特許第6099646号(P6099646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099646低分子量生成物、及びディールス−アルダー反応の際の可逆的又は永久的な低温架橋剤としてのそれらの使用
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  • 特許6099646-低分子量生成物、及びディールス−アルダー反応の際の可逆的又は永久的な低温架橋剤としてのそれらの使用 図000020
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099646
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】低分子量生成物、及びディールス−アルダー反応の際の可逆的又は永久的な低温架橋剤としてのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/24 20060101AFI20170313BHJP
   C07D 251/34 20060101ALI20170313BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20170313BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20170313BHJP
   C09J 181/00 20060101ALI20170313BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20170313BHJP
   C09D 181/00 20060101ALI20170313BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170313BHJP
   C07F 9/40 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C07C271/24
   C07D251/34 H
   C08J3/24 ZCFJ
   C09J11/06
   C09J181/00
   C09D11/00
   C09D181/00
   C09D7/12
   C07F9/40 B
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-523251(P2014-523251)
(86)(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公表番号】特表2014-529346(P2014-529346A)
(43)【公表日】2014年11月6日
(86)【国際出願番号】EP2012062683
(87)【国際公開番号】WO2013017349
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2015年5月11日
(31)【優先権主張番号】102011080131.6
(32)【優先日】2011年7月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501073862
【氏名又は名称】エボニック デグサ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ ゲオルク シュミット
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヒルフ
(72)【発明者】
【氏名】エマヌイル スピロウ
(72)【発明者】
【氏名】ジアウェン ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー ギマール
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー バーナー−コヴォリク
(72)【発明者】
【氏名】キム クラウス エーレンシュレーガー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ヘニヒ
【審査官】 早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03283032(US,A)
【文献】 特開昭51−127002(JP,A)
【文献】 特表2005−529959(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第04032187(DE,A1)
【文献】 国際公開第2004/018001(WO,A1)
【文献】 特開2002−294095(JP,A)
【文献】 国際公開第98/016497(WO,A1)
【文献】 特開平06−263704(JP,A)
【文献】 特開昭60−214766(JP,A)
【文献】 特開昭57−192433(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0099798(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/144774(WO,A1)
【文献】 Mori, Yutaka et al.,Molecular Arrangement and Photoreaction of Sorbamides and Hexadienyl Carbamates with Various N-Substituents in the Solid State,Crystal Growth & Design,2007年,7(7),pp. 1356-1364
