特許第6099862号(P6099862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6099862
(24)【登録日】2017年3月3日
(45)【発行日】2017年3月22日
(54)【発明の名称】表面活性化処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20170313BHJP
   B01J 19/08 20060101ALI20170313BHJP
   A61L 2/14 20060101ALN20170313BHJP
【FI】
   H05H1/24
   B01J19/08 E
   !A61L2/14
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-123824(P2011-123824)
(22)【出願日】2011年6月1日
(65)【公開番号】特開2012-252843(P2012-252843A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年5月30日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514054007
【氏名又は名称】マイクロプラズマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】特許業務法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 一男
【審査官】 山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−078266(JP,A)
【文献】 特開2006−269095(JP,A)
【文献】 特開2005−333096(JP,A)
【文献】 特開2006−302623(JP,A)
【文献】 特開平04−358076(JP,A)
【文献】 特開2008−231471(JP,A)
【文献】 特開2008−098128(JP,A)
【文献】 特開平03−120371(JP,A)
【文献】 特開2007−258097(JP,A)
【文献】 特開2008−098059(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/008062(WO,A1)
【文献】 特表2010−536131(JP,A)
【文献】 特開2002−253952(JP,A)
【文献】 特開2005−243905(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24−1/30
B01J 19/08
A61L 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体11の一端の開口部12内側に、
貫通孔25が設けられた2枚の電極板21,22を対向配置した第1のプラズマ電極P1を設け、
該筒体11内へ第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を、
前記2枚の電極板21,22に対し略直角方向に流すとともに、
該貫通孔25を通過させてプラズマ化して、
該筒体11の開口部12から外部へ噴射して被処理物S表面を活性化する表面活性化処理装置10であって、
筒体11内に第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を整流化するための整流化手段30を、
第1のキャリアガスG1が第1のプラズマ電極P1の貫通孔25を通過する手前に、
第1のプラズマ電極P1と距離をおいて設け、
前記筒体11の側壁部11aに第2のキャリアガスG2を供給するための第2の供給口15を設け、
該第2のキャリアガスG2を、
前記第1のプラズマ電極P1の外側を通過させて、
前記第1のプラズマ電極P1と筒体11の開口部12内側とのなす間隙16から、
前記筒体11の開口部12へ噴射させるとともに、
該第2のキャリアガスG2の噴射速度を変えることによって被処理物Sに照射するプラズマ流を絞ったり拡げたりするようにしたことを特徴とする表面活性化処理装置。
【請求項2】
前記整流化手段30が、
貫通孔35が設けられた2枚の電極板31,32を対向配置した第2のプラズマ電極P2であることを特徴とする請求項1に記載の表面活性化処理装置。
【請求項3】
前記筒体11の一端の開口部12には、その開口面積を調整可能とする開口面積調整手段14が設けられており、
プラズマ化されて噴射される第1のキャリアガスG1の流径を調整可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面活性化処理装置。
