(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6099725
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】鋼製異形管のライニング方法および鋼製異形管
(51)【国際特許分類】
B29C 63/26 20060101AFI20170313BHJP
F16L 58/10 20060101ALI20170313BHJP
F16L 9/04 20060101ALI20170313BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20170313BHJP
【FI】
B29C63/26
F16L58/10
F16L9/04
B32B1/08 Z
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-221112(P2015-221112)
(22)【出願日】2015年11月11日
【審査請求日】2016年1月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】西堀 由章
(72)【発明者】
【氏名】硲 昌也
(72)【発明者】
【氏名】松村 信
(72)【発明者】
【氏名】岡氏 敏樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 勝則
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−015396(JP,A)
【文献】
特開昭52−062379(JP,A)
【文献】
特開2005−047105(JP,A)
【文献】
特開昭59−131454(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
B32B 1/08
F16L 9/04
F16L 58/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製異形管の管本体の内面を粗化する工程と、前記粗化された管本体の内面を覆うようにマット状の強化繊維を手で保持するかまたは樹脂で仮止めすることによりセットする工程と、前記管本体の内面を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の内面を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程とを含む鋼製異形管のライニング方法。
【請求項2】
前記管本体の内面を覆うようにマット状の強化繊維を手で保持するかまたは樹脂で仮止めすることによりセットする工程において、前記管本体の異形部分と直管部分に、それぞれ所定形状に形成したマット状の強化繊維を互いに隙間なく敷き詰めることを特徴とする請求項1に記載の鋼製異形管のライニング方法。
【請求項3】
前記管本体の端面を覆うようにマット状の強化繊維を手で保持するかまたは樹脂で仮止めすることによりセットする工程と、前記管本体の端面を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の端面を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程を付加したことを特徴とする請求項1または2に記載の鋼製異形管のライニング方法。
【請求項4】
前記管本体の外面の一部を覆うようにマット状の強化繊維を手で保持するかまたは樹脂で仮止めすることによりセットする工程と、前記管本体の外面の一部を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の外面の一部を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程を付加したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鋼製異形管のライニング方法。
【請求項5】
管本体の内面全体、端面および外面の端部に、マット状のガラス繊維の樹脂含浸層を含むFRPライニング層が形成されており、
前記FRPライニング層は、前記管本体の端面を覆う端面被覆部と、管内面側で前記端面被覆部に連続する内面被覆部と、管外面側で一部が前記端面被覆部に重なる状態で前記管本体の外面の端部を覆う外面被覆部とからなる鋼製異形管。
【請求項6】
前記FRPライニング層の端面被覆部が前記管本体の端面および内外面の端部を覆い、前記FRPライニング層の内面被覆部が前記管本体の内面の端部を除く部分を覆っていることを特徴とする請求項5に記載の鋼製異形管。
【請求項7】
管端部を直管の受口に挿し込み、前記管端部の外面と直管の受口の内面との間をシール部材でシールした状態で使用され、前記FRPライニング層の外面被覆部が、前記管本体の管端から前記シール部材によるシール位置まで形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載の鋼製異形管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶等に設置される鋼製異形管のライニング方法と、ライニングを施された鋼製異形管に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に設置される管(舶用管)には鋼管が使用されることが多く、その内面には防食塗装が施されている。しかし、防食塗装は一定期間を過ぎると再塗装が必要となるため、メンテナンスに膨大な時間と費用がかかる問題がある。
