(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに、前記ピストンスカートを前記ピストンクラウンに溶接することを、前記ピストンスカートを前記ピストンクラウンにレーザ溶接することとして確立することを含む、請求項1記載の方法。
さらに、前記冷却通路の下側の境界を形成する冷却通路カバープレートを備え、前記冷却通路は、概して前記ピストンクラウンと前記冷却通路カバープレートとによって閉鎖されている、請求項7記載のピストンアセンブリ。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】典型的なピストンアセンブリの斜視図である。
【
図2A】典型的なピストンアセンブリの部分的な断面図である。
【
図2B】ピストンピンボアに沿った典型的なピストンアセンブリの部分的な断面図である。
【
図3】典型的なピストンクラウンブランクの斜視図である。
【
図4A】典型的なピストンスカートブランクの下側の斜視図である。
【
図4B】
図4Aの典型的なピストンスカートブランクの上側の斜視図である。
【
図5A】ピストンを組み立てる典型的な方法のプロセス流れ図である。
【
図5B】ピストンクラウンをピストンスカートに固定する典型的なサブプロセスの典型的なプロセス流れ図である。
【0008】
詳細な説明
明細書において"典型的な例示"、"例"又は同様の言語への言及は、典型的なアプローチに関して説明される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも1つの例示に含まれることを意味する。明細書における様々な場所における"例示において"というフレーズ又は同様のタイプの言語の出現は、必ずしも全てが同じ例示又は例に言及しているわけではない。
【0009】
ここで、ピストンアセンブリ及びこのようなアセンブリを製造する方法の様々な典型的な例示が提供される。典型的なピストンアセンブリは、ピストンクラウンと、クラウンの中央開口に収容されたピストンスカートとを有する。ピストンクラウンは、冷却通路を少なくとも部分的に形成するリングベルト部を有する。クラウン及びスカートはそれぞれ、さらに、クラウン及びスカートの外周部に沿って延びる、対応する係合面を有する。スカート係合面及びクラウン係合面は、概して、互いに固定されており、クラウン及びスカートは協働して、連続的な上部燃焼ボウル面を形成している。スカート及びクラウンは協働して、ピストンクラウンの外周部に沿って、半径方向外側の間隙を形成している。
【0010】
ピストンアセンブリを製造する典型的な方法は、冷却通路を少なくとも部分的に形成するリングベルト部を有するピストンクラウンを提供することを含む。典型的な方法は、さらに、クラウン及びスカートが協働して連続的な上部燃焼ボウル面を形成するようにクラウンの中央開口にピストンスカートを収容することを含む。典型的な方法は、さらに、スカート及びクラウンの対応する係合面に沿ってスカートをクラウンに固定することを含む。スカート及びクラウンは、一般に、協働してピストンクラウンの外周部に沿って半径方向外側の間隙を形成する。
【0011】
ここで
図1、
図2A及び
図2Bを参照すると、典型的なピストンアセンブリ100が例示されている。ピストンアセンブリ100は、ピストンクラウン102と、クラウン102の中央開口112に収容されたピストンスカート104とを有する。これにより、ピストンクラウン102及びスカート104は、燃焼ボウル120を形成している。クラウン102は、ピストンアセンブリ100を収容するエンジンボア(図示せず)に対してシールするように構成されたリングベルト部106を有する。例えば、リングベルト部106は、ピストンリング(図示せず)を収容する1つ以上の周方向溝107を形成しており、ピストンリング自体は、エンジンボア内でのピストンアセンブリ100の往復運動中にエンジンボア面に対してシールする。クラウン102内へのスカート104の収容は、クラウン102及び/又はピストンアセンブリ100の寸法及び形状に関して自由度を提供し、例えば、より低い全体クラウン高さ及び/又はより低いピストンアセンブリ100の重心を提供する。
【0012】
