特許第6099571号(P6099571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099571水性ポリウレタン被覆剤および当該被覆剤から製造された、高い耐引掻性および良好な耐化学薬品性を有する被覆
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099571
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン被覆剤および当該被覆剤から製造された、高い耐引掻性および良好な耐化学薬品性を有する被覆
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/08 20060101AFI20170313BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20170313BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C09D183/08
   B05D1/36 Z
   B05D7/24 302Y
【請求項の数】17
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-549762(P2013-549762)
(86)(22)【出願日】2012年1月4日
(65)【公表番号】特表2014-508823(P2014-508823A)
(43)【公表日】2014年4月10日
(86)【国際出願番号】EP2012050096
(87)【国際公開番号】WO2012098014
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2014年12月4日
(31)【優先権主張番号】61/434,485
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11151559.9
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マテイス グレーネヴォルト
(72)【発明者】
【氏名】マヌエラ ニーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルフリート シュテュッベ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ シュテフェンス
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ シュニーダース
【審査官】 安藤 達也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/077180(WO,A1)
【文献】 特表2010−513616(JP,A)
【文献】 特開2007−002048(JP,A)
【文献】 特開2002−105396(JP,A)
【文献】 特表2010−513618(JP,A)
【文献】 特表2010−513617(JP,A)
【文献】 特表2013−504633(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/063332(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/149236(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/077181(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/077182(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00〜C09D201/10
B05D1/00〜B05D7/26
B32B1/00〜B32B43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物(A)、遊離イソシアネート基および/またはブロックトイソシアネート基ならびに加水分解可能なシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)およびシラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(C)を含有する水性被覆剤であって、
前記化合物(B)が式(I)
−N(X−SiR''x(OR')3-x)n(X'−SiR''y(OR')3-y)m (I)
〔式中、
R'は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、有利にR'は、エチルおよび/またはメチルであり、
X、X'は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、有利にX、X'は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R''は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、有利に、R''は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、ならびに
x、yは、0〜2である〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、30〜70モル%
および
式(II)
−Z−(X−SiR''x(OR')3-x) (II)
〔式中、
Zは、−NH−、−NR−、−O−、−S−、有利に−NH−または−NR−であり、但し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、
xは、0〜2であり、および
X、R'、R''は、式(I)の際に記載された意味を有する〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、30〜70モル%
有し、
および化合物(B)において、構造単位(I)および(II)に反応されたイソシアネート基の割合が20モル%超〜40モル%であり、かつ水の全割合が被覆剤の全割合に対して10〜60質量%であることを特徴とする、前記水性被覆剤。
【請求項2】
前記化合物(B)が
式(I)の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、40〜60モル%
および
式(II)の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、40〜60モル%有することを特徴とする、請求項記載の被覆剤。
【請求項3】
イソシアネート基を含む化合物(B)が、親水性基を有することを特徴とする、請求項1または2記載の被覆剤。
【請求項4】
親水性基が、ポリエーテル基、カルボキシル基、燐酸基、ホスホン酸基およびスルホン酸基の群から選択されることを特徴とする、請求項記載の被覆剤。
【請求項5】
化合物(B)は、ポリイソシアネート(PI)のイソシアネート基の一部分を、少なくとも1つの化合物(Ia)
HN(X−SiR''x(OR')3-x)n(X'−SiR''y(OR')3-y)m (Ia)
および
少なくとも1つの化合物(IIa)
H−Z(X−SiR''x(OR')3-x) (IIa)
との混合物と反応させたことにより、得ることができることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項6】
ポリイソシアネート(PI)が1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、前記ポリイソシアネートのビウレット二量体および/または前記ポリイソシアネートのイソシアヌレート三量体の群から選択されていることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項7】
触媒(C)が燐を含んでいるかまたは燐および窒素を含んでいることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項8】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)が水希釈可能であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項9】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)が30〜400mg KOH/gのOH価を有し、および/またはヒドロキシル基を含む化合物(A)が30〜1mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項10】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)が100〜300mg KOH/gのOH価を有し、および/またはヒドロキシル基を含む化合物(A)が20〜5mg KOH/gの酸価を有することを特徴とする、請求項記載の被覆剤。
