特許第6099775号(P6099775)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

特許6099775セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング
<>
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000002
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000003
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000004
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000005
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000006
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000007
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000008
  • 特許6099775-セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099775
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】セルスタックを収容するための、金属製のフレーム構造体及びプラスチック構成部材から成るハウジング
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20170313BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20170313BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20170313BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20170313BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20170313BHJP
   H01M 10/6554 20140101ALI20170313BHJP
   B29K 105/20 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   H01M2/10 E
   B29C45/14
   H01M2/10 J
   H01M10/613
   H01M10/625
   H01M10/647
   H01M10/6554
   B29K105:20
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-562103(P2015-562103)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-516265(P2016-516265A)
(43)【公表日】2016年6月2日
(86)【国際出願番号】EP2014054765
(87)【国際公開番号】WO2014140060
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】102013204180.2
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニカ フォーゲル
(72)【発明者】
【氏名】イェンス アッカーマン
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−282582(JP,A)
【文献】 特開2013−037913(JP,A)
【文献】 特開2009−170258(JP,A)
【文献】 特開2002−203527(JP,A)
【文献】 特開2012−160347(JP,A)
【文献】 特開2012−015040(JP,A)
【文献】 特開2011−134709(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0151311(US,A1)
【文献】 特開2010−257650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6554
B29C 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ用のセルスタック(302)を収容するためのハウジング(100)において、
前記ハウジング(100)は、
プラスチック構成部材として形成されており、且つ、第1の取付部(108)及び第2の取付部(110)を有している側壁(102)と、
前記側壁(102)を横切る方向に整列され、前記第1の取付部(108)に固定されている第1のレール(116)と、前記側壁(102)を横切る方向に整列され、前記第2の取付部(110)に固定されている第2のレール(118)とを有し、且つ、前記セルスタック(302)を押圧する、金属製のフレーム構造体(104)と、
を備えており、
前記フレーム構造体(104)の前記第1のレール(116)及び前記第2のレール(118)は、冷却プレート(304)用の軸方向収容部(202)をそれぞれ有していることを特徴とする、ハウジング(100)。
【請求項2】
前記プラスチック構成部材は、3次元の輪郭及び補強リブ構造体(106)を備えている繊維強化プラスチック構成部材として形成されている、請求項1に記載のハウジング(100)。
【請求項3】
前記側壁は、第3の取付部(112)及び第4の取付部(114)を有しており、
前記フレーム構造体(104)は、前記側壁(102)を横切る方向に整列され、前記第3の取付部(112)に固定されている第3のレール(120)と、前記側壁(102)を横切る方向に整列され、前記第4の取付部(114)に固定されている第4のレール(122)とを有している、請求項1又は2に記載のハウジング(100)。
【請求項4】
前記第1のレール(116)、前記第2のレール(118)、前記第3のレール(120)及び前記第4のレール(122)は、前記セルスタック(302)の各長辺側縁部を収容するための軸方向凹部をそれぞれ有している、請求項3に記載のハウジング(100)。
【請求項5】
前記第1のレール(116)、前記第2のレール(118)、前記第3のレール(120)及び前記第4のレール(122)は、ねじ結合を介して前記側壁(102)にそれぞれ結合されている、請求項4に記載のハウジング(100)。
【請求項6】
第1の面と、該第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、該第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツ(400)を有しており、
前記ケーシングパーツ(400)は、前記第2の面とは反対側に位置する前記第1及び第3の面の端部が前記側壁(102)に当接するように配置されており、前記第1のレール(116)は、前記第1の面と前記第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に前記第1のレール(116)の一端が位置するように配置されており、且つ、前記第2のレール(118)は、前記第2の面と前記第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に前記第2のレール(118)の一端が位置するように配置されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハウジング(100)。
【請求項7】
前記ケーシングパーツ(400)は、第1の区画及び少なくとも一つの第2の区画から構成されており、
前記第1の区画及び前記第2の区画は、前記ケーシングパーツ(400)の前記第1の面と前記第2の面と前記第3の面とから成るU字形の横断面をそれぞれ有しており、且つ、U字形の端面である境界面において相互に結合されており、
前記第1の区画及び前記第2の区画は、前記第2の面とは反対側に位置する前記第1及び第3の面の端部がそれぞれ前記側壁(102)に当接するように配置されており、
前記第1のレール(116)及び前記第2のレール(118)は、前記第1の区画又は前記第2の区画に配置されており、
異なる長さの区画を組み合わせることによって、異なる長さのケーシングパーツ(400)を作製可能である、請求項に記載のハウジング(100)。
【請求項8】
