【0021】
本発明の表面活性化処理装置は、前記被処理物Sが生体である場合、生体表面である皮膚の殺菌や消毒などの活性化処理をする装置として用いることができる。例えば、
図7に示すような表面活性化処理装置である。
図7は、生体の皮膚にプラズマを照射して皮膚の殺菌をするハンディタイプの表面活性化処理装置を示す。
ハンディタイプ処理装置51は、その筒体52の内部に、
図1に示す表面活性化処理装置と同様な第1のプラズマ電極P1を設け、プラズマガスをキャリアガスによって外部に送出して皮膚Sに照射して皮膚の活性化処理を行なうように構成した例を示すものである。
ハンディタイプ処理装置51は、手持ち把持可能な本体53の先端部に、キャリアガスとなる外部の空気を取り入れてプラズマを開口部から噴射させる送風機(プラズマガスを外部へ送出する)54を備えている。
このような構成のハンディタイプ処理装置51によれば、内部に設けられた送風機54によって、外部からの圧縮キャリアガスの導入が不要になる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
実施例1として、
図1に示す表面活性化処理装置を用い、整流化手段30として、直径3mmの9個の貫通孔を設けた整流板を内径25mmの筒体11に設け、第1のキャリアガスG1の流速を5m/秒として筒体11に導入した場合の流速の分布を測定した。
図8は、実施例1として、
図1に示す表面活性化処理装置に設けた5個の流速分布測定センサーS1〜S5の設置箇所を示す説明図であり、(a)は表面活性化処理装置の上方向(開口部と反対側)から見た横断面図であり、(b)はその縦断面図である。
流速分布測定センサーS1は筒体11の中心部に設置し、S2〜S5は、それぞれ筒体11の側壁を貫通させて筒体内部に挿入して筒体11の内壁に近接した位置に設置した。
なお、流速分布測定センサーS1〜S5の上下方向の設置位置は、整流板と第1のプラズマ電極P1との間である。
また、整流板30と第1のプラズマ電極P1との距離は、5mmとした。
なお、比較例として、整流板を設けていないもの(整流板無)を用いた。
【0023】
その結果を
図9に示す。
図9の結果から、5箇所の測定箇所での測定分布の差(最大流速/最小流速)が、整流板無のものは3.62倍あったのに対し、整流板有のものは1.24倍であったことから、整流板30を設けたことによって流速が平均化されていることが分かる。
この結果、筒体11から噴射されるプラズマ流も均一化されて被処理物の表面を均等に活性化するという効果がある。
【0024】
(実施例2)
実施例2として、
図2に示す表面活性化処理装置を用い、第2の第2のプラズマ電極を設置した場合の効果を
図10に示す。
図10(a)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた整流板のみを、内径3mmの筒体の内部に設け、第1のプラズマ電極に印加した場合を示す。
図10(b)は、直径1mmの大きさの貫通孔を1個設けた2枚の電極板を対向配置させて、内径3mmの筒体の内部にプラズマ電極として設け、整流化手段及び第2のプラズマ電極とし、第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極に印加した場合を示す。
プラズマ生成条件は下記のとおりとした。
印加電圧:1KV、
キャリアガス(窒素)流量:150L/min、
活性化処理時間:10sec、
この結果、活性化処理前の被処理物(液晶パネル)に対する水滴の接触角が28.5度であったが、(a)整流板のみの場合は、処理後の接触角が21.5度であった。(b)整流化手段及び第2のプラズマ電極とし、第1のプラズマ電極及び第2のプラズマ電極に印加した場合は、処理後の接触角が15.1度となった。すなわち、(b)のほうが、表面活性化処理の効果がよりあることが分かる。
【0025】
(実施例3)
実施例3として、
図1に示す表面活性化処理装置を用い、被処理物であるシャーレ内の寒天培地上に105倍に希釈したE.coliを広げ、その表面にプラズマを照射し殺菌効果を検証する実験を行った結果を