【文献】 Reinecke, Martin et al.,Renewable resources, 1 Branching and crosslinking of an unsaturated oligoester with furfurylamides and sorbic acid amides via Diels-Alder additions,Makromolekulare Chemie,1993年,194(8),pp. 2385-2393
【文献】 Reinecke, Martin et al.,Renewable resources, 2 Poly-Diels-Alder additions with disorboylamides as bisdienes and a dimaleoylamide as a bisdienophile,Macromolecular Chemistry and Physics,1994年,195(7),pp. 2445-2455
【文献】 Banert, Klaus et al.,Diastereoselective Tandem Diels-Alder Macrocyclizations Starting from Sorbyl or Sorboyl Derivatives,Synlett,2008年,(4),pp. 535-538
【文献】 Le Baut, Guillaume et al.,Polyenic acids. I. Antifungal and bacteriostatic activities of 2,4-hexadienoic acid derivatives,European Journal of Medicinal Chemistry,1983年,18(5),pp. 441-445
【文献】 Washington, Ilyas et al.,Superoxidation of Bisretinoids,Angewandte Chemie, International Edition,2005年,44(43),pp. 7097-7100
【文献】 Manfredini, Stefano et al.,Retinoic Acid Conjugates as Potential Antitumor Agents: Synthesis and Biological Activity of Conjugates with Ara-A, Ara-C, 3(2H)-Furanone, and Aniline Mustard Moieties,Journal of Medicinal Chemistry,1997年,40(23),pp. 3851-3857
【文献】 Hadjipavlou-Litina, Dimitra et al.,Does conjugation of antioxidants improve their antioxidative/anti-inflammatory potential?,Bioorganic & Medicinal Chemistry,2010年,18(23),pp. 8204-8217
【文献】 Vasques da Silva, Renata et al.,Antifungal amides from Piper arboreum and Piper tuberculatum,Phytochemistry,2002年,59(5),pp. 521-527
【文献】 Werbel, Leslie M. et al.,Derivatives of 5-Phenyl-2,4-pentadienoic Acid as Potential Antimalarial Agents,Journal of Medicinal Chemistry,1968年,11(5),pp. 1073-1074
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の炭素−硫黄二重結合を有する化合物(ジエノフィル)との可逆的又は永久的な架橋のための、
A)一般式1
【化1】
[式中、
nは、0又は1を表し、
Xは、NCOを表し
Rは、ヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい、脂肪族又は環式脂肪族の炭化水素基を表す]で示される、1分子あたり少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種のイソシアナートと
B)一般式2
【化2】
[式中、
Yは、CH2OH、COOH、CNH又はCHNHAを表し、
A、Z及びR〜Rは、同時に又は互いに独立して、炭素原子1〜16個を有するアルキル基、環状炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、その際にこれらの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい]で示される、官能基を有する少なくとも1種のジエンと
の反応生成物、その際にA)の全ての官能基XがB)の等価量と反応されている、の使用。
【請求項2】
少なくとも1個の炭素−硫黄二重結合を有する化合物(ジエノフィル)との可逆的又は永久的な架橋のための、
A)一般式1
【化3】
[式中、
nは、0又は1を表し、
Xは、NCOを表し、
Rは、ヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい、脂肪族又は環式脂肪族の炭化水素基を表す]で示される、1分子あたり少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種のイソシアナートと、
)ソルビンアルコール及び/又はソルビン酸
の反応生成物、その際にA)の全ての官能基XがB)の等価量と反応されている、の使用。
