【課題を解決するための手段】
【0005】
バッテリ用のセルスタックを収容するためのハウジングは、以下の特徴を備えている:
プラスチック構成部材として形成されており、且つ、第1の取付部及び第2の取付部を有している側壁;
側壁を横切る方向に整列され、第1の取付部に取り付けられている第1のレールと、側壁を横切る方向に整列され、第2の取付部に取り付けられている第2のレールとを有し、且つ、セルスタックに予荷重を加える、金属製のフレーム構造体。
【0006】
側壁は例えば矩形の輪郭を有することができる。第1の取付部を、側壁の第1の角領域に配置することができ、また第2の取付部を、側壁の第2の角領域に配置することができる。
【0007】
ハウジングとは、ケーシング構造体、例えばケーシング又はケーシングの一部であると解することができる。ハウジングによって、セルスタックを周囲に対して遮蔽することができる。セルスタックとは、例えば矩形の底面を有している、例えば角柱形の複数のバッテリセルであると解することができる。セルスタックにおいては、バッテリセルの底面を共通の平面に整列することができる。各バッテリセルの長辺側を相互に突き合わせて配置し、またバッテリセルの短辺側を一つの平面において整列することができる。複数のバッテリセルのうちの第1のバッテリセル及び複数のバッテリセルのうちの最後のバッテリセルにおいては、それぞれ一方の長辺側が覆われておらず、セルスタックの各端面を表している。バッテリセルの上側面には、それぞれ少なくとも二つの電気的な端子を設けることができる。セルスタックにおいて、バッテリセルが直列回路を成している場合には、個々の端子間の短い区間をブリッジするために、セル間の端子は交互に形成されている。バッテリセルが並列回路を成している場合には、隣接するセルの端子を同一方向に整列させることができる。各バッテリセルは固有のバッテリセルケーシングを有することができる。側壁の輪郭とは、側壁本体の縁部であると解することができる。取付部は例えば空所を有することができる。取付部は一つ又は複数のガイド面を有することもできる。取付部は輪郭に対して所定の距離を有することができる。フレーム構造体は、特に引っ張り力を受け止めるように構成することができる。レールは例えばL字型の横断面を有することができる。レールは例えば押出形材でよい。レールを軽金属、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金から形成することができる。レールを、例えば形状結合又は力結合によって側壁に結合させることができる。レールと側壁の結合を解除可能に実施することができる。
【0008】
プラスチック構成部材を、繊維強化プラスチック構成部材として形成することができる。繊維強化プラスチック構成部材は、強化繊維を有する熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーから形成することができる。繊維強化プラスチック、特に繊維強化熱可塑性ポリマー又は繊維強化熱硬化性ポリマーは、金属材料よりも軽量でありながら、金属材料と同等の負荷耐性を有することができ、また付加的な浸食保護を要さない。負荷に即した構造によって、予荷重が加えられるべきコンポーネントに力を伝達するために、プラスチック構成部材を使用することができる。面状の繊維強化プラスチック構成部材と、ほぼ棒状の金属製構成部材とを組み合わせることによって、純粋なプラスチック構造を用いる場合よりも遙かに高い押圧力をセルスタックに伝達することができ、また、純粋な金属製の構造を用いるヴァリエーションとは異なり、強くて軽量化された、腐食耐性があるバッテリセル用の廉価なハウジングを提供することができる。
【0009】
プラスチック構成部材は、三次元の輪郭及び補強リブ構造を有することができる。プラスチック構成部材において、第1の部分領域には強化繊維を、織物、繊維シート、多軸繊維シート、緯編、経編、編組及び/又は不織布として設けることができる。プラスチック構成部材の第2の部分領域には、短繊維及び/又は長繊維としての強化繊維が存在する。第1の部分領域を、変形していない半製品として提供することができる。第1の部分領域を、熱作用によって変形可能な状態にし、押圧及び/又は張引によって変形させることができる。第2の部分領域を、射出成形によって第1の部分領域に成形することができ、また素材結合によって第1の部分領域と結合させることができる。第1の部分領域は三次元の輪郭を有することができる。第1の部分領域においては、半製品を、その半製品の本来の平面から外側に向かって変形させることができる。第2の部分領域をリブとして形成することができる。リブは例えば星形、蜂の巣形、三角形又は菱形に第1の部分領域から突出するように形成することができる。リブは、攻撃的な力に対する半製品の剛性を改善することができる。特に、半製品の曲げ剛性を突出したリブによって改善することができる。
【0010】