図11〜
図17に示す。
実施例3において、
プラズマ照射時間は60秒、
第1のプラズマ電極と寒天培地(被処理物表面)との距離は約2mm、
プラズマを照射する被処理物表面積は、10mm×10mm、
筒体の開口部から流出する第1のキャリアガスの速度を1.33m/sとした。
また、第1のキャリアガスの種類により印加電圧を変えた。
Arは700V、Heは600V、N
2は1.2kVとした。
プラズマ照射なし(未処理)、Arプラズマ照射、Heプラズマ照射、N2プラズマ照射した結果を、
図11(a)〜(d)に示す。
この結果から、処理後は照射部付近にコロニーの形成は見られなかった。
【0026】
また、プラズマ照射部付近にコロニーは形成されないが、風速が強いことにより菌が照射部の周囲に吹き飛んでいる可能性が考えられたため、第1のキャリアガスとしてArガスを60秒間シャーレに吹き付け、その後培養した写真を
図12(a)に示す。また、(b)に未処理を合わせて示す。
この結果から、Arガス照射部分にコロニー形成が見られないというようなことは観察されなかった。よって、プラズマ照射部分はプラズマを照射することにより何らかの原因で殺菌されていると考えられる。
また、10L/min(1.33m/s)のArガスを用い、700V印加した際の写真を
図12(c)に示す。この結果から、殺菌されている部分は四角形のようなおよそ照射部と似た形となっている。
【0027】
図13以降には、アルゴン以外のキャリアガスによる処理を行った結果を示す。
プラズマ照射時間は60秒、第1のプラズマ電極と寒天培地との距離は約2mm、筒体の開口部から流出する第1のキャリアガスの流量はN
2:10L/min、Air:9L/minとした。
なお印加電圧は、1.3〜1.5kVとした。
図13(a)は未処理、
図13(b)は窒素を用いて1.3kVでのプラズマ処理、
図13(c)は窒素を用いて1.4kVでのプラズマ処理、
図13(d)は窒素を用いて1.5kVでのプラズマ処理の結果である。
シャーレ真ん中付近のプラズマ照射部分のコロニー形成が抑制されていることが観測された。
【0028】
図14は、第1のキャリアガスとして空気を用いた場合の大腸菌へのプラズマ照射実験結果を示す。流量を10L/minとし、第1のプラズマ電極と寒天培地との距離を(a)3mm、(b)4mm、(c)5mm、(d)6mm、に変化させた結果である。
照射時間は60秒、印加電圧は1.6kVとした。
この結果から、空気によるプラズマ照射でも距離が近い場合、菌コロニーの増殖が抑制され、表面付着菌への殺菌が有効であることが明らかになった。
【0029】
図15に、Alicyclobacillus acidoterrestris(いわゆる耐熱耐性菌)を各気体を第1のキャリアガスとして処理した結果を示す。
この結果からシャーレ上の菌類が殺菌されている様子が確認される。
【0030】
(Allicyclobatillus殺菌結果)
17時間培養したAllicyclobatillusを40μl寒天培地上に塗布し、プラズマを照射した。実験条件は表1に示す。 Allicyclobatillus殺菌結果を
図16、
図17に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
(実施例4)
<皮膚の表面改質試験>
図1に示す表面活性化処理装置を用い、人体の皮膚の表面にプラズマガスを照射し、照射の有無により皮膚の表面の水滴の接触角を測定し親水性を評価した。
なお、本実験においては、ポータブル接触角測定器(協和界面科学PCA-1)を用いて皮膚表面に5μLの水滴を滴下し、画像処理により接触角を算出した。
また、プラズマガスを照射した条件は、放電電圧:700V、キャリアガス:Ar、キャリアガス流量:10L/min、照射時間:30秒とした。
その実験結果を
図18に示す。(a)は、アルコールで皮膚表面を拭いた後にマイクロプラズマ照射処理前後の接触角を示すグラフであり、(b)はプラズマ処理前の接触角を示す側面図であり、(c)はプラズマ処理後の接触角を示す側面図である。