(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化チタン製造からのTiO
2含有の蒸解残留物(Aufschlussrueckstand)及び触媒活性である少なくとも1種の他の成分を有する組成物、並びに前記組成物から得られかつ例えば窒素酸化物の低減のための触媒として使用することができる形状安定性の触媒活性成形体に関する。
【0002】
背景技術
担体触媒は経済的に極めて重要であり、量的に不均一系触媒の最も大きな群である。この担体触媒は、例えば化石原料の処理のため、中間生成物の更なる加工の際、及び化学製品の合成の際に利用される。更に、担体触媒はエミッションコントロール(Emissionsschutz)のために排気ガス浄化の分野でも経済的重要性が明らかに増している。
【0003】
二酸化チタン及びチタン含有触媒は、この場合に重要な部分である。市場で得られる二酸化チタンを基礎とする触媒担体は、主に、チタン含有の塩の沈殿反応により、チタン含有化合物の加水分解により又はチタン含有の前駆体の火炎熱分解により製造される。
【0004】
担体触媒は、特に窒素酸化物の接触分解の場合に重要な役割を有する。燃焼プロセスの場合の窒素酸化物(NO
x)の発生は環境の視点から問題であり、排気ガス中の窒素酸化物を還元するための多様な方法は公知である。選択的触媒還元(SCR)が特に重要であり、この場合、窒素酸化物は添加された窒素含有化合物、好ましくはアンモニア又は尿素により触媒の存在で還元される。アンモニアを用いた窒素酸化物の選択的触媒還元(NH
3−SCR)は、次のように要約することができる:
【化1】
【0005】
使用分野は、据置型の分野では、例えば発電所、石炭発電所、ガス発電所、ゴミ焼却装置、硝酸生産装置又は硝酸加工装置、製鋼所、並びに可動型の分野では、自動車、例えば乗用車及びトラック並びに船舶である。
【0006】
SCR用の市販の触媒は、特に貴金属、金属酸化物及びゼオライトである。概要は、Pio Farzatti, Present Status and perspectives in de-NOxSCR catalysisが, Applied Catalysis A: General 222 (2001) 221-236に提供している。重要な触媒系は、TiO
2担体に担持されたWO
3触媒又はV
2O
5−WO
3触媒であり、この場合TiO
2はしばしば優位にアナターゼ型で存在する(例えばUS 5,723,404又はWO20O6/044768参照)。
【0007】
発明の概要
この背景から、本発明の基礎となる課題は、特に窒素酸化物還元の場合に、良好な活性を示す経済的に製造可能な触媒担体又は触媒を提供することである。
【0008】
前記課題は、本発明の場合に、(I)硫酸法による二酸化チタン製造からのチタン含有の蒸解残留物及び(II)触媒活性である少なくとも1種の他の成分を含有する組成物を提供すること、並びに前記組成物を含有する触媒又は触媒原料を提供することにより解決される。
【0009】
前記課題は、これとは別に、上記に定義された組成物を、結合剤、可塑剤及び場合により他の添加物と混合し、こうして得られた組成物を好ましくは押出成形し及び引き続きか焼することにより得られる形状安定性の触媒活性の固体を提供すること、又は上記に定義された組成物を、場合により結合剤、可塑剤又は他の添加物と一緒に担体に適用し、引き続きか焼することにより得られる形状安定性の触媒活性の固体を提供することにより解決される。
【0010】
本発明は、蒸解残留物又は本発明による組成物、並びに本発明による形状安定性の固体の触媒としての又は触媒の製造のための使用にも関する。
【0011】
更に、本発明は、本発明による組成物の製造方法において、前記方法が次の工程を有する方法に関する:
(a) チタン含有の出発物質を硫酸で蒸解して、固体含有の蒸解溶液を得て、
(b) 前記蒸解溶液中に含まれる固体を分離して、蒸解残留物と、主に固体不含の蒸解溶液とを得て、
(c) 場合により中和し及び/又は不純物、特に中性塩を部分的に洗い出し、
(d) 蒸解残留物を、触媒活性である少なくとも他の成分と混合し、かつ
(e) 場合により得られた混合物をか焼する。
【0012】
図面
図1は、洗浄しかつ乾燥した蒸解残留物のX線回折図を示す。この場合、特に次の不純物を検出することができる:
ルチル、酸化チタンマグネシウム、イルメナイト及びアナターゼ
【0013】
図2は、本発明による蒸解残留物(TK)、蒸解残留物と1.5質量%のV
2O
5とからなる本発明による組成物(TK−V)並びに蒸解残留物と1.5質量%のV
2O
5と10質量%のWO
3とからなる本発明による組成物(TK−V−W)の、150℃〜750℃の温度範囲での触媒活性(NO転化率)を示す。
【0014】
図3は、アナターゼ−TiO
2担体上の慣用の含浸されたV
2O
5触媒(90m
2/gのBET表面積を有するアナターゼを前提とするTi−V3;350m
2/gのBET表面積を有するアナターゼを前提とするTi−V4)と比較した、蒸解残留物と1.5質量%のV
2O
5との本発明による組成物(TK−V)の、150℃〜750℃の温度範囲での触媒活性(NO転化率)を示す。
【0015】
図4は、アナターゼ−TiO
2担体上の慣用の含浸されたV
2O
5−WO
3触媒(実験室材料を基礎とするTi−V−W1及びcrenox A−DW−1を含む、市場で入手した材料を基礎とするTi−V−W2)と比較した、1.5質量%のV
2O
5と10質量%のWO
3とを有する蒸解残留物からなる本発明による組成物(TK−V−W)の、150℃〜750℃の温度範囲での触媒活性(NO転化率)を示す。
【0016】
図5は、アナターゼ−TiO
2担体上の慣用の担持されたV
2O
5−WO
3触媒(Ti−V−W)と比較した、1.5質量%のV
2O
5と10質量%のWO
3とを有する、実施例2A〜2Fに記載されたような多様に後処理された蒸解残留物からなる本発明による組成物(A−V−W〜F−V−W)の、150℃〜750℃の温度範囲での触媒活性(NO転化率)を示す。
【0017】