【請求項11】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)がポリ(メタ)アクリレート樹脂および/またはポリエステル樹脂および/またはポリウレタン樹脂であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項12】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)は、有機溶剤中または溶剤混合物中で、ヒドロキシル基および酸基を含むオリゴマーおよび/またはポリマーを製造し、こうして得られたオリゴマーおよび/またはポリマーを部分的に中和し、かつ水中に分散させることにより、得ることができることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項13】
前記被覆剤が
(I)ヒドロキシル基を含む化合物(A)を含有する成分(I)
(II)化合物(B)および触媒(C)を含有する成分(II)
および任意に
(III)前記被覆剤のさらなる成分を含有する成分(III)を含む二成分被覆剤または多成分被覆剤であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の被覆剤。
【請求項14】
多段階被覆法であって、任意に予め塗装された基材上に顔料が加えられた下塗り塗料層を塗布し、その後に請求項1から13までのいずれか1項に記載の被覆剤からなる層を塗布することを特徴とする、上記多段階被覆法。
【請求項15】
顔料を加えた下塗り塗料層の塗布後に、施された下塗り塗料を最初に室温ないし80℃の温度で乾燥させ、請求項1から13までのいずれか1項に記載の被覆剤の塗布後に、30〜200℃の温度で1分間ないし10時間の時間中に硬化させることを特徴とする、請求項14記載の多段階被覆法。
【請求項16】
自動車量産塗装、自動車用増設部品の塗装および自動車補修用塗装のためのクリヤコート材料としての、請求項1から13までのいずれか1項に記載の被覆剤の使用。
【請求項17】
自動車量産塗装、自動車用増設部品の塗装および自動車補修用塗装のための、請求項14または15記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含む化合物(A)、遊離イソシアネート基および/またはブロックトイソシアネート基ならびに加水分解可能なシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)およびシラン基を架橋するための少なくとも1つの触媒(C)を含有し、良好な貯蔵安定性を有し、および高い耐引掻性と同時に良好な耐化学薬品性を有する被覆を生じる、熱的に硬化可能な水性ポリウレタン被覆剤に関する。
【0002】
欧州特許出願公開第1273640号明細書には、ポリオール成分と、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環式ポリイソシアネートからなる架橋剤成分とからなる非水性2成分系被覆剤が記載されており、その際に元々存在する遊離イソシアネート基の0.1〜95モル%は、ビスアルコキシシリルアミンと反応されている。前記の被覆剤は、OEM量産塗装に使用されてよく、かつ当該被覆剤の完全な硬化後に良好な耐引掻性と同時に環境の影響に抗する良好な安定性を有する。
【0003】
WO 08/74491、WO 08/74490およびWO 08/74489から、ポリオール(A)、有利にヒドロキシル基を含むポリアクリレート−ポリオールおよび/またはヒドロキシル基を含むポリメタクリレート−ポリオール、およびイソシアネート基の一部分がモノアルコキシシリルアミン2.5〜97.5モル%とビスアルコキシシリルアミン2.5〜97.5モル%との混合物と反応されたものであるポリイソシアネート(B)を含有する2成分系被覆剤は、公知である。モノアルコキシシリルアミンおよびビスアルコキシシリルアミンと反応されたイソシアネート基の全割合は、ポリイソシアネート化合物(B)中で、5〜95モル%、有利に10〜90モル%、特に有利に15〜85モル%である。
【0004】
前記被覆剤は、欧州特許出願公開第1273640号明細書から公知の被覆剤と同様に、純粋に溶剤ベースで配合されている。しかし、生態的理由および経済的理由から、前記被覆剤中に使用される常用の溶剤の割合をできるだけ十分に減少させる努力が為されている。殊に、自動車用増設部品の塗装分野で、しかし、自動車補修用塗装の範囲においても、放出の少ない被覆剤が強く望まれている。
【0005】
水性2成分系ポリウレタン被覆剤は、同様に久しく公知である。その際に、成分(I)、一般にベースコート材料とも呼称される、は、水性で配合されており、かつ水に対して非感受性の成分、殊にヒドロキシル基を含む化合物(A)を含有する。成分(II)は、イソシアネート基を含む化合物(B)ならびに任意に水に対して感受性のさらなる化合物を含有する。
【0006】
更に、また、例えば欧州特許第707608号明細書から、ヒドロキシル基を含む結合剤が任意にさらにアルコキシシラン基を有することができる水性2成分系ポリウレタン被覆剤は、公知である。当該欧州特許明細書に記載された被覆剤の場合に、ヒドロキシル基を含む結合剤のための構成成分として、α位で枝分かれしたモノカルボン酸の少なくとも1つのビニルエステルが使用されるか、または(メタ)アクリル酸とα位で枝分かれしたモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物が使用されることは、基本的なことである。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許第19624972号明細書には、シラン官能性ポリウレタン樹脂の水性分散液および水性2成分系ポリウレタン被覆剤における、ヒドロキシル基を含む結合剤としての前記水性分散液の使用が記載されている。当該ドイツ連邦共和国特許明細書に記載された被覆剤は、高度な経過安全性を有しかつバブルフリーであり、かつ良好な耐化学薬品性、耐揮発油性および耐湿性(FeuchtRaumbestaendigkeit)を生じる。
【0008】
しかし、前記の水性被覆剤の場合には、常に、水性分散液中に存在するシランの割合が問題となる。それというのも、ゲル化の危険およびそれによって制限された不十分な貯蔵安定だけが存在するからである。ゲル化を回避させるため、および十分な貯蔵安定性を達成させるために、前記系中でシランの割合は制限されなければならず、このことは、他方で被覆の制限された耐引掻性だけが生じるという結果となる。
【0009】
最後に、欧州特許第872499号明細書から、ヒドロキシル基を含む化合物の他に架橋剤として、イソシアネート基0.8〜50モル%、有利に1.5〜20モル%とモノアルキルシリルアミンとが反応したポリイソシアネートを含有する水性ポリウレタン被覆剤は、公知である。前記の欧州特許明細書中に記載された被覆剤は、シラン化されていないポリイソシアネートをベースとする水性ポリウレタン被覆剤と比較して、生じる被覆の改善された耐水性に優れている。
【0010】
課題および解決
本発明の課題は、自動車量産塗装の際に一般に使われている塗装方法で加工されることができかつ比較的低い温度で架橋されることができ、したがって、OEM量産塗装ならびに自動車補修用塗装の際に使用されうる、放出の少ない被覆剤、殊にクリヤコート材料を提供することであった。前記被覆剤は、とりわけ、高い表面品質の良さ(光沢、均展)ならびに極めて良好な耐引掻性(引掻の負荷後の高い光沢保留性)と同時に8.0mmを上回る良好なエリクセン深さ(少なくとも6回の測定からの平均値)ならびに化学薬品、殊に苛性ソーダ液に抗する良好な安定性についての自動車製造業者の要望を叶えるべきである。
【0011】
その際に、結合剤成分ならびに架橋剤成分は、高い貯蔵安定性を有するはずであり、結合剤成分および架橋剤成分の混合後に前記被覆剤は、十分に長い加工時間(いわゆる、可使時間)を有するはずである。
【0012】
更に、前記被覆剤は、一般に自動車量産塗装および自動車補修用塗装の際にクリヤーラッカー層に課された要件を満たすはずである。最後に、新規の被覆剤は、簡単で極めて良好に再現しうるように製造可能であるべきであり、かつ塗料の塗装中に生態的問題を引き起こさないはずである。
【0013】
課題の解決
上記の課題の設定に照らしてみて、ヒドロキシル基を含む少なくとも1つの化合物(A)、遊離イソシアネート基および/またはブロックトイソシアネート基ならびに加水分解可能なシラン基を有する少なくとも1つの化合物(B)およびシラン基を架橋するための触媒(C)を含有する被覆剤であって、前記化合物(B)が
式(I)
−N(X−SiR''x(OR')3-x)n(X'−SiR''y(OR')3-y)m (I)
〔式中、
R'は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、有利にR'は、エチルおよび/またはメチルであり、
X、X'は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、好ましくはX、X'は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R''は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、この場合炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、この場合Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、好ましくは、R''は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、ならびに
x、yは、0〜2である〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、10モル%〜90モル%未満
