(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用前はオリフィス(46)を備えた構成要素(2)の内側に隠されるように、注射部位に挿入するためオリフィス(46)を通って構成要素(2)に対して前進するように配置された中空注射針(4)を備えた注射デバイス(1)用の指ガードであって、構成要素(2)に取り付けられたばねワイヤ(48)を含み、解放されたときに、内側に撓んで指が入らないようにオリフィス(46)を本質的に塞ぐように偏倚した円弧状の横断線セクション(48.1)を含むが、針(4)がばねワイヤ(48)に触れずにオリフィス(46)を通って前進し得るように十分に中心からずれてとどまる、上記指ガード。
ノッチ(49)がオリフィス(46)の近傍で構成要素(2)の近位面に配置され、円弧状の横断線セクション(48.1)が、内側に撓むのを可能とされたときに、ノッチ(49)にひっかかるように配置されることを特徴とする、請求項1に記載の指ガード。
キャップ(44)が構成要素(2)のところに配置可能であり、キャップ(44)はオリフィス(46)内を延びるように配置された内部シリンダ(45)を含み、内部シリンダ(45)は、構成要素(2)に取り付けられたときに、円弧状の横断線セクション(48.1)が内側に撓むのを妨げるように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の指ガード。
構成要素(2)は、前進して針(4)を覆い、後退して針(4)を露出させるように配置された筒状の遮壁として配置されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の指ガード。
請求項4に記載の指ガードを備えた、液体薬剤(M)の用量を投与するための自動注射器(1)であって、シャシ(2)は針(4)、およびシリンジ(3)を封止し薬剤(M)を移動させるためのストッパ(6)を備えたシリンジ(3)を含むように構成され、シリ
ンジ(3)はシャシ(2)に対してスライド可能に配置され、自動注射器はさらに、
−起動時、
−針(4)をシャシ(2)内の覆われた位置からオリフィス(46)を通り前進位置に押すこと、
−シリンジ(3)を操作して薬剤(M)の用量を供給すること、
−薬剤(M)送達後、針(4)とともにシリンジ(3)を覆われた位置に後退させること、
が可能な駆動手段(8)、
−手動操作前は駆動手段(8)をロックするように構成され、手動操作時注射のために駆動ばね(8)を解放し得る起動手段(20)、
を含む、上記自動注射器。
【背景技術】
【0002】
注射物の投与は、ユーザおよび医療従事者に多くの危険と難題を精神的かつ物理的両面でもたらす方法である。
【0003】
注射デバイス(すなわち、薬剤容器から薬剤を送達し得る装置)は、典型的には、手動装置と自動注射器の2種類に分類される。
【0004】
手動装置では、ユーザは、針を介して流体を移動させるために機械的エネルギーを提供しなければならない。これは、典型的には、注射中にユーザが継続して押さなければならない何らかの形態のボタン/プランジャによってなされる。この手法はユーザにとって多くの欠点がある。ユーザがボタン/プランジャを押すのをやめると注射も停止する。これは、装置が適切に用いられない(すなわち、プランジャがその終端位置まで完全に押し込まれない)と、ユーザが送達し得る分量が1回分に満たないことを意味する。特に患者が高齢の場合または患者の器用さに問題がある場合には、注射に要する力がユーザにとって大き過ぎることがある。
【0005】
ボタン/プランジャの延長部が長過ぎることがある。そのため、ユーザはいっぱいに延ばされたボタンに届くのが不都合なことがある。注射に要する力とボタンの延長が組み合わされると、手が震える/揺れることになりかねず、そのために挿入された針が動くときに不快さが増すことになる。
【0006】
自動注射器装置は、注射治療における自己投与を患者にとってより容易にすることを目的としている。現在、自己投与注射により提供される治療には、糖尿病用の薬(インシュリンおよびより新しいGLP−1クラスの薬物)、片頭痛、ホルモン治療、抗凝固剤などが含まれる。
【0007】
自動注射器は、標準シリンジからの非経口薬物送達に含まれる動作を完全にまたは部分的に置き換える装置である。これらの動作は、保護シリンジ・キャップの取り外し、患者の皮膚への針の挿入、薬剤の注射、針の取り出し、針の遮蔽、装置の再使用の防止を含み得る。これにより、手動装置の欠点の多くが克服される。注射力/ボタンの延長、手の揺れ、および1回分に満たない送達の可能性が軽減される。注射のトリガは、例えば、トリガ・ボタンまたは針をその注射深さに到達させることなど、様々な手段によって行い得る。いくつかの装置では、流体を送達するエネルギーはばねによって提供される。
【0008】
特許文献1には、引張ばねが解放されたときにあらかじめ測定された量の流体薬物を自動的に注射する自動注射デバイスが開示されている。引張ばねは、解放されると、格納位置から展開位置にアンプルおよび注射針を移動させる。次いで、アンプル内に向かってピストンを前方に押し込む引張ばねによってアンプルの内容物が吐き出される。流体薬物が注射された後で、引張ばねに蓄積されたねじれが解放され、注射針が自動的に後退してその元の格納位置に戻る。
【0009】
通常、注射針には、針を無菌に保ち、かつ針を機械的な損傷から守るための保護ニードルシールドが設けられる。保護ニードルシールドは、シリンジが組み立てられる際に針に取り付けられる。注射に備えて、ユーザは保護ニードルシールドを取り外さなければならない。取り外しの最中およびその後で、針による突き刺し負傷の危険が、シリンジまたは注射デバイスの設計による程度の差はあるが増すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、針による突き刺し負傷からユーザの指を保護するための指ガードを提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1に記載の指ガードによって達成される。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は従属請求項で与えられる。
【0014】
本明細書の文脈では、近位という用語は注射中に患者を指し示す方向を指し、遠位という用語は患者から離れる反対方向を指す。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による指ガードは、使用前はオリフィスを備えた構成要素内に隠れ、オリフィスを通ってこの構成要素に対して相対的に前進して注射部位に挿入されるように配置された中空注射針を備えた注射デバイスにおいて適用されることを意図したものである。この指ガードは、この構成要素に取り付けられたばねワイヤを含み、ばねワイヤは、解放されたときに、内側に撓んで指が入らないようにオリフィスを本質的に塞ぐように偏倚した円弧状の横断線セクションを有するが、針がばねワイヤに触れずにオリフィスを通って前進し得るように十分に中心からずれたままである。このばねワイヤにより、使用前には針がオリフィスにできる限り近くなり、そのため、シリンジの移動量および自動注射器の全長が短くなるが、針による突き刺し負傷は依然として防止される。
【0016】
通常、中空針には、針を無菌に保ち、かつ針を機械的な損傷から守るための保護ニードルシールドが設けられる。
【0017】
