特許第6099650号(P6099650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6099650プルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤及びそれを含む化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099650
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】プルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤及びそれを含む化粧料
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20170313BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20170313BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20170313BHJP
   A61Q 1/10 20060101ALI20170313BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20170313BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   C09K3/00 103G
   A61K8/73
   A61Q17/04
   A61Q1/10
   A61Q1/02
   A61K8/31
   A61K8/37
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-529225(P2014-529225)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2012070519
(87)【国際公開番号】WO2014024308
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2015年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240950
【氏名又は名称】片倉コープアグリ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594099794
【氏名又は名称】讃岐化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100170221
【弁理士】
【氏名又は名称】小瀬村 暁子
(72)【発明者】
【氏名】柿坂 雄一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 建剛
(72)【発明者】
【氏名】北代 学
【審査官】 桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/049995(WO,A1)
【文献】 特開昭54−008605(JP,A)
【文献】 特開昭10−182341(JP,A)
【文献】 特開2011−032336(JP,A)
【文献】 特開昭53−142540(JP,A)
【文献】 特開昭53−136526(JP,A)
【文献】 特開昭53−136527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 8/31
A61K 8/37
A61K 8/73
A61Q 1/02
A61Q 1/10
A61Q 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルランの水酸基に導入された置換基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基であり、かつ該置換基による水酸基の置換度が2.5〜2.6であるプルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤を含む油剤を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
油剤が炭化水素油及び/又はエステル油を含む、請求項に記載の化粧料。
【請求項3】
炭化水素油及び/又はエステル油が、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びイソノナン酸イソノニルからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項又はに記載の化粧料。
【請求項4】
耐水性化粧料である、請求項のいずれか1項に記載の化粧料。
【請求項5】
プルランの水酸基に導入された置換基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基であり、かつ該置換基による水酸基の置換度が2.5〜2.6であるプルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤を油剤に混合して溶解させ、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。
【請求項6】
油剤が炭化水素油及び/又はエステル油を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記油剤増粘剤を油剤に50〜80℃で混合する、請求項又はに記載の方法。
【請求項8】
前記油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてミリストイル基を有するものであり、かつ油剤が、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びイソノナン酸イソノニルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてパルミトイル基を有するものであり、かつ油剤が、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びイソノナン酸イソノニルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