前記ハウジング(100)は、蓋(404)を有しており、該蓋(404)は、前記ケーシングパーツ(400)の開放されている側を閉鎖し、且つ、前記第1の面、前記側壁(102)及び前記第3の面に当接している、請求項6又は7に記載のハウジング(100)。
【請求項9】
前記ハウジング(100)は、前記側壁(102)と構造的に等しい別の側壁(402)を有しており、該別の側壁(402)は、前記フレーム構造体(104)の、前記側壁(102)側とは反対側の端部において、前記フレーム構造体(104)に結合されており、
前記第1のレール(116)は、別の第1の取付部に固定されており、且つ、前記第2のレール(118)は、別の第2の取付部に固定されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハウジング(100)。
【請求項10】
バッテリ(300)において、
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセル(302)から成る直方体状のセルスタック(302)であって、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、及び、該第1の端面とは反対側に位置する第2の端面を有しており、前記第1の長辺側縁部、前記第2の長辺側縁部、前記第3の長辺側縁部及び前記第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、前記第1の端面及び前記第2の端面を横切る方向に整列されている、セルスタックと、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のハウジング(100)であって、前記側壁(102)は、前記セルスタック(302)の前記第1の端面に当接しており、前記セルスタック(302)の前記第1の長辺側縁部は、前記第1のレール(116)に当接しており、且つ、前記セルスタック(302)の前記第2の長辺側縁部は、前記第2のレール(118)に当接している、ハウジング(100)と、
を有していることを特徴とする、バッテリ(300)。
【請求項11】
前記バッテリ(300)は、冷却プレート(304)を有しており、該冷却プレート(304)は、前記第1のレール(116)の軸方向収容部及び前記第2のレール(118)の軸方向収容部に配置されており、且つ、前記セルスタック(302)に熱的に接触している、請求項10に記載のバッテリ(300)。
【請求項12】
バッテリ(300)を製造するための方法(700)において、
該方法(700)は、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のハウジング(100)を準備するステップ(701)と、
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセル(302)から成る直方体状のセルスタック(302)を準備するステップ(703)であって、前記セルスタック(302)は、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、及び、該第1の端面とは反対側に位置する第2の端面を有しており、前記第1の長辺側縁部、前記第2の長辺側縁部、前記第3の長辺側縁部及び前記第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、前記第1の端面及び前記第2の端面を横切る方向に整列されている、ステップ(703)と、
前記ハウジング(100)内に前記セルスタック(302)を配置し、前記側壁(102)を前記セルスタック(302)の前記第1の端面に当接させ、前記セルスタック(302)の前記第1の長辺側縁部を前記第1のレール(116)に当接させ、且つ、前記セルスタック(302)の前記第2の長辺側縁部を前記第2のレール(118)に当接させるステップ(705)と、
第1の面と、該第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、該第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツ(400)を準備するステップ(707)と、
前記ケーシングパーツ(400)を前記ハウジング(100)に配置し、前記ケーシングパーツ(400)の、前記第2の面とは反対側に位置する前記第1及び第3の面の端部を前記側壁(102)に当接させ、前記第1のレール(116)を、前記ケーシングパーツ(400)の前記第1の面と前記第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置し、且つ、前記第2のレール(118)を、前記ケーシングパーツ(400)の前記第2の面と前記第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置するステップ(709)と、
を備えていることを特徴とする、バッテリ(300)を製造するための方法(700)。
【請求項13】
三次元の輪郭及び補強リブ構造体(106)を備えている繊維強化プラスチック構成部材(102)としての、請求項1乃至のいずれか一項に記載のハウジング(100)の側壁(102)を製造するための方法(800)において、
該方法(800)は、
熱可塑性のマトリクスを有する繊維強化半材料から成るプレートを準備するステップ(802)と、
前記プレートを変形可能とするために、所定のクランプ力をプレートに加えるように構成されている緊張フレーム内に固定されている前記プレートを、前記マトリクスの変形温度へと温度調整するステップ(804)と、
前記プラスチック構成部材(102)の前記輪郭及び前記リブ構造体(106)を雌型として写し取る金型キャビティを二つの金型半部間において形成している、開放されている射出成形機に、前記変形温度に温度調整された前記プレートを前記緊張フレームと共に挿入するステップ(806)と、
前記射出成形機を閉鎖し、前記変形温度に温度調整された前記プレートの縁部を前記緊張フレームによって保持し、前記プレートを緊張状態にし、三次元の変形が行われている間のしわ形成を回避し、前記リブ構造体(106)に残余容積を残すステップ(808)と、
前記射出成形機の前記残存容積を、融解された熱可塑性材料で充填し、前記輪郭に前記リブ構造体(106)を固着させ、融解物の圧力によって、前記射出成形機の金型の輪郭を、変形されたプレート半製品によって完全に写し取るステップ(810)と、
を備えていることを特徴とする、繊維強化プラスチック構成部材(102)を製造するための方法(800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルスタックを収容するためのハウジング、バッテリ、バッテリの製造方法、並びに、バッテリのハウジング用の繊維強化プラスチック構成部材の製造方法に関する。
【0002】
車両用バッテリはケーシングを有することができ、そのケーシングによってバッテリのセルを例えば周囲環境の影響から保護することができる。
【背景技術】
【0003】
独国特許出願公開第102010013002号明細書には、複数の金属プレートから成るケーシング内に配置されているセルスタックを備えているバッテリが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来技術を背景として、本発明によれば、各独立請求項に記載されている、セルスタックを収容するためのハウジング、更には、バッテリ、バッテリの製造方法、並びに、繊維強化プラスチック構成部材の製造方法が提案される。有利な実施の形態は、各従属請求項及び下記に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
バッテリ用のセルスタックを収容するためのハウジングは、以下の特徴を備えている:
プラスチック構成部材として形成されており、且つ、第1の取付部及び第2の取付部を有している側壁;
側壁を横切る方向に整列され、第1の取付部に取り付けられている第1のレールと、側壁を横切る方向に整列され、第2の取付部に取り付けられている第2のレールとを有し、且つ、セルスタックに予荷重を加える、金属製のフレーム構造体。
【0006】
側壁は例えば矩形の輪郭を有することができる。第1の取付部を、側壁の第1の角領域に配置することができ、また第2の取付部を、側壁の第2の角領域に配置することができる。
【0007】