および
式(II)
−Z−(X−SiR''x(OR')3-x) (II)
〔式中、
Zは、−NH−、−NR−、−O−、−S−、有利に−NH−または−NR−であり、但し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、
xは、0〜2であり、および
X、R'、R''は、式(I)の際に記載された意味を有する〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、10モル%超〜90モル
することを特徴とする、前記被覆剤が見い出された。
【0014】
公知技術水準に関連して、意外なことに、当業者にとって、本発明の基礎となる課題が本発明による被覆剤により解決されうることは、予測することができなかった。
【0015】
本発明による被覆剤は、高い耐引掻性を有し(引掻の負荷後の高い光沢保留性)かつ普通の高度に架橋された耐引掻性の系とは異なり、化学薬品、殊に苛性ソーダ液に対する良好な耐化学薬品性と同時に8.0mmを上回る良好なエリクセン深さ(少なくとも6回の測定からの平均値)を有する新規の被覆および塗装、特にクリヤコートを供給する。その上、前記被覆剤は、良好な均展を有し、かつ高い表面品質の良さ(光沢)を有する被覆を生じる。
【0016】
それゆえ、本発明による被覆および塗装、特にクリヤコートは、自動車量産塗装(OEM)の技術的かつ審美的に特に要求の多い分野において使用されうる。これに関連して、前記クリヤコートは、殊に自動車用増設部品の被覆にも適しており、かつ同様に自動車補修用塗装の範囲内で使用されうる。
【0017】
本発明による成分は、特に簡単に極めて良好に再現可能であるように製造されることができ、優れた貯蔵安定性を有しかつ結合剤成分と架橋剤成分との混合後に十分に長い加工時間(いわゆる可使時間)を有する。更に、本発明による成分は、ラッカー塗装の際に重大な毒物的問題および生態的問題を引き起こさない。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明によれば、高い耐引掻性を有し(引掻の負荷後の高い光沢保留性)かつ普通の高度に架橋された耐引掻性の系とは異なり、化学薬品、殊に苛性ソーダ液に対する良好な被覆安定性と同時に8.0mmを上回る良好なエリクセン深さ(少なくとも6回の測定からの平均値)を有する被覆剤を一緒に提供する。その際に、本発明による被覆剤は、少なくとも貢献度に応じて水性に配合されており、それによって使用された溶剤の減少後に強化された要望が考慮に入れられる。これに関連して、本発明による被覆剤は、殊に自動車用増設部品の被覆にも適しており、かつ同様に自動車補修用塗装の範囲内で使用されうる。
【0019】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)
ヒドロキシル基を含む化合物(A)として、特に低分子量ポリオールならびにオリゴマーのポリオールおよび/またはポリマーのポリオールが使用される。
【0020】
低分子量ポリオールとして、例えばジオール、例えば有利にエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,2−シクロヘキサンジメタノール、ならびにポリオール、例えば有利にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリトールならびにジペンタエリトリトールが使用される。
【0021】
好ましくは、このような低分子量ポリオールは、オリゴマーのポリオール成分(A)および/またはポリマーのポリオール成分(A)の副次的な割合で混合される。
【0022】
好ましいオリゴマーのポリオール(A)および/またはポリマーのポリオール(A)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により測定した、500ダルトンを上回る、有利に800〜100000ダルトン、殊に1000〜50000ダルトンの質量平均分子量Mw有する。
【0023】
ポリオール(A)の、DSC(示差熱分析)により測定した、ガラス転移温度は、有利に−150〜100℃、特に有利に−120℃〜80℃である。
【0024】
更に、30〜400mg KOH/g、有利に100〜300mg KOH/gのOH価を有するオリゴマーのポリオール(A)および/またはポリマーのポリオール(A)が好ましい。
【0025】
アセチル化の際に物質1gによって結合される酢酸量に対して水酸化カリウムが何mg当量であるかによりヒドロキシル価(OH価)は定められる。試料は、測定の際に無水酢酸−ピリジンと一緒に煮沸され、生じる酸は、水酸化カリウム溶液で滴定される(DIN 53240−2)。
【0026】
また、最終的に硬化された被覆の性質は、ヒドロキシル基を含む結合剤を選択することによって影響を及ぼされうる。即ち、一般に成分(A)のOH価が上昇すると、シラン化度、すなわち式(I)および(II)の構造単位の量は、低下させることができ、このことは、他方で、最終的に硬化された被覆の耐候性にプラスの影響を及ぼす結果となる。
【0027】
殊に、水希釈可能である、ヒドロキシル基を含む化合物(A)が使用される。従って、ヒドロキシル基を含む化合物(A)は、有利に、水中での当該物質(A)の溶解性および/または分散可能性を生じる量の親水性基を有する。
【0028】
従って、ヒドロキシル基を含む化合物(A)は、イオン性基、イオン形成可能な基および/または親水性の非イオン性基を有していてよい。イオン形成可能な基は、塩基または酸との中和によってイオン性基に移行される官能性基、例えば酸性基または塩基性基である。
【0029】
陽イオンに移行可能な塩基性基として、例えば第一級アミノ基、第二級アミノ基および第三級アミノがこれに該当し、陽イオン性基として、第四級アンモニウム基、ホスホニウム基およびスルホニウム基がこれに該当する。
【0030】
陰イオン性基または陰イオン形成可能な基が好ましい。酸性の、陰イオン形成可能な基として、例えばカルボキシル基、燐酸基、ホスホン酸基およびスルホン酸基がこれに該当する。カルボキシル基、ホスホン酸基および/またはスルホン酸基が好ましい。従って、好ましくは、30〜1mg KOH/g、特に有利に20〜5mg KOH/gの酸価を有する、ヒドロキシル基を含む化合物(A)が使用される。
【0031】
これに関連して、酸価は、成分(A)のそれぞれの化合物1gを中和するために消費される水酸化カリウムのmg数を定める(DIN EN ISO 2114)。
【0032】
特に好ましい、ヒドロキシル基を含む化合物(A)は、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールおよび殊にポリアクリレートポリオールおよび/またはポリメタクリレートポリオールならびにこれらのコポリマーであり、以下、ポリアクリレートポリオールと呼称される。
【0033】
適当なポリエステルポリオールは、例えば欧州特許出願公開第0994117号明細書および欧州特許出願公開第1273640号明細書中に記載されている。ポリウレタンポリオールは、特にポリエステルポリオールプレポリマーを適当なジイソシアネートまたはポリイソシアネートと反応させることによって製造され、かつ例えば欧州特許出願公開第1273640号明細書中に記載されている。
【0034】
本発明によれば、殊に好ましいポリアクリレートポリオールは、たいていコポリマーであり、かつ特に、それぞれポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した、1000〜20000ダルトン、殊に1500〜10000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。前記コポリマーのガラス転移温度は、たいてい−100〜100℃、殊に−50〜80℃である(DSC測定により測定した)。
【0035】
ポリアクリレートポリオール(A)は、有利に60〜250mg KOH/g、殊に70〜200mg KOH/gのOH価を有する。
【0036】
特に好ましくは、20〜5mg KOH/gの酸価を有するポリアクリレートポリオール(A)が使用される。
【0037】
ヒドロキシル基を含むモノマー構成単位として、好ましくはヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば殊に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートならびに殊に4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルメタクリレートが使用される。
【0038】
カルボキシル基は、好ましくはモノマー構成単位としてのエチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸および/またはメタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸および/またはビニルホスホン酸等、殊にアクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはビニルホスホン酸を使用することによって導入される。
【0039】
