(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6099718
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】昇華転写装置
(51)【国際特許分類】
B44C 1/17 20060101AFI20170313BHJP
D06C 23/00 20060101ALI20170313BHJP
D06B 23/00 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
B44C1/17 J
D06C23/00
D06B23/00 Z
B44C1/17 B
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-203138(P2015-203138)
(22)【出願日】2015年10月14日
【審査請求日】2015年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000214939
【氏名又は名称】直本工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 正
(72)【発明者】
【氏名】大山 敏弘
【審査官】
福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−155051(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/069728(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/146916(WO,A1)
【文献】
特開2012−176414(JP,A)
【文献】
特開平03−226398(JP,A)
【文献】
特開昭58−061998(JP,A)
【文献】
特開2012−162394(JP,A)
【文献】
特開2010−155674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44B19/00−19/64
B29C63/00−65/82
B30B1/00−7/04
B41F16/00−19/08
B44C1/16−1/175
B65C1/00−11/06
B65H23/00−27/00
D06P5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被転写物の表面に転写シートを重ねて、加熱および加圧状態下で図柄を転写する昇華転写装置であって、
前記被転写物の少なくとも一方の表面に帯状の前記転写シートを重ねた状態で挟持する一対のベルトと、
前記ベルトを走行させるベルト駆動機構と、
少なくとも一方は熱源を有し、前記各ベルトを走行可能に挟持する一対の加圧板と、
前記転写シートを前記被転写物に長さ方向を揃えて重ねた状態にして、前記ベルト間へ導入する導入機構部と、
図柄が転写された前記被転写物を前記ベルト間より導出させて、前記転写シートより分離させる導出機構部と、を備え、
前記被転写物は、幅方向中央部に咬み合い部を有するファスナーであり、
前記ベルトの少なくとも一方には、前記咬み合い部の幅と同等の幅を有する溝が設けられ、
前記導入機構部は、前記被転写物と前記転写シートとを位置合わせするための位置合わせ装置を備え、
前記位置合わせ装置は、本体部と、第1押さえ蓋とを備え、
前記本体部は、前記転写シートの幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第1突条部と、前記第1突条部の幅方向中央部に、前記第1突条部と平行に設けられ、前記咬み合い部の幅と同等の幅を有する嵌合溝とを有し、
前記第1押さえ蓋は、前記第1突条部と係合する一対の第1係合溝を有する昇華転写装置。
【請求項2】
前記ベルト駆動機構は、駆動プーリおよび従動プーリを備えており、
前記各ベルトは、前記駆動プーリと前記従動プーリとに掛け渡されており、
前記加圧板、前記駆動プーリおよび前記従動プーリは、片持ち支持されている請求項1に記載の昇華転写装置。
【請求項3】
前記従動プーリは、前記ベルトの張りを緩める方向に移動可能となっており、
前記加圧板の少なくとも一方は、前記ベルトの押圧を緩める方向に移動可能となっている請求項2に記載の昇華転写装置。
【請求項4】
前記位置合わせ装置は、第2押さえ蓋をさらに備え、