発明の詳細な記載
次に記載された本発明の実施態様は、相互に任意に組み合わせることができ、かつこのようにして特に好ましい実施態様が生じる。
【0018】
次の詳細な記載は、個別の本発明の複数の特徴の特別な及び/又は好ましい態様を開示する。本発明の場合に及び一般に、2つ又はそれ以上の好ましい実施態様の任意の組合せにより生じるような実施態様も好ましいことを理解することができる。
【0019】
他に記載がない限り、本願の意味範囲で「有する」又は「含む」の概念は、明確に記載された成分の他に任意の他の成分が存在できることを述べるために使用される。この概念は、もちろん、このことから、記載された成分だけからなる実施態様、つまり記載された成分とは異なる成分を有しない実施態様も含むことも理解することができる。
【0020】
他に記載がない限り、全てのパーセント割合は、質量に対するパーセント割合である。種類に関する概念により定義されている成分のパーセント割合の表示又はその他の相対的な量の記載は、種類に関する概念に該当する全ての特定のバリエーションの全体量に対していると解釈することができる。種類に関して定義された成分が、本発明による実施態様において、更に種類に関する概念に該当する特定のバリエーションに特定される場合には、付加的に、種類に関する概念に含まれる他の特定のバリエーションは存在せず、そのため全ての特定のバリエーションの当初に記載された全体量が、定められた特定のバリエーションの量に対すると解釈される。
【0021】
成分(I):蒸解残留物
本発明の組成物の成分(I)は、不溶性の蒸解残留物であり、この不溶性の蒸解残留物は、チタン含有出発物質を硫酸で蒸解する際の硫酸法による二酸化チタンの獲得において生じる。
【0022】
硫酸法による二酸化チタン製造の際に、チタン含有原料を硫酸で蒸解した後に、いわゆる硫酸チタニル含有の黒液が生じ、この黒液はいまだに所定の割合の溶解されない蒸解残留物を含有する。この固体割合は、更なる処理の前に黒液から分離しなければならない。これは、たいていの場合にシックナー中で予め濃縮した後に、一般に真空フィルタ又はフィルタープレスを用いて行う(Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、第A20巻、第276頁〜第278頁)。
【0023】
蒸解残留物を、好ましくは分離により得られた濾過ケークの形で、特に好ましくは乾燥された濾過ケークの形で使用する。この乾燥は、当業者に公知の任意の方法及び装置、例えば乾燥庫中で、ベルト式乾燥器で、噴霧乾燥で又はスピンフラッシュドライヤーで行うことができる。場合により、乾燥された蒸解残留物を、更に加工性を改善するために、例えば、ピン付ディスクミル、ロールミル、バウアーマイスターミル(Bauermeistermuehle)又は他の当業者に公知の装置を用いて、微細な粉末に粉砕するか又は解凝集させることができる。
【0024】
しかしながら、この蒸解残留物を未乾燥の濾過ケークの形で使用することも利点を有する、それというのも、触媒作用する調製物、特にSCR−DENOX触媒の製造の際に、水を用いてチタン含有材料を他の添加剤と混合し、混練及び更に加工するためである。それにより蒸解残留物の費用がかさむ乾燥を避けることができる。従って、本発明の1実施形態において、蒸解残留物を90質量%未満、好ましくは80質量%未満の固体含有率を有する濾過ケークの形で又は懸濁物の形で使用することができる。
【0025】
好ましくは、この濾過ケークは、更に、場合により乾燥の前に、付着する硫酸チタニル含有の溶液を排除するために、酸、特に好ましくは希硫酸、及び/又は水で洗浄される。引き続き、5〜12のpH値が調節されるまで、中和剤として塩基を添加することができる。
【0026】
蒸解濾過ケークから硫酸塩を洗い落とし、引き続き中和することにより、硫酸塩貧有の、中和された微細粒のチタン濃縮液を得ることができる。このようにして得られた洗浄された蒸解濾過ケークは、当初の濾過ケークよりも著しく少ない硫酸塩を含有する。硫酸塩含有率の更なる低減のために、水中に予め再分散させた後に新たに濾過を行うこともできる。
【0027】
この濾過ケークの中和は、この濾過ケークを水で再分散させ、中和剤として塩基を添加し、引き続き新たに濾過し、場合によりもう一度洗浄することにより行うことができる。この濾過ケークの中和は新たに再分散させずに、濾過ケークを中和剤の水溶液で洗浄することにより、濾過器中で行うことも可能である。中和の目的で固体又は液体のアルカリを濾過ケークと混合するか又は濾過ケーク中に混練させることにより行うこともできる。中和剤として、慣用の全てのアルカリ性化合物、例えば固体又は液体のアルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物が適している。
【0028】
これとは別に、この濾過ケークを、この濾過ケークが中和されるまで又はほぼ中和されるまで水で洗浄することができるので、中和剤の添加は完全に又は部分的に省略できる。
【0029】
しかしながら、所定の硫酸塩含有率及び所定の酸性度(特にSCR−DENOX触媒としての使用のための)は、触媒活性にとって利点であることができる。本発明による1実施態様の場合に、この使用された蒸解残留物は、この蒸解残留物の固体含有率に関して、従って、好ましくは1.0〜6.0質量%、好ましくは3.0〜5.0質量%の硫酸塩含有率を有する。
【0030】
他の触媒適用のために、3〜15質量%、特に4〜12質量%の硫酸塩含有率が好ましい。
【0031】
使用された蒸解残留物のpH値は、好ましくは1〜、特に好ましくは1.5〜3である。
【0032】
蒸解された鉱石をほとんど含んでいない使用された蒸解残留物は、固体割合に対して、好ましくは10〜90質量%、特に好ましくは25〜70質量%、最も好ましくは40〜60質量%のTiO
2含有率を有する。TiO
2含有率の表示は元素分析による調査から生じ、結晶性の酸化チタンも、非結晶性のアモルファス成分も含む。
【0033】
このTiO