さらなるモノマー構成単位として、ポリアクリレートポリオールには、有利にアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート、特にエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレートもしくはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレートおよび/またはシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートまたは殊にシクロヘキシルアクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートが使用される。
【0040】
ポリアクリレートポリオールのためのさらなるモノマー構成単位として、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレンまたは殊にアクリル酸もしくはメタクリル酸のスチレン、アミドもしくはニトリル、ビニルエステルまたはビニルエーテルが使用されてよい。
【0041】
本発明により有利に使用される、ヒドロキシル基を含む化合物(A)は、有機溶剤中または溶剤混合物中で、有利に重合開始剤または適当な触媒の存在下で、ヒドロキシル基および酸基を含むオリゴマーおよび/またはポリマーを製造し、こうして得られた、ヒドロキシル基および酸基を含む化合物を部分的に中和し、かつ水中に分散させることにより、得ることができる。
【0042】
それぞれ使用すべき中和度は、化合物(A)の酸価に依存し、一般に、70mg KOH/gを下回る酸価の際に50〜90%および70mg KOH/gを上回る酸価の際に30〜80%である。中和のために、有機塩基ならびに無機塩基が使用されてよい。好ましくは、第一級アミン、第二級アミンおよび/または第三級アミン、例えばエチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、モルホリン、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミン、殊に第三級アミン、殊に有利にジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンおよびジメチルイソプロピルアミン、トリプロピルアミンおよびトリブチルアミンが使用される。
【0043】
中和反応は、一般に中和塩基をヒドロキシル基および酸基を含む化合物(A)の溶液と混合することによって実施される。その際に、たいてい、生じる分散液が6〜9、特に7〜8のpH値を有する程度の塩基が使用される。引続き、部分的または全体的に中和されたポリマーは、水の添加によって分散される。その際に、ヒドロキシル基を含む化合物(A)の水性分散液が生じる。引続き、任意にさらに一部の有機溶剤または全部の有機溶剤が留去されうる。
【0044】
加水分解可能なシラン基を有する、イソシアネート基を含む化合物(B)
本発明による被覆剤は、遊離イソシアネート基、すなわちアンブロックトイソシアネート基および/またはブロックトイソシアネート基ならびに加水分解可能なシラン基を有する1つ以上の化合物(B)を含有する。好ましくは、本発明による被覆剤は、遊離イソシアネート基を有する化合物(B)を含有する。しかし、イソシアネート基を含む化合物(B)のイソシアネート基は、ブロック化された形で使用されてよい。
【0045】
本発明により使用される、イソシアネート基および加水分解可能なシラン基を含む化合物(B)のための基材として使用するジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート(PI)は、好ましくは、自体公知の、置換された、または置換されていない、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートおよび/またはヘテロ環式ポリイソシアネートである。
【0046】
好ましいポリイソシアネート(PI)の例は、次のとおりである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレン−ジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG社のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社のTMXDI(登録商標))および前記ポリイソシアネートの混合物。更に、好ましいポリイソシアネート(PI)は、前記ジイソシアネートのビウレット二量体およびイソシアヌレート三量体である。
【0047】
特に好ましいポリイソシアネート(PI)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、これらのビウレット二量体および/またはイソシアヌレート三量体である。
【0048】
本発明のさらなる実施態様において、ポリイソシアネート(PI)は、ポリオールを化学量論的過剰量の前記ポリイソシアネートと反応させることによって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーである。このようなポリイソシアネートプレポリマーは、例えば米国特許第4598131号明細書中に記載されている。
【0049】
本発明により使用される、イソシアネート基および加水分解可能なシラン基を含む化合物(B)は、親水性に変性されていてよい。従って、前記化合物(B)は、親水性基、例えばイオン性基、イオン形成可能な基および/または親水性の非イオン性基を有することができる。イオン形成可能な基は、塩基または酸との中和によってイオン性基に移行される官能性基、例えば酸性基または塩基性基である。
【0050】
好ましい親水性基は、ポリエーテル基および/または陰イオン形成可能な基である。陰イオン形成に適格な酸性基として、例えばカルボキシル基、燐酸基、ホスホン酸基およびスルホン酸基がこれに該当する。たいてい、スルホン酸基が好ましい。それというのも、当該スルホン酸基は、分散可能性に関連して最も効果的であるからである。
【0051】
親水性の非イオン性基を有する化合物(B)の例として、例えば、少なくとも部分的に、取り付けたエチレンオキシド単位または取り付けたプロピレンオキシド単位を有するポリエーテル鎖をベースとする化合物を挙げることができる。
【0052】
親水性に変性されたジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート(PI)は、公知である。市場において、親水性に変性されたジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートは、例えばBayer Material Science AG社のBayhydur(登録商標)、例えばBayhydur(登録商標)304、Bayhydur(登録商標)305、Bayhydur(登録商標)3100、Bayhydur(登録商標)401−70およびBayhydur(登録商標)BL5140の名称、およびBASF SE社のBasonat(登録商標)、例えばBasonat(登録商標)HW100およびBasonat(登録商標)HW180PCの名称で入手可能である。
【0053】
イソシアネート基を含む化合物(B)が
式(I)
−N(X−SiR''x(OR')3-x)n(X'−SiR''y(OR')3-y)m (I)
〔式中、
R'は、水素、アルキルまたはシクロアルキルであり、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、
有利にR'は、エチルおよび/またはメチルであり、
X、X'は、1〜20個の炭素原子を有する直鎖状および/または分枝鎖状のアルキレン基またはシクロアルキレン基であり、有利にX、X'は、1〜4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R''は、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであり、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、有利にR''は、殊に1〜6個のC原子を有するアルキル基であり、
nは、0〜2であり、mは、0〜2であり、m+nは、2であり、ならびにx、yは、0〜2である〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、10モル%〜90モル%未満
および
式(II)
−Z−(X−SiR''x(OR')3-x) (II)
〔式中、
Zは、−NH−、−NR−、−O−、−S−、殊に−NH−または−NR−であり、但し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、その際に炭素鎖は、隣接していない酸素基、硫黄基またはNRa基によって中断されていてよく、但し、Raは、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルであるものとし、
xは、0〜2であり、
X、R'、R''は、式(I)の際に記載された意味を有する〕の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、10モル%超〜90モル
することは、本発明にとって基本的なことである。
【0054】
化合物(B)が式(I)の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、20〜80モル%、30〜70モル%、殊に40〜60モル%、および
