【実施例】
【0041】
(実施例1)
本実施例では、上流側及び下流側シール機構S1,S2として
図4の形態を有するシール機構を備えた混練装置200を用いて、機能性材料を分散させた熱可塑性樹脂成形体を射出成形により製造した。熱可塑性樹脂としてはガラス繊維が30質量%添加されたナイロン6(東レ製,アミランCM1011G30)を、機能性材料としては有機金属錯体であるヘキサフルオロアセチルアセトナパラジウム(II)を、溶媒としてはパーフルオロペンチルアミンを用いた。なお、1ショットごとの溶融樹脂の質量に対し、二酸化炭素の濃度が約2質量%、有機金属錯体の濃度が約100ppmとなるように導入量を調整した。
【0042】
図6は、本実施例で使用した成形機を示す概略断面図である。
図6に示すように、この成形機1000は、高圧二酸化炭素と有機金属錯体をフッ素系有機溶媒に溶解させた溶液Cとを混合して加圧流体を調製し、該調製された加圧流体を可塑化シリンダ210に供給する加圧流体供給装置100と、既述した混練装置200と、金型を有する射出成形装置250とを備えている。これら加圧流体供給装置100、混練装置200、及び射出成形装置250は図示しない制御装置で動作制御される。
【0043】
加圧流体供給装置100は、液体二酸化炭素ボンベ101と、液体二酸化炭素を所定の圧力に加圧して高圧二酸化炭素を供給するための二酸化炭素用シリンジポンプ102と、有機金属錯体を溶媒に溶解した溶液Cを調製するための溶液槽111と、溶液Cを所定の圧力に加圧し、送液するための溶液用シリンジポンプ112とを備えている。液体二酸化炭素ボンベ101と二酸化炭素用シリンジポンプ102とを接続する配管及び二酸化炭素用シリンジポンプ102と可塑化シリンダ210とを接続する配管にはそれぞれ、吸引用エアオペレートバルブ104及び供給用エアオペレートバルブ105が配設されている。また、溶液槽111と溶液用シリンジポンプ112とを接続する配管及び溶液用シリンジポンプ112と可塑化シリンダ210とを接続する配管にはそれぞれ、吸引用エアオペレートバルブ114及び供給用エアオペレートバルブ115が配設されている。
【0044】
加圧流体を調製する場合、まず、吸引用エアオペレートバルブ104を開放して、液体二酸化炭素ボンベ101から液体二酸化炭素を吸引する。次に、二酸化炭素用シリンジポンプ102の圧力制御により所定圧力まで液体二酸化炭素を加圧する。本実施例では、圧力が10MPa、温度が10℃の高圧二酸化炭素を供給した。
【0045】
一方、溶液用シリンジポンプ112側の吸引用エアオペレートバルブ114を開放して、溶液槽111から溶媒に有機金属錯体を溶解させた溶液Cをフィルタ113を介して常温で吸引し、溶液用シリンジポンプ112の圧力制御により所定圧力まで溶液Cを加圧する。本実施例では、溶液Cを10MPaに加圧した。
【0046】
次に、供給用エアオペレートバルブ105,115を開放した後、二酸化炭素用シリンジポンプ102及び溶液用シリンジポンプ112を圧力制御から流量制御に切替え、高圧二酸化炭素と加圧した溶液Cとを所定の流量比となるように流動させる。これにより、配管内で高圧二酸化炭素と溶液Cとが混合される。本実施例では、高圧二酸化炭素と溶液Cとの供給容積比を5:1に設定した。なお、高圧二酸化炭素と溶液Cとの容積比が一定範囲(1:1〜10:1)の加圧流体を用いれば、混練工程において高圧二酸化炭素により有機金属錯体の熱分解を防止でき、また高圧二酸化炭素を溶融樹脂への有機金属錯体の分散を補助する相溶化剤として機能させることができる。
【0047】
一方、混練装置200において、樹脂供給用ホッパ211から供給された熱可塑性樹脂は、可塑化シリンダ210の外壁面に設けられたバンドヒータ(図示せず)で可塑化シリンダ210を加熱し、スクリュ20を正回転することにより混練され、溶融される。本実施例では、樹脂温度が210〜240℃となるように可塑化シリンダ210を加熱した。
【0048】
溶融樹脂が高圧混練ゾーン22に送られると、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23及び可塑化ゾーン21とを遮断するため、可塑化計量完了位置よりも20mm手前(金型側位置)でスクリュ20の回転を一旦停止した後、スクリュ20を逆回転させた(回転数:50rpm)。これにより、上流側及び下流側シールリング40,60を上流側に移動させて、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを当接させ、さらに上流側及び下流側シールリング40,60をスクリュ20と共回りさせることにより、上流側及び下流側シールリング40,60の内周面とスクリュ20の外周面との間の隙間Gを閉口し、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23及び可塑化ゾーン21とを遮断した。