【0003】
特に、海水を通す舶用管、例えば船舶の安定性を確保するための重し(バラスト)となる海水(バラスト水)を通すバラスト管等では、その海水を船内に引き込んだ海域とは別の海域で捨てる場合に、その海水が捨てられる海域の生態系を壊さないように船内で海水の殺菌処理を行っているため、殺菌処理用の薬品により防食塗装が剥離して管の腐食が早く進行し、短期間で管の交換が必要になることもある。
【0004】
これに対し、防食塗装した鋼管よりも耐久性のよい繊維強化プラスチック(FRP)製の管すなわちFRP管を舶用管に用いるようにすれば、メンテナンスにかかる時間と費用を大幅に削減することができる。しかし、舶用管のうち、直管部分以外の曲管、T字管、レデューサ、隔壁貫通管等の異形管の部分は、内部流体の影響でスラスト力が作用する等の理由により支持部材を介して船体に固定する必要があり、その固定作業を溶接によって効率よく行おうとすれば、FRP管を使用することはできない。そこで、一部の船舶では、鋼製の舶用管の外面に防食塗装を施し、内面には防食塗装に代わるFRPライニングを施すことにより、舶用管のメンテナンスの時間と費用の削減を図るとともに、設置時も溶接により効率よく固定作業ができるようにしている。
【0005】
ここで、鋼管の内面にFRPライニングを施す場合は、例えば特許文献1に記載されているように、鋼管をターニングテーブル上で回転させながら、その内部に挿入したノズルから樹脂と強化繊維を混合したものを噴射して管内面にスプレー塗布するライニング方法を採ることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−204982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したように鋼管内面に樹脂と強化繊維の混合物をスプレー塗布するライニング方法を異形管に対して行うと、管の曲部や拡径部等の異形部に均一なライニング層を形成することが難しく、管内の水流に対する抵抗が大きくなりやすい。このため、従来のライニングを施された鋼製異形管を用いた管路では、管内水圧の圧損が大きくなって水輸送の効率が低くなることがある。
【0008】
そこで、本発明は、鋼製異形管の内面に均一にFRPライニングを施すことができるライニング方法と、管内面全体に均一なFRPライニング層が形成された鋼製異形管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の鋼製異形管のライニング方法は、鋼製異形管の管本体の内面を粗化する工程と、前記粗化された管本体の内面を覆うようにマット状の強化繊維をセットする工程と、前記管本体の内面を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の内面を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程とを含む構成とした。
【0010】
上記の構成によれば、鋼製異形管の管本体の内面にセットされたマット状の強化繊維に、ハンドレイアップ法により、すなわち刷毛やローラ等を用いた手作業により樹脂を含浸させるようにしているので、管本体の内面に樹脂と強化繊維の混合物をスプレー塗布する従来のライニング方法よりも均一にFRPライニングを施すことができる。
【0011】
ここで、前記管本体の内面を覆うようにマット状の強化繊維をセットする工程において、前記管本体の異形部分と直管部分に、それぞれ所定形状に形成したマット状の強化繊維を互いに隙間なく敷き詰めるようにすれば、効率よくかつより確実に均一なFRPライニング層を形成することができる。
【0012】
そして、上記の構成に対して、前記管本体の端面を覆うようにマット状の強化繊維をセットする工程と、前記管本体の端面を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の端面を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程を付加することもできるし、前記管本体の外面の一部を覆うようにマット状の強化繊維をセットする工程と、前記管本体の外面の一部を覆う強化繊維にハンドレイアップ法により樹脂を含浸させる工程と、前記管本体の外面の一部を覆う状態で樹脂が含浸された強化繊維の表面上に仕上げ層を形成する工程を付加することもできる。
【0013】
また、本発明の鋼製異形管は、管本体の内面全体にマット状の強化繊維の樹脂含浸層と仕上げ層が積層されており、前記管本体の内面の樹脂含浸層の強化繊維がガラス繊維である構成を採用した舶用のものである。強化繊維をガラス繊維としたのは、炭素繊維を用いると帯電しやすくなって安全に溶接することができなくなり、舶用管に不向きなものとなるからである。
【0014】
ここで、前記管本体の内面の樹脂含浸層の強化繊維に含浸されている樹脂が、耐薬品性を有するものである構成とすることにより、薬品を用いて管内に通される海水の殺菌処理を行ってもライニング層の剥離が生じにくく、長期間にわたって優れた耐食性が維持されるものとすることができる。
【0015】
そして、上記の構成に対して、管本体の端面にマット状の強化繊維の樹脂含浸層と仕上げ層が積層されており、前記管本体の端面の樹脂含浸層の強化繊維がガラス繊維である構成を付加することもできるし、管本体の外面の一部にマット状の強化繊維の樹脂含浸層と仕上げ層が積層されており、前記管本体の外面の樹脂含浸層の強化繊維がガラス繊維である構成を付加することもできる。
