【実施例】
【0358】
本発明は、以下の実施例においてさらに定義される。これらの実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示として提供されるに過ぎないことが理解されなければならない。上記の考察及びこれらの実施例から、当業者は、本発明の本質的な特徴を把握することができ、及びその趣旨及び精神から逸脱することなく、本発明を様々な使用及び条件に適合させるため本発明の様々な変更及び改良を行うことができる。
【0359】
一般的方法:
本実施例で用いられる標準的な組換えDNA及び分子クローニング技術は、当該技術分野において公知であり、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniatis,T.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989、T.J.Silhavy,M.L.Bennan,and L.W.Enquist,Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.,1984、及びAusubel,F.M.et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley−Interscience,N.Y.,1987により記載される。
【0360】
細菌培養物の維持及び成長に好適な材料及び方法もまた、当該技術分野において公知である。以下の実施例で用いられる好適な技法は、Manual of Methods for General Bacteriology,Phillipp Gerhardt,R.G.E.Murray,Ralph N.Costilow,Eugene W.Nester,Willis A.Wood,Noel R.Krieg and G.Briggs Phillips,eds.,American Society for Microbiology,Washington,DC.,1994、又はThomas D.BrockによるBiotechnology:A Textbook of Industrial Microbiology,Second Edition,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA,1989に見出すことができる。細菌細胞の成長及び維持に用いられる全ての試薬、制限酵素及び材料は、特記されない限り、Aldrich Chemicals(Milwaukee,WI)、BD Diagnostic Systems(Sparks,MD)、Life Technologies(Rockville,MD)、又はSigma Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0361】
用いられる略語の意味は、以下のとおりである:「Å」はオングストロームを意味し、「min」は分を意味し、「h」は時間を意味し、「μl」はマイクロリットルを意味し、「ng/μl」はナノグラム毎マイクロリットルを意味し、「pmol/μl」はピコモル毎マイクロリットルを意味し、「ml」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「g/L」はグラム毎リットルを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「sec」は秒を意味し、「ml/分」はミリリットル毎分を意味し、「w/v」は体積あたり重量を意味し、「v/v」は体積あたり体積を意味し、「nm」はナノメートルを意味し、「mm」はミリメートルを意味し、「cm」はセンチメートルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「g」はグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「g」は重力定数を意味し、「rpm」は毎分回転数を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィーを意味し、「MS」は質量分析法を意味し、「HPLC/MS」は高速液体クロマトグラフィー/質量分析法を意味し、「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味し、「dNTP」はデオキシヌクレオチド三リン酸を意味し、「℃」はセルシウス度を意味し、及び「V」はボルト数を意味する。
【0362】
遺伝子ライブラリのハイスループットスクリーニングアッセイ
突然変異体KARI酵素の遺伝子ライブラリのハイスループットスクリーニングを、本明細書に記載するとおり実施した(但し、実施例16及び21を除く):554.4g/Lグリセロール、68mMの(NH
4)
2SO
4、4mM MgSO
4、17mM クエン酸
ナトリウム、132mM KH
2PO
4、36mM K
2HPO
4を含有する10×凍結用培地を、分子的に純粋な水で調製し、ろ過滅菌した。この10×凍結用培地をLB培地で希釈することにより、凍結用培地を調製した。96ウェルアーカイブプレート(カタログ番号3370、Corning Inc.Corning,NY)の各ウェルに、凍結用培地のアリコート(200μl)を使用した。
【0363】
LB寒天プレートからクローンを選択して、凍結用培地が入った96ウェルアーカイブプレートに接種し、振盪なしに37℃で一晩成長させた。次にアーカイブプレートを−80℃で保存した。陰性対照としては、pBAD−HisB(Invitrogen)で形質転換した大腸菌(E.coli)株Bw25113を常に使用した。実施例3、4、及び5におけるライブラリの陽性対照は、それぞれ、野生型K9−KARI、AB1D3、AB1D3である。
【0364】
アーカイブプレートからのクローンを96ディープウェルプレートに接種した。各ウェルは、解凍したアーカイブプレートからの細胞3.0μl、100μg/mlのアンピシリン及び誘導物質として0.02%(w/v)のアラビノースを含有するLB培地200μlを含んだ。細胞を、振盪(900rpm)しながら80%湿度、37℃で一晩成長させ、遠心(4000rpm、25℃で5分)(Eppendorf遠心機、Brinkmann Instruments,Inc.Westbury,NY)により回収し、後の分析のため、細胞ペレットを−20℃で保存した。アッセイ基質(R,S)−アセトラクテートを、Aulabaugh and Schloss(Aulabaugh and Schloss,Biochemistry,29:2824−2830,1990)により記載されるとおり合成した。このアッセイで使用した他の化学物質は全て、Sigmaから購入した。
【0365】
KARIによるアセトラクテートからα,β−ジヒドロキシ−イソバレレートの酵素変換を、プレートリーダー(Molecular Device,Sunnyvale,CA)を使用して340nmで、反応からの補因子NADPH又はNADHの消失を計測することにより追跡した。活性は、NADPH又はNADHのいずれかについての6220M
-1cm
-1のモル吸光係数を使用して計算した。ストック溶液は以下を使用した:K
2HPO
4(0.2M);KH
2PO
4(0.2M);EDTA(0.5M);MgCl
2(1.0M);NADPH(2.0mM);NADH(2.0mM)及びアセトラクテート(45mM)。2.0ml K
2HPO
4、3.0ml KH
2PO
4、4.0ml MgCl
2、0.1ml EDTA及び90.9ml 水を含有する100mlの反応緩衝液(pH6.8)を調製した。
【0366】
ディープウェルプレート中の凍結細胞ペレット及びBugBusterを、同時に室温で30分間加温した。96ウェルアッセイプレートの各ウェルに、120μlの反応緩衝液及び20μlのNADH(2.0mM)を充填した。30分間加温した後、75μlの50%BugBuster(v/v水中)を各ウェルに添加し、プレートシェーカーを使用して細胞を懸濁した。プレートを室温で20分間インキュベートした。細胞溶解物のアリコート(予想される活性に応じて15〜25μl)を96ウェルアッセイプレートの各ウェルに移した。340nmの吸光度をバックグラウンドとして記録し、16μlのアセトラクテート(4.5mM、反応緩衝液で希釈)を各ウェルに添加して、プレートリーダーで振盪しながら混合した。基質添加後に予想される活性に応じて、0分、及び10〜30分で340nmの吸光度を記録した。吸光度の差(基質添加前及び添加後)を用いて突然変異体の活性を決定した。陽性対照と比較して高いKARI活性を有する突然変異体を、再スクリーニング用に選択した。
【0367】
実施例1、2及び3のライブラリについてスクリーニングしたクローンの数は、それぞれ約12,000個、12,000個及び92個であった。各ライブラリの上位の成績のものを、二次アッセイとして以下に記載される再スクリーニングにかけた。
【0368】
活性突然変異体の二次アッセイ
ハイスループットスクリーニング(上記)により同定された、選択された突然変異体を含む細胞を、100μg/mlアンピシリン及び誘導物質として0.025%(w/v)アラビノースを含有する3.0mlのLB培地において、250rpmで振盪しながら37℃で一晩成長させた。次に細胞を96ディープウェルプレートにアリコートに分け(200μl/ウェル)、室温で5分間、4,000×gで遠心することにより回収した。75μlの50%BugBuster(v/v水中)を各ウェルに添加し、プレートシェーカーを使用して細胞を懸濁した。プレートを室温で20分間インキュベートした。細胞溶解物のアリコート(予想される活性に応じて15〜25μl)を、ウェルあたり120μlの反応緩衝液及び20μlのNADH(2.0mM)が入った96ウェルアッセイプレートの各ウェルに移した。340nmの吸光度をバックグラウンドとして記録し、16μlのアセトラクテート(4.5mM、反応緩衝液で希釈)を各ウェルに添加して、プレートリーダーで振盪しながら混合した。基質添加後に予想される活性に応じて、0分、及び5〜10分で340nmの吸光度を記録した。吸光度の差(基質添加前及び添加後)を用いて突然変異体の活性を決定した。陽性対照と比較して高いKARI活性を有する突然変異体を、さらなる特性決定用に選択した。
【0369】
NADH及びNADPHミカエリス定数の計測
KARI酵素活性は、上記に記載したとおりNADH又はNADPH酸化によりルーチン的に計測し得るが、しかしながらこれらのピリジンヌクレオチドのミカエリス定数(K
M)を計測するため、HPLC/MSを用いて2,3−ジヒドロキシイソバレレート生成物の形成を直接計測した。
【0370】
Bugbuster溶解細胞からの粗細胞抽出物(上記に記載したとおり)のタンパク質濃度を、BioRadタンパク質アッセイ試薬(BioRad Laboratories,Inc.,Hercules,CA 94547)を使用して計測した。0.2〜1.0マイクログラムの粗抽出物タンパク質を、100mM MOPS KOH、pH6.8、10mM MgCl
2、1mM EDTA、1mM グルコース−6−ホスフェート(Sigma−Aldrich)、0.2単位のロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma−Aldrich)、及び様々な濃度のNADH又はNADPHからなる反応緩衝液に、90μLの容積になるように添加した。最終濃度が2.5mM及び最終容積が100μLになるように10μLの[S]−アセトラクテートを添加することにより、反応を開始した。30℃で10分間インキュベートした後、50μLの反応混合物を抜き出し、それを150μLの0.1%ギ酸に添加することにより、反応をクエンチした。NADH及びNADPHのK
Mの計測に用いた濃度は、0.0003、0.001、0.003、0.01、0.03、0.1、0.3及び1mMであった。
【0371】
2,3−ジヒドロキシイソバレレートについて分析するため、2μLのギ酸でクエンチした反応混合物を、Waters SQD質量分析器(Waters Corporation,Milford,MA)を備えたWaters Acquity HPLCに注入した。クロマトグラフィー条件は、以下とした:Waters Acquity HSS T3カラム(2.1mm直径、100mm長さ)で流量(0.5ml/分)。緩衝液Aは水中0.1%(v/v)からなり、緩衝液Bはアセトニトリル中0.1%ギ酸であった。1分間にわたる1%緩衝液B(緩衝液A中)、続いて1分の1%緩衝液Bから1.5分の75%緩衝液Bまでの直線勾配を使用して試料を分析した。エレクトロスプレーイオン化法(electrospay ionization)−30Vコーン電圧を用いて、m/z=133におけるイオン化により反応生成物の2,3−ジヒドロキシイソバレレートを検出した。真正の標準物質と比較することにより、生成物2,3−ジヒドロキシイソバレレートの量を計算した。
【0372】
NADH及びNADPHに対するK
Mを計算するため、アッセイにおいて一定濃度のS−アセトラクテート(2.5mM)で計測したDHIV形成の速度データを、Microsoft Excelにおいて最小二乗回帰を用いて、飽和アセトラクテート濃度を仮定して単一基質のミカエリス・メンテン式にフィッティングした。
【0373】
プラスミドpYZ058、pLH550、pLH556、及びpLH702の構築
pYZ058(pHR81−P
CUP1−AlsS−P
ILV5−酵母KARI;配列番号176)は、pYZ090(pHR81−P
CUP1−AlsS−P
ILV5−ラクチスKARI;配列番号195)から誘導した。pYZ090をPmeI及びSfiI酵素で切断し、酵母KARIのPCR産物とライゲートした。PCR産物を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)BY4741(Research Genetics Inc.)株のゲノムDNAから、上流プライマー5’−catcatcacagtttaaacagtatgttgaagcaaatcaacttcggtgg−3’(配列番号272)及び下流プライマー5’−ggacgggccctgcaggccttattggttttctggtctcaactttctgac−3’(配列番号273)を使用して増幅し、PmeI及びSfiI酵素で消化した。pYZ058を配列決定により確認した。
【0374】
pLH550(pHR81−PCUP1−AlsS−PILV5−Pf5.KARI、配列番号175)は、pYZ058(配列番号176)から誘導した。野生型Pf5.KARI遺伝子をOT1349(5’−catcatcacagtttaaacagtatgaaagttttctacgataaagactgcgacc−3’;配列番号177)及びOT1318(5’−gcacttgataggcctgcagggccttagttcttggctttgtcgacgattttg−3’;配列番号178)でPCR増幅し、PmeI及びSfiI酵素で消化して、PmeI及びSfiIで切断したpYZ058ベクターとライゲートした。生じたベクターpLH550を配列決定により確認した。
【0375】
pLH556(配列番号138;
図4)はpLH550から誘導し、これは、このベクターをSpeI及びNotI酵素で消化して、且つSpeI及びNotI部位のオーバーハング配列を含むOT1383(5’−ctagtcaccggtggc−3’、配列番号179)及びOT1384(5’−ggccgccaccggtga−3’、配列番号180)からアニーリングしたリンカーとライゲートすることによった。このクローニングステップでは、AlsS遺伝子とPCUP1プロモーターの大型断片とが除かれ、160bpの残る上流配列は機能しない。pLH556を配列決定により確認した。
【0376】
pHR81::ILV5p−K9D3(pLH702、配列番号181)は、pLH556から誘導した。K9D3突然変異KARI遺伝子を、PmeI及びSfiI酵素を使用してベクターpBAD−K9D3から切り出し、PmeI及びSfiI部位でpLH556とライゲートして、Pf5.KARI遺伝子をK9D3遺伝子に置き換えた。構築したベクターを配列決定により確認した。
【0377】
実施例1
様々なKARI遺伝子を含む酵母イソブタノール経路株の構築
酵母イソブタノール生成におけるKARI活性を有するポリペプチド及び性能を同定するため、様々な細菌種及び真菌種由来のKARIコード遺伝子の生物多様性スクリーニングを実施した。KARI遺伝子は、表10に示すサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)遺伝子のコドン選択に基づきコドン最適化した。各KARI遺伝子について、PmeI制限部位及びさらなる3bp(AGT)を、ATG開始コドンの前に配列5’−
GTTTAAACAGT−3’(配列番号136)で5’末端に付加し、SfiI制限部位を5’−
GGCCCTGCA
GGCC−3’(配列番号137)で3’末端に付加した。KARI遺伝子は全て、GenScript USA Inc.(Piscataway,NJ)により合成された。各KARI遺伝子をpHR81−P
CUP1−AlsS−P
ILV5−Pf5.Ilv5ベクター(配列番号175)に、PmeI及びSfiI部位を介してサブクローニングした(Ilv5は酵母ケトール酸レダクトイソメラーゼをコードする)。このベクターは2つの発現カセットを含む:酵母CUP1プロモーター下の枯草菌(Bacillus subtilis)アセト乳酸シンターゼ(AlsS)遺伝子、及びIlv5プロモーターにより制御される酵母Ilv5遺伝子。配列分析を実施してKARI遺伝子配列を確認した。
【0378】
KARI遺伝子を有するpHR81−PCUP1−AlsS−PI
LV5−KARIベクターを、pLH468(pRS423−P
FBA1−DHAD−P
TDH3−kivD−P
GPM1−hADH1;配列番号139)と共に、宿主株BP1135(PNY1505;実施例8)(CEN.pk 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvD.Sm Δpdc5::sadB Δgpd2::loxP Δfra2)に同時形質転換した。酵母形質転換体を最少ドロップアウト培地プレート(SE−Ura−His、2%エタノール)において30℃で5〜7日後に選択し、SE−Ura−Hisに再ストリークして、さらに3日間インキュベートした後に細胞パッチを得た。この細胞パッチを振盪フラスコの接種に使用した。
【0379】
実施例2
イソブタノール生成についてのKARI多様性コレクションのスクリーニング
様々なKARI遺伝子を、酵母におけるそれらの「有効生成能力」に基づき評価した。有効生成能力は、漸次酸素を制限する条件下で一定期間(例えば48時間)成長させた後に決定した。酵母バイオマスは、酵母細胞の1OD
600が0.3g/Lに相当すると仮定して計算した。
【0380】
様々なKARI遺伝子を有する酵母イソブタノール経路株を、0.2%グルコース及び0.2%エタノールを含む10mL SEG−Ura,His培地に接種し、好気的に30℃で一晩、約2ODまで成長させた。培養物を遠心し、細胞の一部をSEG−Ura,His(2%グルコース、1%エタノール)に、125mL振盪フラスコ中25mLの総容積において初期OD
600が0.4になるまで再懸濁した。振盪フラスコをねじ式の硬質プラスチック(plastid)キャップで封鎖し、空気及び酸素の外部環境との交換を最小限としてフラスコにおいて漸次酸素を制限する条件下で培養物を成長させた。30℃、250RPMで48時間インキュベートした後、培養物を取り出して、OD
600計測及びHPLC分析によりイソブタノール生成を計測した。
【0381】
以下に示すとおりの、スクリーニングしたKARI遺伝子からは、複数が、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)KARIと同等か又はそれより良好なイソブタノール力価を有した。特に、K9(アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)DSM 14662)KARIクローンは、漸次酸素を制限する条件下で48時間成長させた後に計測したとき、高いイソブタノール力価及び有効イソブタノール生成能力を示した(表10)。
【0382】
【表14】
【0383】
実施例3
酵母イソブタノール経路株のKARI酵素分析
IpOHA(N−イソプロピルオキサリルヒドロキサム酸)は、KARI酵素により触媒される反応の反応中間体の模倣物である。これは、KARI酵素の活性部位に結合するタイト結合阻害剤である。IpOHAの合成及び大腸菌(E.coli)由来のKARIに対するそのタイト結合については、文献に記載されている(A.Aulabaugh and J.V.Schloss,Biochemistry,1990,29,2824−2830)。活性部位の力価測定へのその使用は、これまで報告されていない。文献に従い、[
14C]−シュウ酸塩からIpOHAを合成した。
【0384】
実施例2の酵母培養物を回収し、KARI酵素活性について分析した。25mLの培養物をペレット化し、10mLの50mMトリス−HCl、pH7.5に再懸濁した。細胞を再び遠心して緩衝液を除去し、細胞ペレットを−70℃で保存した。細胞ペレットを1mLの50mMトリス−HCl pH7.5に再懸濁し、超音波処理した。可溶性の粗細胞抽出物を使用して酵素アッセイを実施した。酵素の一部をモル過剰の[
14C]−IpOHA、飽和濃度のNAD(P)H及びMg
2+とインキュベートした。可逆性の希釈感受性複合体が最初に形成されるため、抽出濃度を高く保って複合体化に好都合となるようにし、ひいてはタイトな複合体の形成にかかる時間を短縮した。各KARIがタイトな複合体を形成するのにどの程度の時間がかかるかについて先験的な知識がなかったため、各試料につき2つの時点をとり、結果が一致することを確認した。インキュベーション時間の終了時、Microcon(登録商標)(Millipore Inc.,Billerica,MA)を使用する限外ろ過によってタンパク質分子から小分子を分離し、高分子量画分をカウントした。μM又はmg/mlのいずれかでの試料中のKARIの濃度を、
14C dpm、容積、及びKARIサブユニット分子量から逆算した。固定時間酵素アッセイを同時に実行し、そのデータを使用してU/mlを計算した。所与の試料についてU/mlをmg/mlで除すことにより、比活性を計算した。完全な活性とIpOHAに結合する能力とは厳密に相関するものと仮定した。このように計測したKARI酵素の比活性を表11に掲載する。「mgあたりの単位」でのKARI活性は、IpOHAアッセイを用いて定量化したときのKARI酵素1ミリグラムあたりの活性を表す。総タンパク質濃度をブラッドフォード法により決定した。KARIの発現レベルは、KARI酵素の量を総可溶性細胞タンパク質量で除すことにより計算する。
【0385】
【表15】
【0386】
実施例4
K
Mが野生型より低いNADHを利用する変異体を同定するための部位飽和遺伝子ライブラリの構築
K9 KARI用のpBADベースの細菌発現ベクターを構築するため、K9 KARI遺伝子(Genscript,Piscataway,NJにより合成された)を、PmeI及びSfiI部位を介してpBAD−ps−JEA1ベクター(配列番号905)にサブクローニングした。ライブラリ構築には、アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)由来のケトール酸レダクトイソメラーゼ(KARI)(K9−KARIと呼ばれる)を使用した。市販のキットであるT4ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)(USB Corporation,Cleveland,Ohio、番号70031Z)及びChang_IT多重変異部位特異的突然変異誘発キット(USB Corporation,Cleveland,Ohio、番号78480)を使用して、一つの遺伝子ライブラリを構築した。
【0387】
オリゴヌクレオチド(K9_56_58_060210f:GAAGGANNKAAANNKTGGAAGAGAGC、配列番号144;及びK9_56_58_060210r:GCTCTCTTCCAMNNTTTMNNTCCTTC、配列番号145)は、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により合成された。これらを初めにT4 PNKによってリン酸化した。簡潔に言えば、30μlの反応混合物は以下を含んだ:キットと共に提供された3.0μlの10×T4 PNK緩衝液、4.0μlのプライマー(約35μM)、0.8μlの100mM ATP混合物、0.6μl T4 PNK及び22μlの水。反応混合物を37℃で1.0時間インキュベートし、次にT4 PNKを65℃で20分間不活性化した。
【0388】
次にリン酸化したプライマーを続くPCR反応に直接使用し、キットを使用してK9 KARI野生型の2つの部位に突然変異を導入した。簡潔に言えば、30μlの反応混合物は以下を含んだ:キットと共に提供された3.0μlの10×反応緩衝液、3.0μlのリン酸化したフォワードプライマー及びリバースプライマー、2.0μlのK9 KARI野生型(50ng/μl)、1.2μl Chang_IT酵素及び17.8μlの水。この反応混合物を薄型ウェル200μl容量PCRチューブに入れ、PCRには以下のPCR反応プログラムを用いた:開始温度は95℃で2分間、続いて30回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び68℃で20分間からなった。温度サイクルの完了時に試料をさらに25分間68℃に保ち、次に以降の処理については4℃に維持した。Zymo DNAクリーンアップキット(Zymo Research Corporation,Orange CA、番号D4004)を使用してPCR反応物をクリーンアップした。84μlの水を使用して膜からDNAを溶出させた。DNA鋳型を、Dpn I(Promega,Madison WI、番号R6231)により37℃で3時間にわたり除去した(反応混合物:10μlの10×反応緩衝液、1.0μl BSA、6.0μlのDpn I及び83μlのクリーンにしたPCR DNA)。Dpn I消化DNAを再びZymo DNAクリーンアップキットでクリーンアップし、Dpn Iで再び消化して、DNA鋳型を完全に除去した(反応混合物:1.5μlの10×反応緩衝液、0.15μl BSA、0.85μlのDpn I及び83μlのクリーンにしたPCR DNA)。この反応混合物を直接用いることにより、BioRad Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA)を使用して、大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント株Bw25113(ΔilvC)(米国特許第8,129,162号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される)を形質転換した。形質転換したクローンを、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)にストリークし、37℃で一晩インキュベートした。クローンを、NADHを使用する活性についてスクリーニングした。変異体のK
Mを計測した(表12)。
【0389】
【表16】
【0390】
実施例5
NADHに対するK
Mを低下させる部位飽和遺伝子ライブラリの構築
蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)KARI(PF5−KARI)での研究に基づき、24位、33位、61位、80位、156位及び170位を、K9 KARIの突然変異生成標的として標的化した。PF5−KARIとK9 KARIとの間の多重配列アラインメント(MSA)(
図2)から、対応する位置は、30位、39位、67位、86位、162位、及び176位である。
【0391】
より多くの突然変異生成標的を同定するため、ブタノール生成株においてイソブタノールを生成すると決定された(他の例を参照)既存のKARI酵素(K1、K2、K7、K9、K25、K26、L.ラクチス(L.lactis)及びS2)のMSAを使用して、より多くの突然変異生成標的を同定した。41位、87位、131位、191位、227位、及び246位を突然変異生成標的として選択した。
【0392】
30位、39位、41位、67位、86位、87位、131位、162位、176位、191位、227位、及び246位を標的化するオリゴヌクレオチドは、商業的に、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により合成された(表13)。30位、67位、131位、162位、176位、191位、227位、及び246位を標的化する8対のオリゴヌクレオチドを用いることにより、InvitrogenのSupermix(カタログ番号10572−014、Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してメガプライマーを作成した。PCR反応毎に、これらの8対のオリゴヌクレオチドからの異なる位置をコードする1つのフォワードプライマーと1つのリバースプライマーとの任意の組み合わせ(例えばK9_30_101110f及びK9_67_101110r)である一対のプライマーを使用した。合計
【数1】
、すなわち56通りの組み合わせがある。25μlの反応混合物は以下を含んだ:22.5μlのSupermix溶液、1.0μlのフォワードプライマー及び1.0μlのリバースプライマー、0.5μlのAB1D3 DNA鋳型(50ng/μl)。Mastercycler gradient機器(Brinkmann Instruments,Inc.Westbury,NY)でのPCR反応のため、この混合物を薄型ウェル200μlチューブに入れた。PCR反応には以下の条件を用いた:開始温度は95℃で1.0分間、続いて35回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で20秒間、55℃で20秒間、及び72℃で1.0分間からなった。温度サイクルの完了時に試料をさらに2.0分間72℃に保ち、次に4℃に維持して試料の回復を待った。製造者の推奨どおりDNAクリーニングキット(カタログ番号D4003、Zymo Research,Orange,CA)を使用して、PCR産物をクリーンアップした。
【0393】
次に、QuickChange II XL部位特異的突然変異誘発キット(カタログ番号200524、Stratagene,La Jolla CA)を使用して、メガプライマーを用いることにより遺伝子ライブラリを作成した。25μlの反応混合物は以下を含んだ:2.5μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl鋳型、20.5μlのメガプライマー、0.5μlの40mM dNTP混合物、0.5μl pfu−ultra DNAポリメラーゼ。メガプライマー及び鋳型を除き、ここで使用した全ての試薬は、上記に指示するキットと共に提供された。この反応混合物を薄型ウェル200μl容量PCRチューブに入れ、PCRには以下の反応を用いた:開始温度は95℃で30秒間、続いて25回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で30秒間、55℃で1分間、及び68℃で6分間からなった。温度サイクルの完了時に試料をさらに8分間68℃に保ち、次に以降の処理については4℃に維持した。PCR反応混合物を、実施例4で用いたものと同じDpn I制限酵素で処理した。
【0394】
次に、オリゴヌクレオチドK9_37&39_101110f、K9_37&39_101110r及びK9_86&87_101110f、K9_86&87_101110rを直接用いることにより、QuickChange II XL部位特異的突然変異誘発キットを使用して遺伝子ライブラリを作成した。2つのオリゴヌクレオチドセットの2つの25μl反応混合物で、各25μlの反応混合物は以下を含んだ:2.5μlの10×反応緩衝液、1.0μlの50ng/μl鋳型、1.0μlのフォワードプライマー、1.0μlリバースプライマー、0.5μlの40mM dNTP混合物、0.5μl pfu−ultra DNAポリメラーゼ及び18.5μlの水。PCRプログラム及び続くDpn I処理は同じである。
【0395】
Dpn I処理したDNA混合物を、製造者のプロトコルに従いZymo DNAクリーンアップキットを使用してクリーンアップした。クリーンアップしたDNAを用いることにより、BioRad Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA)を使用して大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント株Bw25113(ΔilvC)を形質転換した。形質転換したクローンを、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)にストリークし、37℃で一晩インキュベートした。NADHを使用する活性の向上についてクローンをスクリーニングした。向上した突然変異体のK
Mを計測した(表14)。
【0396】
【表17】
【0397】
【表18】
【0398】
実施例6
NADHに対するK
Mを低下させるコンビナトリアルライブラリの構築
突然変異生成の結果(実施例4)に基づけば、T131L、T131A、T131V、T131M、T131C、T191D、T191C、T191S、及びT191Gが、NADHに対するK
Mの改善に有益な突然変異であると考えられる。これらの有益な突然変異をAO7B5に導入するコンビナトリアルライブラリを作製した。
【0399】
全てのオリゴヌクレオチド(oligonucleotdie)は、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)によ
り合成された。これらを初めにT4 PNKによってリン酸化した。簡潔に言えば、20μlの反応混合物は以下を含んだ:キットと共に提供された2.0μlの10×T4 PNK緩衝液、2.85μlのプライマー(約35μM、0.6μlの100mM ATP混合物、0.4μl T4 PNK及び14.15μlの水。反応混合物を37℃で1.0時間インキュベートし、次にT4 PNKを65℃で20分間不活性化した。
【0400】