【0049】
図6に示すように、可塑化シリンダ210の導入口202には、加圧流体を導入するための導入バルブ212が設けられている。この導入バルブ212は、可塑化シリンダ210の導入口202と連結された基端部に流体供給口218を有するとともに、内部に導入ピストン217を有している。従って、導入ピストン217で流体供給口218を開放することによって、加圧流体供給装置100から可塑化シリンダ210に加圧流体が導入される。本実施例では、上流側及び下流側シール機構S1,S2によって高圧混練ゾーン22をシールした後、加圧流体が高圧混練ゾーン22に1秒間滞留するように、流量制御にてショットごと間欠的に加圧流体を導入し、溶融樹脂と加圧流体とを接触混練した。加圧流体の導入前の樹脂内圧は0.1MPaであり、加圧流体の導入後の接触混練時の樹脂内圧は1〜8MPaであった。なお、バネ圧によって開閉するポペット弁をスクリュ内に設けた従来の混練装置を用い、同一の可塑化計量条件で成形を行った場合、加圧流体の導入前の樹脂内圧は8MPa、接触混練時の樹脂内圧は13〜14MPaであった。従って、本実施例の混練装置は従来のシール機構を有する混練装置に比べて低圧で溶融樹脂を可塑化計量することができ、高い可塑化能力を有していることが確認された。
【0050】
可塑化シリンダ210のベント口203は、バッファ容器219を介して真空ポンプ220と排気管で接続されている。従って、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とを連通させ、真空ポンプ220を作動させることにより、可塑化シリンダ210の内部が減圧される。本実施例では、加圧流体を高圧混練ゾーン22に滞留させた後、スクリュ20の逆回転の回転数を低下させて(回転数:30rpm)、上流側及び下流側シールリング40,60を元の下流側の位置に戻し、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを離間させ、上流側及び下流側シールリング40,60の内周面とスクリュ20の外周面との間の隙間Gを開口させて、ガス化した二酸化炭素をベント口203から排気した。このとき、ベント口203から樹脂のベントアップは生じなかった。
【0051】
次いで、スクリュ20を正回転に戻し、溶融樹脂をスクリュ20の先端部に送り、可塑化計量を完了させてキャビティ253内に溶融樹脂を射出充填した。得られた成形体は茶色に着色されていたことから、有機金属錯体が溶融樹脂に導入されたことが確認された。また、成形体に有機金属錯体が良好に分散されていることを確認するため、得られた成形体にめっき処理を行った。めっき処理は、まず、成形体の表面を膨潤させるため、1,3−ブタンジオールを50体積%含む80℃の水溶液に5分間、成形体を浸漬させた。次いで、この成形体に汎用のNiP無電解めっき処理を施して全面に金属膜を形成した。さらに、金属膜上に、連続して順に、20μmの電解銅めっき膜、10μmの電解ニッケルめっき膜、及び0.5μmの電解クロムめっき膜を形成した。得られためっき品を、120℃で1時間保持した後、−40℃で1時間保持するサイクルを100サイクル繰り返す熱衝撃試験に供した。試験後、目視により外観検査を行った。その結果、めっき膜に膨れや割れは発生せず、密着性に優れるめっき膜が形成されていることが確認された。
【0052】
また、上記の成形を繰り返し、1000ショット目の接触混練時の高圧混練ゾーン22の樹脂内圧を測定したところ、1〜8MPaであり、1ショット目の圧力と同一の圧力であった。従って、本実施例によれば、長期に安定して熱可塑性樹脂成形体を製造できることが確認された。
【0053】
(実施例2)
本実施例では、実施例1と同様の混練装置200及び成形機1000を用いて、機能性材料を分散させた熱可塑性樹脂成形体を射出成形により製造した。熱可塑性樹脂としては非晶性ナイロン(ジャパンンエムスケミー製,グリボリTR55)を、機能性材料としては抗菌剤であるヘプタフルオロ酪酸銀塩(I)を、溶媒としてはエタノールを用いた。なお、1ショットごとの溶融樹脂の質量に対し、二酸化炭素の濃度が約6質量%、抗菌剤の濃度が400ppmとなるように導入量を調整した。