【請求項4】
前記被処理物Sが、生体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面活性化処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理物表面を活性化する表面活性化処理装置に関し、詳しくは、プラズマ化したキャリアガスを整流化して開口部から外部へ噴射して被処理物表面を活性化する表面活性化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ技術を用いて、処理物の表面を活性化する手段として、素材表面の濡れ性を改善し接着強度を高める方法として接着前処理にプラズマを照射する装置がある。非特許文献1、2には低周波高電圧電源を用いて希ガスのプラズマ化を図る研究、液体中でのプラズマ滅菌に関する研究等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】(文部科学省:科学研究補助金:特定領域研究:平成19年度研究成果報告書:2008.06.01掲載:A01−(6)「液中グロープラズマによる先進的反応場の生成と解析」研究代表者:北野勝久)
【非特許文献2】(文部科学省:科学研究補助金:特定領域研究:平成18年度研究成果報告書:2007.02.26掲載:A01−(6)「液中グロープラズマによる先進的反応場の生成と解析」研究代表者:北野勝久)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の表面活性化処理装置では、構造が複雑となっているばかりでなく、使用の際の制御が面倒となっている。さらに、医療装置に組み込む場合には、装置が大型化するため、そのままでは既存の医療装置に適用できない汎用性のないものとなっている。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、簡単な構造で被処理物の表面を活性化処理することができる表面活性化処理装置、及び、簡単な構造で特に被処理物の表面の滅菌や殺菌などを行うことができるとともに既存の医療装置への組み込みも簡易に行うことが可能な表面活性化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の表面活性化処理装置は、
筒体11の一端の開口部12内側に、
貫通孔25が設けられた2枚の電極板21,22を対向配置した第1のプラズマ電極P1を設け、
該筒体11内へ第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を、
前記2枚の電極板21,22に対し略直角方向に流すとともに、
該貫通孔25を通過させてプラズマ化して、
該筒体11の開口部12から外部へ噴射して被処理物S表面を活性化する表面活性化処理装置10であって、
筒体11内に第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を整流化するための整流化手段30を、
第1のキャリアガスG1が第1のプラズマ電極P1の貫通孔25を通過する手前に、
第1のプラズマ電極P1と距離をおいて設け、
前記筒体11の側壁部11aに第2のキャリアガスG2を供給するための第2の供給口15を設け、
該第2のキャリアガスG2を、
前記第1のプラズマ電極P1の外側を通過させて、
前記第1のプラズマ電極P1と筒体11の開口部12内側とのなす間隙16から、
前記筒体11の開口部12へ噴射させるとともに、
該第2のキャリアガスG2の噴射速度を変えることによって被処理物Sに照射するプラズマ流を絞ったり拡げたりするようにしたことを特徴とする。
(2)本発明の表面活性化処理装置は、前記(1)において、前記整流化手段が、貫通孔が設けられた2枚の電極板を対向配置した第2のプラズマ電極であることを特徴とする。
(3)本発明の表面活性化処理装置は、前記(1)又は(2)において、前記筒体の一端の開口部には、その開口面積を調整可能とする開口面積調整手段が設けられており、プラズマ化されて噴射される第1のキャリアガスの流径を調整可能であることを特徴とする。
