(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
まず、従来の電動ハンドの一例について、
図1を参照しながら説明する。尚、
図1では、ピン4,5と駆動用モータ6及びカム7との関係を示すため、その位置を変更して示し、また、把持爪1,2の爪先の図示を省略している。
【0014】
従来の電動ハンドには、
図1に示すように、所定方向に移動することで対象物を把持する把持爪1,2が設けられている。この把持爪1,2は、リニアガイド3により支持され、当該リニアガイド3の軸方向(
図1(a),(b)に示す左右方向)に各々独立して移動可能となっている。
また、把持爪1,2には、各々の移動面に対して略垂直な向きにピン4,5が立てられている。このピン4,5は、
図1に示すように、駆動用モータ6の回転軸を中心に対称で螺旋状に配置されたカム溝71を有するカム7により案内される。
【0015】
ここで、
図1(a)に示すように、把持爪1,2が一番開いた状態においては、把持爪1,2のピン4,5はカム溝71の外周近傍に案内されている。一方、駆動用モータ6が反時計回り方向に回転し始めると、ピン4,5がカム溝71に案内されることにより、把持爪1,2がリニアガイド3に沿って各々把持中心方向に移動する。そして、
図1(b)に示すように、ピン4,5がカム溝71の内周近傍まで案内された時点で把持爪1,2が閉じる構成となっている。
【0016】
上記のような従来構成は特許文献1などにおいても開示されており、シンプルな構成で把持中心位置を正確に出すことができ、駆動用モータ6の回転トルクを変化させることで把持力もコントロールできる利点がある。
しかし、発明が解決しようとする課題で述べた通り、形状が複雑で比較的寸法誤差の多い部品を組み立てるには部品同士の相対位置誤差を吸収し倣わせる機能が必要であるが、上記のような従来型の電動ハンドでは組み立て時に過大な力が発生しても吸収して倣わせることは難しいという課題がある。
【0017】
次に、本発明の部品組み立て装置を適用した電動ハンドの概要について示す。
図2はこの発明の実施の形態1に係る部品組み立て装置を適用した電動ハンドの概要を示す図であり、
図3は電動ハンドの制御ブロックの構成例を示す図である。尚、
図2では、ピン14,15と駆動用モータ16,18及びカム17,19との関係を示すため、その位置を変更して示し、また、把持爪11,12の爪先の図示を省略している。
【0018】
本発明の電動ハンドには、
図2に示すように、所定方向に移動することで対象物を把持する把持爪11,12が設けられている。この把持爪11,12は、リニアガイド13により支持され、当該リニアガイド13の軸方向(
図2(a),(b)に示す左右方向)に各々独立して移動可能となっている。
また、把持爪11,12には、各々の移動面に対して略垂直な向きにピン14,15が立てられている。
図2に示すように、ピン14は、駆動用モータ(駆動部)16の回転軸を中心に螺旋状に配置されたカム溝171を有するカム17により、ピン15は、駆動用モータ(駆動部)18の回転軸を中心に螺旋状に配置されたカム溝191を有するカム19により、各々独立して案内される。
【0019】
ここで、
図2(a)に示すように、把持爪11,12が一番開いた状態においては、把持爪11,12のピン14,15はカム溝171,191の外周近傍に案内されている。一方、駆動用モータ16が反時計回り方向に、駆動用モータ18が時計周り方向に回転し始めると、ピン14,15がカム溝171,191に案内されることにより、把持爪11,12がリニアガイド13に沿って各々把持中心方向に移動する。そして、
図2(b)に示すように、ピン14,15がカム溝171,191の内周近傍まで案内された時点で把持爪11,12が閉じる構成となっている。
【0020】
尚、カム溝171,191は螺旋状に構成されているため、駆動用モータ16,18の回転トルクが一定でも、ピン14,15がカム17,19の外周に向かうほど、つまり把持爪11,12が開くにつれて、把持力は低下する。