前記第1押さえ蓋は、前記第1係合溝が設けられる面と反対側の面に、前記転写シートの幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第2突条部を有し、
前記第2押さえ蓋は、前記第2突条部と係合する一対の第2係合溝を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の昇華転写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の被転写物に図柄を転写するための昇華転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に図柄を印刷する方法として、インクジェット印刷による方法または昇華転写による方法等が知られている。インクジェット印刷による方法では、対象物の表面を印刷した際に裏面が滲んでしまいきれいに印刷できないため、近年では昇華転写装置を用いて対象物に図柄を転写する方法が注目されている(例えば特許文献1)。このような昇華転写装置は、対象物となる生地に転写シートを重ね合わせ、それを台盤上に置き、加熱板で押圧することで、転写シートに描かれた図柄を対象物となる生地に転写するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−308803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の昇華転写装置では、一回に転写できる長さは台盤の長さまでであり、台盤の長さを超える対象物は複数回に分けて転写しなければならないという問題が生じていた。そのため、帯状の対象物に図柄を転写する場合、複数回に分けて転写を行わなければならず、図柄を転写するのに時間がかかる上、繋ぎ目で図柄がずれてしまい、早くきれいに転写できないといった問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、帯状の被転写物に連続的に図柄を転写することができる昇華転写装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、帯状の被転写物の表面に転写シートを重ねて、加熱および加圧状態下で図柄を転写する昇華転写装置である。昇華転写装置は、被転写物の少なくとも一方の表面に帯状の転写シートを重ねた状態で挟持する一対のベルトと、ベルトを走行させるベルト駆動機構と、少なくとも一方は熱源を有し、各ベルトを走行可能に挟持する一対の加圧板と、転写シートを被転写物に長さ方向を揃えて重ねた状態にして、ベルト間へ導入する導入機構部と、図柄が転写された被転写物をベルト間より導出させて、転写シートより分離させる導出機構部と、を備える。
【0007】
本発明の昇華転写装置では、被転写物は、表面に転写シートが重ねられた状態でベルト間に導入され、ベルトに挟持されたままベルトの走行とともに移動し、ベルト間から導出されるようになっている。ベルトは、加圧板によって加圧された状態で走行するとともに、この加圧板の少なくとも一方に設けられている熱源によって加熱されている。この加圧および加熱によって、被転写物には、ベルトとともに移動する間に転写シートの図柄が転写される。このような構成であるため、転写シートを重ねた被転写物を連続してベルトに導入することで、帯状の被転写物に対しても連続して転写を行うことができる。
【0008】
好ましい実施形態の昇華転写装置においては、ベルト駆動機構は、駆動プーリおよび従動プーリを備えており、各ベルトは、駆動プーリと従動プーリとに掛け渡されており、加圧板、駆動プーリおよび従動プーリは、片持ち支持されている。さらに好ましい実施形態の昇華転写装置においては、従動プーリは、ベルトの張りを緩める方向に移動可能となっており、加圧板の少なくとも一方は、ベルトの押圧を緩める方向に移動可能となっている。
【0009】
このように、加圧板、駆動プーリおよび従動プーリを片持ち支持することで、片持ち支持するための支持体が設けられない側には何らの部材もないため、被転写物および転写シートの移動の状態、ならびに、転写シートから被転写物への転写の状態を視認し易くなる。また、ベルトは、メンテナンスのため、または、被転写物に応じて交換することが必要となるが、加圧板、駆動プーリおよび従動プーリが片持ち支持されることで、ベルトを外し易くなり、交換を容易に行うことができる。さらに、従動プーリがベルトの張りを弱める方向に移動可能となっており、加圧板がベルトの押圧を緩める方向に移動可能となっていることで、ベルトの交換時にベルトの張力を弱めることができ、ベルトをより外し易くなり、ベルトの交換をより容易に行うことができる。