式(II)の少なくとも1つの構造単位を、構造単位(I)および(II)の全体に対して、20〜80モル%、30〜70モル%、殊に40〜60モル%有する被覆剤は、特に好ましい。
【0055】
同様に、化合物(B)において、構造単位(I)および(II)に変換されるイソシアネート基の割合が10〜60モル%、有利に20〜50モル%、特に有利に20モル%超〜40モル%である被覆剤は、特に好ましい。その際に、10モル%のシラン化度(すなわち、構造単位(I)および(II)に変換されたイソシアネート基の割合)とは、構造単位(I)および(II)に対して元々存在するイソシアネート基の10モル%が変換されていることを意味する。
【0056】
式(I)の構造単位は、ポリイソシアネート(PI)のイソシアネート基を式(Ia)
HN(X−SiR''x(OR')3-x)n(X'−SiR''y(OR')3-y)m (Ia)
〔式中、置換基は、上記の意味を有する〕の化合物と部分的に反応させることによって化合物(B)中に導入されてよい。
【0057】
式(II)の構造単位は、ポリイソシアネート(PI)のイソシアネート基を式(IIa)
H−Z−(X−SiR''x(OR')3-x) (IIa)
〔式中、置換基は、上記の意味を有する〕の化合物と部分的に反応させることによって化合物(B)中に導入されてよい。
【0058】
ポリイソシアネート(PI)と化合物(Ia)および(IIa)との反応は、特に不活性ガスの雰囲気中で最大100℃、有利に最大60℃の温度で行なわれる。
【0059】
本発明によれば、好ましい化合物(Ia)は、ビス(2−エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4−ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2−エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3−プロピルトリエトキシシリル)アミンおよび/またはビス(4−ブチルトリエトキシシリル)アミンである。ビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンが殊に好ましい。このようなアミノシランは、例えばDEGUSSA社のDYNASYLAN(登録商標)またはOSI社のSilquest(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0060】
本発明によれば、好ましい化合物(IIa)は、ω−アミノアルキルトリアルコキシシランまたはω−ヒドロキシアルキルトリアルコキシシラン、例えば特に2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリメトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリメトキシシラン、4−ヒドロキシブチルトリエトキシシランである。特に好ましい化合物(IIa)は、N−(2−(トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N−(4−(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N−(2−(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N−(3−(トリエトキシリル)プロピル)アルキルアミンおよび/またはN−(4−(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。N−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンが殊に好ましい。このようなアミノシランは、例えばDEGUSSA社のDYNASYLAN(登録商標)またはOSI社のSilquest(登録商標)の商品名で入手可能である。
【0061】
ところで、一般に同じシラン化度の場合に一官能性シラン(II)の割合が上昇すると、苛性ソーダ液に対する最終的に硬化された被覆の安定性は、増加するが、しかし、同時に耐引掻性は、減少する。更に、一般に二官能性シラン(I)の割合が上昇すると、苛性ソーダ液に対する最終的に硬化された被覆の安定性は、減少するが、しかし、同時に耐引掻性は、増加する。従って、二官能性シランの割合が高い場合、本発明による被覆剤を使用するために、化学薬品に対する、殊に苛性ソーダ液に対する安定性を高めるための別の手段が取られる。殊に、シラン化度は、全体的に低下させることができ、すなわち全体的にシランと反応されたイソシアネート基の割合は、相応して低く選択されてよい。
【0062】
更に、シラン化度を上昇させ(すなわち、化合物(Ia)および(IIa)と反応されたイソシアネート基の全割合を上昇させる)かつ二官能性シラン(Ia)の割合を上昇させると、生じる被覆の性質に対する触媒の影響は、常により大きくなり、したがってさらに殊にアミンでブロック化された燐酸をベースとする触媒が使用される。
【0063】
また、その際に、シラン構造単位の導入に使用される有機官能性シランの非官能性置換基は、加水分解可能なシラン基の反応性に影響を及ぼしうる。これは、例示的に、アミノ官能性シランの反応性を減少させうるアミノ官能基の嵩張って場所を取る置換基の例について説明される。前記背景に対しては、N−(n−ブチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましく、シラン構造単位(II)の導入のためには、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0064】
殊に、一般的なのは、有利にシランの反応性を減少させる基に対してシランの反応性を高める基である。
【0065】
殊に好ましい、イソシアネート基を含む化合物(B)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネートおよび/またはイソホロンジイソシアネートおよび/または4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネートおよび/またはこれらのイソシアヌレート三量体とビス(3−プロピルトリメトキシシリル)アミンおよびN−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンとの反応生成物である。
【0066】
シラン基を架橋するための触媒(C)
アルコキシシリル単位を架橋するための、ならびに化合物(A)のヒドロキシル基と化合物(B)の遊離イソシアネート基との反応のための触媒として、自体公知の化合物が使用されてよい。例は、ルイス酸(電子不足化合物)、例えばナフテン酸錫、安息香酸錫、オクテン酸錫、酪酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキシド、オクタン酸鉛ならびにWO−A−2006/042585中に記載されたような触媒である。
【0067】
しかし、触媒(C)として燐含有触媒、殊に燐・窒素含有触媒を使用することは、好ましい。その際に、2つ以上の様々な触媒(C)からなる混合物が使用されてもよい。
【0068】
適当な燐含有触媒(C)の例は、特に非環式ホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、非環式ジホスホン酸ジエステルおよび環式ジホスホン酸ジエステルからなる群からの置換されたホスホン酸ジエステルおよびジホスホン酸ジエステルである。
【0069】
即ち、例えば一般式(V)
【化1】
の非環式ホスホン酸ジエステル
または一般式(VI)
【化2】
の環式ホスホン酸ジエステル
が使用されてよい。
【0070】
一般式(V)および(VI)において、基R10およびR11は、同一かまたは互いに異なり、特にこれらは同一であり、かつさらに式(IV)で記載された意味を有する。
【0071】
一般式(VI)において、変数L'は、
− 基R10の原子と基R11の原子との間の共有結合;
− 酸素原子、置換された、殊に酸素で置換された硫黄原子および置換されていない硫黄原子、置換された、殊にアルキルで置換された窒素原子、置換された、殊に酸素で置換された燐原子および置換された、殊にアルキルおよびアルコキシで置換されたケイ素原子、殊に酸素原子からなる群から選択された二価の結合基;または
− 置換された、および置換されていない、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子およびケイ素原子、殊に酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択された少なくとも1個のヘテロ原子を含むかまたはヘテロ原子を含まない、1〜10個、特に1〜6個、殊に1〜4個の炭素原子を有するアルキル、3〜10個、特に3〜6個、殊に6個の炭素原子を有するシクロアルキルおよび5〜10個、殊に6個の炭素原子を有するアリールからなる群から選択された、二価の結合基を表わす。
【0072】
更に、例えば一般式(VII)
(R10−O)(O)PH−O−PH(O)(O−R11) (VII)
〔式中、変数は、前記の意味を有する〕の非環式ジホスホン酸ジエステル(C)が使用されてもよい。この種の触媒は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第102005045228号明細書中に記載されている。
【0073】