また、上記リニアガイド13及びカム17,19は、駆動用モータ16,18の回転トルクを把持爪10,11の推力に変換するトルク変換機構を構成する。
【0021】
また、
図3に示すように、駆動用モータ16,18には、それぞれ駆動用モータ16,18の回転位置を検出可能なロータリーエンコーダなどの回転位置検出器20,21が取り付けられている。そして、制御部22は、回転位置検出器20,21から出力されたパルス数を取得して駆動用モータ16,18の回転位置を得ることで、駆動用モータ16,18の制御を行う。この際、制御部22は、各把持爪11,12が発生する推力の加算値が一定になるようにして当該各把持爪11,12の把持力を制御するとともに、当該各把持爪11,12が発生する推力の差分に基づき当該把持爪11,12の移動方向を制御する。
【0022】
本発明の電動ハンドの従来の電動ハンドとの機構的な相違点は、カム溝171,191の構成と各々の把持爪11,12を独立した駆動用モータ16,18で制御する点である。一方、特許文献2などにおいても各々の把持爪を独立した駆動用モータで制御する構成が開示されている。
しかしながら、特許文献2では、カム溝の形状を工夫することで把持可能な形状の拡大と正確なセンタリングを目指したものであり、部品同士の相対位置誤差を吸収し倣わせる手段については触れておらず、発明が解決しようとする課題を解消するものではない。
【0023】
次に、制御部22の構成について、
図3を参照しながら説明する。
制御部22は、
図3に示すように、アップ・ダウンカウンタ221,222、把持爪位置変換部223,224、推力算出部225、目標推力変換部226,227、速度検出部228,229、減算器230,231及びモータ駆動用ドライバ232,233から構成されている。
【0024】
アップ・ダウンカウンタ221は、回転位置検出器20により出力されたパルス数をカウントすることで、駆動用モータ16の回転位置を検出するものである。
アップ・ダウンカウンタ222は、回転位置検出器21により出力されたパルス数をカウントすることで、駆動用モータ18の回転位置を検出するものである。
尚、駆動用モータ16,18は互いに逆方向に回転し、把持爪11,12が開くに従い、アップ・ダウンカウンタ221,222による出力が増加するものとする。
【0025】
把持爪位置変換部223は、駆動用モータ16の回転位置とリニアガイド13軸上の把持爪11の位置との関係について予め定められた参照データに基づいて、アップ・ダウンカウンタ221により検出された駆動用モータ16の回転位置を、リニアガイド13軸上の把持爪11の位置(把持爪位置P1)に変換するものである。
把持爪位置変換部224は、駆動用モータ18の回転位置とリニアガイド13軸上の把持爪12の位置との関係について予め定められた参照データに基づいて、アップ・ダウンカウンタ222により検出された駆動用モータ18の回転位置を、リニアガイド13軸上の把持爪12の位置(把持爪位置P2)に変換するものである。
【0026】
推力算出部225は、把持爪位置変換部223,224により換算された把持爪位置P1,P2と、入力された目標把持力fr/2及び把持爪中心目標位置Prとに基づいて、把持爪11,12の推力指令値f1,f2を算出するものである。この推力算出部225は、減算器234、比較器235、増幅器236、加算器237及び減算器238から構成されている。
【0027】
減算器234は、把持爪位置変換部223により換算された把持爪位置P1から、把持爪位置変換部224により換算された把持爪位置P2を減算するものである。ここで、把持爪11の位置P1から把持爪12の位置P2を減算した値は、把持中心のずれ量(把持中心位置ずれPd)を表し、実際のずれ量はP1−P2を2で割った値となる。尚、把持爪11の位置P1と把持爪12の位置P2とを加算した値は、把持爪11,12の開いた間隔を表す。
【0028】
比較器235は、入力された把持爪中心目標位置Prの反転値から、減算器234から入力された把持中心位置ずれPdを加算するものである(目標位置Prはリニアガイド13中心を零として正負の値をとる)。