この指ガードは、保護ニードルシールドに対しても、保護ニードルシールドの取外し装置、例えば注射デバイスのキャップの部品に対しても十分に広いオリフィスを保護し得る。指ガードがないと、保護ニードルシールドを取り外した後で、このような広いオリフィスに少なくとも子供の指が入り得る。この指ガードがあれば、オリフィスはほぼ2等分され、そのため指が入らない。
【0018】
ノッチがオリフィスの近傍で構成要素の近位面に配置されて、円弧状の横断線セクションを、それが解放され内側に撓むのを可能とされたときに、ひっかけるように配置されることがある。こうすると、ユーザによってばねワイヤが容易にわきに押されることがなく、したがって、針に対する安全が増す。さらに、キャップは、取り外した後では自動注射器に再度取り付けることができず、そのため、注射前に針が損傷したり、針先が鈍ったりすることがない。
【0019】
キャップは、保護ニードルシールドを取り外すためにオリフィス内を延びるように配置された内部シリンダを含むことがある。内部シリンダは、キャップが自動注射器に取り付けられるときに円弧状の横断線セクションが内側に撓むのを妨げるように構成し得る。
【0020】
指ガードが取り付けられる構成要素は、注射デバイスのシャシとして、または、前進して針を覆い、後退して針を露出させるように配置された筒状の遮壁として構成し得る。
【0021】
この指ガードは、液体薬剤の用量を投与するためのあらゆるタイプの注射デバイスにおいて適用し得る。
【0022】
一実施形態では、この指ガードは自動注射器において適用される。
【0023】
液体薬剤の用量を投与するための自動注射器は、
・中空針およびストッパを有するシリンジを含むように構成されたシャシを備えることができ、ストッパはシリンジを封止し薬剤を移動させるためのものであり、シリンジはシャシに対してスライド可能に配置され、自動注射器はさらに、
・駆動手段を備え、起動時、駆動手段は、
・針をシャシ内の覆われた位置からオリフィスを通り近位端を過ぎて前進位置に押すことができ、
・シリンジを操作して薬剤の用量を供給することができ、
・薬剤送達後、針とともにシリンジを覆われた位置に後退させることができ、自動注射器はさらに、
・手動操作前は駆動手段を圧力を受けた状態でロックするように構成され、手動操作後に駆動手段を解放して注射を行い得る起動手段を含む。
【0024】
従来の自動注射器は、まず、装置の本体内に針をいくらかの距離後退させて保持することによって針に対する安全を確保する。作動後、針は、針を隠す距離と必要とされる注射深さとを合計した距離だけ前方に移動する。上述した指ガードを用いることによって、針を隠す距離を安全に短くし得る。そのため、自動注射器をより短く、より携帯しやすく、かつユーザがより使いやすくし得る。
【0025】
駆動手段は、針を前進させ、薬剤の用量をプランジャを介して注射させるためにシャシ内の遠位端に基礎をおくように配置された圧縮ばねの形状の駆動ばねであることもある。駆動ばねは、シリンジを後退させるために、シャシ内での駆動ばねの基礎近位端に切り替わるように配置される。
【0026】
この単一の圧縮ばねは、針を挿入し、シリンジを完全に空にし、注射後にシリンジおよび針を安全な位置まで後退させために用いられる。そのため、シリンジおよび針を引き込むための、この動作はシリンジを前進させ薬剤の用量を注射する動作と比較すると反対の動作であるが、第2のばねは必要とされない。圧縮ばねの遠位端は固定され、近位端は、シリンジを前方に移動させて針を挿入し、ストッパを押し続けることによって注射に移行させる。注射が少なくともほぼ完了すると、圧縮ばねは、その近位端が底に達し、その結果、近位端がシャシ内で固定される。この時点で、圧縮ばねの遠位端はシャシ内での固定から解放される。この時点で、圧縮ばねはシリンジを反対方向に引っ張る。
【0027】
圧縮ばねを1つだけ用いることにより、必要とされる金属の量が少なくなり、その結果、重量および製造コストが減少する。
【0028】
後退スリーブはシリンジの周りに軸方向に可動に配置され得る。後退スリーブは、駆動ばねの遠位端で基礎を提供するように最大近位位置でシャシに固定可能である。後退スリーブは、解放され遠位方向に並進移動するときに、後退スリーブの中にシリンジを持ち込むように配置される。圧縮ばねは、圧縮ばねの遠位端が後退スリーブのスラスト面にもたれかかった状態で、かつ、圧縮ばねの近位端がプランジャにカップリングするように配置されたスラスト・カラーにもたれかかった状態で後退スリーブ全体にわたって巻き付けられ、それによってジョイント軸方向並進運動して針を前進させ薬剤の用量を注射する。スラスト・カラーは、後退のためプランジャからデカップルされるように配置される。
【0029】
駆動ばねはプランジャおよび後退スリーブ全体に巻き付くので、駆動ばねの長さは自動注射器の全長には加えられない。そのため、本発明による自動注射器を短くすることができる。
【0030】
本発明の一実施形態では、起動手段は、自動注射器の遠位端全体に配置される巻付けスリーブ・ボタンの形状のトリガ・ボタンとして配置される。トリガ・ボタンは、自動注射器の少なくともほぼ全長にわたって延びる。トリガ・ボタンは、近位方向への並進運動時、駆動ばねを解放するように配置される。注射のトリガとするために、自動注射器は注射部位、例えば患者の皮膚に押しつけられなければならない。ユーザ、例えば患者または介護者は、手全体で巻付けスリーブ・ボタンをつかみ、注射部位に押しつける。その結果、トリガ・ボタンは、近位方向に並進移動し駆動ばねを解放して注射サイクルを開始させる。本実施形態は、指1本による小さなボタンの操作を必要とせずにトリガをかけることができるので、器用さに問題がある人々に特によく適している。1本の指ではなく、手全体が用いられる。
【0031】
連動スリーブがシャシの近位端およびトリガ・ボタンとはめ込み式にされることがある。連動スリーブは、トリガ・ボタンに対して近位側の位置とシャシに対して遠位側の位置との間で縦方向に並進運動可能であり、かつ、近位側の位置に向かって、例えば連動ばねによって偏倚される。連動スリーブは、近位側の位置にありかつトリガ・ボタンが近位方向に並進移動した状態にあるとき、すなわち、トリガ・ボタンを作動させることによって注射のトリガがかけられており、その後、自動注射器が注射部位から外されて連動スリーブが最終的な近位側位置まで並進移動すると、後退スリーブを解放するように配置される。そうでない場合には、連動スリーブは後退スリーブの並進移動を妨げるように構成され、そのため、注射サイクルがすでに開始されており、ユーザが注射部位から自動注射器を外すと、シリンジは単に後退する。連動スリーブの近位側位置はトリガ・ボタンまたはトリガ・ボタンに取り付けられた構成要素によって制限されるので、トリガ・ボタンを作動させた後の連動スリーブの最終的な近位側位置は、トリガ・ボタンを作動させる前の初期近位側位置としてのシャシに対してより前方にある。
【0032】
後退スリーブを保持または解放するために、連動スリーブは遠位側に配置された少なくとも1つの脚部を備える。少なくとも1つの第3の弾性クリップが後退スリーブの近位端に配置され、各第3の弾性クリップ毎のそれぞれの突起がシャシ上に配置される。第3の弾性クリップおよび/または突起は、駆動ばねの負荷の下で第3の弾性クリップを突起から離れるように撓ませて両者の係合を解除して後退スリーブを解放するための傾斜部を示す。脚部は、連動スリーブが最終的な近位位置にありトリガ・ボタンが近位方向に並進移動した状態にあるときこの係合解除を可能にするように配置される。そうでない場合には、脚部は、第3の弾性クリップが突起から離れる方向に撓まないように第3の弾性クリップを支持して、両者の係合を保ち、後退スリーブを妨げて後退スリーブを並進移動させないように配置される。