ピストンスカート104は、概して、ボア内での往復運動中にピストンアセンブリ100を安定させるために、例えばエンジンボア(図示せず)の面と係合することによって、エンジン運転中にクラウン102を支持する。例えば、スカート104は外面126を有する。この外面126は、概して、ピストンアセンブリ100の外周部の少なくとも一部に沿って円形の外部形状を形成している。外部形状は、エンジンボア面に対応しており、エンジンボア面は概して円筒状であってよい。円形のスカート面126は、ピストンがボア内を往復移動する際に、概してボア面に沿って摺動する。スカート104は、好適なあらゆる形式で、例えば鍛造、冷間成形、機械加工又は同様のものによって形成される。
【0013】
スカート104は、ピストンピンボス105も形成している。ピストンピンボス105は、概して、ピストンピン(図示せず)を収容するように構成された開口を備えて形成されている。例えば、ピストンピンは、ピストンピンボス105における開口に挿入され、これにより、概してスカート104をコンタクティングロッド(図示せず)に固定する。
【0014】
クラウン102のリングベルト部106は、
図2A及び
図2Bに最も詳細に示したように、冷却通路108を少なくとも部分的に形成している。冷却通路108は、概してピストンクラウンの外周部に沿って延びており、運転中に、冷却材、例えばエンジンオイルを循環させ、これにより、ピストンの動作温度を低下させる。さらに、冷却材の循環は、ピストン100における、特にピストンアセンブリ100の上側部分、例えばクラウン102及び燃焼ボウル120において、より安定した若しくは均一な温度の維持を促進する。
【0015】
冷却通路108は、概して、クラウン102内で完全に閉鎖されている。例えば、冷却通路108は、冷却通路カバープレート116(
図2A及び
図2Bに示されているが、
図1には示されていない)によって閉鎖されている。より具体的に言うと、カバープレート116は、冷却通路108の下側の境界を形成しており、これにより、クラウン102内で冷却通路108を閉鎖しており、冷却材が冷却通路108に自由に進入したり、冷却通路108から自由に逃げ出したりすることを防止する。それと同時に、オイル又はその他の冷却材が冷却通路108を通ってエンジン(図示せず)へ又はエンジンから、制御された状態で循環させられることができるように、1つ以上の入口(図示せず)及び/又は出口(図示せず)が設けられており、これにより、ピストン100及びピストン100の構成部材に関連した動作温度を低下させ及び/又は安定させる。
【0016】
図2Aに最も詳しく示したように、クラウン102とスカート104との間に周方向間隙Gが設けられている。以下でさらに説明するように、クラウン102とスカート104とが互いに固定された後、間隙Gがあることにより、概して、例えばあらゆる仕上げ作業、例えば機械加工のために及び/又はカバープレート116の装着のために冷却通路108へアクセスすることができる。1つの例示において、間隙は約8mm〜約15mmである。以下でさらに説明するように、このような間隙は、概して、冷却通路108へのカバープレート116の挿入及び/又は組付けのための十分なスペースを提供する。
【0017】
ピストンクラウン102とピストンスカート104とを固定接合することにより、ピストンアセンブリ100は概して一片若しくは"モノブロック"アセンブリとして形成される。以下でさらに説明するように、クラウン102及びスカート104である構成部材は係合面110,114において接合され、係合面110,114は、クラウン102とスカート104との間の唯一の結合部を形成する。1つの典型的な例において、
図2A及び
図2Bに最も詳しく示したように、境界面領域190は係合面110,114を含んでいる。したがって、クラウン102とスカート104とは別個の構成部材であるにもかかわらず、クラウンへの固定後にはピストンスカート104はピストンクラウン102に対して不動となるように、ピストンクラウン102は概してピストンスカート104とともに利用される。
【0018】