(4)本発明の表面活性化処理装置は、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記被処理物が、生体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の表面活性化処理装置は、プラズマ電極によってキャリアガスをプラズマ化して、筒体からプラズマガスを照射することにより、表面活性化処理装置の開口部に対向して配置された被処理物の表面を活性化して、濡れ性改善や汚染物質の洗浄効果を発現する。また被処理物の表面をプラズマガスにより殺菌消毒する効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図2】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図3】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図4】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図5】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図6】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略縦断面図である。
図7】本発明の他の実施形態の表面活性化処理装置を示す概略図である。
図8図1に示す表面活性化処理装置に設けた5個の流速分布測定センサーS1〜S5の設置箇所を示す説明図であり、(a)は表面活性化処理装置の上方向(開口部と反対側)から見た横断面図であり、(b)はその縦断面図である。
図9】整流手段の効果を示す結果である。
図10図2に示す表面活性化処理装置を用い、第2の第2のプラズマ電極を設置した場合の効果を示し、(a)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた整流板のみを、内径3mmの筒体の内部に設け、第1のプラズマ電極に印加した場合を示し、(b)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた2枚の電極板を対向配置させて、内径3mmの筒体の内部にプラズマ電極として設け、整流化手段及び第2のプラズマ電極とし、第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極に印加した場合を示す。
図11図1に示す表面活性化処理装置を用い、被処理物であるシャーレ内の寒天培地上にプラズマを照射し殺菌効果を検証する実験を行った結果を示し、それぞれプラズマ照射なし(未処理)、Arプラズマ照射、Heプラズマ照射、N2プラズマ照射した結果を、(a)〜(d)に示す。
図12】第1のキャリアガスとしてArガスをシャーレに吹き付け、その後培養した写真を(a)に示し、(b)に未処理を示し、10L/min(1.33m/s)のArガスを用い、700V印加した際の写真を(c)に示す。
図13】(a)は未処理、(b)は窒素を用いて1.3kVでのプラズマ処理、(c)は窒素を用いて1.4kVでのプラズマ処理、(d)は窒素を用いて1.5kVでのプラズマ処理の結果を示す。
図14】第1のキャリアガスとして空気を用いた場合の大腸菌へのプラズマ照射実験結果を示し、第1のプラズマ電極と寒天培地との距離を(a)3mm、(b)4mm、(c)5mm、(d)6mm、に変化させた結果を示す。
図15】Alicyclobacillus acidoterrestris(いわゆる耐熱耐性菌)を各気体を第1のキャリアガスとして処理した結果を示す。
図16】Allicyclobatillus殺菌結果を示す。
図17】Allicyclobatillus殺菌結果を示す。
図18図1の表面活性化処理装置を用いて、被処理物として皮膚へ適用した例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態の表面活性化処理装置は、図1に示すように、筒体11の一端の開口部12の内側に、貫通孔25が設けられた2枚の電極板21,22を対向配置した第1のプラズマ電極P1を設け、筒体11の一端の開口部12内側に、該筒体11内へ第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を該貫通孔25を通過させてプラズマ化して該筒体11の開口部12から外部へ噴射して被処理物Sの表面を活性化する。
また、筒体11の内部には、第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を整流化するための整流化手段30を、第1のキャリアガスG1が第1のプラズマ電極P1の貫通孔25を通過する手前に設けている。
【0010】
筒体11としては、内径20〜100mm程度の、プラスチック製の円筒、角筒などが挙げられ、内部には、2枚の電極板21,22を対向配置した第1のプラズマ電極P1を設けている。
また、筒体11の一端(図1では下方)には、第1のプラズマ電極P1を構成する2枚の電極板21,22に設けた貫通孔25を通過させることによってプラズマ化させたキャリアガスを、筒体11の外部に噴射する開口部12を設けており、開口部12の下方に対向配置した被処理物Sに向けて噴射させることによって活性化処理することができる。