【0010】
好ましい実施形態の昇華転写装置においては、被転写物は、幅方向中央部に咬み合い部を有するファスナーであり、ベルトの少なくとも一方には、咬み合い部の幅と同等の幅を有する溝が設けられている。
【0011】
被転写物が咬み合い部を有するファスナーである場合には、咬み合い部がファスナーの本体部から突出するため、咬み合い部の突出する形状に合わせて転写シートを重ね合わせないと、咬み合い部と本体部との接合部で図柄を正確に転写できないという問題が生じる。本実施形態では、ベルトに溝が設けられているため、転写シートを重ねた咬み合い部をその溝に嵌めることで、咬み合い部の突出する形状に合わせて転写シートを咬み合い部に接触させることができ、咬み合い部と被転写物の本体部との接合部分にも図柄を正確に転写させることができる。
【0012】
より好ましい実施形態の昇華転写装置においては、導入機構部は、被転写物と転写シートとを位置合わせするための位置合わせ装置を備えている。位置合わせ装置は、本体部と、第1押さえ蓋とを備え、本体部は、転写シートの幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第1突条部と、第1突条部の幅方向中央部に、第1突条部と平行に設けられ、咬み合い部の幅と同等の幅を有する嵌合溝とを有する。また、第1押さえ蓋は、第1突条部と係合する一対の第1係合溝を有する。
【0013】
このように導入機構部に位置合わせ装置を設けることで、位置合わせ装置に被転写物(ファスナー)と転写シートとを導入するだけで、転写シートが第1突条部に誘導されて所定の位置に位置決めされるとともに、咬み合い部が嵌合溝に誘導されて被転写物が所定の位置に位置決めされ、簡単に被転写物と転写シートとを位置合わせすることができる。これにより、転写シートと被転写物との位置合わせに時間を要せず、被転写物がファスナーであっても簡単かつ正確に図柄を転写することができる。
【0014】
さらに好ましい実施形態の昇華転写装置においては、位置合わせ装置は、第2押さえ蓋をさらに備えている。第1押さえ蓋は、第1係合溝が設けられる面と反対側の面に、転写シートの幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第2突条部を有し、第2押さえ蓋は、第2突条部と係合する一対の第2係合溝を有する。
【0015】
このような構成とすることで、ファスナーのような咬み合い部を有する被転写物の両面に転写を行う場合に、より被転写物と転写シートとの位置合わせを行い易くすることができる。つまり、咬み合い部側の転写シートを第1突条部間に載置するとともに、咬み合い部を嵌合溝に嵌めることで、咬み合い部側の転写シートと被転写物とが位置合わせされる。ここで第1押さえ蓋を本体部に被せることで、咬み合い部側の転写シートおよび被転写物を位置合わせした状態で固定することができる。それから、咬み合い部と反対側の転写シートを第2突条部間に載置することで、被転写物との位置を合わせることができる。このように、咬み合い部側の転写シートと被転写物とを位置合わせした状態で第1押さえ蓋で押さえておくことができるので、咬み合い部と反対側の転写シートの位置合わせが容易になり、被転写物の両面に転写シートを容易に位置決めすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る昇華転写装置によれば、帯状の被転写物に連続的に図柄を転写することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の昇華転写装置の一実施形態を示す概略正面図である。
【
図2】
図1の昇華転写装置のA−A断面図で、一対の加圧板間の一実施形態を拡大して示す図である。
【
図3】
図1の昇華転写装置の位置合わせ装置を拡大して示す概略斜視図である。
【
図4】
図1の昇華転写装置のベルト、駆動プーリおよび従動プーリを分解して示す斜視図である。
【
図5】一対の加圧板間の他の実施形態を拡大して示す断面図である。
【
図6】位置合わせ装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。本実施形態の昇華転写装置1は、帯状の被転写物10の表面に帯状の転写シート20を重ねて、加熱および加圧状態下で図柄を転写する装置である。ここでは、被転写物10として、プラスチックファスナーを用いて説明する。なお、
