(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099714
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】液冷還元剤投与装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20170313BHJP
F01N 3/36 20060101ALI20170313BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/36 A
F01N3/18 A
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-183970(P2015-183970)
(22)【出願日】2015年9月17日
(65)【公開番号】特開2016-61297(P2016-61297A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2015年9月17日
(31)【優先権主張番号】14/490,083
(32)【優先日】2014年9月18日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ウェイン マクファーランド
(72)【発明者】
【氏名】キース アーロン ショー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ. ホーンビー
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ エイ. ウィン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ リー ハットフィールド
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー コールキンズ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン シー. ブゴス
【審査官】
小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/076028(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102011075591(DE,A1)
【文献】
国際公開第2013/149759(WO,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102009047375(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F01N 3/36
F01N 3/18
F02F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液冷還元装置であって、
内部に細長いチャンバを形成する弁体を有し、ディーゼル排気燃料(DEF)を受け入れ、かつ前記チャンバを通る前記DEFを前記チャンバから押し出すように構成され、その後前記DEFは車両エンジンの排気流に向かい排気流に加わる、DEF噴射弁であって、前記弁体は、前記排気流に対向する端面と、前記排気流から離間する方向に前記端面から延在する長さ部分と、を有する、DEF噴射弁と、
選択的に冷却剤で満たされた、外側および内側を有する冷却剤ジャケットであって、前記ジャケットの前記内側は前記弁体の前記長さ部分に面し、エアギャップによって前記弁体の前記長さ部分から隔てられており、前記ジャケットの前記内側は、前記弁体の前記長さ部分の前記排気流側の外側表面と当接している、冷却剤ジャケットと、
を備える液冷還元装置。
【請求項2】
前記冷却剤ジャケットへ冷却剤を供給する冷却剤注入口を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記冷却剤ジャケットから前記冷却剤が出ることを可能にする冷却剤吐出口を更に備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記DEF噴射弁内に前記DEFを供給するDEF注入口を更に備える、請求項1から3までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記DEFは還元剤である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
車両内の排気システムであって、