ハウジングとは、ケーシング構造体、例えばケーシング又はケーシングの一部であると解することができる。ハウジングによって、セルスタックを周囲に対して遮蔽することができる。セルスタックとは、例えば矩形の底面を有している、例えば角柱形の複数のバッテリセルであると解することができる。セルスタックにおいては、バッテリセルの底面を共通の平面に整列することができる。各バッテリセルの長辺側を相互に突き合わせて配置し、またバッテリセルの短辺側を一つの平面において整列することができる。複数のバッテリセルのうちの第1のバッテリセル及び複数のバッテリセルのうちの最後のバッテリセルにおいては、それぞれ一方の長辺側が覆われておらず、セルスタックの各端面を表している。バッテリセルの上側面には、それぞれ少なくとも二つの電気的な端子を設けることができる。セルスタックにおいて、バッテリセルが直列回路を成している場合には、個々の端子間の短い区間をブリッジするために、セル間の端子は交互に形成されている。バッテリセルが並列回路を成している場合には、隣接するセルの端子を同一方向に整列させることができる。各バッテリセルは固有のバッテリセルケーシングを有することができる。側壁の輪郭とは、側壁本体の縁部であると解することができる。取付部は例えば空所を有することができる。取付部は一つ又は複数のガイド面を有することもできる。取付部は輪郭に対して所定の距離を有することができる。フレーム構造体は、特に引っ張り力を受け止めるように構成することができる。レールは例えばL字型の横断面を有することができる。レールは例えば押出形材でよい。レールを軽金属、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金から形成することができる。レールを、例えば形状結合又は力結合によって側壁に結合させることができる。レールと側壁の結合を解除可能に実施することができる。
【0008】
プラスチック構成部材を、繊維強化プラスチック構成部材として形成することができる。繊維強化プラスチック構成部材は、強化繊維を有する熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーから形成することができる。繊維強化プラスチック、特に繊維強化熱可塑性ポリマー又は繊維強化熱硬化性ポリマーは、金属材料よりも軽量でありながら、金属材料と同等の負荷耐性を有することができ、また付加的な浸食保護を要さない。負荷に即した構造によって、予荷重が加えられるべきコンポーネントに力を伝達するために、プラスチック構成部材を使用することができる。面状の繊維強化プラスチック構成部材と、ほぼ棒状の金属製構成部材とを組み合わせることによって、純粋なプラスチック構造を用いる場合よりも遙かに高い押圧力をセルスタックに伝達することができ、また、純粋な金属製の構造を用いるヴァリエーションとは異なり、強くて軽量化された、腐食耐性があるバッテリセル用の廉価なハウジングを提供することができる。
【0009】
プラスチック構成部材は、三次元の輪郭及び補強リブ構造を有することができる。プラスチック構成部材において、第1の部分領域には強化繊維を、織物、繊維シート、多軸繊維シート、緯編、経編、編組及び/又は不織布として設けることができる。プラスチック構成部材の第2の部分領域には、短繊維及び/又は長繊維としての強化繊維が存在する。第1の部分領域を、変形していない半製品として提供することができる。第1の部分領域を、熱作用によって変形可能な状態にし、押圧及び/又は張引によって変形させることができる。第2の部分領域を、射出成形によって第1の部分領域に成形することができ、また素材結合によって第1の部分領域と結合させることができる。第1の部分領域は三次元の輪郭を有することができる。第1の部分領域においては、半製品を、その半製品の本来の平面から外側に向かって変形させることができる。第2の部分領域をリブとして形成することができる。リブは例えば星形、蜂の巣形、三角形又は菱形に第1の部分領域から突出するように形成することができる。リブは、攻撃的な力に対する半製品の剛性を改善することができる。特に、半製品の曲げ剛性を突出したリブによって改善することができる。
【0010】
一つの実施の形態によれば、側壁が第3の取付部及び第4の取付部を有することができる。フレーム構造体は、第3の取付部に取り付けられた第3のレール、及び、第4の取付部に取り付けられた第4のレールを有することができる。この場合、第3のレール及び第4のレールは、側壁を横切る方向に整列されている。第3の取付部を、側壁の第3の角領域に配置することができ、また第4の取付部を、側壁の第4の角の領域に配置することができる。それらの付加的な第3及び第4のレールによって、セルスタックを良好に保持することができる。
【0011】
金属製のフレーム構造体の各レールは、セルスタックの各長辺側縁部を取り付けるための軸方向凹部を有することができる。それらの取付部は、レールを確実に案内するために、レールの横断面を雌型として写し取ることができる。
【0012】
フレーム構造体の第1のレール及び第2のレールはそれぞれ、冷却プレート用の軸方向収容部を有することができる。軸方向収容部はレールに沿って延在することができ、また、実質的に一定の横断面を有することができる。例えば、冷却プレートが軸方向に挿入され、それによって冷却プレートが収容部に確実に保持されるように収容部を形成することができる。このために、冷却プレートは、収容部が係合される凹部を有することができるか、又は収容部は、冷却プレートを挿入することができる凹部を有することができる。冷却プレート用の収容部によって、バッテリセルを効率的に冷却することができるか、又はバッテリセルの温度調整を効率的に行うことができる。
【0013】
各レールをねじ結合によって側壁に結合させることができる。その種のねじ結合は、レールと側壁との間の確実で扱いやすい結合を実現することができる。
【0014】
各レールをねじアダプタ及びナットを介して側壁に結合させることができる。ねじアダプタは側壁を貫通することができ、またナットを、側壁のフレーム構造体側とは反対側において、ねじアダプタにねじ締めすることができる。ねじアダプタは、レール用の接続部であると考えられる。これによって、レールには、横断面積が一貫しているにもかかわらず、軸方向においてねじ山を設けることができる。ねじアダプタは、レールに結合されて固定される。ねじアダプタはレールの凹部に係合させるための嵌合部を有することができる。ねじアダプタは軸方向のボルトを有することができる。ねじアダプタは軸方向のねじ穴を有することもできる。その場合には、ねじを、側壁を貫通させて、側壁に結合させることができる。
【0015】
ハウジングは、第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツを有することができる。この場合、ケーシングパーツを側壁に当接させることができる。第1のレールを、第1の面と第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置することができる。第2のレールを、第2の面と第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置することができる。第3のレールを、第1の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第1の面の縁部に配置することができる。第4のレールを、第2の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第3の面の縁部に配置することができる。ケーシングパーツを繊維強化プラスチック材料から形成することができる。ケーシングパーツは、レールに対して所定の距離を有することができる。ケーシングパーツをレールに直接的に当接させることもできる。ケーシングパーツをレールに結合させることもできる。ケーシングパーツは対向する二つの縁部においてそれぞれシールを有することができ、それによって、側壁及び別の側壁を流体密にシールすることができる。側壁は、ケーシングパーツの形状に対応する凹部又は凸部、及び/又は、ケーシングパーツを支持するための凹部又は凸部を有することができる。
【0016】
ケーシングパーツは、第1の区画及び少なくとも一つの第2の区画から構成されている。第1の区画及び第2の区画は、ケーシングパーツのU字形の横断面をそれぞれ有しており、また境界面において相互に結合されている。異なる長さの区画を組み合わせることによって、異なる長さのケーシングパーツを作製することができる。少なくとも二つの区画によって、ハウジングのモジュール構造を提供することができる。例えば、第1の区画は、第1の数のバッテリセル分の深さ、例えばバッテリセル二つ分の深さを有することができる。第2のセクションは例えば、第2の数のバッテリセル分の深さ、例えばバッテリセル三つ分の深さを有することができる。それらの区画の種々の組み合わせによって、セルの数が異なる種々のバッテリのための任意の長さのハウジングを提供することができる。この場合、同型の側壁を使用することができるが、その一方でレールの長さをケーシングパーツの長さに適合させることができる。各セクションを相互に形状結合及び/又は素材結合によって結合させ、バッテリセルを保護することができる。