貫通孔25の大きさとしては、規定するものではないが、0.5mm〜5mmのものが好ましく挙げられる。
【0011】
また、筒体11の内部には、第1の供給口13から供給される第1のキャリアガスG1を整流化するための整流化手段30を、第1のキャリアガスG1が第1のプラズマ電極P1の貫通孔25を通過する手前に設けている。
これにより、筒体11の内部において乱流状態である第1のキャリアガスG1を整流化して、貫通孔25を通過するキャリアガスG1の流速が平均化されて、筒体11の開口部12から噴射されるプラズマガス流も均一化されて被処理物の表面を均等に活性化するという効果がある。
【0012】
整流化手段30としては、筒体11の内部において、上方から下方へ流れる第1のキャリアガスGを整流化できるものであればよく、具体的には、電極板21の貫通孔25のように金属板に貫通孔35を設けた平板を1枚又は複数枚、第1のプラズマ電極P1の上流側(図1では上方)に配置したものが挙げられる。
すなわち、整流化手段30を、第1のキャリアガスG1が第1のプラズマ電極P1の貫通孔25を通過する手前に設けている。
【0013】
整流化手段30は、第1のプラズマ電極P1と接触していてもよいが、1mm〜100mmの距離を有するほうが、第1のプラズマ電極P1へ流入させる手前でより整流化できて好ましい。
貫通孔35の大きさとしては、規定するものではないが、0.5mm〜10mmのものが好ましく挙げられる。
【0014】
第1のキャリアガスG1は、ガスであれば特に制限を設けるものではないが、第1のキャリアガスG1としては、空気、酸素、不活性ガスなどが挙げられる。
第1のキャリアガスG1の流量は、特に制限を設けるものではないが、1L〜50L/min.が好ましく挙げられる。
【0015】
被処理物Sは、特に制限を設けるものではないが、樹脂、金属、セラミックス、植物、動物、などが挙げられ、特に生体の表面(人間の皮膚など)を安全、かつ効果的に活性化することができる。
【0016】
また、本発明の表面活性化処理装置10は、図2に示すように、前記整流化手段30が、
貫通孔35が設けられた2枚の電極板31,32を対向配置した第2のプラズマ電極P2であってもよい。
これにより、整流化効果を奏するとともに、第1のキャリアガスG1を、まず第2のプラズマ電極P2でのプラズマ化し、続けて第1のプラズマ電極P1でプラズマ化させるので、よりプラズマ化したガスを創出できる。
【0017】
そして、本発明の表面活性化処理装置10は、図3に示すように、前記筒体11の一端の開口部12に、その開口面積を調整可能とする開口面積調整手段14が設けられ、プラズマ化されて噴射される第1のキャリアガスG1の流径を調整可能とすることができる。
開口面積調整手段14としては、特に制限を設けるものではないが、カメラの絞りのような構造のものが挙げられる。
また、開口面積を連続的に調整するものでなくとも、大きさの異なった貫通孔を有するアダプターを開口部12に着脱自在に設けることもできる。
これにより、開口面積を調整して、被処理物Sにプラズマを照射する面積を自在に変えることができ、スポット的に照射することが可能となる
【0018】
本発明の表面活性化処理装置10は、図4に示すように、前記筒体11の側壁部11aに第2のキャリアガスG2を供給するための第2の供給口15を設け、該第2のキャリアガスG2を、前記第1のプラズマ電極P1の外側を通過させて、前記第1のプラズマ電極P1と筒体11の開口部12内側とのなす間隙16から、前記筒体11の開口部12へ噴射させることも可能である。
第2のキャリアガスG2を供給する第2の供給口15は、側壁部11aに設けられ第1のプラズマ電極P1の外側を通過するように複数個設けられており、前記第1のプラズマ電極P1と筒体11の開口部12内側とのなす間隙16から、前記筒体11の開口部12へ噴射させるようになっている。
これにより、第2のキャリアガスG2の噴射速度を変えることによって被処理物Sに照射するプラズマ流を絞ったり拡げたりすることができ、開口面積調整手段14と同様の効果を生じさせることができる。
【0019】
本発明の表面活性化処理装置10は、図5に示すように、前記第2の供給口15から該第2のキャリアガスG2を前記筒体11の開口部12へ噴射させる代わりに、前記筒体11の開口部12から吸引することができる。
これにより、噴射キャリアガスの回収や被処理物から排出される流体の回収が可能となる。
【0020】
本発明の表面活性化処理装置10は、図6に示すように、前記筒体11内に、さらに流体を吸引する吸引手段17を設けることもできる。
これにより、筒体11の内部に浸透してきた流体(ガス、液体など)を筒体11外部に排出することができる。