【請求項3】
少なくとも1個の炭素−硫黄二重結合を有する化合物(ジエノフィル)との可逆的又は永久的な架橋のための、
A)一般式1
【化4】
[式中、
nは、0又は1を表し、
Xは、NCOを表し、
Rは、ヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい、脂肪族又は環式脂肪族の炭化水素基を表す]で示される、1分子あたり少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種のイソシアナートと、
)式5:
【化5】
[式中、
Fは、OH、COOH、COOK又はCHOを表し、
ここでKは、炭素原子1〜6個を有するアルキル基、環状炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表し、その際にこの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい]で示されるレチノイド
の反応生成物、その際にA)の全ての官能基XがB)の等価量と反応されている、の使用。
【請求項4】
ジエノフィル成分として、原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いて製造された二官能性ポリマーを使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応生成物の使用。
【請求項5】
ジエノフィル成分として、ジチオエステルを使用する、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応生成物の使用。
【請求項6】
ジエノフィル成分として、構造
【化6】
を有する化合物を使用し、ここでZは、2−ピリジル基、ホスホリル基、スルホニル基、シアノ基又はトリフルオロメチル基であり、Rは、分枝鎖状又は線状のアルキル多官能性アルコール、芳香族多官能性アルコール、又はアルキル多官能性アルコール及び芳香族多官能性アルコールの組合せ、多官能性ハロゲン化化合物、多官能性カルボン酸又は多官能性アミンをベースとする多結合性有機基を表すか、又はポリマーを表し、nは2〜20の数である、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応生成物の使用。
【請求項7】
接着剤、成形材料、インキ、シーラント、コーティング材料、ペイント、ワニス又は複合材料のための、請求項からまでのいずれか1項記載の反応生成物の使用。
【請求項8】
成形体を製造する際の、請求項からまでのいずれか1項記載の反応生成物の使用。
【請求項9】
成分A)として、脂肪族及び環式脂肪族のジイソシアナートが使用される、請求項1から8までのいずれか1項記載の反応生成物の使用
【請求項10】
成分A)として、イソホロンジイソシアナート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4′−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート、2,2′−メチレンジシクロヘキシル−ジイソシアナート及び/又は2,4−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナートが、単独で又は混合物で、使用される、請求項記載の反応生成物の使用
【請求項11】
イソシアヌラートが使用される、請求項記載の反応生成物の使用
【請求項12】
イソホロンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、4,4′−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート、2,2′−メチレンジシクロヘキシル−ジイソシアナート及び/又は2,4−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナートの三量体が、単独で又は混合物で、使用される、請求項11記載の反応生成物の使用
【請求項13】
成分B)として、式6:
【化7】
で示されるレチノイドが使用される、請求項記載の反応生成物の使用
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量生成物、それらの製造及びポリマーもしくはポリマーネットワークにおける可逆的又は永久的な架橋剤としての使用に関し、その際に、生じるポリマーの結合もしくは架橋が、ディールス−アルダー反応により引き起こされる。
【0002】
ポリマーを可逆的に架橋する方法は、幅広い分野の用途に大いに関心がある。例えば接着用途において、自動車工業又は半導体工業のための多様な可能性が記載されている。しかし機械、精密機械装置の組立の際又は建築工業においても、そのような接着剤は興味深い。
【0003】
接着用途に加え、可逆的に架橋可能なポリマーは、シーラント、コーティング材料、例えばワニス又はペイントにおいても又は例えばラピッドプロトタイピング法による、成形体の製造の際に、関心がありうる。
【0004】
ディールス−アルダー架橋のための最も公知の架橋剤分子として、ここでは、既に久しい以前から商業的に入手可能なビスマレインイミド構成要素(Evonik AG製のCOMPIMIDE(登録商標))が挙げられる。
【0005】