【0054】
まず、実施例1と同様にして加圧流体供給装置100で加圧流体を調製するとともに、混練装置200で熱可塑性樹脂を溶融した。溶融樹脂が高圧混練ゾーン22に送られると、実施例1と同様にして、スクリュ20を一旦停止した後、スクリュ20を逆回転(回転数:50rpm)させて、上流側及び下流側シールリング40,60を上流側に移動させ、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを当接させて、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23及び可塑化ゾーン21とを遮断した。
【0055】
次いで、本実施例では、流量制御にて加圧流体を連続的に導入しながら、スクリュ20の逆回転の回転数を低下させて(回転数:20rpm)、上流側及び下流側シールリング40,60を僅かに下流側に移動させることにより、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを離間させた。これにより上流側及び下流側シールリング40,60の内周面とスクリュ20の外周面との間の隙間Gを僅かに開口させ、ガス化した二酸化炭素を排気した。さらに、スクリュ20の逆回転の回転数を小刻みに変化させることにより(回転数:20〜50rpm)、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23との連通及び遮断を繰り返した。このとき、高圧混練ゾーン22の樹脂内圧は、5〜10MPaの範囲で変動した。また、ベント口203から樹脂のベントアップは生じなかった。
【0056】
次いで、実施例1と同様にして、スクリュ20を正回転に戻し、溶融樹脂をスクリュ20の先端部に送り、可塑化計量を完了させてキャビティ253内に溶融樹脂を射出充填した。得られた成形体について、黄色ブドウ球菌及び大腸菌を用い、統一試験法(JIS
Z 2911)で抗菌評価を行った。その結果、成形体は高い抗菌作用を有しており、成形体に抗菌剤が良好に分散されていることが確認された。従って、本実施例によれば、高圧混練ゾーン22の樹脂内圧が過剰に高くなることを抑制しつつ、溶融樹脂と加圧流体とを繰り返し接触混練することができる。また、上流から高圧混練ゾーン22への溶融樹脂の供給が抑制された状態においても、高圧混練ゾーン22と減圧ゾーン23とを連通させることにより、高圧混練ゾーン22の高圧二酸化炭素の一部がガス化し、ガス化した二酸化炭素を減圧ゾーン23から排気することができる。これにより、高圧二酸化炭素及び機能性材料を含む加圧流体を用いる場合、減圧ゾーン23近傍の高圧混練ゾーン22では、減圧により高圧二酸化炭素に不溶となった機能性材料を溶融樹脂の内部に残存させていくことができる。従って、溶融樹脂と加圧流体との繰り返しの接触混練により機能性材料を高濃度で溶融樹脂に導入することができる。
【0057】
また、上記の成形を繰り返し、1000ショット目の接触混練時の高圧混練ゾーン22の樹脂内圧を測定したところ、5〜10MPaであり、1ショット目の圧力と同一の圧力であった。従って、本実施例によれば、長期に安定して熱可塑性樹脂成形体を製造できることが確認された。
【0058】
(実施例3)
本実施例では、上流側及び下流側シール機構S1,S2として
図5の形態を有するシール機構を備えた混練装置200及び
図6に示す成形機1000を用い、機能性材料を分散させた熱可塑性樹脂成形体を射出成形により製造した。また、熱可塑性樹脂、機能性材料、及び溶媒は実施例1と同様のものを用い、二酸化炭素及び機能性材料の導入量も実施例1と同様に調整した。
【0059】
まず、実施例1と同様にして加圧流体供給装置100で加圧流体を調製するとともに、混練装置200で熱可塑性樹脂を溶融した。溶融樹脂が高圧混練ゾーン22に送られると、スクリュ20の回転を一旦停止した後、スクリュ20を逆回転させて、上流側及び下流側シールリング40,60を上流側に移動させた。これにより、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを当接させ、高圧混練ゾーン22と、減圧ゾーン23及び可塑化ゾーン21とを遮断した。
【0060】