【0021】
本発明の表面活性化処理装置は、前記被処理物Sが生体である場合、生体表面である皮膚の殺菌や消毒などの活性化処理をする装置として用いることができる。例えば、図7に示すような表面活性化処理装置である。図7は、生体の皮膚にプラズマを照射して皮膚の殺菌をするハンディタイプの表面活性化処理装置を示す。
ハンディタイプ処理装置51は、その筒体52の内部に、図1に示す表面活性化処理装置と同様な第1のプラズマ電極P1を設け、プラズマガスをキャリアガスによって外部に送出して皮膚Sに照射して皮膚の活性化処理を行なうように構成した例を示すものである。
ハンディタイプ処理装置51は、手持ち把持可能な本体53の先端部に、キャリアガスとなる外部の空気を取り入れてプラズマを開口部から噴射させる送風機(プラズマガスを外部へ送出する)54を備えている。
このような構成のハンディタイプ処理装置51によれば、内部に設けられた送風機54によって、外部からの圧縮キャリアガスの導入が不要になる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
実施例1として、図1に示す表面活性化処理装置を用い、整流化手段30として、直径3mmの9個の貫通孔を設けた整流板を内径25mmの筒体11に設け、第1のキャリアガスG1の流速を5m/秒として筒体11に導入した場合の流速の分布を測定した。
図8は、実施例1として、図1に示す表面活性化処理装置に設けた5個の流速分布測定センサーS1〜S5の設置箇所を示す説明図であり、(a)は表面活性化処理装置の上方向(開口部と反対側)から見た横断面図であり、(b)はその縦断面図である。
流速分布測定センサーS1は筒体11の中心部に設置し、S2〜S5は、それぞれ筒体11の側壁を貫通させて筒体内部に挿入して筒体11の内壁に近接した位置に設置した。
なお、流速分布測定センサーS1〜S5の上下方向の設置位置は、整流板と第1のプラズマ電極P1との間である。
また、整流板30と第1のプラズマ電極P1との距離は、5mmとした。
なお、比較例として、整流板を設けていないもの(整流板無)を用いた。
【0023】
その結果を図9に示す。図9の結果から、5箇所の測定箇所での測定分布の差(最大流速/最小流速)が、整流板無のものは3.62倍あったのに対し、整流板有のものは1.24倍であったことから、整流板30を設けたことによって流速が平均化されていることが分かる。
この結果、筒体11から噴射されるプラズマ流も均一化されて被処理物の表面を均等に活性化するという効果がある。
【0024】
(実施例2)
実施例2として、図2に示す表面活性化処理装置を用い、第2の第2のプラズマ電極を設置した場合の効果を図10に示す。
図10(a)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた整流板のみを、内径3mmの筒体の内部に設け、第1のプラズマ電極に印加した場合を示す。
図10(b)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた2枚の電極板を対向配置させて、内径3mmの筒体の内部にプラズマ電極として設け、整流化手段及び第2のプラズマ電極とし、第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極に印加した場合を示す。
プラズマ生成条件は下記のとおりとした。
印加電圧:1KV、
キャリアガス(窒素)流量:150L/min、
活性化処理時間:10sec、
この結果、活性化処理前の被処理物(液晶パネル)に対する水滴の接触角が28.5度であったが、(a)整流板のみの場合は、処理後の接触角が21.5度であった。(b)整流化手段及び第2のプラズマ電極とし、第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極に印加した場合は、処理後の接触角が15.1度となった。すなわち、(b)のほうが、表面活性化処理の効果がよりあることが分かる。
【0025】
(実施例3)
実施例3として、図1に示す表面活性化処理装置を用い、被処理物であるシャーレ内の寒天培地上に105倍に希釈したE.coliを広げ、その表面にプラズマを照射し殺菌効果を検証する実験を行った結果を図11図17に示す。
実施例3において、
プラズマ照射時間は60秒、
第1のプラズマ電極と寒天培地(被処理物表面)との距離は約2mm、
プラズマを照射する被処理物表面積は、10mm×10mm、
筒体の開口部から流出する第1のキャリアガスの速度を1.33m/sとした。
また、第1のキャリアガスの種類により印加電圧を変えた。
Arは700V、Heは600V、Nは1.2kVとした。
