特許第6099698号(P6099698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099698
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】軸受け構造体
(51)【国際特許分類】
   F16C 35/063 20060101AFI20170313BHJP
   F16C 33/66 20060101ALI20170313BHJP
   F16C 19/38 20060101ALI20170313BHJP
   F16C 25/06 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
   F16C35/063
   F16C33/66 Z
   F16C19/38
   F16C25/06
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-115826(P2015-115826)
(22)【出願日】2015年6月8日
(62)【分割の表示】特願2010-156602(P2010-156602)の分割
【原出願日】2010年7月9日
(65)【公開番号】特開2015-180836(P2015-180836A)
(43)【公開日】2015年10月15日
【審査請求日】2015年6月8日
(31)【優先権主張番号】10 2009 032 294.9
(32)【優先日】2009年7月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509015590
【氏名又は名称】アクツィエブーラゲート エスケイエフ
【氏名又は名称原語表記】Aktiebolaget SKF
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ハース
(72)【発明者】
【氏名】エルケ フーン
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ゲアスティング
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ヴェント
(72)【発明者】
【氏名】ペーター レンパー
【審査官】 瀬川 裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−046380(JP,A)
【文献】 特開2006−183847(JP,A)
【文献】 特開平10−274243(JP,A)
【文献】 特開2009−002504(JP,A)
【文献】 特開2008−069808(JP,A)
【文献】 特開昭63−231021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 35/063
F16C 19/38
F16C 25/06
F16C 33/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受け構造体であって、少なくとも1つの外輪と、少なくとも2つの内輪を有する内輪ユニットとを備えており、少なくとも1つの外輪と内輪との間で転動体が転動するものにおいて、内輪ユニットは、少なくとも1つの固定エレメントを収容するための、軸方向に貫通する幾つかの孔を備えており、該固定エレメントによって、内輪ユニットは、軸受け支持体に固定されるようになっており、孔は、軸受け構造体の中心軸線から距離を置いて内輪ユニットの内輪に配置されており、内輪は、軸方向に延在する中心孔を備えており、該中心孔に、緊締エレメントが配置されており、該緊締エレメントの外面と前記中心孔の内面との間のプレス嵌めによって、内輪が相互に所望に軸方向に緊締されるようになっていることを特徴とする、軸受け構造体。
【請求項2】
内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面の、半径方向内側に位置する縁部で、周方向に延びる環状の面取部を備えている、請求項1記載の軸受け構造体。
【請求項3】
内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面で、溝を備えており、該溝は、半径方向に内側から外側へ延在していて、かつ該溝を通って、面取部に存在する潤滑剤が内輪の間で半径方向外向きに搬送されるように形成されている、請求項1または2記載の軸受け構造体。
【請求項4】
緊締エレメントは、中空室と、半径方向に延びる孔とを備えており、該孔は、該孔を通って潤滑剤が中空室から面取部へ搬送されるように形成されている、請求項2又は3記載の軸受け構造体。
【請求項5】
内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪とは反対側に位置する外面で、別の溝を備えており、別の溝は、該別の溝を通って潤滑剤が中心孔に、または固定エレメントのための少なくとも1つの孔に搬送されるように形成されている、請求項3又は4記載の軸受け構造体。