次いで、本実施例では、加圧流体が高圧混練ゾーン22に1秒間滞留するように、流量制御にて間欠的に加圧流体を導入し、溶融樹脂と加圧流体とを接触混練した後、スクリュ20を正回転に戻し、上流側及び下流側シールリング40,60を下流側に移動させることにより、円錐台部31,51のテーパ面とテーパ部42,62のテーパ面とを離間させ、上流側及び下流側シールリング40,60の内周面とスクリュ20の外周面との間の隙間Gを開口した。接触混練時の樹脂内圧は1〜8MPaであった。そして、溶融樹脂を減圧ゾーン23に送りながらガス化した二酸化炭素を排気した後、実施例1と同様にして、可塑化計量を完了させてキャビティ253内に溶融樹脂を射出充填した。得られた成形体を用いて、実施例1と同様にして、めっき品を作製したところ、密着性に優れるめっき膜が形成されていることが確認された。
【0061】
また、上記の成形を繰り返し、1000ショット目の接触混練時の高圧混練ゾーン22の樹脂内圧を測定したところ、1〜8MPaであり、1ショット目の圧力と同一の圧力であった。従って、本実施例によれば、長期に安定して熱可塑性樹脂成形体を製造できることが確認された。
【0062】
以上詳細に本発明を説明したが、上記の実施の形態から本発明について要約すると、以下のようになる。
【0063】
本発明の一局面は、可塑化シリンダと、前記可塑化シリンダ内を回転及び進退自在に配設されたスクリュとを備え、前記可塑化シリンダ内で、熱可塑性樹脂が可塑化された溶融樹脂と高圧二酸化炭素を含む加圧流体とを接触混練する高圧混練ゾーンと、樹脂内圧を減圧することにより、前記加圧流体が接触混練された溶融樹脂からガス化した二酸化炭素を分離する減圧ゾーンとが上流側からこの順に隣接して形成される混練装置であって、
前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの間に、前記スクリュの回転状態に応じて前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとを連通及び遮断する下流側シール機構を備える。
【0064】
上記混練装置によれば、高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとの間に、スクリュの回転状態に応じて高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを連通及び遮断する下流側シール機構が設けられており、高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとの間でバネによる反力が生じないから、高い可塑化能力を得ることができる。また、下流側シール機構がスクリュの回転状態に応じて高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを連通及び遮断するから、長期使用によってもシール性能が劣化することもない。
【0065】
上記下流側シール機構は、前記スクリュの逆回転により、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとを遮断してもよい。また、上記下流側シール機構は、前記スクリュの正回転、前記スクリュの回転の停止、または前記スクリュの逆回転の回転数の低下のいずれかによって、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとを連通してもよい。
【0066】
上記混練装置によれば、スクリュの回転状態に応じて、所望のタイミングで高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを連通及び遮断することができる。
【0067】
好ましくは、上記混練装置において、
前記下流側シール機構は、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとの間に配置され、シール部を有する前記スクリュの縮径部と、前記スクリュの縮径部に軸方向で移動可能に外嵌し、前記シール部と当接する接触面を有するシールリングとを備えており、
前記スクリュの回転状態に応じて、前記縮径部のシール部と前記シールリングの接触面とが離間すると、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとが連通し、前記縮径部のシール部と前記シールリングの接触面とが当接すると、前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとが遮断する。