化粧料が耐水性化粧料である、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルラン脂肪酸エステル及びこれを含有した化粧料に関する。さらに詳しくは、製法を改良して置換基と置換度を制御することにより、溶解時に特徴的な状態(特に油剤に対する増粘作用)を呈するプルラン脂肪酸エステル、それを含む油剤増粘剤及びそれを用いた化粧料並びにそれらを安定的に製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プルラン脂肪酸エステルの原料であるプルランは、マルトトリオースが規則正しくα‐1,6結合した水溶性の天然多糖類である。プルランに脂肪酸をエステル結合させた化合物は油溶性が高まるため、油溶性化粧料に適用することができる。例えば、特許文献1には、炭素数2〜24であり置換度0.0001〜0.5(特許文献1ではグルコース1残基当たり3個の水酸基が全て置換された場合の置換度を1としている)でアシル基を導入したプルランの脂肪酸エステルは、皮膜形成に優れており、パック化粧料に配合すると皮膜強度に優れ、速乾性、良好な剥離性を有するパック化粧料に利用されることが記載されている。
【0003】
また特許文献2及び3には、プルラン脂肪酸エステルを配合した油溶性クリームが、特許文献4には、プルラン脂肪酸エステルを配合した油溶性仕上化粧料が記載されている。さらに特許文献5には、置換基と置換度を限定することにより室温での油剤への溶解性を高めたプルラン脂肪酸エステルが記載されている。
【0004】
しかし特許文献1〜5には、所定の置換基及び置換度を有するプルラン脂肪酸エステルを油剤に溶解させた際の状態の特徴や、その特徴を活かした利用方法については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−182341号公報
【特許文献2】特公昭60−26081号公報
【特許文献3】特公昭60−26082号公報
【特許文献4】特公昭60−26089号公報
【特許文献5】国際公開WO2010/049995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、溶解時に特徴的な状態を呈する(具体的には、増粘作用を示す)プルラン脂肪酸エステル及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ミリスチン酸及び/又はパルミチン酸によりプルランの水酸基を置換し、かつその置換度(本願発明では、グルコース1残基当たり3個の水酸基が全て置換された場合の置換度を3とする)を2.4〜2.7の範囲とすることによって得られるプルラン脂肪酸エステルは、溶解時に特徴的な状態を呈する(具体的には、油剤に対し増粘作用を示す)ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、溶解時に特徴的な状態を呈する(具体的には、油剤に対し増粘作用を示す)プルラン脂肪酸エステル及びその利用に関する。より具体的態様では、本発明は、以下を包含する。
【0009】
[1] プルランの水酸基に導入された置換基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基であり、かつ該置換基による水酸基の置換度が2.4〜2.7であるプルラン脂肪酸エステルを含む、油剤増粘剤。
【0010】
この油剤増粘剤の好ましい一実施形態では、プルラン脂肪酸エステル中の前記置換基による水酸基の置換度は2.5〜2.6でありうる。
【0011】
[2] 上記[1]に記載の油剤増粘剤を含む油剤を含有することを特徴とする化粧料。
【0012】
この化粧料において、油剤は炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。
【0013】
好ましい一実施形態では、その炭化水素油及び/又はエステル油は、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0014】
好ましい一実施形態では、このような化粧料は耐水性化粧料である。
【0015】
[3] 上記[1]に記載の油剤増粘剤を油剤に混合して溶解させ、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法。
【0016】
この方法において、油剤は炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。
【0017】
この方法において、上記油剤増粘剤は油剤に50〜80℃で混合することが好ましい。
【0018】
この方法において油剤に溶解させる上記油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてミリストイル基を有する場合、油剤は、炭化水素油及び/又はエステル油として、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群(特に好ましくは、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びイソノナン酸イソノニルからなる群)から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0019】
この方法において油剤に溶解させる上記油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルが前記置換基としてパルミトイル基を有する場合、油剤は、炭化水素油及び/又はエステル油として、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群(特に好ましくは、イソドデカン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、及びイソノナン酸イソノニルからなる群)から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0020】
好ましい一実施形態では、この方法により製造される化粧料は耐水性化粧料である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の油剤増粘剤によれば、化粧料に有用な特徴(特に、好適な粘性)を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、溶解時に特徴的な状態を呈するプルラン脂肪酸エステルである。具体的には、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、油剤への溶解時に油剤の粘性を有意に増加させることができる、増粘作用を示すプルラン脂肪酸エステルである。
【0024】
より具体的には、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、プルランの水酸基がミリストイル基及び/又はパルミトイル基で置換されており、かつそのミリストイル基及び/又はパルミトイル基によるプルランの水酸基の置換度が2.4〜2.7の範囲内であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルにおける、ミリストイル基及び/又はパルミトイル基によるプルランの水酸基の置換度は、2.4〜2.7であり、より好ましくは2.5〜2.6である。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルにおける、ミリストイル基及び/又はパルミトイル基によるプルランの水酸基の置換度が2.5〜2.6である場合、油剤に対してより高い増粘効果をもたらすことができる。