【0017】
ハウジングは蓋を有することができ、この蓋はケーシングパーツの開放されている面を閉鎖し、第1の面、側壁及び第3の面に当接している。蓋によって、バッテリセルの周囲のハウジングを完全なものにすることができる。蓋は複数の貫通孔を有することができ、それらの貫通孔内にバッテリの端子を配置し、端子にアクセスできるようにすることができる。蓋は排気通路を有することができ、この排気通路は、バッテリセルから流れ出る気体を収集して排出するように構成されている。蓋はセルコネクタ用の複数の空所を有することができ、それらのコネクタを介して、バッテリセルを端子に導電的に相互に接続することができる。同様に、信号流、例えば温度測定部及び電圧測定部からの信号流を、システム全体の制御及び監視を行う装置へと供給するように形成されている導体路を蓋に統合することができる。蓋はその周囲を包囲するシールを有することができ、このシールをケーシングパーツ及び側壁に取り外し可能又は取り外し不可能に結合させることができる。
【0018】
ハウジングは、上記において説明した側壁と構造的に等しい別の側壁を有することができる。この別の側壁を、上記において説明した側壁とは反対側に位置する、フレーム構造体の端部において、フレーム構造体に結合させることができる。第1のレールを、別の第1の取付部に固定することができる。第2のレールを、別の第2の取付部に固定することができる。第3のレールを、別の第3の取付部に固定することができる。第4のレールを、別の第4の取付部に固定することができる。別の側壁を、別のねじアダプタを介してレールに結合させることができる。バッテリを高効率で機能させるために、別の側壁を、レールを通してセルスタックへと引き寄せ、またセルスタックを側壁に押し付けることができる。
【0019】
更に、以下の特徴を備えているバッテリが提供される:
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセルから成る直方体状のセルスタックであって、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、それとは反対側に位置する第2の端面を有しており、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部及び第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、第1の端面及び第2の端面を横切る方向に整列されている、セルスタック;
本明細書において紹介するアプローチに応じたハウジングであって、側壁はセルスタックの第1の端面に当接しており、セルスタックの第1の長辺側縁部は第1のレールに当接しており、且つ、セルスタックの第2の長辺側縁部は第2のレールに当接している、ハウジング。
【0020】
セルスタックの第3の長辺側縁部を第3のレールに当接させ、且つ、セルスタックの第4の長辺側縁部を第4のレールに当接させることができる。
【0021】
バッテリは冷却プレートを有することができ、この冷却プレートは、第1のレールの軸方向収容部及び第2のレールの軸方向収容部に配置されており、且つ、セルスタックに熱的に接触している。冷却プレートをケーシングパーツ内に配置することができる。
【0022】
更に、本明細書において紹介するアプローチに応じたバッテリを製造するための方法が提供され、この製造方法は以下のステップを備えている:
上述のハウジングを準備するステップ;
角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセルから成る直方体状のセルスタックを準備するステップであって、セルスタックは、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、それとは反対側に位置する第2の端面を有しており、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部及び第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、第1の端面及び第2の端面を横切る方向に整列されている、ステップ;
ハウジング内にセルスタックを配置し、側壁をセルスタックの第1の端面に当接させ、セルスタックの第1の長辺側縁部を第1のレールに当接させ、且つ、セルスタックの第2の長辺側縁部を第2のレールに当接させるステップ;
第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を備えたケーシングパーツを準備するステップ;
ケーシングパーツをハウジングに配置し、ケーシングパーツを側壁に当接させ、第1のレールを、ケーシングパーツの第1の面と第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置し、且つ、第2のレールを、ケーシングパーツの第2の面と第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置するステップ。
【0023】
更に、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている、繊維強化プラスチック構成部材、特に本明細書において紹介するアプローチに応じたハウジングの側壁を製造するための方法が提供され、この方法は以下のステップを備えている:
熱可塑性マトリクスを有する繊維強化半材料から成るプレートを準備するステップ;プレートを緊張フレームに収容することができる。緊張フレームはプレートの取り扱いを改善するために使用される。
変形可能なプレートを得るために、マトリクスの変形温度へとプレートを加熱又は温度調整するステップ;
プラスチック構成部材の輪郭及びリブ構造体を雌型として写し取る金型キャビティを二つの金型半部間において形成している、開放されている射出成形機に、緊張フレームにある変形の準備が整ったプレートを挿入するステップ;
射出成形機を閉鎖し、変形の準備が整ったプレートの縁部を緊張フレームによって保持し、プレートを緊張状態にし、二つの金型半部間において三次元の変形が行われている間のプレートのしわ形成を回避し、リブ構造体に残余容積を残すステップ;
射出の準備が整った射出成形機の残存容積を、可塑化された熱可塑性材料で充填し、輪郭にリブ構造体を固着させ、それと同時に、射出された融解物によって、二つの金型半部の輪郭を、熱可塑性マトリクスを有する繊維強化半製品によって完全に写し取るステップ。
【0024】
プレートは既に、プラスチック構成部材の寸法を実質的に有することができる。プレートは変形中の移動に対する張り出し部を有することができる。変形温度は、熱可塑性ポリマーの融解温度よりも低くて良い。熱可塑性材料が変形温度に達すると、材料はペースト状になる。例えば、プレートを炉内での赤外線加熱によって温度調整することができる。緊張フレームは、所定のクランプ力をプレートに加えるように構成されているクランプ装置でよい。緊張フレームをプレートの周囲に沿って配置することができる。変形時には、緊張フレーム内のプレートの材料が移動し、それによって、変形による長さ変化を補償することができる。金型キャビティは輪郭の領域において、実質的に、プレートの厚さに相当する高さを有することができる。射出成形機を閉鎖する際に、例えば取付部を成形するために、プレートに貫通孔を設けることができ、その際に、プレートが変形できることに基づき、材料を弱体化させることなく、強化繊維を側方に押し出すことができる。プレートが閉鎖された射出成形機内に配置されている場合、残存容積は残りの金型キャビティであると考えられる。残存容積を実質的にリブ構造体の領域に配置することができる。残存容積は複数の部分領域を有することができ、それらの部分領域には充填の際に、別個に熱可塑性材料を供給することができ、それによって金型キャビティを完全に充填することができる。充填の際に、熱可塑性材料をプレートの熱可塑性材料と混合させることができる。二つの材料は同一のポリマーをベースとすることができる。二つの材料が異なるポリマーをベースとしていても良い。充填のステップにおける熱可塑性材料を、短繊維及び/又は長繊維によって強化することができる。本発明による方法は、プラスチック構成部材が硬化すると、プラスチック構成部材を射出成形型から取り出す取り出しステップを有することができる。更に、本発明による方法は、縁部をプラスチック構成部材の輪郭に合わせて切断する切断ステップを有することができる。
【0025】