"クリック化学"という上位概念のもとで、数年来、とりわけ学術界において、ブロックコポリマーの合成方法が調査されている。その際に、結合可能な末端基を有する異なる2種のホモポリマーが互いに組み合わされ、かつ例えばディールス−アルダー反応、ディールス−アルダー類似反応もしくは他の付加環化を用いて互いに結合される。この反応の目的は、熱安定で、線状で、かつ場合により高分子量のポリマー鎖を合成することである。Inglis et al.(Macromolecules 2010, 43, p.33 - 36)には例えば、このために、ATRPを用いて製造されるポリマーから得ることができる、シクロペンタジエニル末端基を有するポリマーが記載されている。これらのシクロペンタジエン基は極めて迅速に、ヘテロディールス−アルダー反応において、電子不足のジチオエステルを末端基として有するポリマーと、反応することができる(Inglis et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, p.2411 - 2414)。
【0006】
単官能性RAFTポリマーを単官能性ポリマーと結合させるために使用して、ヘテロディールス−アルダー反応によりジヒドロチオピラン基を有するポリマーを得ることは、Sinnwell et al.(Chem. Comm. 2008, 2052-2054)に見出される。この方法を用いて、ABジブロックコポリマーが実現されうる。RAFT重合後に存在しているジチオエステル基とジエニル末端基との、ABブロックコポリマーの合成のためのこのヘテロディールス−アルダー結合の迅速な変法は、Inglis et al.(Angew.Chem.Int.Ed. 2009, 48, p.2411-14)及びInglis et al.(Macromol. Rapd Commun. 2009, 30, p.1792-98)に記載されている。マルチアーム−スターポリマーの類似の製造は、Sinnwell et al.(J.Pol.Sci.:Part A:Pol.Chem. 2009, 47, p.2207-13)に見出される。
【0007】
US 6,933,361には、簡単に補修可能で透明な成形体を製造するための系が記載されている。該系は、2種の多官能性モノマーからなり、これらはディールス−アルダー反応を用いて、高密度のネットワークへと重合する。その際に、一方の官能性モノマーは、マレイン酸イミドであり、かつ他方の官能性モノマーは、フランである。そのような高密度ネットワークの熱によるスイッチングは、それ自体の補修に利用される。該架橋は、100℃を上回る温度で行われる。いっそう高い温度では部分的な逆反応が起こる。
【0008】
Syrett et al.(Polym.Chem. 2010, DOI:10.1039/b9py00316a)の場合に、油中での流動性向上剤として使用するためのスターポリマーが記載される。これらは、可逆的なディールス−アルダー反応によって制御可能な自己修復特性を有する。そのためには、単官能性ポリメタクリラートアームは、鎖の中心に、使用される開始剤のフラグメントとして、可逆的なディールス−アルダー反応において使用可能な基を有するポリメタクリラートと組み合わされる。
【0009】
DE102010001987.9の特許出願明細書には、ディールス−アルダー反応又はヘテロディールス−アルダー反応に基づく熱可逆的な架橋機構を有する、架橋可能な系が開示されている。DE102010001992.5には、同じ熱可逆的な機構によって制御可能な粘度を有する、類似の系が開示されている。
【0010】
US 4,513,125 Aには、特殊なカチオン電着塗装コーティング用の組成物が開示されており、その際にポリジエン官能化エポキシアミンを、ポリジエノフィル官能化ポリイソシアナートオリゴマーと、高められた温度で互いに反応させる。該ポリジエノフィル官能化ポリイソシアナートオリゴマーは、少なくとも3の官能価を有する。具体的に挙げられているのは、フルフリルアルコールもしくはフルフリルアミン、2−ヒドロキシメチル−1,3−ブタジエン、2−アミノメチル−1,3−ブタジエン又はそれらの混合物である。しかしながら、ソルビンアルコール誘導体は挙げられていない。
【0011】
課題
本発明の課題は、好ましくは低い温度で、かつ可逆的な架橋のためのレトロディールス−アルダー反応の可能性を有する、ディールス−アルダー反応のための、容易に合成でき、かつ多方面で使用可能で、そのうえ更に特に環境にやさしい、低分子量架橋剤分子を見出すことであった。
【0012】
前記課題は、本発明の新規な反応生成物により解決される。
【0013】
本発明の対象は、
A)一般式1
【化1】
[式中、
nは、0、1を表し、
Xは、NCO、NH2、NHAを表し、
Aは、H、同時に又は互いに独立して、炭素原子1〜16個を有するアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、その際にこの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよく、
Rは、ヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい、脂肪族又は環式脂肪族の炭化水素基を表す]で示される、1分子あたり少なくとも2個の官能基を有する少なくとも1種のイソシアナート及び/又はアミンと、
B)一般式2
【化2】
[式中、
Yは、CH2OH、COOH、COOA、CH2NH2、CH2NHAを表し、
A、Z及びR1〜R4は、同時に又は互いに独立して、炭素原子1〜16個を有するアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、その際にこれらの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい]で示される、官能基を有する少なくとも1種のジエンと
の反応生成物であり、
その際にA)の全ての官能基Xが、B)の等価量と反応されている。
【0014】
意外にも、本発明による化合物は、ジエノフィルと、既に室温で又は少しだけ高められた温度で架橋可能であり、かつ該架橋はより高い温度で、少なくとも50%が再び元に戻ることができることが見出された。