2は、好ましくは部分的にルチル変態の形で存在する。特に、2θ=27.5°でのルチル主反射の強度は、粉末X線回折ダイアグラムの残りの全ての反射のうちの最も強い反射の強度の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも80%である。このX線結晶相は、X線回折分析により定性的にかつ定量的に測定できる(例えばH. Krischner及びB. Koppelhuber-Bitschnau著, Roentgenstrukturanalyse und Rietveldmethode, 第5版, Friedr. Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH, Braunschweig/Wiesbaden, 1994参照)。
【0034】
この蒸解残留物は、好ましくは、チタン酸マグネシウム(例えばMgTi
2O
5及び/又はMg
0.75Ti
2.25O
5の形態)も、チタン酸鉄(イルメナイトFeTiO
3)も、チタン酸カルシウム(例えばCaTiO
3)も含有する。
【0035】
更に、この蒸解残留物は、好ましくは酸化鉄を、Fe
2O
3として計算して、好ましくは0.5〜30質量%、更に好ましくは2〜20質量%の量で含有する。
【0036】
更に、この蒸解残留物は、好ましくは0.5〜20質量%、好ましくは2〜10質量%のアルミニウム含有率(Al
2O
3として)を有する。更に、この蒸解残留物は、好ましくは5〜40質量%、好ましくは10〜20質量%のケイ素含有率(SiO
2として)を有する。
【0037】
本発明による組成物の製造のために使用される、このか焼されていない蒸解残留物は、好ましくは、1〜150m
2/g、特に好ましくは3〜50m
2/g、殊に好ましくは5〜30m
2/gのBET表面積を有する。BET表面積の測定は、この場合、DIN ISO 9277に従って、77KでN
2を用いて、140℃で1時間脱ガスしかつ乾燥させた試料に関して行う。この評価は、多点測定(10点測定)で行う。
【0038】
好ましい酸性の蒸解残留物は、例えばDE 197 25 018 B4の実施例3に記載された材料である。この材料は、例えばDENOX触媒の製造のために良好に適している。
【0039】
中性でかつ酸貧有の(特にナトリウム貧有の)好ましい蒸解残留物は、例えばDE 197 25 018 B4の実施例4に記載された材料である。この材料は、例えば、Na化合物が望ましくない触媒の製造のために適している。
【0040】
この蒸解残留物からの触媒の製造は、この蒸解残留物に一般に、触媒活性である更なる成分(II)、好ましくは、下記に詳細に説明されているように、タングステン化合物及び/又はバナジウム化合物を添加する。
【0041】
蒸解残留物及び付加的な二酸化チタンからなる混合物
触媒活性成分(II)の添加の前に、この蒸解残留物は、例えば通常では触媒として又は触媒担体として使用される付加的な二酸化チタンと混合することができる。しかしながら、この付加的な二酸化チタンは、触媒活性成分(II)としても使用することができる。
【0042】
従って、1実施態様の場合に、本発明は、上記した蒸解残留物、付加的な二酸化チタン及び場合により触媒活性である他の成分を含有する組成物の提供する。
【0043】
蒸解残留物との混合物の形で使用することができるこの二酸化チタンは、好ましくは酸化チタン水和物である。好ましくはこの付加的な二酸化チタン又は酸化チタン水和物はアナターゼ型で存在する。この付加的な二酸化チタン、好ましくは予め記載された酸化チタン水和物は、しかしながらX線回折分析によって、90より大:10の、特に好ましくは99より大:1の、アナターゼ型の二酸化チタン対ルチル型の二酸化チタンの所定の比率を有することができる。このX線結晶相は、X線回折分析により定性的にかつ定量的に測定できる(例えばH. Krischner及びB. Koppelhuber-Bitschnau著, Roentgenstrukturanalyse und Rietveldmethode, 第5版, Friedr. Vieweg & Sohn Verlagsgesellschaft mbH, Braunschweig/Wiesbaden, 1994参照)。
【0044】
この酸化チタン水和物の粒子は、例えば硫酸含有の硫酸チタニル溶液の加水分解により得ることができる。硫酸含有の硫酸チタニル溶液の由来及び組成に応じて、加水分解の際に、なおも不所望な不純物、特に重金属を含むことができる酸化チタン水和物の硫酸性の懸濁液が得られる。従って、一般に、酸化チタン水和物から不所望な不純物を除去するために、1又はそれ以上の清浄化工程が行われる。
【0045】
好ましくは、硫酸法による二酸化チタン用の製造方法の際に生じる硫酸チタニルの加水分解により生じる酸化チタン水和物粒子が使用される。この方法は、例えばIndustrial Inorganic Pigments, 第3版, Hrsg. Gunter Buxbaum, Wiley-VCH, 2005に記載されている。
【0046】
酸化チタン水和物の硫酸塩含有率は、TiO
2に対して、好ましくは2.5質量%までである。TiO
2に対して硫酸塩含有率が0.5〜2.5質量%、好ましくは1.5〜2.5質量%であることができるが、0.5質量%未満であってもよい。
【0047】
この酸化チタン水和物は、好ましくは40〜300m
2/g、特に好ましくは60〜150m
2/gのBET表面積を有する。BET表面積の測定は、この場合、DIN ISO 9277に従って、77KでN
2を用いて、140℃で1時間脱ガスしかつ乾燥させた酸化チタン水和物粒子からなる試料に関して行う。この評価は、多点測定(10点測定)で行う。
【0048】
本発明の場合には、蒸解残留物を、付加的な二酸化チタンと、上記の酸化チタン水和物と好ましくは50より大:50、特に好ましくは70より大:30の質量比で混合するのが好ましい。酸化チタン水和物の比較的高い含有率は、この場合一般に、比較的高い触媒活性を引き起こし、蒸解残留物の比較的高い含有率は、比較的低いコスト及び比較的良好な加工性を引き起こす。
【0049】