【0068】
上記混練装置によれば、スクリュの縮径部のシール部とシールリングの接触面とがスクリュの回転状態に応じて離間及び当接することにより、高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを連通及び遮断することができる。
【0069】
好ましくは、上記混練装置において、
前記スクリュは、係止部を備え、前記シールリングは、前記スクリュの係止部と係合及び係脱する被係止部を備えており、
前記スクリュが所定回転数以上で逆回転している場合に、前記スクリュの係止部と前記シールリングの被係止部とが係合し、前記スクリュと前記シールリングとが共回りすることにより、前記縮径部のシール部と前記シールリングの接触面との当接状態が維持される。
【0070】
上記混練装置によれば、スクリュが所定回転数以上で逆回転している間、シールリングとスクリュとが係合状態で共回りするから、高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを確実に遮断することができる。また、スクリュの回転数に応じて、高圧混練ゾーンと減圧ゾーンとを連通及び遮断することができる。
【0071】
上記可塑化シリンダ内で、前記高圧混練ゾーンの上流側に隣接して、前記熱可塑性樹脂を可塑化して溶融樹脂とする可塑化ゾーンが形成される場合、
好ましくは、上記混練装置は、前記可塑化ゾーンと前記高圧混練ゾーンとの間に、前記スクリュの回転状態に応じて前記可塑化ゾーンと前記高圧混練ゾーンとを連通及び遮断する上流側シール機構を備える。
【0072】
上記混練装置によれば、高圧混練ゾーンの上流側にも可塑化ゾーンと高圧混練ゾーンとを連通及び遮断する上流側シール機構が設けられているから、さらに高圧混練ゾーンのシール性を高めることができる。
【0073】
また、本発明の他の局面は、上記に記載の混練装置を用いる熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
前記下流側シール機構で前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとを遮断し、高圧下、前記溶融樹脂と前記加圧流体とを接触混練する混練工程と、
前記下流側シール機構で前記高圧混練ゾーンと前記減圧ゾーンとを連通させ、前記加圧流体が接触混練された溶融樹脂の樹脂内圧を低下させて、前記加圧流体が接触混練された溶融樹脂からガス化した二酸化炭素を分離する分離工程とを有する。
【0074】
上記製造方法によれば、混練工程では、高圧混練ゾーンの高いシール性を確保した状態で溶融樹脂と加圧流体とを接触混練することができる。また、分離工程では、速やかに樹脂内圧を低下でき、円滑にガス化した二酸化炭素を溶融樹脂から分離し、排気することができる。
【0075】
好ましくは、上記熱可塑性樹脂成形体の製造方法において、
前記高圧混練ゾーンに前記溶融樹脂を滞留させた状態で、前記混練工程及び前記分離工程が複数回繰り返されてもよい。
【0076】
上記製造方法によれば、分離工程により高圧二酸化炭素の濃度の低くなった溶融樹脂と加圧流体とを繰り返し接触混練することができる。そのため、溶融樹脂に対する高圧二酸化炭素の溶解度が低くても、多量の高圧二酸化炭素を溶融樹脂に導入することができる。また、機能性材料を含む加圧流体を用いる場合、多量の機能性材料を溶融樹脂に導入することができる。
【0077】
上記製造方法において、前記加圧流体は、機能性材料を含んでもよい。上記製造方法によれば、機能性材料が良好に分散された熱可塑性樹脂成形体を製造することができる。
【0078】
以上のように、本発明によれば、高圧二酸化炭素を含む加圧流体を可塑化シリンダに導入し、可塑化シリンダ内で加圧流体と熱可塑性樹脂を可塑化した溶融樹脂とを接触混練して熱可塑性樹脂を製造する場合に、高い可塑化能力が得られるとともに、長期に渡って安定に熱可塑性樹脂成形体を製造することができる混練装置、及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することができる。
【0079】
以上、実施の形態、及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態、及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。