ピストンクラウン102及びピストンスカート104は、好適なあらゆる材料から構成されてよい。1つの典型的な例において、クラウン102及びスカート104は、同じ材料、例えば鋼から形成されている。別の例において、ピストンクラウン102は、ピストンスカート104と異なる材料から形成されていてもよい。したがって、ピストンクラウン102のために使用される材料は、ピストンスカート104とは異なる機械的特性、例えば、降伏点、引張強さ又は切欠靱性を有してよい。クラウン102及びスカート104のために、好適なあらゆる材料又は組合せが用いられてよい。単に例として、クラウン102及び/又はスカート104は、鋼材料、鋳鉄、アルミニウム材料、複合材又は粉末金属材料から形成されていてよい。クラウン102及びスカート104は、互いに異なるプロセスで形成されてよい。例えば、クラウン102は、概して一つの鋳造片であってよいのに対し、スカートは鍛造されてよい。好適なあらゆる材料及び/又は製造方法の組合せが用いられてよい。
【0019】
クラウン102及びスカート104は、好適なあらゆる形式で互いに固定されてよい。1つの典型的な例において、クラウン102及びスカート104は、クラウン102及びスカート104のそれぞれの円周に沿って延びた対応する係合面を形成している。より具体的に言えば、クラウン102は、概してクラウン102の外周部に沿って延びたクラウン係合面110を形成している。
図1、
図2A、
図2B及び
図2Cに最も詳しく示したように、クラウン係合面110は、少なくとも
図2A及び
図2Bにおける断面図で見た場合に、概して平坦な面を形成しており、この面は、ピストンスカート104の対応する係合面114と一致する。以下でさらに説明するように、スカート係合面114とクラウン係合面110とは、面110,114が互いに隣接して配置されるように、概して平行に一致させられている。係合面110,114は、単に例としての溶接作業又は接着剤結合などによって互いに固定され、これにより、クラウン102とスカート104とを互いに固定する。
【0020】
ピストンアセンブリ100の燃焼ボウル領域120において連続的な上部燃焼ボウル面Sを形成するようにクラウン102及びスカート104が協働するように、スカート104がクラウン102に固定される。例えば、
図2A、
図2B及び
図2Cに最も詳しく示したように、クラウン102が燃焼ボウル面Sの第1の半径方向外側部分122を形成するように、対応する係合面110及び114は燃焼ボウル120内で当接する。さらに、スカート104は、燃焼ボウル面Sの半径方向内側部分124を形成する。
【0021】
例えば面Sにおける分断及び/又は不連続が最小限になるように、燃焼ボウル面Sはスカート104とクラウン102との間の境界面をまたぐところで実質的に平滑である。このような分断若しくは不連続を最小限にすることは、概して、通常の長期運転中に係合面110及び114に沿ったクラウン102とスカート104との間の境界面のき裂又はその他の緩みを低減する。したがって、例えばピストンアセンブリ100を使用するエンジンの運転中に生じる摩耗による、燃焼ボウル面Sにおけるあらゆる欠陥又は故障が最小限に減じられる。以下でさらに説明するように、ピストンアセンブリ100の製造において用いられる溶接及び/又は機械加工作業は、燃焼ボウル面Sにおける表面凹凸を減じる。
【0022】
ピストンクラウン102とピストンスカート104とは、好適なあらゆる形式で互いに固定又は固定接合される。この形式は、単に例として、ビーム溶接、レーザ溶接、はんだ付けのような溶接方法、又は接着剤結合のような非溶接方法を含むが、これらに限定されない。1つの例において、ピストンクラウンとスカートとは、溶接プロセス、例えばレーザ溶接において接合され、この溶接プロセスにより、溶接ツールは、クラウン102とスカート104とを接合することに関連した溶接プロセスの前及び/又は後における最小限の機械加工作業を用いて、概して平滑な燃焼ボウル面120を形成する。
【0023】
レーザ溶接作業は、概して、関連する熱影響域のサイズを最小限にしながらも、クラウン102とスカート104との間の固体金属溶接を形成する。より具体的には、
図2A及び
図2Bに最も詳しく示したように、係合面110,114を含む境界面領域190は、溶接ツールによって作用され、これにより、境界面領域190においてクラウン102とスカート104とを接合する。1つの典型的な例において、約200μm〜約400μmの波長を有する溶接レーザが用いられる。溶接レーザは、概して、係合面110,114が溶接の関連する熱影響域に含まれるように、係合面110及び114を含む又は係合面110及び114にすぐ隣接した境界面領域190において熱影響域を伝播させるように用いられる。これにより、クラウン102とスカート104とは、係合面110,114に沿って互いに溶接される。1つの例示的な例において、係合面110,114の周方向範囲に沿って一連の複数の溶接部が形成される。別の典型的な例において、実質的にクラウン102及びスカート104の全体に沿って溶接部が延びるように、実質的に係合面110,114の全周に沿って延びる、概して連続的な溶接プロセスにおいて溶接レーザが使用される。