増幅器236は、比較器235により得られた値を、所定のゲインGで増幅するものである。
【0029】
加算器237は、入力された目標把持力fr/2と、増幅器236により得られた値とを加算して、把持爪11の推力指令値f1とするものである。
減算器238は、入力された目標把持力fr/2から、増幅器236により得られた値を減算して、把持爪12の推力指令値f2とするものである。
【0030】
目標推力変換部226は、駆動用モータ16の回転トルクとリニアガイド13軸上の把持爪11の発生推力との関係について予め定められた参照データに基づいて、推力算出部225により算出された推力指令値f1と、把持爪位置変換部223により換算された把持爪位置P1とから、目標とする把持爪11の推力を発生するために必要な回転トルクを求めるものである。
目標推力変換部227は、駆動用モータ18の回転トルクとリニアガイド13軸上の把持爪12の発生推力との関係について予め定められた参照データに基づいて、推力算出部225により算出された推力指令値f2と、把持爪位置変換部224により換算された把持爪位置P2とから、目標とする把持爪12の推力を発生するために必要な回転トルクを求めるものである。
【0031】
速度検出部228は、アップ・ダウンカウンタ221により検出された駆動用モータ16の回転位置を微分して把持爪11の移動速度を算出するものである。
速度検出部229は、アップ・ダウンカウンタ222により検出された駆動用モータ18の回転位置を微分して把持爪12の移動速度を算出するものである。
【0032】
減算器230は、目標推力変換部226により求められた回転トルクから、速度検出部228により得られた値を減算し、減算器231は、目標推力変換部227により求められた回転トルクから、速度検出部229により得られた値を減算して、各々のモータ駆動用ドライバ232,233に速度成分をフィードバックする。これにより、把持爪位置制御の安定化を行うことができる。
【0033】
モータ駆動用ドライバ232は、減算器230を介して目標推力変換部226から入力された回転トルクに基づいて、駆動用モータ16が同じ値の回転トルクを発生するように制御するものである。
モータ駆動用ドライバ231は、減算器231を介して目標推力変換部227から入力された回転トルクに基づいて、駆動用モータ18が同じ値の回転トルクを発生するように制御するものである。
【0034】
次に、上記のように構成された電動ハンドにおいて、把持力を一定に保ったまま位置やコンプライアンス調整機能を実現する方法について詳細に説明する。尚、把持爪11,12が閉じた状態におけるリニアガイド13軸上の把持爪11,12の位置を原点とし、そのときの回転位置検出器20,21の回転位置を零とする。
【0035】
まず、単に把持力を一定に保つ場合について説明する(把持中心位置ずれPd及び把持爪中心目標位置Prが零の場合)。
この場合、目標推力変換部226,227の入力には、加減算器238,239を介して目標把持力frの1/2の値が把持爪11,12の推力指令値f1,f2として与えられる。
そして、この推力指令値f1,f2が与えられることによって、駆動用モータ16,18が互いに逆方向に回転し把持爪11,12が閉じる方向に移動し始める。その後、把持爪11,12が各々把持対象物に接触し停止した時点で把持動作が完了する。
【0036】
このときの把持力は、f1+f2であり、把持爪11,12の中心位置に関係なく常に目標把持力frと等しくなっている。しかしながら、この状態では外から力を加えると把持爪中心の位置は動いてしまう。
【0037】
次に、把持力を常に一定に保ったままコンプライアンス機能を持たせる方法について説明する(把持爪中心目標位置Prが零の場合)。
図3において、減算器234により把持爪11の位置P1から把持爪12の位置P2を減算した値は把持中心のずれ量(把持中心位置ずれPd)を表し、実際のずれ量はP1−P2を2で割った値となることは前に説明した。
【0038】