次に、リン酸化したプライマーを続くPCR反応に直接用いることにより、キットを使用してAO7B5の2つの部位に突然変異を導入した。簡潔に言えば、50μlの反応混合物は以下を含んだ:キットと共に提供された5.0μlの10×反応緩衝液、2.5μlのリン酸化したフォワードプライマー(0.5μlの表15に示す各フォワードプライマー)、2.5μlリバースプライマー(0.625μlの表15に示す各フォワードプライマー)、2.5μlのAO7B5(50ng/μl)、2.5μl Chang_IT酵素及び35μlの水。この反応混合物を薄型ウェル200μl容量PCRチューブに入れ、PCRには以下のPCR反応プログラムを用いた:開始温度は95℃で2分間、続いて30回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び68℃で20分間からなった。温度サイクルの完了時に試料をさらに25分間68℃に保ち、次に以降の処理については4℃に維持した。Zymo DNAクリーンアップキット(Zymo Research Corporation,Orange CA、番号D4004)を使用してPCR反応物をクリーンアップした。84μlの水を使用して膜からDNAを溶出させた。DNA鋳型を、Dpn I(Promega,Madison WI、番号R6231)により37℃で3時間にわたり除去した(反応混合物:10μlの10×反応緩衝液、1.0μl BSA、6.0μlのDpn I及び83μlのクリーンにしたPCR DNA)。Dpn I消化DNAを再びZymo DNAクリーンアップキットでクリーンアップし、Dpn Iで再び消化して、DNA鋳型を完全に除去した(反応混合物:1.5μlの10×反応緩衝液、0.15μl BSA、0.85μlのDpn I及び83μlのクリーンにしたPCR DNA)。
【0401】
Dpn I処理したDNA混合物を、製造者のプロトコルに従いZymo DNAクリーンアップキットを使用してクリーンアップした。クリーンアップしたDNAを用いることにより、BioRad Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA)を使用して大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント株Bw25113(ΔilvC)を形質転換した。形質転換したクローンを、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)にストリークし、37℃で一晩インキュベートした。NADHを使用する活性の向上についてクローンをスクリーニングした。向上した突然変異体のK
Mを計測した(表16)。
【0402】
【表19】
【0403】
【表20】
【0404】
実施例7
K9 KARI変異体からのイソブタノール生成
以下のK9 KARI変異体を、上記に記載したとおり作成した。
【0405】
【表21】
【0406】
大腸菌(E.coli)ベクター(pBAD.KARI)由来の変異KARI遺伝子を、pHR81−PIlv5−Pf5.KARIベクターpLH556(
図4、配列番号138)にPmeI及びSfiI部位でサブクローニングすることにより、酵母発現プラスミドを作製した。PNY2204宿主(MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−pUC19−loxP−kanMX−loxP−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1t;実施例13)において、経路プラスミド#1としてのKARIベクター、及び経路プラスミド#2としてのpBP915(pRS423−P
FBA1−DHAD−P
GPM1−hADH1;配列番号182)を同時形質転換することにより、酵母経路株を作製した。形質転換体を、2%グルコース及び0.1%エタノールを炭素源として含有する同じ培地にパッチした。血清バイアル中における微好気性条件下でのイソブタノール生成について、3つのパッチを試験した。K9D3を発現するpBP915及びpLH702プラスミドで形質転換したクローンを、PNY1910と命名した。
【0407】
SE−Ura−Hisプレート上の形質転換からの酵母コロニーが、5〜7日後に現れた。コロニーを新鮮なSE−Ura−Hisプレートにパッチし、30℃で3日間インキュベートした。パッチした細胞を、0.2%グルコースと0.2%エタノールとを含む25mLのSEG−Ura,His培地に接種し、30℃で1〜2日間、2〜3ODまで好気的に成長させた。細胞を遠心し、1mLのSEG−Ura,His培地(2%グルコース、0.1%エタノール、10mg/Lエルゴステロール、50mM MES、pH5.5、チアミン30mg/L、ニコチン酸30mg/L)に再懸濁した。計算した細胞量を60mL血清バイアル中出発OD=0.2となるよう45mL総容積の同じ培地に移し、上部をクリンパーで密封した。このステップは、標準的なバイオフードにおいて空気中で行った。血清バイアルを、30℃、200rpmで2日間インキュベートした。48時間目に、OD並びにグルコース、イソブタノール及び経路中間体のHPLC分析のため、試料を取り出した。24時間目の試料を嫌気性チャンバに取り、血清バイアルの嫌気性条件を維持した。48時間インキュベーションの初期段階では、酵母細胞の成長によってヘッドスペース(約15mL)に存在する空気及び液体培地が消費される。ヘッドスペースの酸素が消費されると、培養は嫌気性になる。従ってこの実験は、好気性条件から酸素制限及び嫌気性条件に切り替える条件を含む。
【0408】
4つのK9変異体のうち、AB1G9及びAB1D3が比較的高いイソブタノール力価を生じた一方、495B5及びAB1D1の力価は低かった。野生型K9 KARI株は最も低い力価を生じた。理論によって拘束されることは望まないが、低い力価は、細胞が好気性条件から嫌気性条件に切り替わるときに、NADH及びNADPHの平衡が変化することに起因すると考えられる。この理論的根拠により、嫌気性条件下ではNADH濃度及び利用可能性が大幅に増加し、NADHを使用する変異体KARI酵素に好都合である。動態解析に基づけば、AB1G9(「K9G9」)及びAB1D3(「K9D3」)突然変異体は、NADHに対するそれらの比較的低いK
M(47及び38μM)に加え、NADPHに対して比較的高いK
Mを有する(23及び9.2μM)。比較として、495B5及びAB1D1のK
Mは、NADPHに対してそれぞれ2.5及び1.1μMであり、野生型K9のK
Mは0.10μMである。AB1G9及びAB1D3の低いNADH K
Mが、AB1G9及びAB1D3の高いNADPH K
Mと合わさって、嫌気性条件下でのNADPH利用の低下、及び比較的高いNADH利用をもたらした可能性がある。エビデンスとして、AB1G9及びAB1D3はグリセロール蓄積(イソブタノール:グリセロール=3.3)が、495B5及びAB1D1(2〜3)と比較してより低い。野生型K9のイソブタノール:グリセロール比は、同じく好気性から嫌気性に切り替える条件下で1:1である。
【0409】
【表22】
【0410】
実施例8
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株BP1135(PNY1505)及びPNY1507並びにイソブタノール生成誘導体の構築
この例は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株BP1135及びPNY1507の構築について記載する。これらの株はPNY1503(BP1064)から誘導した。PNY1503は、CEN.PK 113−7D(CBS 8340;Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS) Fungal Biodiversiry Centre,オランダ)から誘導した。BP1135は、FRA2遺伝子のさらなる欠失を含む。PNY1507は、ADH1遺伝子のさらなる欠失を伴いBP1135から誘導したもので、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)における発現用にコドン最適化されたラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のkivD遺伝子がADH1遺伝子座に組み込まれた。
【0411】
欠失/組込みは、標的遺伝子の上流及び下流相同領域を含み、且つ形質転換体の選択用のURA3遺伝子を含むPCR断片による相同組換えにより作成した。URA3遺伝子は相同組換えにより取り除き、スカーレスな欠失/組み込みを作成した。
【0412】
スカーレスな欠失/組込み手順は、Akada et al.,Yeast,23:399,2006を応用した。概して、各欠失/組込み用のPCRカセットは、4つの断片A−B−U−Cと、個々の断片をプラスミドにクローニングすることにより組み込まれる遺伝子とを組み合わせた後、欠失/組込み手順のためPCRによってカセット全体を増幅することにより作製した。組み込まれる遺伝子は、カセットにおいて断片AとBとの間に含まれた。PCRカセットは、天然のCEN.PK 113−7D URA3遺伝子からなる選択可能/対抗選択可能マーカーのURA3(断片U)を、プロモーター領域(URA3遺伝子の上流250bp)及びターミネーター領域(URA3遺伝子の下流150bp)と共に含んだ。断片A及びC(各約100〜500bp長)は、標的領域の直ちに上流の配列(断片A)及び標的領域の3’配列(断片C)に対応した。断片A及びCは、カセットを相同組換えによって染色体に組み込むために用いられた。断片B(500bp長)は、標的領域の直ちに下流500bpに対応し、相同組換えによる染色体からのURA3マーカー及び断片Cの切出しに用いられ、これにより染色体へのカセットの組み込み時に断片Bに対応する配列のダイレクトリピートが作成された。
【0413】
FRA2欠失
FRA2コード配列の最初の113ヌクレオチドをインタクトなままとして、コード配列の3’末端から250ヌクレオチドが欠失するように、FRA2欠失を設計した。欠失の7ヌクレオチド下流にインフレームの終止コドンが存在した。スカーレスなFRA2欠失用のPCRカセットの4つの断片を、PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs;Ipswich,MA)を使用し、且つ鋳型として、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen;Valencia,CA)で調製したCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して増幅した。FRA2断片Aは、プライマーoBP594(配列番号183)、及びFRA2断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP595(配列番号184)で増幅した。FRA2断片Bは、FRA2断片Aの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP596(配列番号185)、及びFRA2断片Uの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP597(配列番号186)で増幅した。FRA2断片Uは、FRA2断片Bの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP598(配列番号187)、及びFRA2断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP599(配列番号188)で増幅した。FRA2断片Cは、FRA2断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP600(配列番号189)、及びプライマーoBP601(配列番号190)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、FRA2断片AとFRA2断片Bとを混合し、且つプライマーoBP594(配列番号183)及びoBP597(配列番号186)で増幅して、FRA2断片ABを作成した。オーバーラップPCRにより、FRA2断片UとFRA2断片Cとを混合し、且つプライマーoBP598(配列番号187)及びoBP601(配列番号190)で増幅して、FRA2断片UCを作成した。得られたPCR産物をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、FRA2断片ABとFRA2断片UCとを混合し、且つプライマーoBP594(配列番号183及びoBP601(配列番号190)で増幅して、FRA2 ABUCカセットを作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0414】
PNY1503のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research;Orange,CA)を使用して、FRA2 ABUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。fra2ノックアウトを有する形質転換体を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP602(配列番号191)及びoBP603(配列番号192)によるPCRによってスクリーニングした。正しい形質転換体をYPE(酵母エキス、ペプトン、1%エタノール)で成長させ、30℃の5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播き、URA3マーカーが欠損した単離物を選択した。欠失及びマーカー除去を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP602(配列番号191)及びoBP603(配列番号192)によるPCRによって確認した。単離物にFRA2遺伝子が存在しないことは、FRA2の欠失させたコード配列に特異的なプライマーのoBP605(配列番号193)及びoBP606(配列番号194)を使用するネガティブPCR結果により実証された。正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δとして選択し、PNY1505(BP1135)と命名した。
【0415】
この株をイソブタノール経路プラスミド(pYZ090、配列番号195)及びpLH468(配列番号139)で形質転換し、1つのクローンをBP1168(PNY1506)と命名した。
【0416】
pYZ090(配列番号195)は、ALS発現用の、酵母CUP1プロモーター(nt 2位〜449位)から発現し、且つCYC1ターミネーター(nt 2181位〜2430位)が続く枯草菌(Bacillus subtilis)由来のalsS遺伝子のコード領域(nt 457位〜2172位)を有するキメラ遺伝子と、KARI発現用の、酵母ILV5プロモーター(2433位〜3626位)から発現し、且つILV5ターミネーター(nt 4682位〜5304位)が続くラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のilvC遺伝子のコード領域(nt 3634位〜4656位)を有するキメラ遺伝子とを含むように構築した。
【0417】
ADH1欠失及びkivD Ll(y)組込み
ADH1遺伝子を欠失させ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のkivDコード領域によって置換した。ADH1欠失−kivD_Ll(y)組込み用のスカーレスなカセットを、参照により本明細書に援用される2010年6月18日に出願された米国仮特許出願第61/356379号明細書に記載されるとおり、初めにプラスミドpUC19−URA3MCSにクローニングした。このベクターはpUC19ベースで、多重クローニング部位(MCS)内に位置するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CEN.PK 113−7D由来のURA3遺伝子の配列を含む。pUC19は、大腸菌(Escherichia coli)における複製及び選択用のpMB1レプリコンとβ−ラクタマーゼをコードする遺伝子とを含む。URA3のコード配列に加え、酵母におけるURA3遺伝子の発現用に、この遺伝子の上流(250bp)及び下流(150bp)からの配列が存在する。このベクターはクローニング目的に用いることができ、且つ酵母組込みベクターとして用いることができる。
【0418】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のkivDコード領域を、pLH468(配列番号139)を鋳型として使用して、PmeI制限部位を含むプライマーoBP562(配列番号197)、及びADH1断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP563(配列番号198)で増幅した。ADH1断片Bを、上記のとおり調製したゲノムDNAから、kivD_Ll(y)の3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP564(配列番号199)、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP565(配列番号200)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、kivD_Ll(y)とADH1断片B PCR産物とを混合し、且つプライマーoBP562(配列番号197)及びoBP565(配列番号200)で増幅して、kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを作成した。得られたPCR産物をPmeI及びFseIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼによってpUC19−URA3MCSの対応する部位にライゲートした。ADH1断片Aを、ゲノムDNAから、SacI制限部位を含むプライマーoBP505(配列番号201)、及びAscI制限部位を含むプライマーoBP506(配列番号202)で増幅した。ADH1断片A PCR産物をSacI及びAscIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。ADH1断片Cを、ゲノムDNAから、PacI制限部位を含むプライマーoBP507(配列番号203)、及びSalI制限部位を含むプライマーoBP508(配列番号204)で増幅した。ADH1断片C PCR産物をPacI及びSalIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、ADH1断片A−kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。ハイブリッドプロモーターUAS(PGK1)−P
FBA1を、ベクターpRS316−UAS(PGK1)−P
FBA1−GUS(配列番号209)から、AscI制限部位を含むプライマーoBP674(配列番号205)、及びPmeI制限部位を含むプライマーoBP675(配列番号206)で増幅した。UAS(PGK1)−P
FBA1 PCR産物をAscI及びPmeIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、kivD_Ll(y)−ADH1断片ABCを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。組込みカセット全体を、得られたプラスミドからプライマーoBP505(配列番号201)及びoBP508(配列番号204)で増幅し、PCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0419】
PNY1505のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用して、上記で構築したADH1−kivD_Ll(y)PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。形質転換体をYPE(1%エタノール)で成長させて、30℃の5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播き、URA3マーカーが欠損した単離物を選択した。ADH1の欠失及びkivD_Ll(y)の組込みを、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、外部プライマーoBP495(配列番号207)及びoBP496(配列番号208)による、並びにkivD_Ll(y)特異的プライマーoBP562(配列番号197)及び外部プライマーoBP496(配列番号208)によるPCRによって確認した。正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1tpdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1tとして選択し、PNY1507(BP1201)と命名した。PNY1507をイソブタノール経路プラスミドpYZ090(配列番号195)及びpBP915(配列番号182)で形質転換し、得られた株をPNY1513と命名した。
【0420】
pRS316−UAS(PGK1)−FBA1p−GUSベクターの構築
カセットUAS(PGK1)−FBA1p(配列番号766をクローニングするため、第一に、602bpのFBA1プロモーター(FBA1p)を、CEN.PKのゲノムDNAからプライマーT−FBA1(SalI)(配列番号767)及びB−FBA1(SpeI)(配列番号768)でPCR増幅し、プラスミドpWS358−PGK1p−GUS(配列番号769)のSalI及びSpeI部位に、プラスミドのSalI/SpeI消化によりPGK1pプロモーターを除去した後にクローニングして、pWS358−FBA1p−GUSを得た。pWS358−PGK1p−GUSプラスミドは、pRS423ベクター(Christianson et al.,Gene,110:119−122,1992)から誘導されたpWS358の多重クローニング部位に、PGK1p及びβ−グルクロニダーゼ遺伝子(GUS)DNA断片を挿入することによって作成した。第二に、得られたpWS358−FBA1p−GUSプラスミドをSalI及びSacIで消化し、FBA1pプロモーター、GUS遺伝子、及びFBAtターミネーターを含むDNA断片をゲル精製し、pRS316のSalI/SacI部位にクローニングして、pRS316−FBA1p−GUSを作成した。第三に、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1)オープンリーディングフレームの上流の−519位と−402位との間に位置する上流活性化配列(UAS)を含む118bpのDNA断片、すなわちUAS(PGK1)を、CEN.PKのゲノムDNAからプライマーT−U/PGK1(KpnI)(配列番号770)及びB−U/PGK1(SalI)(配列番号771)でPCR増幅した。PCR産物をKpnI及びSalIで消化し、pRS316−FBA1p−GUSのKpnI/SalI部位にクローニングして、pRS316−UAS(PGK1)−FBA1p−GUSを作成した。
【0421】
実施例9
ALD6の除去を含む改良された組換え宿主細胞
本例の目的は、イソブタノール生成を改善する酵母宿主株の修飾方法について記載することである。このような修飾には、イソブチルアルデヒドレダクターゼ活性をコードする遺伝子の組込み、並びにそれぞれNADP+依存性アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼ及びNADPH依存性デヒドロゲナーゼをコードする天然遺伝子ALD6及びYMR226cの除去が含まれる。
【0422】
S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211の構築
PNY2211を、以下の段落に記載するとおり、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY1507(実施例8)からいくつかのステップで構築した。初めにPNY1507を、ホスホケトラーゼ(phosophoketolase)遺伝子を含むように修飾した。次に、この株に、ホスホケトラーゼ(phosphokeloase)遺伝子に隣接する配列に標的化された組込みベクターを使用してアセト乳酸シンターゼ遺伝子(alsS)を加えた。最後に、相同組換えを用いてホスホケトラーゼ遺伝子及び組込みベクター配列を除去し、pdc1Δ::ilvD(実施例12に記載される)と染色体XIIの天然TRX1遺伝子との間の遺伝子間領域にalsSのスカーレスな挿入を得た。PNY2211の得られた遺伝子型は、MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH| sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1tである。
【0423】
PNY1507に相同組換えによってホスホケトラーゼ遺伝子カセットを導入した。組込みコンストラクトは以下のとおり作成した。プラスミドpRS423::CUP1−alsS+FBA−budA(以前に米国特許出願公開第2009/0305363号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載されている)をNotI及びXmaIで消化して1.8kbのFBA−budA配列を除去し、クレノウ断片で処理した後、ベクターを再びライゲートした。次に、CUP1プロモーターを、DNA2.0(Menlo Park,CA)のDNA合成及びベクター構築サービスによって、TEF1プロモーター変異体(以前にNevoigt et al.Appl.Environ.Microbiol.72:5266−5273(2006)(これは全体として参照により本明細書に援用される)により記載されたM4変異体)によって置換した。得られたプラスミドpRS423::TEF(M4)−alsSをStuI及びMluIで切断し(alsS遺伝子の一部及びCYC1ターミネーターを含む1.6kb部分を除去する)、プライマーN1176(配列番号282)及びN1177(配列番号283)でpRS426::GPD−xpk1+ADH−eutD(配列番号383)から作成した4kbのPCR産物、並びにプライマーN822(配列番号285)及びN1178(配列番号286)で酵母ゲノムDNA(ENO1プロモーター領域)から作成した0.8kbのPCR産物DNA(配列番号284)と組み合わせて、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株BY4741(ATCC番号201388)に形質転換した;ギャップ修復クローニング方法、Ma et al.Gene 58:201−216(1987)を参照のこと。ヒスチジン不含の合成完全培地に細胞を播いて形質転換体を得た。予想したプラスミド(pRS423::TEF(M4)−xpk1+ENO1−eutD、配列番号293)が正しく構築されたことを、PCR(プライマーN821(配列番号287)及びN1115(配列番号288))及び制限消化(BglI)によって確認した。続いて2つのクローンを配列決定した。3.1kbのTEF(M4)−xpk1遺伝子をSacI及びNotIによる消化によって単離し、pUC19−URA3::ilvD−TRX1ベクター(クローンA、AflIIで切断)にクローニングした。クローニング断片をクレノウ断片で処理してライゲーション用の平滑末端を作成した。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換することにより、アンピシリン耐性について選択した。TEF(M4)−xpk1の挿入を、PCR(プライマーN1110(配列番号367)及びN1114(配列番号290))によって確認した。ベクターをAflIIで線状化し、クレノウ断片で処理した。1.8kbのKpnI−HincIIジェネティシン耐性カセット(配列番号384)を、クレノウ断片処理後にライゲートすることによってクローニングした。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換することにより、アンピシリン耐性について選択した。ジェネティシンカセットの挿入をPCR(プライマーN160SeqF5(配列番号210)及びBK468(配列番号368))によって確認した。プラスミド配列は、配列番号291(pUC19−URA3::pdc1::TEF(M4)−xpk1::kan)として提供される。
【0424】
得られた組込みカセット(pdc1::TEF(M4)−xpk1::KanMX::TRX1)を単離し(AscI及びNaeI消化により、ゲル精製した5.3kbバンドが生じた)、Zymo Research Frozen−EZ酵母形質転換キット(カタログ番号T2001)を使用してPNY1507に形質転換した。形質転換体を、YPE+50μg/ml G418に播くことにより選択した。予想した遺伝子座への組込みを、PCR(プライマーN886(配列番号211)及びN1214(配列番号281))によって確認した。次に、CreリコンビナーゼをコードするプラスミドpRS423::GAL1p−Cre(配列番号271)を使用してloxP隣接KanMXカセットを除去した。カセットが正しく除去されたことを、PCR(プライマーoBP512(配列番号337)及びN160SeqF5(配列番号210))によって確認した。最後に、実施例13に記載されるalsS組込みプラスミドpUC19−kan::pdc1::FBA−alsS::TRX1、クローンA)を、含まれたジェネティシン選択マーカーを使用してこの株に形質転換した。2つの組み込み体を、プラスミドpYZ090ΔalsS(配列番号371)及びpBP915(配列番号182)による形質転換(Amberg,Burke and Strathern “Methods in Yeast Genetics”(2005)のプロトコル#2を用いて形質転換した)、並びにグルコース含有培地における成長及びイソブタノール生成の評価によって、アセト乳酸シンターゼ活性について試験した(成長及びイソブタノール計測方法は以下のとおりである:全ての株を、0.3%グルコース及び0.3%エタノールを炭素源として含有するヒスチジン及びウラシル不含の合成完全培地(125mLベント付き三角フラスコ(VWRカタログ番号89095−260中の10mL培地)で成長させた。一晩インキュベートした後(30℃、Innova(登録商標)40 New Brunswick Scientificシェーカーにおいて250rpm)、培養物を2%グルコース及び0.05%エタノールを含有する合成完全培地(125mLの密栓した三角フラスコ(VWRカタログ番号89095−260)中の20ml培地)に希釈して0.2OD(Eppendorf BioPhotometer計測)に戻した。48時間インキュベートした後(30℃、Innova(登録商標)40 New Brunswick Scientificシェーカーにおいて250rpm)、培養上清(Spin−X遠心管フィルタユニット、Costar カタログ番号8169を使用して回収した)を、米国特許出願公開第2007/0092957号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される方法によってHPLCにより分析した)2つのクローンのうちの一方が陽性で、PNY2218と命名した。
【0425】
PNY2218をCreリコンビナーゼで処理し、得られたクローンを、xpk1遺伝子の欠失及びpUC19組込みベクター配列についてPCR(プライマーN886(配列番号211)及びN160SeqR5(配列番号388))によりスクリーニングした。これにより、組込みベクターの挿入(ベクター、マーカー遺伝子及びloxP配列がなくなるため、「スカーレスな」挿入)の間に導入されたxpk1の上流のDNA及び相同DNAの組換え後には、pdc1−TRX1遺伝子間領域に組み込まれたalsS遺伝子のみが残った。この組換えは任意の箇所で起こり得たが、ジェネティシン選択がなくてもベクター組込みは安定しているように見え、組換え現象はCreリコンビナーゼの導入後にのみ観察された。1つのクローンをPNY2211と命名した。
【0426】
プラスミドpYZ090ΔalsS及びpBP915を含むPNY2218の単離物をPNY2209と命名した。
【0427】
PNY1528(PNY2211におけるhADH組込み)
欠失/組込みは、標的領域の上流及び下流相同領域を含み、且つ形質転換体の選択用のURA3遺伝子を含むPCR産物による相同組換えによって作成した。URA3遺伝子を相同組換えにより取り除き、スカーレスな欠失/組み込みを作成した。
【0428】
YPRCΔ15欠失及びウマ肝臓adh組込み
YPRCΔ15遺伝子座を欠失させ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のPDC5プロモーター領域(538bp)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のADH1ターミネーター領域(316bp)と共に、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したウマ肝臓adh遺伝子によって置換した。YPRCΔ15欠失−P[PDC5]−adh_HL(y)−ADH1t組込み用のスカーレスなカセットを、初めにプラスミドpUC19−URA3MCS(実施例8に記載される)にクローニングした。
【0429】