【0024】
レーザ溶接作業は、好適なあらゆる形式で行われてよい。2つの典型的な例が
図2Cに示されている。1つの例によれば、溶接レーザL
Aは、ピストンアセンブリ100に関して半径方向内側位置から係合面110,114に向かって方向付けられる。例えば、レーザL
Aは、燃焼ボウル領域120から半径方向外方へ係合面110及び114に向かって方向付けられる。溶接ゾーンは、概して、両方の係合面110,114を包囲しており、これにより、それぞれを互いに溶接する。言い換えれば、レーザL
Aは、レーザによって伝播させられる熱影響域がクラウン102とスカート104とを接合するように方向付けられる。
図2A及び
図2Bに最も詳しく示したように、レーザL
Aは、概して平坦な係合面110,114に対して概して平行に向けられるが、クラウン102とスカート104とを接合するために、少なくとも係合面110,114のそれぞれを含む境界面領域190において熱影響域を形成するのに十分なあらゆる角度が用いられてよい。以下でさらに説明するように、レーザL
Aは、レーザL
Aが接合深さを完全に貫通せず、これによりあらゆる溶接スパッタが減じられる又は完全に排除されるようなパワーであってよい。
【0025】
図2Cに示した択一的な典型的な例において、溶接レーザL
Bは、係合面110,114に向かって半径方向内方へ向けられる。より具体的に言えば、溶接レーザL
Bは、ピストンアセンブリ100の半径方向外方の位置から伝播させられ、係合面110,114に向かって方向付けられる。以下でさらに説明するように、レーザL
Bは、レーザL
Bが、係合面110,114に関連した接合深さ全体を貫通し、これにより、燃焼ボウル120内で、反対側の面において溶接スパッタが発生されるようなパワーであってよい。
【0026】
溶接レーザL
A,L
Bは、係合面110及び114に関連した接合深さと概して等しいか又は接合深さよりも小さい貫通深さにおいて係合面110,114に向かって方向付けられる。例えば、
図2Cに示したように、溶接レーザL
Aは、係合面110及び114に関連した接合深さ全体よりも小さな溶接深さにおいて係合面110,114に向かって方向付けられる。言い換えれば、
図2Cに示したように、レーザL
Aに関連した最大貫通深さと、冷却通路108の境界を形成する、接合部の反対側の面との間に、間隙D
1が提供されている。したがって、溶接部は、概して、係合面110,114の間の接合部を完全に通って延びていない。さらに、これは、冷却通路108における、又はカバープレート116(
図2Cには示されていない)の半径方向内側部分に関連した座面140のための、あらゆる溶接スパッタ又はその他の表面不連続を減じるか又は完全に排除する。これにより、座面140は比較的平滑なままであり、溶接作業後の冷却通路108の表面のさらなる機械加工のあらゆる必要性を最小限に減じる。1つの典型的な例において、間隙D
1は約1mmである。この例において、約1mmの間隙は、概して、溶接部によって影響されかつ接合される材料の量を最大限にする。同時に、間隙は、溶接スパッタが、接合部の反対側に、例えば座面140に隣接して蓄積するのを妨げるのに十分である。
【0027】
択一的に、接合深さ全体を貫通し、溶接接合部の反対側において、すなわち燃焼ボウル面120に沿って少なくとも少量の溶接スパッタを結果として生じる溶接レーザL
Bが示されている。溶接作業によって引き起こされる溶接スパッタの全体的な量又はその他の表面不連続を最小限に減じることが概して望ましいが、幾つかの例においては、ある量の溶接スパッタは許容できる。例えば、あらゆるスパッタの除去を容易にするために溶接作業後に燃焼ボウル面120は機械加工工具によって概して容易にアクセスされる。対照的に、溶接スパッタは、冷却通路108の比較的閉じられた空間内において容易に除去しにくく、したがって、半径方向外方へ方向付けられる場合には、レーザ、例えばレーザL
Aの貫通深さをより厳密に制御することがより望ましい。
【0028】