【請求項6】
内輪の少なくとも1つは、中心孔の内面に、軸方向に延びる溝を備えており、該溝は、該溝を通って潤滑剤が外面における溝の間を搬送されるように形成されている、請求項または記載の軸受け構造体。
【請求項7】
外輪は、半径方向外側に位置する環状に延びる固定溝を備えている、請求項1からまでのいずれか1項記載の軸受け構造体。
【請求項8】
外輪は、歯車の構成部材として形成されていて、かつ半径方向外側に位置する環状に延びる歯列を備えている、請求項1からまでのいずれか1項記載の軸受け構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受け構造体であって、少なくとも1つの外輪と、少なくとも2つの内輪を有する内輪ユニットとを備えており、少なくとも1つの外輪と内輪との間で転動体が転動するものに関する。
【背景技術】
【0002】
このような軸受け構造体は、自動車エンジンにおける歯車を支承するために、たとえば1つの構成では、2列式の円錐ころ軸受けとして用いられる。ここではたとえば2列式の円錐ころ軸受けの外輪が、歯車の対応する嵌合面に係合する。対応するケーシングに歯車を固定するために、たとえば内輪が、適当な固定ユニットに保持されるので、歯車は、回動可能にエンジンケーシングに支承される。固定ユニットは、軸方向に延びる孔を備えており、孔は、ケーシングに軸受け構造体を固定するための従来慣用のねじを収容するために形成されている。総じてこのような軸受け構造体では、その特徴として、比較的複雑な構造および面倒な組立を有している。とりわけ円錐ころ軸受けの2つの内輪の相互の必要な軸方向のプレロードを予め所望に設定することが面倒である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、冒頭で述べたような軸受け構造体を改良して、特に簡単な構造を有する改善された軸受け構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明によれば、軸受け構造体であって、少なくとも1つの外輪と、少なくとも2つの内輪を有する内輪ユニットとを備えており、少なくとも1つの外輪と内輪との間で転動体が転動するものにおいて、内輪ユニットは、少なくとも1つの固定エレメントを収容するための、軸方向に貫通する幾つかの孔を備えており、該固定エレメントによって、内輪ユニットは、軸受け支持体に固定されるようになっており、孔は、軸受け構造体の中心軸線から距離を置いて内輪ユニットの内輪に配置されており、内輪は、軸方向に延在する中心孔を備えており、該中心孔に、緊締エレメントが配置されており、該緊締エレメントによって、内輪が所望に軸方向に緊締されるようになっている。
【0005】
有利には、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面の、半径方向内側に位置する縁部で、周方向に延びる環状の面取部を備えている。
【0006】
有利には、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面で、溝を備えており、該溝は、半径方向に内側から外側へ延在していて、かつ前記溝を通って、面取部に存在する潤滑剤が内輪の間で半径方向外向きに搬送されるように形成されている。
【0007】
有利には、溝は、渦巻き状に形成されている。
【0008】
有利には、緊締エレメントは、中空室と、半径方向に延びる孔とを備えており、該孔は、該孔を通って潤滑剤が中空室から面取部へ搬送されるように形成されている。
【0009】
有利には、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪とは反対側に位置する外面で、別の溝を備えており、別の溝は、該別の溝を通って潤滑剤が中心孔に、または固定エレメントのための少なくとも1つの孔に搬送されるように形成されている。
【0010】
有利には、内輪の少なくとも1つは、中心孔の内面に、軸方向に延びる溝を備えており、該溝は、該溝を通って潤滑剤が外面における溝の間を搬送されるように形成されている。
【0011】
有利には、内輪は、プレス嵌めによって緊締エレメントと結合されている。
【0012】
有利には、外輪は、半径方向外側に位置する環状に延びる固定溝を備えている。
【0013】
有利には、外輪は、歯車の構成部材として形成されていて、かつ半径方向外側に位置する環状に延びる歯列を備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載した構成によれば、軸受け構造体において、少なくとも1つの外輪と、少なくとも2つの内輪を備えた内輪ユニットとが設けられており、少なくとも1つの外輪と内輪との間で転動体が転動している。内輪ユニットは、少なくとも1つの固定エレメントを収容するための、軸方向に貫通する幾つかの孔を備えており、固定エレメントによって、内輪ユニットは、軸受け支持体に固定可能であり、孔は、軸受け構造体の中心軸線から距離を置いて配置されている。ここでは軸方向の中心軸線について考慮される。孔は、内輪に配置されており、内輪は、それぞれ軸方向に延在する中心孔を備えており、中心孔に、緊締エレメントが配置されており、緊締エレメントによって、内輪が規定の形式で軸方向に緊締可能である。