断片A−B−U−Cを、PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs;Ipswich,MA)を使用し、且つ鋳型として、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen;Valencia,CA)で調製したCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して増幅した。YPRCΔ15断片Aは、ゲノムDNAから、KpnI制限部位を含むプライマーoBP622(配列番号212)、及びYPRCΔ15断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP623(配列番号213)で増幅した。YPRCΔ15断片Bは、ゲノムDNAから、YPRCΔ15断片Aの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP624(配列番号214)、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP625(配列番号215)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、YPRCΔ15断片AとYPRCΔ15断片B PCR産物とを混合し、且つプライマーoBP622(配列番号212)及びoBP625(配列番号215)で増幅して、YPRCΔ15断片A−YPRCΔ15断片Bを作成した。得られたPCR産物をKpnI及びFseIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼによってpUC19−URA3MCSの対応する部位にライゲートした。YPRCΔ15断片Cを、ゲノムDNAから、NotI制限部位を含むプライマーoBP626(配列番号216)、及びPacI制限部位を含むプライマーoBP627(配列番号217)で増幅した。YPRCΔ15断片C PCR産物をNotI及びPacIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、YPRCΔ15断片ABを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。PDC5プロモーター領域を、CEN.PK 113−7DゲノムDNAから、AscI制限部位を含むプライマーHY21(配列番号218)、及びadh_Hl(y)の5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーHY24(配列番号219)で増幅した。adh_Hl(y)−ADH1tを、pBP915(配列番号182)から、P[PDC5]の3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーHY25(配列番号220)、及びPmeI制限部位を含むHY4(配列番号221)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、P[PDC5]とadh_HL(y)−ADH1t PCR産物とを混合し、且つプライマーHY21(配列番号218)及びHY4(配列番号221)で増幅して、P[PDC5]−adh_HL(y)−ADH1tを作成した。得られたPCR産物をAscI及びPmeIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、YPRCΔ15断片ABCを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。組込みカセット全体を、得られたプラスミドから、プライマーoBP622(配列番号212)及びoBP627(配列番号217)で増幅した。
【0430】
PNY2211のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research;Orange,CA)を使用して、YPRCΔ15欠失−P[PDC5]−adh_HL(y)−ADH1t組込みカセットPCR産物で形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。形質転換体を、プライマーURA3−end F(配列番号222)及びoBP637(配列番号224)によるPCRによってスクリーニングした。正しい形質転換体をYPE(1%エタノール)で成長させて、1%EtOHを補足した、且つ5−フルオロオロチン酸(0.1%)を含有する30℃の合成完全培地に播き、URA3マーカーが欠損した単離物を選択した。YPRCΔ15の欠失及びP[PDC5]−adh_HL(y)−ADH1tの組込みを、YeaStarゲノムDNAキット(Zymo Research)で調製したゲノムDNAを使用して、外部プライマーoBP636(配列番号223)及びoBP637(配列番号224)によるPCRによって確認した。以下の遺伝子型の正しい単離物を、さらなる修飾用に選択した:CEN.PK 113−7D MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1t yprcΔ15Δ::P[PDC5]−ADH|adh_Hl−ADH1t。
【0431】
fra2Δにおけるウマ肝臓adh組込み
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したウマ肝臓adh遺伝子を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のPDC1プロモーター領域(870bp)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のADH1ターミネーター領域(316bp)と共に、fra2欠失部位に組み込んだ。fra2Δ−P[PDC1]−adh_HL(y)−ADH1t組込み用のスカーレスなカセットを、初めにプラスミドpUC19−URA3MCSにクローニングした。
【0432】
断片A−B−U−Cを、PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs;Ipswich,MA)を使用し、且つ鋳型として、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen;Valencia,CA)で調製したCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して増幅した。fra2Δ断片Cは、ゲノムDNAから、NotI制限部位を含むプライマーoBP695(配列番号229)、及びPacI制限部位を含むプライマーoBP696(配列番号230)で増幅した。fra2Δ断片C PCR産物をNotI及びPacIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、pUC19−URA3MCSの対応する部位にライゲートした。fra2Δ断片Bは、ゲノムDNAから、PmeI制限部位を含むプライマーoBP693(配列番号227)、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP694(配列番号228)で増幅した。得られたPCR産物をPmeI及びFseIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼにより、fra2Δ断片Cを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。fra2Δ断片Aは、ゲノムDNAから、BamHI及びAsiSI制限部位を含むプライマーoBP691(配列番号225)、並びにAscI及びSwaI制限部位を含むプライマーoBP692(配列番号226)で増幅した。fra2Δ断片A PCR産物をBamHI及びAscIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼにより、fra2Δ断片BCを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。PDC1プロモーター領域を、CEN.PK 113−7DゲノムDNAから、AscI制限部位を含むプライマーHY16(配列番号231)、及びadh_Hl(y)の5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーHY19(配列番号232)で増幅した。adh_Hl(y)−ADH1tは、pBP915から、P[PDC1]の3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーHY20(配列番号233)、及びPmeI制限部位を含むHY4(配列番号221)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、P[PDC1]とadh_HL(y)−ADH1t PCR産物とを混合し、且つプライマーHY16(配列番号231)及びHY4(配列番号221)で増幅して、P[PDC1]−adh_HL(y)−ADH1tを作成した。得られたPCR産物をAscI及びPmeIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、fra2Δ断片ABCを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。組込みカセット全体を、得られたプラスミドからプライマーoBP691(配列番号225)及びoBP696(配列番号230)で増幅した。
【0433】
YPRCΔ15にadh_Hl(y)を組み込んだPNY2211変異体のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用して、fra2Δ−P[PDC1]−adh_HL(y)−ADH1t組込みカセットPCR産物で形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。形質転換体を、プライマーURA3−end F(配列番号222)及びoBP731(配列番号235)によるPCRによってスクリーニングした。正しい形質転換体をYPE(1%エタノール)で成長させて、1%EtOHを補足した、且つ5−フルオロオロチン酸(0.1%)を含有する30℃の合成完全培地に播き、URA3マーカーが欠損した単離物を選択した。P[PDC1]−adh_HL(y)−ADH1tの組込みを、YeaStarゲノムDNAキット(Zymo Research)で調製したゲノムDNAを使用して、内部プライマーHY31(配列番号236)及び外部プライマーoBP731(配列番号235)によるコロニーPCR、並びに外部プライマーoBP730(配列番号234)及びoBP731(配列番号235)によるPCRによって確認した。以下の遺伝子型の正しい単離物を、PNY1528と命名した:CEN.PK 113−7D MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ::P[PDC1]−ADH|adh_Hl−ADH1t adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1t yprcΔ15Δ::P[PDC5]−ADH|adh_Hl−ADH1t。
【0434】
PNY2237(スカーレスなYMR226c欠失)
遺伝子YMR226cを、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY1528から、PCR増幅した2.0kbの線状のスカーレス欠失カセットを使用する相同組換えにより欠失させた。カセットは、URA3遺伝子で構成されるスプライスされたPCR増幅断片から、選択可能なマーカーとしてのその天然のプロモーター及びターミネーター、欠失カセットの組込み及び天然の介在配列の除去を促進するYMR226c遺伝子染色体遺伝子座に隣接する上流及び下流の相同性配列、並びにURA3マーカーの組換え及び除去を促進する反復配列と共に構築した。フォワード及びリバースPCRプライマー(それぞれN1251及びN1252、配列番号247及び248)が、pLA33(pUC19::loxP−URA3−loxP(配列番号268))に由来する1,208bpのURA3発現カセットを増幅した。フォワード及びリバースプライマー(それぞれN1253及びN1254、配列番号249及び250)が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211(上記)のゲノムDNA調製物に由来する3’URA3重複配列タグを有する250bpの下流相同性配列を増幅した。フォワード及びリバースPCRプライマー(それぞれN1255及びN1256、配列番号251及び252)が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211のゲノムDNA調製物由来の5’URA3重複配列タグを有する250bpの反復配列を増幅した。フォワード及びリバースPCRプライマー(それぞれN1257及びN1258、配列番号253及び254)が、S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211のゲノムDNA調製物由来の5’反復重複配列タグを有する250bpの上流相同性配列を増幅した。
【0435】
約1.5μgのPCR増幅カセットを、ZYMO Research Frozen酵母形質転換キットを使用してコンピテントにした株PNY1528(上記)に形質転換し、ymr226cΔ::URA3カセットが組み込まれた細胞を選択するため、形質転換混合物をSE 1.0% −ウラシルに播いて30℃でインキュベートした。72〜96時間後に出現する形質転換体を、続いて同じ培地に短くストリークし、30℃で24〜48時間インキュベートする。短いストリークを、隣接する内向き染色体特異的プライマー(N1239、配列番号243)と対を形成する5’の外向きURA3欠失カセット特異的内部プライマー(N1249、配列番号245)及び隣接する内向き染色体特異的プライマー(N1242、配列番号244)と対を形成する3’の外向きURA3欠失カセット特異的プライマー(N1250、配列番号246)によるPCRにより、ymr226cΔ::URA3についてスクリーニングする。ポジティブPNY1528 ymr226cΔ::URA3 PCRスクリーニングから、それぞれ598bp及び726bpの5’及び3’PCR産物が得られた。
【0436】
3つの陽性PNY1528 ymr226cΔ::URA3クローンを選び取り、YPE 1%培地で一晩培養して、そのうち100μLを、マーカー除去のためYPE 1%+5−FOAに播いた。24〜48時間後に出現するコロニーを、5’及び3’染色体特異的プライマー(N1239及びN1242)により、マーカー欠損についてPCRスクリーニングした。ポジティブPNY1528 ymr226cΔマーカーレスPCRスクリーニングから、801bpのPCR産物が得られた。複数のクローンが得られ、1つをPNY2237と命名した。
【0437】
PNY2238及びPNY2243(ALD6欠失株)
ベクターを、ALD6コード配列がCre−lox再利用可能URA3選択マーカーに置換されるように設計した。ALD6の配列5’及び3’を、PCR(それぞれプライマー対N1179及びN1180並びにN1181及びN1182;それぞれ配列番号237、238、239、及び240)によって増幅した。これらの断片をTOPOベクター(Invitrogen カタログ番号K2875−J10)にクローニングして配列決定(M13フォワードプライマー(配列番号269)及びリバースプライマー(配列番号270))した後、5’及び3’隣接配列を、pLA33(pUC19::loxP::URA3::loxP)(配列番号268)にそれぞれEcoRI及びSphI部位でクローニングした。各ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換し、これをLB Ampプレートでインキュベートして形質転換体を選択した。配列の正しい挿入を、PCR(それぞれプライマーM13フォワード(配列番号269)及びN1180(配列番号238)並びにM13リバース(配列番号270)及びN1181(配列番号239))によって確認した。
【0438】
上記に記載されるベクター(pUC19::ald6Δ::loxP−URA3−loxP)をAhdIで線状化し、標準的な酢酸リチウム法を用いてPNY1528及びPNY2237に形質転換した(但し、細胞とDNAとのインキュベーションは2.5時間に延長した)。1%エタノールを炭素源として供給したウラシル不含合成完全培地に播くことにより、形質転換体を得た。パッチした形質転換体を、プライマーN1212(配列番号241)及びN1180(5’末端)(配列番号238)並びにN1181(配列番号239)及びN1213(配列番号242)(3’末端)を使用して、PCRによるスクリーニングにより欠失/組込みを確認した。Creリコンビナーゼを有するプラスミド(pRS423::GAL1p−Cre=配列番号271)を、ヒスチジンマーカー選択を用いて株に形質転換した。形質転換体を0.5%ガラクトース添加YPEにおいて継代した。コロニーを、5−FOAに対する耐性(URA3マーカーの欠損)及びヒスチジン栄養要求性(Creプラスミドの欠損)についてスクリーニングした。隣接loxP部位を介してURA3遺伝子が正しく除去されたことを、PCR(それぞれプライマーN1262及びN1263、配列番号255及び256)によって確認した。加えて、ALD6遺伝子に対して内部のプライマー(それぞれN1230及びN1231;配列番号261及び262)を使用して、部分二倍体が存在しないことを確実にした。最後に、ald6Δ::loxPクローンをPCRによりスクリーニングして、ura3Δ::loxP(N1228とN1229、配列番号259及び260)及びgpd2Δ::loxP(N1223及びN1225、配列番号257及び258)との間の転座が起こっていないことを確認した。PNY1528の形質転換体のスクリーニングから2つの陽性クローンを同定した。クローンBはPNY2243と命名された。PNY2237の形質転換体のスクリーニングから3つの陽性クローンを同定した。クローンE及びKは、いずれも小規模でのイソブタノール生成についてアッセイした(下記)。ほとんどのパラメータが統計的に同一であったが、さらなる展開用にはクローンEを選択した(PNY2238)。
【0439】
実施例10
イソブタノール経路プラスミド
本例の目的は、宿主株におけるイソブタノール生成用のイソブタノール経路プラスミドの構築又は修飾について記載することである。
【0440】
pYZ067(配列番号374)を、以下のキメラ遺伝子を含むように構築した:1)ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ発現用の、酵母FBA1プロモーターから発現し、且つFBA1ターミネーターが続くC末端Lumioタグを有するミュータンス菌(S.mutans)UA159由来のilvD遺伝子のコード領域、2)アルコールデヒドロゲナーゼ発現用の、酵母GPM1プロモーターから発現し、且つADH1ターミネーターが続くウマ肝臓ADHのコード領域、及び3)ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼの発現用の、酵母TDH3プロモーターから発現し、且つTDH3ターミネーターが続くラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のKivD遺伝子のコード領域。
【0441】
pYZ067(配列番号374)からkivD及びadhの双方のプロモーター−遺伝子−ターミネーターカセットを欠失させることにより、pYZ067ΔkivDΔhADH(配列番号385)を構築した。pYZ067をBamHI及びSacIで消化し(New England BioLabs;Ipswich,MA)、7934bp断片をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen;Valencia,CA)で精製した。DNAの単離断片をDNAポリメラーゼIラージ(クレノウ)断片(New England BioLabs;Ipswich,MA)で処理し、次にT4 DNAリガーゼによりセルフライゲートし、これを用いてコンピテントTOP10大腸菌(Escherichia coli)(Invitrogen;Carlsbad,CA)を形質転換した。形質転換体からのプラスミドを単離し、正確な欠失であることを配列分析により確認した。正しいプラスミド単離物をpYZ067ΔkivDΔhADHと命名した。
【0442】
pYZ067ΔkivDΔilvD(配列番号772)を、ADHの発現用の、酵母GPMプロモーター(nt 3916位〜3160位)から発現し、且つADH1ターミネーター(nt 2012位〜1697位)が続くサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したウマ肝臓由来のadh遺伝子のコード領域(nt 3148位〜2021位)を有するキメラ遺伝子を含むように構築した。pYZ067からkivD及びilvDの双方のプロモーター−遺伝子−ターミネーターカセットを欠失させることにより、pYZ067DkivDDilvDを構築した。pYZ067をAatII及びSacIで消化し(New England BioLabs;Ipswich,MA)、10196bp断片をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen;Valencia,CA)で精製した。DNAの単離断片をDNAポリメラーゼIラージ(クレノウ)断片(New England BioLabs;Ipswich,MA)で処理し、次にT4 DNAリガーゼによりセルフライゲートした。次に得られたプラスミドをNgoMIV及びBamHIで消化し(New England BioLabs;Ipswich,MA)、7533bp断片をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen;Valencia,CA)で精製した。DNAの単離断片をDNAポリメラーゼIラージ(クレノウ)断片(New England BioLabs;Ipswich,MA)で処理し、次にT4 DNAリガーゼによりセルフライゲートした。プラスミドを単離し、正確な欠失であることを配列分析により確認した。正しいプラスミド単離物をpYZ067DkivDDilvDと命名した。
【0443】
pYZ090(配列番号195)から誘導されたpK9G9.OLE1p.ilvD(配列番号773)を、DHAD発現用の、酵母OLE1プロモーター(nt 5986位〜5387位)から発現し、且つFBA1ターミネーター(nt 3632位〜3320位)が続く、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)由来のilvD遺伝子のコード領域(nt 5377位〜3641位)を有するキメラ遺伝子と、KARI発現用の、酵母ILV5プロモーター(nt 427位〜1620位)から発現し、且つILV5ターミネーター(nt 2685位〜3307位)が続く、アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)由来のilvC遺伝子の変異体K9G9(核酸及びアミノ酸配列番号774及び647)のコード領域(nt 1628位〜2659位)を有するキメラ遺伝子とを含むように構築した。プラスミドの構築は以下のとおりであった。酵母FBA1プロモーターから発現し、且つFBA1ターミネーターが続く、ミュータンス菌(Streptococcus mutans)由来のilvD遺伝子のコード領域を有するプラスミドpYZ067からのキメラ遺伝子を、制限酵素NgoMIV及びBamHIによる消化後、pYZ090にライゲートした。alsSコード領域とCUP1プロモーターの3’末端の280bpとを、得られたプラスミドから制限酵素SpeI及びPacIで消化することにより欠失させ、得られた大型DNA断片をセルフライゲートした。制限酵素NgoMIV及びPmlIで消化することにより、得られたプラスミドからilvDの上流の酵母FBA1プロモーターを除去し、プライマーpOLE1−NgoMI(配列番号775)及びpOLE1−PmlI(配列番号776)で増幅した酵母OLE1プロモーターによって置換した。制限酵素PmeI及びSfiIによる消化と、続く大型DNA断片のゲル精製により、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のilvC遺伝子のコード領域を、得られたプラスミドから欠失させた。アナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)由来の変異体K9G9 ilvC遺伝子のコード領域(配列番号777)をPmeI及びSfiIでpLH701(配列番号778)から消化し、ゲル精製した。2つのDNA断片をライゲートしてpK9G9.OLE1p.ilvDを作成した。
【0444】
実施例11
PNY2240及びPNY2242の構築
株PNY2240は、プラスミドpLH702(配列番号181)及びpBP915(配列番号182)による形質転換後のPNY2211から誘導した。形質転換体を、ヒスチジン又はウラシル不含合成完全培地(炭素源として1%エタノール)に播いた。形質転換体を、代わりに2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含有する同じ培地にパッチした。3つのパッチを使用して、液体培地(0.3%グルコース及び0.3%エタノールを炭素源として含むウラシル不含の合成完全)を接種した。イソブタノール生成を試験するため、液体培養物を、2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含有し、またBMEビタミンミックス(Sigma カタログ番号B6891)も含有したウラシル不含合成完全培地に継代培養した。培養物を、密閉した血清バイアル(15mlバイアル中10mlの培地)において30℃で振盪(Infors Multitronシェーカーで250rpm)しながらインキュベートした。48時間後、培養培地をろ過し(Spin−Xカラム)、HPLCにより分析した(米国特許出願公開第2007/0092957号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり)。1つのクローンをPNY2240と命名した。
【0445】
株PNY2242は、プラスミドpLH702(配列番号181)及びpYZ067ΔkivDΔhADH(本明細書において上記に記載される)による形質転換後のPNY2238から誘導した。形質転換体を、ヒスチジン又はウラシル不含合成完全培地(炭素源として1%エタノール)に播いた。形質転換体を、代わりに2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含有する同じ培地にパッチした。3つのパッチを、上記に記載したとおり、イソブタノール生成について試験した。グルコース消費及びイソブタノール生成の点で、3つ全てが同様に機能した。1つのクローンをPNY2242と命名し、本明細書において以下に記載するとおり、発酵条件下でさらに特徴付けた。
【0446】
実施例12
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)株BP1064(PNY1503)の構築
株BP1064は、CEN.PK 113−7D(CBS 8340;Centraalbureau voor Schimmelcultures(CBS)Fungal Biodiversity Centre,オランダ)から得たもので、以下の遺伝子の欠失を含む:URA3、HIS3、PDC1、PDC5、PDC6、及びGPD2。BP1064をプラスミドpYZ090(配列番号195)及びpLH468(配列番号139)で形質転換して、株NGCI−070(BP1083;PNY1504)を作成した。
【0447】
コード配列全体を完全に取り除いた欠失を、標的遺伝子の上流及び下流の相同性領域と、形質転換体選択用のG418耐性マーカー又はURA3遺伝子のいずれかとを含むPCR断片による相同組換えによって作成した。loxP部位が隣接するG418耐性マーカーは、Creリコンビナーゼを用いて取り除いた(pRS423::PGAL1−cre;配列番号271)。URA3遺伝子は相同組換えにより取り除いてスカーレス欠失を作成するか、又はloxP部位が隣接する場合、Creリコンビナーゼを用いて取り除いた。
【0448】
URA3欠失
内因性URA3コード領域を欠失させるため、ura3::loxP−kanMX−loxPカセットを、pLA54鋳型DNA(配列番号386)からPCR増幅した。pLA54は、K.ラクチス(K.lactis)TEF1プロモーター及びkanMXマーカーを含み、loxP部位が隣接しているため、Creリコンビナーゼによる組換え及びマーカーの除去が可能である。PCRは、Phusion DNAポリメラーゼ並びにプライマーBK505及びBK506(配列番号294及び295)を使用して行った。各プライマーのURA3部分は、loxP−kanMX−loxPマーカーの組込みによってURA3コード領域の置換が生じるように、URA3プロモーターの上流の5’領域及びコード領域の下流の3’領域に由来した。PCR産物を、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いてCEN.PK 113−7Dに形質転換し、形質転換体を30℃のG418含有YPD(100μg/ml)で選択した。プライマーLA468及びLA492(配列番号296及び297)を用いたPCRにより形質転換体をスクリーニングして組込みが正しいことを確認し、CEN.PK 113−7D
Δura3::kanMXと命名した。
【0449】
HIS3欠失
PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs;Ipswich,MA)、及びGentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen;Valencia,CA)で調製した、鋳型としてのCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して、スカーレスHIS3欠失用のPCRカセットの4つの断片を増幅した。HIS3断片Aは、プライマーoBP452(配列番号298)及びHIS3断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP453(配列番号299)により増幅した。HIS3断片Bは、HIS3断片Aの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP454(配列番号300)、及びHIS3断片Uの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP455(配列番号301)により増幅した。HIS3断片Uは、HIS3断片Bの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP456(配列番号302)、及びHIS3断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP457(配列番号303)により増幅した。HIS3断片Cは、HIS3断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP458(配列番号304)、及びプライマーoBP459(配列番号305)により増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、HIS3断片AとHIS3断片Bとを混合し、プライマーoBP452(配列番号298)及びoBP455(配列番号301)で増幅して、HIS3断片ABを作成した。オーバーラップPCRにより、HIS3断片UとHIS3断片Cとを混合し、プライマーoBP456(配列番号302)及びoBP459(配列番号305)で増幅して、HIS3断片UCを作成した。得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、HIS3断片ABとHIS3断片UCとを混合し、プライマーoBP452(配列番号298)及びoBP459(配列番号305)で増幅して、HIS3 ABUCカセットを作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0450】
CEN.PK 113−7D Δura3::kanMXのコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research;Orange,CA)を使用して、HIS3 ABUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の2%グルコース添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。his3ノックアウトを含む形質転換体を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP460(配列番号306)及びoBP461(配列番号307)でのPCRによりスクリーニングした。正しい形質転換体を、CEN.PK 113−7D Δura3::kanMX Δhis3::URA3として選択した。
【0451】
Δura3部位からのKanMXマーカー除去及びΔhis3部位からのURA3マーカー除去
CEN.PK 113−7D Δura3::kanMX Δhis3::URA3を、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用してpRS423::PGAL1−cre(配列番号271、米国仮特許出願第61/290,639号明細書に記載される)で形質転換し、30℃の2%グルコース添加ヒスチジン及びウラシル不含合成完全培地に播くことにより、KanMXマーカーを取り除いた。30℃の1%ガラクトース添加YPで形質転換体を6時間成長させて、Creリコンビナーゼ及びKanMXマーカーの切り出しを誘導し、30℃のYPD(2%グルコース)プレートに播いて回収した。単離物をYPDで一晩成長させ、30℃の5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播いて、URA3マーカーが失われた単離物を選択した。5−FOA耐性単離物をYPDで成長させてそこに播き、pRS423::PGAL1−creプラスミドを取り除いた。単離物を、YPD+G418プレート、ウラシル不含合成完全培地プレート、及びヒスチジン不含合成完全培地プレートでの成長を評価することにより、KanMXマーカー、URA3マーカー、及びpRS423::PGAL1−creプラスミドの喪失について確認した。G418に対して感受性を有し、且つウラシル及びヒスチジン栄養要求性であった正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3として選択し、BP857と命名した。欠失及びマーカー除去を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、Δura3用のプライマーoBP450(配列番号308)及びoBP451(配列番号309)並びにΔhis3用のプライマーoBP460(配列番号306)及びoBP461(配列番号307)でのPCR及び配列決定により確認した。
【0452】
PDC6欠失
PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs)、及びGentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製した、鋳型としてのCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して、スカーレスPDC6欠失用のPCRカセットの4つの断片を増幅した。PDC6断片Aは、プライマーoBP440(配列番号310)及びPDC6断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP441(配列番号311)により増幅した。PDC6断片Bは、PDC6断片Aの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP442(配列番号312)、及びPDC6断片Uの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP443(配列番号313)により増幅した。PDC6断片Uは、PDC6断片Bの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP444(配列番号314)、及びPDC6断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP445(配列番号315)により増幅した。PDC6断片Cは、PDC6断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP446(配列番号316)、及びプライマーoBP447(配列番号317)により増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、PDC6断片AとPDC6断片Bとを混合し、プライマーoBP440(配列番号310)及びoBP443(配列番号313)で増幅して、PDC6断片ABを作成した。オーバーラップPCRにより、PDC6断片UとPDC6断片Cとを混合し、プライマーoBP444(配列番号314)及びoBP447(配列番号317)で増幅して、PDC6断片UCを作成した。得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、PDC6断片ABとPDC6断片UCとを混合し、プライマーoBP440(配列番号310)及びoBP447(配列番号317)で増幅して、PDC6 ABUCカセットを作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0453】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用して、PDC6 ABUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の2%グルコース添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。pdc6ノックアウトを含む形質転換体を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP448(配列番号318)及びoBP449(配列番号319)でのPCRによりスクリーニングした。正しい形質転換体を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6::URA3として選択した。
【0454】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6::URA3をYPDで一晩成長させ、30℃の5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播いて、URA3マーカーが失われた単離物を選択した。欠失及びマーカー除去を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP448(配列番号318)及びoBP449(配列番号319)でのPCR及び配列決定により確認した。単離物にPDC6遺伝子が存在しないことが、PDC6のコード配列に特異的なプライマーoBP554(配列番号320)及びoBP555(配列番号321)を使用したネガティブPCRの結果により実証された。正しい単離物をCEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6として選択し、BP891と命名した。
【0455】
PDC1欠失ilvDSm組込み
PDC1遺伝子を欠失させ、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC番号700610由来のilvDコード領域によって置換した。PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs)、及びGentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製した、鋳型としてのNYLA83(米国仮特許出願第61/246,709号明細書に記載される)ゲノムDNAを使用して、PDC1欠失−ilvDSm組込み用のPCRカセットの、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)由来のilvDコード領域が後続するA断片を増幅した。PDC1断片A−ilvDSm(配列番号322)は、プライマーoBP513(配列番号326)及びPDC1断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP515(配列番号327)により増幅した。PDC1欠失−ilvDSm組込み用のPCRカセットのB断片、U断片、及びC断片は、PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs)、及びGentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製した、鋳型としてのCEN.PK 113−7DゲノムDNAを使用して増幅した。NYLA83は、米国特許出願公開第2009/0305363号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるPDC1欠失−ilvDSm組込みを有する株である。PDC1断片Bは、PDC1断片A−ilvDSmの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP516(配列番号328)、及びPDC1断片Uの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP517(配列番号329)により増幅した。PDC1断片Uは、PDC1断片Bの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP518(配列番号330)、及びPDC1断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP519(配列番号331)により増幅した。PDC1断片Cは、PDC1断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP520(配列番号332)、及びプライマーoBP521(配列番号333)により増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、PDC1断片A−ilvDSmとPDC1断片Bとを混合し、プライマーoBP513(配列番号326)及びoBP517(配列番号329)で増幅して、PDC1断片A−ilvDSm−Bを作成した。オーバーラップPCRにより、PDC1断片UとPDC1断片Cとを混合し、プライマーoBP518(配列番号330)及びoBP521(配列番号333)で増幅して、PDC1断片UCを作成した。得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、PDC1断片A−ilvDSm−BとPDC1断片UCとを混合し、プライマーoBP513(配列番号326)及びoBP521(配列番号333)で増幅して、PDC1 A−ilvDSm−BUCカセット(配列番号323)を作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0456】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用して、PDC1 A−ilvDSm−BUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の2%グルコース添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。pdc1ノックアウトilvDSm組込みを含む形質転換体を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP511(配列番号336)及びoBP512(配列番号337)でのPCRによりスクリーニングした。単離物にPDC1遺伝子が存在しないことが、PDC1のコード配列に特異的なプライマーoBP550(配列番号338)及びoBP551(配列番号339)を使用したネガティブPCRの結果により実証された。正しい形質転換体を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm−URA3として選択した。
【0457】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm−URA3をYPDで一晩成長させ、30℃の5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播いて、URA3マーカーが失われた単離物を選択した。PDC1の欠失、ilvDSmの組込み、及びマーカー除去を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP511(配列番号336)及びoBP512(配列番号337)でのPCR及び配列決定により確認した。正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSmとして選択し、BP907と命名した。
【0458】
PDC5欠失sadB組込み
PDC5遺伝子を欠失させ、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)由来のsadBコード領域によって置換した(sadB遺伝子については、米国特許出願公開第2009/0269823号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される)。PDC5欠失−sadB組込み用のPCRカセットのセグメントを、初めにプラスミドpUC19−URA3MCSにクローニングした。
【0459】
pUC19−URA3MCSはpUC19ベースであり、多重クローニング部位(MCS)内に位置するサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のURA3遺伝子の配列を含む。pUC19は、大腸菌(Escherichia coli)における複製及び選択用のpMB1レプリコン及びβ−ラクタマーゼをコードする遺伝子を含む。URA3のコード配列に加え、この遺伝子の上流及び下流からの配列が、酵母においてURA3遺伝子を発現させるために含まれた。このベクターはクローニング目的で用いることができ、また、酵母組込みベクターとしても用いることができる。
【0460】
URA3コード領域を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CEN.PK 113−7DゲノムDNA由来のURA3コード領域の上流250bp及び下流150bpと共に包含するDNAを、PhusionハイフィデリティPCRマスターミックス(New England BioLabs)を使用して、BamHI、AscI、PmeI、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP438(配列番号334)、及びXbaI、PacI、及びNotI制限部位を含むoBP439(配列番号335)により増幅した。ゲノムDNAを、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)を使用して調製した。PCR産物及びpUC19(配列番号325)を、BamHI及びXbaIで消化した後、T4 DNAリガーゼによりライゲートして、ベクターpUC19−URA3MCSを作成した。このベクターを、プライマーoBP264(配列番号342)及びoBP265(配列番号343)でのPCR及び配列決定により確認した。
【0461】
sadB及びPDC5断片Bのコード配列をpUC19−URA3MCSにクローニングして、PDC5 A−sadB−BUC PCRカセットのsadB−BU部分を作成した。sadBのコード配列を、pLH468−sadB(配列番号359)を鋳型として使用して、AscI制限部位を含むプライマーoBP530(配列番号344)、及びPDC5断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP531(配列番号345)で増幅した。PDC5断片Bは、sadBの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP532(配列番号346)、及びPmeI制限部位を含むプライマーoBP533(配列番号347)により増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、sadBとPDC5断片BとのPCR産物を混合し、プライマーoBP530(配列番号344)及びoBP533(配列番号347)で増幅して、sadB−PDC5断片Bを作成した。得られたPCR産物をAscI及びPmeIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼによってpUC19−URA3MCSの対応する部位にライゲートした。得られたプラスミドを、プライマーoBP536(配列番号348)及びPDC5断片Cの5’末端と相同性を有する5’テールを含むoBP546(配列番号349)を用いたsadB−断片B−断片U増幅用の鋳型として使用した。PDC5断片Cは、PDC5 sadB−断片B−断片Uの3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP547(配列番号350)、及びプライマーoBP539(配列番号351)により増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。オーバーラップPCRにより、PDC5 sadB−断片B−断片UとPDC5断片Cとを混合し、プライマーoBP536(配列番号348)及びoBP539(配列番号351)で増幅して、PDC5 sadB−断片B−断片U−断片Cを作成した。得られたPCR産物をアガロースゲルで精製し、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。PDC5 sadB−断片B−断片U−断片Cを、天然PDC5コード配列の直ちに上流の50ヌクレオチドと相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP542(配列番号352)、及びoBP539(配列番号351)で増幅することにより、PDC5 A−sadB−BUCカセット(配列番号324)を作成した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen)で精製した。
【0462】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSmのコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research)を使用して、PDC5 A−sadB−BUC PCRカセットで形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加(グルコース不含)ウラシル不含合成完全培地に播いた。pdc5ノックアウトsadB組込みを含む形質転換体を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP540(配列番号353)及びoBP541(配列番号354)でのPCRによりスクリーニングした。単離物にPDC5遺伝子が存在しないことが、PDC5のコード配列に特異的なプライマーoBP552(配列番号355)及びoBP553(配列番号356)を使用したネガティブPCRの結果により実証された。正しい形質転換体を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm Δpdc5::sadB−URA3として選択した。
【0463】
CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm Δpdc5::sadB−URA3をYPE(1%エタノール)で一晩成長させ、30℃のエタノール添加(グルコース不含)且つ5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地に播いて、URA3マーカーが失われた単離物を選択した。PDC5の欠失、sadBの組込み、及びマーカー除去を、Gentra Puregene Yeast/Bactキット(Qiagen)で調製したゲノムDNAを使用して、プライマーoBP540(配列番号353)及びoBP541(配列番号354)でのPCRにより確認した。正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm Δpdc5::sadBとして選択し、BP913と命名した。
【0464】
GPD2欠失
内因性GPD2コード領域を欠失させるため、loxP−URA3−loxP PCR(配列番号360)を鋳型DNAとして使用して、gpd2::loxP−URA3−loxPカセット(配列番号361)をPCR増幅した。loxP−URA3−loxPは、loxPリコンビナーゼ部位が隣接する(ATCC番号77107)由来のURA3マーカーを含む。PCRは、Phusion DNAポリメラーゼ及びプライマーLA512及びLA513(配列番号340及び341)を使用して行った。各プライマーのGPD2部分は、loxP−URA3−loxPマーカーの組込みがGPD2コード領域の置換をもたらすように、GPD2コード領域の上流の5’領域及びそのコード領域の下流の3’領域に由来するものとした。PCR産物をBP913に形質転換し、1%エタノール添加(グルコース不含)ウラシル不含合成完全培地で形質転換体を選択した。プライマーoBP582及びAA270(配列番号357及び358)を用いたPCRにより形質転換体をスクリーニングして、組込みが正しいことを確認した。
【0465】
URA3マーカーを、pRS423::PGAL1−cre(配列番号271)で形質転換し、30℃の1%エタノール添加ヒスチジン不含合成完全培地に播くことにより再利用した。形質転換体を1%エタノール添加且つ5−フルオロオロチン酸(0.1%)含有合成完全培地にストリークし、30℃でインキュベートして、URA3マーカーが失われた単離物を選択した。5−FOA耐性単離物をYPE(1%エタノール)で成長させて、pRS423::PGAL1−creプラスミドを取り除いた。欠失及びマーカー除去を、プライマーoBP582(配列番号357)及びoBP591(配列番号362)でのPCRにより確認した。正しい単離物を、株CEN.PK 113−7D Δura3::loxP Δhis3 Δpdc6 Δpdc1::ilvDSm Δpdc5::sadB Δgpd2::loxPとして選択し、BP1064(PNY1503)と命名した。
【0466】
実施例13
PNY2204及びイソブタノール経路プラスミドの構築
本例の目的は、染色体XIIにおけるPDC1及びTRX1コード配列間の天然に存在する遺伝子間領域へのアセト乳酸シンターゼをコードする遺伝子の組込みを可能にするベクターの構築について記載することである。このベクターを使用して得られる株についても記載する。
【0467】
組込みベクターpUC19−kan::pdc1::FBA−alsS::TRX1の構築
1.7kbのBbvCI/PacI断片をpRS426::GPD::alsS::CYC(米国特許第7,851,188号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される)から、予めBbvCI/PacIで消化してILV5遺伝子を切り離したpRS426::FBA::ILV5::CYC(米国特許第7,851,188号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に記載される)に移すことにより、FBA−alsS−CYCtカセットを構築した。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)TOP10細胞に形質転換し、形質転換体を、プライマーN98SeqF1(配列番号363)及びN99SeqR2(配列番号365)を使用するPCRによってスクリーニングした。ベクターからBglII及びNotIを使用してFBA−alsS−CYCtカセットを単離し、pUC19−URA3::ilvD−TRX1(クローン「B」)のAflII部位にクローニングした(クレノウ断片を使用して、ライゲーションに適合する末端を作製した)。ベクターにおいて両方向にalsSカセットを含む形質転換体が得られ、PCRにより、構成「A」についてプライマーN98SeqF4(配列番号364)及びN1111(配列番号366)を使用し、構成「B」についてN98SeqF4(配列番号364)及びN1110(配列番号367)を使用して確認した。次に、URA3遺伝子(1.2kbのNotI/NaeI断片)を除去し、且つジェネティシンカセットを付加することにより、ジェネティシン選択可能なバージョンの「A」構成ベクターを作製した。クレノウ断片を用いて全ての末端をライゲーションに適合させ、及びプライマーBK468(配列番号368)及びN160SeqF5(配列番号210)を使用して、PCRにより形質転換体をスクリーニングし、先のURA3マーカーと同じ向きのジェネティシン耐性遺伝子を有するクローンを選択した。得られたクローンは、pUC19−kan::pdc1::FBA−alsS::TRX1(クローンA)(配列番号387)と命名した。
【0468】
alsS組込み株及びイソブタノール生成誘導体の構築
上記に記載されるpUC19−kan::pdc1::FBA−alsS組込みベクターをPmeIで直鎖化し、PNY1507(上記の実施例8に記載される)に形質転換した。PmeIは、クローニングされたpdc1−TRX1遺伝子間領域内でベクターを切断し、従ってその位置に標的化した組込みをもたらす(Rodney Rothstein,Methods in Enzymology,1991,volume 194,pp.281−301)。形質転換体をYPE+50μg/ml G418で選択した。パッチした形質転換体を、プライマーN160SeqF5(配列番号210)及びoBP512(配列番号337)を使用したPCRにより、組込みイベントについてスクリーニングした。2つの形質転換体を、それらの株のイソブタノール産生能力を評価することにより、アセト乳酸シンターゼ機能について間接的に試験した。このため、大腸菌(E.coli)−酵母シャトルベクター(pYZ090ΔalsS及びpBP915、以下に記載される)に、さらなるイソブタノール経路遺伝子を提供した。1つのクローンをPNY2205と命名した。プラスミドを含まない親株をPNY2204と命名した(MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−pUC19−loxP−kanMX−loxP−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)−ADH1t)。
【0469】
イソブタノール経路プラスミド(pYZ090ΔalsS及びpBP915)
pYZ090(配列番号195)をSpeI及びNotIで消化して、CUP1プロモーターの大部分並びに全てのalsSコード配列及びCYCターミネーターを除去した。次にベクターを、クレノウ断片による処理後にセルフライゲートし、大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換することにより、アンピシリン耐性について選択した。2つの独立したクローンについて、プライマーN191(配列番号370)を使用したPCRによるライゲーション接合部にわたるDNA配列決定により、DNA領域の除去を確認した。得られたプラスミドをpYZ090ΔalsS(配列番号371)と命名した。酵母におけるDHAD、KivD及びHADH発現用のpLH468プラスミドを構築した。pLH468(配列番号139)から、kivD遺伝子及びkivDの上流の957塩基対のTDH3プロモーターを欠失させることにより、pBP915(配列番号182)を構築した。pLH468をSwaIで消化し、大きい断片(12896bp)をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen;Valencia,CA)で精製した。DNAの単離断片をT4 DNAリガーゼによりセルフライゲートし、これを使用してエレクトロコンピテントTOP10大腸菌(Escherichia coli)(Invitrogen;Carlsbad,CA)を形質転換した。形質転換体からのプラスミドを単離し、SwaI制限酵素による制限解析により、正確な欠失であることを確認した。単離物もまた、プライマーoBP556(配列番号372)及びoBP561(配列番号373)により、欠失部位にわたり配列決定した。正確な欠失を有するクローンを、pBP915(pLH468ΔkivD)(配列番号182)と命名した。
【0470】
pYZ090は、pHR81(ATCC番号87541、Manassas,VA)骨格をベースとする。pYZ090を、ALSの発現用の、酵母CUP1プロモーター(nt 2位〜449位)から発現し、且つCYC1ターミネーター(nt 2181位〜2430位)が続く枯草菌(Bacillus subtilis)由来のalsS遺伝子のコード領域(nt 457位〜2172位)を有するキメラ遺伝子と、KARI発現用の、酵母ILV5プロモーター(2433位〜3626位)から発現し、且つILV5ターミネーター(nt 4682位〜5304位)が続くラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のilvC遺伝子のコード領域(nt 3634位〜4656位)を有するキメラ遺伝子とを含むように構築した。
【0471】
実施例14
イソブタノール生成−PNY1910及びPNY2242
方法:
接種培地の調製
1Lの接種培地は以下を含んだ:6.7g、アミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco 0919−15−3);2.8g、ヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤(Sigma Y2001);20mLの1%(w/v)L−ロイシン;4mLの1%(w/v)L−トリプトファン;3gのエタノール;10gのグルコース。
【0472】
限定発酵培地の調製
接種後のブロスの容積は800mLで、以下の最終組成を有した(リットルあたり):5g硫酸アンモニウム、2.8gリン酸二水素カリウム、1.9g硫酸マグネシウム七水和物(septahydrate)、0.2mL消泡剤(Sigma DF204)、ヒスチジン、ロイシン、トリプトファン、及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤(Sigma Y2001)、16mg L−ロイシン、4mg L−トリプトファン、6mLのビタミン混合物(1Lの水中、50mgビオチン、1gパントテン酸Ca、1gニコチン酸、25gミオイノシトール、1gチアミン塩化物塩酸塩、1g塩酸ピリドキソール、0.2g p−アミノ安息香酸)、6mLの微量ミネラル溶液(1Lの水中、15g EDTA、4.5g硫酸亜鉛七水和物、0.8g塩化マンガン二水和物(dehydrate)、0.3g塩化コバルト六水和物、0.3g硫酸銅五水和物、0.4gモリブデン酸二ナトリウム二水和物(disodium molybdenum dehydrate)、4.5g塩化カルシウム二水和物、3g硫酸鉄七水和物、1gホウ酸、0.1gヨウ化カリウム)、30mgチアミンHCl、30mgニコチン酸。2N KOHによりpHを5.2に調整し、グルコースを10g/Lまで添加した。
【0473】
接種材料の調製
凍結バイアルから直接、全バイアル培養物(約1ml)を10mLの接種培地にピペッティングすることにより、125mL振盪フラスコを接種した。フラスコを260rpm及び30℃でインキュベートした。株をOD約1.0まで一晩成長させた。λ=600nmのODは、Beckman分光光度計(Beckman,米国)で決定した。
【0474】
バイオリアクター実験計画
発酵は、実働容積が0.8Lの1L Biostat B DCU3発酵槽(Sartorius,米国)で行った。排ガス組成をPrima DB質量分析器(Thermo Electron Corp.,米国)によりモニタした。発酵全体を通して温度は30℃に維持し、pHは2N KOHによって5.2に制御した。80mLの接種材料を直接接種した後は、撹拌によってdOを30%に制御し、pHを5.25に制御し、曝気を0.2L/分に制御した。ODが約3に達した後、嫌気性培養のためガスをN2に切り替えた。発酵全体を通してグルコースは、50%(w/w)溶液を手動で添加することにより過剰(5〜20g/L)に維持した。
【0475】
培養実験の分析方法
十分に混合したブロス試料をキュベット(CS500 VWR International,独国)にピペッティングすることにより、λ=600nmのODを分光光度計で決定した。試料のバイオマス濃度が分光光度計の線吸収範囲(典型的にはOD値0.000〜0.300)を超える場合、0.9%NaCl溶液で試料を希釈して、線吸収範囲の値を得た。
【0476】
培養上清中におけるグルコース、イソブタノール、及び他の発酵副生成物の計測を、屈折率(RI)検出器及びダイオードアレイ(210nm)検出器と共にBio−Rad Aminex HPX−87Hカラム(Bio−Rad,米国)を使用してHPLCにより行った。移動相として0.01N H
2SO
4を使用して、0.6mL/分の流量及び40℃のカラム温度でクロマトグラフ分離を達成した。これらの条件下でイソブタノール保持時間は32.2分である。排ガス試料中のイソブタノール濃度を質量分析計により決定した。
【0477】
結果
光学濃度(OD)として計測される最高バイオマス濃度、イソブタノール生成の容積速度、最終イソブタノール力価、及びグルコースに対するイソブタノール収率を、以下の表に提供する。株PNY2242は、株PNY1910と比べてより高い力価及びより速い速度を有し、より高い比速度及び力価のイソブタノールを生成した。比速度は
図5に示す。培養上清中のDHIV+DHMBの蓄積は、PNY2242株と比較してPNY1910で3倍高かった(
図6)。グルコースに対するグリセロール、ピルビン酸、BDO、DHIV+DHMB
*、αKIV、及びイソ酪酸の収率を
図7に示す。
*HPLC法により分析したDHIVには、DHIV及びDHMBの両方が含まれる。
【0478】
【表23】
【0479】
実施例15
K9G9エラープローンPCRライブラリの構築
K9G9のエラープローンPCRを実施して、NADHと比べてNADPHに対するKm値の増加を有する変異体をスクリーニングできるライブラリを作成した。K9G9の突然変異誘発PCRを、GeneMorph(登録商標)II EZCloneドメイン突然変異生成キット(カタログ番号200552;Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,CA)により実施した。プライマーK9G9_EZ_F1(AAA CAT GGA AGA ATG TAA GAT GGC;配列番号390)及びK9G9_EZ_R1(TCA GTT GTT AAT CAA CTT GTC TTC G;配列番号391)は、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)によって商業的に合成された。プライマー、鋳型、及びddH
2Oの他には、ここで使用した試薬は、上記に示すキットと共に提供された。突然変異誘発PCR混合物は、4μlのpHR81−PIlv5−KARI−K9.G9(配列番号392)(770ng/μg)、1.25μlの各プライマー(100ng/μlストック)、5μlの10×Mutazyme II反応緩衝液、1μlの40mM dNTP混合物、1.5μlのMutazyme II DNAポリメラーゼ、及び36μlのddH
2Oからなった。PCR反応には以下の条件を用いた:開始温度は95℃で2.0分間、続いて30回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で30秒間、48℃で30秒間、及び72℃で2.0分間からなった。温度サイクルの完了時に、試料をさらに10.0分間72℃に保ち、次に4℃に維持して試料の回復を待った。反応産物をアガロースゲル電気泳動(electrophloresis)(1%アガロース、1×TBE緩衝液)によって鋳型から分離し、StrataPrep(登録商標)DNAゲル抽出キット(カタログ番号400766、Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,CA)を製造者の推奨どおり使用して回収した。
【0480】
単離した反応産物をメガプライマーとして用いて、上記に示すキットの「EZClone反応」において遺伝子ライブラリを作成した。メガプライマー、鋳型、及びddH
2Oの他には、ここで使用した試薬は、上記に示すキットと共に提供された。反応物は、25μlの2×EZClone酵素混合物、4μlのメガプライマー(125ng/μl)、pBAD.KARIベクター(25ng/μl)における2μlのK9G9、3μlのEZClone溶液、及び16μlのddH
2Oからなった。反応には以下の条件を用いた:開始温度は95℃で1.0分間、続いて30回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で50秒間、60℃で50秒間、及び68℃で10.0分間からなった。温度サイクルの完了時に試料をさらに10.0分間72℃に保ち、次に4℃に維持して試料の回復を待った。1μlのDpn I(10U/μl)を添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートした。
【0481】