そして、この把持中心位置ずれPdを比較器235及び増幅器236を介して加算器237で把持爪11の目標把持力fr/2に加算すると同時に、減算器238で把持爪12の目標把持力fr/2から減算する。
【0039】
ここで把持中心位置ずれPdが零でない場合を考える。このとき、把持爪11の推力指令値f1と把持爪12の推力指令値f2は、増幅器236のゲインをGとすると式(1)と式(2)で表される。
f1=fr/2+G・Pd (1)
f2=fr/2−G・Pd (2)
【0040】
また、式(1)と式(2)における把持爪11の発生推力と把持爪12の発生推力は互いに向きが逆であるため、把持力は式(3)、把持中心位置ずれPdに比例して発生する位置ずれ応力は式(4)で表される。
把持力=f1+f2=(fr/2+G・Pd)+(fr/2−G・Pd)=fr
(3)
位置ずれ応力=f1−f2=(fr/2+G・Pd)−(fr/2−G・Pd)=2G・Pd (4)
【0041】
上式より、把持力は把持中心位置ずれPdの影響を受けず一定値frであり、把持中心位置ずれPdに応じて発生する位置ずれ応力は、その大きさが把持中心位置ずれPdに比例し、向きが把持中心位置方向であることが分かる。
このことは、本発明の構成により、把持力を変えないでコンプライアンス機能をもつ電動ハンドが実現できることを意味する。
【0042】
次に、把持力を常に一定に保ったまま把持対象物を任意の位置に移送する方法について説明する。
図3において、把持中心位置ずれPdを比較器235及び増幅器236を介して加算器237で把持爪11の目標把持力fr/2に加算すると同時に、減算器238で把持爪12の目標把持力fr/2から減算することで、把持力を変えないでコンプライアンス機能をもたせることができることは前に説明した。
【0043】
ここで、比較器235に入力される把持爪中心目標位置Prが零ではない場合を考える。このとき、把持爪11の推力指令値f1と把持爪12の推力指令値f2は、増幅器236のゲインをGとすると式(5)と式(6)で表される。
f1=fr/2+G・(Pd−Pr) (5)
f2=fr/2−G・(Pd−Pr) (6)
【0044】
従って、把持力と把持爪中心目標位置Prに対する把持中心位置ずれPdで発生する位置ずれ応力は式(7)と式(8)で表される。
把持力=f1+f2=(fr/2+G・(Pd−Pr))+(fr/2−G・(Pd−Pr))=fr (7)
位置ずれ応力=f1−f2=(fr/2+G・(Pd−Pr))−(fr/2−G・(Pd−Pr))=2G・(Pd−Pr) (8)
【0045】
上式より、把持力は把持中心位置ずれPdの影響を受けず一定値frであり、把持爪中心目標位置Prに対する把持中心位置ずれPdに応じて発生する位置ずれ応力は、その大きさが把持爪中心目標位置Prから把持中心位置ずれPdを減算した値(Pr−Pd)に比例し、向きが把持爪中心目標位置Pr方向であることが分かる。よって、把持爪11,12は把持力を一定に保ったまま把持爪中心目標位置Prまで把持対象物を移送することができる。
【0046】
尚、実施の形態1では、駆動用モータ16,18の回転運動をカム17,19とリニアガイド13で直線運動に変換する形態の電動ハンドについて説明したが、駆動用モータ16,18に直線的な動作を行うリニアモータなどを用いた形態の電動ハンドであってもよい。後者の場合、駆動用モータ16,18の発生推力がそのまま把持爪11,12の推力となるので、
図3の制御部22における目標推力変換部226,227の入力と出力の値が等しくなる。
【0047】
また、本発明では、従来構成に対して駆動用モータ16,18の数が増えている。これに関して、例えば同定格の駆動モータを2個使用した場合、把持力も倍増するので、従来構成で推力を倍にした場合と比較してスペース面で不利になることもない。
【0048】