しかし、殊に非環式燐酸ジエステルおよび環式燐酸ジエステル、特に有利に燐酸モノエステルと燐酸ジエステルのアミン付加物からなる群からの置換された燐酸モノエステルおよび燐酸ジエステルが使用される。その際に、非環式燐酸ジエステル(C)は、殊に、一般式(IV):
【化3】
の非環式燐酸ジエステル(C)からなる群から選択され、この場合基R10およびR11は、次のもの:
− 置換された、および置換されていない、1〜20個、特に2〜16個、殊に2〜10個の炭素原子を有するアルキル基、3〜20個、特に3〜16個、殊に3〜10個の炭素原子を有するシクロアルキル基および5〜20個、特に6〜14個、殊に6〜10個の炭素原子を有するアリール基、
− 置換された、および置換されていない、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アリールシクロアルキル基、シクロアルキルアリール基、アルキルシクロアルキルアリール基、アルキルアリールシクロアルキル基、アリールシクロアルキルアルキル基、アリールアルキルシクロアルキル基、シクロアルキルアルキルアリール基およびシクロアルキルアリールアルキル基、この場合これらの中に含まれるアルキル基、シクロアルキル基およびアリール基は、それぞれ炭素原子の前記の数値を含み、および
− 置換された、および置換されていない、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、燐原子およびケイ素原子、殊に酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選択された、少なくとも1個、殊に1個のヘテロ原子を含む、前記種類の基
からなる群から選択され、さらに水素であってもよい(部分エステル化)。
【0074】
殊に有利に、触媒(C)として、相応するアミンでブロック化された燐酸エステル、およびここで殊にアミンでブロック化された燐酸エチルヘキシルエステルおよびアミンでブロック化された燐酸フェニルエステル、殊に有利にアミンでブロック化された燐酸−ビス(2−エチルヘキシル)エステルが使用される。
【0075】
燐酸エステルをブロック化するアミンの例として、殊に第三級アミン、例えばトリエチルアミンを挙げることができる。特に好ましくは、燐酸エステルをブロック化するために、それぞれの硬化条件で触媒の良好な作用を保証する第三級アミンが使用される。殊に、被覆剤が例えば車体の増設部品の補修用塗装の範囲内で、またはプラスチックの塗装のために使用される場合には、有利に触媒(C)として、3を上回るpKb値および100℃を上回る沸点を有するアミンでブロック化された燐酸化合物、殊に燐酸またはホスホン酸が使用される。燐酸エステルをブロック化する、好ましいアミンの例として、ジアザビシクロオクタン(DABCO)の他に、例えばN−ジメチル−ベンジルアミンおよびN−メチル−モルホリンを挙げることができる。pKb値の測定は、WO 09/077180、第34頁第1行〜第38頁、第9行中に記載されている。
【0076】
また、アミンでブロック化された、一定の燐酸触媒は、商業的に入手可能である(King Industries社のNacure型)。例えば、King Industries社のNacure4167の名称は、アミンでブロック化された燐酸部分エステルをベースとする、特に適した触媒として挙げられる。
【0077】
前記触媒は、特に本発明による被覆剤の非揮発性成分に対して0.01〜20質量%の割合、特に有利に0.1〜10質量%の割合で使用される。その際に、前記触媒のより少ない有効性は、相応する、より高い使用量によって部分的に補償されうる。
【0078】
成分AとBとの組合せならびに被覆剤のさらなる成分
イソシアネート基を含む化合物Bの質量割合に対する、使用すべき、ヒドロキシル基を含む化合物Aの質量割合は、ポリオールのヒドロキシ当量に依存し、かつポリイソシアネートBの遊離イソシアネート基の当量に依存する。
【0079】
本発明による被覆剤は、ヒドロキシル基を含む化合物(A)を、被覆剤中の非揮発性物質の含量に対して、有利に2.5〜97.5質量%、特に有利に5〜95質量%、殊に有利に10〜90質量%、殊に20〜80質量%およびイソシアネート基を含む化合物(B)を、被覆剤中の非揮発性物質の含量に対して、有利に2.5〜97.5質量%、特に有利に5〜95質量%、殊に有利に10〜90質量%、殊に20〜80質量%含有する。
【0080】
直接に熱的最終硬化、高い光沢および耐候試験後の高い光沢保留性に関連して高い耐引掻性と組み合わせてCAM 180試験(DIN EN ISO 11341 Feb 98およびDIN EN ISO 4892−2 Nov 00による)におけるUV線での亀裂形成および湿潤乾燥変化に対する本発明による被覆のさらに改善された安定性を保証するために、さらに、構造単位(I)および/または(II)および/または(III)の含量を、本発明による被覆がそれぞれ被覆の固体含量に対して、構造単位(I)および/または(II)および/または(III)のSi6.5質量%未満、殊に有利に構造単位(I)および/または(II)および/または(III)のSi最大6.0質量%を含有するように最大で高くなるように選択することは、好ましい。その際に、Si質量%におけるシラン含量は、計算上、構造単位(I)を有する化合物または化合物(IIa)もしくは(IIIa)の使用された量から算出される。
【0081】
ポリオールAの質量割合およびポリイソシアネートBの質量割合は、特に、イソシアネート含有化合物(B)の未反応のイソシアネート基対ヒドロキシル基を含む化合物(A)のヒドロキシル基のモル当量比が0.7:1〜1.3:1、有利に0.9:1〜1.1:1、特に有利に0.95:1〜1.05:1であるように選択される。
【0082】
本発明による二成分被覆剤または多成分被覆剤の場合、当該被覆剤の塗装の直前に、ヒドロキシル基を含む化合物(A)を含有する成分(I)ならびに任意にさらなる次に記載された成分は、
イソシアネート基を含む化合物(B)、触媒(C)、任意に有機溶剤および任意にさらなる次に記載された成分を含有する成分(II)
および任意にさらなる次に記載された成分を含有するさらなる成分(III)と
自体公知の方法で混合される。
【0083】
成分(II)が基本的に無水である二成分被覆剤または多成分被覆剤が殊に好ましい。その際に、基本的に無水であるとは、成分(II)がイソシアネート基を含む化合物(G)の質量に対して水を1.0質量%未満含有することを意味する。殊に、成分(II)は、全く水を含有しない。
【0084】
相応して、成分(I)および/または成分(III)が水を含有する二成分被覆剤または多成分被覆剤が好ましい。
【0085】
三成分被覆剤は、記載された基本的に無水の成分(II)の他に、
− 同様に基本的に無水の成分(I)および含水成分(III)または
− 同様に基本的に無水の成分(III)および含水成分(I)または
− 含水成分(I)ならびに含水成分(III)
を有する。三成分被覆剤は、たいてい、著しく固形分の多い系を現場で加工粘度に調節するために使用される。
【0086】
通常、イソシアネート基を含む化合物(B)を含有する成分(II)は、さらに有機溶剤を含有する。その際に、成分(II)の溶剤含量は、通常、それぞれイソシアネート基を含む化合物(B)の質量に対して0〜60質量%、有利に20〜50質量%である。
【0087】
更に、なお有機溶剤は、別の成分、殊に成分(I)および/または(III)を含有していてもよい。有機溶剤の全割合が、それぞれ被覆剤の全割合に対して0〜40質量%、殊に10〜30質量%である、本発明による被覆剤は、好ましい。更に、好ましくは、水の全割合は、それぞれ被覆剤の全割合に対して10〜60質量%、殊に15〜55質量%である。同様に、好ましくは、被覆剤の非揮発性成分の割合は、20〜70質量%、有利に30〜60質量%である。
【0088】
本発明による成分(I)および/または(II)および/または(III)のための有機溶剤として、殊に、被覆剤中で化合物(A)および/または(B)に対して化学的に不活性でありかつ被覆剤が硬化した場合でも(A)および(B)と反応しない有機溶剤が適している。好ましくは、溶剤は、水と混和性であるべきである。
【0089】
このような溶剤の例は、脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素、例えばトルエン、キシレン、ソルベントナフサ、Solvesso 100またはHydrosol(登録商標)(ARAL社)、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンもしくはメチルアミルケトン、エステル、例えば酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステル、酢酸ペンチルエステルもしくはエチルエトキシプロピオネート、エーテルまたは前記溶剤からなる混合物である。
【0090】
化合物(A)、(B)および(C)の他に、特に化合物(A)のヒドロキシル基および/または化合物(B)の遊離イソシアネート基および/または化合物(B)のアルコキシシリル基と反応しかつネットワークノード(Netzwerkpunkte)を形成しうる、なおさらなる結合剤(E)が使用されてよい。使用される結合剤(E)の反応性に応じて、この結合剤は、成分(I)または(II)中に含有されていてよい。
【0091】