次に、4μlのDpn Iで消化した「EZClone反応」の産物を、50μl XL10−Gold(登録商標)ウルトラコンピテント大腸菌(E.coli)細胞(GeneMorph(登録商標)II EZCloneドメイン突然変異生成キットに提供される)に製造者の推奨どおり形質転換した。形質転換体を、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)に広げ、37℃で一晩インキュベートし、4℃で保存した。これらのステップを、形質転換1回あたり4μlのDpn I消化した「EZClone反応」産物及び50μlの細胞で、合計10回の形質転換にわたり繰り返した。XL−Goldにおいて得られたライブラリを、M9塩を含有する溶液で寒天プレートから剥がし取り、合わせて、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する培地に希釈し、37℃で一晩インキュベートした。QIAprep Spinミニプレップキット(カタログ番号2706;Qiagen,Valencia,CA)により、製造者により提供されるプロトコルに従い細胞からライブラリDNAを単離した。次に増幅したライブラリを用いることにより、BioRad Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA)を使用して大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント株Bw25113(ΔilvC)を形質転換した。形質転換したクローンを、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(番号101320−154、Teknova Inc.Hollister,CA)に広げ、37℃で一晩インキュベートした。クローンを、実施例16に記載されるとおりのハイスループットスクリーニングに用いた。
【0482】
実施例16
NADH活性のNADP+阻害の減少をスクリーニングすることによる、NADPHに対するK
Mが増加したK9G9変異体の同定
実施例15に記載されるK9G9ライブラリを、NADH依存性KARI活性のNADP
+阻害が低下した変異体についてスクリーニングした。NADHによる活性のNADP
+
阻害が低下したK9G9変異体は、潜在的に、NADHに対するK
Mに対してのNADPHに対するK
Mの比の増加を示し得る。NADHに対するKmと比べたNADPHに対するK
Mを増加させることを具体的な目的として、スクリーニングのヒットを部分的に精製して動態解析を実施し、NADHでの、及びNADPHでのV
max及びK
Mパラメータを決定した。
【0483】
K9G9遺伝子ライブラリのハイスループットスクリーニングアッセイ
突然変異体KARI酵素の遺伝子ライブラリのハイスループットスクリーニングを、本明細書に記載されるとおり実施した:554.4g/Lグリセロール、68mMの(NH
4)
2SO
4、4mM MgSO
4、17mMクエン酸ナトリウム、132mM KH
2PO
4、36mM K
2HPO
4を含有する10×凍結用培地を、分子的に純粋な水で調製し、ろ過滅菌した。この10×凍結用培地をLB培地で希釈することにより、凍結用培地を調製した。1×凍結用培地のアリコート(200μL)を、96ウェルアーカイブプレート(カタログ番号3370、Corning Inc.Corning,NY)の各ウェルに使用した。
【0484】
LB寒天プレートからクローンを選択して、凍結用培地を含有する96ウェルアーカイブプレートに接種し、振盪なしに37℃で一晩成長させた。次にアーカイブプレートを−80℃で保存した。陰性対照としては、pBAD−HisB(Invitrogen)で形質転換した、米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおりの大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)を常に使用した。ライブラリの陽性対照は、米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおりの、大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)におけるK9G9−KARIであった。
【0485】
アーカイブプレートからのクローンを96ディープウェルプレートに接種した。各ウェルは、解凍したアーカイブプレートからの細胞3.0μl、100μg/mlアンピシリン及び誘導物質として0.02%(w/v)アラビノースを含有するLB培地200μlを含んだ。細胞を、振盪(900rpm)しながら80%湿度の37℃で一晩成長させ、遠心(3750rpm、25℃で5分)(Eppendorf遠心機、Brinkmann Instruments,Inc.Westbury,NY)により回収した。後の分析のため、細胞ペレットを−20℃で保存した。
【0486】
アッセイ基質(R,S)−アセトラクテートを、Aulabaugh and Schloss(Aulabaugh and Schloss,Biochemistry,29:2824−2830,1990)により記載されるとおり合成した。このアッセイで使用した他の化学物質は全て、Sigmaから購入した。KARIによるアセトラクテートからα,β−ジヒドロキシイソバレレートへの酵素変換の後、プレートリーダー(Saphire 2、Tecan,Mannedorf,スイス)を使用して、340nmの反応から補因子NADHの酸化を計測した。活性は、6220M
-1cm
-1 NADHのモル吸光係数を使用して計算した。
【0487】
ディープウェルプレート中の凍結細胞ペレット及びBugBuster(Novagen 71456,Darmstadt,独国)を、同時に室温で30分間加温した。30分間加温した後、75μlの50%BugBuster(v/v水中)を各ウェルに添加し、プレートシェーカーを使用して細胞を懸濁した。細胞ペレット/50%Bug Buster懸濁液を有するプレートを室温で30分間インキュベートした。細胞溶解物を75μLのd.d水で希釈して、0.5×ライセートを得た。希釈した無細胞抽出物のアッセイを、2.5mMのNADP+を含む、又は含まない、2.4mM(R/S)−アセトラクテート、100mM HEPES pH6.8、100mM KCl、10mM MgCl
2、150μM NADH、12.5μL 0.5×細胞溶解物を含有する緩衝液中、30℃で実施した。
【0488】
NADH KARI活性のNADP+阻害が低下したK9G9変異体の同定
NADP+の存在下におけるNADH酸化速度の計測値の、NADP+の非存在下におけるNADH酸化速度の計測値に対する比を、各変異体及び陽性対照ウェル(2個/プレート)について計算した。全ての陽性対照ウェルの比の平均及び標準偏差(合計10
4個)を計算した。
【0489】
変異体ウェルは、NADP+の非存在下における速度が0.1OD/時間より高く、且つ速度比がいずれも0.45より大きく(陽性対照平均より3標準偏差高く)且つ1より小さい場合、初期ヒットを含むと考えた。4607個の潜在的な変異体のプールから合計521個のヒットが同定された。これらの初期ヒットを統合して、さらなる分析用により小さいライブラリを形成した。
【0490】
初期ライブラリヒットの二次スクリーニング
統合したヒットライブラリを生物学的トリプリケートで成長させ、無細胞抽出物を調製し、上記に記載したとおりアッセイした。次に、上記のとおり、変異体及び陽性対照の速度比を計算した。詳細な動態解析用に選択された最終的なヒットは、以下の基準を満たした:NADP+の非存在下における速度が0.6OD/時間より高く、速度比が0.51より大きく且つ1より小さく、且つ3個の生物学的レプリケートのうち少なくとも2個がこれらの基準に合格。動態解析用に17個のヒットが同定され、100μg/mLアンピシリンを添加したLBプレートにストリークして広げた。
【0491】
K9G9変異体の配列分析
二次HTSスクリーニングから同定された17個の変異体のDNA配列決定を、TempliPhi(商標)(GE Healthcare)を使用することにより、プライマーpBAD−For(ATGCCATAGCATTTTTATCC;配列番号393)及びpBAD−Rev(CTGATTTAATCTGTATCAGGCT;配列番号394)で達成した。
【0492】
【表24】
【0493】
部分的に精製した変異体タンパク質の動態解析
米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおりの、大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)を使用して、17個の変異体及び陽性対照K9G9を発現させた。株は、125mLのバッフル付きベント付きフィルタ付き蓋のフラスコにおいて、100μg/mLアンピシリンを含有する10mLのLBブロス(番号46−060−CM、Mediatech,Manassas,VA)中、振盪しながら37℃で8時間成長させた。200μLのこの培養物を使用して、100μg/mLアンピシリン及び0.2%(w/v)アラビノースを添加した100mL LBブロスを接種した。これらの培養物を、500mLのバッフル付きベント付きフィルタ付き蓋のフラスコにおいて、振盪しながら37℃で16〜18時間成長させた。細胞を20mL及び2つの40mLアリコートに回収し、上清をデカントして、ペレットを−80℃で凍結した。
【0494】
タンパク質を部分的に精製するため、20mLの細胞培養物収集物に相当する細胞ペレットを解凍し、1mLのBug Buster Master Mix(Novagen 71456,Darmstadt,独国)に再懸濁した。細胞懸濁液を室温で15分間インキュベートし、続いて60℃で15分間インキュベートして、易熱性(heat liable)タンパク質を変性させた。細胞残屑及び変性タンパク質を、4℃で30分間遠心することによりペレット化した。K9G9及び変異体を含む、耐熱性細胞質タンパク質を含む上清を回収し、4℃で保存した。
【0495】
耐熱性細胞質タンパク質画分の総タンパク量を、Coomaisse Plus(Thermo Scientific 番号23238、Rockford,Ill)を使用してブラッドフォードアッセイにより計測した。標準としてBSAを用いた。Cary 300分光光度計(Agilent Technologies,Wilmington,DE)を使用して595nmの吸光度を決定することにより、タンパク質の濃度を計測した。
【0496】
NADH及びNADPHに対するV
max値及びK
M値を決定するため、部分的に精製した
タンパク質を、様々な濃度のNADH(0、16.4、32.8、65.7、98.5、164.3及び246.5μM)及びNADPH(0、12.8、25.6、51.2、76.8及び128μM)でアッセイした。アッセイは、100mM HEPES(pH6.8)、10mM MgCl
2、100mM KCl及び4.8mM R/S−アセトラクテートにおいて30℃で行った。アッセイには、0.1〜0.35mg/mLの総タンパク量を加えた。Cary 300分光光度計(Agilent Technologies,Wilmington,DE)を使用して340nmでのNAD(P)Hの酸化をモニタすることにより、S−アセトラクテートからDHIVへの変換速度を計測した。活性は、6220M
-1cm
-1のモル吸光係数を使用して計算した。補因子濃度に対して比活性(U/mg)をプロットすることによりV
max値及びK
m値を計算し、Kaleidagraphソフトウェア(Synergy,Reading,PA)を使用してデータをミカエリス・メンテン式にフィットさせた。
【0497】
【表25】
【0498】
実施例17
部位特異的突然変異誘発によるK9 KARI変異体の手動組換え
K9G9誘導体K9JB4及びK9JG3(実施例16においてそれぞれ880 B4及び881 G3として同定された)の部位特異的突然変異誘発を実施し、例に記載する他のアミノ酸変化を組み込んだ。最初のステップは、実施例5に記載されるN87P置換を加えることであった。QuikChange(登録商標)II部位特異的突然変異誘発キット(カタログ番号200523;Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,CA)を用いて、プライマーN87PC1(CTGACATCATTATGATCTTGATCCCAGATGAAAAGCAGGCTACCATGTAC;配列番号395)及びN87PC1r(GTACATGGTAGCCTGCTTTTCATCTGGGATCAAGATCATAATGATGTCAG;配列番号396)によりKARI遺伝子に突然変異を導入した。プライマー、鋳型、及びddH
2Oを除き、ここで使用した全ての試薬は、上記に指示するキットと共に提供された。プライマーは、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により商業的に合成された。鋳型は、大腸菌(E.coli)ベクター(pBAD.KARI)におけるK9 KARI変異体であった。K9JB4の突然変異生成は、反応混合物に1μl K9JB4(50ng/μl)、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1μlのPfu Ultra HF DNAポリメラーゼ、及び40μlのddH
2Oを含んだ。K9JG3反応混合物では、1μl K9JB4(50ng/ul)を1μl K9JG3(50ng/μl)に代えた。双方の反応とも、以下の条件を用いた:開始温度は95℃で30秒間、続いて16回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で30秒間、55℃で30秒間、及び68℃で5.0分間からなった。温度サイクルの完了時に、試料を4℃に維持して試料の回復を待った。1μlのDpn I(10U/μl)を各反応物に添加し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。
【0499】
2μlの各突然変異誘発反応物を、製造者の指示に従いOne Shot(登録商標)TOP10化学的コンピテント大腸菌(E.coli)(Invitrogen、カタログ番号C404003)に形質転換した。形質転換体を、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)に広げ、37℃で一晩インキュベートした。次に複数の形質転換体を、TempliPhi(商標)(GE Healthcare)ベースのDNA配列決定に対して、プライマーpBAD−For(ATGCCATAGCATTTTTATCC;配列番号393)及びpBAD−Rev(CTGATTTAATCTGTATCAGGCT;配列番号394)を用いて選択した。確認されたKARI配列を有する形質転換体を100μg/mlアンピシリンを含有するLB培地に接種し、225rpmで振盪しながら33℃でインキュベートした。細胞からプラスミドDNAを、QIAprep Spinミニプレップキット(カタログ番号2706;Qiagen,Valencia,CA)によって製造者により提供されるプロトコルに従い単離した。得られたクローンK9JB4P及びK9JG3Pは、それぞれK9JB4及びK9JG3に由来した。
【0500】
さらなる部位特異的突然変異誘発を、上記の記載に変更を加えて実施した。
【0501】
変異体K9JA1は、プライマーoK57E1(GGTTTATTCGAAGGTGCGGAGGAGTGGAAAAGAGCTG;配列番号397)及びoK57E1r(CAGCTCTTTTCCACTCCTCCGCACCTTCGAATAAACC;配列番号398)を用いてK9JG3Pから誘導した。突然変異生成反応物は、1μl K9JG3P(50ng/μl)、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1μlのPfuUltra HF DNAポリメラーゼ、及び40μlのddH
2Oを含んだ。大腸菌(E.coli)形質転換体の液体培養物は、33℃ではなく37℃でインキュベートした。
【0502】
変異体K9SB2は、プライマーoY53F1(GTAACGTTATCATTGGTTTATACGAAGGTGCGGAGGAG;配列番号399)及びoY53F1r(CTCCTCCGCACCTTCGAATAAACCAATGATAACGTTAC;配列番号400)を用いてK9JB4Pから誘導した。突然変異生成反応物は、1μl K9JB4P(50ng/μl)、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1μlのPfuUltra HF DNAポリメラーゼ、及び40μlのddH2Oを含んだ。大腸菌(E.coli)形質転換体の液体培養物は、33℃ではなく37℃でインキュベートした。
【0503】
変異体K9SB2−K90Lは、プライマーoK90L1(GATCTTGATCCCAGATGAATTGCAGGCTACCATGTACAAAAAC;配列番号401)及びoK90L1r(GTT TTT GTA CAT GGT AGC CTG CAA TTC ATC TGG GAT CAA GAT C;配列番号402)を用いてK9SB2から誘導した。突然変異生成反応物は、2.5μl K9SB2(50ng/μl)、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1μlのPfuUltra HF DNAポリメラーゼ、及び38.5μlのddH
2Oを含んだ。加熱/冷却サイクルについて、55℃で30秒間のステップは1分間に増やした。大腸菌(E.coli)形質転換体の液体培養物は、33℃ではなく37℃でインキュベートした。
【0504】
変異体K9SB2−K90Mは、プライマーoK90M1(CTTGATCCCAGATGAAATGCAGGCTACCATGTACAAAAAC;配列番号403)及びoK90M1r(GTT TTT GTA CAT GGT AGC CTG CAT TTC ATC TGG GAT CAA G;配列番号404)を用いてK9SB2から誘導した。突然変異生成反応物は、2.5μl K9SB2(50ng/μl)、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1μlのPfuUltra HF DNAポリメラーゼ、及び38.5μlのddH
2Oを含んだ。加熱/冷却サイクルについて、55℃で30秒間のステップは1分間に増やした。大腸菌(E.coli)形質転換体の液体培養物は、33℃ではなく37℃でインキュベートした。
【0505】
【表26】
【0506】
実施例18
K
M NADHに対するK
M NADPHの比が増加した精製K9G9誘導体の動態特性決定
K9G9及び変異体を、米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおり、大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)において過剰発現させて精製することにより、補因子親和性及び最大速度のより正確な測定を達成した。
【0507】
発現及び特性決定のため、大腸菌(E.coli)プラスミド(pBAD.KARI)を用いることにより、BioRad Gene Pulser II(Bio−Rad Laboratories Inc.,Hercules,CA)を使用して米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおり大腸菌(E.coli)のエレクトロコンピテント株Bw25113(ΔilvC)を形質転換した。形質転換したクローンを、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(番号101320−154、Teknova Inc.Hollister,CA)に広げ、37℃で一晩インキュベートした。各株について単一の形質転換体を、100μg/mlアンピシリンを含むLBプレートにストリークして広げた。これらのプレートの各々の単一コロニーを使用して、100μg/mlアンピシリンを含む10mL LBブロスを接種した。これらの培養物を、ベント付きフィルタ付きの蓋を有する125mLバッフル付きフラスコにおいて、振盪しながら37℃で8時間成長させた。200μLのこの培養物を使用して、100μg/mlアンピシリン及び0.2%(w/v)アラビノースを含むLBブロスが入った、フィルタ付きベント付きの蓋を有する500mLバッフル付きフラスコ2つを接種した。発現培養物を、振盪しながら37℃で16〜18時間成長させた。細胞を遠心により40mLアリコートに収集した;上清を廃棄し、精製まで細胞ペレットを−80℃で凍結した。
【0508】
K9G9及び全ての変異体を、同じプロセスを用いて精製した。各々40mLの細胞培養物アリコートに相当する2つの細胞ペレットを、4mL Bug Buster Master Mix(Novagen 71456,Darmstadt,独国)に再懸濁し、室温で15分間、続いて60℃で15分間インキュベートした。変性タンパク質及び細胞残屑を、30分間及び4℃、7,000rpmで遠心することによりペレット化した。上清をデカントし、溜めて、Acrodisc 0.2μmシリンジフィルタ(PN4192、Pall,Ann Arbor,MI)でろ過した。ろ過して熱処理した無細胞抽出物から、GE Healthcare HiLoad 26/60 Superdex 200ゲルろ過カラム(17−1071−01、Buckinghamshire,英国)を使用してK9G9を精製した。カラムは、タンパク質を負荷する前に、流量2.0mL/分の50mM HEPES(pH7.5) 5mM MgCl
2緩衝液により0.2CVの平衡で予め平衡化させた。K9G9及び変異体を、流量2.0mL/分の50mM HEPES(pH7.5) 5mM MgCl
2緩衝液による1.5CVの均一濃度ステップで溶出した。Frac−950フラクションコレクター(Buckinghamshire,英国)をサーペンタインパターンで使用して、容積2.5mLの画分を回収した。K9G9及び変異体は全て、画分D5〜E5又はD6〜E4の間に溶出した。15mL Amicon Ultra YM−30スピンフィルタ(UFC903008、Millipore,Billercia,MA)を使用して画分をプールし、10mL 100mM HEPES(pH6.8)及び10mM MgCl
2緩衝液で洗浄した。ろ液を廃棄し、精製したタンパク質を、100mM HEPES(pH6.8)及び10mM MgCl
2を含有する1mL緩衝液を使用して膜から溶出した。
【0509】
NADH及びNADPHに対するV
max値及びK
M値を決定するため、精製したタンパク質を、NAD(P)H再生系と組み合わせた様々な濃度のNAD(P)H(0〜1000μM)でアッセイした。アッセイは、100mM MOPS、pH6.8、10mM MgCl2、1mM EDTA、5mM(R/S)−アセトラクテート、1mM グルコース−6−ホスフェート、3mU/μL グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを含有する緩衝液中30℃で行った。10分後に3容積の0.1%ギ酸で反応をクエンチした。LC−MSを用いてDHIV濃度を計測した。生成されたDHIVの量を一定の時点で計測することにより、S−アセトラクテートからDHIVへの変換速度を決定した。補因子濃度に対する比活性(U/mg)をプロットすることによりV
max値及びK
m値を計算し、データをミカエリス・メンテン式にフィットさせた。アセトラクテートKm値(一定濃度のNADHにおける)の計測から、補因子Km測定に用いた一定のアセトラクテート濃度が飽和していたことが示された。
【0510】
【表27】
【0511】
実施例19
K
m NADHに対するK
m NADPHの比が増加したK9G9誘導体のイソブタノール生成
大腸菌(E.coli)ベクター(pBAD.KARI)由来の変異KARI遺伝子をpHR81−PIlv5−KARI−K9.G9のPmeI及びSfiI部位にサブクローニングすることにより、K9JB4、K9JB4P、K9JG3、K9JG3P、K9JA1、及びK9SB2の酵母発現プラスミドを作製した。得られたプラスミドを、pHR81−PIlv5−KARI−K9.G9及びpHR81−PIlv5−KARI−K9.D3(配列番号181)と共に、酵母におけるイソブタノール生成及び副生成物形成について分析した。酵母経路株を、経路プラスミド#1としてのKARIベクター、及び経路プラスミド#2としてのpBP915(pRS423−P
FBA1−DHAD−P
GPM1−hADH1;配列番号182)の同時形質転換により、PNY2259(MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ::P[PDC1]−ADH|adh_Hl−ADH1t adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Lg(y)−ADH1t yprcΔ15Δ::P[PDC5]−ADH|adh_Hl−ADH1t ymr226cΔ ald6Δ::loxP;実施例22)宿主に作製した。形質転換細胞は、ヒスチジン又はウラシル不含合成培地(炭素源として1%エタノール)に播いた。3つの形質転換体を、同じ培地の新鮮なプレートに移した。形質転換体を、血清バイアルにおける嫌気性条件下でのイソブタノール生成について試験した。
【0512】
3〜5日後に、SE−Ura−Hisプレート上の形質転換からの酵母コロニーが出現した。各変異体の3つのコロニーを新鮮なSE−Ura−Hisプレートにパッチし、30℃で3日間インキュベートした。
【0513】
成長培地及び手順
酵母株の成長手順の間、2種類の培地を使用した:好気性前培養培地及び嫌気性培養培地。全ての化学物質は、特に注記されない限り、Sigma(St.Louis,MO)から入手した。
好気性前培養培地(SE−Ura−His):6.7g/Lのアミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco,291940,Sparks,MD)、1.4g/Lのヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤、0.2%エタノール、0.2%グルコース、0.01%w/vロイシン及び0.002%w/vトリプトファン。
嫌気性培養培地(SEG−Ura−His):50mM MES(pH5.5、6.7g/Lのアミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco,291940,Sparks,MD)、1.4g/Lのヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤、0.1%エタノール、3%グルコース、0.01%ロイシン、0.002%トリプトファン、30mg/Lニコチン酸、30mg/Lチアミン及び10mg/Lエルゴステロール、50/50v/vのTween/エタノール溶液中に構成。
【0514】
パッチした細胞を、0.2%グルコース及び0.2%エタノールを含む25mLのSEG−Ura,His培地に接種し、振盪しながら30℃で約48時間、蓋を閉めて漸次酸素を制限する条件下で、約1.5〜2の目標OD
600値に達するまで成長させた。OD
600値を記録した。細胞を遠心によってペレット化し、上清を廃棄した。細胞ペレットをCoy嫌気バッグ(Grass Lake,MI)に移し、そこでペレットを1.0mLの嫌気性成長培地(SEG−Ura−His)に再懸濁した。再懸濁した細胞ペレットを使用して、50mL血清ボトル(Wheaton、223748、Millville,NJ)中30mLのSEG−Ura−His培地を、目標初期OD
600値の0.2となるように接種した。全ての嫌気性培地、血清バイアル、栓及びクリンプは嫌気バッグにおいて接種前の少なくとも24時間にわたり脱気した。血清ボトルを封栓し、クリンプし、嫌気バッグから取り出して240rpmで振盪しながら30℃で成長させた。嫌気性培養物を、少なくとも1.2の目標OD
600値で24〜72時間成長させた。さらなる嫌気性成長ステップでは、前の嫌気性培養ステップからの細胞を接種材料として使用した。各変異体につき3つの形質転換体を評価した。
【0515】
K9G9 KARI変異体を含む酵母株のHPLC分析
嫌気性成長期間の終了時にHPLC分析用及びOD
600値を得るための試料を採取した。HPLC分析は、Waters 2695分離ユニット、2996フォトダイオードアレイ検出器、及び2414屈折率検出器(Waters,Milford,MA)をShodex Sugar SH−Gプレカラム及びShodex Sugar SH1011分離カラム(Shodex,JM Science,Grand Island,NY)と共に使用して実施した。化合物を、流量0.5mL/分の0.01N硫酸の均一濃度溶離により分離した。Waters Empower Proソフトウェアを使用してクロマトグラムを分析した。
【0516】
グリセロール、イソブタノールのモル収率及びグリセロール/イソブタノール比を決定した。各変異体について、トリプリケートの分析から平均及び標準偏差を計算した。次にスチューデントt検定を用いて、K9D3対照値との値の差が統計的に有意であるかどうかを決定した。新しい変異体については、NADHに対するK
Mと比べたNADPHに対するK
M値の増加が、予想される結果の、低下したNADPH利用である。以下の表及び
図9に報告する結果から、K
M NADHに対するK
M NADPHの比が増加した新しい変異体が、K9D3及びK9G9と比べてより高いイソブタノール対グリセロール比を示すことが示される。K9SB2は、K9D3と比較して、イソブタノール(isoubtanol)力価の35%の増加を示した。
【0517】
【表28】
【0518】
実施例20
K9SB2エラープローンPCRライブラリの構築
K9SB2エラープローンPCRライブラリを、K9G9ライブラリと同様の方法に以下の変更を加えて構築した。突然変異誘発PCR混合物は、pBAD.KARIベクター(190ng/μl)における9.5μl K9SB2、1.25μlのプライマーK9G9_EZ_F1(100ng/μl)、1.25μlのプライマーK9G9_EZ_R1(100ng/μl)、5μlの10×Mutazyme II反応緩衝液、1μlの40mM dNTP混合物、1.5μlのMutazyme II DNAポリメラーゼ、及び30.5μlのddH2Oからなった。「EZClone反応」は、25μlの2×EZClone酵素混合物、3μlのメガプライマー(K9SB2突然変異誘発PCR産物、190ng/μl)、2.6μlのK9SB2鋳型DNA(19ng/μl)、3μlのEZClone溶液1、及び16μlのddH
2Oを含んだ。Dpn Iステップは、混合物を37℃で3時間インキュベートした。クローンを、実施例21に記載されるとおりのハイスループットスクリーニングに用いた。
【0519】
実施例21
NADH対NADPH活性比の増加に基づくKm NADPHに対するKm NADPHの比がさらに増加したK9SB2変異体のスクリーニング
実施例20に記載されるK9SB2ライブラリを、NADPH親和性が低下した変異体についてスクリーニングした。NADHに対するKmと比べたNADPHに対するKmを増加させることを具体的な目的として、スクリーニングのヒットを部分的に精製して動態解析を実施し、NADHでの、及びNADPHでの、V
max及びK
mパラメータを決定した。
【0520】
K9SB2遺伝子ライブラリのハイスループットスクリーニングアッセイ
以下を除いて実施例16に記載されるとおり、HTSを用いて変異体をスクリーニングした。アッセイ緩衝液は、2.4mM(R/S)−アセトラクテート、100mM HEPES pH6.8、10mM MgCl
2、150μM NADH又は100μM NADPH及び12.5μL 0.5×細胞溶解物からなった。
【0521】
各変異体及び陽性対照ウェル(2個/プレート)について、150μM NADHの酸化速度計測値に対する100μM NADPHの酸化速度計測値の比を計算した。変異体ウェルは、NADH速度が0.6OD/時間より高く、且つ速度比(NADPH/NADH)が0.37未満であった(陽性対照平均より3標準偏差低い)場合に、初期ヒットを含むと考えた。4947個の潜在的変異体のプールから合計218ヒットが同定された。これらの初期ヒットを統合し、さらなる分析用により小さいライブラリを形成した。
【0522】
統合した初期ヒットライブラリを生物学的トリプリケートで成長させて、上記に記載したとおり無細胞抽出物を調製してアッセイした。次に、上記のとおり変異体及び陽性対照の速度比を計算した。詳細な動態解析用に選択された最終的なヒットは、以下の基準を満たした:NADPH/NADH速度比が0.45未満であり、NADH速度が0.6OD/時間より高く、且つ3つの生物学的レプリケートのうち少なくとも2つがこれらの基準に合格。107個の変異体が同定された。
【0523】
また、データを分析して、NADH補因子によるS−アセトラクテートからDHIVへの変換速度がより高い変異体も同定した。全ての陽性対照についてNADH酸化の平均速度及び標準偏差を計算した。変異体は、NADH酸化が陽性対照の速度(2.524OD/時間)より少なくとも3標準偏差高かった場合に、潜在的ヒットと見なした。68個の変異体が同定され、配列分析により、17個が少なくとも1つのアミノ酸置換を有することが決定された。置換T93A及びT93Iは各々2回出現し、変異体2017 B12及びD6をさらなる分析用に選択している。
【0524】
二次HTSスクリーニングから同定された107個の変異体DNA配列決定を、TempliPhi(商標)(GE Healthcare)を使用することにより、プライマーpBAD−For(ATGCCATAGCATTTTTATCC;配列番号393)及びpBAD−Rev(CTGATTTAATCTGTATCAGGCT;配列番号394)で達成した。105個の配列が親と異なった。アミノ酸置換を、以下の2つの表のうち最初の表に掲載する。
【0525】
NADH速度スクリーニングから同定された68個の変異体のDNA配列決定を、TempliPhi(商標)(GE Healthcare)を使用することにより、プライマーpBAD−For(ATGCCATAGCATTTTTATCC;配列番号393)及びpBAD−Rev(CTGATTTAATCTGTATCAGGCT;配列番号394)で達成した。17個の配列が野生型と異なった。繰り返し出現した2つの置換のアミノ酸置換を、以下の2番目の表に掲載する。
【0526】
【表29】
【0527】
【表30】
【0528】
【表31】
【0529】
【表32】
【0530】
部分的に精製したK9SB2変異体タンパク質の動態解析
米国特許第8,129,162号明細書に記載されるとおりの、大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)を使用して、二次HTSスクリーニングからの107個の変異体及び陽性対照K9SB2を発現させた。アーカイブプレートからのクローンを96ディープウェルプレートに接種した。各ウェルは、解凍したアーカイブプレートからの細胞3.0μl、100μg/mlアンピシリン及び誘導物質として0.02%(w/v)アラビノースを含有するLB培地200μlを含んだ。細胞を、振盪(900rpm)しながら80%湿度37℃で一晩成長させ、遠心(4000rpm、4℃で7分)(75004251、Thermo Scientific,Rockford,IL)により回収し、後の分析のため細胞ペレットを−80℃で保存した。
【0531】