以上のように、この実施の形態1によれば、所定方向に移動することで対象物を把持する複数の把持爪11,12と、各把持爪11,12に対となって設けられ、対応する把持爪11,12を独立に移動させる駆動用モータ16,18と、駆動用モータ16,18を制御する制御部22とを備え、制御部22は、各把持爪11,12が発生する推力の加算値が一定になるようにして当該各把持爪11,12の把持力を制御するとともに、当該各把持爪11,12が発生する推力の差分に基づき当該把持爪11,12の移動方向を制御するように構成したので、形状が複雑で比較的寸法誤差の多い部品を組み立てる際に、過大な力が発生しても吸収して倣わせることができる。
【0049】
すなわち、各々独立した駆動用モータ16,18により所定方向に移送される複数の把持爪11,12が発生する推力の加算値が一定になるように制御するように構成したので、対象物を把持爪11,12の任意の位置で把持しても常に把持力が一定になる。
また、各々独立した駆動用モータ16,18により所定方向移送される複数の把持爪11,12が発生する推力の差分に基づき把持爪11,12の移動方向を制御するように構成したので、把持力を一定に保ったまま任意の位置に対象物を移送できる。
また、各々独立した駆動用モータ16,18により所定方向移送される複数の把持爪11,12が発生する推力の差分を、把持爪中心の所定の基準位置からのずれ量に比例するように構成したので、把持力を一定に保ったままコンプライアンス機能を持たせることができる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では、把持爪11,12及び駆動用モータ16,18の数が2つであり、当該把持爪11,12の移動方向が1軸である電動ハンドを用いた場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、例えば、把持爪及び駆動用モータの数を3つとし、当該把持爪の移動方向が2軸又は3軸である電動ハンドを用いるようにしてもよい。以下、3軸の電動ハンドに本発明の部品組み立て装置を適用した場合について示す。
【0051】
実施の形態2の部品組み立て装置を適用した電動ハンドの概要について示す。
図4はこの発明の実施の形態2に係る部品組み立て装置を適用した電動ハンドによる丸棒の把持を示す図であり、
図5は電動ハンドの制御ブロックの構成例を示す図である。尚、
図5では、把持爪23〜25の記載を省略している。
【0052】
実施の形態2の電動ハンドには、
図4,5に示すように、所定方向に移動することで対象物を把持する把持爪23〜25が設けられている。3つの把持爪23〜25は、所定の一点を中心に半径方向に120°間隔で等距離に配置されている。この把持爪23〜25は、リニアガイド(不図示)により支持され、当該リニアガイドの軸方向に各々独立して移動可能となっている。
また、把持爪23〜25には、各々の移動面に対して略垂直な向きにピン(不図示)が立てられている。各ピンは、実施の形態1と同様に、各独立した駆動用モータ(駆動部)26〜28の回転軸を中心に螺旋状に配置されたカム溝を有するカム29〜31により、各々独立して案内される。
【0053】
ここで、実施の形態1と同様に、把持爪23〜25が一番開いた状態においては、把持爪23〜25のピンはカム溝の外周近傍に案内されている。一方、駆動用モータ26〜28が特定方向に回転し始めると、ピンがカム溝に案内されることにより、把持爪23〜25がリニアガイドに沿って各々把持中心方向に移動する。そして、ピンがカム溝の内周近傍まで案内された時点で把持爪23〜25が閉じる構成となっている。
【0054】
尚、カム溝は螺旋状に構成されているため、駆動用モータ26〜28の回転トルクが一定でも、ピンがカム29〜31の外周に向かうほど、つまり把持爪23〜25が開くにつれて、把持力は低下する。
また、上記リニアガイド及びカム29〜31は、駆動用モータ26〜28の回転トルクを把持爪23〜25の推力に変換するトルク変換機構を構成する。
【0055】
また、