成分(II)及び触媒活性化
本発明による組成物の製造のために、蒸解残留物単独に又は蒸解残留物と上記の付加的な二酸化チタン、好ましくは上記の酸化チタン水和物とからなる混合物に、触媒活性である他の成分(II)を添加する。
【0050】
この場合、蒸解残留物単独又は蒸解残留物と上記の付加的な材料からなる混合物は、好ましくは担体材料として機能する。しかしながら、付加的な二酸化チタンは、触媒活性成分(II)として利用し、蒸解残留物は主に担体材料として利用することも可能である。
【0051】
成分(II)は、例えばドーピング、選択的に表面ドーピング又はバルクドーピング、又は被覆の目的で適用することができ、この場合にこの適用は好ましくは含浸、沈殿反応、化学的溶液吸着、気相からの析出、例えば化学蒸着(CVD)又は原子層堆積(ALD)によって行うことができる。
【0052】
蒸解残留物又は蒸解残留物と付加的な二酸化チタンとからなる混合物は、多数の当業者に公知の多様な物理学的又は化学的方法を用いて適用要件に適合させることができ、触媒としても触媒担体としても作用する。このために、当業者は、例えば蒸解残留物又は蒸解残留物と付加的な二酸化チタン、好ましくは上記の酸化チタン水和物とからなる混合物を他の成分、例えばガラス繊維又は可塑化助剤と混合し、押出加工するか又は他の担体材料に適用することができる。
【0053】
成分(II)は、更に、例えば、化石原料の処理、中間生成物の更なる加工及び化学製品の合成の場合又は排気ガス浄化の分野において触媒作用を有する成分であることができる。例えば、ここでは窒素酸化物(NOx)の接触分解、SO
2の接触酸化、カーボンブラックの酸化、炭化水素の酸化、酸化的脱水素、異性化反応、エポキシ化反応又はアルドール反応を挙げることができる。
【0054】
成分(II)は、例えば金属、金属酸化物又は他の金属化合物であることができる。特に成分(II)は、Pt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Co、Cu、Ce、Ni、V、W、Mo、Sb、Bi、W、La、Y、Sc、Zr、Hf、Ta、Tb、Ce、Yb、Er及びSmからなる群から選択される少なくとも1つの元素を含有することができる。
【0055】
好ましくは、本発明による組成物は、Pt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Co、Cu、Ce、Ni、V、W、Mo、Sb、Bi、W、La、Y、Sc、Zr、Hf、Ta、Tb、Ce、Yb、Er及びSmからなる群から選択される1つの元素を少なくとも0.05質量%、好ましくは少なくとも0.5質量%含有する。
【0056】
蒸解残留物又は蒸解残留物と付加的な二酸化チタンとの混合物に成分(II)を添加した後に、この組成物を好ましくは300〜900℃の温度で、特に好ましくは400〜700℃の温度で、好ましくは0.1〜20時間、特に好ましくは0.5〜3時間か焼することができる。
【0057】
好ましい実施態様の場合に、この組成物はタングステン化合物を含有する。他の好ましい実施態様の場合に、この組成物はバナジウム化合物を含有する。しかしながら、この組成物は、好ましくはタングステン化合物及びバナジウム化合物も含有することができる。この組成物の固体含有率に対して、この組成物は、特に好ましくは、WO
3として計算してタングステンを少なくとも1.0質量%含有し、及び/又はV
2O
5として計算してバナジウムを少なくとも0.05質量%含有する。
【0058】
好ましくは、このために、蒸解残留物又は蒸解残留物と付加的な二酸化チタンとからなる混合物を含有する担体材料に、タングステン含有の、好ましくはタングステン酸塩含有の溶液(例えばタングステン酸アンモニウム((NH
4)
10W
12O
41・5H
2O))を含浸させる、例えば、タングステン酸アンモニウム溶液中の担体材料のスラリーを所定の時間にわたり撹拌する。この場合、引き続くか焼の後にWO
3含有率は、担体材料及びWO
3の全体量に対して、1.0〜20質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%であることが生じる。WO
3含有率の調節は、例えばタングステン酸塩の濃度により行うことができ、かつ原子吸光分析により制御することができる。
【0059】
タングステン含有溶液を添加した後に、(被覆された)担体材料は場合により濾別され、乾燥させ、好ましくは噴霧乾燥により乾燥させ、引き続きか焼される。か焼のために、150℃を超える、好ましくは350〜600℃、特に好ましくは450〜550℃の温度が適用される。
【0060】
こうして得られたタングステン含有の担体材料又は触媒材料(例えばタングステン含有チタン濃縮物)は好ましくは3〜70m
2/g、好ましくは3〜50m
2/g、特に好ましくは5〜30m
2/gのBET表面積を有する。このBET表面積は上記の方法により測定される。
【0061】
担体材料とWO
3との全質量に対して、WO
3を0.05〜0.20質量%/m
2の量で存在させることにより、WO
3含有率及びBET表面積を互いに調節させることが好ましい。
【0062】
場合によりタングステンを含有する担体材料に、バナジウム、モリブデン、鉄、クロム、銅、ニオブ、ニッケル、コバルト、アンチモン、ビスマス、ランタン、イットリウム、スカンジウム、ジルコニウム、マグネシウム、ハフニウム、タンタル、テルビウム、セリウム、イッテルビウム、エルビウム、サマリウム、セリウム、コバルト、バリウム及びマンガンからなる群から選択される少なくとも1種の(他の)酸化金属、及び/又は銀、金、ルテニウム、パラジウム、白金、及びロジウムからなる群から選択される少なくとも1種の金属を添加することができる。
【0063】
本発明による組成物は、更に、好ましくはバナジウム化合物、好ましくはV
2O
5を含有し、担体材料、V
2O
5及び場合によりWO
3の全質量に対して、好ましくはV
2O
5を0.05〜3.0質量%の量で、特に好ましくはV
2O
5を1.0〜3.0質量%の量で、最も好ましくはV
2O