ディープウェルプレートの凍結細胞ペレットを、同時に室温で30分間解凍した。75μlの50%BugBuster(Novagen 71456,Darmstadt,独国)(v/v水中)を各々に添加し、プレートシェーカーを用いて細胞を懸濁した。50% Bug Buster中の細胞懸濁液を室温で30分間インキュベートした後、次に60℃で15分間インキュベートした。細胞残屑及び変性した易熱性タンパク質を遠心(4000rpm、4℃で15分)(75004251、Thermo Scientific,Rockford,IL)によりペレット化し、75μLの上清を平底96ウェルプレート(Corning,3370,Corning,NY)に移し、75μL 100mM HEPES(pH6.8)、100mM KCl、10mM MgCl
2で2倍希釈した。
【0532】
Coomaisse Plus(Thermo Scientific、番号23238、Rockford,IL)によるブラッドフォードアッセイを用いることにより、総タンパク量を決定した。標準としてBSAを用いた。Cary 300分光光度計(Agilent Technologies,Wilmington,DE)を使用して595nmの吸光度を決定することにより、タンパク質の濃度を計測した。
【0533】
NADH及びNADPHに対するV
max値及びK
M値を決定するため、部分的に精製したタンパク質を、様々な濃度のNADH(20、30、40、60、80、120、200及び300μM)及びNADPH(60、80、120、200、300及び400μM)でアッセイした。アッセイは、100mM HEPES(pH6.8)、10mM MgCl
2、100mM KCl及び4.8mM R/S−アセトラクテートにおいて30℃で行った。アッセイには、0.005〜0.015mg/mLの総タンパク量を添加した。Spectramax 384 Plusプレートリーダー(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を使用して340nmでのNAD(P)Hの酸化をモニタすることにより、S−アセトラクテートからDHIVへの変換速度を計測した。活性は、6220M
-1cm
-1のモル吸光係数を使用して計算した。補因子濃度に対して比活性(U/mg)をプロットすることによりV
max値及びK
m値を計算し、Kaleidagraphソフトウェア(Synergy,Reading,PA)を使用してデータをミカエリス・メンテン式にフィットさせた。
【0534】
【表33】
【0535】
【表34】
【0536】
【表35】
【0537】
実施例22:
株PNY2259の構築
本例の目的は、PNY2238におけるadh1Δ遺伝子座のkivD_Ll(y)の染色体コピーをkivD_Lg(y)に置換するために用いられるコンストラクトの構築について記載することである。
【0538】
欠失/組込みは、標的領域の上流及び下流相同領域を含み、且つ形質転換体の選択用のURA3遺伝子を含むPCR産物による相同組換えにより作成した。URA3遺伝子を相同組換えにより取り除き、スカーレスな欠失/組み込みを作成した。kivD_Lg(y)を組み込むプラスミドは、UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)をサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のADH1遺伝子座に組み込むように構築されたプラスミドから誘導した。UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)をADH1遺伝子座に組み込むために用いるプラスミドの構築を以下に記載する。プラスミドはpUC19−URA3MCSに構築した。
【0539】
ADH1欠失/UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)組込みプラスミドの構築
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)由来のkivDコード領域、kivD_Ll(y)を、pLH468(配列番号139)を鋳型として使用して、PmeI制限部位を含むプライマーoBP562(配列番号197)、及びADH1断片Bの5’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP563(配列番号198)で増幅した。ADH1断片Bを、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)CEN.PK 113−7DゲノムDNAから、kivD_Ll(y)の3’末端と相同性を有する5’テールを含むプライマーoBP564(配列番号199)、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP565(配列番号200)で増幅した。PCR産物をPCR精製キット(Qiagen;Valencia,CA)で精製した。オーバーラップPCRにより、kivD_Ll(y)とADH1断片B PCR産物とを混合し、且つプライマーoBP562(配列番号197)及びoBP565(配列番号200)で増幅して、kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを作成した。得られたPCR産物をPmeI及びFseIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼによってpUC19−URA3MCSの対応する部位にライゲートした。ADH1断片Aを、ゲノムDNAから、SacI制限部位を含むプライマーoBP505(配列番号201)、及びAscI制限部位を含むプライマーoBP506(配列番号202)で増幅した。ADH1断片A PCR産物をSacI及びAscIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。ADH1断片Cを、ゲノムDNAから、PacI制限部位を含むプライマーoBP507(配列番号203)、及びSalI制限部位を含むプライマーoBP508(配列番号204)で増幅した。ADH1断片C PCR産物をPacI及びSalIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、ADH1断片A−kivD_Ll(y)−ADH1断片Bを含むプラスミドの対応する部位にライゲートした。ハイブリッドプロモーターUAS(PGK1)−P
FBA1(配列番号406)を、ベクターpRS316−UAS(PGK1)−P
FBA1−GUSから、AscI制限部位を含むプライマーoBP674(配列番号205)、及びPmeI制限部位を含むプライマーoBP675(配列番号206)で増幅した。UAS(PGK1)−P
FBA1 PCR産物をAscI及びPmeIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、kivD_Ll(y)−ADH1断片ABCを含むプラスミドの対応する部位にライゲートして、pBP1181を作成した。
【0540】
pBP1716及びpBP1719の構築
kivD_Ll(y)をADH1欠失/UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Ll(y)組込みプラスミドpBP1181から除去した。プラスミドをPmeI及びFseIで消化し、大きいDNA断片をアガロースゲルと、続いてゲル抽出キット(Qiagen)で精製した。ADH1断片Bを、pBP1181から、PmeI制限部位を含むプライマーoBP821(配列番号407)、及びFseI制限部位を含むプライマーoBP484(配列番号408)で増幅した。ADH1断片B PCR産物をPmeI及びFseIで消化し、T4 DNAリガーゼにより、ゲル精製した大きいDNA断片の対応する部位にライゲートした。kivD_Ll(y)の3’500bpに対応するPCR断片を、PNY1528においてkivD_Ll(y)を標的化して欠失させるため、得られたベクターにクローニングした。この断片を、pBP1181から、NotI制限部位を含むプライマーoBP822(配列番号409)、及びPacI制限部位を含むoBP823(配列番号410)で増幅した。断片をNotI及びPacIで消化し、適切な制限酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼにより、kivD_Ll(y)欠失を有する上記のプラスミドにおけるURA3の下流の対応する部位にライゲートした。得られたプラスミドをpBP1716と命名した。
【0541】
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現用にコドン最適化したリステリア・グレイ(Listeria grayi)由来のkivDコード領域(配列番号411)、kivD_Lg(y)を、DNA2.0(Menlo Park,CA)により合成した。kivD_Lg(y)は、PmeI制限部位を含むプライマーoBP828(配列番号412)、及びPmeI制限部位を含むoBP829(配列番号413)で増幅した。得られたPCR産物をPmeIで消化し、適切な酵素で消化した後、T4 DNAリガーゼにより、pBP1716の対応する部位にライゲートした。クローニングした遺伝子の向きを、プライマーFBAp−F(配列番号414)及びoBP829(配列番号413)によるPCRによって確認した。正しい向きのkivD_Lg(y)を有する単離物をpBP1719と命名した。
【0542】
株PNY2259の構築
kivD_Ll(y)欠失/kivD_Lg(y)組込みカセットを、pBP1719からプライマーoBP505(配列番号201)及びoBP823(配列番号410)で増幅した。PNY2238のコンピテント細胞を作製し、Frozen−EZ酵母形質転換IIキット(Zymo Research;Orange,CA)を使用して、PCR産物で形質転換した。形質転換混合物を、30℃の1%エタノール添加ウラシル不含合成完全培地に播いた。形質転換体株を、プライマーURA3−end F(配列番号222)及びHY−50(配列番号415)を使用するPCR(JumpStart(商標)REDTaq(著作権)ReadyMix(商標))によりスクリーニングした。形質転換体をYPE(1%エタノール)で成長させて、1%EtOHを補足した、且つ5−フルオロオロチン酸(0.1%)を含有する30℃の合成完全培地に播き、URA3マーカーが欠損した単離物を選択した。kivD_Ll(y)の欠失及びkivD_Lg(y)の組込みを、プライマーHY−50及びoBP834(配列番号416)によるPCRによって確認した。PNY2238におけるkivD_Ll(y)と同じ遺伝子座にkivD_Lg(y)を含み、且つ同じプロモーターから発現した一つの正しい単離物を、PNY2259と命名した。
【0543】
実施例23
NADHに対して補因子選択性を有する変異体を同定するための2つの部位飽和遺伝子ライブラリの構築
実施例4では、縮重コドンNNKを有するプライマーを使用した(Nは4つのヌクレオチドA、C G及びTの全てを表し、一方、KはG及びTを示す)。本例では、K9 KARIの53位、56位及び58位に対するA、C、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、V、W、又はYの個別のアミノ酸変化それぞれをコードするプライマーを含むプライマー混合物を用い、S、T、K、及びRへの置換は、これらの位置に好ましくないため除外した。K9 KARIの3つのNADPHリン酸結合部位(53位、56位及び58位)を標的化する飽和ライブラリのサイズは、4,096である(実施例4のようにNNK縮重コードプライマーを使用する32×32×32、すなわち32,768個の変異体と比較される)。
【0544】
一つのライブラリ構築方法は、58位から開始した。初めに、同じ位置を標的とするプライマー全てを混合することにより、プライマー混合物を作製した(例えば、プライマー混合物K9_53fを、等モルの全16個の、53位を標的とするフォワードプライマー(以下の表に掲載する)を混合することにより作製した。同様に、K9_56f及びK9_58fを調製した。共通のリバースプライマーは、K9_191G_112210r(配列番号174):GGTTTCAGTTTCGCCTCTGAAGGTAGTTTC(この例ではSRと呼ばれる)である。初めに、58位の突然変異をPCRによってAS6F1に導入した。突然変異生成手順は、実施例4に記載される手順と同様である。簡潔に言えば、K9_58f及びSRをリン酸化した。次にリン酸化したプライマーを直接用いることにより、USB Change_Itキット(USB Corporation,Cleveland,OH、番号78480)を使用してAS6F1に58位の突然変異を導入した。Dpn Iで鋳型を除去した。クリーンアップしたPCR産物(Zymo DNA Clean & Concentrator−5;Zymo Research Corporation,Irvine,CA、カタログ番号D4003)をKOBW−3a細胞に形質転換した。37℃のインキュベーターにおいてLB寒天プレート上で一晩成長させた後、全ての細胞を回収し、Qiaprep Spinミニプレップキット(Qiagen Inc.Valencia,CA、カタログ番号27106)を使用してDNAを抽出した。
【0545】
次に抽出したDNAを鋳型として用いることにより、58位の突然変異生成と同じくK9_56f及びSRを使用して56位の突然変異を導入した。最後に53位の突然変異を同様に導入した。3つ全ての位置(53位、56位及び58位)の突然変異がAS6F1に導入された後、この新しいライブラリを、実施例4に記載されるものと同じくスクリーニングした。一部の選択された突然変異体を以下の表に掲載する。
【0546】
他の方法は53位から開始した。以下の表に掲載するプライマーを使用して、プライマー混合物K9_56r及びK9_58rを同様に調製した)。共通のフォワードプライマーは、pBAD_266f:CTCTCTACTGTTTCTCCATACCCG(配列番号634;この例ではSFと呼ばれる)である。初めに53位の突然変異をPCRによってAS6F1に導入した。突然変異生成手順は、AS6F1を鋳型として使用し、且つK9_53f及びSRを2つのPCRプライマーとして使用する上記に記載されるものと同様である。得られた(53位で)変異したDNAを鋳型として使用し、K9_56r及びSFを突然変異生成プライマーとして使用して、56位に突然変異を導入した。最後に、K9_58r及びSFを使用して、58位における突然変異を同様に導入した。3つ全ての位置(53位、56位及び58位)の突然変異がAS6F1に導入された後、上記と同じくこの新しいライブラリをスクリーニングした。一部の選択された突然変異体を以下の表に掲載する。
【0547】
【表36】
【0548】
【表37】
【0549】
【表38】
【0550】
実施例24
ald6Δ株及びイソブタノール生成誘導体の構築
ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)由来のxpk1及びeutD遺伝子用の発現カセットを含むpRS426::GPD−xpk1+ADH−eutD(配列番号383)からの5.3kb(BglII/EcoRV)DNA断片を、上記の実施例9に記載されるpUC19::ald6D::loxP−URA3−loxPベクターのSnaBI部位において、ALD6隣接配列間に付加した。ライゲーション反応物を大腸菌(E.coli)Stbl3細胞に形質転換し、これをLB Ampプレート上でインキュベートして形質転換体を選択した。xpk1−eutDカセットの挿入をPCR(プライマー)により確認した。陽性クローン(pUC19::Δald6::URA3::xpkS)を得た。
【0551】
上記に記載されるベクターをAhdIで線状化し、Zymo Research Frozen−EZ酵母形質転換キット(カタログ番号T2001)により、2.0mL YPE(酵母エキス、ペプトン、1%エタノール含有)培地でのさらなる2.5時間の増殖インキュベーションを含む製造者のプロトコルに対する変更を伴い調製したPNY1507(本明細書に記載される)細胞に形質転換した。1%エタノールを炭素源として供給したウラシル不含合成完全培地に播くことにより、形質転換体を得た。パッチした形質転換体を、プライマーN1090及びN1213(配列番号779及び242)を使用して、PCRによるスクリーニングにより欠失/組込みを確認した。Creリコンビナーゼ(pRS423::GAL1p−Cre;配列番号271)を有するプラスミドを、ヒスチジンマーカー選択を用いて株に形質転換した。形質転換体を0.5%ガラクトース添加YPEにおいて継代した。コロニーを、5−FOAに対する耐性(URA3マーカーの欠損)及びヒスチジン栄養要求性(Creプラスミドの欠損)についてスクリーニングした。隣接loxP部位を介してURA3遺伝子が正しく除去されたことを、プライマーN1212及びN1214(配列番号241及び281)によるPCRによって確認した。最後に、alsS組込みプラスミド(配列番号780)を、含まれたジェネティシン選択マーカーを使用してこの株に形質転換した。組み込み体を、プライマーN160SeqF5及びoBP512(配列番号388及び337)を用いて確認した。
【0552】
この株に、酢酸リチウム形質転換(“Methods in Yeast Genetics” 2005.Amberg,Burke and Strathernのプロトコル#2)によってプラスミドpYZ090ΔalsS及びpBP915(配列番号371及び182)を形質転換した。形質転換体を、エタノールを炭素源として含むヒスチジン及びウラシル不含合成完全に播くことにより選択した。2%グルコース及び0.05%エタノールを含むヒスチジン及びウラシル不含合成完全に形質転換体をパッチし、次に再パッチした。成長及びイソブタノール生成について6つのクローンを評価した。これらのうちの1つを、PNY2216と命名した。
【0553】
実施例25
S.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211からのYMR226c欠失(PNY2248の構築)
S.セレビシエ(S.cerevisiae)株BY4743 ymr226cΔ::KanMX4(ATCC 4020812)において利用可能なPCR増幅された線状KanMX4ベースの欠失カセットを使用する相同組換えにより、遺伝子YMR226cをS.セレビシエ(S.cerevisiae)株PNY2211(実施例9に記載される)から欠失させた。フォワード及びリバースPCRプライマーN1237(配列番号784)及びN1238(配列番号785)により、染色体XIIIから2,051bpのymr226cΔ::KanMX4欠失カセットが増幅された。PCR産物は、ymr226cΔ::KanMX4欠失カセットに隣接して、株PNY2211で天然のYMR226c遺伝子座に隣接する配列と100%相同であるそれぞれ253bp及び217bpの上流及び下流配列を含んだ。隣接相同配列で組換え及び遺伝子交換が起こると、有効にYMR226c遺伝子が欠失し、ymr226cΔ::KanMX4欠失カセットが組み込まれる。
【0554】
約2.0μgのPCR増幅産物を、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202(2005))に以前記載された酢酸リチウム法を用いてコンピテントにされた株PNY2211に形質転換し、形質転換混合物をYPE+ジェネティシン(50μg/mL)に播いて30℃でインキュベートすることにより、ymr226cΔ::KanMX4カセットが組み込まれた細胞を選択した。形質転換体を、隣接する内向き染色体特異的プライマーN1239(配列番号243)と対を形成する5’外向きKanMX4欠失カセット特異的内部プライマーN1240(配列番号786)及び隣接する内向き染色体特異的プライマーN1242(配列番号244)と対を形成する3’外向きKanMX4欠失カセット特異的プライマーN1241(配列番号787)によるPCRにより、ymr226cΔ::KanMX4についてスクリーニングした。陽性PNY2211 ymr226cΔ::KanMX4クローンが得られ、そのうちの1つをPNY2248と命名した。
【0555】
実施例26
YMR226cノックアウトにおけるDHMB収率が減少したイソブタノールの生成
PNY2211 ymr226cΔ::KanMX4形質転換体及び非欠失対照(天然YMR226cを有するPNY2211)を、初めに、Methods in Yeast Genetics(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY(2005))に記載されるクイック・アンド・ダーティ(Quick and Dirty)酢酸リチウム形質転換法によってイソブタノール経路含有プラスミドpYZ090ΔalsS(配列番号371)及びpBP915(配列番号182)を同時に導入することにより、グルコース培地におけるブタノール生成について試験した。プラスミド選択は、エタノールを含有する選択プレート(1.0%エタノールを含む、−his −ura合成完全培地)でのヒスチジン及びウラシル栄養要求性に基づいた。3〜5日後、最もロバストな成長を示すいくつかの形質転換体を、SD 2.0%グルコース+0.05%エタノール −his −uraにパッチすることによりグルコース培地に適合させ、300℃で48〜72時間インキュベートした。最もロバストな成長を示す3つのストリークを使用して、125mLのベント付きフラスコにおけるSD0.2%グルコース+0.2%エタノール −his −ura中の10mLのシード培養物を接種し、30℃、250rpmで約24時間成長させた。次に細胞を、125mlの密栓したフラスコにおける2%グルコース+0.05%エタノールを含む−his −ura合成完全培地に継代培養し、30℃で48時間インキュベートした。接種後及び48時間のインキュベーション後に回収した培養上清をHPLCによって分析することによりイソブタノールの生成を決定し、及びLC/MSによってDHMBを定量化した。対照株は、グルコース1モルあたり0.03〜0.07モルのモル収率でDHMBを生成することが観察された。ymr226cΔ株の培養上清では、DHMBに対応するピークは観察されず、そのうちの1つをPNY2249と命名した。
【0556】
実施例27
酵母ノックアウトライブラリを用いた、アセト乳酸レダクターゼ(ALR)活性酵素をコードする遺伝子の同定
Open Biosystems(登録商標)(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAの一部門)から入手可能な、株BY4743に由来する6000個超の酵母株のノックアウト(「KO」)コレクションから、95個の候補デヒドロゲナーゼ遺伝子ノックアウト株を選択した。ノックアウト株のスターター培養物を、96ウェルディープウェルプレート(Costar 3960、Corning Inc.,Corning NY、又は同様のもの)において富栄養培地YPD上で成長させ、0.67%酵母窒素原基礎培地、0.1%カザミノ酸、2%グルコース、及び0.1M K
+−MESを含有する培地、pH5.5において、約0.3の出発OD 600nmで継代培養した。DHMB及びDHIV計測のため、5日間の期間にわたり試料を採取した。DHIV及び2つのDHMB異性体を分離し、Waters(Milford,MA)AcquityTQDシステムでの液体クロマトグラフィー質量分析(「LC/MS」)により、Atlantis T3(部品番号186003539)カラムを使用して定量化した。カラムは30℃に維持し、流量は0.5ml/分であった。A移動相は水中0.1%ギ酸であり、B移動相はアセトニトリル中0.1%ギ酸であった。各ランは、99%Aで1分間、25%Bまでの1分間にわたる直線勾配、続いて99%Aで1分間からなった。Waters ACQ_TQD(s/n QBA688)質量分析検出器により、m/z=133(ネガティブESI)、コーン電圧32.5Vのピークについてカラム溶出液をモニタした。いわゆる「ファストDHMB」は、典型的には1.10分で現れ、続いてDHIVが1.2分で現れ、及び「スロー」DHMBは1.75分で現れる。ベースライン分離を達成し、1Mのストック水溶液から求めた標準溶液の分析値を参照することにより、DHIVのピーク面積をμM DHIV濃度に変換した。これらの計測値から、DHMBレベルの変化のほとんどは最初の48〜60時間に起こったとが示され、従って続く実験では、およそその時点で単一の試料を収集した。この実験では、ファストDHMBはスローDHMBより大幅に高いレベルで認められ、スローDHMBは常に検出可能というわけではなかった。多くの培養物におけるファストDHMBに対するDHIVの比は約3であったが、YMR226C遺伝子が欠損した株は、一貫して極めて低濃度のファストDHMBと通常のDHIVを示し、従ってDHIV/ファストDHMB比は約100であった。これから、この背景ではYMR226Cpが主要なALRであることが示唆された。
【0557】
この背景においてYMR226Cpが主要なALRであることを確認するため、ALR及びKARIのインビトロレベルを、ymr226c欠失株(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC),Manassas VA、ATCC番号4020812)、及びその親のBY4743(ATCC番号201390;アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection),Manassas VA)で試験した。6ml YPDが入った50mlチューブをYPD寒天プレートから接種し、一晩成長させた(30℃、250rpm)。細胞をペレット化し、水で1回洗浄し、酵母プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche,Basel,スイス、カタログ番号11836170001、供給業者の指示どおりに使用、10mlの緩衝液あたり1錠)を含有する1ml酵母細胞質緩衝液(Van Eunen et al.FEBS Journal 277:749−760(2010))に再懸濁した。トルエン(0.02ml、Fisher Scientific,Fair Lawn NJ)を添加し、透過処理のため、チューブをVortex Genie 2シェーカー(Scientific Industries,Bohemia NY、モデルG−560)において最高速度で10分間振盪した。チューブを30℃の水浴中に置き、以下の終濃度となるよう基質を添加した:(S)−アセトラクテート(以下の実施例29に記載するとおり酵素的に作製した)が9.4mM、NADPH(Sigma−Aldrich,St.Louis MO)0.2mM+約10mMグルコース−6−ホスフェート及び2.5U/mlロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(Sigma,St.Louis,MO、カタログ番号G8404)からなるNAD(P)H−再生系。所定の時間間隔で2%ギ酸の0.15mlアリコートにアリコート(0.15ml)を添加して反応を停止させた。次に試料を、DHIV及び双方のDHMB異性体について上記に記載したとおりLC/MSにより分析した;ファストDHMB及びDHIVのみが観察された。2つの株における2つの酵素の比活性を表31に示す。
【0558】
【表39】
【0559】
データから、YMR226C遺伝子産物がALR活性の99%超を占めたことが示唆される。
【0560】
実施例28
酵母過剰発現ライブラリを使用した、アセト乳酸レダクターゼ(Acetolactase Reductase)(ALR)活性酵素をコードする遺伝子の同定
誘導性プロモーターの制御下にある、既知の酵母遺伝子+C末端タグを含むプラスミドを各々が有する5000個超のY258形質転換体の「酵母ORF」コレクション(Open Biosystems(登録商標)、Thermo Fisher Scientific,Waltham,MAの一部門)から、デヒドロゲナーゼ活性に関連する遺伝子を含むプラスミドを有する96株を、供給業者(Open Biosystems(登録商標))が推奨する成長及び誘導プロトコルを適合させることにより、96ウェルフォーマットで成長させた。上記に記載したとおり細胞をペレット化してトルエンで透過処理し、濃縮基質混合物を添加して、実施例27にあるとおりの終濃度を得た。所定時間の試料を採取し、DHIV及び双方のDHMB異性体について分析した。ALR/KARI比を計算して比較した。比の高い株が、ALR活性の過剰生成の候補であった。ファストDHMBとDHIVとの相対的形成速度のデータをMinitab(登録商標)(Microsoft Inc.,Redmond,WA)の箱ひげ図で表すと、比の半分は約9〜13に含まれ、残りのほとんどは3及び19に含まれた。外れ値として特定された例外には、YER081W、YIL074C、YMR226C、YBR006W、及びYOR375Cが含まれ、これらについてはALR/KARI比は22〜40に含まれた。同様の、スローDHMBとDHIVとの相対的形成速度の分析では、比の半分が9〜11に含まれたが、YMR226C、YPL275W、YER081W、及びYOL059Wは、比が13〜25の外れ値として現れた。従って、YMR226C及びYER081Wの過剰発現により、双方のDHMB合成が増加した。加えて、YIL074C、YBR006W、及びYOR375CではファストDHMB合成が増加し、YPL275W及びYOL059WではスローDHMB合成が増加した。過剰発現において同定された遺伝子のゲノムDNA配列(イントロンを含み得る)及びORF翻訳配列は、表6に提供する。
【0561】
実施例29
DHMBによるKARIの阻害
(S)−アセトラクテートの酵素生成
(S)−アセトラクテートをDHMB合成の出発物質として使用した。(S)−アセトラクテートは、以下のとおり酵素的に作製した。IPTG制御下でクレブシエラ属(Klebsiella)BudBを発現するように修飾された大腸菌(E.coli)TOP10株(Invitrogen,Carlsbad,CA)(米国特許第7,851,188号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される)に以前記載されている;この特許の実施例9を参照のこと)を、酵素供給源として使用した。これを200〜1000mlの培養容積で成長させた。例えば、200mlを、0.5L円錐フラスコ中の0.1mg/mlアンピシリン(Sigma,St.Louis,MO)を含有するルリアブロス(Mediatech,Manassas,VA)で成長させ、フラスコは37℃、250rpmで振盪した。OD 600が約0.4のとき、イソプロピルチオガラクトシド(Sigma,St.Louis,MO)を0.4mMとなるように添加し、成長を2時間継続した後、遠心により細胞を回収して、湿重量約1gの細胞を得た。同様に、約0.5〜5gの湿潤細胞の規模で部分的精製を実施した。例えば、約0.5gの細胞を、25mM Na−MES pH6を含有する2.5ml緩衝液に懸濁し、0℃で超音波処理により破壊し、遠心により清浄化した。粗抽出物に、0.1mMチアミンピロリン酸、10mM MgCl
2、及び1mM EDTA(全て、Sigma,St.Louis,MOから)を補足した。次に、0.07mlの10% w/v硫酸ストレプトマイシン水溶液(Sigma,St.Louis,MO)を添加し、試料を56℃の水浴中で20分間加熱した。これを遠心により清浄化し、硫酸アンモニウムを50%飽和となるよう添加した。混合物を遠心し、0.5mlの25mM Na−MES、pH6.2にペレットを取り、さらなる特性決定なしに使用した。アセトラクテート合成もまた様々な規模で実施した。大量の調製は以下のとおり行った:5.5gのピルビン酸ナトリウムを、約45mlとなるように25mM Na−MES、pH6.2に溶解し、10mM MgCl2、1mM チアミンピロリン酸、1mM EDTA(全て(Sigma,St.Louis,MOから)、25mM 酢酸ナトリウム(Fisher Scientific,Fair Lawn NJ)、及び0.25mlのBudB調製物を補足した。この混合物を室温でpHメーター下に撹拌した。反応が進むにつれCO2が発生し、pHが上昇した。ピルビン酸(Alfa,Ward Hill,MA)を蠕動ポンプによって徐々に添加して、pHを6〜7に維持した。pHの上昇に伴い酵素反応は低速になるが、6未満に降下させてしまうと、アセト乳酸の脱カルボキシル化が問題になる。反応が完了すると、混合物を−80℃で保存した。
【0562】
DHMBの合成
(S)−アセトラクテートからDHMBを化学的に合成した。約0.8M、pH約8の、3mlの粗アセトラクテート調製物を、1.2当量のNaBH
4(Aldrich Chemical Co,Milwaukee,WI)で処理した。反応物を室温に一晩静置してから、2つに分けて、Biogel P−2(Bio−Rad,Hercules,CA)の60cm×1cm直径のカラムにおいて、移動相として水を使用して2分量で脱塩した。混合したDHMBを含む画分を回転蒸発により濃縮し、硫酸によってpH2.2に調整した。
【0563】
HPLCシステム(LKB 2249ポンプ及び勾配コントローラ(LKB、現在はGeneral Electric,Chalfont St Giles,英国の一部門)と、Hewlett−Packard(現在はAgilent,Santa Clara,CA)1040A UV/vis検出器とからなる)を使用し、Waters Atlantis T3(5um、4.6×150mm)を室温で0.2%ギ酸水溶液、pH2.5中、流量0.3mL/分でランさせて、215nmでのUV検出により、DHMBのジアステレオマーを分離した。「ファスト」DHMBは8.1分で溶出し、「スロー」DHMBは13.7分で溶出した。DHIVは存在しなかった。プールした画分を取ってほぼ乾固させ、トルエンと同時蒸発させて残留するギ酸を除去した。次に残渣を水に溶解し、トリエチルアミン(Fisher,Fair Lawn,NJ)で塩基性にした。
【0564】
DHMBの濃度決定及び絶対構造
精製したDHMB溶液の濃度を以下のとおり決定した。濃度は、NaBH
4還元で用い
られるアセトラクテートのmmol数に基づき推定した。DHMBの部分量に対し、既知量の安息香酸ナトリウム(固体安息香酸(ACSグレード、Fisher Scientific,Fair Lawn,NJ)をNaOH水溶液に溶解させることにより作製した))を添加して二成分混合物を(ほぼ)等モル量で得た。同様のDHIV試料もまた、カスタム合成(Albany Molecular Research,Albany NY)によって入手した固体ナトリウム塩から調製した。試料を数回、D
2O(Aldrich,Milwaukee,WI)と同時蒸発させ、D
2Oに再溶解させた。積分プロトンNMRスペクトルを得て、それを用いて安息香酸塩に対するDHIV又はDHMBのモル比を決定した。DHMBのNMRスペクトルをCDCl