図5に示すように、駆動用モータ26〜28には、それぞれ駆動用モータ26〜28の回転位置を検出可能なロータリーエンコーダなどの回転位置検出器32〜34が取り付けられている。そして、制御部35は、回転位置検出器32〜34から出力されたパルス数を取得して駆動用モータ26〜28の回転位置を得ることで、駆動用モータ26〜28の制御を行う。この際、制御部35は、各把持爪23〜25が発生する推力f1,f2,f3の加算値が一定になるようにして当該各把持爪23〜25の把持力を制御するとともに、当該各把持爪23〜25が発生する推力の差分に基づき当該把持爪23〜25の移動方向を制御する。
【0056】
次に、制御部35の構成について、
図5を参照しながら説明する。
制御部35は、
図5に示すように、アップ・ダウンカウンタ351〜353、把持爪位置変換部354〜356、推力算出部357、目標推力変換部358〜360、速度検出部361〜363、減算器364〜366及びモータ駆動用ドライバ367〜369から構成されている。
【0057】
アップ・ダウンカウンタ351は、回転位置検出器32により出力されたパルス数をカウントすることで、駆動用モータ26の回転位置を検出するものである。
アップ・ダウンカウンタ352は、回転位置検出器33により出力されたパルス数をカウントすることで、駆動用モータ27の回転位置を検出するものである。
アップ・ダウンカウンタ353は、回転位置検出器34により出力されたパルス数をカウントすることで、駆動用モータ28の回転位置を検出するものである。
尚、把持爪23〜25が開くに従い、アップ・ダウンカウンタ351〜353による出力が増加するものとする。
【0058】
把持爪位置変換部354は、駆動用モータ26の回転位置とリニアガイド軸上の把持爪23の位置との関係について予め定められた参照データに基づいて、アップ・ダウンカウンタ351により検出された駆動用モータ26の回転位置を、リニアガイド軸上の把持爪23の位置(把持爪位置P1)に変換するものである。
把持爪位置変換部355は、駆動用モータ27の回転位置とリニアガイド軸上の把持爪24の位置との関係について予め定められた参照データに基づいて、アップ・ダウンカウンタ352により検出された駆動用モータ27の回転位置を、リニアガイド軸上の把持爪24の位置(把持爪位置P2)に変換するものである。
把持爪位置変換部356は、駆動用モータ28の回転位置とリニアガイド軸上の把持爪25の位置との関係について予め定められた参照データに基づいて、アップ・ダウンカウンタ353により検出された駆動用モータ28の回転位置を、リニアガイド軸上の把持爪25の位置(把持爪位置P3)に変換するものである。
【0059】
推力算出部357は、把持爪位置変換部354〜356により換算された把持爪位置P1〜P3と、入力された目標把持力fr/3、X方向目標位置及びY方向目標位置に基づいて、把持爪23〜25の推力指令値f1〜f3を算出するものである。この推力算出部357は、減算器370、増幅器371、比較器372,373、増幅器374〜376、加減算器377、加算器378及び減算器379から構成されている。
【0060】
減算器370は、把持爪位置変換部354により換算された把持爪位置P1から、把持爪位置変換部355により換算された把持爪位置P2を減算するものである。
増幅器371は、減算器370により得られた値に、所定のゲイン(1/√3)を掛けるものである。
【0061】
比較器372は、入力されたX方向目標位置の反転値から、増幅器371から入力された値を加算するものである(目標位置はリニアガイド中心を零として正負の値をとる)。
比較器373は、入力されたY方向目標位置の反転値から、把持爪位置変換部356から入力された把持爪位置P3を加算するものである(目標位置はリニアガイド中心を零として正負の値をとる)。
増幅器374は、比較器372により得られた値を、所定のゲインGxで増幅するものである。
増幅器375は、比較器373により得られた値を、所定のゲインGyで増幅するものである。
増幅器376は、増幅器375により得られた値を、所定のゲイン(1/2)で増幅するものである。
【0062】
加減算器377は、入力された目標把持力fr/3から、増幅器374により得られた値を減算し、増幅器376により得られた値を加算して、把持爪23の推力指令値f1とするものである。