【発明の効果】
【0016】
上述したように、本発明の鋼製異形管のライニング方法は、異形管の管本体の内面にセットした強化繊維に樹脂を含浸させる工程においてハンドレイアップ法を採用して、異形管内面に均一にFRPライニングを施せるようにしたものであるから、従来よりも異形管内の水流に対する抵抗を小さくすることができる。したがって、本発明のライニング方法によって内面にFRPライニングを施された鋼製異形管を用いた管路では、管内水圧の圧損が小さく、効率的に水を輸送することができる。
【0017】
また、本発明の鋼製異形管は、管本体の内面の全体にマット状の強化繊維の樹脂含浸層と仕上げ層が積層され、その強化繊維としてガラス繊維が用いられているので、内面に防食塗装を施したものに比べて、メンテナンスの時間と費用の削減を図れるし、設置時には溶接によって効率よく安全に船体に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】
図1の鋼製異形管のライニング方法を示すフローチャート
【
図4】第2実施形態の鋼製異形管の端部の縦断正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
図1および
図2は第1実施形態の舶用の鋼製異形管(曲管)を示す。この鋼製異形管は、鋼製の管本体1の内面全体にプライマー塗膜層2と中間層3と仕上げ層4を重ねて形成し、管本体1の外面および両端面には防食塗膜層5を形成している。
【0020】
前記プライマー塗膜層2は、管本体1の内面に下地処理を行うために金属用のプライマーを塗布して形成したものである。また、中間層3は、ガラス繊維(強化繊維)をマット状に形成して(以下、これを「ガラスマット」と称する。)2枚重ねとし、これに耐薬品性を有するイソ系不飽和ポリエステル樹脂を含浸させたもの(強化繊維の樹脂含浸層)であり、仕上げ層4は、1枚のサーフェイスマットに中間層3と同じ樹脂を含浸させたものである。また、防食塗膜層5は、防食用の塗料を従来と同様にスプレー塗布して形成したものである。
【0021】
ここで、中間層3と仕上げ層4を合わせたFRPライニング層の厚さは1mm以上としている。1mm未満では、摩耗や剥離が生じやすくなり、防食効果が少なくなると考えられるからである。
【0022】
次に、
図3に基づいて、この鋼製異形管のライニング方法を説明する。このライニング方法は、管本体1の内面をショットブラストによりブラスト処理して粗化する工程(S1)と、粗化した管本体1の内面にプライマーを塗布して下地処理を行う工程(S2)と、下地処理した管本体1の内面にガラスマットをセットする(例えば、所定位置に手で保持したり、樹脂で仮止めしたりする)工程(S3)と、管本体1の内面にセットしたガラスマットに樹脂(イソ系不飽和ポリエステル樹脂)を含浸させる工程(S4)と、樹脂含浸したガラスマットの表面にサーフェイスマットをセットする工程(S5)と、ガラスマットの表面にセットしたサーフェイスマットに樹脂を含浸させる工程(S6)と、樹脂含浸したサーフェイスマットの表面を滑らかに仕上げる工程(S7)とからなる。
【0023】
前記ブラスト処理工程(S1)では、ISOの規定による除錆度がSa2 1/2以上で、表面粗さが30〜75μmRzのショット材を用いる。このブラスト処理工程(S1)と、続いて行うプライマー塗布工程(S2)とで、後に行うガラスマットへの樹脂含浸工程(S4)において管内面へのガラスマットの密着性が高まるようにしている。
【0024】
前記ガラスマットセット工程(S3)では、管本体1の異形部分と直管部分に、それぞれ予め所定形状に形成した450g/m
2のガラスマットを2枚重ねで互いに隙間なく敷き詰め、これに続くガラスマットへの樹脂含浸工程(S4)で、刷毛やローラ等を用いたハンドレイアップ法によってガラスマットに樹脂を含浸させる。
【0025】
そして、前記サーフェイスマットセット工程(S5)では、100g/m
2のサーフェイスマットを樹脂含浸したガラスマットの表面にセットし、これに続くサーフェイスマットへの樹脂含浸工程(S6)で、ガラスマットの場合と同様に、ハンドレイアップ法により樹脂をサーフェイスマットに含浸させる。最後に、樹脂含浸したサーフェイスマットの表面仕上げを行う(S7)ことにより、内面ライニング作業が完了する。
【0026】
上述した鋼製異形管のライニング方法では、管本体1の内面にセットしたガラスマットに樹脂を含浸させる工程、およびガラスマット表面にセットしたサーフェイスマットに樹脂を含浸させる工程でハンドレイアップ法を採用したので、従来のスプレー塗布によるライニング方法よりも均一にFRPライニングを施すことができる。
【0027】
また、予めガラスマットを管本体1の異形部分と直管部分に隙間なく敷き詰められるように所定形状に形成しているので、効率よくかつより確実に均一なFRPライニング層を形成することができる。
【0028】
そして、この鋼製異形管は、内面のFRPライニング層が従来のものよりも均一に形成されており、管内の水流に対する抵抗が小さいので、この鋼製異形管を用いた管路では、管内水圧の圧損が小さくなって、効率的に水を輸送することができる。
【0029】