プラズマ照射なし(未処理)、Arプラズマ照射、Heプラズマ照射、N2プラズマ照射した結果を、図11(a)〜(d)に示す。
この結果から、処理後は照射部付近にコロニーの形成は見られなかった。
【0026】
また、プラズマ照射部付近にコロニーは形成されないが、風速が強いことにより菌が照射部の周囲に吹き飛んでいる可能性が考えられたため、第1のキャリアガスとしてArガスを60秒間シャーレに吹き付け、その後培養した写真を図12(a)に示す。また、(b)に未処理を合わせて示す。
この結果から、Arガス照射部分にコロニー形成が見られないというようなことは観察されなかった。よって、プラズマ照射部分はプラズマを照射することにより何らかの原因で殺菌されていると考えられる。
また、10L/min(1.33m/s)のArガスを用い、700V印加した際の写真を図12(c)に示す。この結果から、殺菌されている部分は四角形のようなおよそ照射部と似た形となっている。
【0027】
図13以降には、アルゴン以外のキャリアガスによる処理を行った結果を示す。
プラズマ照射時間は60秒、第1のプラズマ電極と寒天培地との距離は約2mm、筒体の開口部から流出する第1のキャリアガスの流量はN:10L/min、Air:9L/minとした。
なお印加電圧は、1.3〜1.5kVとした。
図13(a)は未処理、図13(b)は窒素を用いて1.3kVでのプラズマ処理、図13(c)は窒素を用いて1.4kVでのプラズマ処理、図13(d)は窒素を用いて1.5kVでのプラズマ処理の結果である。
シャーレ真ん中付近のプラズマ照射部分のコロニー形成が抑制されていることが観測された。
【0028】
図14は、第1のキャリアガスとして空気を用いた場合の大腸菌へのプラズマ照射実験結果を示す。流量を10L/minとし、第1のプラズマ電極と寒天培地との距離を(a)3mm、(b)4mm、(c)5mm、(d)6mm、に変化させた結果である。
照射時間は60秒、印加電圧は1.6kVとした。
この結果から、空気によるプラズマ照射でも距離が近い場合、菌コロニーの増殖が抑制され、表面付着菌への殺菌が有効であることが明らかになった。
【0029】
図15に、Alicyclobacillus acidoterrestris(いわゆる耐熱耐性菌)を各気体を第1のキャリアガスとして処理した結果を示す。
この結果からシャーレ上の菌類が殺菌されている様子が確認される。
【0030】
(Allicyclobatillus殺菌結果)
17時間培養したAllicyclobatillusを40μl寒天培地上に塗布し、プラズマを照射した。実験条件は表1に示す。 Allicyclobatillus殺菌結果を図16図17に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例4)
<皮膚の表面改質試験>
図1に示す表面活性化処理装置を用い、人体の皮膚の表面にプラズマガスを照射し、照射の有無により皮膚の表面の水滴の接触角を測定し親水性を評価した。
なお、本実験においては、ポータブル接触角測定器(協和界面科学PCA-1)を用いて皮膚表面に5μLの水滴を滴下し、画像処理により接触角を算出した。
また、プラズマガスを照射した条件は、放電電圧:700V、キャリアガス:Ar、キャリアガス流量:10L/min、照射時間:30秒とした。
その実験結果を図18に示す。(a)は、アルコールで皮膚表面を拭いた後にマイクロプラズマ照射処理前後の接触角を示すグラフであり、(b)はプラズマ処理前の接触角を示す側面図であり、(c)はプラズマ処理後の接触角を示す側面図である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の表面活性化処理装置は、プラズマ電極によってキャリアガスをプラズマ化して、筒体からプラズマガスを照射することにより、表面活性化処理装置の開口部に対向して配置された被処理物の表面を活性化して、濡れ性改善や汚染物質の洗浄効果を発現することができる。また、被処理物の表面をプラズマガスにより殺菌消毒する効果もあり、産業上の利用可能性が極めて高い。
【符号の説明】
【0034】
11:筒体
11a:側壁部
12:開口部
13:第1の供給口
14:開口面積調整手段
15:第2の供給口
16:間隙
17:吸引手段
21,22:電極板
25:貫通孔
30:整流化手段
31,32:電極板
35:貫通孔
51:ハンディタイプ処理装置51
52:筒体
53:本体
54:送風機
G1:第1のキャリアガス
G2:第2のキャリアガス
P1:第1のプラズマ電極
P2: 第2のプラズマ電極
S:被処理物(皮膚)
S1〜S5:流速分布測定センサー
図1
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