【0015】
公知の軸受け構造体に対して、本発明による軸受け構造体は、取り扱いの極めて簡単な構造を有している。特に必要な構成部材数は、軸受け構造体の内輪ユニットの内側における固定孔の形成によって低減されている。内輪ユニットは、要求に適合可能な様々な構造を有することができる。とりわけ内輪ユニットは、原則的に前製作することができる。軸受け構造体の中心軸線に関する孔の距離を置いた配置構造によって、形成された中心孔の内側で緊締エレメントを用いることができ、これによって内輪の相互の軸方向の緊締を保証することができる。このことはとりわけいわゆるランダウン現象(Run−Down−Effekt)を回避するのに重要である。このランダウン現象は、運転開始前に内輪のプレロードの低下した状態で幾回転を行う必要のある円錐ころ軸受けで生じる。回転によって軸方向で外側に位置する縁に向かう円錐ころ軸受けの軸方向の変位が生じる。円錐ころのこの位置でしか、相応の軸受け構造体のトラブルのない運転が保証されない。2列式の円錐ころ軸受けの前組立のために、とりわけたとえば内輪のプレロードの低下状態で15回転を行う必要がある。円錐ころが最終的な位置で外縁に当接すると、直ちにプレロードを高めて、次いで保持する必要があり、これによって最終的な組立後に、円錐ころ軸受けの新たな運転開始時に、円錐ころは、再び軸方向に当接するよう移動されることはない。中心孔の内側における緊締エレメントの配置構造によって、このプロセスは相応の軸受け構造体で簡単に実現することができる。
【0016】
本発明の有利な形態によれば、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面の、半径方向内側に位置する縁部で、周方向に延びる環状の面取部を備えている。有利には、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪に向いた外面で、溝を備えており、溝は、半径方向に内側から外側へ延在していて、かつ溝を通って、面取部に存在する潤滑剤が内輪の間で半径方向外向きに搬送可能に形成されている。適切に配置された軸受け構造体によって、たとえばエンジンルームから到来する潤滑剤、特に油を面取部に搬送することができる。搬送は、たとえば適切に形成された中央孔を介して行われる。少なくとも一方の内輪の外面における面取部および面取部に接続された溝によって(ここでは内輪の接触している外面が選択される)、油は、外向きに搬送され、そうして2つの内輪の間で、転動体が転動する室に到達する。油は、そこで分配され、したがって転動体を潤滑するために用いられる。
【0017】
本発明の有利な形態によれば、溝が螺旋状に形成されている。このような螺旋状の溝は、内輪の切削加工プロセスの間に特に簡単に製作することができる。したがって切削工具を面取部に当て付けて、内輪の材料内に導入し、半径方向外向きに引き出すことができ、その間内輪はたとえば回転する。これによって螺旋状の溝が形成され、溝を通って潤滑剤が内輪の間で面取部から半径方向外向きに搬送可能である。選択的に溝は、任意の別の形状を有することもでき、たとえば半径方向内側から外側へ真っ直ぐに延びている。
【0018】
本発明の有利な形態によれば、緊締エレメントは、中空室と、半径方向に延びる孔とを備えており、孔は、孔を通って潤滑剤が中空室から面取部へ搬送されるように形成されている。たとえば自動車のエンジンに軸受け構造体を適切に組み付ける際に、中空室は、エンジンの油室と接続することができるので、周方向に延びる環状の孔を通って潤滑剤が面取部に搬送可能であり、面取部に接続された溝を通って内輪の間に搬送可能である。
【0019】
本発明の選択的な1つの形態によれば、内輪の少なくとも1つは、軸方向に隣接して位置する内輪とは反対側に位置する外面で、別の溝を備えており、別の溝は、別の溝を通って潤滑剤が中心孔に搬送可能であるように形成されている。有利には、内輪は、中心孔の内面で、概ね軸方向に延在する溝を備えており、溝は、溝を通って潤滑剤が溝の間で外面に搬送可能であるように形成されている。このような構成では、油は、軸受け構造体を組み立てた状態で、車両のエンジンルームから、外側に位置する溝に搬送することができ、溝を介して中心孔に、中心孔を通って面取部に、内輪の間の内側に位置する溝を介して転動体に搬送することができる。したがって転動体の十分な潤滑が保証されている。
【0020】