【0026】
本発明において「置換度」とは、当該プルラン脂肪酸エステルにおいて、プルランを構成するグルコース環(グルコース残基)1個当たりに存在する水酸基(3個)のうちアシル基(ここでは、ミリストイル基及び/又はパルミトイル基)に置換された水酸基の数をいう。この置換度は、プルラン脂肪酸エステルを構成するグルコース環1個当たりの平均値として算出され、グルコース環に存在する水酸基3個が全て置換されていれば置換度は3となる。置換度は、プルラン脂肪酸エステルについてJIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、下記式に従って算出することができる。
水酸基価= 56.11 × (3−置換度)/((置換基の分子量−1.01)× 置換度+162.14) × 1000
【0027】
本発明で使用しうるJIS K 0070の試験方法とは、JIS(日本工業規格)に定められている化学製品の酸価、水酸基価等の試験方法である。水酸基価は、試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、試験方法は、ここではJIS K 0070のうち、7.3 ピリジン−塩化アセチル法を採用しており、手順の概要は以下の通りである。即ち、試料(ここでは、プルラン脂肪酸エステルであり、予想される水酸基価に応じた量とする)を平底フラスコ200mLに有効数字3桁まで量り取り、ピリジン5mLを加えて溶かす。これに塩化アセチル−トルエン溶液(塩化アセチル100gをトルエン1Lに溶かしたもの)5mLを加える。直ちに平底フラスコに空気冷却管を付けて5分間水浴で65〜70℃に加熱する。空気冷却管の上部から約10mLの水を加えて冷却し、空気冷却管を外した後、平底フラスコに栓をして激しくふる。さらに栓を外した後、空気冷却管を付けて5分間砂浴又は熱板上で煮沸し、過剰の塩化アセチルを加水分解させる。放冷後、約5mLの水で数回空気冷却管を洗う。フェノールフタレイン溶液(フェノールフタレイン1.0gにエタノール(95)90mLを加え、水で100mLとしたもの)を指示薬として数滴加え、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬にうすい紅色が30秒間続いたときを終点とする。なおここで用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液は、水酸化カリウム35gを20mLの水に溶かし、エタノール(95)を加えて1Lとして、二酸化炭素を遮って2〜3日間放置した後、上澄みを取るか又はろ過したものであり、別途ファクターを求めておく。空試験は、試料を入れないで同様に操作する。さらに、下記式に従って水酸基価を算出する。
水酸基価 = [(空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)) − (滴定に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL))] × (0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター) × 28.05/ (試料の質量(g)) + 酸価
【0028】
なお酸価は、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、試験方法は、ここではJIS K 0070のうち、3.1 中和滴定法を採用しており、手順の概要は以下の通りである。即ち、試料(ここでは、プルラン脂肪酸エステルであり、予想される酸価に応じた量とする)を三角フラスコに量り取る。溶剤(ジエチルエーテルとエタノール(99.5)を体積比で1:1又は2:1、もしくは試料の溶剤への溶解度に応じてジエチルエーテルを多くした配合比にして混合し、使用直前にフェノールフタレイン溶液を指示薬として数滴加え、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で中和したもの)100mL及び指示薬としてフェノールフタレイン溶液数滴を加え、水浴上で試料が完全に溶け切るまで十分に振り混ぜる。なお、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液は、水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エタノール(95)を加えて1Lとし、二酸化炭素を遮って2〜3日間放置した後、上澄みを取るか又はろ過したものであり、別途ファクターを求めておく。さらに、0.1mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が30秒間続いたときを終点とする。さらに、下記式に従って酸価を算出する。
酸価 = (滴定に用いた0.1mol/Lカリウムエタノール溶液の量(mL)) × (0.1mol/Lカリウムエタノール溶液のファクター) × 5.611/ (試料の質量(g))
【0029】
上記「ファクター」は、当業者によって通常理解される通り、標定により求められる、正確な濃度とのずれを補正するための係数である。
【0030】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルの製造原料として使用されうるプルランは、下記一般式I:
【化1】
【0031】
で表される化合物である。この化合物は、典型的にはデンプン等を原料として黒酵母の一種であるアウレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)を培養することによりその培養液中に分泌させて得られる、マルトトリオースが規則正しくα−1,6結合した水溶性の天然多糖類である。本発明で使用されるプルランは、重量平均分子量(Mw)が通常は5万以上、好ましくは5万〜30万であるものが好ましい。すなわち、上記一般式Iにおけるnは、100以上であり、好ましくは102〜618である。本発明において原料として使用されうるプルランは、任意の方法で製造されたプルランであってよく、任意の市販のプルランを入手して使用することができる。好適に使用可能な市販のプルランとしては、例えば株式会社林原の商品名「食品添加物プルラン」などが挙げられる。