排気流を生成するエンジンと、
液冷還元装置(RDU)であって、
内部に細長いチャンバを形成する弁体を有し、ディーゼル排気燃料(DEF)を受け入れ、かつ前記チャンバを通る前記DEFを前記チャンバから押し出すように構成され、その後前記DEFは車両エンジンの前記排気流に向かい前記排気流に加わる、DEF噴射弁であって、前記弁体は、前記排気流に対向する端面と、前記排気流から離間する方向に前記端面から延在する長さ部分と、を有するDEF噴射弁と、
選択的に冷却剤で満たされた冷却剤ジャケットであって、外側および内側を有し、前記ジャケットの前記内側は前記弁体の前記長さ部分に面し、エアギャップによって前記弁体の前記長さ部分から隔てられており、前記内側は、前記弁体の前記長さ部分の前記排気流側の外側表面と当接している、冷却剤ジャケットと、
を備える液冷還元装置(RDU)と、
前記DEFが前記排気流へ噴射された後、前記排気流を受け入れる排気管であって、前記排気流へ前記DEFを噴射することは、少なくとも1つの政府排出規制に準拠する改良された排気流を生じる、排気管と、
を備える排気システム。
【請求項7】
前記冷却剤ジャケットへ冷却剤を供給する冷却剤注入口を更に備える、請求項6に記載の排気システム。
【請求項8】
前記冷却剤ジャケットから前記冷却剤が出ることを可能にする冷却剤吐出口を更に備える、請求項6又は7に記載の排気システム。
【請求項9】
前記DEF噴射弁内にDEFを供給するDEF注入口を更に備える、請求項6から8までのいずれか1項に記載の排気システム。
【請求項10】
前記DEFは還元剤である、請求項6から9までのいずれか1項に記載の排気システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、一般に排気システムに関し、より詳細には、排気システムの冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州および北米における厳しい排出基準は、自動車メーカーに、車両によって生み出される排気ガスを低減することを要求する。それらの排気ガスを低減するために様々な技術が開発されてきた。
【0003】
例えば、いくつかのディーゼルエンジンは、高いレベルの窒素酸化物(NOx)排出を示す。選択的接触還元(SCR)アプローチは、窒素酸化物を窒素N
2および水H
2Oに変換するために用いられてきた。
【0004】
SCRアプローチにおいて、還元送出装置(RDU)は、エンジンの排気流へディーゼル排気燃料(DEF)還元剤を噴射するために用いられる。例えば、RDUによって排気ガス流に尿素が加えられ、例えば二酸化炭素および水などの様々な副産物が生じる。アンモニアは望ましい副産物であり、触媒と併用すると、窒素酸化物(NOx)を無害な水および窒素に変換する。
【0005】
RDUは、いくつかの場合、液体ジャケットによって液冷されるDEFインジェクタを有する。ホットソーク状態は、車両が走行していたがその後止まった時、かつジャケットを貫流する冷却液がない場合、生じる。ホットソーク状態の間、排気システムの熱は、RDU内に伝導する。車両が高荷重で走行しており、その後止まると、このホットソークが冷却剤を沸騰させ、RDU内の無制限の温度、およびそれに続くインジェクタ内のDEFの温度過上昇を生じ得る。DEFは、温度過上昇になると、DEFインジェクタの性能に悪影響を及ぼす硬質かつ不溶性の副産物を生じる。
【0006】
またDEFは、冷却剤よりも高い温度で凍結する。そのような環境下で、ジャケットと弁体との間に直接的接点が存在し、かつ冷却剤の温度がDEFの凝固点を下回る場合、温められた尿素は、DEFインジェクタを通過中に凍結し得る。
【0007】
たとえこれらの問題が対処されている範囲でも、上述した問題は、従来のアプローチによって十分に対処されていなかった。その結果、一部のユーザに不満が生じていた。
【0008】
本開示をより完全に理解するために、以下の詳細な説明および添付図面を参照すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の様々な実施形態に係る、排気管に取り付けられた液冷SCR RDUのブロック図を備える。
【
図2】本発明の様々な実施形態に係る液冷RDUの等尺図を備える。
【
図3】本発明の様々な実施形態に係る、内側冷却剤ジャケットとDEFインジェクタ弁体との間のエアギャップを示す、冷却剤ジャケット/DEFインジェクタのインタフェースの拡大図を備える。
【
図4】本発明の様々な実施形態に係る、デバイス内に存在する熱伝導特性および液冷SCR RDUのブロック図を備える。