例えば、成分(E)として、アミノプラスト樹脂および/またはエポキシ樹脂が使用可能である。それらのメチロール基および/またはメトキシメチル基の機能が部分的にカルバメート基またはアロファネート基により奪われていてよい、通常の公知のアミノプラスト樹脂がこれに該当する。この種の架橋剤は、米国特許第4710542号明細書および欧州特許第0245700号明細書ならびにAdvanced Organic Coatings Science and Technology Series,1991,第13巻,第193〜207頁中のB.Singhおよび協力者"Carbamylmethylated Melamines,Novel Crosslinkers for the Coatings Industry"の論説中に記載されている。
【0092】
たいてい、このような成分(E)は、被覆剤の非揮発性成分に対して、40質量%まで、有利に30質量%まで、特に有利に25質量%までの割合で使用される。
【0093】
更に、本発明による被覆剤は、少なくとも1つの通常の公知の塗料添加剤を、それぞれ被覆剤の非揮発性成分に対して、有効量で、すなわち特に30質量%まで、特に有利に25質量%まで、殊に20質量%までの量で含有することができる。
【0094】
適した塗料添加剤の例は、次のとおりである:
− 殊にUV吸収剤;
− 殊に、光安定剤、例えばHALS化合物、ベンズトリアゾールまたはオキサールアニリド;
− ラジカル捕捉剤;
− スリップ添加剤;
− 重合抑制剤;
− 消泡剤;
− 公知技術水準から一般的に公知であり、有利には、−Si(OR)3基に対して不活性である反応性希釈剤;
− 湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、燐酸エステル、ポリアクリル酸およびそのコポリマー、またはポリウレタン;
− 付着助剤、例えばトリシクロデカンジメタノール;
− 均展剤;
− 被膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
− 充填剤、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;補足すれば、さらにRoempp Lexikon>>Lacke und Druckfarben<<Georg Thieme Verlag,Stuttgart,1998,第250〜252頁に指摘されており;
− レオロジー制御添加剤、例えばWO 94/22968、欧州特許出願公開第0276501号明細書、欧州特許出願公開第0249201号明細書またはWO 97/12945から公知の添加剤;例えば、欧州特許出願公開第0008127号明細書中に開示されているような架橋されたポリマーミクロ粒子;無機層状ケイ酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウムケイ酸塩、モンモリロン石型のナトリウム−マグネシウムケイ酸塩およびナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム層状ケイ酸塩;ケイ酸、例えばエロジル;またはイオン性基および/または結合作用を有する基を有する合成ポリマー、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸コポリマーもしくはエチレン−無水マレイン酸コポリマーおよびこれらの誘導体または疎水性に変性されたエトキシル化ウレタンもしくはポリアクリレート;
− および/または難燃剤。
【0095】
本発明のさらなる実施態様において、本発明による被覆剤は、さらになお色素および/または充填剤を含有することができ、かつ顔料を加えたトップコートの製造のために使用される。そのために使用される色素および/または充填剤は、当業者に公知である。
【0096】
本発明による被覆剤から製造された、本発明による被覆は、既に硬化された電気泳動被覆、サーフェイサー被覆、ベースコートまたは通常の公知のクリヤコート上に卓越して付着するので、自動車量産(OEM)塗装への使用の他に自動車補修用塗装すること、または既に塗装された自動車車体のモジュールに耐引掻性を備えさせることに顕著に適している。
【0097】
本発明による被覆剤の塗装は、全ての通常の塗装方法、例えば噴霧、ナイフ塗布、刷毛塗り、注型、浸漬、含浸、滴下またはロール塗布によって行なうことができる。この際に、被覆すべき基材自体は静止していてもよく、その際に塗装装置または塗装プラントが可動される。その間に、被覆すべき基材、殊にコイルも可動させることができ、その際に塗装プラントは、基材に対して静止されるかまたは適当な方法で可動される。
【0098】
特に、噴霧塗装法、例えば圧縮空気噴霧、エアレススプレー、高速回転塗布、静電噴霧塗装(ESTA)、任意にホットスプレーの塗装と関連した、例えば熱風ホットスプレーが使用される。
【0099】
塗装された本発明による被覆剤の硬化は、或る程度の静止時間後に行なうことができる。この静止時間は、例えば塗料層の均展のため、および脱気のため、または揮発性成分、例えば溶剤の蒸発のために使用される。その際に塗料層の損傷または変化、例えば早期の完全な架橋が生じない限り、静止時間は、高めた温度の使用によって、および/または減少された空気水分によって支持されてよいし、および/または短縮されてよい。
【0100】
前記被覆剤の熱的硬化は、方法論の特殊性を有するのではなく、通常の公知の方法、例えば空気循環炉中での加熱またはIR灯での照射により行なわれる。これに関連して、熱的硬化は、段階的に行なうこともできる。さらなる好ましい硬化方法は、近赤外線(NIR線)での硬化である。
【0101】
好ましくは、熱硬化は、30〜200℃、特に有利に40〜190℃、殊に50〜180℃の温度で1分間ないし10時間、特に有利に2分間ないし5時間、殊に3分間ないし3時間の時間中に行なわれ、その際に自動車補修用塗装に使用される、有利に30〜90℃である温度の場合、およびプラスチック増設部品の塗装に使用される、有利に50〜90℃である温度の場合には、より長い硬化時間が使用されてもよい。
【0102】
本発明による被覆剤は、高度な耐引掻性および殊に耐化学薬品性および耐候性を有する、新規の硬化された被覆、殊に塗装系、特殊なクリヤコート、成形体、特殊な光学成形体および支柱を用いないフィルムを提供する。殊に、本発明による被覆および塗装、特にクリヤコートは、応力亀裂が発生することなく、40μmを上回る層厚で製造することもできる。
【0103】
従って、本発明による被覆剤は、卓越して乗り物(殊に、自動車、例えばオートバイ、バス、トラックもしくは乗用車)の車体またはその部品の; インテリア範囲内およびエクステリア範囲内の建築物の;室内備品、窓およびドアの;プラスチック成形品、殊にCDsおよびウィンドウの;工業用小型部品、コイル、コンテナおよびラッピングの;白色製品の;フィルムの;光学的素子の、電子工学的素子の、および機械的構造部材の、ならびにガラス中空体および生活必需品の物品の装飾的な、保護的な、および/または効果を付与する、高度に耐引掻性の被覆および塗装として適している。
【0104】
殊に、本発明による被覆剤および塗装、特にクリヤコートは、自動車量産塗装(OEM)の技術的および審美的に特に要求の多い分野において、とりわけ乗用車の車体、殊に上級の乗用車の車体のプラスチック増設部品の塗装のために、例えばルーフ、テイルゲート、ボンネット、フェンダー、バンパー、スポイラー、シル、保護ストリップ、サイドトリム等の製造のために、ならびに自動車補修用塗装のために使用される。
【0105】
プラスチック部品は、通常、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートとからなる配合物、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートまたは耐衝撃性に変性されたポリメチルメタクリレートからなり、殊に、有利に40%を上回る、殊に50%を上回るポリカーボネートの割合を有する、ASAとポリカーボネートとからなる配合物からなるプラスチック部品が使用される。
【0106】
その際に、ASAとは、一般的に、ビニル芳香族化合物、殊にスチレンおよびビニルシアニド、殊にアクリルニトリルのグラフトコポリマーが殊にスチレンとアクリルニトリルとからなるコポリマーマトリックス中のポリアルキルアクリレートゴム上に存在する、耐衝撃変性されたスチレン/アクリルニトリルポリマーであると解釈される。
【0107】
特に有利には、本発明による被覆剤は、多段階被覆法において、殊に任意に予め塗装された基材上に最初に顔料を加えた下塗り塗料層を塗布し、その後に本発明による被覆剤を有する1つの層を塗布する方法で使用される。
【0108】
水希釈可能な下塗り塗料ならびに有機溶剤をベースとする下塗り塗料が使用されてよい。適当な下塗り塗料は、例えば欧州特許出願公開第0692007号明細書およびその第3欄、第50行以降に記載された刊行物中に記載されている。好ましくは、施された下塗り塗料は、最初に乾燥され、すなわち蒸発段階で下塗り被覆から有機溶剤の少なくとも一部分または水の少なくとも一部分が取り去られる。乾燥は、特に室温ないし80℃の温度で行なわれる。乾燥後に、本発明による被覆剤は、施される。引続き、二層被覆は、有利に自動車量産塗装の際に使用される条件下で30〜200℃、特に有利に40〜190℃、殊に50〜180℃の温度で1分間ないし10時間、特に有利に2分間ないし5時間、殊に3分間ないし3時間で焼き付けられ、その際に自動車補修用塗装に使用されるかまたは増設部品の塗装に使用される、一般的に30〜90℃である温度の場合には、比較的長い硬化時間が使用されてもよい。
【0109】