一つの実施の形態によれば、側壁が第3の取付部及び第4の取付部を有することができる。フレーム構造体は、第3の取付部に取り付けられた第3のレール、及び、第4の取付部に取り付けられた第4のレールを有することができる。この場合、第3のレール及び第4のレールは、側壁を横切る方向に整列されている。第3の取付部を、側壁の第3の角領域に配置することができ、また第4の取付部を、側壁の第4の角の領域に配置することができる。それらの付加的な第3及び第4のレールによって、セルスタックを良好に保持することができる。
【0011】
金属製のフレーム構造体の各レールは、セルスタックの各長辺側縁部を取り付けるための軸方向凹部を有することができる。それらの取付部は、レールを確実に案内するために、レールの横断面を雌型として写し取ることができる。
【0012】
フレーム構造体の第1のレール及び第2のレールはそれぞれ、冷却プレート用の軸方向収容部を有することができる。軸方向収容部はレールに沿って延在することができ、また、実質的に一定の横断面を有することができる。例えば、冷却プレートが軸方向に挿入され、それによって冷却プレートが収容部に確実に保持されるように収容部を形成することができる。このために、冷却プレートは、収容部が係合される凹部を有することができるか、又は収容部は、冷却プレートを挿入することができる凹部を有することができる。冷却プレート用の収容部によって、バッテリセルを効率的に冷却することができるか、又はバッテリセルの温度調整を効率的に行うことができる。
【0013】
各レールをねじ結合によって側壁に結合させることができる。その種のねじ結合は、レールと側壁との間の確実で扱いやすい結合を実現することができる。
【0014】
各レールをねじアダプタ及びナットを介して側壁に結合させることができる。ねじアダプタは側壁を貫通することができ、またナットを、側壁のフレーム構造体側とは反対側において、ねじアダプタにねじ締めすることができる。ねじアダプタは、レール用の接続部であると考えられる。これによって、レールには、横断面積が一貫しているにもかかわらず、軸方向においてねじ山を設けることができる。ねじアダプタは、レールに結合されて固定される。ねじアダプタはレールの凹部に係合させるための嵌合部を有することができる。ねじアダプタは軸方向のボルトを有することができる。ねじアダプタは軸方向のねじ穴を有することもできる。その場合には、ねじを、側壁を貫通させて、側壁に結合させることができる。
【0015】
ハウジングは、第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツを有することができる。この場合、ケーシングパーツを側壁に当接させることができる。第1のレールを、第1の面と第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置することができる。第2のレールを、第2の面と第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置することができる。第3のレールを、第1の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第1の面の縁部に配置することができる。第4のレールを、第2の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第3の面の縁部に配置することができる。ケーシングパーツを繊維強化プラスチック材料から形成することができる。ケーシングパーツは、レールに対して所定の距離を有することができる。ケーシングパーツをレールに直接的に当接させることもできる。ケーシングパーツをレールに結合させることもできる。ケーシングパーツは対向する二つの縁部においてそれぞれシールを有することができ、それによって、側壁及び別の側壁を流体密にシールすることができる。側壁は、ケーシングパーツの形状に対応する凹部又は凸部、及び/又は、ケーシングパーツを支持するための凹部又は凸部を有することができる。
【0016】
ケーシングパーツは、第1の区画及び少なくとも一つの第2の区画から構成されている。第1の区画及び第2の区画は、ケーシングパーツのU字形の横断面をそれぞれ有しており、また境界面において相互に結合されている。異なる長さの区画を組み合わせることによって、異なる長さのケーシングパーツを作製することができる。少なくとも二つの区画によって、ハウジングのモジュール構造を提供することができる。例えば、第1の区画は、第1の数のバッテリセル分の深さ、例えばバッテリセル二つ分の深さを有することができる。第2のセクションは例えば、第2の数のバッテリセル分の深さ、例えばバッテリセル三つ分の深さを有することができる。それらの区画の種々の組み合わせによって、セルの数が異なる種々のバッテリのための任意の長さのハウジングを提供することができる。この場合、同型の側壁を使用することができるが、その一方でレールの長さをケーシングパーツの長さに適合させることができる。各セクションを相互に形状結合及び/又は素材結合によって結合させ、バッテリセルを保護することができる。