【0015】
これらの系が既に室温で、場合により架橋触媒の添加下に、極めて迅速に架橋することが見出された。同じように、これらのネットワークが、例えば80℃を幾分上回る極めて低い温度で既に、再び簡単にかつほぼ完全に、熱可塑性プラスチックへ戻ることができることが見出された。更にまた、その後で、新たな架橋が、架橋剤及び/又は触媒を更に添加することなく、例えば単に冷却することにより、再び行うことができることが極めて意外にも見出された。更にまた、架橋と、熱可塑性プラスチックへの再変換とからなるこれらのサイクルが、該ネットワークのより大きな特性損失なしに、少なくとも3回、好ましくは少なくとも5回、実施することができることは、特別な効果である。
【0016】
イソシアナート成分A)として、脂肪族ジイソシアナート、環式脂肪族ジイソシアナート及び芳香脂肪族ジイソシアナート、すなわちアリール置換脂肪族ジイソシアナートが適しており、これらは例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 第14/2巻, p.61 - 70及びW. Siefken, Justus Liebigs Annalen der Chemie 562, 75 - 136の論文に記載されているものであり、例えば、1,2−エチレンジイソシアナート、1,4−テトラメチレンジイソシアナート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(TMDI)並びにそれらの混合物、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,8−ジイソシアナト−2,4−ジメチルオクタン、1,12−ドデカンジイソシアナート、ω,ω′−ジイソシアナトジプロピルエーテル、シクロブテン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアナート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアナート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキシルイソシアナート(イソホロンジイソシアナート、IPDI)、1,4−ジイソシアナトメチル−2,3,5,6−テトラメチル−シクロヘキサン、デカヒドロ−8−メチル−(1,4−メタノール−ナフタレン−2,5−イレンジメチレンジイソシアナート、デカヒドロ−8−メチル−(1,4−メタノール−ナフタレン−3,5−イレンジメチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−1,5−イレンジメチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−2,5−イレンジメチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−1,6−イレンジメチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノ−インダン−2,5−イレンジメチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−1,5−イレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−2,5−イレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−1,6−イレンジイソシアナート、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダン−2,6−イレンジイソシアナート、2,4−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアナート、2,6−ヘキサヒドロトルイレンジイソシアナート、4,4′−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート(4,4′−H12MDI)、2,2′−メチレンジシクロヘキシル−ジイソシアナート(2,2′−H12MDI)、2,4−メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート(2,4−H12MDI)又はこれらの異性体の任意の混合物、4,4′−ジイソシアナト−3,3′,5,5′−テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジイソシアナト−2,2′,3,3′,5,5′,6,6′−オクタメチルジシクロヘキシルメタン、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−ジイソシアナトメチル−2,3,5,6−テトラメチルベンゼン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン(MPDI)、2−エチル−1,4−ジイソシアナトブタン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,5−ジイソシアナトヘキサン、1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン並びにこれらの化合物の任意の混合物。更に適したイソシアナートは、該Annalen中の前記の論文のp.122以降に記載されている。2,5−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDI)及び/又は(2,6)−ビス(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDI)も、純物質で又は混合成分として適している。これらのジイソシアナートの製造は今日では通例、ホスゲン経路によるか又は尿素法により、実施される。双方の方法の生成物は、本発明による方法における使用に同じように適している。
