では、消色可能なインクによる落書き券の判別方法が実施例1とは異なる。本出金処理も実施例1と同様に、利用者がATM10の操作部500を利用して出金を選択することにより開始される。
【0064】
本体制御部700は、出金の指示を受付けると紙幣取扱装置100Aを制御して、指定された金種の紙幣をリサイクル庫191〜193のいずれかから1枚ずつ搬送路140へ繰り出す(ステップT100)。繰り出された紙幣が搬送路140を通って、判別部150Aに入ると、判別部150Aは、画像センサ部152によって通過した紙幣の画像を読取り、取得された画像データを判別部記憶装置156に記憶させる(ステップT102)。
【0065】
判別部150Aは、判別部記憶装置156に記憶された画像データに基づいて、寸法、金種、真偽、搬送状態、損券、落書き券等の判別を行い、金種、汚れなどの特徴を紙幣固有情報として、記番号、画像データと共に、判別部記憶装置106に記憶させる(ステップT104)。判別部150Aは、ステップT104で行った判別処理の結果に基づいて、その紙幣に異常があるか否か判断する(ステップT106)。
【0066】
ステップT106において紙幣に異常があると判断された場合は(ステップT106におけるYES)、判別部150Aは、ステップT104で行った判別処理の結果に基づいて、落書きがあるか否かを判断する(ステップT108)。
【0067】
ステップT108において落書きがあると判断された場合には(ステップT108におけるYES)、判別部150Aは、装填処理、入金処理の際に判別部記憶装置156に記憶された画像データに基づいて、装填時または入金時と画像データに違いがあるか否かを判別する(ステップT110)。例えば、装填処理、入金処理の際に判別部150A記憶装置156に記憶された画像データと、出金処理の際に判別部記憶装置156に記憶された画像データとを用いて、特定部位のパターンマッチングや特定部位の移動平均値のレベルの一致レベル等により照合する。
【0068】
装填時または入金時と画像データに違いがあると判別された場合は(ステップT110におけるYES)、消色可能なインクによる落書き券として記番号を判別部記憶装置156に記憶させる(ステップT112)。本体制御部700は、紙幣取扱装置100Aを制御して、その紙幣を収納庫195に収納させ(ステップT114)、ステップT100に戻る。
【0069】
ステップT108において落書き無しと判断された場合と、ステップT110において装填時または入金時と画像データに違いが無いと判別されたされた場合は、消色可能なインクによる落書き券とは判断されないため、記番号は記憶されず、その紙幣は収納庫195に収納される(ステップT114)。消色可能なインクによる落書き券と判別された紙幣を含め紙幣に異常があると判別された紙幣は、リサイクルされない収納庫195に収納されるため、出金されない。
【0070】
ステップT106において紙幣に異常がないと判断された場合は(ステップT106におけるNO)、本体制御部700は、紙幣取扱装置100Aを制御して、その紙幣を入出金部110に収納させ(ステップT116)、実施例1と同様に、入出金部110内の紙幣が利用者が指定した枚数になるまで、上記処理を繰り返す。
【0071】
実施例2の紙幣取扱装置100Aでは、消色可能なインクによる落書き券を、装填または入金時に判別部150Aにおいて取得された画像データに基づいて判別している。例えば、消色可能なインクよって書かれた落書きが、消色された状態で装填または入金された場合には、装填処理および入金処理の際に判別部150Aにて落書き券とは判別されないため、消色された落書き券はリサイクル庫191〜193に収納され、出金時に出金される可能性がある。消色された落書き券が、リサイクル庫191〜193に収納されているうちに、庫内の温度が低下して落書きが復色することがある。
【0072】
そうすると、出金時に判別部150Aにて落書き券と判別されるが、本実施形態の紙幣取扱装置100Aでは、出金処理において落書き券と判別された場合に、装填または入金時に判別部150Aにおいて取得された画像データと、出金処理時に判別部150Aにおいて取得された画像データとを照合することにより、その落書きが装填または入金時からあったものか否かを判別し、装填または入金時に落書きがなかった場合には、消色可能なインクによる落書き券であると判別する。したがって、本実施形態の紙幣取扱装置100Aによっても実施例1の紙幣取扱装置100と同様の効果を得ることができる。
【0073】
紙幣取扱装置100Aにおいて、装填時および入金時にも落書き判別は行われており、その時点で落書きと判別されたものはリサイクルされないため、基本的には、出金されないはずである。しかしながら、装填時、入金時にも落書きがあったが、その濃淡や大きさ等により、例えば、許容しうる汚れと判断され、落書きと判別されなかったということも想定される。出金時に落書き券と判別され、かつ、装填または入金時の画像データと出金時の画像データとに差違がない場合には、装填または入金時に既に落書きがあったと判別されるので、適切に、消色可能なインクによる落書き券を判別することができる。
【0074】
実施例2の紙幣取扱装置100Aでは、温度センサ部154を備えないため、消色可能なインクによる落書き券を判別するために、新たな温度センサを追加する必要が無く、低コスト化、製造の容易化、省資源化を図ることができる。
【0075】
本発明の別の例として、上記実施例1と実施例2とを組み合わせて、紙幣の温度−10℃以下になった可能性があって、さらに装填または入金時と画像データに差違があった場合に、消色可能なインクによる落書き券と判別する構成にしてもよい。このようにしても、上記実施例と同様の効果を得ることができる。
【0076】
上記実施例では、紙葉類として紙幣を例示しているが、本発明は、紙幣に限定されず、商品券、小切手、手形、トラベラーズ・チェック、カジノチケット、切符、宝くじ等であっても良い。上記実施例では紙幣の落書き券について説明しているため、消色可能なインクによる落書き券と判別された場合に記番号を記憶しているが、他の紙葉類の場合には、紙葉類の個体を識別しうる識別子を記憶すればよい。例えば、小切手や手形に印字された磁気インク文字、バーコード等であっても良い。
【0077】
上記実施例では、現金自動取引装置(ATM)について説明したが、現金自動支払機(Cash Dispenser)、両替機、定期券などの券を発券する発券装置、商品券、小切手、手形、トラベラーズ・チェック、カジノチケットを取り扱う装置であっても良い。
【0078】
上記実施例では、消色可能なインクによる落書き券と判別された場合に、消色可能なインクによる落書き券として記番号情報を記憶させるが、併せて、利用者情報や紙幣の画像情報を記憶させても良い。
【0079】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0080】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するためのプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するためのプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD(登録商標)等の記録媒体に置くことができる。
【0081】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上の制御線や情報線を必ずしも全て示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0082】
40…操作部
100…紙幣取扱装置
106…判別部記憶装置
110…入出金部
112…入出金シャッタ
120…ホッパ
130…リジェクトスタッカ
140…搬送路
150…判別部
150A…判別部上部
150B…判別部下部
152…画像センサ部
152A…透過式光学センサ
152B…反射式カラー光学センサ
152D…透過式紫外線センサ
154…温度センサ部
156…判別部記憶装置
158A…ローラー
160…一時保管庫
170…回収庫
181〜187…ゲート
191…リサイクル庫
192…リサイクル庫
194…装填回収庫
195…収納庫
200…通帳取扱装置
202…通帳スロット
300…明細票発行装置
302…明細票スロット
400…カード取扱装置
402…カードスロット
500…操作部
600…本体制御部記憶装置
700…本体制御部
800…装置筐体
1000…ATM
2000…ホストコンピュータ
3000…サーバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9