【0033】
後退スリーブは少なくとも1つの移動シャッタを示し、シャシは固定シャッタを備えることがあり、これらのシャッタはプランジャの並進移動を制御するシャッタ機構を形成する。移動シャッタおよび固定シャッタは多数の規則的に離間したキャスタレーションを有する。後退スリーブが最大近位位置で固定されたときに移動シャッタのキャスタレーションが固定シャッタのキャスタレーションと位相がずれ、そのため、両シャッタの交互のキャスタレーションによる表面を生成してそれぞれの第1のクリップがその表面に沿って走行する。第1のクリップは、その表面の高さに保持されているとき、プランジャに結合され、スラスト・カラーをプランジャに結合させたままにするように配置される。後退スリーブの遠位方向への並進運動で、移動シャッタは固定シャッタと位相が合って連続したキャスタレーション間の隙間によりその表面を規則的に中断し、それによって、これらの隙間内または最も近位側のキャスタレーションの背後に向かって第1のクリップが内側に撓む。駆動ばねの負荷の下で、第1のクリップおよび/またはスラスト・カラーの少なくとも1つの傾斜部によって第1のクリップが内側に撓む。第1のクリップが内側に撓むことによって、スラスト・カラーがプランジャからデカップルする。その結果、プランジャは、もはや近位方向に押されず、シリンジおよび針の後退を妨げず、そのため、シリンジおよび針はプランジャとともに後退し得る。
【0034】
デカップリングスリーブが、駆動ばねの内側で後退スリーブの周りに配置されることがある。デカップリングスリーブは、遠位端でプランジャに取り付けられる。したがって、デカップリングスリーブはプランジャの一部とみなし得る。しかし、2つの異なる部品を有することが組立ての目的から好ましい。起動手段の手動操作前に、スラスト・カラーは、第1のクリップおよびデカップリングスリーブを介して後退スリーブにカップリングされる。起動手段は、起動前はデカップリングスリーブと後退スリーブとのデカップリングを妨げ、起動でデカップリングが可能にされるように配置される。この状況では後退スリーブはシャシに結合されているので、起動手段を作動させる前に注射を開始することはできない。
【0035】
駆動手段、例えばトリガ・ボタンと相互作用させるために、デカップリングスリーブが遠位方向に突出する弾性アームを示すことがあり、弾性アームはくさびを有し、くさびはトリガ・ボタンの作動前には後退スリーブの傾斜部とトリガ・ボタンの遠位面から近位方向に突出するバーとの間に保持されるように構成される。トリガ・ボタンの作動後、駆動ばねの負荷の下でバーが並進移動してくさびを撓ませて後退スリーブの傾斜部によってバーの凹部に入れる。
【0036】
トリガ・ボタンは、駆動ばねの力に抗して押される必要はなく、そのため、細い針および高粘度の薬剤に適した大きなばね力の駆動ばねを用いることができ、ユーザは大きな作動力を加える必要はない。
【0037】
好ましくは、キャップが自動注射器の近位端に設けられる。シート・メタル・クリップがキャップに取り付けられて、一体で軸方向に移動し、独立に回転する。このシート・メタル・クリップは、キャップが自動注射器に取り付けられたときにオリフィスを貫通してシャシ内に延びるように構成される。シート・メタル・クリップは、保護ニードルシールドの周囲ノッチ内に、または保護ニードルシールドのショルダ部の背後にスナップ式に入る少なくとも2つのあご部を含み得る。こうすると、組立中にシート・メタル・クリップが保護ニードルシールドと自動的に係合し得る。注射に備えてキャップが自動注射器から外されると、保護ニードルシールドは、ユーザを負傷の危険に曝すことなく確実に外される。
【0038】
キャップは、ねじ結合によって自動注射器に取付け可能とし得る。こうすると、保護ニードルシールドを小さな力で取り外すことができる。
【0039】
連動スリーブは、スリーブ・トリガ・ボタン内またはスリーブ・トリガ・ボタンの近位端に取り付けられたヘッド部内にはめ込まれることがある。連動スリーブを遠位方向に並進移動させるのに必要とされる力は、近位方向にトリガ・ボタンを並進移動させるのに必要とされる力よりも小さいことが好ましく、そのため、自動注射器を注射部位に押しつけるときにユーザが感知する力に段差を伴う2段階の操作が提供される。
【0040】
デカップリングキャリアが、後退スリーブ内にスライド可能に配置されシリンジにカップリングされてジョイント軸方向並進運動するようにされることがある。デカップリングキャリアは少なくとも1つの第2の弾性クリップを備え、第2の弾性クリップはプランジャの回転止め内に、またはプランジャのショルダ部の背後にデカップリングキャリアをプランジャにロックしてジョイント軸方向並進運動させるように係合可能である。後退スリーブは、針の挿入中にシリンジが注射深さに達する前では、第2の弾性クリップを外側で支持するように構成される。各第2の弾性クリップ毎のそれぞれの開口が後退スリーブに配置されて、シリンジが注射深さに達した後で、第2の弾性クリップが外側に撓んで回転止めから係合解除され、そのため、プランジャがストッパにカップリングする。その結果、いわゆる濡れ注射がなくなり、すなわち、針が挿入される前に液体薬剤が中空針から漏れ出すことがない。
【0041】
スリーブ・トリガ・ボタンは、シリンジを観察するための少なくとも1つの観察ウィンドウを有し得る。
【0042】
自動注射器は、好ましくは、皮下注射または筋肉内注射に使用し、特に、鎮痛剤、抗凝固剤、インシュリン、インシュリン誘導体、ヘパリン、ラブノックス、ワクチン、成長ホルモン、ペプチドホルモン、タンパク質、抗体、および複雑な炭水化物の1つを送達することに使用し得る。
【0043】
本発明の適用性のさらなる範囲が以下に示す詳細な説明から明らかになろう。ただし、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、単に説明のために示されていることを理解されたい。これは、本発明の趣旨および範囲内で様々な変更および改変が、この詳細な説明から当業者には明らかであるからである。
【0044】
本発明は、以下に示される詳細な説明および添付の図面からより詳細に理解されよう。添付の図面は、例示のためにのみ示されるものであり、そのため、本発明を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に、自動注射器1の異なる断面における2つの縦方向断面図を示す。これらの異なる断面は互いに約90°回転している。自動注射器1はシャシ2を備える。シリンジ3、例えばHypakシリンジは、中空針4を備え、自動注射器1の近位部分に配置される。自動注射器1またはシリンジ3が組み立てられるときに、保護ニードルシールド36が針4に取り付けられる。遠位側でシリンジ3を封止し、中空針4を介して流体薬剤Mを移動させるためのストッパ6が配置される。シリンジ3は、筒状のシリンジ・キャリア7内に保持され、近位端でシリンジ・キャリア7内に支持される。シリンジ・キャリア7は、シャシ2内にスライド可能に配置される。圧縮ばねの形状の単一の駆動ばね8が、自動注射器1の遠位部分に配置される。
【0048】