【0017】
ハウジングは蓋を有することができ、この蓋はケーシングパーツの開放されている面を閉鎖し、第1の面、側壁及び第3の面に当接している。蓋によって、バッテリセルの周囲のハウジングを完全なものにすることができる。蓋は複数の貫通孔を有することができ、それらの貫通孔内にバッテリの端子を配置し、端子にアクセスできるようにすることができる。蓋は排気通路を有することができ、この排気通路は、バッテリセルから流れ出る気体を収集して排出するように構成されている。蓋はセルコネクタ用の複数の空所を有することができ、それらのコネクタを介して、バッテリセルを端子に導電的に相互に接続することができる。同様に、信号流、例えば温度測定部及び電圧測定部からの信号流を、システム全体の制御及び監視を行う装置へと供給するように形成されている導体路を蓋に統合することができる。蓋はその周囲を包囲するシールを有することができ、このシールをケーシングパーツ及び側壁に取り外し可能又は取り外し不可能に結合させることができる。
【0018】
ハウジングは、上記において説明した側壁と構造的に等しい別の側壁を有することができる。この別の側壁を、上記において説明した側壁とは反対側に位置する、フレーム構造体の端部において、フレーム構造体に結合させることができる。第1のレールを、別の第1の取付部に固定することができる。第2のレールを、別の第2の取付部に固定することができる。第3のレールを、別の第3の取付部に固定することができる。第4のレールを、別の第4の取付部に固定することができる。別の側壁を、別のねじアダプタを介してレールに結合させることができる。バッテリを高効率で機能させるために、別の側壁を、レールを通してセルスタックへと引き寄せ、またセルスタックを側壁に押し付けることができる。
【0019】
更に、以下の特徴を備えているバッテリが提供される:
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセルから成る直方体状のセルスタックであって、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、それとは反対側に位置する第2の端面を有しており、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部及び第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、第1の端面及び第2の端面を横切る方向に整列されている、セルスタック;
本明細書において紹介するアプローチに応じたハウジングであって、側壁はセルスタックの第1の端面に当接しており、セルスタックの第1の長辺側縁部は第1のレールに当接しており、且つ、セルスタックの第2の長辺側縁部は第2のレールに当接している、ハウジング。
【0020】
セルスタックの第3の長辺側縁部を第3のレールに当接させ、且つ、セルスタックの第4の長辺側縁部を第4のレールに当接させることができる。
【0021】
バッテリは冷却プレートを有することができ、この冷却プレートは、第1のレールの軸方向収容部及び第2のレールの軸方向収容部に配置されており、且つ、セルスタックに熱的に接触している。冷却プレートをケーシングパーツ内に配置することができる。
【0022】
更に、本明細書において紹介するアプローチに応じたバッテリを製造するための方法が提供され、この製造方法は以下のステップを備えている:
上述のハウジングを準備するステップ;
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセルから成る直方体状のセルスタックを準備するステップであって、セルスタックは、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、それとは反対側に位置する第2の端面を有しており、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部及び第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、第1の端面及び第2の端面を横切る方向に整列されている、ステップ;
ハウジング内にセルスタックを配置し、側壁をセルスタックの第1の端面に当接させ、セルスタックの第1の長辺側縁部を第1のレールに当接させ、且つ、セルスタックの第2の長辺側縁部を第2のレールに当接させるステップ;
第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツを準備するステップ;
ケーシングパーツをハウジングに配置し、ケーシングパーツを側壁に当接させ、第1のレールを、ケーシングパーツの第1の面と第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置し、且つ、第2のレールを、ケーシングパーツの第2の面と第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置するステップ。