3中の遊離酸についての文献スペクトル(Kaneko et al.,Phytochemistry 39:115−120(1995))と比較することにより、ファストDHMBはエリスロ異性体であったことが示された。酵素的に合成したアセトラクテートはC−2に(S)配置を有するため、ファストDHMBは2S,3S配置を有する。スローDHMBはトレオ2S,3R配置を有する。
【0565】
NMR試料の希釈物もまた、別個に調製した安息香酸溶液を標準として使用して、LC/MSにより分析した。安息香酸、DHIV、及び2つのDHMB異性体を分離し、上記に記載したとおり、Atlantis T3(部品番号186003539)カラムを使用して、Waters(Milford,MA)AcquityTQDシステムでLC/MSにより定量化した。安息香酸をm/z=121で検出し(ネガティブESI)、2.05分で現れた。混合物中における安息香酸塩の濃度は、予測された値の実験の不確かさの範囲内であった。この実験からはまた、DHMBの異性体が、機器の全応答範囲にわたり、LC/MSにおけるDHIVの感度(すなわち、MSピーク面積実測値/注入nmol)の約80%であったことも示された。従って、DHIV標準を使用して、細胞抽出物又は酵素反応物中に存在するDHMBを定量化する場合、見かけのDHMB濃度には1.25を乗じなければならない。
【0566】
DHMBによるKARIの阻害計測
ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)(配列番号864)由来のいずれかの遺伝子によりコードされる精製KARI、JEA1として知られる蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)KARIの誘導体(配列番号799;米国特許出願公開第2010/0197519号明細書(これは全体として参照により本明細書に援用される))、又はK9D3として知られるアナエロスティペス・カカエ(Anaerostipes caccae)KARIの変異体(配列番号788)を、30℃に設定したTCC240A温度制御ユニットを備える島津(京都、日本)UV160U機器において、分光光度アッセイでDHMB阻害に対するそれらの感受性について試験した。緩衝液は、10mM MgCl
2及び1mM EDTAを含有する0.1M K+ Hepes、pH6.8であった。NADPHは0.2mMで存在し、ラセミアセトラクテートは3mM又は0.725mMのいずれかの(S)異性体で存在した。ファストDHMB又はスローDHMBのいずれかの存在下及び非存在下におけるNADPH酸化速度を計測した。各試料のV
maxを、速度実測値及び既知のアセトラクテートK
Mからミカエリス・メンテン式を用いて計算した。DHMBの存在下における各計測値について、アセトラクテートに対する競合的阻害用に改良したミカエリス・メンテン式を用いて(ミカエリス・メンテン式のK
M項に(1+[I]/K
i)を乗じ、この式をK
iについて解く)、容積K
iを推定した。結果はNMR実験の完了時にmMに変換した。それを表32に示す。
【0567】
【表40】
【0568】
実施例30
DHMBによるDHADの阻害
Szamosi et al.,Plant Phys.101:999−1004(1993)により記載されるとおりの比色アッセイの変法を用いることにより、スタフォコッカス・ミュータンス(Staphococcus mutans)由来の精製したジヒドロキシ酸デヒドラターゼ(DHAD)を、ジヒドロキシイソバレレート(DHIV)から2−ケトイソバレレート(2−KIV)への変換のDHMBによる阻害について試験した。このアッセイは、30℃に維持される加熱ブロックに置いた2mLエッペンドルフ試験管において行った。アッセイ混合物の最終容積は0.8mLで、100mM Hepes−KOH緩衝液、pH6.8、10mM MgCl
2、0.5〜10mM DHIV、0〜40mM DHMB、及び18μg DHADを含んだ。アッセイは、10倍濃縮した基質ストックを添加することにより開始した。0.1分及び30分の時点で試料を取り出し(0.35mL)、第2のエッペンドルフ試験管において0.05%の2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(Aldrich)を含む0.35mL 0.1N HClに混合することにより反応を停止させた。室温で30分間インキュベートした後、0.35mLの4N NaOHを混合物に添加し、混合し、遠心機(Beckman−Coulter Microfuge 18)において15,000×Gで2分間遠心した。次に、540nmでの溶液の吸光度を、Cary 300 Bio UV−Vis分光光度計(spectrophometer)(Varian)を使用して1cm経路長キュベットで計測した。真正の2−KIV(Fluka)を使用した標準曲線に基づき、0.28mM 2−KIVにより540nmにおける1OD吸光度を求めた。ファストDHMB又はスローDHMBのいずれかの存在下及び非存在下で、2−KIVの形成速度を計測した。いずれの形態のDHMBも、DHIVの競合的阻害剤のように挙動した。これらの阻害定数(Ki)を、単純な競合的阻害のミカエリス・メンテン式から計算した:v=S×V
max/(S+K
M×(1+I/K
i))、式中、vは2−KIV形成速度の計測値であり、SはDHIVの初期濃度であり、V
maxは10mM DHIV及びDHMB無しで実測した速度から計算した最大速度であり、K
Mは0.5mMの予め計測された定数であり、及びIはDHMBの濃度である。DHMBのファスト及びスロー異性体の阻害定数の計算値は、それぞれ7mM及び5mMであった。
【0569】
実施例31
YMR226C相同体の同定
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のYMR226C遺伝子の相同体を、GenBank非冗長ヌクレオチドデータベースのBLAST検索(blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)、サッカロミセス属(Saccharomyces)ゲノムデータベースにおける真菌ゲノムBLAST検索ツール(www.yeastgenome.org/cgi−bin/blast−fungal.pl)、及びGenolevures ProjectのBLASTツール(genolevures.org/blast.html#)によって求めた。YMR226Cと高度な配列同一性を示す18酵母種のユニーク配列が同定され、関連するデータベースの受託記録から、これらの遺伝子の完全なORFを復旧した。これらのORFによりコードされるポリペプチド配列を、Vector NTI(Invitrogen,Carlsbad CA)のトランスレーション(Translation)機能により決定した。ポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列を、以下の表33に示す。この表には、酵母種、ヌクレオチドデータベース受託番号、並びにDNA及びタンパク質配列を提供する。S.クルイベリ(S.kluyveri)の配列は、提供される受託番号でGenolevuresデータベースにある;他はGenBankにある。配列間のパーセント同一性は表34に示す。
【0570】
18個のORFを、AlignX(Vector NTIを使用してアラインメントした;アカパンカビ(Neurospora crassa)由来の推定NADP+依存性デヒドロゲナーゼをコードする遺伝子(XM_957621、GenBank BLAST検索でYMR226Cヌクレオチド配列を使用して同定された)を、外群として使用した。得られた系統樹を
図11に示し、配列アラインメントを
図12に示す。
【0571】
これらの相同体のYMR226Cとの配列同一性は、最低55%(ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe))乃至最大90%(S.パラドクサス(S.paradoxus))の範囲である。BLAST検索からは、484塩基対にわたり92%の配列同一性を有するS.パストリアヌス(S.pastorianus)(受託番号CJ997537)由来のcDNAも明らかとなったが、この種はS.バヤヌス(S.bayanus)(そのYMR226C相同体はS.セレビシエ(S.cerevisiae)配列と82%の同一性を示す)との間のハイブリッドであり、利用可能なORF配列が一部のみであったため、この配列は比較に含めなかった。カノニカルな実験室株S288C由来のYMR226C配列を、12個の他のS.セレビシエ(S.cerevisiae)株由来の配列と比較したところ、わずか4つの一塩基多型が認められたに過ぎず(配列同一性99.5%)、これが当該種において高度に保存された遺伝子であることを示している。
【0572】
【表41】
【0573】
【表42】
【0574】
実施例32(予測的)
酵素アッセイを用いたイソブチルアルデヒドをイソ酪酸に変換する能力についてのS.セレビシエ(S.cerevisiae)由来のアルデヒドデヒドロゲナーゼのスクリーニング
この例は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)由来のどの内因性アルデヒドデヒドロゲナーゼがイソブチルアルデヒドをイソ酪酸に酵素変換できるかを決定する方法を実証する。
【0575】
既知のアルデヒドデヒドロゲナーゼ酵素に個別の破壊を含むS.セレビシエ(S.cerevisiae)株を、ATCC:BY4741 Δald2::kanMX4(ATCC番号4000753);BY4741 Δald3::kanMX4(ATCC番号4000752);BY4741 Δald4::kanMX4(ATCC番号4001671);BY4741 Δald5::kanMX4(ATCC番号4000213);及びBY4741 Δald6::kanMX4(ATCC番号4002767)から得る。
【0576】
上記の欠失株を、初めに、30℃の5mlのYPD培地が入ったチューブにおいて一晩成長させる。5mlの一晩培養物を500mlフラスコ中の100mlの培地に移し、220rpmで振盪しながら30℃でインキュベートする。培養物が600nmで1〜2O.D.に達したところで培養物を収集する。試料を10mlの20mMトリス(pH7.5)で洗浄し、次に1mlの同じトリス緩衝液に再懸濁する。試料を、0.1mmシリカ(Lysing Matrix B,MP biomedicals)が入った2.0mlチューブに移す。次に細胞をビーズビーター(BIO101)で破壊する。微量遠心機において13,000rpm、4℃で30分間遠心することにより、上清を得る。典型的には、一回のアッセイで0.06〜0.1mgの粗抽出タンパク質を使用する。粗抽出物中のタンパク質は、クーマシー染色によるブラッドフォードアッセイにより決定した。
【0577】
Sigma−Aldrich及びBostian and Betts(Bostian,K.A.and Betts,G.F.(1978)Biochemical Journal 173,773−786)により提供されるプロトコルに従い、アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性を計測する。上記の欠失株からの粗抽出物及び市販のアルデヒドデヒドロゲナーゼを、この方法を用いて試験する。
【0578】
代替的アッセイは、1〜30mMの濃度のイソブチルアルデヒドを、密封したガラスGCバイアル中の約0.1mgの粗抽出タンパク質に添加し、それを30℃で30分間インキュベートすることである。次に抽出物を0.22μmスピンフィルタ(Corning、カタログ番号8169)を用いて3000rpmで3分間遠心し、GC−MS分析のため、ろ液をGCバイアルに移す。イソブチルアルデヒド及びイソ酪酸を検出する。
【0579】
GC方法は、Agilent(Santa Clara,CA)の検出用の5975質量分析器及びDB−1701カラム(30m×0.25mmID、0.25μmフィルム)を備えたAgilent 7890 GCを利用する。キャリアガスは1.0mL/分の一定流量のヘリウムである;注入器スプリットは250℃で1:10である;オーブン温度は40℃で1分間、10℃/分で40℃から120℃、及び30℃/分で120℃から240℃である。イソブチルアルデヒド及びイソ酪酸の同定及び定量化のため、MS検出をフルスキャンモードで使用する。以下の化合物の検量線を作成する:イソブチルアルデヒド、イソ酪酸、及びイソブタノール。
【0580】
実施例33
S.セレビシエ(S.cerevisiae)におけるイソブタノール経路遺伝子発現用の発現ベクターの構築
pLH475−JEA1構築
酵母においてALS及びKARIを発現させるため、pLH475−JEA1プラスミド(配列番号419)を構築した。pLH475−JEA1は、以下のキメラ遺伝子を含むpHR81ベクター(ATCC番号87541)である:1)CUP1プロモーター(配列番号789)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のアセト乳酸シンターゼコード領域(AlsS;配列番号790;タンパク質配列番号791)及びCYC1ターミネーター2(配列番号792);2)ILV5プロモーター(配列番号793)、Pf5.IlvC−JEA1コード領域及びILV5ターミネーター(配列番号794);及び3)FBA1プロモーター(配列番号795)、S.セレビシエ(S.cerevisiae)KARIコード領域(ILV5;配列番号796;タンパク質配列番号797)及びCYC1ターミネーター(配列番号798)。
【0581】
Pf5.IlvC−JEA1コード領域は、蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)に由来するKARIをコードする配列であるが、米国特許出願公開第2009/0163376号明細書及び同第2010/0197519号明細書(これらは全体として参照により本明細書に援用される)に記載された突然変異を含む。Pf5.IlvC−JEA1によりコードされるKARI(核酸及びアミノ酸配列番号799及び800)は、天然の蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)KARIと比較してアミノ酸変化を有する。
【0582】
発現ベクターpLH468
酵母においてDHAD、KivD、及びHADHを発現させるため、pLH468プラスミド(配列番号139)を構築した。
【0583】
L.ラクチス(L.lactis)ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ(KivD)及びウマ肝臓アルコールデヒドロゲナーゼ(HADH)のコード領域を、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)での発現に最適化されたコドンに基づきDNA2.0によって合成し(それぞれ配列番号801及び802)、プラスミドpKivDy−DNA2.0及びpHadhy−DNA2.0に提供した。コードされたタンパク質は、それぞれ配列番号803及び804である。KivD及びHADH用の個々の発現ベクターを構築した。pLH467(pRS426::P
TDH3−kivDy−TDH3t)を構築するため、米国特許出願公開第2008/0182308号明細書の実施例17(これは参照により本明細書に援用される)に記載されるベクターpNY8;別名pRS426.GPD−ald−GPDtをAscI及びSfiI酵素で消化し、これによってGPDプロモーター及びaldコード領域を切り出した。pNY8からのTDH3プロモーター断片(配列番号805)をPCR増幅することにより、5’プライマーOT1068及び3’プライマーOT1067(配列番号806及び807)を使用して5’末端にAscI部位、及び3’末端にSpeI部位を付加した。AscI/SfiI消化したpNY8ベクター断片を、AscI及びSpeIで消化したTDH3プロモーターPCR産物、並びにベクターpKivD−DNA2.0から単離したコドン最適化kivDコード領域を含むSpeI−SfiI断片とライゲートした。三重のライゲーションにより、ベクターpLH467(pRS426::PTDH3−kivDy−TDH3t)が作成された。pLH467(配列番号808)を制限マッピング及び配列決定により確認した。
【0584】
pLH435(pRS425::PGPM1−Hadhy−ADH1t)は、米国特許出願公開第2009/0305363号明細書の実施例3(これは参照により本明細書に援用される)に記載されるベクターpRS425::GPM−sadB(配列番号809)から誘導した。pRS425::GPM−sadBは、GPM1プロモーター(配列番号810)、アクロモバクター・キシロスオキシダンス(Achromobacter xylosoxidans)のブタノールデヒドロゲナーゼからのコード領域(sadB;DNA配列番号811;タンパク質配列番号812)、及びADH1ターミネーター(配列番号444)を含むキメラ遺伝子を有するpRS425ベクター(ATCC番号77106)である。pRS425::GPMp−sadBは、sadBコード領域の5’末端及び3’末端にそれぞれBbvI及びPacI部位を含む。プライマーOT1074及びOT1075(配列番号813及び814)を使用する部位特異的突然変異誘発により、sadBコード領域の5’末端にNheI部位を付加してベクターpRS425−GPMp−sadB−NheIを生成し、これを配列決定により確認した。pRS425::P
GPM1−sadB−NheIをNheI及びPacIで消化してsadBコード領域を抜き出し、ベクターpHadhy−DNA2.0からのコドン最適化HADHコード領域を含むNheI−PacI断片とライゲートすることにより、pLH435(配列番号815)を作成した。
【0585】
KivD及びHADH発現カセットを単一のベクターに組み合わせるため、酵母ベクターpRS411(ATCC番号87474)をSacI及びNotIで消化し、P
GPM1−Hadhy−ADH1tカセットを含むpLH435からのSalI−NotI断片と共に、P
TDH3−kivDy−TDH3tカセットを含むpLH467からのSacI−SalI断片とトリプルライゲーション反応でライゲートした。これによりベクターpRS411::P
TDH3−kivDy−P
GPM1−Hadhy(pLH441、配列番号816)を得て、これを制限マッピングにより確認した。
【0586】
低級イソブタノール経路における3つの遺伝子:ilvD、kivDy及びHadhyの全ての共発現ベクターを作成するため、本発明者らは、IlvD遺伝子の供給源として、pRS423 FBA ilvD(Strep)(配列番号817)を使用した。このシャトルベクターは、大腸菌(E.coli)における維持用のF1起点(nt 1423位〜1879位)と、酵母における複製用の2ミクロン起点(nt 8082位〜9426位)とを含む。このベクターは、FBA1プロモーター(nt 2111位〜3108位;配列番号795)と、FBA1ターミネーター(nt 4861位〜5860位;配列番号818)とを有する。加えてこれは、酵母における選択用のHisマーカー(nt 504位〜1163位)と、大腸菌(E.coli)における選択用のアンピシリン耐性マーカー(nt 7092位〜7949位)とを有する。ミュータンス菌(Streptococcus mutans)UA159(ATCC番号700610)由来のilvDコード領域(nt 3116位〜4828位;配列番号819;タンパク質配列番号820)がFBA1プロモーターとFBA1ターミネーターとの間にあり、発現用のキメラ遺伝子を形成する。加えて、lumioタグがilvコード領域に融合している(nt 4829位〜4849位)。
【0587】
最初のステップは、SacI及びSacII(SacII部位はT4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化されている)によりpRS423 FBA ilvD(Strep)(pRS423−FBA(SpeI)−IlvD(ミュータンス菌(Streptococcus mutans))−Lumioとも称される)を線状化することであり、全長9,482bpのベクターが得られた。第2のステップは、SacI及びKpnI(KpnI部位はT4 DNAポリメラーゼを使用して平滑末端化されている)によりpLH441からkivDy−hADHyカセットを単離することであり、これにより6,063bp断片が得られた。この断片を、pRS423−FBA(SpeI)−IlvD(ミュータンス菌(Streptococcus mutans))−Lumioからの9,482bpのベクター断片とライゲートした。これによりベクターpLH468(pRS423::P
FBA1−ilvD(Strep)Lumio−FBA1t−P
TDH3−kivDy−TDH3t−PGPM1−hadhy−ADH1t)が作成され、これを制限マッピング及び配列決定により確認した。
【0588】
実施例34
ピルビン酸デカルボキシラーゼ及びヘキソキナーゼ2に修飾を含むS.セレビシエ(S.cerevisiae)宿主株の構築
この例は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)の内因性PDC1、PDC5、及びPDC6遺伝子の挿入−不活性化について記載する。PDC1、PDC5、及びPDC6遺伝子は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの3つの主要なアイソザイムをコードする。グルコースのリン酸化及び転写抑制に関与するヘキソキナーゼ2もまた不活性化される。得られたPDC/HXK2不活性化株を、発現ベクターpLH475−JEA1及びpLH468の宿主として使用した。
【0589】
pdc6:: P
GPM1−sadB組込みカセットの構築及びPDC6欠失:
pRS425::GPM−sadB(参照によって援用される米国特許出願公開第2009/0305363号明細書に記載される)からのGPM−sadB−ADHtセグメント(配列番号821)をpUC19−URA3rからのURA3r遺伝子に連結することにより、pdc6::P
GPM1−sadB−ADH1t−URA3r組込みカセットを作製した。pUC19−URA3r(配列番号822)は、75bpの相同反復配列が隣接するpRS426(ATCC番号77107)からのURA3マーカーを含み、インビボでの相同組換え及びURA3マーカーの除去が可能である。2つのDNAセグメントを、鋳型としてpRS425::GPM−sadB及びpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用して、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.,Beverly,MA;カタログ番号F−540S)並びにプライマー114117−11A〜114117−11D(配列番号823、824、825、826)、及び114117−13A及び114117−13B(配列番号827及び828)により、SOE PCR(Horton et al.(1989)Gene 77:61−68により記載されるとおり)によって連結した。
【0590】
SOE PCRの外側プライマー(114117−13A及び114117−13B)は、それぞれPDC6プロモーター及びターミネーターの上流及び下流の領域と相同な5’及び3’約50bp領域を含んだ。完成したカセットPCR断片をBY4700(ATCC番号200866)に形質転換し、形質転換体を、30℃のウラシル不含2%グルコース添加合成完全培地に、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いて維持した。形質転換体をPCRによりプライマー112590−34G及び112590−34H(配列番号829及び830)、並びに112590−34F及び112590−49E(配列番号831及び832)を使用してスクリーニングし、PDC6コード領域の欠失を含むPDC6遺伝子座における組込みを確認した。URA3rマーカーは、標準的なプロトコルに従い30℃の2%グルコース及び5−FOAを補足した合成完全培地に播くことによって再利用した。5−FOAプレートからのコロニーをSD −URA培地にパッチして成長がないことを確認することにより、マーカーの除去を確認した。得られた同定株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::P
GPM1−sadB−ADH1tを有する。
【0591】
pdc1:: P
PDC1−ilvD組込みカセット及びPDC1欠失の構築:
pLH468からのilvD−FBA1tセグメントをpUC19−URA3rからのURA3r遺伝子と、Phusion DNAポリメラーゼ(New England Biolabs Inc.,Beverly,MA;カタログ番号F−540S)及びプライマー114117−27A〜114117−27D(配列番号823、824、825、826)により、鋳型としてpLH468及びpUC19−URA3rプラスミドDNAを使用するSOE PCR(Horton et al.(1989)Gene 77:61−68により記載されるとおり)によって連結することにより、pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1t−URA3r組込みカセット(配列番号833)を作製した。
【0592】
SOE PCR用の外側プライマー(114117−27A及び114117−27D)は、PDC1プロモーターの下流及びPDC1コード配列の下流の領域と相同な5’及び3’約50bp領域を含んだ。完成したカセットPCR断片をBY4700 pdc6::P
GPM1−sadB−ADH1tに形質転換し、形質転換体を、30℃のウラシル不含2%グルコース添加合成完全培地に、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いて維持した。形質転換体をPCRによりプライマー114117−36D及び135(配列番号834及び835)並びにプライマー112590−49E及び112590−30F(配列番号832及び836)を使用してスクリーニングし、PDC1コード配列の欠失を含むPDC1遺伝子座における組込みを確認した。URA3rマーカーは、標準的なプロトコルに従い30℃の2%グルコース及び5−FOAを補足した合成完全培地に播くことによって再利用した。5−FOAプレートからのコロニーをSD −URA培地にパッチして成長がないことを確認することにより、マーカーの除去を確認した。得られた同定株「NYLA67」は、遺伝子型:BY4700 pdc6:: P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1tを有する。
【0593】
HIS3欠失
内因性HIS3コード領域を欠失させるため、his3::URA3r2カセットをURA3r2鋳型DNA(配列番号837)からPCR増幅した。URA3r2は、インビボでの相同組換え及びURA3マーカーの除去が可能となるように、500bp相同反復配列が隣接するpRS426(ATCC番号77107)からのURA3マーカーを含む。Phusion DNAポリメラーゼ並びにプライマー114117−45A及び114117−45B(配列番号838及び839)を使用してPCRを行い、これにより約2.3kbのPCR産物が作成された。各プライマーのHIS3部分をHIS3プロモーターの上流の5’領域及びコード領域の下流の3’領域から誘導することで、URA3r2マーカーの組込みによりHIS3コード領域の置換が生じるようにした。PCR産物を、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いてNYLA67に形質転換し、30℃のウラシル不含2%グルコース添加合成完全培地で形質転換体を選択した。30℃のヒスチジン不含2%グルコース添加合成完全培地における形質転換体のレプリカ平板法により、形質転換体をスクリーニングして、正しい組込みを確認した。URA3rマーカーは、標準的なプロトコルに従い30℃の2%グルコース及び5−FOAを補足した合成完全培地に播くことによって再利用した。5−FOAプレートからのコロニーをSD−URA培地にパッチして成長がないことを確認することにより、マーカーの除去を確認した。NYLA73と呼ばれる得られた同定株は、遺伝子型:BY4700 pdc6::P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1t Δhis3を有する。
【0594】
HXK2の欠失:
hxk2::URA3rカセットを、Phusion DNAポリメラーゼ並びにプライマー384及び385(配列番号840及び841)を使用してURA3r2鋳型(上記に記載される)からPCR増幅し、これにより約2.3kbのPCR産物が作成された。各プライマーのHXK2部分をHXK2プロモーターの上流の5’領域及びコード領域の下流の3’領域から誘導することで、URA3r2マーカーの組込みによりHXK2コード領域の置換が生じるようにした。PCR産物を、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いてNYLA73に形質転換し、30℃のウラシル不含2%グルコース添加合成完全培地で形質転換体を選択した。形質転換体を、プライマーN869及びN871(配列番号842及び843)を使用するPCRによってスクリーニングすることにより、HXK2コード領域の置換を含むHXK2遺伝子座における正しい組込みを確認した。URA3r2マーカーは、標準的なプロトコルに従い30℃の2%グルコース及び5−FOAを補足した合成完全培地に播くことによって再利用した。5−FOAプレートからのコロニーをSD −URA培地にパッチして成長がないことを確認することにより、マーカーの除去を確認したとともに、プライマーN946及びN947(配列番号844及び845)を使用するPCRにより、正しいマーカー除去を確認した。NYLA83と命名される得られた同定株は、遺伝子型:BY4700 pdc6:: P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2を有する。
【0595】
pdc5::kanMX組込みカセット及びPDC5欠失の構築
pdc5::kanMX4カセットを、Phusion DNAポリメラーゼ並びにプライマーPDC5::KanMXF及びPDC5::KanMXR(配列番号846及び847)を使用して株YLR134W染色体DNA(ATCC番号4034091)からPCR増幅し、これにより約2.2kbのPCR産物が作成された。各プライマーのPDC5部分をPDC5プロモーターの上流の5’領域及びコード領域の下流の3’領域から誘導することで、kanMX4マーカーの組込みによりPDC5コード領域の置換が生じるようにした。PCR産物をNYLA83に形質転換し、形質転換体を上記に記載したとおり選択及びスクリーニングした。NYLA84と命名される同定された正しい形質転換体は、遺伝子型:BY4700 pdc6:: P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2 pdc5::kanMX4を有する。
【0596】
プラスミドベクターpLH468及びpLH475−JEA1を、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を用いて株NYLA84(BY4700 pdc6::P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1::P
PDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2 pdc5::kanMX4)に同時に形質転換し、得られた株を、30℃のヒスチジン及びウラシル不含1%エタノール添加合成完全培地に維持した。
【0597】
実施例35(予測的)
ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ヘキソキナーゼ2、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼに修飾を含むS.セレビシエ(S.cerevisiae)宿主株の構築
この例は、イソ酪酸(isobutryic acid)の形成を消失又は低下させる1つ以上のアルデヒドデヒドロゲナーゼの不活性化について記載する。ALD2の破壊が例として用いられるが、この方法は任意のアルデヒドデヒドロゲナーゼの破壊に用いることができる。得られるNYLA84誘導株は、発現ベクターpLH475−JEA1及びpLH468の宿主として用いられる。
【0598】
ALD2の欠失:
ald2::URA3rカセットを、Phusion DNAポリメラーゼ並びにプライマーT001及びT002(配列番号848及び849)を使用してURA3r2鋳型(上記に記載される)からPCR増幅し、これにより約2.3kbのPCR産物が作成される。各プライマーのALD2部分をALD2遺伝子の5’配列及び3’配列から誘導することで、URA3r2マーカーの組込みによりALD2コード領域の置換が生じるようにする。PCR産物を、標準的な遺伝学的技法(Methods in Yeast Genetics,2005,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.201−202)を用いてNYLA84に形質転換し、30℃のウラシル不含1%エタノール添加合成完全培地で形質転換体を選択する。形質転換体を、プライマーT003及びT004(配列番号850及び851)を使用するPCRによってスクリーニングすることにより、ALD2コード領域の置換を含むALD2遺伝子座における正しい組込みを確認する。URA3r2マーカーは、標準的なプロトコルに従い30℃の1%エタノール及び5−FOAを補足した合成完全培地に播くことによって再利用する。5−FOAプレートからのコロニーをSE −URA培地にパッチして成長がないことを確認することにより、マーカー除去を確認するとともに、プライマーT004及びT005(配列番号851及び852)を使用するPCRにより、正しいマーカー除去を確認する。得られた同定株をNYLA84 Δald2と命名し、これは遺伝子型:BY4700 pdc6:: P
GPM1−sadB−ADH1t pdc1:: P
PDC1−ilvD−FBA1t Δhis3 Δhxk2 Δald2である。
【0599】
実施例36
NYLA84における組換えS.セレビシエ(S.cerevisiae)のイソブタノール生成
HPLC方法