例えば角柱状のリチウムイオンセルのためのバッテリモジュールケーシングを、溶接された金属薄板から作製することができる。複数の金属薄板から成るこの構造によって、バッテリモジュールケーシングの質量は大きくなる。しかしながら、電気自動車の質量は、バッテリシステムの所要容量の決定に関与し、また電気自動車の質量はバッテリシステムに基づき、いずれにせよ、一般的な駆動部を備えている車両の質量よりも大きくなることから、高圧接続システム、冷却システム、電子装置、ケーシング及び充電システムから成り、バッテリシステムの制御下での安全な動作を担うバッテリ周辺装置の質量は、可能な限り小さくあるべきである。
【0026】
本明細書において紹介するプラスチックケーシングは、電気自動車又はハイブリッド車両のためのあらゆるリチウムイオンバッテリモジュール又はNiMHバッテリモジュールにおいて使用することができるハウジングを有している。バッテリモジュールを所望のセル数に応じてスケーリングできるようにするために、プラスチックケーシングを分割可能に形成することができる。本明細書において紹介するアプローチにおいては、主として、セルコネクタを介して接続される角柱状のセルが使用される。
【0027】
以下では、添付の図面を参照しながら本発明を例示的に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一つの実施例による、ハウジングの概略図を示す。
図2】本発明の一つの実施例による、ハウジングを示す。
図3】本発明の一つの実施例による、バッテリの一部を示す。
図4】本発明の一つの実施例による、バッテリの立体分解図を示す。
図5】本発明の一つの別の実施例による、組み立てられたバッテリを示す。
図6】本発明の一つの実施例による、バッテリにおける力の影響を示す。
図7】本発明の一つの実施例による、バッテリを製造するための方法のフローチャートを示す。
図8】本発明の一つの実施例による、側壁を作製するための方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の種々の有利な実施例に関する以下の説明において、複数の図面に示されており且つ同様の機能を有する構成要素に対しては、同一又は類似の参照番号を使用する。また、それらの構成要素について繰り返しの説明は行わない。
【0030】
図1には、本発明の一つの実施例による、セルスタックを収容するためのハウジング100が概略的に示されている。ハウジング100は、側壁102及びフレーム構造体104を有している。側壁102は、プラスチック構成部材として形成されている。オプションとして、側壁102を、三次元の輪郭及び補強リブ構造体106を備えている繊維強化プラスチック構成部材として形成することができる。
【0031】
側壁102は、有利には矩形の輪郭を有している。側壁102は、第1の角領域において第1の取付部108を有しており、且つ、第2の角領域において第2の取付部110を有している。側壁102は、第3の角領域及び第4の角領域において、第3の取付部112及び第4の取付部114を有することができる。
【0032】
フレーム構造体104は金属製であり、且つ、セルスタックに予荷重を加えるように形成されている。フレーム構造体104は、第1のレール116及び第2のレール118を有している。更に、フレーム構造体104は、第3のレール120及び第4のレール122を有することができる。
【0033】
図示されている実施例によれば、第1のレール116は第1の取付部108に固定されている。第2のレール118は、第2の取付部110に固定されている。第3のレール120は第3の取付部112に固定されている。第4のレール122は、第4の取付部114に固定されている。第1のレール116、第2のレール118、第3のレール120及び第4のレール122は、側壁102を横切る方向に整列されており、また各レールは、セルスタックの各長辺側縁部を収容するための軸方向凹部を有している。
【0034】
ハウジング100は種々の役割を担っている。ハウジング100は、組み立て工程中にリチウムイオンセルを固定し、バッテリシステムの欠陥のない機能にとって必要とされる、セルの緊締を保証する。本明細書において紹介するアプローチによれば、セルを正確に位置決めすることができるフレーム構造体104を用いることによって、この緊締を実現することができる。
【0035】
図2には、本発明の一つの実施例による、セルスタックを収容するためのハウジング100が示されている。ハウジングは、図1に示したハウジングの原理的な構造に対応している。図2には、側壁102がレールシステム104と共に示されている。側壁102は、プラスチック・プラスチック・ハイブリッド構成部材として形成されている。側壁102は、本発明の一つの実施例による、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている繊維強化プラスチック構成部材を作製するための方法を使用して作製されている。側壁102を作製するために、熱可塑性マトリクスを有している繊維強化半製品から成るプレートが準備され、そのプレートが緊張フレームに収容され、変形の準備が整ったプレートを得るために、マトリクスの変形温度へと温度調整される。緊張フレームに保持されている、変形の準備が整ったプレートが、開放されている射出成形機に挿入される。射出成形機は、二つの金型半部間において金型キャビティを形成し、この金型キャビティは、側壁102の輪郭及びリブ構造体106を雌型として写し取る。射出成形機を射出の準備が整った状態に移行させるために射出成形機が閉鎖されると、変形の準備が整ったプレートの縁部は緊張フレームにおいて所定のクランプ力でクランプされ、それによってプレートには張力が維持される。閉鎖中に、変形の準備が整ったプレートには、二つの金型半部間において、側壁102の輪郭が生じる。金型キャビティのリブ構造体106には、残余容積が残される。射出の準備が整った射出成形機の残存容積には、可塑化された熱可塑性材料が射出され、リブ構造106が上述の輪郭に形成される。流入する融解物の圧力でもって、金型の輪郭は、事前に変形された半製品によって完全に模られる。ここではリブ構造106が星形に形成されている。リブ構造体106の節点は、注型技術的な最適化のために、リングリブとして形成されている。四つの取付部108,110,112,114は、側壁102を通り抜ける貫通孔として形成されている。レール側とは反対側において、各取付部108,110,112,114は、ねじ又はナットの当接面を有している。取付部108,110,112,114にはねじアダプタ200が配置されており、それらのねじアダプタ200はレール116,118,120,122に固く結合されている。レール116,118,120,122はアルミニウムから成る押出形材として形成されている。第1のレール116及び第2のレール118は、冷却プレート用の軸方向収容部202をそれぞれ付加的に有している。従って、第1のレール116及び第2のレール118は、F字形の断面を有しており、その場合、セルスタックを収容するための軸方向の凹部は、断面の開かれたL字形の角によって形成されている。軸方向収容部202は、断面のU字形の部分によって形成されている。第3のレール120及び第4のレール122は、単純にL字形の断面を有しており、この断面によって、セルスタックを収容するための軸方向凹部が形成されている。各ねじアダプタ200は、L字形の断面部分又はL字形の断面部分の一部を取り囲んでおり、また抗張性を有するようにレール116,118,120,122に結合されている。
【0036】
図3には、本発明の一つの実施例によるバッテリ300が示されている。図3においては、複数のセル302及び冷却プレート304がレールシステム104に挿入されている。換言すれば、図3には、図1及び図2に示されているような、フレーム構造体104を備えているエネルギ蓄積セル302用のハウジング100が示されている。
【0037】
セル302は、矩形の底面及び角柱状のセルボディを有している。各セル302の長辺側が隣接するセル302の長辺側と接するように、複数のセル302が相互に並んで配置されている。それらのセル302は結合されて一つのセルスタックを形成し、このセルスタックを以下においても同様に参照番号302で表す場合もある。セル302はレール116,118,120,122の軸方向凹部に挿入されているので、セル302の長辺側縁部はレール116,118,120,122によって取り囲まれている。この実施例においては構造の等しい五つのセル302から成るセルスタックの一方の端面は側壁102に当接している。この実施例において、セルスタック302はリブ構造に当接している。別の四つのねじアダプタ200が、各レール116,118,120,122の露出されている端部に配置されている。この実施例において、各ねじアダプタ200は軸方向のボルトを有しており、このボルトが側壁102の各取付部に係合される。ねじアダプタ200は、例えばねじ穴を有することもでき、その場合には、取付部にそれぞれねじが配置されることになる。この図においては、第1のレール116及び第2のレール118が下側に配置されており、それに対し、第3のレール120及び第4のレール122は上側に配置されている。セル302の電気的な接触接続部が上面に設けられ、且つ、第3のレール120と第4のレール122との間に配置されるように、セル302はフレーム構造体104に挿入されている。電気的な端子は、ここで図示されている実施例においては、交互に配置されている。各正極には負極が続いており、従って各負極には正極が続いている。冷却プレート304は、下側のレール116,118の収容部に挿入されており、バッテリ300の温度調整のために、セル302の下面に当接している。