加算器378は、入力された目標把持力fr/3と、増幅器374により得られた値と、増幅器376により得られた値とを加算して、把持爪24の推力指令値f2とするものである。
減算器379は、入力された目標把持力fr/3から、増幅器375により得られた値を減算して、把持爪25の推力指令値f3とするものである。
【0063】
目標推力変換部358は、駆動用モータ26の回転トルクとリニアガイド軸上の把持爪23の発生推力との関係について予め定められた参照データに基づいて、推力算出部357により算出された推力指令値f1と、把持爪位置変換部354により換算された把持爪位置P1とから、目標とする把持爪23の推力を発生するために必要な回転トルクを求めるものである。
目標推力変換部359は、駆動用モータ27の回転トルクとリニアガイド軸上の把持爪24の発生推力との関係について予め定められた参照データに基づいて、推力算出部357により算出された推力指令値f2と、把持爪位置変換部355により換算された把持爪位置P2とから、目標とする把持爪24の推力を発生するために必要な回転トルクを求めるものである。
目標推力変換部360は、駆動用モータ28の回転トルクとリニアガイド軸上の把持爪25の発生推力との関係について予め定められた参照データに基づいて、推力算出部357により算出された推力指令値f3と、把持爪位置変換部356により換算された把持爪位置P3とから、目標とする把持爪25の推力を発生するために必要な回転トルクを求めるものである。
【0064】
速度検出部361は、アップ・ダウンカウンタ351により検出された駆動用モータ26の回転位置を微分して把持爪23の移動速度を算出するものである。
速度検出部362は、アップ・ダウンカウンタ352により検出された駆動用モータ27の回転位置を微分して把持爪24の移動速度を算出するものである。
速度検出部363は、アップ・ダウンカウンタ353により検出された駆動用モータ28の回転位置を微分して把持爪25の移動速度を算出するものである。
【0065】
減算器364は、目標推力変換部358により求められた回転トルクから、速度検出部361により得られた値を減算し、減算器365は、目標推力変換部359により求められた回転トルクから、速度検出部362により得られた値を減算し、減算器366は、目標推力変換部360により求められた回転トルクから、速度検出部363により得られた値を減算して、各々のモータ駆動用ドライバ367〜369に速度成分をフィードバックする。これにより、把持爪位置制御の安定化を行うことができる。
【0066】
モータ駆動用ドライバ367は、減算器364を介して目標推力変換部358から入力された回転トルクに基づいて、駆動用モータ26が同じ値の回転トルクを発生するように制御するものである。
モータ駆動用ドライバ368は、減算器365を介して目標推力変換部359から入力された回転トルクに基づいて、駆動用モータ27が同じ値の回転トルクを発生するように制御するものである。
モータ駆動用ドライバ369は、減算器366を介して目標推力変換部360から入力された回転トルクに基づいて、駆動用モータ28が同じ値の回転トルクを発生するように制御するものである。
【0067】
次に、上記のように構成された電動ハンドにおいて、
図4(a)に示すように、半径rの丸棒を、個々の把持爪推力f1〜f3が等しい状態で把持している場合を考える。このとき、丸棒の中心位置は個々の把持爪中心軸が交わる点と一致する。
【0068】
次に、XY平面における個々の軸方向のコンプライアンスを独立して制御する方法について述べる。ここで、丸棒の中心位置が個々の把持爪中心軸が交わる点と一致している状態(
図4(a))から水平方向にΔX、垂直方向にΔYだけずれた状態(
図4(b))を考える。
【0069】
このとき、把持爪23の位置をP1、把持爪24の位置をP2、把持爪25の位置をP3、把持爪23の基準位置からの移動量をΔp1、把持爪24の基準位置からの移動量をΔp2、把持爪25の基準位置からの移動量をΔp3とすると、丸棒の水平方向ずれ量ΔXと垂直方向ずれ量ΔYとの関係は幾何学的に次式で表される。