【0010】
当業者は、図面内の要素が簡潔性および明確性のために示されることを理解するであろう。特定の動作および/またはステップが特定の発生順序で説明あるいは図示され得ることが更に分かるが、当業者は、順序に関するそのような特定性が実際に必要ではないことを理解するであろう。本明細書で用いられる用語および表現は、本明細書に特定の意味が明記されない限り、そのような用語および表現が対応するそれぞれの調査および研究分野に関する用語及び表現に一致するような通常の意味を有することも理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本アプローチは、冷却剤ジャケットからディーゼル排気燃料(DEF)インジェクタを隔離することによって、DEFの沸騰および凍結に抗う液冷RDUインジェクタの性能を高める。本アプローチは、温度変動中にインジェクタが冷却剤ジャケットから隔離された状態を保つことができるように、インジェクタと冷却剤ジャケットとの間の(例えば、エアギャップによって設けられる)非直接的接点を用いる。
【0012】
一例において、ホットソーク状態の間、インジェクタ内のDEFは過熱状態ではない。他の状況下で、冷却剤ジャケット内のDEFの凝固点を冷却剤の温度が下回る原因となるのに十分なほど気温が低い場合、非直接的接点が、DEF弁を通過する際のDEFの凍結を防ぐ。
【0013】
これらの実施形態の多くにおいて、液冷還元装置は、ディーゼル排気燃料(DEF)噴射弁を含む。この弁は、内部に細長いチャンバを形成する筐体を含む。弁は、DEFを受け入れ、かつ、チャンバを通るDEFをチャンバから押し出すように構成され、DEFはその後、車両エンジンの排気流に向かい、排気流に加わる。
【0014】
冷却剤ジャケットは、選択的に冷却剤で満たされ、外側および内側を有する。ジャケットの内側は、弁体の長さ部分に面し、エアギャップによって弁体の長さ部分から隔てられている。
【0015】
いくつかの態様において、冷却剤注入口は、冷却剤ジャケットへ冷却剤を供給する。冷却剤吐出口は、冷却剤が冷却剤ジャケットから出ることを可能にするために用いられ得る。
【0016】
他の例において、DEF注入口は、DEF弁内へDEFを供給する。DEFは還元剤であってよい。
【0017】
他のいくつかの例において、エアギャップは、ホットソーク状態下で冷却剤が沸騰することを防ぐために効果的である。他の態様において、エアギャップは、弁体を通るDEFの凍結を防ぐために効果的である。
【0018】
これらの実施形態の他の実施形態において、車両内の排気システムは、排気流を生成するエンジンを含む。液冷還元装置(RDU)が設けられ、この装置は、ディーゼル排気燃料(DEF)噴射弁を含む。この弁は、内部に細長いチャンバを形成する弁筐体を有し、DEFを受け入れ、かつ、チャンバを通るDEFをチャンバから押し出すように構成される。DEFはその後、車両エンジンの排気流に向かい、排気流に加わる。
【0019】
冷却剤ジャケットは、選択的に冷却剤で満たされ、外側および内側を有する。ジャケットの内側は、弁体の長さ部分に面し、エアギャップによって弁体の長さ部分から隔てられている。
【0020】
排気管は、DEFが排気流へ噴射された後、排気流を受け入れる。DEFを排気流へ噴射することは、少なくとも1つの政府排出規制に準拠する、改良された排気流を生じる。
【0021】
ここで、
図1、
図2、および
図3を参照すると、排気管に取り付けられた液冷SCR RDU100の一例が説明されている。RDU100は、弁、すなわちDEFインジェクタ102を含む。弁、すなわちDEFインジェクタ102の機能は、エンジンの排気流へ還元剤(例えば、DEF)を噴射することである。弁102は、弁体104を有する。DEF注入口106は、弁102へDEFを供給する。冷却剤ジャケット108が弁体104を取り巻く。
【0022】
冷却剤ジャケット108は、内側110および外側112を含む。冷却剤注入口114は、冷却剤119が冷却剤ジャケット108内へ流れることを可能にする。DEFインジェクタ電源コネクタ118は、装置へ電力を供給するために用いられる。RDUのフランジ、取付け用ボス、およびクランプ構成120は、RDUを排気管122に連結する。排気管はエンジン124に連結する。冷却剤ジャケット108の内側110と弁体104との間にエアギャップ130が存在する。一例において、エアギャップの距離は約0.3mmである。他の離隔距離の例も可能である。冷却剤注入口126は冷却剤109をジャケット108内へ入れることができる一方で、冷却剤吐出口128は冷却剤を外へ出すことができる。