さらに加えて、溶接作業後の仕上げ機械加工プロセスのあらゆる必要性は、溶接作業の前に、例えば冷却通路108及びスカート104の周囲における、ピストンアセンブリ100の事前機械加工によって減じられる。例えば、クラウン102とスカート104とを接合する前にクラウン102とスカート104とを概して正確に製造することは、採用される様々な製造及び固定作業から生じる材料バリ、溶接スパッタ又はその他の不連続の除去の必要性を最小限に減じる。したがって、スカート104とクラウン102とを溶接した後のあらゆる所要の仕上げ機械加工作業は、複雑さ、程度及びコストが減じられる。
【0029】
ここで
図3、
図4A及び
図4Bを参照すると、固定後の機械加工作業の必要性を減じるピストンアセンブリ100の典型的な構成部材が示されている。より具体的に言えば、
図3は、ピストンクラウンブランク102′を示している。ピストンクラウンブランク102′は、最初に、鋳造又は機械加工される。ピストンクラウンブランク102′は、概して、予め形成された中央開口112′を有するドーナッツ状を形成している。さらに、ピストンクラウンブランク102′には、冷却通路108が予め成形される。例えば、ピストンクラウンブランク102′に、凹部108′、若しくは完成した通路108のその他の前段階が提供されてよい。ピストンクラウンブランク102′は、好適なあらゆる成形プロセス、例えば、鍛造、冷間鍛造、機械加工などを用いて、初期のドーナッツ形状から、ピストンクラウン102の最終形状に成形される。クラウンブランク102′の初期の"ドーナッツ"形状は、概して、クラウン102を完成させるための広範囲な成形作業、例えば鍛造又は機械加工の必要性を最小限に減じる。
【0030】
ここで
図4A及び
図4Bを参照すると、ピストンスカート104を形成するために使用されるピストンスカートブランク104′が示されている。スカートブランク104′は、最初、好適なあらゆる形式で、例えば鍛造及び/又は機械加工によって成形される。
図4A及び
図4Bに示したように、ピストンスカートブランク104′は、スカートブランク104′のそれぞれの側においてピンボス延長部105′を有する。ピンボス延長部105′は、最終的に、例えば鍛造作業によってピンボス105に成形される。さらに加えて、ピストンスカートブランク104′の上側は、概して、半径方向内側延長部124′を形成している。半径方向内側延長部124′は、最終的に、燃焼ボウル面Sの半径方向内側部分に成形される。ピストンスカートブランク104′は、外側面126′をも形成している。外側面126′は、最終的に、ピストンスカート104の概して円形の外面126に成形される。スカートブランク104′は、概して、冷却通路特徴部、例えばスカート104と一体のカバープレートを成形するために必要な余分な材料を少なくとも部分的に排除することによって、複雑さが単純化されかつ重量が減じられる。
【0031】
ここで
図5A及び
図5Bを参照して、ピストンを組み立てる方法の典型例が説明される。プロセス500は概してブロック502において開始し、ピストンクラウンが提供される。例えば、上記で説明したように、冷却通路108を少なくとも部分的に形成するリングベルト部106を有するピストンクラウン102が提供される。
【0032】
上記のように、ピストンクラウン102は、好適なあらゆるプロセスで形成されてよい。1つの典型的な例において、ピストンクラウン102は、ピストンクラウンブランク102′から成形される。例えば、ピストンクラウン102は、冷間成形プロセスにおいてピストンクラウンブランク102′から成形される。冷間成形プロセスにより、仕上げられたピストンクラウン102は加工硬化させられ、これにより、冷間成形プロセスによって強化される。さらに、上記で説明したように、ピストンクラウンブランク102′は、概して中央開口112′を形成している。中央開口112′は、最終的に、ピストンクラウン102の中央開口112に成形される。これにより、中央開口112′を提供することは、ピストンブランク102′の中央から材料を除去するための作業、例えば打抜きのあらゆる必要性を減じる又は排除する。プロセス500は次いでブロック504へ進む。
【0033】