【0017】
特に好ましくは、脂肪族ジイソシアナート及び環式脂肪族ジイソシアナートが使用される。極めて特に好ましくは、IPDI、TMDI、HDI及び/又はH12MDIが、単独で又は混合物で、使用される。
【0018】
成分A)としてのポリイソシアナートの他の好ましい種類は、該単純なジイソシアナートの二量化、三量化、アロファナート化、ビウレット化及び/又はウレタン化により製造され、1分子あたり2個よりも多いイソシアナート基を有する化合物、例えば、これらの単純なジイソシアナート、例えばIPDI、TMDI、HDI及び/又はH12MDIと、多価アルコール(例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール)もしくは多価ポリアミンとの反応生成物である。
【0019】
特に好ましくは、該単純なジイソシアナートの三量化により得ることができるイソシアヌラートも使用される。極めて特に好ましくは、IPDI、HDI及び/又はH12MDIの三量体が、単独で又は混合物で、使用される。
【0020】
成分A)として、分子中に少なくとも2個のアミノ基を有する、脂肪族アミン、環式脂肪族アミン及び芳香脂肪族アミン、すなわちアリール置換脂肪族アミンも適している。
【0021】
特に好ましくは、1,3−及び1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン、ヘキサンジアミン−1,6(HDA)、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサンアミン−1,6並びにそれらの混合物、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(イソホロンジアミン、IPDA)、4,4′−メチレンジシクロヘキシルジアミン、2,4−メチレンジシクロヘキシルジアミン、2,2′−メチレンジシクロヘキシルジアミン並びにこれらの異性体(H12MDA)の任意の混合物、ポリエーテルジアミンから選択されているジアミンが使用される。該アミンの混合物を使用してもよい。
特に好ましいのは、IPDA、HDA及び/又はH12MDAである。
【0022】
ジエンB)として、一般式2
【化3】
[式中、
Yは、CH2OH、COOH、COOA、CH2NH2、CH2NHAを表し、
ここで
A、Z及びR1〜R4は、同時に又は互いに独立して、炭素原子1〜16個を有するアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、その際にこれらの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい]で示される、1個のみの官能基を有するジエンが使用される。
【0023】
その際に、基Zは、成分A)と反応しない不活性な基である。
【0024】
基Yは、成分A)の官能基Xと反応して、反応生成物となる。
【0025】
特に好ましくは、ソルビンアルコール3及び/又はソルビン酸4が使用される。
【0026】
【化4】
【0027】
更に好ましい種類のジエンB)は、次の式5:
【化5】
[式中、
Fは、OH、COOH、COOK、CHOを表し、
ここでKは、炭素原子1〜6個を有するアルキル基、環状炭化水素基、芳香族炭化水素基であり、その際にこの基はヘテロ原子及び/又は官能基及び/又は二重結合を有してもよい]で示され、
好ましくは式6:
【化6】
で示される、いわゆるレチノイドである。
【0028】
当業者には、化合物A)及びB)の官能基が、これらが互いに反応するように選択しなければならないことが理解できる。
【0029】
本発明による反応生成物の例として、ここでは、ソルビンアルコールをイソホロンジイソシアナートと反応させて、ディールス−アルダー反応することができる二官能性ジエン構成要素を得ることが挙げられる:
【化7】
【0030】
三量体―イソシアヌラート―との本発明による反応生成物の例として、ここでは、ソルビンアルコールをイソホロンイソシアヌラートと反応させて、ディールス−アルダー反応することができる三官能性ジエン構成要素を得ることが挙げられる:
【化8】
【0031】
該ジエンは、再生可能原料であるソルビトールから製造することができる。それらは、特に環境にやさしいソルビン誘導体である。同じことは、該レチノイドに当てはまる。
【0032】
本発明の更なる対象は、以下にジエノフィルとも呼ぶ、少なくとも1個の反応性二重結合を有する化合物との可逆的又は永久的な架橋のための、本発明による化合物の使用である。
【0033】
ジエノフィルとして、反応性二重結合を有する化合物が定義され、その際に該二重結合は、ディールス−アルダー反応によって、本発明による反応生成物の両方の二重結合と反応することができる。この反応は、逆方向にも進行し、その際に該個々の成分が再び生じる:該反応は、すなわち可逆的であり、かつレトロディールス−アルダー反応と呼ばれる。その際に、少なくとも2種の異なる成分からなる配合物が、ディールス−アルダー反応もしくはヘテロディールス−アルダー反応によって、室温で架橋される。第二処理工程において、より高い温度で、その架橋位置の少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%及び特に好ましくは少なくとも99%が、レトロディールス−アルダー反応もしくはレトロ−ヘテロディールス−アルダー反応によって再び分かれる。