【0038】
以下では、セル302が例示的にリチウムイオンセルとして形成されている実施例を説明する。セル端子における接触接続個所を除いて、リチウムイオンセル302は電気的に絶縁されている。このために、金属製のセルカップに手動でラッカを塗ることができる。セルの絶縁を(深絞りされた)シートによって実現することもできる。セル302間の絶縁のために、本明細書において紹介するアプローチによれば、特に要求に応じて、簡単なプラスチックプレート、プラスチックシート又は絶縁紙を使用することができる。プラスチックプレート又はプラスチックシートによって、安全性及び環境保護に関する基準を満たすための高いコスト、並びに、ラッカを塗る際の長時間のラッカ塗布プロセス及び乾燥プロセスを回避することができる。更に、シート又はプレートが均一な厚さを有しているので、それによって、手動でラッカを塗ることに起因するセル寸法の変動を回避することができる。そのようなセル寸法の変動が生じると、後の組み立て時に問題が発生する虞がある。深絞りされたシートは、そこにおいて必要とされる抜き勾配に起因して、あらゆるサイズのセルにおいて使用できるものではない。更に、プレート又はシートが介在することによって、セル302間の熱的な接触が低減される。確かに、深絞りされた角柱状のセルカップはそれ自体によって、既にある程度の機械的安定性を提供するが、しかしながらバッテリモジュールケーシング100は、衝突時のバッテリシステム300の機械的な安定性を高める。
【0039】
図4には、本発明の一つの実施例によるモジュールの形態のバッテリ300が分解立体図で示されている。バッテリ300は、図3に示したバッテリに対応する。従って図4には、本明細書において紹介するアプローチによるモジュール300が、フレームシステム104、バッテリハウジング100及び五つのリチウムイオンセル302と共に、立体分解図で示されている。バッテリ300は更にケーシングパーツ400及び別の側壁402を有している。また、バッテリ300は、セルコネクタ406及び端子408を備えている蓋404を有している。ケーシングパーツ400は、U字型の横断面を有している。ケーシングパーツ400はプラスチック構成部材である。三つの面が相互に直角を成すように配置されている。ケーシングパーツ400の横断面は、内部にセルスタック302が配置されているフレーム構造体がケーシングパーツ400によって完全に包囲される程度の大きさを有している。ケーシングパーツ400は一つの開放されている側面を有している。この開放されている側面は、セル302の上面と一致する。別の側壁402は側壁102に対応する。別の側壁402は、側壁102側とは反対側に位置する、セルスタック302の端面に配置されている。別の側壁402は、側壁102の鏡像を成すように整列されている。側壁102及び別の側壁402は、ナット410によってねじアダプタ200に結合されている。上面には蓋404が配置されている。蓋404もプラスチック構成部材である。蓋404は、大きい貫通孔及び小さい貫通孔を有している。大きい貫通孔は、隣接しているバッテリセル302の二つの電気端子の上にそれぞれ配置されている。大きい貫通孔にはセルコネクタ406がそれぞれ配置されている。セルコネクタ406は、セル302の二つの電気的な接触接続部を接続する。この実施例において、セル302は直列に結線されている。直列回路の最初の電気的な接触接続部及び最後の電気的な接触接続部には、図示していない後続のモジュールに対する端子408が配置されている。端子408は蓋の小さい貫通孔に配置されている。セルコネクタ406にはセルコネクタ406用のカバーキャップ412が、また端子408には極用のカバーキャップ414がそれぞれ被せられており、従って、セルコネクタ406及び端子408は周囲環境の影響並びに不所望な接触から保護されている。
【0040】
一つの実施例によれば、フレームシステム104が金属製のレールシステム104として形成されており、このレールシステム104を介してセル302が緊締され、それと同時に、このレールシステム104によって、組み立て中にセルスタック及び冷却プレート304が固定される。セル302の緊締並びに動作中の突沸に起因するセル302の体積変化から生じるあらゆる運動力は、このレールシステム104と、有利には射出成形によって作製される二つの側壁102,402とによって受け止められる。別のハウジング400は被覆のためにのみ使用されるので、別の力を受け止める必要はない。モジュールの大きさに応じて、レールシステム104の長さを適合させることができる。更には、セルスタック302全体を覆い、また有利には射出成形によって作製される、プラスチック製被覆パーツ400,404が提案される。それらのプラスチック製被覆パーツ400を合理的なパーツサイズに分割することによって、例えば二つ又は三つのセル結合体のための共通のハウジング100に分割することによって、あらゆるモジュールサイズを、僅か二つの異なる構成部材サイズによって形成することができる。もっとも図4においては、ハウジング400が単一の構成部材として示されている。それらの被覆セグメント400間のシールを、射出成形により固着されたシールリップによって、又は形状結合若しくは素材結合によって、例えば接着若しくは溶接によって実現することができる。プラスチックハウジング400は、モジュール300を熱的にも電気的にも絶縁し、媒質に対するシールとしても機能する。あらゆる力の受容、並びに、セル302の固定は、レールシステム104及び側壁102,402を介して行われる。
【0041】
バッテリモジュール300において種々の数のセル302を使用することができるので、従って、ケーシングが金属薄板から形成される場合には、各サイズのモジュールに対して、固有のハウジングが必要になる。これによって、パーツの多様性が高くなり、ヴァリエーションの数も多くなり、また組み立て時の手作業の割合も高くなる。本明細書において紹介するケーシングのモジュール構造によって、バッテリ300を、好適に、また論理的に僅かなコストで作製することができる。
【0042】
本明細書において紹介するアプローチにおいては、バッテリモジュール300が、モジュール式に構成された、プラスチック製被覆パーツ102,400,402,404及び金属製レール116,118,120,122から成るシステムを有している。レールシステム104を用いることによって、組み立て中にセル302を非常に精確に位置決めすることができ、また装置を使用せずともセル302を緊締することができる。
【0043】
セル302二つ分及び三つ分の構造サイズのプラスチック製被覆パーツ400によって、合理的な構成要素システムを作製することができ、これによってあらゆるサイズのモジュールの少数の構成部材で覆うことができる。
【0044】
このコンセプトによって、パーツ数及びパーツの多様性を低減できるのと同時に、更にはバッテリモジュール300のハウジング100に関するコスト及び重量も低減することができる。
【0045】
本明細書に記載されたアプローチは、金属製レール116,118,120,122及びプラスチック製被覆パーツ102,400,402,404から成るバッテリシステム300のハウジング100についての、簡単な組み立てプロセスを実現するコンセプトを表す。
【0046】
図5には、本発明の一つの別の実施例によるバッテリ300が示されている。バッテリ300は、図4に示したバッテリに対応する。図5には、図4に示したモジュール300が組み立てられた状態で示されている。バッテリ300は、側壁102,402、ケーシングパーツ400及び蓋404によって完全に包囲されている。ケーシングパーツ400は側壁102,402をシールする。蓋404は側壁102,402並びにケーシングパーツ400をシールする。側壁102,402はレールによって抗張性を有するように相互に結合されている。ナット410を介して側壁102,402は相互に緊締されている。バッテリセルは、側壁102,402間にクランプ止めされており、それによって予荷重が加えられている。セルコネクタ406のためのカバーキャップ412及び極408のためのカバーキャップ414は、蓋404の大きい貫通孔及び小さい貫通孔に配置されており、それによって、バッテリ300の電気的な端子が周囲環境の影響及び意図しない接触から保護されている。