【0032】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、本発明に係る上記のようなプルランと、脂肪酸であるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸、又はそのハロゲン化物(ハライド)とを、反応(ミリストイル化及び/又はパルミトイル化)させることにより、製造することができる。例えば、プルラン100部とジメチルホルムアミド(DMF)800部とピリジン(適宜量)とを混合して溶解させ、この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに脂肪酸であるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物(ハライド)とトルエン1000部の混合液を徐々に(例えば1時間かけて)滴下し、撹拌した後、メタノール等による再沈殿及び洗浄を行うことにより、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを調製できる。洗浄後の沈殿は、乾燥させて粉砕化してもよい。
【0033】
ここでミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸のハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を含む)としては、特に限定するものではないが、好ましい例として塩化ミリストイル、塩化パルミトイルが挙げられる。ミリスチン酸、パルミチン酸のハロゲン化物は、当業者であれば常法により容易に調製することができるが、それ自体を市販品として入手することもできる。
【0034】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルにおける水酸基の置換度は、プルランと、反応させるミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物との量比を調節することにより制御することができる。具体的には、例えば実験的には、それらの量比を少しずつ変えた反応系で得られるプルラン脂肪酸エステルについて置換度を算出し、それによって置換度が2.4〜2.7の範囲になるような、プルランとミリスチン酸及び/若しくはパルミチン酸又はそのハロゲン化物との混合量比を決定することができる。一実施形態では、プルランに対して塩化ミリストイルを3.65〜4.11倍の重量比で混合すればよい。別の実施形態では、プルランに対して塩化パルミトイルを4.07〜4.57倍の重量比で混合すればよい。
【0035】
本発明において油剤(oil agent)とは、1種以上の油性成分からなる油又はそれを主成分として含む油性組成物を意味する。本発明において、プルラン脂肪酸エステルは、油剤に特徴的な状態を付与することができる。具体的には、本願発明に係るプルラン脂肪酸エステルを油剤に添加することにより、油剤の粘性を増加させることができる。
【0036】
本願発明に係るプルラン脂肪酸エステルの油剤に対する増粘効果は、例えば、後述の実施例に記載のようにして確認することができる。具体的には、本発明のプルラン脂肪酸エステルの油剤に対する増粘効果は、油剤のみの粘度とプルラン脂肪酸エステルを添加した油剤(プルラン脂肪酸エステル溶解液)の粘度の差を測定することによって評価できる。その評価が50cP以上500cP未満の場合には増粘効果があると判断することができ、500cP以上の場合には増粘効果が特に高いと判断することができる。
【0037】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが溶解時に特徴的な状態(増粘作用)を示す油剤は、特に限定されないが、例えば動植物油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン類などの油性成分、又はそれらのうち2種以上の混合物が挙げられる。本発明のプルラン脂肪酸エステルが溶解時に特徴的な状態(増粘作用)を示す油性成分としては、具体的には、流動パラフィン(例えば、軽質流動パラフィン)、イソドデカン、スクワランなどの炭化水素油や、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル及びリンゴ酸ジイソステアリルなどのエステル油が挙げられる。これらの油性成分は化粧品に広く使用されている。
【0038】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが溶解時に特徴的な状態(増粘作用)を示す油性成分としては、炭化水素油ではイソドデカンなど、エステル油ではイソノナン酸イソノニル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリルなどが特に好適な例として挙げられる。
【0039】
したがって本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを油剤の粘性を増加させるために使用することができる。すなわち本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤に関する。本発明に係る油剤増粘剤は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルに加えて、化粧料において一般的に使用され化粧料の製剤上許容されている不活性添加剤(賦形剤、保存剤、希釈剤、溶媒等)を含んでもよい。また本発明は、油剤の粘性を増加させるのに使用するための本発明に係るプルラン脂肪酸エステルも提供する。さらに本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステル又はそれを含む油剤増粘剤を油剤に溶解させることにより、油剤の粘性を増加させる方法も提供する。
【0040】
本発明はまた、本発明に係る油剤増粘剤を含む油剤を含有することを特徴とする化粧料を提供する。本発明は、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を含有することを特徴とする化粧料も提供する。このような化粧料は、本発明に係る油剤増粘剤又はそれに含まれるプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を、他の配合成分との混合等により化粧料に配合して得られるものである。ここで油剤は、一般に化粧品に使用されるものであれば特に限定されず、上述のような、本発明に係るプルラン脂肪酸エステルが溶解時に特徴的な状態(増粘作用)を示す油剤を、好適に用いることができる。そのような油剤は、例えば動植物油、炭化水素油、高級脂肪酸、エステル油、高級アルコール、シリコーン類などの油性成分を1種以上含有するものであってよい。本発明において油剤は、好ましくは液体油である。本発明に係る油剤は、特に上述のような炭化水素油やエステル油を含有することが好ましく、イソドデカン、イソノナン酸イソノニル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、及びリンゴ酸ジイソステアリルからなる群から選択される少なくとも1つを含有することがさらに好ましい。