ブロック504において、ピストンスカートは、クラウンの中央開口内に収容される。例えば、上記で説明したように、ピストンスカート104が提供され、ピストンスカート104は、ピストンクラウン102の中央開口112に収容される。さらに、クラウン102とスカート104とは、スカート104がクラウン102に収容された後に連続的な上部燃焼ボウル面Sを形成するように概して協働する。上述のように、スカート104は、好適なあらゆる形式において、例えば、鍛造、冷間成形等によって成形されてよい。
【0034】
クラウン102の開口112にスカート104を収容すると、対応する係合面110,114は、概して、燃焼ボウル120内で当接する。例えば、上記で説明したように、クラウン102は、燃焼ボウル面Sの半径方向外側部分を形成するのに対し、スカート104は、燃焼ボウル面Sの半径方向内側部分を形成する。さらに、スカート104とクラウン102とは、ピストンクラウン102の外周部に沿って延びた、半径方向外側の間隙Gを形成するように協働する。プロセスは次いでブロック506へ進む。
【0035】
ブロック506において、クラウン102は、対応する係合面110,114に沿ってスカート104に固定される。1つの典型的な例において、対応する係合面110,114は、概して、クラウン102とスカート104との間の唯一の結合部を形成し、これにより、ピストンアセンブリ100の組立てを単純化する。上述のように、クラウン102及びスカート104は、好適なあらゆる形式において互いに固定される。例えば、スカートとクラウンとは、溶接作業、例えばレーザ溶接において接合される。
【0036】
ここで
図5Bを参照すると、典型的なレーザ溶接プロセスが例示されている。例えば、ブロック600において、溶接レーザL
Aは、係合面110,114に向かって半径方向外方に、すなわち係合面110,114に関して半径方向内側位置から方向付けられる。これに代えて、ブロック606において、溶接レーザ、例えばレーザL
Bは、係合面110,114に関して半径方向外側位置から係合面110,114に向かって半径方向内方へ方向付けられる。その他の状況において、両方又は他のプロセスを同時に使用することが望ましい。
【0037】
上記でも述べたように、1つ以上の溶接レーザは、係合面110及び114に関連した接合深さと等しいか又は接合深さよりも小さい貫通深さで、係合面110,114に向かって方向付けられる。例えば、上記で説明された溶接レーザL
Aは、概して係合面110,114に沿った接合深さを完全に貫通していない溶接を形成する。これは、有利には、冷却通路108及び/又はカバープレート116(
図2Cには示されていない)の座面140におけるあらゆる溶接スパッタ又はその他の表面不連続を減じるか又は完全に排除する。これに代えて、溶接レーザ、例えばレーザL
Bは、接合部全体を貫通してよく、溶接接合部の反対側において少なくとも少量の溶接スパッタを結果として生じる。
【0038】
概して上記で説明したように、溶接接合部全体を貫通することにより、より多くの溶接スパッタが生じ、ひいては、機械加工などの付加的な溶接後の除去作業が要求される。しかしながら、溶接接合部全体の貫通は、2つの材料の間の接合の強度も高める。さらに、係合面110,114によって形成された残留する"シーム"は、ピストン作動中に温度及び/又は圧力が最大となる燃焼ボウル面Sから離れてシームが位置決めされる場合には、より許容可能である。したがって、より高い強度又は最小限の溶接後機械加工のどちらに高い優先度を与えるか応じて、溶接は、与えられた用途に対して最適化される。
【0039】
したがって、ブロック600において溶接が半径方向内方に向けられる
図5Bの典型的な例において、その後、ブロック602において燃焼ボウル面Sを機械加工する必要がある。この付加的なステップ(ブロック602)は、例えばブロック606において溶接が半径方向外方へ向けられる場合には不要である。
【0040】
ブロック606における溶接又はブロック602におけるボウル機械加工が完了すると、ブロック606において仕上げ機械加工作業が行われ、カバープレート116の装着を許容するために、冷却通路108における及び/又はカバープレート116に隣接するあらゆる所要の特徴を完成させる。例えば、溶接作業の完了時、さもなければピストンアセンブリ100の完全な最終組立て時に、表面欠陥を除去するために、ピストンアセンブリ100に僅かな機械加工作業が提供される。例えば、レーザ溶接作業に関連した溶接ゾーンの周囲の包含物(inclusion)は、機械加工作業によって除去される。1つの典型的な例において、冷却通路108を閉鎖するためにカバープレート116を保持するために使用される座面140をも仕上げながら、溶接作業によって生ぜしめられる包含物を除去するために、機械加工作業が用いられる。