【0047】
ここでは、構成部材102,400,402,404から成るバッテリモジュールケーシングとして示されているハウジングは、塩水のような媒体の外部からの侵入を阻止するが、障害時のリチウムイオンセルの反応生成物の流出も阻止する。リチウムイオンセルの最適な動作温度を保証するために、バッテリモジュールケーシング102,400,402,404は、本来の温度調整システムの他に、セルの温度調整の一部も担う。
【0048】
本発明のコンセプトによるバッテリモジュール300用のハウジング100では、他のハウジングとは異なり、機械的な機能がハウジング機能から分離されている。機械的な機能は、金属製のコンポーネントが担う。ハウジング機能はプラスチック構成部材102,400,402,404によって満たされる。このようにして、バッテリモジュールハウジング100の重量を、金属製のケーシングに比べて遙かに低減することができる。プラスチック製被覆素子400が合理的な複数の素子に分割される場合には、あらゆるモジュールサイズ及びスタックサイズを表すために、少数の異なるコンポーネントしか必要とされないので、これによって構成部品のコスト及び組み立てコストが著しく低減される。
【0049】
モジュール300の蓋404は一つの構成部材として形成されている。カバーキャップ412,414は、接触接続後のセルコネクタへの意図しない接触を阻止することができる。
【0050】
組み立て時間を短縮するために、蓋404を2ピースの構成部材として形成することができ、有利には、それらの構成部材は射出成形によって作製される。蓋404に多数の機能を統合することができる。セルコネクタ及びリードフレームを射出成形によって包囲することによって、射出成形において既に、信号伝送部を統合することができ、またセルの接触接続のための準備段階を提供することができる。択一的に、蓋404内の信号伝送部をMID(Molded Interconnect Devices、三次元の電子構成部材群)によって実現することができる。導体路を事後的に被着させることによって、その導体路に接続される装置の再プログラミングを行うだけで、回路を変更することができるという利点が得られる。これに対して、射出成形によって周囲が包囲されているリードフレームを用いて実現される回路の変更が行われている場合には、リードフレームの変更及び相応のツールの他に、射出成形機の変更も必要になる。蓋404は更に、一貫した排気通路(ガス抜き通路)を有している。後続の処理ステップにおいて、蓋404に対して射出成形を行い(ガス抜きベント及びセルハウジング102,400,402に対する)シールを行うことができるか、又は、二要素金型及び二要素射出成形機を用いて、蓋404が射出成形される間にトランスファ成形によって直接的にシールを成形することができる。蓋404を1ピースの構成部材として作製することができるが、しかしながら有利には2ピースの構成部材として作製することができる。1ピースの蓋404では、ガス抜き通路から例えばガス抜きを行うことができる。2ピースの蓋404では、ガス抜き通路を、蓋404の下部パーツと上部パーツとの接合によって、有利には溶接によって形成することができる。
【0051】
セルの接触接続後にセルコネクタの上に差し込まれるカバーキャップ412,414は、接触に対する保護部としてのみ使用される。この保護部を例えば射出成形部材、有利にはPPから成る射出成形部材として作製することができる。正極端子と負極端子を視覚的に判別できるようにするために、カバーキャップ412,414を着色することによって目印を付けることが提案される。
【0052】
換言すれば、図5には、角柱状の基体を備えている少なくとも二つのセルから成る、直方体状のセルスタックを有するバッテリ300が示されている。セルスタックは、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部、第4の長辺側縁部、第1の端面、それとは反対側に位置する第2の端面を有しており、第1の長辺側縁部、第2の長辺側縁部、第3の長辺側縁部及び第4の長辺側縁部は相互に平行に整列されており、且つ、第1の端面及び第2の端面を横切る方向に整列されている。更に、バッテリ300はセルスタックに予荷重を加えるためのフレーム構造体を有している。フレーム構造体は、金属製の第1の支持レール、金属製の第2の支持レール、金属製の第1のガイドレール及び金属製の第2のガイドレールを有している。第1の支持レールは、冷却プレートのための第1の軸方向収容部と、セルスタックの第1の長辺側縁部が配置される第1の軸方向凹部とを有している。第2の支持レールは、冷却プレートのための第2の軸方向収容部と、セルスタックの第2の長辺側縁部が配置される第2の軸方向凹部とを有している。第1のガイドレールは、セルスタックの第3の長辺側縁部が配置される第3の軸方向凹を有しており、また第2のガイドレールは、セルスタックの第4の長辺側縁部が配置される第4の軸方向凹部を有している。更に、バッテリ300は、セルスタックを収容するように構成されている、プラスチック材料から成るハウジング100を有している。ハウジング100は、第1の側壁102、第2の側壁402、ケーシングパーツ400及び蓋404を有している。第1の側壁102は、セルスタックの第1の端面に当接している。第2の側壁402は、セルスタックの第2の端面に当接している。第1の側壁102及び第2の側壁402は、抗張性を有するようにフレーム構造に結合されており、且つ、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている繊維強化プラスチック構成部材として形成されている。ケーシングパーツ400は、第1の側壁102と第2の側壁402との間に配置されており、且つ、第1の側壁102及び第2の側壁402をシールする。ケーシングパーツ400は、第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とから成るU字形の横断面を有している。第1の支持レールは、第1の面と第2の面との間の第1の突き合わせ縁部に配置されている。第2の支持レールは、第2の面と第3の面との間の第2の突き合わせ縁部に配置されている。第1のガイドレールは、第1の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第1の面の縁部に配置されており、また第2のガイドレールは、第2の突き合わせ縁部とは反対側に位置する、第3の面の縁部に配置されている。蓋404はケーシングパーツ400の開放されている面を閉じ、第1の面、第1の側壁102、第3の面及び第2の側壁402をシールする。
【0053】
セルスタックを収容するためのハウジング100は、ケーシングパーツ400を有しており、このケーシングパーツは第1の面と、その第1の面を横切る方向に整列されている第2の面と、その第2の面を横切る方向に整列されている第3の面とを有している。ケーシングパーツ400は、U字型の横断面を有している。第1の面は、第1の突き合わせ縁部において第2の面に接合されている。第2の面は、第2の突き合わせ縁部において第3の面に接合されている。ケーシングパーツ400はプラスチック材料から形成されている。ハウジング100は更に、第1の側壁102を有しており、この第1の側壁は、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている繊維強化プラスチック構成部材として形成されており、ケーシングパーツ400の第1の開放されている面において、第1の面、第2の面及び第3の面に当接する。第1の側壁102の主延在平面は、第1の面、第2の面及び第3の面を横切る方向に整列されている。ハウジング100は更に、第1の側壁102と構造的に等しい第2の側壁402を有している。第2の側壁402は第1の側壁102に合同であり、ケーシングパーツ400の第2の開放されている面に配置されており、且つ、第1の面、第2の面及び第3の面に当接している。第2の側壁402の主延在平面は、第1の面、第2の面及び第3の面を横切る方向に整列されている。更に、ハウジングは、セルスタックの第1の長辺側縁部を収容するための第1の軸方向凹部と、冷却プレート用の第1の軸方向収容部と、を備えている、金属製の第1の支持レールを有している。第1の支持レールは、第1の突き合わせ位置に配置されており、第1の側壁102から第2の側壁402に向かって延在している。第1の支持レールは抗張力を有するように、第1の側壁102及び第2の側壁402に結合されている。更に、ハウジング100は、セルスタックの第2の長辺側縁部を収容するための第2の軸方向凹部と、冷却プレート用の第2の軸方向収容部と、を備えている、金属製の第2の支持レールを有している。