図1における右側を上流側、左側を下流側と言う。また、
図1において、紙面手前側を手前側、紙面奥側を奥側と言う。
【0019】
図1に示すように、昇華転写装置1は、転写シート20を重ねた被転写物10を挟持する一対のベルト30と、ベルト30を走行させるためのベルト駆動機構31と、ベルト30を走行可能に挟持する一対の加圧板40とを備えている。また、昇華転写装置1は、ベルト30の上流側に、被転写物10を送り出す送出リール51と、転写シート20を送り出す送出ローラ52とを備える導入機構部50を備えている。さらに、昇華転写装置1は、ベルト30の下流側に、被転写物10を巻き取る巻き取りリール61と、転写シート20を巻き取る巻き取りローラ62とを備える導出機構部60を備えている。本実施形態では、被転写物10の両表面に図柄を転写するため、転写シート20は被転写物10の両側に重ね合わされるようになっており、送出ローラ52および巻き取りローラ62もそれぞれ2個ずつ設けられている。
【0020】
図2に示すように、本実施形態で被転写物10として用いるプラスチックファスナーは、幅方向中央部に咬み合い部11を有し、咬み合い部11は、本体部12から一方側に突出している。
【0021】
転写シート20は、昇華転写において使用できる既知の任意のシートを用いることができる。この転写シート20には、被転写物10に転写したい任意の図柄が反転された状態で印刷されている。本実施形態では、被転写物10の両方の表面に図柄を転写するが、この図柄は一方側の面と他方側の面とで同じものとすることもできるし、異なるものとすることもできる。
【0022】
図1および
図2に示すように、ベルト駆動機構31は、駆動プーリ311と、従動プーリ312とから構成されている。駆動プーリ311と従動プーリ312とは、間に加圧板40を配置することができ、その間を移動する間に被転写物10に転写シート20の図柄が転写できるのに十分な時間が得られる距離、例えば1m以上離間して設けられている。このベルト駆動機構31は、一対のベルト30のそれぞれに対して設けられており、一方側の駆動プーリ311にモータ(図示せず)が取り付けられ、他方側の駆動プーリ311が一方側の駆動プーリ311と同期して駆動するようになっている。一対のベルト駆動機構31は、上下方向に離間して配置されており、下側のベルト駆動機構31は、上側のベルト駆動機構31よりも従動プーリ312が上流側に配置されている。これにより、被転写物10および転写シート20は、一旦下側のベルト30に置かれてからベルト30間に導入されるので、ベルト30上の被転写物10および転写シート20の状態を目視し易くなっている。この駆動プーリ311および従動プーリ312は、奥側に設けられた支持体により片持ち支持されており、従動プーリ312は、ベルト30の張りを調整できるよう、水平方向(
図1における左右方向)に移動可能となっている。
【0023】
ベルト30は、駆動プーリ311と従動プーリ312とに掛け渡されており、2つのベルト30の表面は、被転写物10および転写シート20を挟持できる幅だけ離間して互いに対向している。ベルト30の幅は、転写シート20の幅より大きくなっている。
【0024】
図2〜
図4に示すように、ベルト30の内周面側には、幅方向両側にロープを取り付けることによって凸部33が形成されている。また、駆動プーリ311および従動プーリ312には、幅方向両側に溝を形成することによって第1凹部34が形成されている。ベルト30は、凸部33を第1凹部34に嵌め込むことによって、駆動プーリ311および従動プーリ312に掛け渡されている。また、加圧板40にも、幅方向両側に長手方向に延びる溝または切り欠きを形成することによって第2凹部43が形成されており、凸部33は、第2凹部43にも嵌り込むようになっている。これにより、ベルト30は、動作中に幅方向にずれることを防止されている。なお、凸部33はロープを取り付ける以外にも、
図5に示すようにベルト30の内方へ突出するピン33aを取り付けることによっても形成することができる。
【0025】
一方側、本実施形態では
図2における下側のベルト30には、ベルト30の外側表面上に接着等により一体的に取り付けられた一対の段差形成ベルト35が設けられている。一対の段差形成ベルト35は、被転写物10の咬み合い部11の幅と略同等の幅だけ離間して互いに平行に配置されており、その間に咬み合い部11の幅と同等の幅を有する溝36が形成されている。段差形成ベルト35は、咬み合い部11と略同等の幅を離間して2つを平行に並べてもベルト30の幅よりも小さい幅となるような幅を有している。