【0041】
溶接作業後の仕上げ機械加工プロセスのためのあらゆる必要性は、溶接作業前の、ピストンアセンブリ100の、例えば冷却通路108及びスカート104の周囲における予備機械加工によって減じられる。例えば、クラウン102とスカート104とを接合する前のクラウン102及びスカート104の概して正確な成形は、用いられる様々な成形及び固定作業から結果として生じる材料バリ、溶接スパッタ又はその他の表面不連続の除去の必要性を最小限に減じる。したがって、スカート104及びクラウン102の溶接後のあらゆる所要の仕上げ機械加工作業は、複雑さ、程度及び/又はコストが減じられる。
【0042】
クラウン102とスカート104とが溶接されるところで、クラウン102とスカート104との間の溶接接合部は、溶接プロセス後の熱処理によって弛緩させられてよい。その代わりに、熱処理のあらゆる必要性を概して減じるために溶接作業中に溶加材材料、例えば溶加材ワイヤが使用されてよい。
【0043】
再び
図5Aを参照すると、ブロック508において、カバープレート116はピストンアセンブリ100に組み付けられ、これにより、概して冷却通路108を閉鎖する。より具体的に言えば、カバープレート116は、半径方向外側部分においてピストンクラウン102に固定され、半径方向内側部分においてスカート104の座面に固定されるように組み付けられる。
【0044】
したがって、ピストンアセンブリ100、及びアセンブリを形成する典型的な方法500は、概して、軽量ピストンアセンブリ100の単純化された製造を可能にする。さらに加えて、材料の選択における自由度、燃焼ボウルにおける溶接接合部の構成によって可能にされる、スカートとクラウンとの間の比較的小さな間隙、及び結果として生じる改良されたピストン動力学及び機能的動作により、ピストンアセンブリ100は、概して、改善された騒音/振動/ハーシュネス(NVH)特性を有する。例えば、減じられた摩擦は、エンジンボア面に沿った往復運動及び摺動により、ピストンアセンブリ100の振動の対応する減少を生じる。さらに加えて、ピストンアセンブリは、概してピストンアセンブリ100の剛性、及び材料選択における付加的な自由度の結果、より高い最大燃焼圧力を許容することもできる。さらに加えて、ある典型的な例において使用される、単純化された鍛造及び溶接プロセスにより、製造コストが減じられる。
【0045】
ここで説明されたプロセス、システム、方法、発見等に関し、このようなプロセス等のステップは、ある順序の連続にしたがって行われるものとして説明されているが、このようなプロセスは、説明されたステップが、ここに説明された順序以外の順序で行われることによって実施することができることを理解すべきである。さらに、複数のステップを同時に行うことができ、他のステップを加えることができ、又はここで説明されたあるステップを省略することができることを理解すべきである。言い換えれば、ここでのプロセスの説明は、ある実施の形態を例示する目的で提供されており、請求項に記載の発明を限定するものと解釈すべきではない。
【0046】
したがって、上記説明は、例示的であり、限定的でないことが意図されていると理解すべきである。提供された例以外の多くの実施の形態及び適用例が、上記説明を読むことにより明らかになるであろう。発明の範囲は、上記の説明に関して決定されるのではなく、その代わりに、添付の請求項に関して、これらの請求項が委任された均等物の全範囲とともに、決定されるべきである。将来の発展が、ここで検討された技術において生じるであろうこと、及び開示されたシステム及び方法はこのような将来の実施の形態に包含されることは予期及び意図されている。要するに、発明は、改良及び変更が可能であり、以下の請求項によってのみ限定されることを理解すべきである。
【0047】
請求の範囲で用いられる全ての用語は、ここで反対の明示がなされない限り、それらの最も広い合理的な構成、及び当業者によって理解される通常の意味が与えられていることが意図されている。特に、"a"、"the"、"said"のような単数の冠詞の使用は、請求項が反対の明確な限定を述べていない限り、示された構成要素の1つ以上を述べているものとして読まれるべきである。