駆動ばね8は、後退スリーブ10とスラスト・カラー37の間に装填される。駆動ばね8のばね力をシリンジ3および/またはストッパ6に伝えるプランジャ9が、プランジャ9の遠位端でデカップリングスリーブ38に機械的に連結される。プランジャ9およびデカップリングスリーブ38は、縦方向にスライド可能である。駆動ばね8は、デカップリングスリーブ38全体に巻き付いている。スラスト・カラー37は、デカップリングスリーブ38とジョイント軸方向並進運動するように、デカップリングスリーブ38の近位側に配置された1対の第1のクリップ39によってデカップリングスリーブ38に結合される。後退スリーブ10が、スラスト・カラー37およびデカップリングスリーブ38内にスライド可能に配置される。後退スリーブ10は、デカップリングスリーブ38の開口を通って延びて駆動ばね8の遠位端にもたれかかるスラスト面13を有する。デカップリングキャリア41が後退スリーブ10内にスライド可能に配置される。デカップリングキャリア41は、シリンジ・キャリア7に結合されてジョイント軸方向並進運動する。デカップリングキャリア41は、デカップリングキャリア41をプランジャ9にロックしてジョイント軸方向並進運動するようにプランジャ9の回転止め43に係合可能な2つの弾性第2クリップ42を備える。少なくとも作動前の初期状態では、第2の弾性クリップ42は、回転止め43に係合され、後退スリーブ10によって外側で支持され、そのため、外向きに撓まず、回転止め43から外れない。
【0049】
トリガ・ボタン20が、自動注射器1の遠位端D全体にわたって巻き付くスリーブ・ボタンの形状で配置され、自動注射器1のほぼ全長にわたって延びる。ヘッド部50が、トリガ・ボタン20の近位端Pに取り付けられる。トリガ・ボタン20およびヘッド部50は、シャシ2に対して縦方向にスライド可能である。
【0050】
皮膚連動スリーブ25が、近位端Pに配置され、シャシ2にはめ込まれている。連動スリーブ25は、巻付けトリガ・ボタン20のヘッド部50内にはめ込まれている。シャシ2に対して近位方向Pに連動スリーブ25を偏倚させる連動ばね26が、ヘッド部50内に配置される。ヘッド部50は、連動スリーブ25の近位方向Pへの並進移動を制限する第1当接部5を提供する。
【0051】
図2は、自動注射器1の等角断面図であり、内部の部品をよりよく認識可能にするために、キャップ44およびヘッド部50を省いている。
【0052】
皮膚連動スリーブ25は、遠位側に配置された2つの脚部51を備える(
図2参照、一方の脚部のみを示し、他方は反対側にある)。初期状態では、脚部51は、後退スリーブ10の近位端で2つの第3の弾性クリップ52間に配置され、そのため、第3の弾性クリップ52が内側に撓まないようになっている。外側では、第3クリップ52は、シャシ2内で突起53(
図2では一方の突起が示されており、他方は隠れている)の背後に、後退スリーブ10が遠位方向Dに並進移動しないように保持される。そのため、圧縮ばね8の遠位端はシャシ2内で固定される。後退スリーブ10は多数の移動シャッタ61を示しており、シャシ2は固定シャッタ62を備える。移動シャッタ61および固定シャッタ62はそれぞれ多数の規則的に離間したキャスタレーションを備える。初期状態では、移動シャッタ61のキャスタレーションは、固定シャッタ62のキャスタレーションと位相がずれており(
図1および
図2参照)、そのため、両方のシャッタ61、62の交互のキャスタレーションによる表面が形成され、それによって、第1のクリップ39が内側に撓まずにこの表面に沿って移動する。後退スリーブ10が並進移動して移動シャッタ61と固定シャッタ62の位相が合うと(図示せず)、この表面は規則的に隙間によってとぎれとぎれになり、そのため、駆動ばね8の負荷の下でスラスト・カラー37の傾斜部と相互作用する第1のクリップ39の傾斜部によって第1のクリップ39が内側に撓み、そのため、スラスト・カラー37がデカップリングスリーブ38から外れる。
【0053】
最初は、駆動ばね8が、後退スリーブ10のスラスト面13に固定され、スラスト・カラー37にもたれかかっている。第3クリップ52がシャシ2および脚部51と係合しているので、後退スリーブ10は遠位方向Dに並進移動できない。スラスト・カラー37は、第1のクリップ39およびデカップリングスリーブ38を介した後退スリーブ10との係合によって近位方向Pに並進移動できない。デカップリングスリーブ38は遠位方向Dに突出する弾性アーム54を示しており、後退スリーブ10の傾斜部56とトリガ・ボタン20の遠位端面58から近位方向Pに突出するバー57との間にくさび55が保持されている(
図2参照)。駆動ばね8の負荷の下での初期位置では、傾斜部56はくさび55をわきへ撓ませようとするが、傾斜部56の反対側からくさび55を支持するバー57によってくさび55は撓まない。
【0054】
キャップ44が自動注射器1の近位端に配置可能である。キャップ44は、シャシ2の近位端のオリフィス46(
図6、
図7、
図8参照)内に延びるように配置された内部シリンダ45を備える。オリフィス46は、針4よりもかなり幅が広い必要がある。というのは、保護ニードルシールド36および内部シリンダ45用の空間が必要だからである。使用前の初期状態では、内部シリンダ45は、針4を覆うように配置された保護ニードルシールド36をつかんでいる。
【0055】
注射に備えて、キャップ44を取り外さなければならない。
図5は、キャップ44を保護ニードルシールド36およびシリンジ3とともに示した等角図である。キャップ44を取り外した後で、保護ニードルシールド36も取り外す。保護ニードルシールド36をシリンジ3から引いて離すのに要する力は比較的大きい。保護ニードルシールド36を取り外しているときにシリンジ3が近位方向Pに引かれないようにするために、シリンジ3は定位置で堅固に保持されなければならない。これは、シリンジ3をその近位端でシリンジ・キャリア7内に支持し、シリンジ・キャリア7をデカップリングキャリア41に結合し、デカップリングキャリア41をプランジャ9に係合させ、プランジャ9をデカップリングスリーブ38に取り付け、デカップリングスリーブ38が、後退スリーブ10の傾斜部56とバー57の間に保持されたくさび55と、後退スリーブ10とによって前進しないようにすることによって達成される。
【0056】
保護ニードルシールド36を取り外した後では、針4は、もはや保護されていないが、依然としてオリフィス46内にわずかな距離後退して入っている。しかし、オリフィス46はユーザが、少なくとも子供が指で触れる程度には大きい。指が入らないようにするために、ばねワイヤ48がオリフィス46のところに配置されている。ばねワイヤ48はシャシ2に取り付けられ、円弧状の横断線セクション48.1を有する。横断線セクション48.1は、内側に撓むように偏倚しており、そのため、極めて小さな指でも入らないようにオリフィス46を本質的に塞いでいるが、針4がばねワイヤ48に触れずに前進するには十分に中心からずれている(
図7および
図8参照)。ノッチ49が、オリフィス46の近傍のシャシ2の近位面に配置されており、そのため、ばねワイヤ48がその位置でロックされて、ユーザの指によって容易にはわきへ押されないようになっている。キャップ44が近位端Pに取り付けられている限り、内部シリンダ45により円弧状の横断線セクション48.1が内側に撓まない(
図4および
図6参照)。
図6に、キャップ44が定位置にある状況を、キャップ44自体を除いて示す。
図4に、キャップ44を取り外しているときの自動注射器1の近位端を、連動スリーブ25を除いて示す。
【0057】
ばねワイヤ48により、作動前に針4が近位端Pにできる限り近くなるようにすることができ、それによって、シリンジ3の移動量が少なくなり、自動注射器1の全長が短くなるが、針による突き刺し負傷は依然として防止される。
【0058】