第2の支持レールは、第2の突き合わせ位置に配置されており、第1の側壁102から第2の側壁402に向かって延在している。第2の支持レールは抗張力を有するように、第1の側壁102及び第2の側壁402に結合されている。更に、ハウジング100は、セルスタックの第3の長辺側縁部を収容するための第3の軸方向凹部を備えている、金属製の第1のガイドレールを有している。第1のガイドレールは、第1の支持レールに平行に、第1の突き合わせ位置とは反対側に位置する、第1の面の縁部に配置されており、且つ、第1の側壁102から第2の側壁402に向かって延在している。第1のガイドレールは抗張力を有するように第1の側壁102及び第2の側壁402に結合されている。更に、ハウジング100は、セルスタックの第4の長辺側縁部を収容するための第4の軸方向凹部を備えている、金属製の第2のガイドレールを有している。第2のガイドレールは、第2の支持レールに平行に、第2の突き合わせ位置とは反対側に位置する、第3の面の縁部に配置されており、且つ、第1の側壁102から第2の側壁402に向かって延在している。第2のガイドレールは抗張力を有するように第1の側壁102及び第2の側壁402に結合されている。最後に、ハウジング100は蓋を有しており、この蓋はケーシングパーツ400の第3の開放されている面において、第1の面、第1の側壁102、第3の面及び第2の側壁402に当接しており、またプラスチック材料から形成されている。
【0054】
図6には、本発明の一つの実施例によるバッテリ300における力の影響が示されている。バッテリは、図5に示したバッテリに対応する。図5とは異なり、ここでは蓋は図示していない。カバーキャップ、セルコネクタ及び端子も同様に図示していない。図6には、バッテリ300の上面が平面図で示されている。五つのバッテリセル302の電気的な端子が露出されている。第3のレール120による引っ張り力600(張引)及び第4のレールによる引っ張り力600が図示されている。相応の引っ張り力が、バッテリ300の下面における第1のレール及び第2のレールによって伝達される。それらの引っ張り力600は、側壁102及び別の側壁402に支持される各ナット410によってもたらされる。引っ張り力600によって、側壁102,402は曲げ負荷602(湾曲)に晒され、この曲げ負荷はレール間において最大値を有している。リブ構造体は側壁102,402を補強する。これによって、側壁102,402は、大きく変位することなく、曲げ負荷602に耐えることができる。即ち、側壁102,402は極僅かにしか湾曲しない。従って、側壁102,402は表面圧としての引っ張り力600をセルスタック302の両側壁に伝達する。セル302には、この表面圧によって圧縮負荷604(押圧)が生じる。この圧縮負荷604は、いわゆる突沸に起因する動作中のセルの体積変化を抑制するために必要とされる。
【0055】
図7には、本発明の一つの実施例によるバッテリを製造するための方法700のフローチャートが示されている。ここで説明する方法によって、例えば、図4に示されているようなバッテリを製造することができる。
【0056】
ステップ701においては、例えば図1に示されているようなハウジングが準備され、またステップ703においては、少なくとも二つのセルから成る直方体状のセルスタックが準備される。ステップ705においては、セルスタックがハウジングに配置される。ステップ707においては、U字形の横断面を有しているケーシングパーツが準備される。ステップ709においては、このケーシングパーツがハウジングに結合される。
【0057】
一つの実施例によれば、ハウジングの側壁には四つのねじアダプタを備え付けることができる。それらのねじアダプタはボルトを有しているので、各ねじアダプタを、それぞれナットを用いてねじ締めすることによって側壁に固定することができる。ねじアダプタには上側及び下側においてレール(有利にはアルミニウムから形成されており、必要に応じてコーティングされている)がそれぞれ二つずつ取り付けられる。このフレーム構造体の事前組み立ての後に、モジュールの大きさに依存する数のセルから成る全体のセルスタックがフレームに押し込まれ、フレームによって固定される。冷却プレートも簡単にフレームに押し込むことができる。セル間の絶縁のために、例えば、簡単なプラスチックプレート、プラスチックシート又は絶縁紙を使用することができる。冷却プレートが金属から形成されている場合には、セルの底部においても絶縁部が必要になる。冷却プレートがプラスチックから形成されている場合には、そのような絶縁部を省略することができる。
【0058】
ステップ705においてセルスタックが挿入された後に、構造の等しい四つのねじアダプタを、レール端部に固定することができ、また図4に示されているように、別の側壁又は完全なケーシングパーツを第1の側壁、レール及びセルから成るシステムに押し込むことができる。続いて、各ナットがねじアダプタのボルトにねじ込まれる。ナットが引き締められることによって、側壁がセルスタックへと引き寄せられ、セルはレール、側壁、特に射出成形によって側壁に固着された側壁のリブ、ねじアダプタ及びナットから成るシステムを介して緊締される。図6には力の影響が概略的に示されている。
【0059】
図8には、本発明の一つの実施例による、三次元の輪郭及び補強リブ構造体を備えている繊維強化プラスチック構成部材を作製するための方法800のフローチャートが示されている。ここで説明する方法800によって、図2において説明したような側壁を作製することができる。この方法800は、準備ステップ802、温度調整ステップ804、挿入ステップ806、閉鎖ステップ808及び充填ステップ810を備えている。準備ステップ802においては、熱可塑性マトリクスを有している繊維強化半製品から成るプレートが準備される。温度調整ステップ804においては、プレートが温度調整されてマトリクスの変形温度にされ、それにより変形の準備が整ったプレートが得られる。プレートの取り扱いを簡単にするために、プレートは予め緊張フレームに固定される。挿入ステップ806においては、緊張フレームに固定されている、変形の準備が整ったプレートが、開放されている射出成形機に挿入される。射出成形機は、二つの金型半部間に金型キャビティを形成し、この金型キャビティはプラスチック構成部材の輪郭及びリブ構造体を雌型として写し取る。閉鎖ステップ808においては、射出成形機が閉鎖される。その際、変形の準備が整ったプレートの縁部が緊張フレームによってクランプされ、プレートの緊張が維持され、三次元の変形が行われている間のしわ形成が回避される。この閉鎖によって、射出成形機は射出の準備が整った状態に移行され、それと同時に、変形の準備が整ったプレートには、二つの金型半部の間において輪郭が形成される。リブ構造体には残余容積が残される。充填ステップ810においては、射出の準備が整った射出成形機の残余容積には、可塑化された熱可塑性材料が充填され、それによって輪郭にリブ構造体が固着され、また流入する融解物の圧力によって、金型の輪郭形状は完全に、変形された半製品に写し取られる。
【0060】
図8において説明した方法800によって、図1から図6において説明したような側壁を、プラスチック・プラスチックハイブリッド構成部材として作製することができる。このために、既に含浸されて固結された、熱可塑性マトリクスを有する織物半製品(有機シート)を、射出成形機の閉鎖808の際に変形させ、それに続いて、射出成形810によって包囲するか、又は、射出成形によってねじアダプタの取付部のような機能素子を固着させることができる。
【0061】
バッテリモジュールのハウジングのための(ファイバ結合体)プラスチック構成部材を使用することによって、このハウジングの質量を金属製ハウジングに比べて著しく低減することができる。プラスチック構成部材の作製は、有利には射出成形によって行われる。考えられる補強部は有利には、熱可塑性マトリクスを有する既に含浸されて固結された織物半製品(有機シート)から成る挿入体であるか、金属製の挿入体である。射出成形でのプラスチック構成部材の作製は、低価格での大量生産を実現し、また高集積コンポーネントの生産を実現する。
【0062】
金属製のフレーム構造体は機械的な安定性を保証し、セル及び冷却プレートの固定並びにセルの確実な緊締を提供する。
【0063】
図面に示した上述の実施例は例示的なものとして選択されたに過ぎない。種々の実施例を完全に、又は個々の特徴に関して、相互に組み合わせることができる。また、ある実施例を別の実施例の特徴によって補完することもできる。更には、本発明による方法のステップを繰り返し実施すること、並びに上述した順序とは異なる順序で実施することも可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8