さらに少なくとも1つの外輪と、少なくとも2つの内輪を有する内輪ユニットとを備えた選択的な軸受け構造体では、少なくとも1つの外輪と内輪との間で転動体が転動する。内輪ユニットは、少なくとも1つの固定エレメントを収容するための、軸方向に貫通する幾つかの孔を備えており、固定エレメントによって、内輪ユニットは、軸受け支持体に固定可能であり、この場合孔は、軸受け構造体の中心軸線から距離を置いて配置されている。ここでは軸方向の中心軸線について考慮される。ここでは前述した軸受け構造体と同様の利点が得られる。有利には、内輪ユニットは、緊締エレメントを備えており、緊締エレメントは、内輪の内側に配置されており、緊締エレメントに孔が配置されている。緊締エレメントによって、内輪は、所望に軸方向に緊締される。有利には、内輪は、スペーサ部材によって、軸方向に間隔を有して配置されており、この場合緊締ディスクが設けられており、スペーサ部材、内輪および緊締ディスクは、緊締エレメント上に配置されており、固定エレメントによって、軸受け支持体に軸受け構造体が組み付けられた状態で、緊締ディスクによって、内輪の規定の軸方向のプレロードが得られる。
【0021】
本発明の別の利点および形態は、図面に関する以下の発明を実施するための形態の説明から判る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1形態の斜視図である。
図2図1の形態を外側からみた立面図である。
図3図1および図2に示した形態の断面図である。
図4】本発明の第2形態の断面図である。
図5】本発明の第2形態の断面図である。
図6】本発明の第3形態の断面図である。
図7】別の軸受け構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を用いて具体的に説明する。
【0024】
図1には、円錐ころ軸受け構造体1を斜視図で示した。円錐ころ軸受け構造体1は、1つの外輪3と複数の内輪とを備えており、複数の内輪のうち、斜視図で示したので、単に1つの内輪5を図示した。外輪3には、周方向に延びる環状の溝7が形成されている。溝7を介して、外輪3は、図示していない適切な歯車またはケーシングと結合されている。結合は、たとえば溝7に取り付けられた固定リングを介して行うことができ、固定リングは、歯車の内側で対応する溝に係合する。
【0025】
内輪5の内側に中心孔が形成されており、中心孔にピン9が挿入されている。ピン9は、内輪5を図示していない第2の内輪と軸方向に緊締するために用いられ、これについては図3に関して説明する。内輪5の内側に別の孔11が形成されており、孔11は、軸受け構造体の中心軸線に対して距離を置いて配置されている。孔11は、固定ボルトとしての根角ボルトまたはこれに類する固定手段を収容するために用いられ、固定手段によって、軸受け構造体は、たとえば自動車のエンジンに固定することができる。
【0026】
図2には、図1に示した円錐ころ軸受け構造体1を立面図で示した。外輪3、内輪5および中心孔21が看取される。図1に示したピン9は、図2では、中心孔21に挿入されていない。中心孔21の周りに6つの孔11が配置されている。選択的な形態では、4つ、3つまたは2つの孔を設けてもよい。同様により多数の孔も考えられる。外輪3と内輪5との間に幾つかの円錐ころ23が配置されており、円錐ころ23によって、内輪5および外輪3は相対回動可能に支承されている。
【0027】
内輪5は、周方向に延びる環状の溝51を備えている。溝51は、半径方向にみて孔11の外側に配置されている。周方向に延びる環状の溝51から出発して、半径方向内向きに延びる溝53が、中心孔21まで延在している。円錐ころ軸受け構造体1が取り付けられるエンジンの適切な構成によって、潤滑油は、エンジンルームから溝51に到達する。溝51に沿って、実際に溝51に流入する箇所とは無関係に、潤滑油は、溝53に、ひいては中心孔21に搬送される。中心孔の内側で、溝53に、図示していない軸方向に延びる溝が結合しており、溝で、内輪5aと5b(図3参照)との間に潤滑油が搬送される。選択的に、溝53は、単数(または複数)の孔11まで通じており、孔11内で、対応する溝を介して潤滑油の付加的なガイドが行われるようにすることもできる。選択的に溝53は、幾何学的に別の形状、たとえば渦巻き状に形成してもよい。
【0028】
図3には、図1および図2に示した円錐ころ軸受け構造体を断面図で示した。ここでは断面図の半分を図示した。
【0029】
図示の円錐ころ軸受け構造体1は、一体的な外輪3を備えている。また溝7が看取され、溝7は、軸方向にみて外輪3の内側で中央に配置されている。外輪3には、円錐ころ31のための斜めに延びる2つの走行面が形成されている。軸受け構造体1は、2つの内輪5a,5bを備えている。各内輪5a,5bは、円錐ころ31のための対応する走行面を備えている。したがって選択した図面では、いわゆるO字形配置構造で、一体的な外輪3と2部分から成る内輪5a,5bを備えた、2列式の円錐ころ軸受けが形成される。両円錐ころ軸受けは、それぞれ円錐ころ31群を備えており、円錐ころは、保持器33内でガイドされる。
【0030】