【0041】
本発明に係る油剤増粘剤又はそれに含まれるプルラン脂肪酸エステルを油剤に溶解させて、特徴的な状態を生じさせ、即ち増粘することができる。本発明に係る油剤増粘剤又はそれに含まれるプルラン脂肪酸エステルの油剤への溶解は、50℃以上、より好ましくは60℃以上、特に50〜80℃、例えば60〜70℃で行うことが好ましい。本発明に係る油剤増粘剤又はそれに含まれるプルラン脂肪酸エステルを溶解させた油剤を化粧料に添加することで、化粧料に粘性を好適に付与又は増強することができる。
【0042】
本発明に係る化粧料において、油剤増粘剤の油剤への配合量は、限定されるものではないが、油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルと油剤の合計量に対してプルラン脂肪酸エステルが通常は0.01%〜40%、好ましくは0.1〜30%、さらに好ましくは1〜15%となる量が好ましい。
【0043】
本発明に係る油剤増粘剤を添加した化粧料には、油剤を構成する前記のような油性成分以外にも、化粧料に一般的に使用される添加剤などの任意の配合成分が必要に応じて添加されうる。例えば、顔料、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、保湿剤、防腐剤、防藻剤、ラメ剤、香料、美容成分、色素などを添加することも好ましい実施形態である。また、精製水などの水性成分も配合してもよい。
【0044】
本発明に係る油剤増粘剤を添加した化粧料は、目的に応じ、様々な製品形態へと調製することができる。例えば、固形状、ペースト状、液状、ゲル状などの形態に調製され、具体的には口紅、リップグロス、頬紅、アイカラー、アイライナー、アイシャドー、マスカラ、ネイルトリートメント、リキッドファンデーションなどのメーキャップ化粧品、化粧水、乳液、クリーム、エッセンス、オイルクレンジング、パック、リップクリームなどの基礎化粧品、スタイリング、ヘアクリームなどの頭髪化粧料などに使用される。本発明に係る化粧料としては、増粘が望まれる種類の化粧料、例えばリップクリーム、マスカラ、オイルクレンジング、パックが特に好ましい。本発明に係る化粧料は、一般の化粧料製造方法に従って製造されるものであってよく、その製造法は特に制限されない。
【0045】
本発明に係る油剤増粘剤を配合した化粧料は、油性化粧料であることが好ましい。また本発明に係る油剤増粘剤を配合した化粧料は、粘性増加によって肌に留まりやすくなり耐水性が向上するため、好適には、良好な耐水性を示す。したがって本発明に係る化粧料は、耐水性化粧料であることも好ましい。本発明に係る油剤増粘剤を配合した化粧料は、使用感(例えば、滑らかさ)、その持続性、均一性なども良好である。
【0046】
さらに本発明は、本発明に係る油剤増粘剤を上記のような化粧品に用いる油剤に混合して溶解させ(特に、油剤増粘剤に含まれるプルラン脂肪酸エステルを油剤に十分溶解させ)、それを化粧料に配合することを特徴とする、化粧料の製造方法も提供する。この方法において、化粧料に用いる好適な油剤は上述の通りであり、特に炭化水素油及び/又はエステル油を含むことが好ましい。
【0047】
本発明はまた、本発明に係るプルラン脂肪酸エステル又はそれを含む油剤増粘剤を油剤に混合溶解させた溶液も提供する。そのような溶液は、ある程度の粘性が必要な化粧料を製造するための原材料として好適に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例により説明するが、本実施例によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0049】
[製造例1] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(1)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.0
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン(株式会社林原、商品名:食品添加物プルラン)100部(ここでは「部」は重量部を意味する;以下同じ)とジメチルホルムアミド(DMF)800部とピリジン101部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル305部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0050】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度(ここでは、プルランを構成するグルコース環1個当たりの、アシル基に置換された水酸基の数を意味する;以下同じ)は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.0であった。
【0051】
[製造例2] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(2)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.3
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン116部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル350部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0052】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.3であった。
【0053】
[製造例3] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(3)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.4
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン121部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル365部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0054】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.4であった。