また、強化繊維としてガラス繊維を用いているので、設置時には溶接によって効率よく安全に船体に固定できるし、樹脂として耐薬品性を有するものを用いているので、薬品を用いて管内に通される海水の殺菌処理を行ってもFRPライニング層の剥離が生じにくく、長期間にわたって優れた耐食性が維持される。
【0030】
さらに、内面にFRPライニング層を有するので、FRP製の直管と容易に接続できるという利点もある。
【0031】
図4は第2実施形態の舶用の鋼製異形管を示す。この実施形態では、鋼製の管本体1の内面だけでなく、端面および外面の端部にもFRPライニングが施され、管本体1の外面の端部を除く部分に防食塗装が施されている。
【0032】
管本体1の表面に形成されるFRPライニング層6は、管本体1の端面(および内外面の端部)を覆う端面被覆部6aと、管内面側で端面被覆部6aに連続し、管本体1の内面の端部を除く部分を覆う内面被覆部6bと、管外面側で一部が端面被覆部6aに重なる状態で管本体1の外面の端部を覆う外面被覆部6cとからなり、管の端面と内外面との境界部分では、外形が丸みを帯びた断面形状に形成されている。なお、
図4ではFRPライニング層6を簡略化して示しているが、その端面被覆部6a、内面被覆部6bおよび外面被覆部6cは、それぞれ第1実施形態と同様に、中間層と仕上げ層を重ねて形成したものである。また、
図4では、FRPライニング層6の下地となるプライマー塗膜層は図示を省略している。
【0033】
そして、この鋼製異形管のライニング方法は、管本体1のライニング対象部位となる端面、内面全体および外面の端部に対して、第1実施形態のブラスト処理工程(S1)とプライマー塗布(下地処理)工程(S2)を行った後、ガラスマットセット工程からくサーフェイスマットへの樹脂含浸工程(S3からS6)までを、FRPライニング層6の端面被覆部6a、内面被覆部6b、外面被覆部6cの順で繰り返し行い、最後にライニング対象部位全体に対してサーフェイスマット表面仕上げ(S7)を行う。したがって、第1実施形態と同じく、ガラスマットおよびサーフェイスマットに樹脂を含浸させる工程ではハンドレイアップ法が採用され、従来よりも均一なFRPライニング層6が形成される。
【0034】
この第2実施形態の鋼製異形管は、上記の構成であり、第1実施形態のものと同様の効果を奏することができるうえ、その端部を直管の端部の受口に挿し込んで使用する場合には、下記のように第1実施形態のものよりも長期間安定して使用でき、メンテナンス費用の削減を図ることができる。
【0035】
すなわち、直管の受口に端部を挿し込んだ状態で使用される鋼製異形管は、管内に水を通すときには上流側から管端面に水流が衝突するので、第1実施形態では、管端面の防食塗膜層5が剥離したり、管内面のプライマー塗膜層2とFRPライニング層の間に水流が入り込んでFRPライニング層が管本体1から剥離したりするおそれがあるが、第2実施形態では、FRPライニング層6の端面被覆部6aに内面被覆部6bが連続するように形成されているため、FRPライニング層6が剥離しにくく、優れた耐食性が第1実施形態よりも長期間維持される。
【0036】
また、鋼製異形管の端部の外面と直管の受口内面との間は、通常、直管側に固定されたゴム製のシール部材でシールされるので、第1実施形態では、鋼製異形管の端部を直管の受口に挿し込む際に鋼製異形管の外面の防食塗膜層5がシール部材との摩擦により剥離するおそれがあるが、第2実施形態では、FRPライニング層6の外面被覆部6cを管端からシール部材によるシール位置まで形成することにより、鋼製異形管の端部の外面の早期腐食を防止することができる。
【0037】
さらに、鋼製異形管の端部では、FRPライニング層6の積層作業を行いやすくするために管本体1の端面と内外面との境界部分がR面取りされ、これに沿うようにFRPライニング層6が丸みを帯びた断面形状となっており、この点でもFRPライニング層6の剥離が生じにくくなっている。
【0038】
なお、上述した各実施形態では、鋼製異形管が曲管の場合について説明したが、T字管、レデューサ、隔壁貫通管等についても、曲管の場合と同様に本発明を適用できる。
【0039】
また、本発明の鋼製異形管のライニング方法は、実施形態のような舶用の鋼製異形管に限らず、内面の防食性が必要とされる鋼製異形管に広く適用できる。そして、舶用管以外に適用する場合は、強化繊維や樹脂は使用条件に応じて適切に選定すればよい。例えば、溶接される可能性のない管の場合は強化繊維として炭素繊維を用いてもよいし、薬品を流すことのない管では、樹脂として耐薬品性のないオルソ系の不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 管本体
2 プライマー塗膜層
3 中間層
4 仕上げ層
5 防食塗膜層
6 FRPライニング層
6a 端面被覆部
6b 内面被覆部
6c 外面被覆部
【要約】
【課題】鋼製異形管の内面に均一にFRPライニングを施すことができるライニング方法を提供する。
【解決手段】鋼製異形管の管本体の内面をブラスト処理して粗化し、プライマーを塗布する工程(S1、S2)と、粗化して下地処理した管本体の内面にガラスマットをセットして樹脂を含浸させる工程(S3、S4)と、ガラスマットの表面にサーフェイスマットをセットして樹脂を含浸させる工程(S5、S6)と、サーフェイスマットの表面を滑らかに仕上げる工程(S7)とからなり、そのガラスマットおよびサーフェイスマットの樹脂含浸をハンドレイアップ法で行うことにより、樹脂と強化繊維の混合物をスプレー塗布する従来のライニング方法よりも均一にFRPライニングを施せるようにしたのである。
【選択図】
図3