図示の実施形態では、キャップ44は、2つの第4弾性クリップ47によって近位端Pで保持される。キャップ44は、ねじ結合によって自動注射器1に同様に取り付けることもできる。
【0059】
キャップ44および保護ニードルシールド36を取り外した後で、自動注射器1の近位端Pを注射部位、例えば患者の皮膚に押しつける。それによって、皮膚連動スリーブ25が、連動ばね26の偏倚に抗して近位側位置から遠位側位置に並進移動する。注射部位に対する圧力が維持または増大されると、スリーブ・トリガ・ボタン20が近位方向Pに並進移動し始める。典型的には、自動注射器1は、トリガ・ボタン20を並進移動させるには連動スリーブ25を並進移動させるよりも大きな力を必要とするように構成されており、そのため、自動注射器1を皮膚に押しつけるときにユーザが感知する力に段差がある2段階操作が提供される。トリガ・ボタン20がシャシ2に対して並進移動すると、くさび55が撓んでバー57の凹部59に入り得るまでバー57も並進移動し、そのため、弾性アーム54、デカップリングスリーブ38、スラスト・カラー37、およびプランジャ9が解放されて、駆動ばね8がこれらを近位方向Pに並進移動させることができる。
【0060】
この時点で駆動ばね8はスラスト・カラー37を近位方向Pに押しつけ、スラスト・カラー37とともに、デカップリングスリーブ38、プランジャ9、デカップリングキャリア41、シリンジ・キャリア7、および針4を備えたシリンジ3を移動させるが、ストッパ6には何の負荷もかけない。中空針4が近位端Pから現れ、注射部位、例えば患者の皮膚に挿入される。
【0061】
この前方への移動は、シリンジ・キャリア7がシャシ2内の第2当接部32で底に達するまで継続する。初期位置からこの点までの移動量が注射深さ、すなわち針の挿入深さを定義する。
【0062】
同時に、後退スリーブ10に対して相対的に移動するデカップリングキャリア41が、後退スリーブ10の開口60に達する。デカップリングキャリア41の第2の弾性クリップ42は、もはや後退スリーブ10によって外側で支持されない。駆動ばね8がプランジャ9を押し続けると、第2の弾性クリップ42が、回転止め43および第2クリップ42の遠位側で傾斜部または丸みを帯びた縁部によって回転止め43から押し出される。もはやデカップリングキャリア41にもシリンジ3にも結合していないプランジャ9が、前進し続け、ストッパ6を押し始め、それによって薬剤Mがシリンジ3から吐き出され、薬剤Mが患者の皮膚の中に、または皮膚を貫通して注射される。
【0063】
スラスト・カラー37、デカップリングスリーブ38、および第1のクリップ39が近位方向Pに移動すると、移動シャッタ61および固定シャッタ62の互いに位相がずれたキャスタレーションによって生成される表面に沿って第1のクリップ39がスライドする。
【0064】
注射中または注射終了時に自動注射器1が注射部位から離されると、連動スリーブ25が連動ばね26の負荷の下で近位方向Pに並進移動する。トリガ・ボタン20およびヘッド部50は自動注射器1にトリガがかけられたときに近位方向Pにすでに並進移動しているので、連動スリーブ25の移動量を制限しているヘッド部50内の第1当接部5が初期状態での位置よりも近位方向Pに寄る。したがって、連動スリーブ25は、その初期近位側位置を超えて近位方向Pに並進移動して、後退スリーブ10の近位端の2つの弾性第3クリップ52間から脚部51が外れる最終的な近位側位置に達し、そのため、弾性第3クリップ52がそれらのシャシ2内での突起53との傾斜係合のために、かつ、後退スリーブ10のスラスト面13を押す駆動ばね8のために内側に撓む。この時点で後退スリーブ10は、シャシ2から外れており、そのため、駆動ばね8はもはやその遠位端で固定されていない。後退スリーブ10は、駆動ばね8の負荷の下で、後退スリーブ10内の第1ショルダ部63がシリンジ・キャリア7上の第2ショルダ部64に当たるまで遠位方向Dに並進移動し、そのため、移動シャッタ61と固定シャッタ62の位相が合い、整列したキャスタレーション間に多数の隙間が連続して生成される。
【0065】
後退スリーブ25が注射の最中に解放されると、注射は第1のクリップ39が整列したキャスタレーション間の次の隙間に近位方向Pに到達するまで継続する。第1のクリップ39は、スラスト・カラー37との傾斜係合により内側に撓みその隙間に入る。その結果、スラスト・カラー37およびデカップリングスリーブ38の結合が解除され、プランジャ9の前進が停止する。依然として駆動ばね8の力の下にあるスラスト・カラー37は、シャシ上の(図示しない)ストッパに当たるまで継続して移動し、駆動ばね8がその近位端で新たに固定される。依然として駆動ばね8の反対方向の力の下にある後退スリーブ10は、その第1ショルダ63部でシリンジ・キャリア7の第2ショルダ64部を押しており、この時点で、シリンジ・キャリア7、シリンジ3、プランジャ9、およびデカップリングスリーブ38の集合体全体を、自動注射器1内を遠位方向Dに引っ張ることができる。このとき針4は、自動注射器1内の安全な距離のところに戻っており、そのため、注射後の針による突き刺し負傷が防止される。
【0066】
後退スリーブ25が注射終了時に解放されると、この時点で外れる移動シャッタ61の最も近位側のキャスタレーションまですでに移動している第1のクリップ39は、第1のクリップ39が整列したシャッタ61、62よりも近位側で内側に撓むことができる。スラスト・カラー37およびデカップリングスリーブ38の結合が解除される。依然として駆動ばね8の力の下にあるスラスト・カラー37は、シャシ上の(図示しない)ストッパに当たるまで短い距離移動し続け、駆動ばね8がその近位端で新たに固定され、第1のクリップ39がスラスト・カラー37の下にもぐり込み、そのため、第1のクリップ39はキャスタレーションによって妨げられずに遠位方向Dに並進移動する。駆動ばね8の反対方向の力の下にある後退スリーブ10は、この時点で、シリンジ・キャリア7、シリンジ3、針4、プランジャ9、およびデカップリングスリーブ38の集合体全体を、自動注射器1内を遠位方向Dに引っ張ることができる。このとき針4は、自動注射器1内の安全な距離のところまで戻っており、そのため、注射後の針による突き刺し負傷が防止される。
【0067】
指ガードとして働くばねワイヤ48は、任意の自動注射器または他の注射デバイスに適用し得る。
【0068】
固定シャッタ62および移動シャッタ61は、プランジャ9のシャシ2に対する相対的な並進移動を制御するためのシャッタ機構の一実施形態を形成する。
【0069】
図9〜
図22に、シャッタ機構の代替実施形態を示す。
【0070】