【0055】
[製造例4] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(4)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.5
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン126部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル380部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0056】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。
【0057】
[製造例5] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(5)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.6
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン131部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル396部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0058】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.6であった。
【0059】
[製造例6] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(6)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.7
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン136部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル411部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0060】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.7であった。
【0061】
[製造例7] プルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン)の製造(7)
置換基:ミリストイル基
置換度:2.8
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン141部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ミリストイル426部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0062】
こうして得られたミリストイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.8であった。
【0063】
[製造例8] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(1)
置換基:パルミトイル基
置換度:1.5
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン76部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル255部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0064】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、1.5であった。
【0065】
[製造例9] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(2)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.3
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン116部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル390部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0066】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.3であった。
【0067】
[製造例10] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(3)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.4
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン121部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル407部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0068】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.4であった。
【0069】
[製造例11] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(4)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.5
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン125部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル423部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0070】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。
【0071】
[製造例12] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(5)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.6
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン131部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル440部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0072】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.6であった。
【0073】
[製造例13] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(6)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.7
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン136部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル457部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0074】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.7であった。
【0075】
[製造例14] プルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン)の製造(7)
置換基:パルミトイル基
置換度:2.8
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン141部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化パルミトイル476部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0076】
こうして得られたパルミトイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.8であった。
【0077】
[製造例15] プルラン脂肪酸エステル(ステアロイル化プルラン)の製造
置換基:ステアロイル基
置換度:2.5
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン126部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ステアロイル467部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0078】
こうして得られたステアロイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。
【0079】
[製造例16] プルラン脂肪酸エステル(ラウロイル化プルラン)の製造
置換基:ラウロイル基
置換度:2.5
容量1Lの四つ口フラスコにプルラン100部とDMF800部とピリジン126部とを仕込み、溶解させた。この溶液の温度を90℃に保ちながら、そこに塩化ラウロイル337部とトルエン1000部の混合液を1時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌を実施した。その後、メタノールを加えて再沈殿及び洗浄を実施した。洗浄後の沈殿を乾燥させ、ミルミキサーにて粉砕して目的物を得た。
【0080】
こうして得られたラウロイル化プルランにおける置換度は、JIS K 0070の試験方法に従って水酸基価を測定し、水酸基価から上述の式に基づいて算出したところ、2.5であった。
【0081】
[実施例1]
製造例1〜16で得られたプルラン脂肪酸エステル15部に各種油剤85部を添加し、70℃で攪拌後の溶液の状態を観察した。特にプルラン脂肪酸エステルの添加による油剤の粘性の変化(増粘効果)を観察した。増粘効果の評価は以下のようにして行った。
【0082】
まず、プルラン脂肪酸エステルの添加前の油剤と、プルラン脂肪酸エステルの添加後の油剤(プルラン脂肪酸溶解液)の粘度(単位:cP:センチポアズ)、)を、B型粘度計を用いて測定した。ローターおよび回転数は、適宜選択した。B型粘度計を用いて測定した粘度に基づきプルラン脂肪酸溶解液の粘度と油剤の粘度の差(cP)を算出し、その粘度差から以下の基準に従って増粘効果を判断した。
・粘度差500cP以上 → A:増粘効果が大きい
・粘度差50cP以上500cP未満 → B:増粘効果あり
・粘度差10cP以上50cP未満 → C:増粘効果僅かにあり
・粘度差10cP未満 → D:増粘効果殆ど無し
なお後述の実施例における増粘効果の評価もこれと同様の方法で行った。
【0083】
表1に製造例1〜7で得たプルラン脂肪酸エステル、表2に製造例8〜14で得たプルラン脂肪酸エステルを用いて観察された結果をそれぞれ示す。
【0084】
表1に示される通り、ミリストイル基を置換基として有する製造例3〜6で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度2.4〜2.7)は、各種油剤に対して増粘作用を示した。一方、製造例1、2、7で得られたミリストイル化プルラン(置換度2.3以下又は2.8以上)は、油剤に対する増粘作用は、弱いか又は認められなかった。
【表1】
【0085】
また表2に示される通り、パルミトイル基を置換基として有する製造例10〜13で得られたプルラン脂肪酸エステル(置換度2.4〜2.7)は、各種油剤に対して、増粘作用を示した。一方、それらと比較すると、製造例8、9、14で得られたパルミトイル化プルラン(置換度2.3以下又は2.8以上)では、油剤に対する増粘作用は、弱いか又は認められず、十分な増粘作用を示さなかった。
【表2】
【0086】
また表3には、製造例4、11で得たミリストイル化プルラン及びパルミトイル化プルランについての本実施例の観察結果を、製造例15、16で得たステアロイル化プルラン及びラウロイル化プルランのものと比較して示した。これらのプルラン脂肪酸エステルは、いずれも置換度は2.5であるが、置換基が異なっている。
【0087】
表3に示すように、製造例4で得たミリストイル化プルラン及び製造例11で得たパルミトイル化プルランは、油剤に対する増粘作用を示した。それらの増粘作用と比較すると、製造例15で得たステアロイル化プルラン及び製造例16で得たラウロイル化プルランでは、油剤に対する増粘作用は、弱いか又は認められず、十分な増粘作用を示さなかった。
【表3】
【0088】
[実施例2] サンスクリーンの増粘
製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.5)を用い、表4に示す処方に従って、サンスクリーン組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(2)と(16)を70℃で混合攪拌し、そこに成分(1)、(3)〜(11)を順次添加した後、80℃で混合攪拌した。さらに、成分(12)、(13)、(15)を別途混合攪拌したものを添加し、80℃で混合攪拌することにより、被験サンプル1を調製した。