【0026】
ベルト30および段差形成ベルト35は、加圧板40に対する滑りがよく、耐熱性に優れた素材であれば、任意の素材のものを用いることができる。例えば、ガラスクロスにフッ素樹脂を含浸させた素材等を用いることができる。
【0027】
加圧板40は、ベルト30の内部、つまり、駆動プーリ311と従動プーリ312とに掛けられて輪状になっているベルト30の輪の中に設けられている。加圧板40の長さは、駆動プーリ311と従動プーリ312との間に設置可能な長さ、例えば1mであり、加圧板40の幅は、ベルト30を押圧できるようベルト30の幅よりも大きい幅を有している。加圧板40は、ベルト30の滑りがよくなるよう、表面に耐摩耗性を付与し、滑り性を改善する処理が行われたアルミ等により形成されている。加圧板40の素材としてアルミ等を用いることは、熱伝導性にも優れるため好ましい。
【0028】
加圧板40には、熱源41が内蔵されている。熱源41には電気ヒータを用いることができ、導電性を有する棒状の発熱体を複数本、加圧板40に差し込むことによって加圧板40に熱源41が内蔵されている。熱源41は、上流側では密な間隔で配置されており、下流側では粗い間隔で配置されている。これにより、上流側では温度が上がり易くなり、ベルト30を介して転写シート20および被転写物10に転写の初期段階で高い温度で加熱できるので、被転写物10への図柄の転写を早く行うことができる。熱源41は、加圧板40を約200℃まで加熱できるように配置されていることが好ましい。
【0029】
加圧板40は、奥側に設けられた支持体により片持ち支持されている。支持体には、例えばエアシリンダ等の作動装置42が取り付けられており、作動装置42を作動させることで、加圧板40がベルト30を押圧する方向またはベルト30の押圧を緩める方向に移動できるようになっている。本実施形態(
図1)では、作動装置42は上側の加圧板40にのみ設けられているが、作動装置42は下側の加圧板40にも設けられてもよい。
【0030】
導入機構部50は、送出リール51および送出ローラ52とベルト30との間において、上流側に設けられる複数のガイドローラ53と、下流側に設けられる位置合わせ装置54とをさらに備えている。ガイドローラ53は、被転写物10および転写シート20の数だけ設けられており、本実施形態では3個設けられている。各ガイドローラ53は、被転写物10の両側の表面に転写シート20が長さ方向を揃えて重ね合わされるように、被転写物10および転写シート20をガイドできる位置に設けられている。
【0031】
図3に示すように、位置合わせ装置54は、被転写物10と転写シート20とを位置合わせするとともに、咬み合い部11に合わせた凹部を転写シート20に形成するためのもので、本体部55と第1押さえ蓋56とを備えている。本体部55には、転写シート20の幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第1突条部551と、第1突条部551の幅方向中央部に、第1突条部551と平行に設けられ、被転写物10の咬み合い部11の幅と同等の幅を有する嵌合溝552とを有している。また、第1押さえ蓋56は、第1突条部551と係合する一対の第1係合溝561を有しており、第1押さえ蓋56が閉じられて第1係合溝561が第1突条部551に係合することで、被転写物10と転写シート20とが位置合わせされた状態で押さえられるようになっている。
【0032】
図1に示すように、導出機構部60は、巻き取りリール61および巻き取りローラ62とベルト30との間に設けられるガイドローラ63をさらに備えている。ガイドローラ63は、被転写物10および転写シート20の数だけ設けられており、本実施形態では3個設けられている。各ガイドローラ63は、被転写物10を転写シート20から分離して、被転写物10および転写シート20をそれぞれ巻き取りリール61および巻き取りローラ62へとガイドできる位置に設けられている。
【0033】
次に、昇華転写装置1により帯状の被転写物10に図柄を連続して転写する方法について説明する。帯状の被転写物10および任意の図柄が反転して印刷された帯状の転写シート20を準備し、それぞれ送出リール51および送出ローラ52に巻いて設置する。送出リール51から送り出された被転写物10および送出ローラ52から送り出された転写シート20が、各ガイドローラ53によって被転写物10の両側の表面に転写シート20が長さ方向を揃えて重ね合わされ、位置合わせ装置54へと送られる。位置合わせ装置54では、被転写物10の咬み合い部11が、咬み合い部11側に重ねられた転写シート20を折り曲げた状態で嵌合溝552に嵌まる。これにより、転写シート20が咬み合い部11の突出形状に沿って幅方向に折り曲げられて重ね合わされた状態で、被転写物10および転写シート20がベルト30間へ導入されていく。