【0023】
更に、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている、繊維強化プラスチック構成部材、特に本明細書において紹介するアプローチに応じたハウジングの側壁を製造するための方法が提供され、この方法は以下のステップを備えている:
熱可塑性マトリクスを有する繊維強化半材料から成るプレートを準備するステップ;プレートを緊張フレームに収容することができる。緊張フレームはプレートの取り扱いを改善するために使用される。
変形可能なプレートを得るために、マトリクスの変形温度へとプレートを加熱又は温度調整するステップ;
プラスチック構成部材の輪郭及びリブ構造体を雌型として写し取る金型キャビティを二つの金型半部間において形成している、開放されている射出成形機に、緊張フレームにある変形の準備が整ったプレートを挿入するステップ;
射出成形機を閉鎖し、変形の準備が整ったプレートの縁部を緊張フレームによって保持し、プレートを緊張状態にし、二つの金型半部間において三次元の変形が行われている間のプレートのしわ形成を回避し、リブ構造体に残余容積を残すステップ;
射出の準備が整った射出成形機の残存容積を、可塑化された熱可塑性材料で充填し、輪郭にリブ構造体を固着させ、それと同時に、射出された融解物によって、二つの金型半部の輪郭を、熱可塑性マトリクスを有する繊維強化半製品によって完全に写し取るステップ。
【0024】
プレートは既に、プラスチック構成部材の寸法を実質的に有することができる。プレートは変形中の移動に対する張り出し部を有することができる。変形温度は、熱可塑性ポリマーの融解温度よりも低くて良い。熱可塑性材料が変形温度に達すると、材料はペースト状になる。例えば、プレートを炉内での赤外線加熱によって温度調整することができる。緊張フレームは、所定のクランプ力をプレートに加えるように構成されているクランプ装置でよい。緊張フレームをプレートの周囲に沿って配置することができる。変形時には、緊張フレーム内のプレートの材料が移動し、それによって、変形による長さ変化を補償することができる。金型キャビティは輪郭の領域において、実質的に、プレートの厚さに相当する高さを有することができる。射出成形機を閉鎖する際に、例えば取付部を成形するために、プレートに貫通孔を設けることができ、その際に、プレートが変形できることに基づき、材料を弱体化させることなく、強化繊維を側方に押し出すことができる。プレートが閉鎖された射出成形機内に配置されている場合、残存容積は残りの金型キャビティであると考えられる。残存容積を実質的にリブ構造体の領域に配置することができる。残存容積は複数の部分領域を有することができ、それらの部分領域には充填の際に、別個に熱可塑性材料を供給することができ、それによって金型キャビティを完全に充填することができる。充填の際に、熱可塑性材料をプレートの熱可塑性材料と混合させることができる。二つの材料は同一のポリマーをベースとすることができる。二つの材料が異なるポリマーをベースとしていても良い。充填のステップにおける熱可塑性材料を、短繊維及び/又は長繊維によって強化することができる。本発明による方法は、プラスチック構成部材が硬化すると、プラスチック構成部材を射出成形型から取り出す取り出しステップを有することができる。更に、本発明による方法は、縁部をプラスチック構成部材の輪郭に合わせて切断する切断ステップを有することができる。
【0025】
例えば角柱状のリチウムイオンセルのためのバッテリモジュールケーシングを、溶接された金属薄板から作製することができる。複数の金属薄板から成るこの構造によって、バッテリモジュールケーシングの質量は大きくなる。しかしながら、電気自動車の質量は、バッテリシステムの所要容量の決定に関与し、また電気自動車の質量はバッテリシステムに基づき、いずれにせよ、一般的な駆動部を備えている車両の質量よりも大きくなることから、高圧接続システム、冷却システム、電子装置、ケーシング及び充電システムから成り、バッテリシステムの制御下での安全な動作を担うバッテリ周辺装置の質量は、可能な限り小さくあるべきである。
【0026】
本明細書において紹介するプラスチックケーシングは、電気自動車又はハイブリッド車両のためのあらゆるリチウムイオンバッテリモジュール又はNiMHバッテリモジュールにおいて使用することができるハウジングを有している。バッテリモジュールを所望のセル数に応じてスケーリングできるようにするために、プラスチックケーシングを分割可能に形成することができる。本明細書において紹介するアプローチにおいては、主として、セルコネクタを介して接続される角柱状のセルが使用される。
【0027】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明を例示的に詳細に説明する。