【0034】
好ましい実施態様において、該ジエノフィル成分が、原子移動ラジカル重合(ATRP)を用いて製造された、二官能性ポリマーである。この場合に、該ジエン基での官能化は、末端ハロゲン原子の、重合類似の又は停止中に実施される置換により行われる。この置換は、例えば、ジエン基で官能化されたメルカプタンの添加により行うことができる。
【0035】
好ましくは、該ジエノフィルは、炭素−硫黄二重結合を有する化合物であり、それゆえ好ましい架橋反応は、ヘテロディールス−アルダー反応である。
【0036】
同じ好ましい実施態様において、ジエノフィル成分として、ジチオエステル基3〜4個を有する低分子量有機化合物を使用することができ、該化合物は上記の説明に相応して、C=S二重結合の電子密度を著しく低下させる基Zを有する。
【0037】
特に好ましくは、該ジエノフィルは、ジチオエステルである。
【0038】
極めて特に好ましくは、該ジエノフィルは、構造
【化9】
を有する化合物であり、ここでZは、―好ましくは著しく―電子求引性の基であり、Rmは、多結合性有機基、好ましくは、分枝鎖状又は線状のアルキルの、芳香族の、又はアルキルの及び芳香族の多官能性アルコールの組合せ、多官能性ハロゲン化化合物、多官能性カルボン酸又は多官能性アミンをベースとするものである。選択的に、Rmは、ポリマーであってもよい。該ジチオエステル基の数nは、2〜20、好ましくは2〜10及び特に好ましくは2〜4の数である。
【0039】
好ましい実施態様において、基Zは、2−ピリジル基、ホスホリル基又はスルホニル基である。更に、シアノ基又はトリフルオロメチル基並びにC=S二重結合の電子密度を極めて著しく低下させ、ひいては迅速なディールス−アルダー反応を可能にする、他のあらゆる基Zが考慮に値する。
【0040】
本発明によるこれらの架橋剤分子により、簡単に入手可能な可逆的又は永久的に架橋可能なポリマーは、幅広い分野の用途にとって大きな関心がある。例えば解体性(wieder loesbare)接着用途のためには、当業者によく知られており、自動車工業又は半導体工業のための多様な可能性が記載されている。しかし、機械、精密機械的な装置の組立の際又は建築工業においても、そのような接着剤は興味深い。本発明による配合物もしくは方法は、多種多様な使用分野において使用することができる。以下のリストは、幾つかの好ましい使用分野を例示的に示すが、本発明はこれに関して、いずれの形でも限定するものではない。そのような好ましい使用分野は、例えば接着剤、成形材料、インキ、シーラント、コーティング材料、例えばワニス又はペイント、複合材料又は例えばラピッドプロトタイピング法による、成形体の製造の際の使用である。
【0041】
ここで記載される架橋性及び脱架橋性(entnetzenden)の材料用のラピッドプロトタイピングの分野における用途の例は、FDM(Fused Deposition Modeling、熱溶解積層法)の分野において又は低粘度溶融物を用いるインクジェット法による3D印刷の際に、見出されうる。
【0042】
以下の実施例により、本発明並びにその実施可能性がより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】120、140及び160℃でのアセトニトリル中の3(c70=20mg mL-1)のrDA反応の反応時間(a)の増加に伴う、Mnの低下を示すグラフ。
【実施例】
【0044】
ソルビンアルコール−IPDI付加物もしくはソルビンアルコール−T1890付加物の製造説明
例1
IPDI−ソルビンアルコール付加物(IPDI=イソホロンジイソシアナート)2
1モルのIPDI 222.2g
2モルのソルビンアルコール 196.3g
0.01%のDBTL 0.042g
0.2%のJonol CP 0.839g
アセトン 100.0g
500ml三つ口フラスコ中で、ソルビンアルコールを溶融させ(60℃)、DBTL(ジブチルスズジラウラート)、Jonol CP及びアセトンと共に装入した。その後、40℃に加熱した。
引き続き、IPDIを40℃で3hかけて滴加した。該反応混合物は、40℃で6h後にNCO不含であった=0.67質量%、これを40℃で更に6h撹拌した、NCO含量=0.12質量%。その後、該アセトンを真空乾燥器中で40℃で除去し、得られた固体を粉砕した。融点:80〜85℃。
【0045】
例2
VESTANAT T1890(IPDIの三量体)−ソルビンアルコール付加物
1モルのT1890/100 736.8g
3モルのソルビンアルコール 294.4g
0.01%のDBTL 0.103g
0.2%のJonol CP 2.06g
50%のアセトン
ソルビンアルコール、DBTL、Jonol CPを、アセトン中に溶解させた(50%濃度)。その後、IPDI−T1890を50%濃度でアセトン中に溶解させ、40℃で2hかけてソルビンアルコール溶液に滴加し、16h後撹拌した、NCO含量=0.1質量%。該アセトンを真空乾燥器中で40℃で除去した。得られた固体を粉砕した。
【0046】
ディールス−アルダー反応
材料 イソホロン−ビス−(ソルビン−カルバマート)(IPDI−SA)(Evonik Industries AG)、
1,4−ビス(ブロモメチル)ベンゼン(97%、Aldrich)、
水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液、Aldrich)、
テトラヒドロフラン(THF、無水、≧99.9%、ABCR)、
リン酸ジエチル(>99.0%、Fluka)、
二硫化炭素(無水、≧99.9%、Aldrich)、
亜鉛2−エチルヘキサノアート(97%、Aldrich)及びアセトニトリル(無水、99.8%、Fluka)を納入された状態で使用した。