各内輪5a,5bは、中心孔21を備えている。中心孔21の内側にピン9が配置されている。有利には、ピン9は、複数の機能を有している。一方では、ピン9および内輪5a,5bの中心孔21の適切な寸法設定によって、ピン9の外面と中心孔21の内面との間のプレス嵌めが達成される。ピン9と内輪5a,5bとのたとえばN6のプレス嵌めによって、内輪5a,5の軸方向のプレロードが規定される。とりわけこれによって規定のプレロードを既に軸受け構造体1の製造時に規定して設定することができる。実際の軸受け構造体の外側で、ピン9は、減径部分37を有している。これによって軸受け構造体の追加的な安定および固定が達成され、それもピン9が減径部分37で、たとえば接触する固定ディスクまたは支持プレートに挿入され、したがって保持されることにより達成される。
【0031】
内輪5aは孔11aを、内輪5bは孔11bをそれぞれ備えている。孔11a,11bは、軸方向に各内輪5a,5bを通って延在している。内輪5a,5bは、配置構造に関して、孔11aと孔11bとが合同するように選択されている。各孔11a,11bは、異なる直径の2つの部分39a,41aもしくは部分39b,41bを備えている。したがってたとえば選択した図3では、右側から、図示していない根角ボルトが孔11aに挿入されるようになっている。根角ボルトは、部分41a,39a,39b,41bを貫通して、適切に選択された長さで、孔11bから突出する。これによって孔11bから突出するねじ山によって、円錐ころ軸受け構造体1の全体は、たとえば自動車のエンジンケーシングに取り付けることができる。比較的大きな半径を有する部分41aによって、別のねじ頭が内輪5の内側に沈み込んで収容されるので、組付要求に応じて、組立後のコンパクトな構造が達成される。
【0032】
機能に関して述べると、内輪5bにおける大きな直径を有する部分41bは不要である。しかしながら製造技術的な理由から、内輪5a,5bは同一に形成されているので、円錐ころ軸受け構造体1の異なる構成部材の数を削減することができる。構造体全体は、ピン9を除いて内輪5aと5bとの間の中央平面に関して鏡面対称的に形成されている。
【0033】
各内輪5a,5bは、下位端部で、中心孔21付近に面取部61を備えており、面取部61は、周方向に環状に形成されている。面取部61から出発して、内輪5a,5bの対向する外面63に沿って、図示していない別の溝が延在している。選択的に内輪の一方にそのような溝が形成されていてもよい。溝を通って潤滑油が円錐ころ31の間に搬送可能であるので、自動車のエンジン油による運転中に円錐ころの潤滑が保証されている。したがって潤滑油は、既に図2に関して説明したが、溝51によって収容され、溝53を介して中央孔21に、面取部61まで、そして内輪5a,5bの外面63の間を円錐ころ31に向かって搬送される。このために中心孔に別の溝を設けてもよい。
【0034】
図4には、本発明による別の形態を示した。円錐ころ軸受け構造体101は、2つの円錐ころ軸受けを備えており、円錐ころ軸受けは、それぞれ外輪103と内輪105と転動体107と対応する保持器109とを備えている。外輪103は、歯車111の対応する嵌合面に適合されている。内輪105は、中心孔を備えており、中心孔にセンタリングエレメント113が挿入されている。センタリングエレメント113によって、図1図3に示した形態と同様に、内輪105は、嵌合によってプレロードを掛けて前組立することができる。
【0035】
さらに内輪105は、中心軸線の外側に位置する孔115を備えており、孔115は、図2に示した形態と同様に配置されている。孔115に固定ねじ117が挿入されている。センタリングエレメント113は、中空室118を備えている。仕切壁119によって、中空室118は、別の中空室121から仕切られている。仕切壁119は、周方向に延びる環状の凹所123を備えており、凹所123から、半径方向外向きに延在する孔125が延びている。孔125の機能は、図5に関して説明する。
【0036】
図5には、図4に示した円錐ころ軸受け構造体101を別の角度で、断面図で示した。ここでは主要着眼点は、孔115および孔115を貫通するねじ117の部分に置くのではなく、2つのねじ117の間の部分に置いた。図5では、孔125が断面図の図平面上に位置するように選択した。さらに図5に示したように、内輪105は、対向する外面で、溝状の凹所127を備えている。凹所127は、孔125の付近に位置するように配置されているので、孔125は、凹所127と結合されている。したがって円錐ころ107の間の空間は、凹所127および孔125を介して中空室118と結合されている。エンジンルームから中空室118に進入する潤滑油は、孔125および凹所127を介して円錐ころ127に搬送可能である。エンジンの潤滑油による円錐ころ軸受け構造体101の十分な潤滑が保証されている。
【0037】