本発明による被覆剤を用いて製造される層は、とりわけ特に高度な耐化学薬品性および耐候性ならびに洗車場での極めて良好な安定性および耐引掻性、殊に湿潤乾燥サイクルにおける耐引掻性とUV線に抗する耐候性との卓越した組合せに優れている。
【0110】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、本発明による被覆剤は、透明なクリヤーラッカーとして、プラスチック基材、殊にプラスチック増設部品の塗装に使用される。前記のプラスチック増設部品は、有利に同様に多段階被覆法において被覆され、その際に任意に予め塗装されたかまたは後続の被覆のより良好な付着のために予め処理された基材上に(例えば、基材の火炎処理、コロナ処理またはプラズマ処理)最初に顔料を加えた下塗り塗料層が塗布され、その後に本発明による被覆剤で1つの層が塗布される。
【0111】
水希釈可能な下塗り塗料ならびに有機材料をベースとする下塗り塗料が使用されてよい。適当な下塗り塗料は、例えば欧州特許出願公開第0692007号明細書およびその第3欄、第50行以降に記載された刊行物中に記載されている。ポリプロピレンからなるかまたはポリプロピレンを含有する、下塗り処理されていないプラスチック基材を直接塗装するために適した効果下塗り塗料は、例えば欧州特許第455211号明細書中に記載されている。
【0112】
更に、前記効果下塗り塗料は、透明なプラスチック基材を塗装するために使用されてもよい。この場合、この被覆剤は、量および種類においてプラスチック基材の有効なUV保護の能力がだせるように設計されているUV吸収剤を含む。ここでも、被覆剤は、耐引掻性と湿潤乾燥サイクルにおけるUV線に抗する耐候性との卓越した組合せに優れている。このように塗装されたプラスチック基材は、特に自動車の組み立てにおけるガラス構成成分の代用品に使用され、その際にこのプラスチック基材は、有利にポリメチルメタクリレートまたはポリカーボネートからなる。
【実施例】
【0113】

本発明による成分Bの製造
製造例B1−30モル%のシラン化度およびビスシラン10モル%対モノシラン90モル%のビスシラン/モノシラン比を有する部分シラン化されたポリイソシアネートB1の製造
還流冷却器および温度計を装備した三口ガラスフラスコ中に、三量化されたヘキサメチレンジイソシアネート54.4部(HDI)(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer Material Science社)、トリエチルオルトホルミエート2.4部およびブチルアセテート20.3部を予め装入する。窒素雰囲気下にビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン4.1部(Dynasylan(登録商標)1124、Degussa社、Rheinfelden在)およびN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン18.5部(Dynasylan(登録商標)1189、Degussa社、Rheinfelden在)からなる混合物を、50℃を上廻らないように供給する。この供給の終結後に、反応温度を60分間、50℃で維持する。ブロック化度を滴定により検査する(NCO含量=非揮発性成分の割合に対して10.9%)。
【0114】
硬化剤は、77質量%の非揮発性成分の割合を有する。
【0115】
製造例B2−30モル%のシラン化度およびビスシラン50モル%対モノシラン50モル%のビスシラン/モノシラン比を有する部分シラン化されたポリイソシアネートB2製造
還流冷却器および温度計を装備した三口ガラスフラスコ中に、三量化されたヘキサメチレンジイソシアネート53.3部(HDI)(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer Material Science社)、トリエチルオルトホルミエート2.4部およびブチルアセテート18.1部を予め装入する。窒素雰囲気下にビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン16.1部(Dynasylan(登録商標)1124、Degussa社、Rheinfelden在)およびN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン10.1部(Dynasylan(登録商標)1189、Degussa社、Rheinfelden在)からなる混合物を、50℃を上廻らないように供給する。この供給の終結後に、反応温度を60分間、50℃で維持する。ブロック化度を滴定により検査する(NCO含量=非揮発性成分の割合に対して10.5%)。
【0116】
硬化剤は、79質量%の非揮発性成分の割合を有する。
【0117】
製造例B3−30モル%のシラン化度およびビスシラン90モル%対モノシラン10モル%のビスシラン/モノシラン比を有する部分シラン化されたポリイソシアネートB3製造
還流冷却器および温度計を装備した三口ガラスフラスコ中に、三量化されたヘキサメチレンジイソシアネート52部(Desmodur(登録商標)N3600、Bayer Material Science社)、トリエチルオルトホルミエート2.4部およびブチルアセテート18部を予め装入する。窒素雰囲気下にビス−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アミン26.0部(Dynasylan(登録商標)1124、Degussa社、Rheinfelden在)およびN−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン2.0部(Dynasylan(登録商標)1189、Degussa社、Rheinfelden在)からなる混合物を、50℃を上廻らないように供給する。この供給の終結後に、反応温度を60分間、50℃で維持する。ブロック化度を滴定により検査する(NCO含量=非揮発性成分の割合に対して10.4%)。
【0118】
硬化剤は、80質量%の非揮発性成分の割合を有する。
【0119】
下塗り塗料成分(I)の製造
第1表中に記載された成分から、個々の成分を混合することによって、下塗り塗料成分(I)を製造する。
【0120】
【表1】
【0121】
第1表についての説明:
1) 固体含量に対して3.9%のOH含量、トリエタノールアミンで中和された、固体含量に対して24の酸価、50℃のTg値、7.8の乳濁液のpH値、23℃で2000mPa.sの粘度ならびにプロピレングリコールブチルエーテル4%の含量およびSolventnaphtha(登録商標)100 4%の含量を有する、ヒドロキシル基を含むポリアクリレートポリマーの市販の45%の水性二次乳濁液
2) ジメチルポリシロキサンで変性されたポリエーテルをベースとする水性系のための市販の均展剤
3) アルキルベンゾール中のポリメチルアルキルシロキサンの52%溶液をベースとする市販の消泡剤
4) BASF SE社のベンズトリアゾールをベースとする市販の光安定剤、メトキシプロピルアセテート中で95%
5) BASF SE社の立体障害アミンをベースとする市販の光安定剤
6) King Industries社のアミンでブロック化した燐酸部分エステルをベースとする市販の触媒、非揮発性成分の割合25%
【0122】
実施例1および2の被覆剤の製造ならびに比較例V1の被覆剤の製造
実施例1および2の被覆剤の製造ならびに比較例V1の被覆剤の製造のために、それぞれ第1表に記載の下塗り塗料成分(I)100質量部を、それぞれの硬化剤成分B1(実施例1)もしくはB2(実施例2)またはVB1(比較例V1)50質量部と混合し、均一な混合物が生じるまで攪拌した。
【0123】
実施例1および2の被覆剤の製造ならびに比較例V1の被覆剤の製造
前記被覆剤を適当な容器中で互いに緊密に混合し、黒色の下塗り塗料で塗装したガラス板上に引続き直接に塗装した(下塗り塗料の乾燥80℃で30分間、通気時間10分間)。引続き、この板を60℃で30分間炉内で乾燥させる。得られた被覆を室温で24時間貯蔵し、引続き試験した。
【0124】
生じる被覆の表面の耐引掻性を、クロックメーター試験(9μmのサンドペーパー(3M 281 Q wet or dry TM production TM)を使用して10回の二重の擦りおよび9Nの擦過力でEN ISO 105−X12に準拠して)により測定し、引続き20°で市販の光沢計を用いて残りの光沢を測定した。生じる被覆のエリクセン深さをDIN EN ISO 1520により測定した。結果は、それぞれ第2表中に示されている。耐化学薬品性を測定するために、硬化された被覆を備えた、上記の試験板(Byk−Gardener社の勾配型オーブントレー)上に試験すべき物質を2cmの距離でピペットで滴下すること(約0.25ml)により施す。温度勾配型オーブン(Byk−Gardener社)中で、前記物質を30分間、35〜80℃の前記トレーの長手方向の温度勾配に掛ける。前記物質の作用に引き続いて、この物質を、水を流しながら除去し、24時間後の損傷を目視的に評価した。安定性の評価のために、クリヤコートの最初に目視可能な攻撃範囲(温度)を定める。結果は、第2表中に記載されている。
【0125】
【表2】
【0126】
試験結果の討論:
実施例B1およびB2の本発明による被覆は、酸性試薬に対してと同様に苛性ソーダ液に対しても、水に対しても良好な耐化学薬品性を示し、他方で、比較例V1の被覆剤は、苛性ソーダ液に対して不十分な安定性を示す。更に、実施例B1およびB2の本発明による被覆は、比較例V1の被覆よりもより良好なエリクセン深さを示す。全ての被覆の耐引掻性は、良好である。