図9に、縦方向に移動可能な構成要素102の並進移動を制御するためのシャッタ機構101を示す。シャッタ機構101は、キャスタレーション103.1〜103.6の形状の1組の固定突起103.1〜103.6を有する少なくとも1つの固定シャッタ103を備え、固定シャッタ103はハウジング104またはシャシの一部であることが好ましい。シャッタ機構101はさらに、縦方向に移動可能な構成要素102に関連する少なくとも1つの弾性アーム105を備える。弾性アーム105の近位側先端において、鈎部106がキャスタレーション103.1〜103.6に向かって弾性的に偏倚しており、そのため、キャスタレーション103.1〜103.6間またはそれらの背後で係合し、縦方向に移動可能な構成要素102の並進移動を妨げる。それぞれの移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に並んで配置される。移動シャッタ・アーム107は、多数の傾斜し互いに離間した移動突起107.1〜107.6を連続して有し、これらの傾斜部は遠位方向Dに面する。キャスタレーション103.1〜103.6および傾斜突起107.1〜107.6は、同じピッチを有し、輪郭のある面を形成する。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103に対して縦方向に移動可能である。移動シャッタ・アーム107は、その傾斜突起107.1〜107.6がキャスタレーション103.1〜103.6と本質的に位相が合った少なくとも1つのロック位置を有し、そのため、弾性アーム105の鈎部106がキャスタレーション103.1〜103.6間またはそれらの背後でひっかかる。移動シャッタ・アーム107は、その傾斜突起107.1〜107.6がキャスタレーション103.1〜103.6と位相がずれた少なくとも1つのロック解除位置を有し、そこでは、傾斜突起107.1〜107.6に妨げられて鈎部106がキャスタレーション103.1〜103.6と係合せず、キャスタレーション103.1〜103.6が外れ、そのため、縦方向に移動可能な構成要素102が並進移動し得る。
【0071】
縦方向に移動可能な構成要素102は、好ましくは、駆動手段、例えば、ばねの駆動力をシリンジ108またはシリンジ108を封止するためのストッパ109に伝え、シリンジ108から液体薬剤を移動させるためのプランジャ102である。シリンジ108、シャッタ機構101、プランジャ102、および駆動手段は、薬剤を送達するための自動注射器の一部とし得る。
【0072】
図9に、注射中のシャッタ機構101を示す。
【0073】
使用前に、プランジャ102は、近位方向Pに働く駆動力を分解して固定シャッタ103に伝える。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103と位相が合っており、したがって何ら負荷を担持しない。鈎部106が最も遠位側のキャスタレーション103.1の背後でひっかかっているので、プランジャ102を近位方向Pに押し込むことができない。
【0074】
プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならず、それによって両者の位相がずれる。移動シャッタ・アーム107の最も遠位側の移動突起107.1の傾斜部が鈎部106にカムとして作用して固定シャッタ103との係合を解除し、それによって鈎部106が第1キャスタレーション103.1の上部と同じ高さになる。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。シャッタ103、107の相対位置が一定に保持される場合、
図9に示すように、鈎部106は、互いに位相がずれている固定シャッタ103と移動シャッタ・アーム107によって形成される表面上に乗り、その状態が近位方向Pに継続する。
【0075】
図9および
図10に示す実施形態では、表面に沿って移動する鈎部106は、固定シャッタ103のキャスタレーション103.1〜103.6の上部から離れるたびに音を発生し、鈎部106が移動突起107.1〜107.6の傾斜部に乗るときに移動シャッタ・アーム107に交互に力を加える。これにより、注射が行われていることの可聴かつ触知できるフィードバックが得られる。これらがなくなると、注射が完了する。
【0076】
注射中に、移動シャッタ・アーム107が(移動シャッタ・アーム107を、さらに遠位方向Dに移動させるか、または、薬剤注射前の位置に向かって移動させることによって)並進移動して戻り、固定シャッタ103と位相が合うと、鈎部106が、次の固定シャッタ103のキャスタレーション103.1〜103.6にひっかかり、注射を停止させる。次いで、移動シャッタ・アーム107を並進移動させて固定シャッタ103と再び位相が合うと、注射を再開することができる。あるいは、移動シャッタ・アーム107がラッチされるか、またはユーザの制御から切断されてもよく、この場合にはさらなる薬剤送達はなされない。
【0077】
図11に、シャッタ機構101の代替実施形態を示す。移動シャッタ・アーム107は1つだけ傾斜した移動突起107.1を有し、他の移動突起107.2〜107.6はキャスタレーションである。プランジャ102の並進移動中に移動シャッタ・アーム107が並進移動されて固定シャッタ103と位相が合うと、鈎部106は撓んでキャスタレーション103.1〜103.5、107.1〜107.6間の次の空間に入り、そこに留まる。というのは、鈎部106が移動シャッタ・アーム107によって再び傾斜を利用して出ることがないからである。したがって、注射は一度停止すると再開することができない。
図11の実施形態では、プランジャ102の並進移動中に、例えば注射中に、可聴フィードバックも触知できるフィードバックも得られない。
【0078】
図12に、シャッタ機構101の別の実施形態を示す。この実施形態では、固定キャスタレーション103.1が1つだけ固定シャッタ103上に設けられ、傾斜した移動突起107.1が1つだけ移動シャッタ・アーム107上に設けられる。プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならず、それによって
図12に示すように両者の位相がずれる。移動突起107.1の傾斜部が鈎部106にカムとして作用して固定シャッタ103との係合を解除し、それによって鈎部106が固定キャスタレーション103.1の上部と同じ高さになる。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。この時点からは注射が継続され、ユーザが注射を一時的または完全に停止することはできない。
図12の実施形態では、プランジャ102の並進移動中、例えば注射中に可聴フィードバックも触知できるフィードバックも得られない。
【0079】
図13は、1組のキャスタレーション103.1〜103.5が固定シャッタ103上に設けられ、傾斜部107.1が1つだけ移動シャッタ・アーム107上に設けられるシャッタ機構の実施形態である。傾斜部107.1の近端側では、移動シャッタ・アーム107は傾斜部107.1の上部の高さのままである。プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならず、それによって
図13に示すように両者の位相がずれる。移動シャッタ・アーム107の傾斜部107.1が鈎部106にカムとして作用して固定シャッタ103との係合を解除し、それによって鈎部106が固定キャスタレーション103.1の上部と同じ高さになる。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。この時点からは注射が継続され、ユーザが注射を一時的または完全に停止することはできない。
図13の実施形態では、プランジャ102の並進移動中、例えば注射中に可聴フィードバックも触知できるフィードバックも得られない。この実施形態では、
図9および
図10の実施形態と同じ固定シャッタ103が統合されたハウジング104を用いることができる。改変された移動シャッタ・アーム107を適用するだけで機能が変更される。これにより、多くの部品を共通とする自動注射器のプラットホームを生成することができ、機能を変更するためにはいくつかの部品のみを交換すればよい。
【0080】