グルコース及び発酵副生成物組成の分析は、当業者に周知されている。例えば、一つの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)方法は、Shodex SH−1011カラムをShodex SH−Gガードカラムと共に(双方ともWaters Corporation,Milford,MAから入手可能)、屈折率(RI)検出を伴い利用する。クロマトグラフ分離は、0.5mL/分の流量及び50℃のカラム温度で、0.01M H
2SO
4を移動相として使用して実現される。イソブタノール保持時間は47.6分である。
【0600】
NYLA84における組換えS.セレビシエ(S.cerevisiae)のイソブタノール生成
本例の目的は、酵母株NYLA84におけるイソブタノールの生成について記載することである。この酵母株は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの3つのアイソザイムをコードする遺伝子PDC1、PDC5、及びPDC6の欠失、及びヘキソキナーゼ2をコードするHXK2の欠失を含む。この株はまた、AlsS(アセト乳酸シンターゼ)、KARI(ケト酸レダクトイソメラーゼ)、DHAD(ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)、KivD(ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ)、SadB(二級アルコールデヒドロゲナーゼ)、及びHADH(ウマ肝臓アルコールデヒドロゲナーゼ)の異種発現用のコンストラクトも含む。
【0601】
株構築
標準的なPEG/酢酸リチウム媒介性形質転換法により、プラスミドpLH468及びpLH475−JEA1をNYLA84に導入した。グルコース、ヒスチジン及びウラシル不含合成完全培地で形質転換体を選択した。エタノール(1%v/v)を炭素源として使用した。3日後、炭素源として2%グルコース及び0.5%エタノールの両方を補足したヒスチジン及びウラシル不含の合成完全培地に形質転換体をパッチした。グリセロール終濃度が15%(w/v)となるように対数期培養物を45%グリセロールで希釈することにより、フリーザーバイアルを作製した。
【0602】
イソブタノールの生成
フリーザーバイアルを使用して、炭素源として2%グルコース及び0.5%エタノールの両方を補足したヒスチジン及びウラシル不含の合成完全培地80mlを接種した。
【0603】
発酵条件:
1リットル発酵槽を0.4Lの水で調製して滅菌した。冷却後、ろ過滅菌した培地を添加して、接種後の800mLにおいて以下の終濃度を得た:
【0604】
培地(終濃度):
6.7g/L、アミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco)
2.8g/L、ヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤(Sigma Y2001)
20mL/Lの1%(w/v)L−ロイシン
4mL/Lの1%(w/v)L−トリプトファン
1mL/Lエルゴステロール/tween/エタノール溶液
0.2mL/L Sigma DF204
10g/Lグルコース
【0605】
発酵槽は、KOHによりpH5.5に、30%dO、温度30℃、及び空気流量0.2SLPM(又は、0.25vvm)に制御するように設定した。接種時、空気流量は当初0.01SLPMに設定し、次に成長が確立したところで0.2SLPMに増加させた。グルコースは、手動で添加することにより、全体を通じて5〜15g/Lに維持した。
【0606】
空気を0.25vvmで発酵槽に連続供給した。連続曝気により、発酵槽の水相からイソブタノールの多量のストリッピングが起きた。ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量化するため、発酵槽からの排ガスを質量分析器(Prima dB質量分析器、Thermo Electron Corp.,Madison,WI)に直接送り込み、ガス流中のイソブタノールの量を定量化した。74又は42の質量対電荷比におけるイソブタノールピークを連続的にモニタすることにより、ガス流中のイソブタノールの量を定量化した。発酵中、HPLCを用いて水相のグルコース及び有機酸をモニタした。グルコースはまた、グルコース分析器(YSI,Inc.,Yellow Springs,OH)も使用して迅速にモニタした。発酵槽から水相を定期的に取り出した後、水相のイソブタノールを、本明細書の上記のHPLC方法に記載されるとおりHPLCによって定量化した。ストリッピングに起因するイソブタノール損失に対して補正した有効力価は、7.5g/Lであった。イソ酪酸の力価は1.28g/Lであった(
図14)。
【0607】
実施例37(予測的)
NYLA84 Δald2における組換えS.セレビシエ(S.cerevisiae)のイソブタノール生成
本例の目的は、酵母株NYLA84におけるイソブタノールの生成について記載することである。ALD2の破壊が例として用いられるが、この例は任意のアルデヒドデヒドロゲナーゼの破壊に用いることができる。NYLA84 Δald2酵母株は、ピルビン酸デカルボキシラーゼの3つのアイソザイムをコードする遺伝子PDC1、PDC5、及びPDC6の欠失、ヘキソキナーゼ2をコードするHXK2の欠失、及びアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするALD2の欠失を含む。この株はまた、AlsS(アセト乳酸シンターゼ)、KARI(ケト酸レダクトイソメラーゼ)、DHAD(ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ)、KivD(ケトイソ吉草酸デカルボキシラーゼ)、及びSadB(二級アルコールデヒドロゲナーゼ)の異種発現用のコンストラクトも含む。
【0608】
株構築
標準的なPEG/酢酸リチウム媒介性形質転換法により、プラスミドpLH468及びpLH475−JEA1をNYLA84 Δald2に導入する。グルコース、ヒスチジン及びウラシル不含合成完全培地で形質転換体を選択する。エタノール(1%v/v)を炭素源として使用する。3日後、炭素源として2%グルコース及び0.5%エタノールの両方を補足したヒスチジン及びウラシル不含の合成完全培地に形質転換体をパッチする。グリセロール終濃度が15%(w/v)となるように対数期培養物を45%グリセロールで希釈することにより、フリーザーバイアルを作製する。
【0609】
イソブタノールの生成
フリーザーバイアルを使用して、炭素源として0.25%グルコース及び0.5%エタノールの両方を補足したヒスチジン及びウラシル不含の合成完全培地80mlを接種する。0.4Lの水で1リットル発酵槽を調製して滅菌する。冷却後、ろ過滅菌した培地を添加して、接種後の800mLにおいて以下の終濃度を得る:
【0610】
培地(終濃度):
6.7g/L、アミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco)
2.8g/L、ヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤(Sigma Y2001)
20mL/Lの1%(w/v)L−ロイシン
4mL/Lの1%(w/v)L−トリプトファン
1mL/Lエルゴステロール/tween/エタノール溶液
0.2mL/L Sigma DF204
10g/Lグルコース
【0611】
発酵槽は、KOHによりpH5.5に、30%dO、温度30℃、及び空気流量0.2SLPM(又は、0.25vvm)に制御するように設定する。接種時、空気流量は当初0.01SLPMに設定し、次に成長が確立したところで0.2SLPMに増加させる。グルコースは、手動で添加することにより、全体を通じて5〜15g/Lに維持する。
【0612】
ストリッピングに起因するイソブタノールの損失を定量化するため、発酵槽からの排ガスを質量分析器(Prima dB質量分析器、Thermo Electron Corp.,Madison,WI)に直接送り込み、ガス流中のイソブタノールの量を定量化する。74又は42の質量対電荷比におけるイソブタノールピークを連続的にモニタすることにより、ガス流中のイソブタノールの量を定量化する。発酵中、HPLCを用いて水相のグルコース及び有機酸をモニタする。グルコースはまた、グルコース分析器(YSI,Inc.,Yellow Springs,OH)も使用して迅速にモニタする。発酵槽から水相を定期的に取り出した後、水相のイソブタノール及びイソ酪酸をHPLCによって定量化する。
【0613】
実施例38
イソ酪酸生成の分析
0.05%エタノールを補足したヒスチジン及びウラシル不含合成完全培地に株を接種した。培養物が定常期に達したところで、それらを新鮮な培地(出発OD=0.2)に継代培養した。PNY2205(実施例13)は、ホスホケトラーゼ経路を有しないPDC KO酵母で観察されるC2要求を満たすように、培地に0.05%エタノールを補足した。PNY2209(実施例13)は、細胞をエタノール含有及び不含の培地に継代培養した。ald6Δクローン(PNY2216及び同質遺伝子クローン、実施例24)は、エタノール不含培地を使用した。培養物は、スクリューキャップ付き振盪フラスコ(125mlフラスコ中20mlの培地)において成長させた。接種直後、及び48時間後に再度、培養上清を収集した。これらの培養上清をHPLCにより分析し(参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20070092957号明細書に記載される)、グルコース消費及びイソ酪酸濃度を決定した。
【0614】
【表43】
【0615】
実施例39
新規株におけるイソブタノール生成の増加及び副生成物生成の減少
この例の目的は、プラスミドpK9G9.OLE1p.ilvDを使用して残りのイソブタノール経路遺伝子を供給する新規に構築した株による小規模培養実験について記載することである。
【0616】
新規宿主株PNY1528、PNY2243、PNY2237及びPNY2238をプラスミドpK9G9.OLE1p.ilvDで形質転換し、イソブタノール生成について試験した。1%エタノールを炭素源として含むウラシル不含合成完全培地で選択することにより、形質転換体を得た。形質転換体を、2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含むウラシル不含合成完全培地にパッチした。パッチを使用して、液体培地(0.3%グルコース及び0.3%エタノールを炭素源として含むウラシル不含合成完全)を接種した。イソブタノール生成を試験するため、液体培養物を、2%グルコース及び0.05%エタノールを炭素源として含有し、またBMEビタミンミックス(Sigma カタログ番号B6891)も含有したウラシル不含合成完全培地に継代培養した。培養物を、密閉した血清バイアル(15mlバイアル中10mlの培地)において30℃で振盪しながら(Infors Multitronシェーカーで250rpm)インキュベートした。48時間後、培養培地をろ過し(Spin−Xカラム)、HPLCにより分析した(米国特許出願公開第20070092957号明細書に以前記載されたとおり)。ald6Δを有する株では、経路副生成物イソブチレートのモル収率が50%減少した。PNY2238ベースの株は、より高いグルコース消費及びイソブタノール力価を有することが分かった(クローンKの結果は、以下の表に示す)。
【0617】
【表44】
【0618】
実施例40
部位飽和遺伝子ライブラリの構築及びPNY2259における得られた変異体のイソブタノール生成のスクリーニング
309位に全20個の個々のアミノ酸変化をコードするプライマーを含むリバースプライマー混合物(この例ではK9_309rと呼ばれる)(表37)及びフォワードプライマーK9_131T_080211f:GGACTTGATGTCACTATGATC(この例ではK9_131Tfと呼ばれる)を用いて、K9 KARIの位置309位を標的化する一部位飽和ライブラリを作成した。変異体K9SB2を含むプラスミド(pHR81−ILV5p.K9SB2.TEF1(M4)p.ilvD(配列番号930、「pLH744」とも称される)。
【0619】
簡潔に言えば、メガプライマーをレギュラーPCRによって調製した。メガプライマー
PCR混合物は、45μlのSuperMix(Invitrogen,Carlsbad,CA、番号10572063)、2.0μl K9_131Tf(20μM)、2.0μl K9_309r(20μM)及び1.0μl鋳型(50ng/μl)からなった。メガプライマーを作製するPCRプログラムは以下である:開始温度は95℃で1.0分間、続いて35回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で20秒間、55℃で20秒間、及び72℃で1.0分間からなった。次にメガプライマーを使用することにより、実施例5に示すものと同じ手順を用いてK9SB2に突然変異を導入した。一部位飽和ライブラリからのクローンを配列決定した。
【0620】
得られたユニーク変異体を、pLH744と共に、酵母におけるイソブタノール生成及び副生成物形成について(各突然変異体につき三回)分析した。KARIベクターを形質転換することにより、PNY2259(MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ::P[PDC1]−ADH|adh_Hl−ADH1t adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Lg(y)−ADH1t yprcΔ15Δ::P[PDC5]−ADH|adh_Hl−ADH1t ymr226cΔ ald6Δ::loxP;実施例22)宿主に酵母経路株を作製した。形質転換細胞をヒスチジン又はウラシル不含合成培地(炭素源として1%エタノール)に播いた。3つの形質転換体を、同じ培地の新鮮なプレートに移した。形質転換体を、48ウェルプレート(Axygen,Union City,CA 番号391−05−061)において、嫌気性条件下でのイソブタノール生成について試験した。
【0621】
SE−Uraプレート上の形質転換からの酵母コロニーは、5〜7日後に現れた。各変異体から3つのコロニーを新鮮なSE−Uraプレートにパッチし、30℃で3日間インキュベートした。
【0622】
成長培地及び手順
酵母株の成長手順の間、2種類の培地を使用した:好気性前培養培地及び嫌気性培養培地。全ての化学物質は、特に注記されない限り、Sigma(St.Louis,MO)から入手した。
好気性前培養培地(SE−Ura):6.7g/Lのアミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco,291940,Sparks,MD)、1.4g/Lのヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤、0.2%エタノール、0.2%グルコース、0.01%w/vロイシン、0.002%w/vヒスチジン、及び0.002%w/vトリプトファン。
嫌気性培養培地(SEG−Ura−His):50mM MES(pH5.5、6.7g/Lのアミノ酸不含酵母窒素原基礎培地(Difco,291940,Sparks,MD)、1.4g/Lのヒスチジン、ロイシン、トリプトファン及びウラシル不含酵母合成ドロップアウト培地添加剤、0.1%エタノール、3%グルコース、0.01%ロイシン、0.002%w/vヒスチジン、0.002%トリプトファン、30mg/Lニコチン酸、30mg/Lチアミン及び10mg/Lエルゴステロール、50/50v/vのTween/エタノール溶液中に構成。
【0623】
パッチした細胞を48ウェルプレートに接種した。各ウェルは、1.5mlの好気性培地を含む。プレートを透過性フォイルで被覆し、振盪しながら30℃で一晩成長させた。次に細胞密度(OD
600)を計測した。各ウェルについて最終OD
600=0.2で1.5mlの細胞懸濁液(嫌気性培地中)となる細胞の量を計算し、嫌気性培地に1.5ml細胞懸濁液を調製し、各ウェルに添加した。48ウェルプレートの酸素は、嫌気性チャンバ(Coy Laboratory Products Inc.Grass Lake,MI)を製造者のプロトコルに従い使用して除去した。次に細胞を、振盪しながら30℃で2日間成長させた。次に細胞密度(OD
600)を計測した。最も良好に成長した突然変異体は、イソブタノール生成計測のため、48ウェルプレートにおいて同じ2日間の成長を経た。2日間の嫌気性成長の後、次に細胞密度(OD
600)を計測した。細胞を4,000gで5分間遠心し、LC/MSを用いたイソブタノール計測のため、上清を回収した。
【0624】
K9 KARI突然変異体を有する酵母株のLC/MS分析
嫌気性成長期間の終了時にLCMS分析用の試料を採取した。LCMS分析は、Waters AcQuity UPLC分離ユニット及びAcQuity TQD triple quad質量分析器(Waters,Milford,MA)をWaters AcQuity UPLC HSS T3分離カラム(Waters,Milford,MA)と共に使用して実施した。99%水相で始まり99%有機相で終わる水(+0.1%ギ酸)及びアセトニトリル(+0.1%ギ酸)の逆相勾配を用いて、0.5mL/分の流量で化合物を分離した。Waters Masslynx 4.1ソフトウェア(Waters,Milford,MA)を使用してクロマトグラムを分析した。イソブタノールのマイクロモル収率を、Waters Quanlynxソフトウェア(Waters,Milford,MA)を用い、標準のトリプリケート分析の検量線を使用して計算した。
【0625】
【表45】
【0626】
【表46】
【0627】
実施例41
K9SB2のトランケート変種であるK9SB2_SH(K9SB2_short)の構築
最初の5個のN末端アミノ酸(MEECK)が欠損したK9SB2の変種をコードする遺伝子を、Phusion(登録商標)ハイフィデリティPCRキット(カタログ番号E0553L、New England BioLabs)によるPCRによって調製した。プライマーKshort1(AAACCGGTTTAAACAGTATGGCTAAGATTTACTACCAAGAAGACTG;配列番号903)及びYGrev(TTCTGTTTTATCAGACCGCTTC;配列番号904)は、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により合成された。プライマー、dNTP混合物(カタログ番号18427−013、Invitrogen,Carlsbad,CA)、鋳型、及びddH
2Oの他には、ここで使用した試薬は、上記に示すキットと共に提供された。PCR混合物は、pBAD.KARIプラスミド(20ng/μl;実施例17に記載されるプラスミド調製物;配列番号428)中1μlのK9SB2、2μlの各プライマー(20μMストック)、10μlの5×Phusion HF緩衝液、2μlの5mM dNTP混合物、0.5μlポリメラーゼ、及び28μlのddH
2Oからなった。PCR反応には以下の条件を用いた:開始温度は98℃で2分間、続いて30回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、98℃で10秒間、48℃で30秒間、及び72℃で1.5分間からなった。温度サイクルの完了時に、試料をさらに10分間72℃に維持し、次に4℃に維持して試料の回復を待った。反応産物をアガロースゲル電気泳動(electrophloresis)(1%アガロース、1×TBE緩衝液)によって鋳型から分離し、Illustra GFX(商標)PCR DNA及びゲルバンド精製キット(カタログ番号28−9034−70、GE Healthcare Sciences,Piscataway,NJ)を製造者の推奨どおり使用して回収した。精製したPCR産物をPmeI及びSfiIで消化し、pBAD−ps−JEA1(配列番号905)の対応する部位にライゲートし、pBAD.KARIにおける得られたコンストラクトK9SB2_SHの配列(配列番号929)を確認した。
【0628】
実施例42
K9SB2及び他のKARI酵素の試験用酵母発現プラスミドの作成
pHR81−ILV5p−K9SB2−TEF(M4)−IlvD(pLH744;配列番号930)の構築:
K9SB2遺伝子を、PmeI及びSfiI消化によりpHR81−ILV5p−K9SB2から切り出し、PmeI及びSfiI部位でpHR81−ILV5p−K9D3−TEF(M4)−IlvD(pBP2090)とライゲートした。ライゲートしたベクターをpHR81−ILV5p−K9SB2−TEF(M4)−IlvD(pLH744)と命名し、このベクターを配列決定により確認した。
【0629】
K9SB2_SH_DHAD(配列番号931)の構築:
消化したK9SB2_SH PCR産物(実施例41に記載される)を、pLH744のPmeI及びSfiI部位にライゲートし、配列決定により確認した。
【0630】
K9SB2_SH_81(配列番号932)の構築
消化したK9SB2_SH PCR産物(実施例41に記載される)を、pHR81−PIlv5−KARI−K9.G9のPmeI及びSfiI部位にライゲートし、配列決定により確認した。
【0631】
K9SB2誘導体の酵母発現用プラスミドの構築
pBAD.KARIプラスミドからの対応するKARI遺伝子をプラスミドpLH744及びプラスミドpHR81−PIlv5−KARI−K9.G9のPmeI及びSfiI部位にサブクローニングすることにより、表39に掲載される変異体(実施例17及び21に記載される)用の酵母発現プラスミドを作成した。コンストラクトを配列決定により確認した。
【0632】
【表47】
【0633】
K9SB2誘導体のトランケート変種の酵母発現用プラスミドの構築
K9SB2誘導体のN末端がトランケートされた変種を、実施例41の記載に変更を加えて調製した。プライマーKshort1は、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により合成された5’リン酸
化(phophorylated)プライマーKPSH1(AAACAGTATG GCT AAG ATT TAC TAC CAA GAA GAC TG;配列番号906)に置き換えた。PCRにおけるK9SB2は、表39に掲載する変異体(pBAD.KARIプラスミド)のプール混合物に置き換えた。精製したPCR産物はSfiIで消化し、pHR81−PIlv5−KARI−K9.G9のPmeI及びSfiI部位にライゲートした。TempliPhi(商標)(GE Healthcare)及びプライマーpHR81−F(ACACCCAGTATTTTCCCTTTCC)及びpHR81−Rev(CTA GTG TAC AGA TGT ATG TCG G)(配列番号924及び925)によるDNA配列決定を実施して、各トランケート誘導体を同定した。同定された変異体を表40に示す。続いてトランケート変種のコード配列をプラスミドpLH744のPmeI及びSfiI部位にサブクローニングし、配列決定により確認した。
【0634】
【表48】
【0635】
K9_Zeke_SH(K9SB2−K90M−T93A)及びK9_Annabel_SH(K9SB2−K90M−T93I)の構築
K9_Zeke_SH(配列番号860、タンパク質配列番号861)及びK9_Annabel_SH(配列番号862、タンパク質配列番号863)は、QuikChange(登録商標)Lightning部位特異的突然変異誘発キット(カタログ番号210518;Agilent Technologies,Stratagene Products Division,La Jolla,CA)を用いた部位特異的突然変異誘発によってK9_David_SHから誘導した。プライマー、鋳型、及びddH
2Oを除いては、ここで使用した全ての試薬は、上記に指示するキットと共に提供された。プライマーは、Integrated DNA Technologies,Inc(Coralville IA)により合成された。
【0636】
K9_Zeke_SHについて、用いたプライマーは、oMT93A(GATCCCAGATGAAATGCAGGCTGCCATGTACAAAAACGACATCG;配列
番号920))及びoMT93Arev(CGATGTCGTTTTTGTACATGGCAGCCTGCATTTCATCTGGGATC;配列番号921)であった。反応混合物は、pHR81−PIlv5−KARI−K9.G9誘導ベクター(20ng/μl)中の1μl K9_David_SH、1μlの各プライマー(150ng/ul)、5μlの10×反応緩衝液、1μlのdNTP混合物、1.5μl QuikSolution、1ul QuikChange Lightning酵素、及び38.5μl ddH
2Oを含んだ。K9_Annabel_SHは、プライマーをoMT93I(GATCCCAGATGAAATGCAGGCTATCATGTACAAAAACGACATCG;配列番号922)及びoMT93Irev(CGATGTCGTTTTTGTACATGATAGCCTGCATTTCATCTGGGATC;配列番号923)に置き換えた。
【0637】
双方の反応とも、以下の条件を用いた:開始温度は95℃で2分間、続いて18回の加熱/冷却サイクルであった。各サイクルは、95℃で20秒間、60℃で10秒間、及び68℃で6分間からなった。温度サイクルの完了時に、試料を4℃に保って試料の回復を待った。2μlのDpn Iを各反応物に添加し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。2μlの各突然変異誘発反応物を、One Shot(登録商標)Stbl3(商標)化学的コンピテント大腸菌(E.coli)(Invitrogen、カタログ番号C7373−03)に、製造者の指示に従い形質転換した。形質転換体を、LB培地及び100μg/mlアンピシリンを含有する寒天プレート(カタログ番号L1004、Teknova Inc.Hollister,CA)に広げ、37℃で一晩インキュベートした。次に複数の形質転換体を、プライマーpHR81−F(ACACCCAGTATTTTCCCTTTCC;配列番号924)及びpHR81−Rev(CTA GTG TAC AGA TGT ATG TCG G;配列番号925)を用いたTempliPhi(商標)DNA sequencing(商標)(GE Healthcare)に対して選択した。確認された配列を有する変異体(pHR81−PIlv5−KARI−K9.G9誘導ベクターのK9_Zeke_SH及びK9_Annabel_SH)を、pLH744(配列番号930)のPmeI及びSfiI部位にサブクローニングした。
【0638】
実施例43
48ウェルプレートにおいて嫌気性条件下で成長させるK9SB2及び誘導体のイソブタノール生成
実施例42に記載されるとおりpLH744から誘導したベクターで調製した、K9SB2、K9SB2_SH、及びK9SB2−T93Aの酵母発現プラスミドを用いて、48ウェルプレートにおいて嫌気性条件下で成長させた酵母のイソブタノール生成を評価した。イソブタノール生成株は、KARI変異体のコード配列を含むプラスミドを形質転換してウラシル不含合成培地(炭素源として1%エタノール)に播くことにより、宿主PNY2259(MATa ura3Δ::loxP his3Δ pdc6Δ pdc1Δ::P[PDC1]−DHAD|ilvD_Sm−PDC1t−P[FBA1]−ALS|alsS_Bs−CYC1t pdc5Δ::P[PDC5]−ADH|sadB_Ax−PDC5t gpd2Δ::loxP fra2Δ::P[PDC1]−ADH|adh_Hl−ADH1t adh1Δ::UAS(PGK1)P[FBA1]−kivD_Lg(y)−ADH1t yprcΔ15Δ::P[PDC5]−ADH|adh_Hl−ADH1t ymr226cΔ ald6Δ::loxP)に作製した。SE−Uraプレート上の形質転換からの酵母コロニーは、30℃でインキュベートして3〜5日後に出現した。各変異体の少なくとも3つのコロニーを新鮮なSE−Uraプレートにパッチし、30℃でインキュベートした。
【0639】
酵母培養条件:
好気性培養培地:2g/lエタノールを含むSE −Ura培地。
【0640】
嫌気性培養培地:10mg/lエルゴステロール、50mM MES緩衝液(pH5.5)、30mg/lチアミン、及び30mg/lニコチン酸を補足した、30g/lグルコース及び1g/lエタノールを含むSEG −Ura。
【0641】
48ウェルプレート:Axygen カタログ番号P−5ML−48−C−S、5ml/ウェル総容積、1.5ml/ウェルの培養容積。
【0642】
好気性培養は、プレートを透過性接着フィルム(VWR;カタログ番号60941−086)で被覆した。プレートを30℃において225rpmで振盪した。嫌気性培養は、透過性フィルムで被覆した新しく接種したプレートの酸素を、嫌気性チャンバで2時間平衡化させることによりパージした。次にプレートの覆いを接着アルミニウムカバー(VWR;カタログ番号89049−034)に交換し、各プレートを、気密性プラスチックボックス(Mitsubishi Gas Chemical America,Inc;New York,NY;カタログ50−25)の中に、新鮮な酸素捕捉剤パック(Mitsubishi Gas Chemical America,Inc;New York,NY;カタログ10−01)と共に置いた。集合体全体(密閉された気密性プラスチックボックスの中の1つ又は複数のプレート及び酸素捕捉剤パック)を嫌気性チャンバから取り出し、30℃において225rpmで振盪した。
【0643】
実験プロトコル
SE− Ura寒天プレート上の単一の酵母コロニーを新鮮なSE− Ura寒天プレートにストリークし、高密度の細胞パッチが成長するまで30℃でインキュベートした。最初の好気性培養のため、48ウェルプレートの液体前培養物にこれらの細胞のループを接種した。一晩振盪した後、各ウェルの0.15mlを平底96ウェルプレートに移し、Molecular Devices(Sunnyvale,CA)プレートリーダーで各ウェルの600nmの吸光度を計測することにより、各培養ウェルのOD
600を計測した。実験的に決定された検量線に基づく線形形質転換をこれらのプレートリーダー計測光学濃度に適用することにより、それらの光学濃度をキュベットベースの分光光度計の比較可能な吸光度値に変換した。
【0644】
各好気性前培養ウェルの計算した部分量を、0.2の(キュベット分光光度計吸光度単位で)初期OD
600に達するように1.5mlのSEG −Ura培地を含む新鮮な48ウェルプレートの対応するウェルに接種した。新鮮なプレートの接種過程で好気性前培養プレートを遠心し、各ウェルから上清を除去し、各ウェルの細胞を新鮮なSEG −Ura培地に再懸濁した。この嫌気性培養プレートを3日間振盪した。培養上清のイソブタノール濃度をHPLCにより計測した(表41)。
【0645】
【表49】
【0646】
フォローアップの嫌気性培養を最初の嫌気性培養物から以下のとおり開始した:各嫌気性培養ウェルの計算した部分量を、0.2の(キュベット分光光度計単位で)初期OD
600に達するように1.5mlのSEG −Ura培地を含む新鮮な48ウェルプレートの対応するウェルに接種した。新鮮なプレートの接種過程で成長プレートを遠心し、各ウェルから上清を除去し、各ウェルの細胞を新鮮なSEG −Ura培地に再懸濁することにより、ある培養から次の培養への代謝産物のキャリーオーバーを最小限に抑えた。フォローアップ(2回目のサイクル)の嫌気性培養プレートを2日間振盪した。培養上清のイソブタノール濃度をHPLCにより計測した(表42)。
【0647】
【表50】
【0648】
実施例44
K9G9、K9SB2、及びK9SB2_SHの動態特性決定
K9G9、K9SB2、K9SB2_SHを、動態パラメータの詳細な計測のため、大腸菌(E.coli)株Bw25113(ΔilvC)においてpBAD.KARIプラスミドにより過剰発現させて精製した。
【0649】
発現、精製及び補因子動態解析を、実施例18の記載に以下の変更を加えて実施した。発現培養物は、125mLベント付きキャップフラスコ中の、100μg/mlアンピシリン及び0.2%(w/v)アラビノースを含む20mLのLBで成長させた。発現培地には、1/10容積の8時間培養物を接種した。発現培養物は、K9 SB2について18時間、及びK9SB2_SHについて24時間成長させた。
【0650】
【表51】
【0651】
実施例45
K9SB2及び誘導体のイソブタノール生成
48ウェルプレートにおけるイソブタノール生成分析を、実施例42の記載に以下の変更を加えて実施した。好気性及び嫌気性培養培地は実施例19に記載されるものと同じで、但し0.01%w/vのヒスチジンを添加した。好気性前培養物のOD
600値は、Cary 300分光光度計(Agilent Technology,Wilmington,DE)を使用して計測した。M−20ローター(Thermo Scientific,Waltham,MA)を備えたHeraeus Multifug X1Rを使用して好気性前培養細胞をペレット化し、使用済み培養培地は廃棄した。細胞ペレットを含むプレートをCoy嫌気バッグ(Grass Lake,MI)に移し、各ペレットに100μLの嫌気性培養培地を添加した。嫌気性培養培地は少なくとも24時間脱気させてから、48ウェルプレートに1.5mLアリコートを入れた;このプロセスは嫌気バッグ内で実施した。嫌気性培養プレートに適切な容量の細胞懸濁液を接種し、接着アルミニウムフォイルで被覆した。プレートをMCG 2.5L AnaeroPackシステム(MCG,日本)内に置いた。ボックスを密封して嫌気バッグから取り出し、30℃のインキュベーターに220rpmで振盪しながら80時間置いた。変異体1つにつき3つの形質転換体を分析し、K9D3及びK92B2について6つの形質転換を分析した(表44)。
【0652】
【表52】
【0653】
選択変異体に対し、実施例19の記載に以下の変更を加えて血清バイアルにおけるイソブタノール生成分析を実施した。KARI変異体は、実施例42に記載されるとおり調製したpLH744から誘導したプラスミドから、酵母において発現させた。好気性前培養培地及び嫌気性成長培地の双方に、終濃度が0.01%w/vとなるようにヒスチジンを添加した。変異体1つにつき3つ又は4つの形質転換体を分析した(表45、表46、及び表47)。
【0654】
【表53】
【0655】
【表54】
【0656】
【表55】
【0657】
【表56】
【0658】
【表57】
【0659】
【表58】
【0660】
【表59】
【0661】
【表60】
【0662】
【表61】
【0663】
【表62】
【0664】
【表63】
【0665】
【表64】
【0666】
【表65】
【0667】
【表66】
【0668】
【表67】
【0669】
【表68】
【0670】
【表69】
【0671】
【表70】
【0672】
【表71】
【0673】
【表72】
【0674】
【表73】
【0675】
【表74】
【0676】
【表75】
【0677】
【表76】
【0678】
【表77】
【0679】
【表78】
【0680】
【表79】
【0681】
【表80】