5を1.2〜2.0質量%の量で含有することができる。
【0064】
DeNOx触媒として適用する場合に、例えばNH
3−SCR触媒の場合に、当業者は適用された酸化バナジウム含有率を適切に変更することにより所定の温度範囲での活性を容易に制御することができる。適用されるべき量の選択は、相応する一連の試験において適切な量の変更により行う。高いV
2O
5濃度(例えば3%のV
2O
5)は、比較的低い温度(例えば300℃未満)での触媒の高い活性を生じさせるが、比較的高い温度では活性の著しい損失を生じ、更に高められたかつ同時に不所望なアンモニア酸化が生じることは公知である。V
2O
5濃度の低減(例えば0.5〜2%のV
2O
5)により、比較的高い又は広い温度範囲について触媒を適合することも可能である。
【0065】
本発明による組成物(蒸解残留物、場合による付加的な二酸化チタン及び場合によるWO
3)を、バナジウム含有溶液中で含浸し、引き続き(もう一度)か焼することによりV
2O
5を供給することができる。バナジウム含有溶液は、好ましくはバナジン酸塩溶液(例えばメタバナジン酸アンモニウム)、シュウ酸バナジウム含有溶液又は硫酸バナジウム含有溶液である。か焼の前にこのバナジウム含有粉末を場合により濾過し、乾燥し、好ましくは噴霧乾燥する。好ましいか焼温度は300〜700℃の範囲内にあり、この場合、生じる粒子サイズ、BET、材料の細孔サイズがバナジウム含有出発化合物の分解挙動と同様に重要である。メタバナジン酸アンモニウムの場合に、この分解は、通常では既に300℃で完了する。
【0066】
本発明による組成物は、好ましくは6〜54質量%のチタン含有率を有する。
【0067】
更に、この組成物は、好ましくは1〜5のpH値、特に1.5〜3のpH値を有する。
【0068】
1実施態様の場合に、この組成物は、更にか焼後に3〜70m
2/g、好ましくは3〜50m
2/g、特に好ましくは5〜30m
2/gのBET表面積を有する。上述したように、か焼は一般に好ましくは300〜900℃、特に好ましくは400〜700℃の温度で、好ましくは0.1〜20時間、特に好ましくは0.5〜3時間行う。
【0069】
この組成物の硫酸塩含有率は、組成物の固体割合に対して、好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.5〜3.0質量%である。
【0070】
1実施態様において、この組成物は、90質量%未満、好ましくは80質量%未満の固体含有率を有するフィルターケークの形又は懸濁物の形で存在する。
【0071】
組成物中でX線回折分析により決定されたルチル型の二酸化チタン対他の結晶相との比率は、X線回折図の2シータ=2.75°でのルチル主反射と最も強い他の残りの反射との強度の割合により表される。この場合、2シータ=27.5°でのルチル主反射の強度は、X線粉末図の残りの全ての反射のうちの最も強い反射の強度の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、特に好ましくは少なくとも80%である。
【0072】
形状安定性の触媒活性の固体
本発明による組成物(つまり触媒活性担体材料)から本発明による形状安定性の固体を製造するために、セラミックペーストを製造するために、この組成物を有機結合剤及び場合により可塑剤及び他の添加剤、ガラス繊維と、好ましくは水の存在で混合する。この場合、この組成物は、このようにして得られた混合物に対して、好ましくは60〜90質量%、特に70〜80質量%の量で使用される。
【0073】
結合剤及び/又はチキソトロープ剤として、層状ケイ酸塩、例えばベントナイト及びカオリンが挙げられる。層状の構造単位を有する材料の典型的な例(フィロケイ酸塩)は、蛇紋岩Mg
3(OH)
4[Si
2O
5]、カオリナイトAl
2(OH)
4[Si
2O
5]、並びにベントナイトの主材料としてのモンモリロナイトである。
【0074】
混合物中に使用することができる他の添加剤は、例えばガラス繊維を構造補強のために(例えば5〜15質量%の割合で)、結合剤としてアクリルポリマー、膨潤剤/可塑剤としてセルロース又はセルロース誘導体、水酸化アンモニウム、溶解助剤及び/又は錯生成剤として有機酸、例えば乳酸又はシュウ酸、並びにpH調節のためのアミノアルコール、例えばアミノメチルプロパノール又はモノエタノールアミンが含まれる。
【0075】
本発明による組成物及び結合剤及び場合により可塑剤及び他の添加剤からなるこうして得られた混合物を更に加工する場合に、主に2つのバリエーションに区別することができる、つまりいわゆる中実触媒(Vollkatalysator)の製造と、層状触媒、例えばいわゆる板状触媒の製造とを区別することができる。
【0076】
中実触媒とは、完全に又は十分に、本発明による粉末状の組成物及び結合剤及び場合により可塑剤及び他の添加剤からなる上記の混合物から製造された形状安定性の固体であると解釈される。「形状安定性」とは、本発明の場合に、主に「非粉末状」でかつ自立的であると解釈される。このために、この混合物は好ましくは混練され、次いで好ましくは押出又は圧縮により所定の形状が付与される。特に好ましくは、この混合物は押出によりセラミックモノリスにされ、このモノリスはハニカム状の成形体として記述することもできる。この場合、このハニカムは、任意の、当業者に公知の幾何学的形状をとることができる。このハニカムは、一般に断面において正方形であり、この名称から推測できるような六角形ではない。全質量に対して少なくとも80質量%の担体材料含有率を有する形状安定性の固体が好ましい。
【0077】
押出又は圧縮の後にこの固体を乾燥させ、引き続きか焼する。こうして得られたハニカム体は、好ましくは0.5〜2mmの壁厚及び3〜10mmの通路幅を有する。
【0078】
板状触媒のような層状触媒の製造の場合に次のように行われる:本発明による好ましくは粉末の組成物からなり、場合により結合剤、可塑剤及び他の添加剤を有する、得られた混合物を、担体上に塗布し、引き続き乾燥させかつか焼する。この担体材料は、幾何学的成形体、好ましくは、例えば紙又はセラミック、又は金属又は金属ネットからなる、付形されかつ場合により穿孔された板であることができる。