【0047】
塩化亜鉛(Aldrich)を真空乾燥させ、保護ガス雰囲気下に貯蔵した。
【0048】
他の全ての溶剤を、更に精製せずに使用した。
【0049】
キャラクタリゼーション。1H核スピン共鳴(NMR)分光法を、500MHzで操作するBruker AM 250分光計を用いて、水素核について実施した。全ての試料を、CDCl3又はDMSO−d6のいずれか中に溶解させた。δ−スケールを、内標準であるトリメチルシラン(TMS、δ=0.00ppm)で校正した。
【0050】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定を、オートサンプラーと、PL-Gel、5μm粒子サイズのプレカラム(50×7.5mm)と、PL-Gel、5μm混合E−カラム(300×7.5mm)と、3個のPL-Gel、5μm混合C−カラム(300×7.5mm)と、示差屈折率検出器とを有するPolymer Laboratories(Varian)PL-GPC 50 Plus Integrated Systemで、溶離剤としてTHFを用い、35℃及び1mL 分-1の流速で実施した。該SEC系を、160〜6×106g モル-1にわたる線状ポリ(スチレン)標準と、700〜2×106g モル-1にわたる線状ポリメタクリル酸メチル標準とで校正した。PSに対する分子量が、当該研究において示されている。
【0051】
質量分析法を、陽イオンモジュール中で使用した噴霧器支援エレクトロスプレーモジュール中で操作した、大気圧下でのイオン化源を備えている、LXQ質量分析計(ThermoFisher Scientific)で実施した。該装置を、195〜1822のm/z範囲内で、カフェインと、Met−Arg−Phe−Alaアセタート(MRFA)と、フッ素化ホスファゼンの混合物(Ultramark 1621)(Aldrich)とを含有する標準を用いて校正した。試料(c=0.1〜0.2mg mL-1)を、酢酸ナトリウム(0.014mg mL-1)でドープしたTHF及びメタノールの3:2v/v混合物中に溶解させた。全てのスペクトルは5kVのスプレー電圧及び275℃のキャピラリー温度で、150〜2000のm/z範囲内で得られた。窒素を、保護ガス(流量:最大45%)として使用し、かつヘリウムを、補助ガス(流量:最大5%)として使用した。理論質量計算を、IsotopeViewer Version 1.0 Softwareを用いて実施した。
【0052】
1,4−フェニレンビス(メチレン)ビス((ジエトキシホスホリル)メタンジチオホルマート)(P−ジ−リンカー)(1)の合成。
P−ジ−リンカー1を、次の手順により合成した。無水THF(20mL)中ジエチルホスフィットの溶液(5.3mL、41.2ミリモル)を、窒素下にTHF(40mL)中NaH(1.64g、41.2ミリモル)の懸濁液に、還流冷却器及びマグネチックスターラーを備えていた二つ口フラスコ中で、一滴ずつ添加した。水素の発生が終了すると直ちに、該混合物を10分、還流下に加熱した。室温に冷却した後に、該混合物を液体窒素浴中で更に冷却した。CS2(12.26mL、203.6ミリモル)を次いで一滴ずつ添加し、該混合物を、室温に温めた。その撹拌を更に30分続け、その後、無水THF(40mL)中に溶解させた1,4−ビス(ブロモメチルベンゼン)(5.44g)を、該反応混合物に一滴ずつ添加した。その撹拌を室温で3h続け、次いでヘキサン200mLを添加し、反応混合物をろ過した。すみれ色のろ液を、捕集し、該溶剤を減圧下に除去した。粗生成物を、シリカゲルのカラムクロマトグラフィーにより精製し、まず最初に溶離剤としてヘキサンで、不純物を除去し、次いで溶離剤として酢酸エチルで、生成物1を捕集した。減圧下での該溶剤の除去後に、P−ジ−リンカー1を暗フクシア色の固体(収率60%)として得た。1H NMR(250MHz、DMSO−d6、25℃):δ(ppm)=7.36(s、4H、ArH)、4.57(s、4H、−CH2S−)、4.21−4.08(m、8H、−OCH2CH3)、1.30−1.21(t、J=7Hz、12H、−CH2CH3)。ESI−MS+Na(m/z) 計算値553.01;実測値553.12。
【0053】
図式1. ホスホナートジチオエステル ジ−リンカー1の合成
【化10】
【0054】
ディールス−アルダー反応:生成物3をもたらす、P−ジ−リンカー1及びIPDI−SA 2の段階重合。
典型的な重合手順は次の通りであった:IPDI−SA並びにP−ジ−リンカーを、別個にアセトニトリル中に溶解させ、かつ官能基に関して1:1の比で、得られる溶液の濃度が1.8Mであるように混合した。該反応混合物に、塩化亜鉛(ZnCl2)1.1当量を添加した。この混合物を4h、50℃に加熱した。該粘稠な混合物を、クロロホルム1mL中に希釈し、ZnCl2の除去のために水で抽出し、乾燥させた(収率85〜96%)。この段階重合反応を、アセトニトリルの存在下で実施して、生成物3を得た。該生成物を、SECにより分析した。2時間後のMn=8100g モル-1
【0055】
図式2. 1及び2のHDA反応から形成される、付加環化生成物3(可能なレジオ/立体異性体の単純化した構造を示す)
【化11】
【0056】
3のレトロディールス−アルダー反応(rDA)。典型的な反応手順は次の通りであった:100mgのポリマー3を、アセトニトリル5mL中に溶解させた。撹拌しながら、該溶液を、圧力管中で40分、140℃に加熱した。その温度は120〜160℃にわたっており、かつその反応時間は10分〜160分にわたっていた。次いで、これを迅速に液体窒素でクエンチした。該rDA生成物の試料(0.1mL)をTHF(0.4mL)中に希釈し、GPC及び質量分析法により分析した。結果は図1に示されている。
図1