【0023】
エアギャップ130は、冷却剤ジャケット108から弁102を効果的に切り離し、その結果、それら2つの要素間の非直接的連結(非接触的連結)が生じる。有利には、この構成は、冷却ジャケットからDEFインジェクタを隔離することによってディーゼル排気燃料(DEF)の沸騰および凍結に抗うインジェクタの性能を高める。
【0024】
図1〜3のシステムの動作の一例において、冷却剤ジャケット108は、選択的に冷却剤で満たされる。ジャケット108の内側110は、弁体104の長さ部分に面し、エアギャップ130によって弁体104の長さ部分から隔てられている。液冷RDU100の正常な動作中、DEFインジェクタ102は、(エンジン冷却剤が供給された)ジャケット108によって周囲環境から隔離される。エアギャップ130によって設けられる隔離は、DEFの大気中の沸点よりも大幅に高い温度の環境にある時に、DEFの大気中の沸点および熱分解点を下回る範囲内にDEFを維持するために用いられる。
【0025】
より具体的には、ホットソーク状態の間、弁102を通過するDEFは過熱状態ではない。他の環境において、冷却剤ジャケット108内のDEFの凝固点を冷却剤の温度が下回る原因となるのに十分なほど温度が低い場合、エアギャップ130によって設けられる非直接的接点が、DEFが弁102を通過する際のDEFの凍結を防ぐ。本アプローチによって提供されるようなこれらの利点は、以下で更に詳述される。
【0026】
上述したように、車両が止まっており、かつジャケット108を貫流している冷却剤がない場合、ホットソーク状態が生じ得る。ホットソークの間、本アプローチが配備されていない場合、排気システムの熱はRDU100内へ伝導する。何も措置が講じられなければ、車両が高荷重で走行しており、その後止まっている状態の間、このホットソークが冷却剤を沸騰させ、RDU100内の無制限の温度、およびそれに続くインジェクタ内のDEFの温度過上昇を生じ得る。DEFが温度過上昇になると、DEFインジェクタの性能に悪影響を及ぼす硬質かつ不溶性の副産物を生じるだろう。
【0027】
本アプローチは、これらの温度変動中に冷却剤ジャケット108からインジェクタ102が隔離された状態を保つことができるように、エアギャップ130の形式でインジェクタと冷却ジャケットとの間の非直接的接点を用いるということが理解されるであろう。内側水ジャケット表面とDEFインジェクタ弁体104の外側表面との間のエアギャップ130は、従来の密接した設計と比べ、ホットソーク中のインジェクタ温度上昇を著しく低減する。何らかの材料ではなくエアギャップが用いられるので、本アプローチの費用および複雑性は従来のアプローチに比べて低減される。
【0028】
あるいは、冷却ジャケット108内のDEFの凝固点を冷却剤の温度が下回る原因となるのに十分なほど気温が低い場合、RDU100とDEFインジェクタ102との間の非直接的接点が有利である。DEFは冷却剤よりも高い温度で凍結するので、弁体と内側冷却剤ジャケット108との間の直接的接点が存在し、かつ冷却剤がDEFの凝固点を下回る場合、温められた尿素がDEFインジェクタ102を通過中に凍結し得る事態を生じる。
【0029】
次に
図4を参照すると、システムの熱伝導特性の例が説明されている。冷却剤ジャケット408は弁412の周囲に広がるが、エアスペース430によって弁体から隔てられている。
【0030】
矢印の大きさは熱伝導量を示す。比較的大きい矢印402が、車両の他の部分から
図4の構成に伸びていることがわかる。矢印402は、車両からの比較的大きい熱伝導量を表し、例えば、車両のエンジン、あるいはいくつかの例について言及する車両部品のいずれかの動作に起因し得る。
【0031】
冷却剤ジャケット408を横切る外部からの中間矢印404。冷却剤ジャケットおよびその内容物は、矢印402によって表される熱エネルギの一部を吸収する。エアギャップ430を横切る矢印がない、あるいは非常に小さい矢印406であることも見られる。小さい矢印(または矢印がないこと)は、本構成においてエアギャップが有する効果を表す。より具体的には、エアギャップ430が、ジャケット408から弁412への熱エネルギの伝導を防止(あるいは著しく低減)する。
【0032】
発明者に公知の、本発明を実行するための最適なモードを含む、本発明の好適な実施形態が本明細書で説明される。示された実施形態は典型例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして捉えられてはならないことを理解すべきである。