【0089】
比較のため、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステル[成分(16)]に代えて、製造例1で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.0)[成分(17)]及び製造例7で得られたプルラン脂肪酸エステル(ミリストイル化プルラン、置換度2.8)[成分(18)]をそれぞれ用いて、同様の処方及び手順で比較サンプル1及び2を調製した。
【0090】
さらに陰性対照として、プルラン脂肪酸エステルを含有せず、かつ増粘剤である無水ケイ酸を含有するサンプルを調製した。この陰性対照サンプルの調製では、成分(11)に続いて無水ケイ酸[成分(14)]を添加した後、80℃で混合攪拌した。
【表4】
【0091】
上記のようにして調製したサンスクリーン組成物サンプルの粘性を評価した。粘度は上記と同様にB型粘度計により測定した。結果を表5に示した。
【0092】
表5から明らかなように、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したサンスクリーン組成物(被験サンプル1)の粘度は、比較サンプル1及び2、並びに対照サンプルのサンスクリーン組成物と比べて優れていた。
【表5】
【0093】
また、上記のようにして調製したサンスクリーン組成物サンプルを用いて、耐水性試験を実施した。まず、スライドガラスにサンスクリーン組成物サンプルを塗布し、乾燥後、重量を測定した。これに流水を一定時間当てた後、乾燥させて再度重量を測定した。流水処理後の乾燥重量の、流水処理前の乾燥重量に対する比率(流水処理後のサンプル残存割合)によって、サンスクリーン組成物の耐水性を評価した。結果を表6に示した。
【0094】
表6から明らかなように、製造例4で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したサンスクリーン組成物(被験サンプル1)は流水処理後も9割近くが残存しており、その耐水性は比較サンプル1及び2、並びに対照サンプルのサンスクリーン組成物と比べて格段に優れていた。
【表6】
【0095】
さらに、これらのサンスクリーン組成物サンプルについて、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った。その結果、被験サンプル1は、その何れについても、比較サンプル1及び2、並びに陰性対照サンプルよりも良好な結果を示した。
【0096】
[実施例3] マスカラの増粘
製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度2.5)を用い、表7に示す処方に従って、マスカラ用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(1)と(4)を60℃で混合攪拌し、そこに成分(5)、(6)及び(8)(10)を順次添加して60℃で混合攪拌することにより、被験サンプル2を調製した。
【0097】
比較のため、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステル[成分(1)]に代えて、製造例9で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度2.3)[成分(2)]及びパルミトイル化デキストリン[成分(3)]をそれぞれ用いて、同様の処方及び手順で比較サンプル3及び4を調製した。比較サンプル4以外は、増粘剤である無水ケイ酸[成分(7)]を含有していない。比較サンプル4の調製においては、成分(6)に続いて無水ケイ酸[成分(7)]を添加した。
【表7】
【0098】
上記のようにして調製したマスカラ用組成物サンプルの粘性をB型粘度計により測定し、評価した。結果を表8に示した。
【0099】
表8から明らかなように、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したマスカラ用組成物(被験サンプル2)の粘度は、比較サンプル3及び4と比べて優れていた。
【表8】
【0100】
また、上記のようにして調製したマスカラ用組成物サンプルを用いて、耐水性試験を実施した。まず、毛束にマスカラサンプルを塗布し、乾燥後、重量を測定した。これを脱塩水中で一定時間攪拌した後、乾燥させて再度重量を測定した。この流水処理後の乾燥重量の、流水処理前の乾燥重量に対する比率(流水処理後のサンプル残存割合)によって、マスカラ用組成物の耐水性を評価した。結果を表9に示した。
【0101】
表9から明らかなように、製造例11で得られたプルラン脂肪酸エステルを添加したマスカラ用組成物(被験サンプル2)は流水処理後も8割以上が残存しており、その耐水性は比較サンプル3及び4よりも優れていた。
【表9】
【0102】
さらに、これらのマスカラ用組成物サンプルについて、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った。その結果、被験サンプル2は、その何れについても、比較サンプル3及び4よりも良好な結果を示した。
【0103】
[実施例4]
製造例10で得られたプルラン脂肪酸エステル(パルミトイル化プルラン、置換度2.4)を用い、表10に示す処方に従って、ファンデーション用組成物の被験サンプルを調製した。まず、成分(3)、(4)、(17)を60℃で混合攪拌し、そこに成分(1)、(2)、(5)〜(9)を順次添加した後、60℃で混合攪拌した。そこに、成分(10)〜(16)を別途60℃で混合攪拌したものを添加して、60℃で混合攪拌することにより、被験サンプル3を調製した。なお油剤として成分(3)のジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、成分(4)のイソドデカンを用いた。
【0104】
こうして得られた被験サンプル3について、使用感、その持続性、均一性における官能試験を行った結果、何れも良好であった。
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明に係るプルラン脂肪酸エステルは、油性成分に対して溶解時に特徴的な状態を示す、即ち油剤を増粘させることができる。本発明に係るプルラン脂肪酸エステルを含む油剤増粘剤は、化粧料に適度な粘性を付与するために有利に使用することができる。
【0106】
本明細書で引用する全ての刊行物、特許および特許出願はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。