選択的に、内輪105に設けられた凹所127の代わりに、図3に示した形態と同様に、面取部および渦巻き状に延びる溝を設けてもよい。面取部の使用によって、孔125を渦巻き状の溝の設置箇所に直に設ける必要はない。周方向に延びる環状の面取部によって、孔125は、あらゆる場合に渦巻き状に延びる溝と結合されているので、中空室118から円錐ころ107に向かう潤滑油の障害のない流れが保証されている。このための前提として、孔125は、軸方向にみて正確に2つの内輪105の間に位置する。
【0038】
ねじ117のねじ頭は、ねじ頭に向かうセンタリングエレメント113の軸方向の移動を防止するように寸法設定されている。
【0039】
図6には、本発明による別の形態を示した。図6に示した形態は、概ね図4および図5に示した形態に相当しているが、個別の外輪が設けられていない点で異なっている。その代わりに円錐ころ207の走行面は、直に歯車211に形成されている。したがって必要な構成部材数は、図4および図5に示した形態に対して更に低減されている。図6の例示から、どのようにしてねじ217によって軸受け構造体201がエンジンケーシング231に固定されるのか看取される。ねじ217は、両内輪205の、内輪205のために設けられた軸方向に延びる孔を貫通し、エンジンケーシング231に設けられた対応するねじ山に係合する。さらに図6からセンタリングユニット213の機能が看取される。センタリングユニット213は、軸方向にみてエンジンケーシング231に直に隣接する内輪205から突出する。センタリングユニット213は、エンジンケーシング231に設けられた対応する凹所に係合して、したがってエンジンケーシング231における軸受け構造体201の正確なセンタリングを確保する。センタリングエレメントの軸方向の変位は、一方ではエンジンケーシング231によって、他方ではねじ217のねじ頭によって効果的に抑制される。
【0040】
図1図3に示した形態では、軸方向に延在するピン9がこの機能を有する。
【0041】
図7には、円錐ころ軸受け構造体301を示しており、円錐ころ軸受け構造体301は、図4図6に示した形態と同様に外輪303を備えており、外輪303は、歯車305に圧入されている。さらに円錐ころ軸受け構造体301は、2つの内輪307を備えており、内輪307は、2群の円錐ころ309を介して外輪303に沿って転動する。円錐ころ309は、保持器311内でガイドされる。センタリングエレメント313は、図4図6に示した形態と同様に、図示していないケーシングにおいて円錐ころ軸受け構造体301をセンタリングするために用いられる。また孔315が設けられており、孔315によって潤滑剤が円錐ころ309の間にガイドされる。
【0042】
図4図6に示した形態とは異なって、センタリングエレメント313は、中心軸線に対して半径方向に間隔を有して配置された孔317を備えており、孔317は、ねじを収容するのに適している。ねじによって、円錐ころ軸受け構造体301は、ケーシングまたは軸受け支持体に固定することができる。内輪307は、軸方向に内輪307の間に配置されたスペーサエレメント319によって、軸方向に間隔を有してセンタリングエレメント313の座面321上に配置されている。さらに緊締リング323が設けられており、緊締リング323も同様に座面321上に配置されている。センタリングエレメント313は、フランジ状の突出部325を備えており、突出部325は、半径方向外向きに延びており、内輪307を後方(側面)から係合する。ねじが孔317に挿入され、緊締ディスクが対応するケーシングに支持されると、緊締ディスクの性質および規定のねじの引張モーメントによって、円錐ころ軸受け構造体301を運転するために必要とされる両内輪307の規定の軸方向プレロードが得られる。
【符号の説明】
【0043】
1 円錐ころ軸受け構造体、 3 外輪、 5 内輪、 7 周方向に延びる環状の溝、 9 ピン、 11 孔、 21 中心孔、 23 円錐ころ、 31 円錐ころ、 35 保持器、 37 減径部分、 39a,39b 異なる直径部分、 41a,41b 異なる直径部分、 51,53 溝、 61 面取部、 63 外面、 101 円錐ころ軸受け構造体、 103 外輪、 105 内輪、 107 転動体、 109 保持器、 111 歯車、 113 センタリングエレメント、 115 孔、 117 固定ねじ、 118 中空室、 119 仕切壁、 121 中空室、 123 凹所、 125 孔、 127 凹所、 201 円錐ころ軸受け構造体、 205 内輪、 207 円錐ころ、 211 歯車、 213 センタリングユニット、 217 ねじ、 231 エンジンケーシング、 301 円錐ころ軸受け構造体、 303 外輪、 305 歯車、 307 内輪、 309 円錐ころ、 311 保持器、 313 センタリングユニット、 315 孔、 317 ねじ、 319 スペーサ部材、 321 座面、 323 緊締リング、 325 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7