【0079】
本発明の場合に、中実触媒が好ましい。
【0080】
触媒反応における適用
本発明による組成物及び成形体は、触媒として良好に適している。
【0081】
蒸解残留物又はこの蒸解残留物から誘導される本発明による生成物は、煙道ガス脱硝(DeNOx)する方法において窒素含有化合物、好ましくはアンモニア又は、NOxとの反応の間又はその反応の直前にアンモニアに変換される窒素含有出発化合物、この場合、特に好ましくは尿素を用いた排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の効率的な接触還元のための脱硝触媒として使用するために極めて良好に適している。特に、
【化2】
によるアンモニアを用いた窒素酸化物の選択的接触還元(SCR)において、二酸化チタンの代わりに又は二酸化チタンと組み合わせた蒸解残留物の使用が、この場合に特に重要である。使用分野は、据置型の分野では、例えば発電所、石炭発電所、ガス発電所、ゴミ焼却装置、硝酸生産装置又は硝酸加工装置、製鋼所、並びに可動型の分野では、自動車、乗用車、トラック、船舶である。
【0082】
本発明は、特に、本発明による形状安定性の固体の、窒素酸化物を低減する触媒としての使用、特に次の反応が進行する、選択的接触還元(SCR)用の触媒としての使用、更に急速SCR(fast SCR)のための触媒としての使用を提供する:
2NH
3 + NO + NO
2 → 2N
2 + 3H
2O(排気ガス中にNO及びNO
2、急速)
8NH
3 + 6NO
2 → 7N
2 + 12H
2O(排気ガス中にNO
2だけ、比較的緩慢)
【0083】
特に、自動車における本発明による触媒が好ましく、特に好ましくは酸化触媒と組み合わせた、好ましくは後方に配置する使用である。
【0084】
本発明による形状安定性の固体は、SO
2の接触酸化のためにも使用することができる。
【0085】
更に、本発明による組成物及び前記組成物から誘導された生成物につて、原油加工における適用分野が生じる。水素化脱硫のための触媒として、蒸解残留物又は蒸解残留物からなり、付加的に二酸化チタン、例えば慣用の担体として使用されたTiO
2を有する混合物を利用することができる。触媒活性成分(II)を添加する前に、この蒸解残留物は、主にアナターゼ型で存在する、つまりX線回折分析により測定して90より大:10、特に好ましくは99より大:1のアナターゼ対ルチル比を有し、更に好ましくは40〜350m
2/gのBET表面積を有する付加的な二酸化チタンと混合することができる。この触媒活性成分(II)は、好ましくはモリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物又はコバルト化合物から選択されるか、又はこの組合せ又は共通の化合物から選択される。好ましくは、CoMo/TiO
2、NiMo/TiO
2又はFeMo/TiO
2は、触媒活性酸化物系として、例えば上記系FeMo/TiO
2においてMo5〜15質量%及びFe0.1〜0.8質量%の組成で使用される。
【0086】
更に、この蒸解残留物又はこの蒸解残留物から誘導される本発明による生成物は、その微細粒性及びその高いTiO
2含有率に基づいて、酸化触媒として、好ましくは炭化水素の部分酸化及び有機化合物の酸化合成のための触媒として特に良好に適しており、特に好ましくは有機酸、アルデヒド及び酸無水物、例えば無水フタル酸又は無水マレイン酸の合成のための触媒として適している。酸化触媒としての適用の場合に、例えば選択的酸化の場合に、当業者は、適用される酸化バナジウム含有率の適切な変更によって所定の温度範囲での活性及び選択率を容易に調節することができる。適用される量の選択は、例えばバナジウム及びチタン含有系について開示されているような相応する一連の試験における適切な量の変更によって行われる(G. C. Bond et al., Journal of Catalysis 57 (1979) 476-493)。
【0087】
この場合、当業者は、適用されるべき酸化バナジウム含有率の適切な変更によって所定の温度範囲での活性及び選択率を容易に調節できるだけでなく、一連の試験でのバナジウム含有率及び助触媒含有率の計画的な調節によって最適化することができる。例えば、オルト−キシレンから無水フタル酸を合成する場合、酸化バナジウム含有率及び助触媒含有率(例えばセシウム化合物、リン化合物又はアンチモン化合物)を一連の試験において最適化することができ、及びこの触媒組成物の最適領域はこの場合、収量低下及びオルトキシレンの不完全な転化率を伴う不完全な不足酸化(Unteroxidation)も、過剰酸化(Oberoxidation)も避けるように選択される。例えば、本発明による蒸解残留物を基礎とする触媒は、次の組成:V
2O
5 0〜30、好ましくは5〜15質量%、Sb
2O
3 0〜5、好ましくは0.5〜3質量%、Cs 0〜5、好ましくは0.5〜2質量%、P 0〜5、好ましくは0.5〜3質量%、残りの割合は蒸解残留物及び場合により他の成分を有することができる。
【0088】
蒸解残留物又は前記蒸解残留物から誘導された本発明による生成物は、その微細粒性、その高いTiO
2含有率、及びその可変に調節可能な硫酸塩含有率に基づき、異性化反応のための、特にブタンからイソブタンの生成、α−ピネンからカンフェンの生成のための触媒として極めて良好に適している。今まで、これらの反応のために、特に二成分の金属酸化物、例えばTiO
2、Fe
2O
3又はZrO
2の使用が開示されている(Zeitschrift fuer Physikalische Chemie 130 (1982) 205-209)。
【0089】