【0034】
転写シート20が重ね合わされた状態で被転写物10は、咬み合い部11が溝36に嵌められた状態でベルト30間に挟持され、ベルト駆動機構31によって走行するベルト30に伴って下流側へと搬送されていく。ベルト30は、加圧板40によって走行可能な程度に押圧された状態で挟持されており、被転写物10および転写シート20は、加圧板40によって加圧された状態となっている。また、転写シート20が設けられる側、本実施形態では両側の加圧板40には、熱源41が内蔵されているため、熱源41によって加圧板40が発熱し、ベルト30を介して被転写物10および転写シート20は加熱された状態となっている。これにより、被転写物10および転写シート20がベルト30によって搬送されていく間に転写シート20の図柄が被転写物10へと転写される。
【0035】
図柄が転写されベルト30間より導出された被転写物10および転写シート20は、導出機構部60のガイドローラ63によって被転写物10と転写シート20とに分離され、被転写物10および転写シート20はそれぞれ、巻き取りリール61および巻き取りローラ62へと巻き取られていく。
【0036】
以上のように、本実施形態では、被転写物10は、表面に転写シート20が重ねられた状態でベルト30間に導入され、ベルト30に挟持されたままベルト30の走行とともに移動し、ベルト30間から導出されるようになっている。ベルト30は、加圧板40によって加圧された状態で走行するとともに、この加圧板40に設けられている熱源41によって加熱されている。この加圧および加熱によって、被転写物10には、ベルト30とともに移動する間に転写シート20の図柄が転写される。これにより、転写シート20を重ねた被転写物10を連続してベルト30に導入することで、帯状の被転写物10に対しても連続して転写を行うことができる。また、このように転写によって被転写物10に対して図柄を印刷することで、インクジェット印刷では滲んでしまって不可能だった、両面に異なる図柄を印刷することができる。
【0037】
また、加圧板40、駆動プーリ311および従動プーリ312は、片持ち支持されているため、片持ち支持するための支持体が設けられない側には何らの部材も設けられないため、被転写物10および転写シート20の移動状態、ならびに、転写シート20から被転写物10への転写の状態を視認し易くなっている。また、ベルト30は、メンテナンスのため、または、後述するように被転写物10に応じて溝36のあるベルト30もしくは溝36のないベルト30と交換することが必要となるが、加圧板40、駆動プーリ311および従動プーリ312が片持ち支持されることで、ベルト30を外し易くなり、交換を容易に行うことができる。さらに、従動プーリ312がベルト30の張りを弱める方向に移動可能となっており、加圧板40がベルト30の押圧を緩める方向に移動可能となっていることで、ベルト30の交換時にベルト30の張力を弱めることができ、ベルト30をより外し易くなり、ベルト30の交換をより容易に行うことができる。
【0038】
さらに、ベルト30に溝36が設けられているため、転写シート20を重ねた咬み合い部11をその溝36に嵌めることで、咬み合い部11の突出する形状に合わせて転写シート20を咬み合い部11に接触させることができ、咬み合い部11と本体部12との接合部分にも図柄を正確に転写させることができる。また、導入機構部50に位置合わせ装置54を設けているため、位置合わせ装置54に被転写物10と転写シート20とを導入するだけで、転写シート20が第1突条部551に誘導されて所定の位置に位置決めされるとともに、咬み合い部11が嵌合溝552に誘導されて所定の位置に位置決めされ、簡単に被転写物10と転写シート20とを位置合わせすることができる。これにより、転写シート20と被転写物10との位置合わせに時間を要せず、被転写物10に簡単かつ正確に図柄を転写することができる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