ΔX=1/√3(P1−P2)=1/√3(Δp1+Δp2) (9)
ΔY=P1+P2=Δp1−Δp2=Δp3 (10)
【0070】
また、把持爪23の発生する推力をf1、把持爪24の発生する推力をf2、把持爪25の発生する推力をf3とすると、丸棒に加わる力の水平方向成分fxと垂直方向成分fyとの関係も幾何学的に次式で表現できる。
fx=√3/2(f1−f2) (11)
fy=1/2(f1+f2)−f3 (12)
【0071】
次に、上式の関係より3軸方向に移送可能な把持爪23〜25を持つ電動ハンドで、XY平面における個々の軸方向のコンプライアンスを独立して制御する方法について具体的に説明する。
図5において、把持爪位置P1から把持爪位置P2を減算し係数1/√3を掛けると式(9)に示すΔXが求められる。
またΔYは把持爪位置P3の基準位置からのずれ量Δp3そのものである。
【0072】
次に、求められたΔXは
図4(b)に示すX方向目標位置と比較されるが、3つの把持爪23〜25が所定の一点を中心に半径方向に120°間隔で等距離に配置されている状態で把持する場合の目標位置を零として、X軸方向のコンプライアンスの強さを決める係数Gxを掛けた後、駆動用モータ27の推力指令を増やすと同時に、駆動用モータ26の推力指令を減らす様に推力指令に加減算する。
【0073】
上記のように構成すると、駆動用モータ26の推力指令に加算する値と、駆動用モータ27の推力指令より減算する値が、同じ値で逆方向であるため、X軸方向にΔXのずれが発生した場合、そのずれ量に比例してもとの位置に戻そうとする力が発生するため、X軸方向のコンプライアンス動作を実現できる。
【0074】
尚、前記のX軸方向のコンプライアンス動作は、駆動用モータ26と駆動用モータ27のみで実現されており、駆動用モータ28は関与していない。
【0075】
また、求められたΔYは
図4(b)に示すY方向目標位置と比較されるが、3つの把持爪23〜25が所定の一点を中心に半径方向に120°間隔で等距離に配置されている状態で把持する場合の目標位置を零として、Y軸方向のコンプライアンスの強さを決める係数Gyを掛けた後、駆動用モータ26と駆動用モータ27の推力指令を増やすと同時に、駆動用モータ28の推力指令を減らすように推力指令に加減算する。
【0076】
このとき駆動用モータ26と駆動用モータ27の推力指令に加算する値は、駆動用モータ28の推力指令から減算する値の1/2となる。
【0077】
上記のように構成すると、駆動用モータ26と駆動用モータ27の推力指令に加算する値と、駆動用モータ28の推力指令より減算する値が、同じ値で逆方向であるため、Y軸方向にΔYのずれが発生した場合、そのずれ量に比例してもとの位置に戻そうとする力が発生しY軸方向のコンプライアンス動作を実現できる。
【0078】
尚、前記のY軸方向のコンプライアンス動作は、駆動用モータ26と駆動用モータ27及び駆動用モータ28で実現される。
【0079】
ここで、
図5における個々の把持爪の推力指令値f1〜f3は次式で表される。
推力指令値f1=fr/3−GxΔX+Gy/2ΔY (13)
推力指令値f2=fr/3+GxΔX+Gy/2ΔY (14)
推力指令値f3=fr/3−GyΔY (15)
【0080】
また、把持力は次式で表される。
把持力f1+f2+f3=(fr/3+fr/3+fr/3)+(−GxΔX+Gy/2ΔY+GxΔX+Gy/2ΔY)−GyΔY=fr+GyΔY−GyΔY=fr (16)
【0081】
上式から、3軸方向に移送可能な把持爪23〜25を持つ電動ハンドで、XY平面における個々の軸方向のコンプライアンスを独立して制御しながら、把持力を常に一定にすることが本発明の構成により可能であることがわかる。
【0082】
尚、本願発明はその発明の範囲内において、実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは実施の形態の任意の構成要素の省略が可能である。