更に、蒸解残留物又は前記蒸解残留物から誘導された本発明による生成物は、一連の重要なプロセス、例えばエポキシ化反応(酸化プロパンの廉価でかつ資源を大切にする製造)、アルドール反応(アセトアルデヒドからクロトンアルデヒドへの反応)、酸化脱水素(ODH、バナジウム含有のチタン濃縮物又は本発明による生成物の使用下でのプロパンと酸素とからプロペン及び水への反応)、アミド化反応、不均一系触媒によるフィッシャー・トロプシュ反応、石炭液化(CTL coal to liquids、GTC gas to coal、GTL gas to liquid)、水素化反応又は例えば同含有チタン濃縮物又は本発明による生成物の使用下でのメタノール合成のために適した触媒又は触媒担体である。
【0090】
蒸解残留物及び前記蒸解残留物から誘導される生成物について、環境触媒的な観点で、更に排ガス後処理における使用分野が生じる。蒸解残留物又は前記蒸解残留物から誘導される本発明による生成物は、その本発明による組成、その高いTiO
2含有率、その微細粒性、少量の可溶性塩に基づいて、粒子フィルタの被覆のための触媒活性の耐熱性材料が提供されることにより、自動車分野におけるカーボンブラック酸化(soot oxidation)のために極めて適している。このため、好ましくは、担体材料、つまり蒸解残留物単独にも又は蒸解残留物と付加的なTiO
2との混合物にも、タングステン化合物及び/又はバナジウム化合物を添加される。同様に、本発明によるV
2O
5含有触媒は、排気ガス、例えばゴミ焼却装置で生じる排気ガスから、ハロゲン化炭化水素、例えば塩素化炭化水素、ジオキシン、フラン、特にポリ塩化ジベンゾジオキシン又はジベンゾフランの分解及び除去のために適している。
【0091】
更に、蒸解残留物又は前記蒸解残留物から誘導される本発明による生成物は、その本発明による組成、その高いTiO
2含有率、その微細粒性、少量の可溶性の塩に基づき、触媒による燃焼過程で使用するために、例えば有効な酸素キャリアとして適していて、それにより化石燃料の改善された環境に優しい燃焼過程(ケミカルループ燃焼chemical-looping combustion)に著しく貢献する。
【0092】
更に、蒸解残留物又は前記蒸解残留物から誘導された本発明による生成物は、その可変に調節可能な硫酸塩含有率に基づき、特に表面での酸点(sauer Zentren)の存在又は作用に基づく触媒の適用のために適している、それというのも本発明による蒸解残留物の表面上の硫酸塩イオンは酸点を形成するか又はこのような酸性の表面機能性の形成を促進するためである。従って、特に、この蒸解残留物は酸触媒反応のため、特に良好に異性化のために適している。R. Obnishi et al.(Zeitschrift fuer Physikalische Chemie 130 (1982) 205-209)は、それに対して、TiO
2、Fe
2O
3上の(NH
4)
2SO
4の作用を開示しているにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【
図1】洗浄しかつ乾燥した蒸解残留物のX線回折図を示す。
【
図2】TK、TK−V、TK−V−Wについての、温度の関数としての触媒活性を示す。
【
図3】対照としてのTi−V3及びTi−V4と比較したTK−Vについての、温度の関数としての触媒活性を示す。
【
図4】対照としてのTi−V−W1及びTi−V−W2と比較したTK−V−Wについての、温度の関数としての触媒活性を示す。
【
図5】Ti−V−Wと比較した、A−V−W、B−V−W、C−V−W、D−V−W、E−V−W及びF−V−Wについての、温度の関数としての触媒活性を示す。
【0094】
本発明を、次の実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこの特別な実施例に限定されるものではない。
【0095】
実施例1
触媒活性の評価のために、本発明による蒸解残留物を有する多様な試料TK、TK−V及びTK−V−W(以後、チタン濃縮物又はTKと表す)並びに多様な慣用の二酸化チタンを有する比較試料(Ti−V−W1、Ti−V−W2、Ti−V3、Ti−V4)を触媒粉末として観察した。このため、触媒活性を、固定床反応器中でのアンモニア−SCR反応によるNOの分解において決定した。チタン濃縮物の試料TKの準備のために、硫酸法による二酸化チタンの製造においてチタン含有原料の硫酸による蒸解の際に生じる不溶性の蒸解残留物を苛性ソーダでpH値7〜8にまで中和し、次いで濾過し、濾過ケークの形で実験室用乾燥庫中で120℃で乾燥した。
【0096】
バナジウム含有又はタングステン含有の試料(TK−V、TK−W及びTK−V−W)の製造のために、これに、メタバナジン酸アンモニウム(試料の全質量に対して1.5質量%のV
2O
5含有率に相当)又はパラタングステン酸アンモニウム(試料の全質量に対して10質量%のWO
3含有率に相当)を水溶液の形で室温で含浸させ、乾燥庫中で150℃で14時間乾燥させ、引き続き400℃の温度で1時間か焼する。触媒測定において使用する前に、この試料を、圧縮、引き続き粉砕、篩別により、255〜350μmの粒子直径を有する粒子フラクション(篩別フラクション)に移行させた。
【0097】
触媒の負荷量を定量化するために、空間速度(GHSV、gas hourly space velocity)を使用した。これは、原料ガスの全体積流量と触媒体積との商:GHSV=V
Gas/(m
Kat/ρ
Kat)として定義される。この場合、183.4ml/minの全体積流量が、触媒75mgを介して導通され、このことから、100000h
-1の空間速度GHSVが生じた。全ての場合に、この原料ガス混合物は、NO 1000ppm、NH
3 1000ppm及びヘリウム中2%のO
2を含有していた。生成物ガス混合物のこの分析は、NO、NO
2並びにNH
3の検出のために測光学的測定装置(BINOS)の組合せを用いて行った。
【0098】
本発明によるチタン濃縮物について、表1及び
図1〜4に詳細に示されているように、DeNOx触媒としての基本的に好ましい適性を意外にも見出すことができた。純粋な酸化チタンと比較して触媒材料中で酸化チタン割合の有意な減少にもかかわらず、触媒活性の比例した減少又は過大な減少は生じなかった。触媒濃縮物を基礎とするこの触媒は、多様な組成で、良好な触媒活性及び触媒作用を示し、かつ競争力のある材料であった。