図14は、シャッタ機構101のさらに別の実施形態である。このシャッタ機構101は、1組の傾斜した固定突起103.1〜103.5の形状の少なくとも1つの固定シャッタ103を備える。固定シャッタ103の傾斜した固定突起103.1〜103.5の傾斜部は近位方向Pに面する。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103に並んで配置され、多数の傾斜し互いに離間した移動突起107.1〜107.6を連続して有し、これらの傾斜部は遠位方向Dに面する。固定シャッタ103の傾斜した固定突起103.1〜103.5および移動シャッタ・アーム107の傾斜した移動突起107.1〜107.6は、同じピッチを有し、輪郭のある面を形成する。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103に対して縦方向に移動可能である。移動シャッタ・アーム107は、その傾斜した移動突起107.1〜107.6が固定シャッタ103の傾斜した固定突起103.1〜103.5と本質的に位相が合った少なくとも1つのロック位置を有し、そのため、弾性アーム105の鈎部106が固定シャッタ103の傾斜した固定突起103.1〜103.5間またはそれらの背後でひっかかる。移動シャッタ・アーム107は、その傾斜した移動突起107.1〜107.6が傾斜した固定突起103.1〜103.5と位相がずれた少なくとも1つのロック解除位置を有し、そのため、傾斜した移動突起107.1〜107.6に妨げられて鈎部106が傾斜した固定突起103.1〜103.5と係合せず、固定突起103.1〜103.5が外れ、そのため、縦方向に移動可能な構成要素102が並進移動し得る。
【0081】
使用前に、プランジャ102は、近位方向Pに働く駆動力を分解して固定シャッタ103に伝える。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103と位相が合っており、したがって何ら負荷を担持しない。プランジャ102は、鈎部106が固定シャッタ103の最も遠位側の傾斜した固定突起103.1の背後でひっかかっているので、近位方向Pに押し込むことができない。
【0082】
プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならず、それによって両者の位相がずれる。移動シャッタ・アーム107の最も遠位側の傾斜した移動突起107.1の傾斜部が鈎部106にカムとして作用して固定シャッタ103との係合を解除し、それによって鈎部106が傾斜した固定突起103.1の上部と同じ高さになる。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。シャッタ103、107の相対位置が一定に保持される場合、鈎部106は、互いに位相がずれている固定シャッタ103および移動シャッタ・アーム107によって形成される表面の上下に乗り、その状態が継続する。
【0083】
図14に示す実施形態では、表面に沿って移動する鈎部106は、注射が行われていることの可聴かつ触知できるフィードバックを提供するが、
図9の実施形態と比較すると音が小さくなる。
【0084】
図9の実施形態と同様に、注射を中断し再開することができる。さらに、キャスタレーションの代わりの固定シャッタ103の傾斜した固定突起103.1〜103.5によりプランジャ102を後退させることができ、その結果、シリンジ108および針が後退する。これは、固定シャッタ103と移動シャッタ・アーム107が
図14に示すように位相が互いにずれていると、鈎部106がシャッタ103、107のいずれの傾斜した突起103.1〜103.5、107.1〜107.6間にもひっかからずに遠位方向Dにも移動できるからである。
【0085】
図15は、シャッタ機構101の別の実施形態である。このシャッタ機構101は、1組の固定突起103.1〜103.5を伴う少なくとも1つの固定シャッタ103を備え、これらの固定突起の最も遠位側の突起がキャスタレーション103.1の形状をしており、他の突起103.2〜103.5が傾斜しており、これらの傾斜部が遠位方向Dに面している。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103と並んで配置されており、1つの傾斜した突起107.1を有し、その傾斜部が遠位方向Dに面している。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103に対して縦方向に移動可能である。
【0086】
使用前に、プランジャ102は、近位方向Pに働く駆動力を分解して固定シャッタ103の固定キャスタレーション103.1に伝える。移動シャッタ・アーム107の傾斜した移動突起107.1は、固定シャッタ103の固定キャスタレーション103.1と位相が合っている。プランジャ102は、鈎部106が固定シャッタ103の固定キャスタレーション103.1の背後でひっかかっているので、近位方向Pに押し込むことができない。
【0087】
プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならず、それによって両者の位相がずれる。傾斜した移動突起107.1の傾斜部が鈎部106にカムとして作用して固定シャッタ103との係合を解除し、それによって鈎部106が第1固定突起103.1の上部と同じ高さになる。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。この時点からは注射が継続され、ユーザが注射を一時的または完全に停止することはできない。鈎部106は、固定突起103.2〜103.5によって形成される表面の上下に乗り、その状態が継続する。
【0088】
図15に示す実施形態では、表面に沿って移動する鈎部106は、注射が行われていることの可聴フィードバックのみを提供する。移動シャッタ107が傾斜した突起107.2〜107.6を有し、固定シャッタ103が傾斜した突起も有していない場合には、このシャッタ機構101は触知できるフィードバックも提供し得る。
【0089】
図16Aおよび
図16Bに、シャッタ機構101のさらに別の実施形態を示す。
【0090】
このシャッタ機構101は、一方の側に突出するキャスタレーションの形状の1組の固定突起103.1〜103.5を伴う少なくとも1つの固定シャッタ103を備える。移動シャッタ・アーム107は固定シャッタ103に並んで配置される。移動シャッタ・アーム107は、反対側に突出した傾斜移動突起107.1〜107.7を有し、これらの傾斜部は遠位方向Dに面し、固定シャッタ103の対合傾斜部110.1〜110.7と係合する。移動シャッタ・アーム107は、固定シャッタ103に対して縦方向に移動可能である。
【0091】
使用前に(
図16A参照)、プランジャ102は、近位方向Pに働く駆動力を分解して固定シャッタ103の固定キャスタレーション103.1に伝える。移動シャッタ・アーム107の傾斜した移動突起107.1〜107.7は、固定シャッタ103の対合傾斜部110.1〜110.7と完全に係合する。プランジャ102は、鈎部106が固定シャッタ103の固定キャスタレーション103.1の背後でひっかかっているので、近位方向Pに押し込むことができない。
【0092】
プランジャ102を近位方向Pに並進移動させるために、移動シャッタ・アーム107が固定シャッタ103に対して相対的に遠位方向Dに並進移動されなければならない。互いに係合した傾斜移動突起107.1〜107.7と対合傾斜部110.1〜110.7は、移動シャッタ・アーム107を固定シャッタ103から離れるように押す。それによって、突起107.1〜107.7の反対側である移動シャッタ・アーム107の裏側が、固定突起103.1〜103.5の上部と同じ高さになり、そのため、鈎部106が固定シャッタ103から外れる(