上記実施形態では、被転写物10として一方側に突出する咬み合い部11を有するファスナーを用いたが、被転写物10として、突出部を有さない帯状の布、紙、または、皮革もしくはプラスチックのベルト等、両側に突出する咬み合い部11を有する金属ファスナー等を用いることができる。
【0041】
被転写物10が布、紙、または、皮革もしくはプラスチックのベルト等である場合には、
図5に示すように咬み合い部11がないため、ベルト30に段差形成ベルト35を設ける必要がない。また、この場合には、導入機構部50に位置合わせ装置54を設けなくてもよく、その場合にはガイドローラ53によって被転写物10に転写シート20が重ね合わされてベルト30間に導入されるようにすることもできる。
【0042】
一方、被転写物10が金属ファスナーで有る場合には、咬み合い部11が本体部12の両側に突出するため、一対のベルト30の両方に段差形成ベルト35を取り付けて溝36を設ける構成とする。また、位置合わせ装置54も、咬み合い部11に合わせて本体部55と第1押さえ蓋56の両方に嵌合溝56が設けられるようにする。
【0043】
また、上記実施形態では、位置合わせ装置54は、本体部55と第1押さえ蓋56とを備えていたが、さらに第2押さえ蓋57を備える構成とすることができる。この場合には、第1押さえ蓋56は、第1係合溝561が設けられる面と反対側の面に、転写シートの幅と同等の距離を離して平行に設けられる一対の第2突条部562を有している。また、第2押さえ蓋57は、第2突条部562と係合する一対の第2係合溝571を有している。
【0044】
このような構成とすることで、ファスナーのような咬み合い部11を有する被転写物10の両面に転写を行う場合に、より被転写物10と転写シート20との位置合わせを行い易くすることができる。つまり、咬み合い部11側の転写シート20を第1突条部511間に載置するとともに、咬み合い部11を嵌合溝552に嵌めることで、咬み合い部11側の転写シート20と被転写物10とが位置合わせされる。ここで第1押さえ蓋56を本体部55に被せることで、咬み合い部11側の転写シート20および被転写物10を位置合わせした状態で固定することができる。それから、咬み合い部11と反対側の転写シート20を第2突条部562間に載置することで、被転写物10との位置を合わせることができる。このように、咬み合い部11側の転写シート20と被転写物10とを位置合わせした状態で第1押さえ蓋56で押さえておくことができるので、咬み合い部11と反対側の転写シート20の位置合わせが容易になり、被転写物10の両面に転写シート20を容易に位置決めすることができる。
【0045】
また、上記実施形態では、段差形成ベルト35をベルト30に接着等により一体的に取り付けることで溝36を形成したが、ベルト30そのものに溝36を形成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態では、被転写物10の両方の表面に図柄を転写したが、図柄の転写は、被転写物10の一方側の表面のみとしてもよい。この場合には、送出ローラ52および巻き取りローラ62は、それぞれ1個ずつ設けられていればよい。また、加圧板40に設けられる熱源41も、転写シート20が配設される側のみでよい。
【符号の説明】
【0047】
1 昇華転写装置
10 被転写物
11 咬み合い部
20 転写シート
30 ベルト
31 ベルト駆動機構
311 駆動プーリ
312 従動プーリ
36 溝
40 加圧板
41 熱源
50 導入機構部
54 位置合わせ装置
55 本体部
551 第1突条部
552 嵌合溝
56 第1押さえ蓋
561 第1係合溝
562 第2突条部
57 第2押さえ蓋
571 第2係合溝
60 導出機構部
【要約】
【課題】 帯状の被転写物に連続的に図柄を転写することができる昇華転写装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、帯状の被転写物10の表面に転写シート20を重ねて、加熱および加圧状態下で図柄を転写する昇華転写装置1である。被転写物10の少なくとも一方の表面に帯状の転写シート20を重ねた状態で挟持する一対のベルト30と、ベルト30を走行させるベルト駆動機構31と、少なくとも一方は熱源41を有し、各ベルト30を走行可能に挟持する一対の加圧板40と、転写シート20を被転写物10に長さ方向を揃えて重ねた状態にして、ベルト30間へ導入する導入機構部50と、図柄が転写された被転写物10をベルト30間より導出させて、転写シート20より分離させる導出機構部60とを備える。
【選択図】
図1