【0099】
【表1】
TK=チタン濃縮物(又は蒸解残留物)
Ti=二酸化チタン
W=試料の全質量に対して10質量%のWO
3
V=試料の全質量に対して1.5質量%のV
2O
5
Ti−V−W1=実験室用モデル:二酸化チタン成分:350m
2/gのBET表面積を有するアナターゼ
Ti−V−W2=市場で入手可能な材料、crenox A−DW−1
Ti−V3=二酸化チタン成分:90m
2/gのBET表面積を有するアナターゼ
Ti−V4=二酸化チタン成分:350m
2/gのBET表面積を有するアナターゼ
【0100】
図2(上記表の第1欄〜第4欄)には、温度の関数としての触媒活性が記載されている。以下のことが判明した:
− 比較的純粋な、塩不含に洗浄された蒸解残留物(TK)は60%を越える触媒効率(450〜500℃の温度範囲で)を達成した。その他に、700℃を超える温度でも、不所望なNO生成は生じないことが特徴的であった。
− 1.5質量%のV
2O
5の添加量を有する比較的純粋な、塩不含に洗浄された蒸解残留物(TK−V)は70%を越える触媒効率(350〜400℃の温度範囲で)を達成した。
− 1.5質量%のV
2O
5及び10質量%のWO
3の添加量を有する比較的純粋な、塩不含に洗浄された蒸解残留物(TK−V−W)は90%を越える触媒効率(350〜450℃)を達成した。
【0101】
図3(又は上記表の第3欄、第7欄及び第8欄)には、対照としての1.5質量%のV
2O
5添加量を有する2種の二酸化チタンバリエーション(Ti−V3、第7欄及びTi−V4、第8欄)と比較した、1.5質量%のV
2O
5添加量を有する本発明による蒸解残留物(TK−V、第3欄)についての、温度の関数としての触媒活性が示されている。Ti−V3は、約90m
2/gの比表面積を有し、Ti−V−4は、約350m
2/gの比表面積を有する。
【0102】
1.5質量%のV
2O
5の添加量を有する比較的純粋な、塩不含に洗浄された蒸解残留物は、全体の温度範囲にわたり、許容可能な活性を示し、低い温度範囲ではそれどころか対照材料よりも改善された触媒効率を達成することが判明する。
【0103】
図4(又は上記表の第4欄〜第6欄)には、対照として1.5質量%のV
2O
5並びに10質量%のWO
3の添加量を有する2種の二酸化チタンバリエーション(Ti−V−W1、第5欄及びTi−V−W2、第6欄)と比較した、1.5質量%のV
2O
5並びに10質量%のWO
3の添加量を有する本発明の蒸解残留物(TK−V−W、第4欄)についての温度の関数としての触媒活性が示されている。Ti−V−W1(実験室用生成物)及びTi−V−W2(大規模工業的に製造された生成物)は、350又は約90m
2/gの比表面積を有する。
【0104】
1.5質量%のV
2O
5並びに10質量%のWO
3の添加量を有する比較的純粋な、塩不含に洗浄された蒸解残留物は、約500℃の温度まで、対照材料と比較可能な極めて高い効率を達成し、部分的にそれどころか改善された効率を達成することが判明する。
【0105】
実施例2
1.5質量%のV
2O
5並びに10質量%のWO
3の添加量を有する本発明による蒸解残留物についての触媒活性を調査し、その際、この蒸解残留物は、V化合物及びW化合物の添加の前に、異なる様式で前処理されていた。
【0106】
洗浄された蒸解残留物は、濾過(膜フィルタープレス)後に次のように製造した。出発材料は、それぞれ75.4%の固体含有率(IR−乾燥器)、pH1.6(10%の懸濁物)を有するフィルタープレス廃棄物(MFP廃棄物)であった。次いで、この蒸解残留物を、バリエーションA〜Fに記載したように処理した。
【0107】
A 乾燥(酸含有)
MFP廃棄物150gを、空気循環型乾燥庫中で130℃で乾燥した。次いで乳鉢中で粉砕を行った。100μmより大きな成分割合を篩別した。
収量:119g
【0108】
B 苛性ソーダで中和+乾燥(塩含有)
MFP廃棄物150gを、脱塩水約500mlと一緒に磁気撹拌機で再分散させた(pH1.3)。生じた懸濁液を、次いで濃苛性ソーダ12.0gでpH値7に調節し、130℃で空気循環型乾燥庫中で乾燥した。引き続き、乳鉢中で粉砕を行った。100μmより大きな成分割合を篩別した。
収量:123g
【0109】
C 苛性ソーダで中和+濾過+乾燥(塩貧有)
MFP廃棄物150gを、脱塩水約500mlと一緒に磁気撹拌機で再分散させた(pH1.3)。この懸濁液を、次いで濃苛性ソーダ11.9gでpH値7に調節し、二重のブラックリボンフィルタで濾過した。生じた濾過ケークを空気循環型乾燥庫中で130℃で乾燥した。引き続き、乳鉢中で粉砕を行った。100μmより大きな成分割合を篩別した。
収量:112g
【0110】
D 苛性ソーダで中和+濾過+洗浄+乾燥(塩不含)
MFP廃棄物150gを、脱塩水約500mlと一緒に磁気撹拌機で再分散させた(pH1.3)。この懸濁液を、次いで濃苛性ソーダ12.3gでpH値7に調節し、二重のブラックリボンフィルタで濾過した。その後、脱塩水2リットルで洗浄した。生じた濾過ケークを空気循環型乾燥庫中で130℃で乾燥した。引き続き、乳鉢中で粉砕を行った。100μmより大きな成分割合を篩別した。
収量:110g
【0111】
E 苛性ソーダで中和+噴霧乾燥(塩含有)
MFP廃棄物を苛性ソーダでpH値8に調節し、噴霧乾燥した。
【0112】
F 苛性ソーダで中和+濾過+噴霧乾燥(塩貧有)
MFP廃棄物を苛性ソーダでpH値8に調節し、濾過し、新たに水と共に再分散させ、噴霧乾燥した。
【0113】
バナジウム及びタングステンの添加、測定試料の製造並びにNO転化率の測定は、実施例1に記載したのと同様に行った。
【0114】
図5は、アナターゼ−TiO
2担体上の慣用の担持されたV
2O
5−WO
3触媒(Ti−V−W)と比較した、1.5質量%のV
2O
5及び10質量%のWO
3を有する実施例2A〜2Fの本発明による組成物の、150℃〜750°の温度範囲の触媒活性(NO転化率)を示す。
【0115】
塩(硫酸ナトリウムの形)の洗い出しは触媒効率にとって特に好ましいことが判明する。