図16B参照)。この時点で、プランジャ102は、駆動力の下で近位方向Pに移動自由になる。シャッタ103、107の相対位置が一定に保持される場合、鈎部106は、固定シャッタ103および移動シャッタ・アーム107によって形成される表面の上に乗り、その状態が近位方向Pに継続する。
【0093】
移動シャッタ・アーム107が近位方向Pに並進移動して戻る場合、移動シャッタ107はもはや固定シャッタ103から離されず、傾斜した移動突起107.1〜107.7と対合傾斜部110.1〜110.7が完全に再係合する。鈎部106が、次の固定シャッタ103のキャスタレーション103.1〜103.6にひっかかり、注射を停止する。次いで、移動シャッタ・アーム107を遠位方向Dに再度並進移動させることによって注射を再開し得る。
【0094】
図16Aおよび
図16Bの実施形態では、移動突起107.1〜107.7の数および固定突起103.1〜103.5のピッチに対する移動突起107.1〜107.7のピッチは、プランジャ102の近位方向移動を開始または停止させるのに必要とされる移動シャッタ・アーム107の遠位方向移動量を定義すること以外は重要ではない。1つの移動突起107.1および1つの対合傾斜部110.1があれば十分である。しかし、少なくとも2つの移動突起107.1〜107.7および2つの対合傾斜部110.1〜110.7があればより堅固である。
【0095】
図16Aおよび
図16Bの実施形態では、可聴フィードバックも触知できるフィードバックも提供されない。というのは、固定シャッタ103と移動シャッタ107の間で位相を合わせる必要性がないからであり、固定突起103.1〜103.5は、薄くかつ互いに近づけることができ、その結果、停止位置の分解能が向上する。固定突起103.1〜103.5間の距離が傾斜部の長さによって決まり、傾斜部の長さが鈎部106を解放するために指定される力/変位によって決まる先に述べた実施形態と異なり、
図16Aおよび
図16Bの実施形態では、移動突起107.1〜107.7の傾斜部は固定突起103.1〜103.5と無関係である。したがって、離間した固定突起103.1〜103.nをより近接させると、停止位置の分解能を向上することができる。
【0097】
図17では、最も遠位側の傾斜した移動突起107.1より遠位側の移動シャッタ・アーム107のレベルならびに最も遠位側の固定突起103.1より遠位側の固定シャッタ103の高さが、突起103.1〜103.5間、107.1〜107.6間の高さよりも低い。その結果、傾斜した移動突起107.1の傾斜部がより長くなり、鈎部106にその使用前の位置(突起103.1、107.1より遠位側)からカム作用を施すには、移動シャッタ107の移動量を、注射を再開するための移動量よりも大きくする必要がある。こうすると、移動シャッタ・アーム107の初期移動に対するシャッタ構成の感度が下がり、それによって、注射の開始時に誤ってトリガをかける可能性が減少するが、迅速に停止させる能力は維持される。停止点間の分解能がよくなる。
【0098】
図18では、最も遠位側の傾斜した移動突起107.1の傾斜部が他の傾斜した移動突起107.2〜107.6の傾斜部よりも急である。その結果、鈎部106にその使用前の位置(突起103.1、107.1より遠位側)からカム作用を施すには、移動シャッタ107にかかる力を、注射を再開させる力よりも大きくする必要がある。これにより、注射の開始時に意図しないトリガがかかる可能性が減少する。
【0099】
注射を停止/再開し得る実施形態では、注射が実際に停止する前に或る量の液体薬剤が常に吐き出される。というのは、鈎部106が次の固定突起103.1〜103.5の遠位側縁部まで移動しなければならないからである。この薬剤の量を減らすために、自動注射器は、互いに位相がずれた少なくとも2つのシャッタ機構101(例えば、自動注射器のそれぞれの側に1つ)を備えればよい。こうすると、シャッタ機構101の有効ピッチが半分になり、停止するまでに吐き出される薬剤の量がかなり減少する。
【0100】
図19では、固定突起103.1〜103.6および移動突起107.1〜107.7は互いに異なる長さを有する。プランジャ102の並進移動を制御するには、固定突起103.1〜103.6によって移動突起107.1〜107.7の近位側縁部を覆うようにすれば十分である。完全に重なる必要はない。こうすると、シャッタのピッチが短くなって、注射を中断したときに送達される量の薬剤がより少なくなる。この構成では、鈎部106の軸方向の幅を、移動シャッタ・アーム107が移動して固定シャッタ103と位相がずれたときに鈎部106が移動突起107.1〜107.7の近位側縁部と固定突起103.1〜103.6の遠位側縁部の間で係合するように十分に短くする必要がある。
【0101】
このシャッタ機構101は、プランジャ102以外の縦方向に移動可能な構成要素102の並進移動の制御が必要とされる他の環境でも同様に適用し得る。
【0102】
固定突起103.1〜103.6および移動突起107.1〜107.7の数は、上記実施形態で示した数と異なり得る。
【0103】
好ましくは、移動シャッタ・アーム107の動きは、自動注射器の近位端を注射部位、例えば患者の皮膚に押しつけることによって作動することができ、それによって、自動注射器の近位端から遠位方向に突出するスリーブまたはバーが押される。この動きは、端部のボタンを押すことによって、あるいは側部のボタンまたは端部のボタンに連結したカムまたは他の機構を介して間接的に押すことによっても同様に作動させることができる。
【0104】
これに加えて、自動注射器には2次的な機構によってトリガをかけることができ、シャッタ機構101は単に制御機構として使用し得る。この実装形態では、移動シャッタ107の位置は、「一時停止」ボタンによって制御される。こうすると、自動注射器から薬剤注射させる機構と自動注射器を一時停止する機構を分離することができ、そのため有用性が改善する。
【0105】
この「一時停止ボタン」は、「押して注射する」か、または「押して一時停止する」ように設計し得る。この機構が「押して注射する」ようになっている場合、一時停止ボタンとトリガを組み合わせることができる。
【0106】
代替実施形態では、図示した実施形態のように移動シャッタ107を縦方向に並進移動させるのではなく、シャッタに直交する方向に回転または並進移動させて、固定突起103.1〜103.5間の隙間に入るように構成し得る。
【0107】
図20に示すさらに別の代替実施形態では、シャッタ103、107を互いに対向させ、プランジャ102がシャッタ103と107の間に生成される隙間を通り抜けるようにし得る。この構成では、固定突起103.1〜103.5および移動突起107.1〜107.6が移動されて位相がずれたときに形成される通路に沿って鈎部106を通過させるために、これらの突起の遠位面の遠位面がともに傾斜している必要がある。
【0108】
さらに別の実施形態では、2つのシャッタ103、107に切れ込みを入れて形成した連続した正弦波状の通路を通して鈎部106を振動させることができる(
図21および
図22参照)。この正弦波状の通路は、移動シャッタ107をロック位置にシフトさせることによって壊れ、そのため、鈎部106はシャッタ103と107の間の次の切替え部よりも先に前進できない。